説明

クリーニング装置

【課題】クリーニング作業を短時間で確実に行うことができるクリーニング装置を提供する。
【解決手段】本発明のクリーニング装置(1)は、カメラ(100)内部の撮像素子(105)又は撮像素子(105)の被写体側に配置された光学部材(104)の一面に付着した異物を除去するクリーニング装置(1)であって、粘着部材(2)を先端部に有するクリーニング部材(3)と、前記クリーニング部材(3)を、前記カメラ(100)内部における撮影光路近傍に配置された光学部品(101,102)を回避するように光軸方向に移動させ、前記粘着部材(2)を前記一面まで案内するガイド部(4)と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ内部の撮像素子又は撮像素子の被写体側に配置された光学部材の一面に付着した異物を除去するクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ内部におけるCCD(charge−coupled device)等の撮像素子の被写体側に配置されたLPF(low−pass filter)等の光学部材の一面に付着した異物を除去する装置としては、従来、先端に粘着部材が取り付けられたクリーニング部材を備えるクリーニング装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。このクリーニング装置は、カメラのレンズマウントに装着されるもので、装着後、クリーニング部材をカメラ内部に押し込んで、光学部材の一面に粘着部材を粘着させる。そしてその一面に付着している異物を粘着部材に転写させ、クリーニング部材を引き出すことで光学部材の一面から異物を除去する。
【特許文献1】特開2005−292404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クリーニング装置をカメラに装着する際、ミラー機構は退避状態にされる。しかしミラー機構は、カメラ内部の配置上の制約から退避状態においても撮影光路に近接している。また、他の光学部品においても、撮影光路に近接して配置されているものもある。このような状況下でクリーニング装置を大きくすると、移動の際にこれらの光学部品に接触する可能性がある。一方、クリーニング装置を小さくすると、クリーニング作業を複数回繰り返す必要があり、クリーニング作業に時間と手間がかかってしまう。
【0004】
本発明の課題は、クリーニング作業を短時間で確実に行うことができるクリーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0006】
請求項1に記載の発明は、カメラ(100)内部の撮像素子(105)又は撮像素子(105)の被写体側に配置された光学部材(104)の一面に付着した異物を除去するクリーニング装置(1)であって、粘着部材(2)を先端部に有するクリーニング部材(3)と、前記クリーニング部材(3)を、前記カメラ(100)内部における撮影光路近傍に配置された光学部品(101,102)を回避するように光軸方向に移動させ、前記粘着部材(2)を前記一面まで案内するガイド部(4)と、を備えることを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクリーニング装置(1)であって、前記クリーニング装置(1)が前記カメラ(100)のレンズマウント(106)に装着される装着部(5)を備え、前記クリーニング部材(3)が、前記装着部(5)に対して光軸方向に移動可能に取り付けられることを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のクリーニング装置(1)であって、
前記ガイド部(4)は、前記クリーニング部材(3)を、前記粘着部材(2)の一端(2c)が前記光学部品(101,102)よりも光軸側を通過し、その後前記一面の端部に向かって光軸(A1)から離れる方向に移動するように案内することを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクリーニング装置(1)であって、前記クリーニング装置(1)が、前記一面を光軸(A1)を通る直線で2分割した一方の領域と他方の領域のそれぞれを別個にクリーニングすることを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のクリーニング装置(1)であって、クリーニングされる前記一方の領域と前記他方の領域とが、一部重複していることを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のクリーニング装置(1)であって、前記カメラ(100)のレンズマウント(106)に装着される装着部(5)を備え、前記装着部(5)を前記レンズマウント(106)に装着した後、該装着部(5)を前記レンズマウント(106)から取り外すことなく、前記クリーニング部材(3)により前記一方の領域と前記他方の領域との両方をクリーニング可能であることを特徴とするクリーニング装置。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のクリーニング装置(1)であって、前記粘着部材(2)の、前記一面を越えた光軸(A1)方向への移動を制限する制限機構(9a,4d)が設けられていることを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のクリーニング装置(1)であって、前記クリーニング部材(3)を、前記一面へ向かう方向と反対方向に付勢する付勢部材(21)を備えることを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のクリーニング装置(1)であって、前記粘着部材(2)が、光軸(A1)に対して垂直な面に沿って光軸から離れる方向に突出していることを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のクリーニング装置(1)であって、前記カメラ(100)がアップダウン動作を行うミラー機構(102)を備えるカメラ(100)であって、前記光学部品が、アップ状態のミラー機構(102)を含むことを特徴とするクリーニング装置(1)である。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載のクリーニング装置(1)であって、前記クリーニング部材(3)が前記粘着部材(2)を保持する保持部(8)を有し、前記保持部(8)又は前記ガイド部(4)の一方にガイド溝(10)が設けられ、前記保持部(8)又は前記ガイド部(4)の他方に前記ガイド溝(10)と係合して該ガイド溝(10)に沿って移動可能な突状部(14)が設けられていることを特徴とするクリーニング装置(1)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリーニング作業を短時間で確実に行うことができるクリーニング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態のクリーニング装置について説明する。なお、以下に示す各図には、説明と理解を容易にするために、xyz直交座標系を設けた。この座標系は、クリーニング装置を装着するカメラにおいて、撮影者が光軸を水平にして横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、通常の撮影位置という)での撮影者から見て左側に向かう方向をxプラス方向、上側に向かう方向をyプラス方向、被写体に向かう方向をzプラス方向としたものである。そしてクリーニング装置及びその各部材の図においては、カメラに装着された際の上記xyz方向に対応する方向を、同様にxyz方向とする。
【0009】
図1は本実施形態のクリーニング装置1の斜視図である。クリーニング装置1は、後に詳述するが、カメラ内部のCCD等の撮像素子の被写体側に配置された、例えばLPFの表面の異物を除去する装置である。クリーニング装置1は、図示するように、その先端側(クリーニング装置1がカメラに装着された場合にLPF側となる側、z方向マイナス側)に異物を粘着させる粘着パッド2が取り付けられたクリーニング部材3と、クリーニング部材3をカメラ内において案内するガイド部材4と、クリーニング部材3及びガイド部材4をカメラのレンズマウントに取り付けるマウント部材5と、を備える。
【0010】
図2はクリーニング部材3の斜視図である。クリーニング部材3は、上述したようにその先端側に位置する粘着パッド2と、粘着パッド2を保持するパッドホルダ8と、パッドホルダ8の基端側(先端側に対する反対側、すなわちzプラス側、以下、他の部品についてもzプラス側を基端側という)に取り付けられたハンドル部9とを備える。
【0011】
パッドホルダ8は、幅広(x方向に長い)、且つ縦長(z方向に長い)の略直方体形状を有している。その先端部8aは、他の部分よりさらに幅広(x方向に長い)に形成されている。パッドホルダ8の短手方向(x方向)の両側面8bには、それぞれガイド溝10が形成されている。ここで、粘着パッド2の粘着面2aに対して直交する仮想の直線を直線Cとしたときに、ガイド溝10は、パッドホルダ8の基端側から(zプラス側)から側面8bに沿って直線Cと平行に先端側に向かって延びる第1の部分10aと、その第1の部分10aから連続するとともに直線Cに対して先端に向かうに従いyプラス方向に傾いている第2の部分10bと、その第2の部分10bに連続し、さらに先端側に向かって直線Cに対して平行に延びる第3の部分10cとを備える。
【0012】
粘着パッド2は、弾性部材で製造され、粘着性を有している。略直方体形状を有し、パッドホルダ8の先端部8aに固定される一面2bは、パッドホルダ8の先端面8dと略同形である。一方、その一面2bの反対側の面は、LPF104の表面に粘着される粘着面2aであって、その粘着面2aはyプラス方向に突き出して突起部2cを形成し、粘着面2aの面積は一面2bよりも大きくなっている。なお、この粘着面2aのy方向の幅は、粘着されるLPF104の表面のy方向の幅の半分よりもやや大きく、粘着面2aのx方向の幅は、粘着されるLPF104の表面のx方向の幅と略同一である。また、粘着パッド2の一面2bは、パッドホルダ8の先端面8dに両面テープや接着剤11により固定されている。
【0013】
ハンドル部9は、後述するようにパッドホルダ8をLPF側に押圧する際に使用者が把持する部分であり、パッドホルダ8の基端側にねじ12で固定されている。ハンドル部9の基端側は、パッドホルダ8の基端側よりも幅広(x方向に長い)に形成され、パッドホルダ8から幅方向(x方向)に突き出した両側部分のzマイナス側の面は、後に詳述するハンドル当接面9aを形成し、また、そのハンドル当接面9aには、ハンドル側ばね開口部9bが設けられている。
【0014】
図3はガイド部材4の斜視図である。ガイド部材4は、底部4aとその底部4aの両端においてz軸と平行且つy方向に立設された2つの側部4bとを有する。側部4bの内側には、内方に突き出した4つのガイドピン14が設けられている。また側部4bの外側には底部4aと略同一面上を延びるガイドレール15が設けられている。
【0015】
ガイド部材4の基端側には、側部4bとガイドレール15とに連続する壁部4cが形成されている。この壁部4cのzプラス側の面は、第1ガイド当接面4dを形成するとともに、ガイド側ばね開口部4eが設けられている。また、この壁部4cの上部(yプラス側)は底部4aと平行に延び、そのzマイナス側の面は第2ガイド当接面4fを形成している。さらにガイドレール15の基端側に、この第2ガイド当接面4fと同一面上にある第3ガイド当接面4gが形成されている。
【0016】
ガイド部材4の底部4aの裏側(yマイナス側)には、板状のロックばね16が取り付けられている。このロックばね16は、板状部材の一端部をL字に折り曲げL字部16aを形成し、また板状部分の一部をV字型に折り曲げてV字部16bを形成されたものである。ロックばね16は、L字部16aの先がガイド部材4の底部4aの基端側から突き出すようにしてガイド部材4にねじ止めされている。
【0017】
図4はマウント部材5の斜視図である。図示するようにマウント部材5は、カメラのマウントに結合される円形のマウント部18と、そのマウント部18の中央部に設けられたガイド挿入部19とを備える。マウント部18は、カメラのレンズマウントに対してバヨネット結合される部分である。ガイド挿入部19は断面矩形の角筒形状を有し、そのy軸に沿って延びる2つの対向する内側面には、それぞれz方向に延びる第1ガイド溝19aと、第1ガイド溝19aのyマイナス側を第1ガイド溝19aと平行に延びる第2ガイド溝19bとが設けられている。ガイド挿入部19の矩形の開口部の基端側における上下(y方向のプラス側とマイナス側)の縁部は、内側に突き出し、上述のロックばね16のV字部16bが係止されるばね係止部19cが形成されている。またガイド挿入部19のzプラス側端面は、挿入部当接面19dを形成する。
【0018】
図5はクリーニング装置1の全体を示した側面図である。クリーニング装置1を組み立てる場合、まず、ガイド部材4の内部に、クリーニング部材3のガイド溝10がガイド部材4のガイドピン14に係合するようにしてクリーニング部材3を挿入する。その際、ハンドル部9のハンドル側ばね開口部9bとガイド部材4のガイド側ばね開口部4eとの間にばね部材21を挟んで固定する。これにより、クリーニング部材3がガイド部材4に弾性的に固定される。
【0019】
クリーニング部材3が嵌め込まれたガイド部材4を、ガイドレール15がマウント部材5の第2ガイド溝19bを通るようにしてzプラス側からマウント部材5のガイド挿入部19に挿入する。その際、ロックばね16のV字部16bがばね係止部19cを乗り越えると、ばね係止部19cによってV字部16bがロックされ、ガイド部材4のマウント部材5に対するzプラス方向への移動が制限される。また、ガイド挿入部19の挿入部当接面19dと、ガイド部材4の第2ガイド当接面4f及び第3ガイド当接面4gとが当接することにより、ガイド部材4のマウント部材5に対するzマイナス方向への移動も制限される。これにより、ガイド部材4がマウント部材5に保持される。
【0020】
この状態において、ハンドル部9が押圧されていない場合、ばね部材21によりハンドル部9のハンドル当接面9aとガイド部材4の第1ガイド当接面4dとは一定の距離が保たれる。このとき、図5に示すように、ガイド部材4の先端側のガイドピン14aはガイド溝10の第3の部分10cに位置し、基端側のガイドピン14bはガイド溝10の第1の部分10aに位置する。ガイド溝10の第3の部分10cと第1の部分10aとは、粘着面2aと直交する直線Cと平行で互いに一定の距離d離間している。一方、ガイドピン14はマウント部材5の軸線に沿ってy方向の同一位置に配置されている。したがって、先端部のガイドピン14aと基端部のガイドピン14bとの中心間の距離をz1とすると、クリーニング部材3は、ガイド部材4に対してsinθ=d/z1の関係を有するθだけ傾いた状態となっている。
【0021】
次に、クリーニング装置1が装着されるカメラ100について説明する。図6は、クリーニング装置1が装着されるカメラ100のミラーボックス101付近の断面図であり、カメラ100全体を点線で示す。カメラ100は、交換レンズが着脱可能な一眼レフカメラである。カメラ100は、その略中央部に配置されたミラーボックス101と、そのミラーボックス101の内部に配置されたメインミラーユニット102と、シャッタユニット103と、LPF104と、撮像素子105と、交換レンズを装着するレンズマウント106とを備えている。
【0022】
メインミラーユニット102はクイックリターンミラーとも呼ばれ、交換レンズを通過した被写体光の光軸を屈曲させるために、ミラーボックス101内に、回転可能に設けられたミラーユニットである。図6で示す観察時においてメインミラーユニット102は、光軸A1を屈曲させて光軸A2とし、図示しないペンタプリズム等に導くために、光軸A1に対して約45度傾いた位置に配置されている。メインミラーユニット102は、レリーズ操作に応じて、退避位置(図1に破線で示す位置)に移動し、被写体光を撮像素子105方向に導くことが可能になる。
【0023】
シャッタユニット103は、シャッタ103aとシャッタ103aを覆うシャッタ基板103bとを備える。シャッタ103aは、レリーズ操作に応じて開閉し、開いたときに被写体像が撮像素子105に結像可能となる。図6はシャッタが開いた状態を示す。
【0024】
LPF104は撮像素子105が取得する画像上におけるモアレの発生を防止するものである。また、撮像素子105は、撮影光学系により結像された被写体像を撮像する例えばCCDである。LPF104は撮像素子105の被写体側に配置され、撮像素子105とLPF104との間は密封されて異物が混入しないように防塵対策がなされている。
【0025】
カメラ100にクリーニング装置1を装着した状態について説明する。まず、カメラ100において、例えば図示しない操作部を操作して撮影状態と同様にメインミラーユニット102を退避状態させる。そして、クリーニング装置1のマウント部材5をカメラ100のレンズマウント106に装着する。図7はメインミラーユニット102を退避位置にして、クリーニング装置1をカメラ100に取り付けた状態を示した断面図である。クリーニング装置1のマウント部材5がカメラ100のレンズマウント106に装着し、マウント部材5にガイド部材4及びクリーニング部材3を取り付けると、ガイド部材4は光軸A1と略平行に配置される。クリーニング部材3は、上述したように押圧されていない状態でガイド部材4に対して角度θだけ傾き、図示するように、クリーニング部材3の先端はyマイナス方向に下がった状態になる。クリーニング部材3の粘着パッド2は、クリーニング部材3の基端側と比べて下方(yマイナス方向)に位置し、メインミラーユニット102及びシャッタユニット103に対してかなり下方に位置することになる。
【0026】
この状態で、ハンドル部9を押し込んでいくと、ガイド溝10がガイドピン14を滑りながら移動する。そのとき、先端側のガイドピン14aが係合するガイド溝10は、第3の部分10cから第2の部分10bへと移動し、クリーニング部材3の光軸A1に対する傾きが徐々に小さくなる。図8は図7の状態からクリーニング部材をLPF104側に移動させたときの断面図である。また図9は図8の状態におけるクリーニング装置1のみ示した側面図である。図9に示すように、第1の部分10aが先端側のガイドピン14aと係合する位置に来ると、クリーニング部材3は光軸A1と垂直になる。そして粘着パッド2の突起部2cの先端は、図7及び図9の矢印Bに示すように、メインミラーユニット102及びシャッタユニット103を回避する軌跡を描いて図7及び図8に示すようにLPF104の上端まで移動し、粘着パッド2がLPF104の表面と平行となり、LPF104の約上半分の領域に粘着する。このとき、粘着面2aのy方向の幅は、粘着されるLPF104の表面のy方向の幅の半分よりもやや大きく、粘着面2aのx方向の幅は、粘着されるLPF104の表面のx方向の幅と略同一であるため、粘着パッド2はLPF104の表面の上半分よりも若干下まで含む領域と粘着する。
【0027】
このように粘着パッド2の突起部2cの先端はメインミラーユニット102及びシャッタユニット103を回避するように移動するため、これらの部品と接触することがない。また、この際、図9に示すように、ハンドル部9のハンドル当接面9aがガイド部材4の第1ガイド当接面4dと当接し、クリーニング部材3のzマイナス方向の移動が抑制されるため、ハンドル部9を押しても図9の状態からそれ以上LPF104側に移動せず、LPF104に過度の力が加わることなく、LPF104の破損が防止される。
【0028】
LPF104の表面と粘着パッド2の粘着面2aが接触すると、LPF104の表面に付着している異物は粘着パッド2の粘着力が大きいため、粘着パッド2に転写される。その後、ハンドル部9をLPF104と逆方向に引くと、クリーニング部材3は粘着パッド2から離れる方向に移動する。また、LPF104の表面と粘着パッド2の粘着面2aとの間の粘着力が小さい場合は、ハンドル部9から手を離すことのみで、ばね部材21の復元力によりクリーニング部材3は粘着パッド2から離れる方向に移動する。この際、粘着パッド2においては、パッドホルダ8に接着されている部分にまずLPF104の表面から離れる方向の力が加わり、この部分がLPF104の表面から持ち上げられる。一方、粘着パッド2のパッドホルダ8に接着されていない部分は、まだLPF104の表面と粘着している状態にある。しかし、クリーニング部材3がLPF104の表面から離れる方向に移動するに従い、粘着面2aのLPF104の表面から離れずに粘着している部分も徐々に離れていく。このように、粘着面2aがLPF104の表面から、全体的に一度に離れるのではなく、端部より徐々に離れるため、粘着面2aの面積が大きい場合でも少ない力で引き離すことができる。
【0029】
クリーニング部材3がLPF104の表面から離れる場合に、ガイドピン14とガイド溝10によってクリーニング部材3は上述したLPF104の表面に近づく矢印Bで示した軌跡と逆の軌跡を描いてLPF104から離れる。すなわち、離れる際にも、メインミラーユニット102やシャッタユニット103等を回避するように移動する。したがって、これらの部品と接触することがない。
【0030】
その後、ロックばね16を手で押し上げることで、ロックばね16とばね係止部19cとの係合を解除し、クリーニング部材3をガイド部材4から引き出し、LPF104の表面の略上半分の領域に付着している異物が転写された粘着パッド2を、例えば、粘着パッド2の粘着力より高い粘着力を有するクリーニングシートに粘着させる。これにより粘着パッド2は清浄になり、次のクリーニングが可能となる。
【0031】
次に、LPF104表面の下部の清掃について説明する。ガイド部材4から引き出されて粘着パッド2の異物が除去されたクリーニング部材3を光軸周りに180度回転させて(上下を逆にして)再びマウント部材5へ挿入する。このときガイドレール15はLPF104の表面の上半分のクリーニングの際に用いた第2の溝19bではなく、第1の溝19aに挿入する。図10はクリーニング装置をLPF104の下部をクリーニングするようにカメラに取り付けた状態を示した断面図である。
【0032】
図10の押圧されていない状態でクリーニング部材3は、光軸A1に対して、上述のLPF104の表面の上半分をクリーニングする場合と、反対の方向に角度θだけ傾き、図示するように、クリーニング部材3の先端は基端側と比べてyプラス方向に上がっている。したがって、粘着パッド2の突起部2cがシャッタユニット103等のミラーボックス101の下方に配置された他部品と接触することがない。
【0033】
この状態で、ハンドル部9を押し込んでいくと、ガイド溝10がガイドピン14を滑りながら移動する。そのとき、先端側のガイドピン14aが係合するガイド溝10は、第3の部分10cから第2の部分10bと移動し、クリーニング部材3の光軸A1に対する傾きが徐々に小さくなる。図11は移動後のクリーニング部材3の位置を示した断面図である。粘着パッド2の突起部2cの先端は、図10の矢印Cに示すように、シャッタユニット103等のミラーボックス101の下方に配置された他部品を回避する軌跡を描いて図11で示すようにLPF104の下端まで移動し、粘着パッド2がLPF104の表面と平行となり、LPF104の下半分の領域に粘着する。このとき、粘着パッド2の面積はLPF104の下半分の面積より大きいため、粘着パッド2はLPF104の表面の下半分よりも若干上まで含む領域に粘着する。上記した上部のクリーニング時に、LPF104の上半分より下まで延びる領域がすでにクリーニングされ、この下部のクリーニング時に、LPF104の下半分より上まで延びる領域がクリーニングされるので、中央部においてオーバラップする領域が形成され、LPF104の表面上において隙間を生じることなく全体をクリーニングすることができる。
【0034】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、クリーニング部材3にガイド溝10を設け、ガイド部材4にガイドピン14を設けた。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、クリーニング部材にガイドピンを設け、ガイド部材にガイド溝を設けてもよい。
(2)また、本実施形態では、LPF104の表面を上部と下部との2回でクリーニングしたがこれに限定されず、例えば左右の2回でクリーニングしてもよい。
(3)本実施形態では、粘着パッド2の上端(クリーニング時に光軸A1から離れる側の端部)を突起させたがこれに限定されず、突起部を設けない形状であってもよい。
(4)本実施形態では、粘着パッド2をパッドホルダ8に全面でなく半分の面積のみ固定したが、これに限定されず、粘着力が弱い場合は、全面で接触させてもよい。また粘着面をLPF104の表面の端部より引き離すため構成は、他の構成であってもよい。
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態のクリーニング装置の斜視図である。
【図2】クリーニング部材の斜視図である。
【図3】ガイド部材の斜視図である。
【図4】マウント部材の斜視図である。
【図5】クリーニング装置の側面図である。
【図6】クリーニング装置が装着されるカメラのミラーボックス付近の断面図である。
【図7】クリーニング装置をカメラに取り付けた状態を示した断面図である。
【図8】図7の状態からクリーニング部材をLPF側に移動させた後の断面図である。
【図9】図8の状態におけるクリーニング装置のみの側面図である。
【図10】クリーニング装置をLPFの下部クリーニング用にカメラに取り付けた状態を示した断面図である。
【図11】図10の状態からクリーニング部材をLPF側に移動させた後の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1:クリーニング装置、2:粘着パッド、2c:突起部、3:クリーニング部材、4:ガイド部材、4d:第1ガイド当接面、5:マウント部材、8:パッドホルダ、9:ハンドル、9a:ハンドル当接面9a、10:ガイド溝、14:ガイドピン、100:カメラ、102:メインミラーユニット、103:シャッタユニット、104:LPF、105:撮像素子、106:レンズマウント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ内部の撮像素子又は撮像素子の被写体側に配置された光学部材の一面に付着した異物を除去するクリーニング装置であって、
粘着部材を先端部に有するクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を、前記カメラ内部における撮影光路近傍に配置された光学部品を回避するように光軸方向に移動させ、前記粘着部材を前記一面まで案内するガイド部と、
を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニング装置であって、
前記クリーニング装置が前記カメラのレンズマウントに装着される装着部を備え、
前記クリーニング部材が、前記装着部に対して光軸方向に移動可能に取り付けられることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクリーニング装置であって、
前記ガイド部は、前記クリーニング部材を、前記粘着部材の一端が前記光学部品よりも光軸側を通過し、その後前記一面の端部に向かって光軸から離れる方向に移動するように案内することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のクリーニング装置であって、
前記クリーニング装置が、前記一面を光軸を通る直線で2分割した一方の領域と他方の領域のそれぞれを別個にクリーニングすることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項4に記載のクリーニング装置であって、
クリーニングされる前記一方の領域と前記他方の領域とが、一部重複していることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のクリーニング装置であって、
前記カメラのレンズマウントに装着される装着部を備え、前記装着部を前記レンズマウントに装着した後、該装着部を前記レンズマウントから取り外すことなく、前記クリーニング部材により前記一方の領域と前記他方の領域との両方をクリーニング可能であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のクリーニング装置であって、
前記粘着部材の、前記一面を越えた光軸方向への移動を制限する制限機構が設けられていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のクリーニング装置であって、
前記クリーニング部材を、前記一面へ向かう方向と反対方向に付勢する付勢部材を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のクリーニング装置であって、
前記粘着部材が、光軸に対して垂直な面に沿って光軸から離れる方向に突出していることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のクリーニング装置であって、
前記カメラがアップダウン動作を行うミラー機構を備えるカメラであって、前記光学部品が、アップ状態のミラー機構を含むことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のクリーニング装置であって、
前記クリーニング部材が前記粘着部材を保持する保持部を有し、
前記保持部又は前記ガイド部の一方にガイド溝が設けられ、前記保持部又は前記ガイド部の他方に前記ガイド溝と係合して該ガイド溝に沿って移動可能な突状部が設けられていることを特徴とするクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−4964(P2009−4964A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162450(P2007−162450)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】