クリーンブース
【課題】内部の清浄度を大幅に落とさず、コンパクトさを大きく損なわず、比較的短時間で内部の塗工装置のメンテナンスを行うことを可能とする、連続走行するシート状物を塗工可能なクリーンブースを提供する。
【解決手段】実質的に水平方向に走行するシート状物4を連続的に通過させるための入口2および出口3を有し、走行するシート状物に塗工を行う塗工装置5を内部に有する非密閉型のクリーンブース1の壁面に配された扉8と、塗工装置を扉近傍まで移動させる移動手段6とを有する。
【解決手段】実質的に水平方向に走行するシート状物4を連続的に通過させるための入口2および出口3を有し、走行するシート状物に塗工を行う塗工装置5を内部に有する非密閉型のクリーンブース1の壁面に配された扉8と、塗工装置を扉近傍まで移動させる移動手段6とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行するシート状物が連続的に通過する、内部を清浄にすることが可能なクリーンブースに関する。より詳しくは、内部に塗工装置を有し、高清浄度のもとで塗工を行うことが可能なクリーンブースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗工技術はディスプレイ材料、機能性フィルム等の映像表示分野、磁気テープ類等の情報記録分野、インクジェット用紙等の紙分野、自動車の車体塗装分野、薄膜電池や電子回路基板等の電気・電子関連分野、眼鏡レンズなどの光学関連分野、撥水・防水・消臭といった機能繊維分野など、非常に多くの分野で活用されており、その要求性能も年々高まっている。特にハイテク産業においては、製品中への微小な塵・ホコリの混入は品質上や外観上の致命的な欠陥になりうるため、清浄度の高い環境での塗工が必須条件となってきている。
【0003】
清浄度の高い環境を作り出すためには、導電性の部材によって塗工工程を外界から仕切り、その内部に清浄空気を送り込むことで、仕切り内部の清浄度を良くすることができるクリーンブースが用いられる。更には塗工工程を無人化することが望ましい。
【0004】
このクリーンブースの形状は、被塗工物のサイズ、塗工方法、清浄空気の流動状態等により様々であるが、好ましくはコンパクトなサイズにする方が経済的である。
【0005】
例えば、シート状物への塗工方法のひとつとして、シート状物上に塗工液を供給し、高速エアを吹き付けることで塗工液を薄膜化するエアナイフ塗工法がある。この塗工法においては、高速エアを吹き出すリップ部への塗工液の付着やリップクリアランスが変わることで、膜厚が変動する恐れがあるため、塗工終了後または塗工不具合時には、一旦塗工工程をとめて、リップ部の拭き取りやクリアランス調整といったメンテナンスを行う必要がある。このメンテナンス性を考慮すると、クリーンブースを人が侵入できるサイズにするか、クリーンブースをコンパクトなサイズとしてメンテナンスをする際には塗工装置をクリーンブース外に取り出すようにするしかなかった。
【0006】
人がクリーンブース内に入ってメンテナンスをする場合には、衣服等に付着している塵・ホコリの混入が懸念され、また、塵・ホコリの混入を防ぐためにクリーンブースの前室にエアーシャワー等の付属設備が必要となり、清浄度を保つ面や経済的な面においてデメリットとなる。
【0007】
また、メンテナンスをする際に塗工装置を外に取り出す場合においては、クリーンブースの一面または数面を開放して取り外す必要があり、その結果、クリーンブース内部の清浄度が大幅に悪くなり、所定の清浄度へと復帰するまでに時間を要する。さらに、通常、実質的に水平方向に走行するシート状物への塗工装置は、シート状物とのクリアランスを調整できる手段(シート状物に対し、垂直に移動可能な昇降手段)を持っているが、この手段と塗工装置を取り出す手段(横方向に取り出す)を併せ持つ手段は、その構造が複雑となると共に、塗工装置を取り出す方向に塗工装置の大きさ(長さ)分のスペースまでも必要となる。また、比較的小型で人の手による取り出し及び取り付けが可能な塗工装置においても、その取り出しおよび取り付けに係わる作業には比較的長い時間を要していた。
【0008】
これまで、特許文献1に示されるように、クリーンブースの床面が塗料汚れするのを防止し、床面の洗浄作業の負荷・作業時間を軽減する方法については述べられてきたが、塗工装置自体のメンテナンスをクリーンブース内の清浄度を大幅に落とすことなく行うことができ、且つメンテナンスに要する時間を軽減する方法については提案されていなかった。
【特許文献1】特開平7−236844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、内部の清浄度を大幅に落とすことなく、コンパクトさを大きく損なうことなく、かつ比較的短時間で内部の塗工装置のメンテナンスを行うことを可能とする、連続走行するシート状物に塗工を行う塗工装置を内部に有するクリーンブースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討・実験を繰り返した結果、塗工装置上部のクリーンブース壁面の空いたスペースに、クリーンブース外部より内部へアクセス可能な扉を設け、扉近傍まで塗工装置を移動させる手段を設けることにより、塗工装置のメンテナンスを行うことが可能となり、塗工装置をクリーンブースの外に取り出すことなくメンテナンスをすることができることを見出した。さらに、クリーンブース内部清浄用クリーンエアーを供給する位置を、扉を開放した際でもクリーンエアーがエアーカーテンの役割をなして塵・ホコリを混入させないよう考慮することで、クリーンブース内部の清浄度を大幅に落とすことなくメンテナンスを行いうることも見出した。
【0011】
本発明はこれら知見に基づいてなされたものである。すなわち本発明により、
実質的に水平方向に走行するシート状物を連続的に通過させるための入口および出口を有し、走行するシート状物に塗工を行う塗工装置を内部に有する非密閉型のクリーンブースにおいて、
壁面に配された扉と、該塗工装置を該扉近傍まで移動させる移動手段とを有することを特徴とするクリーンブースが提供される。
【0012】
前記塗工装置がシート状物が走行する位置の上方に設けられ、
塗工位置の上方に凸部を有し、
前記扉が該凸部に設けられ、
前記移動手段が塗工装置を昇降させる昇降手段を有する上記クリーンブースが好ましい。
【0013】
このクリーンブースが、前記凸部の上部からクリーンエアーを供給するクリーンエアー供給手段を有することが好ましい。
【0014】
このクリーンブースが、シート状物が走行する位置より下方に排気口を有することが好ましい。
【0015】
前記塗工装置がエアナイフを有する上記クリーンブースが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のクリーンブースによれば、実質的に水平方向に走行するシート状物への塗工装置のメンテナンスを、クリーンブースの内部に人が侵入することなく、従って内部の清浄度を落とすことなく行うことができるとともに、塗工装置をクリーンブース外へ取り外すことなくメンテナンスを行うことができるため、メンテナンスに要する時間も短縮することができ、更には、クリーンブースのコンパクトさが確保される。そのため、本発明のクリーンブースは経済的にも有用であるとともに、既存のスペース的に狭い工程内に塗工装置を導入する場合においても非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を用いて本発明を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明のクリーンブースの一例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向より見た模式的側断面図である。この図に示すように、このクリーンブース1は直方体の一部が上方に凸となる構造を有している。
【0019】
シート状物4(被塗工物)は実質的に水平方向に走行し、クリーンブース1の相対する面にそれぞれ配された入口2と出口3の開口部を通過できるようになっている。
【0020】
ここで、「実質的に」水平方向に走行させるとは、僅かに傾いた方向で走行する場合であっても、塗工を行った際に、水平方向の場合と同様に塗膜の厚さが均一に得られるのであれば、そのような場合をも含む意味である。
【0021】
入口2と出口3の開口の大きさは、シート状物4との接触を回避する観点から、シート状物4の走行方向に垂直な断面の大きさより上下左右それぞれ20mm以上広くすることが好ましく、50mm以上広くすることがより好ましく、またクリーンブース1内の清浄度を保つ観点から、シート状物4の走行方向に垂直な断面の大きさより上下左右それぞれ300mm以下広くすることが好ましく、100mm以下広くすることがより好ましい。ここで、上下とはシート状物4の鉛直方向をいい、左右とはシート状物走行方向に垂直な水平方向をいう。
【0022】
また、クリーンブースを構成する材質には特に制限は無く、例えば、ガラス、樹脂、金属等のいずれか1種または複数を組み合わせて使用できる。金属としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。導電性の低い材質を用いる場合は、ブース内側にあたる面に帯電防止処理を施すこともできる。
【0023】
被塗工物であるシート状物4の材質には特に制限は無く、例えば、樹脂、金属等を使用できる。金属としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。また、これらの塗工側の表面を研磨処理したものも使用できる。シート状物が水平状態での走行を維持するためには、高い剛性を有することが好ましい。特に金属製のシート状物は、一般に、薄くても比較的高い剛性を有するので好ましい。シート状物の厚さは、0.1mm以上であることが望ましい。また、シート状物4の水平方向のフラット性を保つため、シート状物4の走行方向に沿って張力をかけることもできる。
【0024】
塗工装置5は、シート状物4の走行方向に対して、クリーンブース1のほぼ中央部に位置しており、塗工装置を扉8近傍まで移動させる移動手段として昇降手段6を備え、さらに回転手段7を有している。ここで、扉近傍とは扉を開きクリーンブース外部より内部の塗工装置のメンテナンスを行うことが可能な近さのことであり、塗工装置のメンテナンスを行うべき部分を扉開口部分より直線距離で300mm以内にまで近づけることが好ましい。
【0025】
昇降手段6としては、塗工装置5を昇降可能な公知の機構を適宜採用できる。例えば、ネジを使用して手動にて昇降させる機構でも構わないし、塗工装置5の重量やクリーンブース内部の清浄度を考慮するとエアシリンダや電動モータを使用して、自動で昇降させる機構を用いることもできる。
【0026】
また、回転手段7は、塗工装置5の種類によってメンテナンス項目がまちまちであるため必要というわけではないが、塗工装置5のあらゆる面をメンテナンスする必要がある場合などには有用である。回転手段7には塗工装置を回転させることのできる公知の機構を適宜採用できる。例えば、ベアリング、スプロケット、チェーン及び電動モータを使用して回転させることができる。
【0027】
塗工装置5の大きさがクリーンブースの大きさに対して小さく、クリーンブース内で塗工装置5を水平方向に移動可能な場合においては、移動手段としては、昇降手段とともに、シート状物走行方向に沿った水平な方向に塗工装置を移動させる手段を備えてもよい。また昇降とシート状物走行方向に沿った水平な方向の移動とを同時に行いうる手段を採用することもできる。
【0028】
ここで、メンテナンスとは塗工装置先端(リップ部)の拭き取り作業、リップクリアランスの調整作業、塗工装置に付着したカレット等異物の除去作業等のことである。
【0029】
図1によると、塗工装置5はシート状物が走行する位置の上方に設けられ、塗工位置の上方においてクリーンブース1の天井が高くされた凸部1aが設けられる。つまり、シート状物4の端部から中央部に向かう方向において、クリーンブースの側面形状が凸型となっている。凸部は底面が開口している直方体状で、内部は中空であり、塗工装置が内部を移動可能となっている。この凸部1aのシート状物4の上流側または下流側にある側面には、メンテナンスを行うための扉8を有している。
【0030】
凸部1aの形状は図1に示すように直方体が基本構造であるが、図2〜5に示すように側面の一部又は全部をテーパー形状としてもよい。図2、図3はそれぞれシート状物走行方向に対し、垂直な水平方向からクリーンブースの例を見た模式的側断面図であり、図4、図5はそれぞれシート状物走行方向に沿った方向からクリーンブースの例を見た模式的側断面図である。また、クリーンブース全体をシート状物走行方向に対し、垂直方向から見た側面形状においては、凸型だけではなく、図6〜7にそれぞれ示すようにL型、反L型としてもよい。
【0031】
直方体構造とした場合の凸部1aの大きさは、塗工装置5の大きさと移動手段用の装置により適宜決まってくるため、一概に大きさが規定されるわけではないが、クリーンブース全体のサイズをコンパクトにした方が経済的であることから縦方向の大きさは500〜1500mm、横方向の大きさは、シート状物4又は塗工装置5のどちらか大きい方より150〜500mm大きくし、幅方向の大きさは、扉8の開口部より塗工装置5のメンテナンスを容易にでき、且つ塗工装置5の移動手段を簡素化するという観点から1000mm以内とすることが好ましい。ここで、縦方向の大きさとは凸部以外のクリーンブースの天井面から凸部天井面までの長さをいい、横とはシート状物走行方向に垂直な水平方向をいい、幅とはシート状物走行方向に沿った水平方向をいう。
【0032】
扉8の形状は四角形が基本構造となるが、角部にRを取ってもよい。また、塗工装置の種類やメンテナンス部分に応じて扉の数を複数個設けてもよい。
【0033】
扉の数を1個とし、塗工装置の全面をメンテナンスするとした場合の扉8の開口部の大きさは、塗工装置5の大きさとメンテナンスの作業性により適宜決めることができるが、クリーンブース1内の清浄度が下がることを抑制する観点から、扉8の開口部の縦方向の大きさは、塗工装置5の縦方向及び幅方向の大きさのうち大きい方の大きさより50〜400mm広くなる大きさ、横方向の大きさは、塗工装置5の横方向の大きさより50〜200mm広くすることが好ましい。
【0034】
本発明のクリーンブース1内で行うシート状物4への塗工方法としては、シート状物を損傷する危険性が低く、塗工液の回収を要せず、また、塗工液の飛散が少ないという観点から、エアナイフ塗工法が好ましいが、これ以外にもロールコート、ダイコート、スプレーコートといった汎用塗工方法でもよい。本発明において、塗工装置とは、シート状物がある装置の下部を通過した時点で、得ようとする塗膜がシート状物上に塗工される装置のことを指し、エアナイフ塗工法においてはエアナイフ、ロールコートの場合はロール、ダイコートの場合はダイ、スプレーコートの場合はスプレーノズルを指す。また、塗工装置については、前記各種塗工装置の形状をその塗工装置が包括される最小の直方体とみなし、その場合において、縦とは鉛直方向をいい、横とはシート状物走行方向に垂直な水平方向をいい、幅とはシート状物走行方向に沿った水平方向をいう。ここで、スプレーコートのようにシート状物走行方向に垂直な水平方向の一直線上に数点スプレーノズルが配置されている場合においては、塗工装置の形状を全てのスプレーノズルを包括する最小の直方体とみなし、縦横幅を規定する。また、エアナイフやダイであればリップ先端のみをメンテナンスするなど塗工装置の一部分だけをメンテナンスする場合の扉8の大きさは、塗工装置の縦横幅の大きさには規定されず、例えば、手が入るサイズ(メンテナンスが可能なサイズ)からクリーンブース1内の清浄度が良好に保たれる最大のサイズまで適宜決められる。
【0035】
扉8の位置は、本発明の効果が得られるようにクリーンブース壁面に適宜選ぶことができる。シート状物が実質的に水平に走行する場合は、塗工装置5の上方に配設することが、移動手段の複雑化を抑える観点から好ましい。また、移動手段の複雑化を抑える観点から、塗工する際の塗工装置5の位置から近い方が好ましい。メンテナンスの際に塗工装置を塗工時の位置から扉近傍まで移動させるが、この移動距離が2m以内であることが好ましい。また、扉8及び後述する高性能フィルタ9の設置位置はクリーンブース1内の清浄度が低下しないように考慮して適宜決められる。
【0036】
扉8の固定方法としては、扉をクリーンブースに固定できる公知の方法を適宜採用できる。内部の清浄性を保つ観点から気密性をもって扉を固定し、またメンテナンスの容易性の観点から扉は容易に開閉可能な構造とすることができる。例えば、ボルトにてクリーンブース1の本体に固定するとともに蝶番を取り付けることによって開閉を容易化し、扉とクリーンブース本体との間の機密性確保のために、扉8の内面に例えばテフロン系ソフトシールを使用するのが簡便であり、好ましい。尚、小さい扉であれば、クランプにて固定することもできる。
【0037】
扉8の材質には特に制限は無く、クリーンブースを構成する材質と同様に、例えば、ガラス、樹脂、金属等のいずれか1種または複数を組み合わせて使用できる。金属としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。導電性の低い材質を用いる場合は、ブース内側にあたる面に帯電防止処理を施すこともできる。
【0038】
以上説明した塗工装置5の上方に凸部を有し、且つ凸部に扉8を有することの効果としては、通常、塗工装置5の上方の天井面には塗工部分の清浄度を高めるためにクリーンエアーを供給する手段を設置しているため、メンテナンスをするための扉の設置場所が塗工装置5より離れてしまい、移動手段が複雑化する。しかし、塗工装置5の上方に凸部を有することで、塗工装置5を取り外すことなくメンテナンスするための扉8を塗工装置5の近傍に設置できるスペースを生み出すことができ、また、扉8を凸部に有することで移動手段の複雑化も抑えることができる。
【0039】
凸部1aの天井面に、高性能フィルタ9を設置し、クリーンブース1へクリーンエアーが供給されることが好ましい。高性能フィルタとは、直径3μmの粒子を99.97%以上捕集可能なフィルタのことを言う。高性能フィルタとしては、所望の清浄度を得ることのできる公知のフィルタから適宜選んで用いることができるが、例えばHEPAフィルタ(High Efficency Particle Air Filter)やULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)、FFU(Fan Filter Unit)等を使用できる。また、凸部1aの天井面からのクリーンエアー風量だけでは、クリーンブース内の清浄度が規定値まで達しない場合には、クリーンブース1の他の部分の天井にも高性能フィルタ9を設置しても良い。なお、図中の破線矢印は、エアーの流れ方向を表す。
【0040】
凸部の上部からクリーンエアーを供給するクリーンエアー供給手段は、上記高性能フィルタと、高性能フィルタに空気を送る送気手段とで形成することができる。送気手段は例えば大気から空気を取り込んで高性能フィルタに送るダクトおよびファンで形成することができる。
【0041】
高性能フィルタから供給するクリーンエア−の風量は、クリーンブース内の要求される清浄度により変わってくるが、清浄度と換気回数の間には経験則による関係があり、米国連邦規格(Fed.Std.209E)にて約1000個/ft3(約35000個/m3)の清浄度を要求する場合には、換気回数を100〜600回となる風量とすることが好ましい。ここで換気回数とは、1時間あたりにクリーンブース内を何回換気可能か示すもので、必要風量〔m3/min〕=クリーンブース内容量〔m3〕×換気回数〔回/h〕÷60〔min/h〕により求められる。また、前記経験則による換気回数は、クリーンブースの形状、クリーンエアーの供給方法により変わり得るので、必ずしもこの限りではない。
【0042】
凸部1aの天井面に高性能フィルタ9を設置し、これを通してクリーンエアーをクリーンブース内に供給し、扉の内面に沿ってクリーンエアーを流すことにより、扉8を開放した時でも扉付近のクリーンエアーがエアーカーテンの役割をなし、塵やホコリの侵入を防止することができる。また、クリーンブースの天井面全体が平面であって相当の高さを有する場合、塗工装置の上方に高性能フィルタを設置してクリーンエアーを供給してもクリーンエアーはクリーンブース内で拡散してしまい、塗工部分の清浄度を高くするためにはクリーンエアーの風量を上げなければならないが、本発明のように、凸型形状したクリーンブースにおいて、凸部1aの下方に塗工装置5を設置している場合、高性能フィルタ9を通して供給されるクリーンエアーの全風量が塗工部分に供給されることになるため、塗工部分の清浄度が効率的に高くなり、製品への塵・ホコリの混入を防ぐことができる。
【0043】
クリーンブース1に供給されたクリーンエアーは、シート状物4面上を流れ、シート状物4がクリーンブース1を通過する入口2及び出口3より排気される。また、シート状物4が走行する水平面より下方に排気口を設けてもよい。例えば、シート状物が走行する水平面より下方にクリーンブース1の水平方向全域に亘って多孔板或いはグレーチング等の通風可能な板10を設け、板10下側の底部空間11の底面または側面部の一方あるいは双方に排気口12を設けることができる。このような構成にすることで、クリーンエアーは、シート状物4とクリーンブース側面1b(図8参照)の隙間を通り、板10を介して底部空間11に入り、排気口12より排気することができる。
【0044】
排気口を設ける場合、図示していないが、排気口12と高性能フィルタ9をダクトにて連結し、連結したダクト経路にファンを設けることで、クリーンエアーを循環利用することも可能である。循環利用する場合、高性能フィルタ9に供給されるエアがワンパスの場合に比べてクリーンであるため、高性能フィルタ9にて異物が捕集される割合が減り、その分、差圧が上がりにくくなるため、高性能フィルタ9の交換周期が長くなるといったメリットがある。
【0045】
ここで、シート状物4とクリーンブース側面1bの隙間は、クリーンブース全体のサイズをコンパクトにした方が経済的であることから300mm以下とすることが好ましい。
【0046】
以上説明した本発明のクリーンブースにより、クリーンブース1内の清浄度を大幅に落とすことなく、塗工装置をメンテナンスすることが可能になるとともに、クリーンブース外へ塗工装置を取り出す必要性も無いため、メンテナンスに要する時間も削減可能となる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0048】
<実施例1>
図8〜10に本実施例で使用したクリーンブースを図示する。図8は平面図、図9は図8中の矢印A方向から見たシート状物走行方向の垂直断面図、図10は図8中の矢印B方向から見た側面図である。ただし、側面板1cは後述する比較例1で用いるために設置したもので、本実施例では終始閉じたままにした。側面板1cの大きさは、設置時の水平方向の幅q、鉛直方向の高さrで示され、以下の通りである。
【0049】
図に示される各寸法はa=3000mm、b=1100mm、c=700mm、d=600mm、e=600mm、f=150mm、g=200mm、h=250mm、i=100mm、j=150mm、k=800mm、l=100mm、m=100mm、n=100mm、o=900mm、p=400mm、q=500mm、r=750mmであり、クリーンブース内容量は約2.5m3である。なお、説明の都合上、図面は必ずしも正確に寸法を示すものではない。
【0050】
上記クリーンブースを図11に示すエンドレスベルトを備えた装置14(全長6m、周長15m)に設置した。クリーンブース内にて塗工された塗工部は、クリーンブース下流側に設置してあるUV照射装置15にて硬化され、プーリ16部分でエンドレスベルトより剥離される。
【0051】
シート状物4としては、鏡面研磨されたエンドレスベルトであり、ベルト幅700mm、厚さ0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼板を用い、油圧により3.0×107Paの張力を与えた。塗工装置としては、縦75mm、横780mm、幅40mmのエアナイフ5をクリーンブース中央部に設置し、シート状物4とエアナイフ5との間のクリアランスを5mm、エアナイフ角度をシート状物4の走行方向に対し、鉛直下向きよりも上流側に5°傾けてなるように配した。高性能フィルタ9は外形寸法が縦292mm×横915mm×幅610mm(クリーンエアー噴出し面積=横895mm×幅590mm)のHEPAフィルタ(商品名:アブソリュート・フィルタ(HEPAフィルタ)、近藤工業(株)社製)とし、凸部1aの天板に横895mm×幅590mmの開口部を設け、その上にHEPAフィルタを天板とボルトナットにて接続した。また、シート状物4の下部に配した通風可能な板10は、オーステナイト系ステンレス鋼板で直径8mm、ピッチ10mm、配列60°チドリ型、開口率57%の多孔板を使用した。
【0052】
また、クリーンブースの天井面の大半は帯電防止された透明なアクリル板を用いクリーンブース内の状況を見ることができるようにした。また、直方体状の凸部1aの、シート状物4の上流側にある側面に配するメンテナンス用の扉8は、蝶番にて開閉できるようにし、閉じる際にはボルトにてクリーンブース本体に締め付けて密閉できる構造とした。扉とクリーンブース本体との間のシールは、トンボNo.9096フッ素樹脂万能ガスケット6mm(商品名:ニチアスソフトシール、ニチアス社製)を使用した。
【0053】
昇降手段6は、メートルネジ(M20、SUS304製)を使用し、手動にて塗工装置5が昇降するようにし、回転手段7は、クリーン環境用軸受(商品名:ウルトラクリーン軸受、NTN社製)を使用し、回転させるときには手動で回転させるようにした。塗工液供給口13は1本の円形中空パイプ(SUS304製)を使用し、エアナイフ5の上流側600mmで幅700mmのシート状物の中央部に配し、液出口とシート状物のクリアランスは10mmとした。また、塗工液はエアによる圧送にて供給した。
【0054】
以上説明したクリーンブースを使用し、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM309)20部、重量平均分子量約1146のウレタンアクリレート(新中村化学(株)製、商品名:NKオリゴU−6HA)30部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学(株)製、商品名:ビスコート#230)50部を混合したものを塗工液として用い、シート状物4の走行速度3m/min、エアナイフ5のスリットクリアランス0.1mm、エアナイフのスリットから噴き出される高速エア風量0.8m3/min、高性能フィルタ9より吹き出されるクリーンエアー風量20m3/min(換気回数=約480回/h)という条件にて、10時間の連続塗工を行った。ここで「部」は質量部を示す。
【0055】
10時間の塗工中の清浄度を気中パーティクルカウンター(リオン社製。商品名:Particle Counters KR−12A)を用いて、エアナイフ5の中央上部100mm付近において測定した結果、米国連邦規格(Fed.Std.209E)にて約800個/ft3(約28000個/m3)であった。
【0056】
10時間の連続塗工終了後、エアナイフ5から吹き出される高速エアを停止し、高性能フィルタ9からのクリーンエアーは吹き出したまま、扉8を開けてエアナイフ5のリップ部に付着した塗工液の拭き取り及びリップクリアランス調整といったメンテナンス作業を行うことにした。
【0057】
エアナイフ5を昇降手段6により扉8まで移動させ(移動距離:0.45m)、回転手段7によりエアナイフ5のリップ部を扉8の方を向くように回転させ(回転角度:85°)、扉開口部よりエアナイフ5のリップ部までの直線距離0.2mとし、メンテナンス作業を行った。
【0058】
その後、エアナイフ5を前記の位置に復旧し、扉8を閉じてすぐにエアナイフ5の中央上部100mm付近における清浄度を測定すると約8000個/ft3(約280000個/m3)であった。また、扉8を閉じて約10分後には、エアナイフ5の中央上部100mm付近における清浄度は800個/ft3(約28000個/m3)に戻った。
【0059】
上記メンテナンス作業に要した時間は合計で15分であり、清浄度が元に戻るまでの10分を加えて、ダウンタイムは約25分であった。
【0060】
<比較例1>
実施例1と同様のクリーンブースを使用した。ただし、クリーンブースの側面1bのエアナイフ横の側面板1cは、ボルトにて着脱可能な構造とし、材質はオーステナイト系ステンレス鋼板とした。
【0061】
実施例1と同条件にて10時間の連続塗工を行い、塗工終了後、エアナイフ横の側面板1cを取り外し、エアナイフ5をクリーンブース1の外に取り出してメンテナンス作業を行った。なお、扉8は終始閉じたままとした。
【0062】
その後、エアナイフ5をもとの位置に復旧し、エアナイフ側面板1cを閉じてすぐにエアナイフ5の中央上部100mm付近における清浄度を測定すると約230000個/ft3(約8100000個/m3)であった。また、エアナイフ側面板1cを閉じた後、エアナイフ5の中央上部100mm付近における清浄度が800個/ft3(約28000個/m3)に戻るまでに30分も要した。
【0063】
上記メンテナンス作業に要した時間は合計で1.5hであり、清浄度がもとに戻るまでの30分を加えて、次回の塗工までに合計2時間のダウンタイムを要することになった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のクリーンブースの一例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図2】本発明のクリーンブースの別の例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図3】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図4】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に沿った方向からから見た模式的側断面図である。
【図5】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に沿った方向からから見た模式的側断面図である。
【図6】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図7】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図8】実施例1で用いたクリーンブースの模式的平面図である。
【図9】実施例1で用いたクリーンブースを図8の矢印A方向から見た模式的側断面図である。
【図10】実施例1で用いたクリーンブースを図8の矢印B方向から見た模式的側面図である。
【図11】実施例1で用いたクリーンブースを設置したエンドレスベルトを備えた装置のベルト走行方向に垂直な水平方向から見た模式的断面図
【符号の説明】
【0065】
1 クリーンブース
1a クリーンブース凸部
1b クリーンブース側面
1c エアナイフ横のクリーンブース側面板
2 クリーンブースを通過するシート状物の入口
3 クリーンブースを通過するシート状物の出口
4 シート状物
5 塗工装置
6 昇降手段
7 回転手段
8 扉
9 高性能フィルタ
10 通風可能板
11 底部空間
12 排気口
13 塗工液供給口
14 エンドレスベルトを備えた装置
15 UV照射装置
16 プーリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行するシート状物が連続的に通過する、内部を清浄にすることが可能なクリーンブースに関する。より詳しくは、内部に塗工装置を有し、高清浄度のもとで塗工を行うことが可能なクリーンブースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗工技術はディスプレイ材料、機能性フィルム等の映像表示分野、磁気テープ類等の情報記録分野、インクジェット用紙等の紙分野、自動車の車体塗装分野、薄膜電池や電子回路基板等の電気・電子関連分野、眼鏡レンズなどの光学関連分野、撥水・防水・消臭といった機能繊維分野など、非常に多くの分野で活用されており、その要求性能も年々高まっている。特にハイテク産業においては、製品中への微小な塵・ホコリの混入は品質上や外観上の致命的な欠陥になりうるため、清浄度の高い環境での塗工が必須条件となってきている。
【0003】
清浄度の高い環境を作り出すためには、導電性の部材によって塗工工程を外界から仕切り、その内部に清浄空気を送り込むことで、仕切り内部の清浄度を良くすることができるクリーンブースが用いられる。更には塗工工程を無人化することが望ましい。
【0004】
このクリーンブースの形状は、被塗工物のサイズ、塗工方法、清浄空気の流動状態等により様々であるが、好ましくはコンパクトなサイズにする方が経済的である。
【0005】
例えば、シート状物への塗工方法のひとつとして、シート状物上に塗工液を供給し、高速エアを吹き付けることで塗工液を薄膜化するエアナイフ塗工法がある。この塗工法においては、高速エアを吹き出すリップ部への塗工液の付着やリップクリアランスが変わることで、膜厚が変動する恐れがあるため、塗工終了後または塗工不具合時には、一旦塗工工程をとめて、リップ部の拭き取りやクリアランス調整といったメンテナンスを行う必要がある。このメンテナンス性を考慮すると、クリーンブースを人が侵入できるサイズにするか、クリーンブースをコンパクトなサイズとしてメンテナンスをする際には塗工装置をクリーンブース外に取り出すようにするしかなかった。
【0006】
人がクリーンブース内に入ってメンテナンスをする場合には、衣服等に付着している塵・ホコリの混入が懸念され、また、塵・ホコリの混入を防ぐためにクリーンブースの前室にエアーシャワー等の付属設備が必要となり、清浄度を保つ面や経済的な面においてデメリットとなる。
【0007】
また、メンテナンスをする際に塗工装置を外に取り出す場合においては、クリーンブースの一面または数面を開放して取り外す必要があり、その結果、クリーンブース内部の清浄度が大幅に悪くなり、所定の清浄度へと復帰するまでに時間を要する。さらに、通常、実質的に水平方向に走行するシート状物への塗工装置は、シート状物とのクリアランスを調整できる手段(シート状物に対し、垂直に移動可能な昇降手段)を持っているが、この手段と塗工装置を取り出す手段(横方向に取り出す)を併せ持つ手段は、その構造が複雑となると共に、塗工装置を取り出す方向に塗工装置の大きさ(長さ)分のスペースまでも必要となる。また、比較的小型で人の手による取り出し及び取り付けが可能な塗工装置においても、その取り出しおよび取り付けに係わる作業には比較的長い時間を要していた。
【0008】
これまで、特許文献1に示されるように、クリーンブースの床面が塗料汚れするのを防止し、床面の洗浄作業の負荷・作業時間を軽減する方法については述べられてきたが、塗工装置自体のメンテナンスをクリーンブース内の清浄度を大幅に落とすことなく行うことができ、且つメンテナンスに要する時間を軽減する方法については提案されていなかった。
【特許文献1】特開平7−236844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、内部の清浄度を大幅に落とすことなく、コンパクトさを大きく損なうことなく、かつ比較的短時間で内部の塗工装置のメンテナンスを行うことを可能とする、連続走行するシート状物に塗工を行う塗工装置を内部に有するクリーンブースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討・実験を繰り返した結果、塗工装置上部のクリーンブース壁面の空いたスペースに、クリーンブース外部より内部へアクセス可能な扉を設け、扉近傍まで塗工装置を移動させる手段を設けることにより、塗工装置のメンテナンスを行うことが可能となり、塗工装置をクリーンブースの外に取り出すことなくメンテナンスをすることができることを見出した。さらに、クリーンブース内部清浄用クリーンエアーを供給する位置を、扉を開放した際でもクリーンエアーがエアーカーテンの役割をなして塵・ホコリを混入させないよう考慮することで、クリーンブース内部の清浄度を大幅に落とすことなくメンテナンスを行いうることも見出した。
【0011】
本発明はこれら知見に基づいてなされたものである。すなわち本発明により、
実質的に水平方向に走行するシート状物を連続的に通過させるための入口および出口を有し、走行するシート状物に塗工を行う塗工装置を内部に有する非密閉型のクリーンブースにおいて、
壁面に配された扉と、該塗工装置を該扉近傍まで移動させる移動手段とを有することを特徴とするクリーンブースが提供される。
【0012】
前記塗工装置がシート状物が走行する位置の上方に設けられ、
塗工位置の上方に凸部を有し、
前記扉が該凸部に設けられ、
前記移動手段が塗工装置を昇降させる昇降手段を有する上記クリーンブースが好ましい。
【0013】
このクリーンブースが、前記凸部の上部からクリーンエアーを供給するクリーンエアー供給手段を有することが好ましい。
【0014】
このクリーンブースが、シート状物が走行する位置より下方に排気口を有することが好ましい。
【0015】
前記塗工装置がエアナイフを有する上記クリーンブースが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のクリーンブースによれば、実質的に水平方向に走行するシート状物への塗工装置のメンテナンスを、クリーンブースの内部に人が侵入することなく、従って内部の清浄度を落とすことなく行うことができるとともに、塗工装置をクリーンブース外へ取り外すことなくメンテナンスを行うことができるため、メンテナンスに要する時間も短縮することができ、更には、クリーンブースのコンパクトさが確保される。そのため、本発明のクリーンブースは経済的にも有用であるとともに、既存のスペース的に狭い工程内に塗工装置を導入する場合においても非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を用いて本発明を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明のクリーンブースの一例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向より見た模式的側断面図である。この図に示すように、このクリーンブース1は直方体の一部が上方に凸となる構造を有している。
【0019】
シート状物4(被塗工物)は実質的に水平方向に走行し、クリーンブース1の相対する面にそれぞれ配された入口2と出口3の開口部を通過できるようになっている。
【0020】
ここで、「実質的に」水平方向に走行させるとは、僅かに傾いた方向で走行する場合であっても、塗工を行った際に、水平方向の場合と同様に塗膜の厚さが均一に得られるのであれば、そのような場合をも含む意味である。
【0021】
入口2と出口3の開口の大きさは、シート状物4との接触を回避する観点から、シート状物4の走行方向に垂直な断面の大きさより上下左右それぞれ20mm以上広くすることが好ましく、50mm以上広くすることがより好ましく、またクリーンブース1内の清浄度を保つ観点から、シート状物4の走行方向に垂直な断面の大きさより上下左右それぞれ300mm以下広くすることが好ましく、100mm以下広くすることがより好ましい。ここで、上下とはシート状物4の鉛直方向をいい、左右とはシート状物走行方向に垂直な水平方向をいう。
【0022】
また、クリーンブースを構成する材質には特に制限は無く、例えば、ガラス、樹脂、金属等のいずれか1種または複数を組み合わせて使用できる。金属としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。導電性の低い材質を用いる場合は、ブース内側にあたる面に帯電防止処理を施すこともできる。
【0023】
被塗工物であるシート状物4の材質には特に制限は無く、例えば、樹脂、金属等を使用できる。金属としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。また、これらの塗工側の表面を研磨処理したものも使用できる。シート状物が水平状態での走行を維持するためには、高い剛性を有することが好ましい。特に金属製のシート状物は、一般に、薄くても比較的高い剛性を有するので好ましい。シート状物の厚さは、0.1mm以上であることが望ましい。また、シート状物4の水平方向のフラット性を保つため、シート状物4の走行方向に沿って張力をかけることもできる。
【0024】
塗工装置5は、シート状物4の走行方向に対して、クリーンブース1のほぼ中央部に位置しており、塗工装置を扉8近傍まで移動させる移動手段として昇降手段6を備え、さらに回転手段7を有している。ここで、扉近傍とは扉を開きクリーンブース外部より内部の塗工装置のメンテナンスを行うことが可能な近さのことであり、塗工装置のメンテナンスを行うべき部分を扉開口部分より直線距離で300mm以内にまで近づけることが好ましい。
【0025】
昇降手段6としては、塗工装置5を昇降可能な公知の機構を適宜採用できる。例えば、ネジを使用して手動にて昇降させる機構でも構わないし、塗工装置5の重量やクリーンブース内部の清浄度を考慮するとエアシリンダや電動モータを使用して、自動で昇降させる機構を用いることもできる。
【0026】
また、回転手段7は、塗工装置5の種類によってメンテナンス項目がまちまちであるため必要というわけではないが、塗工装置5のあらゆる面をメンテナンスする必要がある場合などには有用である。回転手段7には塗工装置を回転させることのできる公知の機構を適宜採用できる。例えば、ベアリング、スプロケット、チェーン及び電動モータを使用して回転させることができる。
【0027】
塗工装置5の大きさがクリーンブースの大きさに対して小さく、クリーンブース内で塗工装置5を水平方向に移動可能な場合においては、移動手段としては、昇降手段とともに、シート状物走行方向に沿った水平な方向に塗工装置を移動させる手段を備えてもよい。また昇降とシート状物走行方向に沿った水平な方向の移動とを同時に行いうる手段を採用することもできる。
【0028】
ここで、メンテナンスとは塗工装置先端(リップ部)の拭き取り作業、リップクリアランスの調整作業、塗工装置に付着したカレット等異物の除去作業等のことである。
【0029】
図1によると、塗工装置5はシート状物が走行する位置の上方に設けられ、塗工位置の上方においてクリーンブース1の天井が高くされた凸部1aが設けられる。つまり、シート状物4の端部から中央部に向かう方向において、クリーンブースの側面形状が凸型となっている。凸部は底面が開口している直方体状で、内部は中空であり、塗工装置が内部を移動可能となっている。この凸部1aのシート状物4の上流側または下流側にある側面には、メンテナンスを行うための扉8を有している。
【0030】
凸部1aの形状は図1に示すように直方体が基本構造であるが、図2〜5に示すように側面の一部又は全部をテーパー形状としてもよい。図2、図3はそれぞれシート状物走行方向に対し、垂直な水平方向からクリーンブースの例を見た模式的側断面図であり、図4、図5はそれぞれシート状物走行方向に沿った方向からクリーンブースの例を見た模式的側断面図である。また、クリーンブース全体をシート状物走行方向に対し、垂直方向から見た側面形状においては、凸型だけではなく、図6〜7にそれぞれ示すようにL型、反L型としてもよい。
【0031】
直方体構造とした場合の凸部1aの大きさは、塗工装置5の大きさと移動手段用の装置により適宜決まってくるため、一概に大きさが規定されるわけではないが、クリーンブース全体のサイズをコンパクトにした方が経済的であることから縦方向の大きさは500〜1500mm、横方向の大きさは、シート状物4又は塗工装置5のどちらか大きい方より150〜500mm大きくし、幅方向の大きさは、扉8の開口部より塗工装置5のメンテナンスを容易にでき、且つ塗工装置5の移動手段を簡素化するという観点から1000mm以内とすることが好ましい。ここで、縦方向の大きさとは凸部以外のクリーンブースの天井面から凸部天井面までの長さをいい、横とはシート状物走行方向に垂直な水平方向をいい、幅とはシート状物走行方向に沿った水平方向をいう。
【0032】
扉8の形状は四角形が基本構造となるが、角部にRを取ってもよい。また、塗工装置の種類やメンテナンス部分に応じて扉の数を複数個設けてもよい。
【0033】
扉の数を1個とし、塗工装置の全面をメンテナンスするとした場合の扉8の開口部の大きさは、塗工装置5の大きさとメンテナンスの作業性により適宜決めることができるが、クリーンブース1内の清浄度が下がることを抑制する観点から、扉8の開口部の縦方向の大きさは、塗工装置5の縦方向及び幅方向の大きさのうち大きい方の大きさより50〜400mm広くなる大きさ、横方向の大きさは、塗工装置5の横方向の大きさより50〜200mm広くすることが好ましい。
【0034】
本発明のクリーンブース1内で行うシート状物4への塗工方法としては、シート状物を損傷する危険性が低く、塗工液の回収を要せず、また、塗工液の飛散が少ないという観点から、エアナイフ塗工法が好ましいが、これ以外にもロールコート、ダイコート、スプレーコートといった汎用塗工方法でもよい。本発明において、塗工装置とは、シート状物がある装置の下部を通過した時点で、得ようとする塗膜がシート状物上に塗工される装置のことを指し、エアナイフ塗工法においてはエアナイフ、ロールコートの場合はロール、ダイコートの場合はダイ、スプレーコートの場合はスプレーノズルを指す。また、塗工装置については、前記各種塗工装置の形状をその塗工装置が包括される最小の直方体とみなし、その場合において、縦とは鉛直方向をいい、横とはシート状物走行方向に垂直な水平方向をいい、幅とはシート状物走行方向に沿った水平方向をいう。ここで、スプレーコートのようにシート状物走行方向に垂直な水平方向の一直線上に数点スプレーノズルが配置されている場合においては、塗工装置の形状を全てのスプレーノズルを包括する最小の直方体とみなし、縦横幅を規定する。また、エアナイフやダイであればリップ先端のみをメンテナンスするなど塗工装置の一部分だけをメンテナンスする場合の扉8の大きさは、塗工装置の縦横幅の大きさには規定されず、例えば、手が入るサイズ(メンテナンスが可能なサイズ)からクリーンブース1内の清浄度が良好に保たれる最大のサイズまで適宜決められる。
【0035】
扉8の位置は、本発明の効果が得られるようにクリーンブース壁面に適宜選ぶことができる。シート状物が実質的に水平に走行する場合は、塗工装置5の上方に配設することが、移動手段の複雑化を抑える観点から好ましい。また、移動手段の複雑化を抑える観点から、塗工する際の塗工装置5の位置から近い方が好ましい。メンテナンスの際に塗工装置を塗工時の位置から扉近傍まで移動させるが、この移動距離が2m以内であることが好ましい。また、扉8及び後述する高性能フィルタ9の設置位置はクリーンブース1内の清浄度が低下しないように考慮して適宜決められる。
【0036】
扉8の固定方法としては、扉をクリーンブースに固定できる公知の方法を適宜採用できる。内部の清浄性を保つ観点から気密性をもって扉を固定し、またメンテナンスの容易性の観点から扉は容易に開閉可能な構造とすることができる。例えば、ボルトにてクリーンブース1の本体に固定するとともに蝶番を取り付けることによって開閉を容易化し、扉とクリーンブース本体との間の機密性確保のために、扉8の内面に例えばテフロン系ソフトシールを使用するのが簡便であり、好ましい。尚、小さい扉であれば、クランプにて固定することもできる。
【0037】
扉8の材質には特に制限は無く、クリーンブースを構成する材質と同様に、例えば、ガラス、樹脂、金属等のいずれか1種または複数を組み合わせて使用できる。金属としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。導電性の低い材質を用いる場合は、ブース内側にあたる面に帯電防止処理を施すこともできる。
【0038】
以上説明した塗工装置5の上方に凸部を有し、且つ凸部に扉8を有することの効果としては、通常、塗工装置5の上方の天井面には塗工部分の清浄度を高めるためにクリーンエアーを供給する手段を設置しているため、メンテナンスをするための扉の設置場所が塗工装置5より離れてしまい、移動手段が複雑化する。しかし、塗工装置5の上方に凸部を有することで、塗工装置5を取り外すことなくメンテナンスするための扉8を塗工装置5の近傍に設置できるスペースを生み出すことができ、また、扉8を凸部に有することで移動手段の複雑化も抑えることができる。
【0039】
凸部1aの天井面に、高性能フィルタ9を設置し、クリーンブース1へクリーンエアーが供給されることが好ましい。高性能フィルタとは、直径3μmの粒子を99.97%以上捕集可能なフィルタのことを言う。高性能フィルタとしては、所望の清浄度を得ることのできる公知のフィルタから適宜選んで用いることができるが、例えばHEPAフィルタ(High Efficency Particle Air Filter)やULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)、FFU(Fan Filter Unit)等を使用できる。また、凸部1aの天井面からのクリーンエアー風量だけでは、クリーンブース内の清浄度が規定値まで達しない場合には、クリーンブース1の他の部分の天井にも高性能フィルタ9を設置しても良い。なお、図中の破線矢印は、エアーの流れ方向を表す。
【0040】
凸部の上部からクリーンエアーを供給するクリーンエアー供給手段は、上記高性能フィルタと、高性能フィルタに空気を送る送気手段とで形成することができる。送気手段は例えば大気から空気を取り込んで高性能フィルタに送るダクトおよびファンで形成することができる。
【0041】
高性能フィルタから供給するクリーンエア−の風量は、クリーンブース内の要求される清浄度により変わってくるが、清浄度と換気回数の間には経験則による関係があり、米国連邦規格(Fed.Std.209E)にて約1000個/ft3(約35000個/m3)の清浄度を要求する場合には、換気回数を100〜600回となる風量とすることが好ましい。ここで換気回数とは、1時間あたりにクリーンブース内を何回換気可能か示すもので、必要風量〔m3/min〕=クリーンブース内容量〔m3〕×換気回数〔回/h〕÷60〔min/h〕により求められる。また、前記経験則による換気回数は、クリーンブースの形状、クリーンエアーの供給方法により変わり得るので、必ずしもこの限りではない。
【0042】
凸部1aの天井面に高性能フィルタ9を設置し、これを通してクリーンエアーをクリーンブース内に供給し、扉の内面に沿ってクリーンエアーを流すことにより、扉8を開放した時でも扉付近のクリーンエアーがエアーカーテンの役割をなし、塵やホコリの侵入を防止することができる。また、クリーンブースの天井面全体が平面であって相当の高さを有する場合、塗工装置の上方に高性能フィルタを設置してクリーンエアーを供給してもクリーンエアーはクリーンブース内で拡散してしまい、塗工部分の清浄度を高くするためにはクリーンエアーの風量を上げなければならないが、本発明のように、凸型形状したクリーンブースにおいて、凸部1aの下方に塗工装置5を設置している場合、高性能フィルタ9を通して供給されるクリーンエアーの全風量が塗工部分に供給されることになるため、塗工部分の清浄度が効率的に高くなり、製品への塵・ホコリの混入を防ぐことができる。
【0043】
クリーンブース1に供給されたクリーンエアーは、シート状物4面上を流れ、シート状物4がクリーンブース1を通過する入口2及び出口3より排気される。また、シート状物4が走行する水平面より下方に排気口を設けてもよい。例えば、シート状物が走行する水平面より下方にクリーンブース1の水平方向全域に亘って多孔板或いはグレーチング等の通風可能な板10を設け、板10下側の底部空間11の底面または側面部の一方あるいは双方に排気口12を設けることができる。このような構成にすることで、クリーンエアーは、シート状物4とクリーンブース側面1b(図8参照)の隙間を通り、板10を介して底部空間11に入り、排気口12より排気することができる。
【0044】
排気口を設ける場合、図示していないが、排気口12と高性能フィルタ9をダクトにて連結し、連結したダクト経路にファンを設けることで、クリーンエアーを循環利用することも可能である。循環利用する場合、高性能フィルタ9に供給されるエアがワンパスの場合に比べてクリーンであるため、高性能フィルタ9にて異物が捕集される割合が減り、その分、差圧が上がりにくくなるため、高性能フィルタ9の交換周期が長くなるといったメリットがある。
【0045】
ここで、シート状物4とクリーンブース側面1bの隙間は、クリーンブース全体のサイズをコンパクトにした方が経済的であることから300mm以下とすることが好ましい。
【0046】
以上説明した本発明のクリーンブースにより、クリーンブース1内の清浄度を大幅に落とすことなく、塗工装置をメンテナンスすることが可能になるとともに、クリーンブース外へ塗工装置を取り出す必要性も無いため、メンテナンスに要する時間も削減可能となる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0048】
<実施例1>
図8〜10に本実施例で使用したクリーンブースを図示する。図8は平面図、図9は図8中の矢印A方向から見たシート状物走行方向の垂直断面図、図10は図8中の矢印B方向から見た側面図である。ただし、側面板1cは後述する比較例1で用いるために設置したもので、本実施例では終始閉じたままにした。側面板1cの大きさは、設置時の水平方向の幅q、鉛直方向の高さrで示され、以下の通りである。
【0049】
図に示される各寸法はa=3000mm、b=1100mm、c=700mm、d=600mm、e=600mm、f=150mm、g=200mm、h=250mm、i=100mm、j=150mm、k=800mm、l=100mm、m=100mm、n=100mm、o=900mm、p=400mm、q=500mm、r=750mmであり、クリーンブース内容量は約2.5m3である。なお、説明の都合上、図面は必ずしも正確に寸法を示すものではない。
【0050】
上記クリーンブースを図11に示すエンドレスベルトを備えた装置14(全長6m、周長15m)に設置した。クリーンブース内にて塗工された塗工部は、クリーンブース下流側に設置してあるUV照射装置15にて硬化され、プーリ16部分でエンドレスベルトより剥離される。
【0051】
シート状物4としては、鏡面研磨されたエンドレスベルトであり、ベルト幅700mm、厚さ0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼板を用い、油圧により3.0×107Paの張力を与えた。塗工装置としては、縦75mm、横780mm、幅40mmのエアナイフ5をクリーンブース中央部に設置し、シート状物4とエアナイフ5との間のクリアランスを5mm、エアナイフ角度をシート状物4の走行方向に対し、鉛直下向きよりも上流側に5°傾けてなるように配した。高性能フィルタ9は外形寸法が縦292mm×横915mm×幅610mm(クリーンエアー噴出し面積=横895mm×幅590mm)のHEPAフィルタ(商品名:アブソリュート・フィルタ(HEPAフィルタ)、近藤工業(株)社製)とし、凸部1aの天板に横895mm×幅590mmの開口部を設け、その上にHEPAフィルタを天板とボルトナットにて接続した。また、シート状物4の下部に配した通風可能な板10は、オーステナイト系ステンレス鋼板で直径8mm、ピッチ10mm、配列60°チドリ型、開口率57%の多孔板を使用した。
【0052】
また、クリーンブースの天井面の大半は帯電防止された透明なアクリル板を用いクリーンブース内の状況を見ることができるようにした。また、直方体状の凸部1aの、シート状物4の上流側にある側面に配するメンテナンス用の扉8は、蝶番にて開閉できるようにし、閉じる際にはボルトにてクリーンブース本体に締め付けて密閉できる構造とした。扉とクリーンブース本体との間のシールは、トンボNo.9096フッ素樹脂万能ガスケット6mm(商品名:ニチアスソフトシール、ニチアス社製)を使用した。
【0053】
昇降手段6は、メートルネジ(M20、SUS304製)を使用し、手動にて塗工装置5が昇降するようにし、回転手段7は、クリーン環境用軸受(商品名:ウルトラクリーン軸受、NTN社製)を使用し、回転させるときには手動で回転させるようにした。塗工液供給口13は1本の円形中空パイプ(SUS304製)を使用し、エアナイフ5の上流側600mmで幅700mmのシート状物の中央部に配し、液出口とシート状物のクリアランスは10mmとした。また、塗工液はエアによる圧送にて供給した。
【0054】
以上説明したクリーンブースを使用し、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM309)20部、重量平均分子量約1146のウレタンアクリレート(新中村化学(株)製、商品名:NKオリゴU−6HA)30部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学(株)製、商品名:ビスコート#230)50部を混合したものを塗工液として用い、シート状物4の走行速度3m/min、エアナイフ5のスリットクリアランス0.1mm、エアナイフのスリットから噴き出される高速エア風量0.8m3/min、高性能フィルタ9より吹き出されるクリーンエアー風量20m3/min(換気回数=約480回/h)という条件にて、10時間の連続塗工を行った。ここで「部」は質量部を示す。
【0055】
10時間の塗工中の清浄度を気中パーティクルカウンター(リオン社製。商品名:Particle Counters KR−12A)を用いて、エアナイフ5の中央上部100mm付近において測定した結果、米国連邦規格(Fed.Std.209E)にて約800個/ft3(約28000個/m3)であった。
【0056】
10時間の連続塗工終了後、エアナイフ5から吹き出される高速エアを停止し、高性能フィルタ9からのクリーンエアーは吹き出したまま、扉8を開けてエアナイフ5のリップ部に付着した塗工液の拭き取り及びリップクリアランス調整といったメンテナンス作業を行うことにした。
【0057】
エアナイフ5を昇降手段6により扉8まで移動させ(移動距離:0.45m)、回転手段7によりエアナイフ5のリップ部を扉8の方を向くように回転させ(回転角度:85°)、扉開口部よりエアナイフ5のリップ部までの直線距離0.2mとし、メンテナンス作業を行った。
【0058】
その後、エアナイフ5を前記の位置に復旧し、扉8を閉じてすぐにエアナイフ5の中央上部100mm付近における清浄度を測定すると約8000個/ft3(約280000個/m3)であった。また、扉8を閉じて約10分後には、エアナイフ5の中央上部100mm付近における清浄度は800個/ft3(約28000個/m3)に戻った。
【0059】
上記メンテナンス作業に要した時間は合計で15分であり、清浄度が元に戻るまでの10分を加えて、ダウンタイムは約25分であった。
【0060】
<比較例1>
実施例1と同様のクリーンブースを使用した。ただし、クリーンブースの側面1bのエアナイフ横の側面板1cは、ボルトにて着脱可能な構造とし、材質はオーステナイト系ステンレス鋼板とした。
【0061】
実施例1と同条件にて10時間の連続塗工を行い、塗工終了後、エアナイフ横の側面板1cを取り外し、エアナイフ5をクリーンブース1の外に取り出してメンテナンス作業を行った。なお、扉8は終始閉じたままとした。
【0062】
その後、エアナイフ5をもとの位置に復旧し、エアナイフ側面板1cを閉じてすぐにエアナイフ5の中央上部100mm付近における清浄度を測定すると約230000個/ft3(約8100000個/m3)であった。また、エアナイフ側面板1cを閉じた後、エアナイフ5の中央上部100mm付近における清浄度が800個/ft3(約28000個/m3)に戻るまでに30分も要した。
【0063】
上記メンテナンス作業に要した時間は合計で1.5hであり、清浄度がもとに戻るまでの30分を加えて、次回の塗工までに合計2時間のダウンタイムを要することになった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のクリーンブースの一例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図2】本発明のクリーンブースの別の例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図3】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図4】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に沿った方向からから見た模式的側断面図である。
【図5】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に沿った方向からから見た模式的側断面図である。
【図6】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図7】本発明のクリーンブースのさらに別の例を示すシート状物走行方向に垂直な水平方向から見た模式的側断面図である。
【図8】実施例1で用いたクリーンブースの模式的平面図である。
【図9】実施例1で用いたクリーンブースを図8の矢印A方向から見た模式的側断面図である。
【図10】実施例1で用いたクリーンブースを図8の矢印B方向から見た模式的側面図である。
【図11】実施例1で用いたクリーンブースを設置したエンドレスベルトを備えた装置のベルト走行方向に垂直な水平方向から見た模式的断面図
【符号の説明】
【0065】
1 クリーンブース
1a クリーンブース凸部
1b クリーンブース側面
1c エアナイフ横のクリーンブース側面板
2 クリーンブースを通過するシート状物の入口
3 クリーンブースを通過するシート状物の出口
4 シート状物
5 塗工装置
6 昇降手段
7 回転手段
8 扉
9 高性能フィルタ
10 通風可能板
11 底部空間
12 排気口
13 塗工液供給口
14 エンドレスベルトを備えた装置
15 UV照射装置
16 プーリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水平方向に走行するシート状物を連続的に通過させるための入口および出口を有し、走行するシート状物に塗工を行う塗工装置を内部に有する非密閉型のクリーンブースにおいて、
壁面に配された扉と、該塗工装置を該扉近傍まで移動させる移動手段とを有することを特徴とするクリーンブース。
【請求項2】
前記塗工装置がシート状物が走行する位置の上方に設けられ、
塗工位置の上方に凸部を有し、
前記扉が該凸部に設けられ、
前記移動手段が塗工装置を昇降させる昇降手段を有する
請求項1記載のクリーンブース。
【請求項3】
前記凸部の上部からクリーンエアーを供給するクリーンエアー供給手段を有する請求項2記載のクリーンブース。
【請求項4】
シート状物が走行する位置より下方に排気口を有する請求項3記載のクリーンブース。
【請求項5】
前記塗工装置がエアナイフを有する請求項1〜4のいずれか一項記載のクリーンブース。
【請求項1】
実質的に水平方向に走行するシート状物を連続的に通過させるための入口および出口を有し、走行するシート状物に塗工を行う塗工装置を内部に有する非密閉型のクリーンブースにおいて、
壁面に配された扉と、該塗工装置を該扉近傍まで移動させる移動手段とを有することを特徴とするクリーンブース。
【請求項2】
前記塗工装置がシート状物が走行する位置の上方に設けられ、
塗工位置の上方に凸部を有し、
前記扉が該凸部に設けられ、
前記移動手段が塗工装置を昇降させる昇降手段を有する
請求項1記載のクリーンブース。
【請求項3】
前記凸部の上部からクリーンエアーを供給するクリーンエアー供給手段を有する請求項2記載のクリーンブース。
【請求項4】
シート状物が走行する位置より下方に排気口を有する請求項3記載のクリーンブース。
【請求項5】
前記塗工装置がエアナイフを有する請求項1〜4のいずれか一項記載のクリーンブース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−255559(P2006−255559A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75135(P2005−75135)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
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