説明

クレーンの走行装置

【課題】橋型クレーンの急始動または急停止を防止する。
【解決手段】車輪5の真上のサドル上に機台9を設け、その上に2つの台座10、11を設ける。上側の台座10には電動機(ギヤードモータ)12のベース12aを支持し、下側の台座11に中間軸13の軸受けベース13aを支持する。中間軸13には、一端にプーリ(大)15を固定し、このプーリと、電動機の出力軸に取り付けたプーリ(小)16の間に環状ベルト(Vベルト)17を架け渡す。中間軸13の他端にはスプロケット(小)19を固定し、このスプロケットと、車軸に固定したスプロケット(大)20の間に伝動ローラチェーン21を架け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの上を走行する橋型クレーンなどの走行駆動部に関する。
【背景技術】
【0002】
橋型クレーンはレールの上を走行するとき、急始動または急停止すると、吊っている荷が大きく振れて危険であり、振れが収まるまで荷下ろしもできない。従来、クレーンの急始動、急停止を防止するため、駆動モータと車輪の間に流体継手を設けたり、駆動モータ自体をインバータ制御にするなどの対策を講じているが、費用がかかる割には効果が必ずしも充分でなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、急始動または急停止を有効に防止できる、費用の安いクレーン走行装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明のクレーンは走行装置、サドル上に電動機と中間軸を配置し、電動機の出力軸と中間軸の一端を伝動ベルトで連結し、中間軸の他端を、サドルに取り付けられた車軸を伝動チェーンで連結する(請求項1)。このように、電動機と中間軸の間を伝動ベルトで連結したので、大きな力がかかるとベルトに伸びが生じ、衝撃が緩和される。この結果、クレーンの急始動、急停止が緩和され、荷振れを小さく抑えることができる。
【0005】
ベルトは使用していると伸びや磨耗が生じるため、時々、ベルト張力の調整が必要になる。このものでは、電動機と中間軸がいずれもサドル上にあるので、電動機を少し移動して中間軸から少し遠ざけるだけで簡単に調整ができる。
【0006】
電動機の移動は、固定ボルトを緩め、台座に設けられている押しボルトで電動機のベースを押しやるようにして行うが、このときベースがわずかであるが左右方向に回動しやすく、固定ボルトを締める前に正しい方向に戻してやる必要がある。そこで、電動機が載る台座の両側に、電動機のベースがはまり込むように縁を立ち上げる(請求項2)。こうすれば、押しボルトで押すときにベースは両側の縁に拘束されて回動することがないので、作業がきわめて容易になる。
【0007】
人が近寄るところにあるクレーンの可動部は安全カバーで覆うことが法令で義務付けられている。カバーはたいてい鋼板製でボルトで固定されているため、点検時に安全カバーを外すのが容易でない。そこで、安全カバーには覗き窓をあけ、窓をアクリル板などの透明材料で覆うようにすることが好ましい(請求項3)。こうすれば、安全カバーを外さなくとも、窓を通して内部を点検することができ、便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は橋型クレーンを示したもので、サドル1の一端に走行装置2が設けられており、これによって車輪が回転駆動され、レール3の上を走行することができる。
【0009】
この走行装置の詳細を図2〜図4に基づいて説明する。サドル1に軸受6を介して車軸7が支持され、これに車輪5が固定されている。車輪5の真上のサドル上に段付きの機台9を設け、その上に2つの台座10、11を設ける。上側の台座10には電動機(ギヤードモータ)12のベース12aを支持し、下側の台座11に中間軸13の軸受け13bを支持する。中間軸13には、一端にプーリ(大)15を固定し、このプーリと、電動機の出力軸に取り付けたプーリ(小)16の間に環状ベルト(Vベルト)17を架け渡す。中間軸13の他端にはスプロケット(小)19を固定し、このスプロケットと、車軸に固定したスプロケット(大)20の間に伝動ローラチェーン21を架け渡す。
【0010】
このように構成したので、電動機12の回転はベルト17を介して減速して中間軸13に伝えられ、次いで伝動チェーン21を介してさらに減速して車軸7に伝えられる。こうして、車輪5は大きなトルクを得て、クレーンを走行させる。
【0011】
チェーンとベルトの張り具合であるが、チェーンの方はそれほどクリティカルでないが、ベルトの方は、トルクの伝達に大きな影響を及ぼすので、日常的な調整が欠かせない。電動機12および中間軸受13bのそれぞれのベース12a、13bは、対応する台座10、11にボルト22、ナット23で固定してある(図6)。チェーンとベルトの張り具合を調整するときは、ボルト22、ナット23を緩め、ブロック25aに螺合した押しボルト25を回してその先端でベース12a、13aを押しやるようにして調整する(図2参照)。しかし、ボルト孔26とボルト22との間にはクリアランスがあるので、押しボルトで押しやるとき、ベースがわずかであるが左右方向に回動してしまう。そこで従来は、ベースを正しい向きに微調整しなければならなかった。
【0012】
このような手間をなくすため、このものでは、各台座10、11の両側に縁27を立ち上げ、ベースがそれら縁の間にはまり込むようにする。こうすれば、ボルト25で押しやったときに、ベース12a、13aは縁27に拘束され回動することなく移動するので、ベルト、チェーンの張り具合を簡単に調整することができる。符号25bはロックナットである。
【0013】
電動機周りと、チェーンは、図2およびす3に示すように安全カバー29、30で覆ってある。図7は電動機と中間軸の上に被せる鋼製の箱形カバー29である。箱の裏面には覗き窓29aがあいており、この窓を透明アクリル板29bで塞ぐようになっている。アクリル板は、コの字形の枠29cで支えられており、上に引き上げて取り外すこともできる。図8は長円型のチェーンカバー30であり、これも鋼製であるが、2箇所に覗き窓30aがあり、窓はアクリル板30bで覆ってある。これらの安全カバー29、30は、透明アクリル板を通して内部が見えるので、カバーを外さずとも、可動部の点検ができ、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】橋型クレーンの概念図である。
【図2】走行部の立面図である。
【図3】走行部の横断面図である
【図4】電動機の横断面図である。
【図5】台座の斜視図である。
【図6】電動機の台座の断面図である。
【図7】箱形カバーの斜視図である。
【図8】チェーンカバーの斜視図である。
【符号の説明】
【0015】
1 サドル
2 走行装置
5 車輪
7 車軸
10 台座
12 電動機
12a 電動機ベース
13 中間軸
13a 中間軸ベース
17 ベルト
21 チェーン
25 押しボルト
27 縁
29 箱形カバー
29a 覗き窓
29b アクリル板
30 チェーンカバー
30a 覗き窓
30b アクリル板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドル上に電動機と中間軸を配置し、該電動機の出力軸と該中間軸の一端を伝動ベルトで連結し、該中間軸の他端を、該サドルに取り付けられた車軸と伝動チェーンで連結したクレーンの走行装置。
【請求項2】
該電動機のベースが載る台座の両側に、該ベースが回動しないよう拘束する縁を立ち上げ、該ベースの端を押すための押しボルトを該台座に設けた請求項1に記載のクレーンの走行装置。
【請求項3】
可動部を覆う安全カバーに覗き窓をあけ、該窓を透明材料で覆った請求項1または2に記載のクレーンの走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−276948(P2007−276948A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104797(P2006−104797)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(506118179)株式会社ホイスト機工 (1)
【Fターム(参考)】