説明

クルトンの製造方法

【課題】水分の多い飲食品中でもサクサクとした食感を持続することができ、更に、パンの本来の食味を保持させ、しかも、クルトンの飲食品への添加、配合において、飲食品に異質な味覚変化を起こさない、食感と食味に優れたクルトンを提供すること。
【解決手段】パン生地を焼成後、細断、乾燥して製造するクルトンの製造方法において、焼成したパンの外側に、α化ヒドロキシプロピル澱粉、α化酢酸澱粉、α化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、α化アセチル化架橋澱粉からなる群より選ばれる1種以上のα化澱粉粉末を付着させることにより、サクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンを製造する。本発明の方法により製造されたクルトンは、水分の多い飲食品中でもサクサクとした食感を持続することができ、更に、パン生地の配合に制限を加えることなく、パンの本来の食味を保持させ、しかも、クルトンの飲食品への添加、配合において、飲食品に異質な味覚変化を起こさない、食感と食味に特に優れたクルトンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性が低く、スープなどの水分の多い飲食品中でもサクサクとした食感を持続させることができるクルトンの製造方法、特に、パン生地を焼成後、細断、乾燥して製造するクルトンの製造方法において、焼成したパンの外側に、特定のα化澱粉を付着させることにより、水分の多い飲食品中でもサクサクとした食感を持続することができ、更に、パンの本来の食味を保持させ、しかも、クルトンの飲食品への添加、配合において、飲食品に異質な味覚変化を起こさない、食感と食味に優れたクルトンの製造方法、及び、該方法により得られたクルトン、及び該クルトンを利用した飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
クルトンは、スープの浮き身や、サラダ、グラタン等のトッピング材に使用される食品素材であり、カリカリとした食感が楽しまれている。しかし、スープやサラダといった水分を比較的多く含む飲食品に使用した際には、クルトン内への水分の浸透により、サクサクとした食感が失われてしまうという欠点があった。
【0003】
そこで、この問題を解決することを目的として、従来より、各種の方法が提案されてきた。例えば、パン生地にコーンフラワーを添加して、気孔が細かくクリスピーなクルトンを得る方法(特開昭49−101555号公報)、パン生地に常温固形脂を配合する方法(特開昭54−92648号公報)、一定量の油脂を配合して厚い膜構造を形成させる方法(特開平1−179639号公報)、パン生地にトランスグルタミナーゼを添加、作用させた後に、加熱処理を行うことにより、クルトンに必要な硬さとカリカリとした食感を付与する方法(特開平7−327584号公報)等、クルトンの原料となるパン生地自体の配合や、生地の処理を変更する方法が開示されている。しかし、これらの方法は、一定の吸水抑制効果を付与するものの、接触する飲食品からの水分の浸透を充分に抑えられているとは言えず、また、パン生地そのものの構造に変化をもたらして必要以上に食感を固くしてしまうため、クルトンが本来もつべきサクサクとした軽い食感が損なわれてしまうという問題があった。
【0004】
また、別の方法として、未油ちょうクルトンの表面を固体脂でコーティングして給水を防止する方法(特開平2−255035号公報)、コーンスターチを配合したパンを乾燥した後、固形油脂又はα化澱粉溶液にてコーティングし、更に、粉末澱粉を固定化することにより、クルトン内部への水分の吸水性を低下させ、長時間カリカリした食感を持続させる方法(特開2002−51692号公報)、パンの外側に溶解した固体油脂を付着させ、次いでアミロペクチン含量が90〜100%のα化澱粉又は架橋澱粉からなる第一の澱粉粉末、及び、アミロペクチン含量が90〜100%のα化澱粉又は架橋澱粉からなる第二の澱粉粉末を二段階に分けて付着させ、澱粉の付着を均一にして、サクサク感をより一層維持させた方法(特開2008−67647号公報)等、クルトンの表面にコーティングを行う方法が提案されている。
【0005】
しかし、これら固体油脂を使ったコーティングによる方法は、油脂によるクルトンの食味への影響が避けられず、クルトンにパンの本来の食味を保持させることが難しく、更に、油脂分の存在が望ましくない食品、例えば、スープ類においては、スープへの油脂分の溶け出しによって、スープ本来の味覚に影響を及ぼし、クルトンを利用した飲食品に望ましくない影響を及ぼすという問題がある。更に、油脂類の使用により、カロリー上昇や、昨今問題視されているトランス脂肪酸の摂取につながるという、健康志向上、望まれない問題があり、更に、油脂と澱粉を併用する場合には、これらの問題だけにとどまらず、製造工程が非常に煩雑となるという、実用化上のハードルが高いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭49−101555号公報。
【特許文献2】特開昭54−92648号公報。
【特許文献3】特開平1−179639号公報。
【特許文献4】特開平2−255035号公報。
【特許文献5】特開2002−51692号公報。
【特許文献6】特開平7−327584号公報。
【特許文献7】特開2008−67647号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、吸水性が低く、スープなどの水分の多い飲食品中でサクサクとした食感を持続させることができるクルトンを製造する方法、特に、水分の多い飲食品中でもサクサクとした食感を持続することができ、更に、パン生地の配合に制限を加えることなく、パンの本来の食味を保持させ、しかも、クルトンの飲食品への添加、配合において、飲食品に異質な味覚変化を起こさない、食感と食味に優れたクルトンの製造方法、及び、該方法により得られたクルトン、及び該クルトンを利用した飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、スープなどの水分の多い飲食品中でサクサクとした食感を持続させ、パンの本来の食味を保持させ、クルトンの飲食品への添加、配合において、飲食品に異質な味覚変化を起こさない、食感と食味に優れたクルトンの製造方法について、鋭意検討する中で、細断したパンの外側に、特定のα化澱粉粉末を付着させて乾燥させるという非常に簡便な方法により、水分の多い飲食品中でもサクサクとした食感を長時間維持でき、パン生地の配合に制限を加えることなく、パンの本来の食味を保持させ、しかも、クルトンの飲食品への添加、配合において、飲食品に異質な味覚変化を起こさない、食感と食味に特に優れたクルトンを製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、パン生地を焼成後、細断、乾燥して製造するクルトンの製造方法において、焼成したパンの外側に、α化ヒドロキシプロピル澱粉、α化酢酸澱粉、α化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、α化アセチル化架橋澱粉からなる群より選ばれる1種以上のα化澱粉粉末を付着させることにより、サクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンを製造する方法からなる。本発明の方法により、パンの外側に、特定のα化澱粉を付着させて乾燥させるという非常に簡便な方法により、食感と食味に特に優れたクルトンを製造することができる。
【0010】
本発明のクルトンの製造方法において、パンの外側へのα化澱粉粉末の付着は、焼成したパンを細断後に行うことが好ましい。また、本発明のクルトンの製造方法において、パンの外側へのα化澱粉の付着量は、パン生地焼成後、乾燥前のクルトン100質量部に対して、1〜60質量部の範囲であることが好ましい。本発明は、本発明のクルトンの製造方法によって製造されたサクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトン自体の発明を包含する。また、本発明は、本発明のクルトンの製造方法によって製造されたクルトンを、添加及び/又は配合した飲食品自体の発明を包含する。
【0011】
すなわち、具体的には本発明は、(1)パン生地を焼成後、細断、乾燥して製造するクルトンの製造方法において、焼成したパンの外側に、α化ヒドロキシプロピル澱粉、α化酢酸澱粉、α化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、α化アセチル化架橋澱粉からなる群より選ばれる1種以上のα化澱粉粉末を付着させることを特徴とする、サクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンの製造方法や、(2)パンの外側へのα化澱粉粉末の付着を、焼成したパンを裁断後、行うことを特徴とする上記(1)記載のサクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンの製造方法や、(3)パンの外側へのα化澱粉粉末の付着量が、パン生地焼成後、乾燥前のクルトン100質量部に対して、1〜60質量部の範囲であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のサクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンの製造方法や、(4)上記(1)〜(3)のいずれか記載のクルトンの製造方法により製造されたサクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンからなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、細断したパンの外側に、特定のα化澱粉粉末を付着させて乾燥させるという非常に簡便な方法により、水分の多い飲食品中でもサクサクとした食感を長時間維持でき、パン生地の配合に制限を加えることなく、パンの本来の食味を保持させ、しかも、クルトンの飲食品への添加、配合において、飲食品に異質な味覚変化を起こさない、食感と食味に特に優れたクルトンを提供する。本発明のクルトンは、各種飲食品に用いて、該飲食品の本来の味覚を生かしたクルトン入り、飲食品物を提供することができる。
【0013】
すなわち、従来、上記課題であるクルトンの吸水性を改善する手法としては、原料となるパン生地の配合そのものを変更するか、これを焼き上げて細断したパンを油脂や液状コーティング剤によりコーティングするという手法が常であった。しかし、本発明によれば、サクサク食感を長時間維持できるクルトンを製造するに際し、(1)課題解決のためにパン生地の配合や製法を変更する必要がないためパン生地の原料や製法が制限されず、(2)課題解決のために油脂を必要としないため健康イメージが良く、(3)液状コーティング剤(α化澱粉溶液)を利用しないため微生物による汚染機会が軽減され、(4)コーティング操作を繰り返すといった煩雑な工程が不要なため経済性が向上する、という幾重ものメリットを、長時間サクサク感が維持されるという効果とともに、同時に享受することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、パン生地を焼成後、細断、乾燥して製造するクルトンの製造方法において、焼成したパンの外側に、α化ヒドロキシプロピル澱粉、α化酢酸澱粉、α化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、α化アセチル化架橋澱粉からなる群より選ばれる1種以上のα化澱粉粉末を付着させることにより、サクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンを製造することからなる。
【0015】
本発明における「クルトン」は、常法に則ってパン等を製造し、細断、乾燥したものをいう。なお、ここでいう「パン等」は、一般的に使用される食パンに限らず、フランスパン、ロールパン、クロワッサン、デニッシュ、イーストドーナツ、ピザといった、発酵を伴って製造されるパンの他、ビスケット、バターケーキ、スポンジケーキ、蒸しケーキ、饅頭、ブッセ、ケーキドーナツ等の発酵を伴わない菓子類も包含する。
【0016】
上記パン等の生地原料としては、通常のパン類の生地に使用可能な成分であれば特に限定せず何れでも使用することができる。例えば、小麦粉、食塩、水、イーストといった主原料に加え、米粉、ライ麦粉、全粒粉、小麦ふすま、コーンフラワーといった穀粉類、ショートニング、マーガリン、ファットスプレッド、バター、ラード、サラダ油、オリーブオイル、粉末油脂、乳化油脂などの油脂類、全卵・卵黄・卵白・乾燥卵白・乾燥卵黄・乾燥全卵・加糖卵黄などの卵類、甘味料、澱粉、加工澱粉、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・発酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳などの乳や乳製品、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・ゴーダチーズ・チェダーチーズなどのチーズ類、アルコール類、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン酢酸脂肪酸エステル・グリセリン乳酸脂肪酸エステル・グリセリンコハク酸脂肪酸エステル・グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコールエステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・卵黄レシチン・大豆レシチンなどの乳化剤、膨張剤、無機塩類、ベーキングパウダー、イーストフード、生地改良剤、チョコチップなどのカカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類などの食品素材、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、食品添加物などが挙げられる。これらの成分は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができる。
【0017】
本発明において、細断したパンを「乾燥」する工程は、熱風などによる加熱乾燥の他、油ちょうによる乾燥であっても構わない。
【0018】
本発明におけるヒドロキシプロピル澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、アセチル化架橋澱粉の原料となる澱粉としては、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、サゴ澱粉、小麦澱粉、ワキシー小麦澱粉、米澱粉、もち米澱粉、豆澱粉などの天然澱粉が挙げられるほか、これら天然澱粉に焙焼、湿熱、酵素反応といった処理や次亜塩素酸ナトリウムなどによる漂白処理若しくは酸化処理を施した澱粉なども挙げられ、これらのうち1種に限定することなく2種以上を混合して用いることができる。なお、酸化処理をする場合、現行の食品添加物の規定により澱粉のカルボキシ基は1.1%以下とすることが定められている。
【0019】
本発明におけるヒドロキシプロピル澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、アセチル化架橋澱粉は、上記の原料となる澱粉に対し、ヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋化の化学的処理のうち1種又は2種の処理を施すことにより得られる。
【0020】
上記のうちヒドロキシプロピル澱粉或いは酢酸澱粉は、それぞれ、エーテル化剤或いはエステル化剤を上記の原料となる澱粉に対して反応させることにより得られる。エーテル化剤としてはプロピレンオキシドが、エステル化剤としては無水酢酸、酢酸ビニル、無水オクテニルコハク酸、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムが具体的に例示される。
【0021】
ヒドロキシプロピル化架橋澱粉及びアセチル化架橋澱粉は、エステル化剤やエーテル化剤とともに或いは別に架橋剤を上記原料澱粉或いはヒドロキシプロピル澱粉や酢酸澱粉に対して反応させることにより得られる。この際の架橋剤としては、トリメタリン酸ナトリウムやオキシ塩化リンが例示され、更にエステル化剤として無水酢酸を用いる場合は、アジピン酸を使用することができる。
【0022】
以上のようにして得られたヒドロキシプロピル澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、アセチル化架橋澱粉を、常法に則って、水に縣濁してスラリーとし、ドラムドライヤー、エクストルーダー、又はスプレードライヤーなどを用いて加熱処理することにより、最終的に本発明において使用されるα化ヒドロキシプロピル澱粉、α化酢酸澱粉、α化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、α化アセチル化架橋澱粉の粉末が得られる。
【0023】
本発明において、細断したパンの外側に付着させる上記α化澱粉においては、α化処理を施す直前の澱粉がヒドロキシプロピル化処理、アセチル化処理を施されていた場合、得られるクルトンは高い吸水抑制効果を発揮し、ヒドロキシプロピル化もしくはアセチル化処理に加えて架橋処理が同時に施されていた場合は、更に高い吸水抑制効果を発揮する。そのなかでも、置換度(澱粉の無水グルコース残基当たり付加されたヒドロキシプロピル基もしくはアセチル基の数。Degree of Substitutionの略であるDSと記載することもある。)が0.09以上、かつ、冷水膨潤度が40〜80のときに、非常に高い吸水抑制効果が見られる。
【0024】
本発明でいう、上記α化澱粉の「冷水膨潤度」は、次の方法に従って測定される:α化澱粉試料2gを水100mlに均一に分散させ、これを100ml容メスシリンダーに注ぎ入れて24時間静置し、澱粉の沈殿層の体積を読み取った数値を、冷水膨潤度とする。すなわち、冷水膨潤度の最大値は100となる。
【0025】
本発明の澱粉をパンに付着させる方法は、パンの外側になるべく均一に付着できる方法であれば良く、例えば、パンを容器内で攪拌しながら、あるいは、ベルトコンベア上で移動させながら、ふりかけたり噴霧したりする方法がある。また、付着させる工程は、パンを細断する前でも後でも良く、乾燥工程の前、あるいは乾燥工程と同時進行であれば良い。ただし、クルトンの全面に澱粉を付着させるためには、細断後に行われる方が好ましい。
【0026】
クルトンに付着させるべき澱粉量は、特に規定されるものではないが、パン生地を焼いて得られる乾燥前クルトン100質量部に対して、1〜60質量部の範囲内で付着させれば、所期の効果を得ることができる。
【0027】
本発明においては、上述した1種又は2種以上の澱粉を用いることができる。澱粉を付着させた後、油脂などでコーティングすることもできるが、カロリー低減もしくは健康イメージを重視する場合、又はコーティング剤の浸み出しによる飲食品物の味質変化を危惧する場合は、避けるほうが好ましい。
【0028】
このようにして得られた本発明のクルトンは、スープ、サラダ等の飲食品中において、従来のクルトンよりも長時間にわたってサクサク感を持続することができる。
【0029】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、該実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
[乾燥前クルトンの作製]
表1に示すパンの配合及び工程により、以下の実施例に用いる乾燥前クルトンを調製した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の配合・工程によって得られたパンを2cm×2cm×1cmの直方体に細断し、乾燥前クルトンを得た。
【0033】
[澱粉付着クルトンの作製]
この乾燥前クルトン100質量部と表2に示した澱粉、すなわち、試料1〜15および比較試料1の澱粉それぞれ50質量部をビニル製袋に入れて振ることで、乾燥前クルトン表面に各種澱粉をまんべんなく付着させ、コンベクションオーブンで130℃・14分間の乾燥を行い、実施例1〜15および比較例1のクルトンを得た。得られたクルトンは、澱粉の付着により、およそ20±5質量%の範囲で増量していた。なお、コントロールとして、澱粉を付着させずに乾燥させただけのクルトンを作製した。
【0034】
【表2】

【0035】
[各種澱粉の調製]
上記表2の各種澱粉の試料を得るために、以下のような反応を行った。
【0036】
(1)試料4、6、9〜12及び比較試料1については、以下のような反応を行った:
硫酸ナトリウム20質量部を溶解した水120質量部に原料となる各澱粉100質量部を加えてスラリーとし、攪拌下、苛性ソーダにてpHを11付近に保持しながらプロピレンオキサイドおよびトリメタリン酸ソーダを適宜添加し(ただし、試料4についてはトリメタリン酸ソーダを添加しない)、41度で20時間反応した後、硫酸で中和、水洗し、次いでドラムドライヤーでα化後粉砕(ただし、比較試料1についてはα化せずに粉砕)することで、試料4のα化ヒドロキシプロピル澱粉、および、試料6、9〜12のα化ヒドロキシプロプル化架橋澱粉、比較試料1のヒドロキシプロプル化架橋澱粉をそれぞれ得た。
【0037】
(2)試料7、8については、以下のような反応を行った:
水120質量部に原料となる各澱粉100質量部を加えてスラリーとし、攪拌下、苛性ソーダにてpHを11付近に保持しながらトリメタリン酸ソーダを適宜加えて40度で5時間反応させた後、硫酸でpH9.5とし、25℃に冷却した。次いで、無水酢酸を適宜添加してアセチル化し、硫酸で中和、水洗後、ドラムドライヤーでα化後、粉砕することで試料7、8のα化アセチル化架橋澱粉を得た。
【0038】
(3)試料5のα化酢酸澱粉は、次のようにして得た:
水120質量部に原料澱粉100質量部を加えてスラリーとし、攪拌下、無水酢酸を適当量添加してアセチル化し、硫酸で中和、水洗後、ドラムドライヤーでα化後、粉砕することで得た。
【0039】
(4)試料13は、次のようにして得た:
水120質量部に原料澱粉100質量部を加えてスラリーとし、攪拌下、苛性ソーダにてpHを11付近に保持しながら適当なトリメタリン酸ソーダを加え、40度で5時間反応させた後、硫酸でpH9.5とし、25℃に冷却してから硫酸で中和、水洗後、ドラムドライヤーでα化、粉砕することで得た。
【0040】
試料1〜3、14〜15のα化澱粉は、水100質量部に対して各原料澱粉100質量部を加えてスラリーとし、ドラムドライヤーでα化後、粉砕することで得た。
【0041】
[評価]
上記表2の各試料を前述のとおりの手法でまぶして得られたクルトン4個を、商品説明どおりの湯量で溶いて調整したインスタントカップスープ(味の素株式会社製、商品名「クノール(登録商標)カップスープ、コーンクリーム」)1カップにそれぞれ投入し、スプーンで3分間攪拌した後、官能試験を行った。官能試験は10人のパネラー(男性6名、女性4名の構成)で行い、5段階で評価し、全パネラーの評点を合計して平均値化した。その際の評価基準を表3に、また、評価結果を表4に示す。表4において、「試験区名」列の実施例番号は、表2の試料番号に対応しており、コントロールは澱粉を付着させない試験区である。
なお、評価は、他の試料との相対評価ではなく、表3の評価基準に従った絶対評価で行った。パネラー全員の評価点数の平均値が4.5以上であるときを「極めて良い」(◎)、3.3以上であるときを「良い」(○)2.0以上であるときを「可」(△)、2.0未満のときを不可(×)と判定した。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
以上の結果より、サクサク感を維持できるクルトンを得るためには、澱粉のα化処理が最も重要であるが、特定の化学的処理がさらに重要であり、架橋、アセチル化又はプロピル化、アセチル化架橋又はプロピル化架橋の順に、サクサク感が向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、細断したパンの外側に、特定のα化澱粉粉末を付着させて乾燥させるという非常に簡便な方法により、水分の多い飲食品中でもサクサクとした食感を長時間維持でき、パン生地の配合に制限を加えることなく、パンの本来の食味を保持させ、しかも、クルトンの飲食品への添加、配合において、飲食品に異質な味覚変化を起こさない、食感と食味に特に優れたクルトンを提供する。本発明のクルトンは、各種飲食品に用いて、該飲食品の本来の味覚を生かしたクルトン入り、飲食品物を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン生地を焼成後、細断、乾燥して製造するクルトンの製造方法において、焼成したパンの外側に、α化ヒドロキシプロピル澱粉、α化酢酸澱粉、α化ヒドロキシプロピル化架橋澱粉、及びα化アセチル化架橋澱粉からなる群より選ばれる1種以上のα化澱粉粉末を付着させることを特徴とする、サクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンの製造方法。
【請求項2】
パンの外側へのα化澱粉粉末の付着を、焼成したパンを細断後、行うことを特徴とする請求項1記載のサクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンの製造方法。
【請求項3】
パンの外側へのα化澱粉粉末の付着量が、パン生地焼成後、乾燥前のクルトン100質量部に対して、1〜60質量部の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載のサクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトンの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載のクルトンの製造方法により製造されたサクサクとした食感とパンの食味を保持させたクルトン。