クレーン走行装置
【課題】クレーン走行装置の走行方向に並んだ車輪の走行中心軸を容易に一致させることができる、製作性及び組立作業性の良いクレーン走行装置を提供する。
【解決手段】一対の走行レール上に走行可能に配される一対のクレーンサドル20aと、一対のクレーンサドルを連結するガーダーと、を有するクレーン走行装置であって、クレーンサドル20aは、サドルフレーム28aと、サドルフレームに車軸によって回転自在に支持され、走行レール上を転動するように備えられる車輪25a,26aと、サドルフレームと対向する車輪の一方の面の間とサドルフレームと対向する車輪の他方の面の間に、車輪の側面に接するようにして各々備えられるカラー32aを有するクレーン走行装置において、車輪は側面をカラーによって規制されることにより、車輪位置を車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有する。
【解決手段】一対の走行レール上に走行可能に配される一対のクレーンサドル20aと、一対のクレーンサドルを連結するガーダーと、を有するクレーン走行装置であって、クレーンサドル20aは、サドルフレーム28aと、サドルフレームに車軸によって回転自在に支持され、走行レール上を転動するように備えられる車輪25a,26aと、サドルフレームと対向する車輪の一方の面の間とサドルフレームと対向する車輪の他方の面の間に、車輪の側面に接するようにして各々備えられるカラー32aを有するクレーン走行装置において、車輪は側面をカラーによって規制されることにより、車輪位置を車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンサドルは荷物の巻上げや搬送を行うクレーンのクレーン走行装置であり、サドルフレームに車輪が取付けられて、走行路上を移動するものである。(特許文献1及び2参照)。また、クレーンサドルは対を成して用いられ、巻上機を吊り下げたガーダーの両端部に結合されて、クレーンの走行に用いられる。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−85295号公報
【特許文献2】特開2002−338193号公報
【特許文献3】特許1489592
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のクレーンサドルは簡素化と耐久性を優先するため、特許文献1、特許文献2に開示されているように、サドルフレームと車輪の間に所定の長さのカラーを備え、サドルフレームに取付けられた車輪が円筒中心軸方向に移動することのないようにカラーによって車輪の位置が固定されている。
【0005】
従って、クレーンサドルの組立誤差やサドルフレームを構成する部材の曲り等によって、サドルフレームの一方の端部に取付けられた車輪の走行中心軸と、他方の端部に取付けられた車輪の走行中心軸にずれが生じるとクレーンの走行性能が悪くなり、クレーンの惰行、車輪の異常摩耗、異常音の発生などにより、クレーンの機械部分や構造部分に無理を生じ機能を落とすことがあり、場合によってはクレーンの脱線など、危険な状態を招く恐れがあった。
【0006】
このため、特許文献1、特許文献2に開示の従来技術は、各車輪の走行中心軸を同軸化する為にサドルフレームの寸法精度を出し、部材の個々で異なる曲りを矯正する必要があった。また、クレーンサドルをクレーンとして組立てる場合は、ガーダ組立の寸法精度を出す必要があり、クレーンの組立作業性が悪かった。
【0007】
本発明は、サドルフレームを構成する部材の寸法精度に特別な注意を払うことなく、走行用駆動車輪の走行中心軸と従動車輪の走行中心軸を一致させることを可能にすることにより、車輪の芯出し作業性の良いクレーンサドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば、一対の走行レール上に走行可能に配される一対のクレーンサドルと、前記一対のクレーンサドルを連結するガーダーと、を有するクレーン走行装置であって、前記クレーンサドルは、サドルフレームと、前記サドルフレームに車軸によって回転自在に支持され、前記走行レール上を転動するように備えられる車輪と、前記サドルフレームと対向する前記車輪の一方の面の間と前記サドルフレームと対向する車輪の他方の面の間に、前記車輪の側面に接するようにして各々備えられるカラーを有し、前記車輪は側面を前記カラーによって規制されることにより、車輪位置を前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有するという構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クレーン走行装置及び走行装置付きクレーンの製作性及び組立作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例の走行装置付きクレーンの全体構成の外観斜視図である。
【図2(a)】本発明の一実施例のクレーンサドルの平面図である。
【図2(b)】図2(a)におけるクレーンサドルの正面図である。
【図3(a)】本発明の一実施例のクレーンサドル従動車輪固定部分の正面図である。
【図3(b)】図3(a)におけるクレーンサドル従動車輪固定部分の断面図である。
【図4】本発明の一実施例のクレーンサドル従動車輪固定部分の外観斜視図である。
【図5(a)】図4におけるカラーの外観斜視図である。
【図5(b)】図4におけるカラーの分解図である。
【図6(a)】本発明の一実施例のクレーンサドル従動車輪固定部分の正面図である。
【図6(b)】図6(a)におけるクレーンサドル従動車輪固定部分の断面図である。
【図7】図6(a)における走行装置付きクレーンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施例を、図1から図7を用いて説明する。なお、本発明は図示例に限定されるものではない。
【0012】
はじめに図1に基づき走行装置付きクレーンの全体構成と動作状況を説明する。図1は本発明の一実施例の走行装置付きクレーンの全体構成の外観斜視図である。
【0013】
まず、走行装置付きクレーンの全体構成について説明する。対を成して対向するように配される走行レール11a、11bがあり、走行レール11a上には走行用駆動車輪25aと従動車輪26aを備えるクレーンサドル20aが走行可能に設置されている。走行レール11b上には、走行用駆動車輪25bと従動車輪26bを備えるクレーンサドル20bが走行可能に設置されている。また、クレーンサドル20a、20bはガーダー10によって連結されている。
【0014】
本発明のクレーン走行装置は、一対のクレーンサドルと各クレーンサドルを連結するガーダーから構成される。ガーダー10には、電動トロリ2がガーダー10上を横行移動可能に設置されており、また、クレーンサドル20a、20bを制御するサドル制御部12が備えられている。電動トロリ2には、荷を上下動させるための電動巻上機1が取付けられ、電動巻上機1には荷を吊り下げるためのクレーンフック4が備えられている。また、電動巻上機1には電動巻上機1及び電動トロリ2の制御を行う巻上機制御部5と、走行装置付きクレーンを操作するための操作入力装置3が備えられている。
【0015】
次に、図1を用いて走行装置付きクレーンの動作について説明する。操作者が操作入力装置3を用いて操作を入力すると、入力される制御信号に応じて巻上機制御部5が電動巻上機1及び電動トロリ2の移動を制御し、クレーンフック4に取付けられた荷をZ方向及び−Z方向またはX方向及び−X方向へ移動させることが出来る。また、同様に操作入力装置3で入力される制御信号に応じて、サドル制御部12がクレーンサドル20a及び20bの移動を制御し、クレーンフック4に取付けられた荷をY方向及び−Y方向へ移動させることができる。
【0016】
なお、図1に示すカラー32a、32bは本実施例を構成する芯出し機構の一例であり、詳細は後述する。
【0017】
つづいて、本実施例のクレーン走行装置の全体構成を図2(a)、図2(b)を用いて説明する。図2(a)、図2(b)は本発明のカラーが構成する芯出し機構の一例であり、図2(a)は本実施例におけるクレーンサドルの平面図、図2(b)は本発明の実施例におけるクレーンサドルの正面図である。なおクレーンサドルは、対を成して使用されるものであり、本実施例では左右のクレーンサドルが同一の構成をとるものであるため、図2(a)、図2(b)を用いて一方のクレーンサドルの構成についてのみ説明する。
【0018】
図2(a)、図2(b)に示すように、クレーンサドル20aは、サドルフレーム28aに走行用駆動車輪25a、従動車輪26aを備えている。サドルフレーム28aは略直方体形状であり、サドルフレーム28aの長手方向の両端面すなわち走行方向に面する両端面には衝撃緩衝装置であるダンパー30が取付けられている。
【0019】
サドルフレーム28aの長手方向の一方の端部には、車軸27が取付けられる車軸取付穴が設けられ、嵌め合いによって車軸27が取付けられている。車軸27は車軸ストッパ29によってサドルフレーム28aに固定され、走行用駆動車輪25aが回転自在に取付けられている。走行用駆動車輪25aは駆動装置により回転させられる車輪であり、この走行用駆動車輪25aの駆動装置として、走行用駆動車輪25aを回転駆動させる電動機21、電動機21の制動機構であるブレーキ22、走行用駆動車輪25aの回転速度を調整する減速部23及び最終減速段24とが組み合わされて取付けられている。サドルフレーム28aと走行用駆動車輪25aとの間で、走行用駆動車輪25aに連結するように最終減速段24が取付けられ、最終減速段24に連結するようにサドルフレーム28aの外側に減速部23が取付けられ、最終減速段24の上部は最終減速段カバー31によって覆われている。減速部23には電動機21が取付けられており、電動機の内部にはブレーキ22が備えられて駆動装置が構成されている。走行用駆動車輪25aは、サドルフレーム28aと走行用駆動車輪25aの一方の面の間と、サドルフレーム28aと走行用駆動車輪25aの他方の面の間に挟まれるように位置し、車軸27によって回転自在に取付けられているカラー32aによって、円筒中心軸方向に動くことのないよう固定される。
【0020】
サドルフレーム28aの長手方向の他方の端部には、車軸27が取付けられる車軸取付穴が設けられ、嵌め合いによって車軸27が取付けられている。車軸27は車軸ストッパ29によってサドルフレーム28aに固定され、従動車輪26aが回転自在に取付けられている。従動車輪26aは、サドルフレーム28aと従動車輪26aの一方の面の間と、サドルフレーム28aと従動車輪26aの他方の面の間に取付けられたカラー32aにより、車輪の位置が車輪の円筒中心軸方向に動くことのないよう固定されている。
【0021】
図2(a)に示すように、クレーンサドルの組立誤差やサドルフレームを構成する部材の曲り等によって、サドルフレームの一方の端部に取付けられた走行用駆動車輪25aの走行中心軸X−X軸と、他方の端部に取付けられた従動車輪26aの走行中心軸Y−Y軸に平行差Lが生じるとクレーンの走行性能が悪くなり、クレーンの惰行、車輪の異常摩耗、異常音の発生などにより、クレーンの機械部分や構造部分に無理を生じ機能を落とすことがあり、最悪の場合はクレーンの脱線など、危険な状態を招く恐れがある。その為、平行差Lは許容可能な値以下に小さくする必要がある。
図2(a)から図3(b)に示す本発明の実施例のクレーンサドル20aは、カラー32aの位置をサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの一方の面の間から、サドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの他方の面の間に移動することで、図2(a)に示す平行差Lの値を小さくする本実施例のクレーンサドルの芯出し機構の動作を以下に説明する。平行差Lが生じた場合、図3(a)及び図3(b)に示すように、車軸27に回転自在に複数取付けられている円筒形状を有し円筒の高さ方向に切れ目を有するカラー32aは、走行中心軸X−X軸により近いサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの面の間から、他方のサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの面の間に移動することにより、従動車輪26aは移動したカラー32aの板厚と同じ距離を走行中心軸Y−Y軸の方向に移動する。
【0022】
よって、カラー32aは、板厚の合計が平行差Lの距離と同一となるような個数のカラー32aを、走行中心軸X−X軸により近いサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの面の間から、他方のサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの面の間に移動することにより、平行差Lを限りなく小さくなるよう従動車輪26aの位置を移動することが可能な調整機構を有する。
【0023】
上記のカラー32aは、円筒形状を有し円筒の高さ方向に切れ目を持つ弾性体であり、切れ目に対して円周方向に力を加えると力に応じて円筒形の切れ目の隙間が拡大し、かかった力を取り去れば円筒形の切れ目の隙間が縮小し元の形状に戻るようになっている。
【0024】
従来の構造においてカラーを取外すためには、車軸27及び従動車輪26aをサドルフレーム28aから一度取外す必要があるが、クレーンサドル20aは走行レール11a上に設置されている為、高所作業の上に足場が不安定であるために大変危険であったが、本発明の実施例のカラー32aは力を加えて拡大した切れ目の隙間によって車軸27をサドルフレーム28aより抜くことなく車軸27に取付及び取外が可能な機構を有している。
【0025】
また、カラー32aは上部に突起を備えることで、突起を持ち引き抜くように取外すことも可能である。尚、図3(a)から図3(b)に示す本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、カラー32aの切れ目部分に力を加えるための突起や穴、又はその両方を備えることにより、効率よく切れ目部分に力を加えて取付及び取外性の良い構造とすることもできる。
【0026】
図6及び図7に示す本発明の実施例のクレーンサドル20aは、カラー32aの位置が車輪の円筒中心軸方向に移動されることで、次のように平行差Lの値を小さくする。カラー32aは、表面にねじ山を備える円柱形に形成され、サドルフレーム28aが有する従動車輪26aを挟んで対向する2つの面に、従動車輪26aの円筒面にカラー32aの端面が常に接するように各々1つ以上取付けられる。サドルフレーム28aは、カラー32aが取付けられるように設けられた取付穴の内面にカラー32aの有するねじ山と噛合するねじ山を備え、カラー32aとねじ山にて締結されている。
【0027】
ここで図2(a)に示すように、走行用駆動車輪25aの走行中心軸X−X軸と従動車輪26aの走行中心軸Y−Y軸に平行差Lが生じた場合、走行中心軸X−X軸により近いサドルフレーム28aの側面に締結されたカラー32aは、端面が従動車輪26aの面に常に接した状態で、走行中心軸X−X軸と走行中心軸Y−Y軸が同軸となるまでサドルフレーム28a方向に噛合するねじ山に沿って回転移動され、他方のサドルフレーム28aに締結されたカラー32aは、端面が従動車輪26aの面に接するまで従動車輪26a方向に噛合するねじ山に沿って回転移動されることにより、本発明の実施例のクレーンサドル20aは平行差Lが生じないよう従動車輪26aの位置を移動し固定されることが可能な調整機構を有する。
【0028】
図4から図5(b)に示す本発明の実施例のクレーンサドルは、カラー32aの位置が車輪の円筒中心軸方向に移動される。以下において、本実施例のクレーンサドルの芯出し機構の動作を説明する。図5(a)及び図5(b)に示すように、カラー32aは、直円柱の円周上からはみ出すように出っ張った円板形状のフランジを有する略円柱形状に形成され、直円柱の一方の端面からフランジまでの表面にねじ山を備えたカラーロッド40と、ボールベアリング41が、円板形状のカラープレート43に抜け止め42によってねじで固定されている。カラープレート43は、一方の面にボールベアリング41が取付けられる取付溝が設けられ、嵌め合いによってボールベアリング41が取付けられ、他方の面に従動車輪26aに取り付けられているボールベアリングの内輪側軌道輪端面を締め付けるためのリング状の突起を有している。さらに、ボールベアリング41にカラーロッド40が嵌め込むことによって取付けられることにより、カラーロッド40とカラープレート43の2つの接触面が直接接して回転するよりも回転時の摩擦を軽減し、互いの回転による影響をより受けない構成になっている。
【0029】
平板状の抜け止め42は、中央にカラーロッド40を通す為の通し穴を有しており、通し穴はカラーロッド40の直円柱径以上フランジ径未満の寸法を有していることから、カラーロッド40を片側から通したときに、フランジ部が通し穴の円周に引っかかる構造となっている。また、カラープレート43の中央部には車軸27を通す事が可能な車軸穴が設けられており、車軸27を通す事で従動車輪26aと同心円位置に配置される。
【0030】
図5(b)に示すように、サドルフレーム28aは、カラー32aの有するカラーロッド40が取付けられるよう設けられた取付穴の内面にカラーロッド40の有するねじ山と噛合するねじ山を備え、カラーロッド40とねじ山にて締結されている。
【0031】
上記の実施例は、図2(a)に示すように走行用駆動車輪25aの走行中心軸X−X軸と従動車輪26aの走行中心軸Y−Y軸に平行差Lが生じた場合、走行中心軸X−X軸により近いサドルフレーム28aの側面に締結されたカラー32aは、カラー32aが有するカラープレート43の端面が従動車輪26aの面に常に接した状態で走行中心軸X−X軸と走行中心軸Y−Y軸が同軸となるまでフレーム方向にカラープレート43が有するカラーロッド40を回転移動し、他方のサドルフレーム28aに締結されたカラー32aは、カラー32aが有するカラープレート43の端面が従動車輪26aの面に接するまで従動車輪26a方向にカラープレート43が有するカラーロッド40を噛合するねじ山に沿って回転移動されることにより、平行差Lが生じないよう従動車輪26aの位置を移動し固定されることが可能な調整機構を有する。
【0032】
尚、図4から図5(b)に示す本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、カラー32aにおいてサドルフレーム28aに対向する端面に多角形又は円形の頭部を備えることにより、工具又は手動によってより容易に回転させることができ、操作性の良い構造とすることもできる。同様に、カラー32aにおいてサドルフレーム28aに対向する端面に工具又は手動で回すための溝又は穴を備えても前記と同様の効果が得られる。
【0033】
図6(a)から図7に示す本発明の実施例のクレーンサドルは、車軸27が軸方向に移動することで、次のように平行差Lの値を小さくする。車軸27は、異なる外径を有する大径円柱部と小径円柱部とを同軸上に配置した段付円柱形状であり、大径円柱部表面にねじ山を備えている。大径円柱部はガーダー10側のサドルフレーム28aが有する車軸取付穴の内径に備えるねじ山と大径円柱部が備えるねじ山が噛合し締結され、小径円柱部は建屋壁側のサドルフレーム28aに嵌め合いによって取付けられている。
【0034】
小径円柱部には従動車輪26aが回転自在に取付けられており、従動車輪26aは車軸27の大径円柱部とカラー32aの間に挟まれるように位置している。従動車輪26aは大径円柱部とカラー32aに接することにより軸方向への移動を妨げられ、位置を固定される。
【0035】
ここで、図6(a)及び図6(b)はカラー32aが従動車輪26aに固定されている場合の実施例であり、円周溝を有する車軸27の溝部に1つ以上のキー状のカラー32aが嵌め込まれ、位置を固定される。カラー32aは、車軸27の溝部から外れることのないよう、ボルト等の機械要素により従動車輪26aに締結されている。
【0036】
上記の実施例は、図2(a)に示すように走行用駆動車輪25aの走行中心軸X−X軸と従動車輪26aの走行中心軸Y−Y軸に平行差Lが生じた場合、サドルフレーム28aに噛合するねじ山に沿って、車軸27の大径円柱部を平行差Lが小さくなる方向に回転移動することにより、従動車輪26aの位置を平行差Lが0となる位置に移動し固定することが可能な調整機構を有する。
【0037】
さらに、図7に示すように、建屋50a、50b上に沿って設けられた走行レール11a、11b上にクレーンサドル20a、20bが設置されている場合、建屋50a、50bとクレーンサドル20a、20bの間に作業スペースがない為、建屋50a、50b側に調整機構を設け調整を行うことが出来ない為、クレーンを地上に降ろしてから作業する必要があるが、本発明は、ガーダー10側からの調整のみで平行差Lの値を小さくすることが可能である。
【0038】
このように本発明によれば、各々のサドルフレーム28a、28bの各従動車輪26a、26bに備えられるカラー32a、32bが、走行中心軸の平行差を小さくなるよう従動車輪の位置を調整可能な機構を有することにより、クレーンサドルの組立誤差や、サドルフレームを構成する部材の曲り等で走行用駆動車輪の走行中心軸と従動車輪の走行中心軸にずれが生じた場合にも、サドルフレームの寸法精度を出し、部材の個々で異なる曲りを矯正することなく、走行用駆動車輪と従動車輪の走行中心軸を容易に一致させることができ、車輪の芯出し作業性の良いクレーン走行装置及び走行装置付きクレーンを提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…電動巻上機、2…電動トロリ、3…操作入力装置、4…クレーンフック、5…巻上機制御部、10…ガーダー、11a、11b…走行レール、12…サドル制御部、20a、20b…クレーンサドル、21…電動機、22…ブレーキ、23…減速部、24…最終減速段、25a、25b…走行用駆動車輪、26a、26b…従動車輪、27…車軸、28a、28b…サドルフレーム、29…車軸ストッパ、30…ダンパー、31…最終減速段カバー、32a、32b…カラー、40…カラーロッド、41…ボールベアリング、42…抜け止め、43…カラープレート、50a、50b…建屋
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンサドルは荷物の巻上げや搬送を行うクレーンのクレーン走行装置であり、サドルフレームに車輪が取付けられて、走行路上を移動するものである。(特許文献1及び2参照)。また、クレーンサドルは対を成して用いられ、巻上機を吊り下げたガーダーの両端部に結合されて、クレーンの走行に用いられる。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−85295号公報
【特許文献2】特開2002−338193号公報
【特許文献3】特許1489592
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のクレーンサドルは簡素化と耐久性を優先するため、特許文献1、特許文献2に開示されているように、サドルフレームと車輪の間に所定の長さのカラーを備え、サドルフレームに取付けられた車輪が円筒中心軸方向に移動することのないようにカラーによって車輪の位置が固定されている。
【0005】
従って、クレーンサドルの組立誤差やサドルフレームを構成する部材の曲り等によって、サドルフレームの一方の端部に取付けられた車輪の走行中心軸と、他方の端部に取付けられた車輪の走行中心軸にずれが生じるとクレーンの走行性能が悪くなり、クレーンの惰行、車輪の異常摩耗、異常音の発生などにより、クレーンの機械部分や構造部分に無理を生じ機能を落とすことがあり、場合によってはクレーンの脱線など、危険な状態を招く恐れがあった。
【0006】
このため、特許文献1、特許文献2に開示の従来技術は、各車輪の走行中心軸を同軸化する為にサドルフレームの寸法精度を出し、部材の個々で異なる曲りを矯正する必要があった。また、クレーンサドルをクレーンとして組立てる場合は、ガーダ組立の寸法精度を出す必要があり、クレーンの組立作業性が悪かった。
【0007】
本発明は、サドルフレームを構成する部材の寸法精度に特別な注意を払うことなく、走行用駆動車輪の走行中心軸と従動車輪の走行中心軸を一致させることを可能にすることにより、車輪の芯出し作業性の良いクレーンサドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば、一対の走行レール上に走行可能に配される一対のクレーンサドルと、前記一対のクレーンサドルを連結するガーダーと、を有するクレーン走行装置であって、前記クレーンサドルは、サドルフレームと、前記サドルフレームに車軸によって回転自在に支持され、前記走行レール上を転動するように備えられる車輪と、前記サドルフレームと対向する前記車輪の一方の面の間と前記サドルフレームと対向する車輪の他方の面の間に、前記車輪の側面に接するようにして各々備えられるカラーを有し、前記車輪は側面を前記カラーによって規制されることにより、車輪位置を前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有するという構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クレーン走行装置及び走行装置付きクレーンの製作性及び組立作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例の走行装置付きクレーンの全体構成の外観斜視図である。
【図2(a)】本発明の一実施例のクレーンサドルの平面図である。
【図2(b)】図2(a)におけるクレーンサドルの正面図である。
【図3(a)】本発明の一実施例のクレーンサドル従動車輪固定部分の正面図である。
【図3(b)】図3(a)におけるクレーンサドル従動車輪固定部分の断面図である。
【図4】本発明の一実施例のクレーンサドル従動車輪固定部分の外観斜視図である。
【図5(a)】図4におけるカラーの外観斜視図である。
【図5(b)】図4におけるカラーの分解図である。
【図6(a)】本発明の一実施例のクレーンサドル従動車輪固定部分の正面図である。
【図6(b)】図6(a)におけるクレーンサドル従動車輪固定部分の断面図である。
【図7】図6(a)における走行装置付きクレーンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施例を、図1から図7を用いて説明する。なお、本発明は図示例に限定されるものではない。
【0012】
はじめに図1に基づき走行装置付きクレーンの全体構成と動作状況を説明する。図1は本発明の一実施例の走行装置付きクレーンの全体構成の外観斜視図である。
【0013】
まず、走行装置付きクレーンの全体構成について説明する。対を成して対向するように配される走行レール11a、11bがあり、走行レール11a上には走行用駆動車輪25aと従動車輪26aを備えるクレーンサドル20aが走行可能に設置されている。走行レール11b上には、走行用駆動車輪25bと従動車輪26bを備えるクレーンサドル20bが走行可能に設置されている。また、クレーンサドル20a、20bはガーダー10によって連結されている。
【0014】
本発明のクレーン走行装置は、一対のクレーンサドルと各クレーンサドルを連結するガーダーから構成される。ガーダー10には、電動トロリ2がガーダー10上を横行移動可能に設置されており、また、クレーンサドル20a、20bを制御するサドル制御部12が備えられている。電動トロリ2には、荷を上下動させるための電動巻上機1が取付けられ、電動巻上機1には荷を吊り下げるためのクレーンフック4が備えられている。また、電動巻上機1には電動巻上機1及び電動トロリ2の制御を行う巻上機制御部5と、走行装置付きクレーンを操作するための操作入力装置3が備えられている。
【0015】
次に、図1を用いて走行装置付きクレーンの動作について説明する。操作者が操作入力装置3を用いて操作を入力すると、入力される制御信号に応じて巻上機制御部5が電動巻上機1及び電動トロリ2の移動を制御し、クレーンフック4に取付けられた荷をZ方向及び−Z方向またはX方向及び−X方向へ移動させることが出来る。また、同様に操作入力装置3で入力される制御信号に応じて、サドル制御部12がクレーンサドル20a及び20bの移動を制御し、クレーンフック4に取付けられた荷をY方向及び−Y方向へ移動させることができる。
【0016】
なお、図1に示すカラー32a、32bは本実施例を構成する芯出し機構の一例であり、詳細は後述する。
【0017】
つづいて、本実施例のクレーン走行装置の全体構成を図2(a)、図2(b)を用いて説明する。図2(a)、図2(b)は本発明のカラーが構成する芯出し機構の一例であり、図2(a)は本実施例におけるクレーンサドルの平面図、図2(b)は本発明の実施例におけるクレーンサドルの正面図である。なおクレーンサドルは、対を成して使用されるものであり、本実施例では左右のクレーンサドルが同一の構成をとるものであるため、図2(a)、図2(b)を用いて一方のクレーンサドルの構成についてのみ説明する。
【0018】
図2(a)、図2(b)に示すように、クレーンサドル20aは、サドルフレーム28aに走行用駆動車輪25a、従動車輪26aを備えている。サドルフレーム28aは略直方体形状であり、サドルフレーム28aの長手方向の両端面すなわち走行方向に面する両端面には衝撃緩衝装置であるダンパー30が取付けられている。
【0019】
サドルフレーム28aの長手方向の一方の端部には、車軸27が取付けられる車軸取付穴が設けられ、嵌め合いによって車軸27が取付けられている。車軸27は車軸ストッパ29によってサドルフレーム28aに固定され、走行用駆動車輪25aが回転自在に取付けられている。走行用駆動車輪25aは駆動装置により回転させられる車輪であり、この走行用駆動車輪25aの駆動装置として、走行用駆動車輪25aを回転駆動させる電動機21、電動機21の制動機構であるブレーキ22、走行用駆動車輪25aの回転速度を調整する減速部23及び最終減速段24とが組み合わされて取付けられている。サドルフレーム28aと走行用駆動車輪25aとの間で、走行用駆動車輪25aに連結するように最終減速段24が取付けられ、最終減速段24に連結するようにサドルフレーム28aの外側に減速部23が取付けられ、最終減速段24の上部は最終減速段カバー31によって覆われている。減速部23には電動機21が取付けられており、電動機の内部にはブレーキ22が備えられて駆動装置が構成されている。走行用駆動車輪25aは、サドルフレーム28aと走行用駆動車輪25aの一方の面の間と、サドルフレーム28aと走行用駆動車輪25aの他方の面の間に挟まれるように位置し、車軸27によって回転自在に取付けられているカラー32aによって、円筒中心軸方向に動くことのないよう固定される。
【0020】
サドルフレーム28aの長手方向の他方の端部には、車軸27が取付けられる車軸取付穴が設けられ、嵌め合いによって車軸27が取付けられている。車軸27は車軸ストッパ29によってサドルフレーム28aに固定され、従動車輪26aが回転自在に取付けられている。従動車輪26aは、サドルフレーム28aと従動車輪26aの一方の面の間と、サドルフレーム28aと従動車輪26aの他方の面の間に取付けられたカラー32aにより、車輪の位置が車輪の円筒中心軸方向に動くことのないよう固定されている。
【0021】
図2(a)に示すように、クレーンサドルの組立誤差やサドルフレームを構成する部材の曲り等によって、サドルフレームの一方の端部に取付けられた走行用駆動車輪25aの走行中心軸X−X軸と、他方の端部に取付けられた従動車輪26aの走行中心軸Y−Y軸に平行差Lが生じるとクレーンの走行性能が悪くなり、クレーンの惰行、車輪の異常摩耗、異常音の発生などにより、クレーンの機械部分や構造部分に無理を生じ機能を落とすことがあり、最悪の場合はクレーンの脱線など、危険な状態を招く恐れがある。その為、平行差Lは許容可能な値以下に小さくする必要がある。
図2(a)から図3(b)に示す本発明の実施例のクレーンサドル20aは、カラー32aの位置をサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの一方の面の間から、サドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの他方の面の間に移動することで、図2(a)に示す平行差Lの値を小さくする本実施例のクレーンサドルの芯出し機構の動作を以下に説明する。平行差Lが生じた場合、図3(a)及び図3(b)に示すように、車軸27に回転自在に複数取付けられている円筒形状を有し円筒の高さ方向に切れ目を有するカラー32aは、走行中心軸X−X軸により近いサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの面の間から、他方のサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの面の間に移動することにより、従動車輪26aは移動したカラー32aの板厚と同じ距離を走行中心軸Y−Y軸の方向に移動する。
【0022】
よって、カラー32aは、板厚の合計が平行差Lの距離と同一となるような個数のカラー32aを、走行中心軸X−X軸により近いサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの面の間から、他方のサドルフレーム28aと対向する従動車輪26aの面の間に移動することにより、平行差Lを限りなく小さくなるよう従動車輪26aの位置を移動することが可能な調整機構を有する。
【0023】
上記のカラー32aは、円筒形状を有し円筒の高さ方向に切れ目を持つ弾性体であり、切れ目に対して円周方向に力を加えると力に応じて円筒形の切れ目の隙間が拡大し、かかった力を取り去れば円筒形の切れ目の隙間が縮小し元の形状に戻るようになっている。
【0024】
従来の構造においてカラーを取外すためには、車軸27及び従動車輪26aをサドルフレーム28aから一度取外す必要があるが、クレーンサドル20aは走行レール11a上に設置されている為、高所作業の上に足場が不安定であるために大変危険であったが、本発明の実施例のカラー32aは力を加えて拡大した切れ目の隙間によって車軸27をサドルフレーム28aより抜くことなく車軸27に取付及び取外が可能な機構を有している。
【0025】
また、カラー32aは上部に突起を備えることで、突起を持ち引き抜くように取外すことも可能である。尚、図3(a)から図3(b)に示す本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、カラー32aの切れ目部分に力を加えるための突起や穴、又はその両方を備えることにより、効率よく切れ目部分に力を加えて取付及び取外性の良い構造とすることもできる。
【0026】
図6及び図7に示す本発明の実施例のクレーンサドル20aは、カラー32aの位置が車輪の円筒中心軸方向に移動されることで、次のように平行差Lの値を小さくする。カラー32aは、表面にねじ山を備える円柱形に形成され、サドルフレーム28aが有する従動車輪26aを挟んで対向する2つの面に、従動車輪26aの円筒面にカラー32aの端面が常に接するように各々1つ以上取付けられる。サドルフレーム28aは、カラー32aが取付けられるように設けられた取付穴の内面にカラー32aの有するねじ山と噛合するねじ山を備え、カラー32aとねじ山にて締結されている。
【0027】
ここで図2(a)に示すように、走行用駆動車輪25aの走行中心軸X−X軸と従動車輪26aの走行中心軸Y−Y軸に平行差Lが生じた場合、走行中心軸X−X軸により近いサドルフレーム28aの側面に締結されたカラー32aは、端面が従動車輪26aの面に常に接した状態で、走行中心軸X−X軸と走行中心軸Y−Y軸が同軸となるまでサドルフレーム28a方向に噛合するねじ山に沿って回転移動され、他方のサドルフレーム28aに締結されたカラー32aは、端面が従動車輪26aの面に接するまで従動車輪26a方向に噛合するねじ山に沿って回転移動されることにより、本発明の実施例のクレーンサドル20aは平行差Lが生じないよう従動車輪26aの位置を移動し固定されることが可能な調整機構を有する。
【0028】
図4から図5(b)に示す本発明の実施例のクレーンサドルは、カラー32aの位置が車輪の円筒中心軸方向に移動される。以下において、本実施例のクレーンサドルの芯出し機構の動作を説明する。図5(a)及び図5(b)に示すように、カラー32aは、直円柱の円周上からはみ出すように出っ張った円板形状のフランジを有する略円柱形状に形成され、直円柱の一方の端面からフランジまでの表面にねじ山を備えたカラーロッド40と、ボールベアリング41が、円板形状のカラープレート43に抜け止め42によってねじで固定されている。カラープレート43は、一方の面にボールベアリング41が取付けられる取付溝が設けられ、嵌め合いによってボールベアリング41が取付けられ、他方の面に従動車輪26aに取り付けられているボールベアリングの内輪側軌道輪端面を締め付けるためのリング状の突起を有している。さらに、ボールベアリング41にカラーロッド40が嵌め込むことによって取付けられることにより、カラーロッド40とカラープレート43の2つの接触面が直接接して回転するよりも回転時の摩擦を軽減し、互いの回転による影響をより受けない構成になっている。
【0029】
平板状の抜け止め42は、中央にカラーロッド40を通す為の通し穴を有しており、通し穴はカラーロッド40の直円柱径以上フランジ径未満の寸法を有していることから、カラーロッド40を片側から通したときに、フランジ部が通し穴の円周に引っかかる構造となっている。また、カラープレート43の中央部には車軸27を通す事が可能な車軸穴が設けられており、車軸27を通す事で従動車輪26aと同心円位置に配置される。
【0030】
図5(b)に示すように、サドルフレーム28aは、カラー32aの有するカラーロッド40が取付けられるよう設けられた取付穴の内面にカラーロッド40の有するねじ山と噛合するねじ山を備え、カラーロッド40とねじ山にて締結されている。
【0031】
上記の実施例は、図2(a)に示すように走行用駆動車輪25aの走行中心軸X−X軸と従動車輪26aの走行中心軸Y−Y軸に平行差Lが生じた場合、走行中心軸X−X軸により近いサドルフレーム28aの側面に締結されたカラー32aは、カラー32aが有するカラープレート43の端面が従動車輪26aの面に常に接した状態で走行中心軸X−X軸と走行中心軸Y−Y軸が同軸となるまでフレーム方向にカラープレート43が有するカラーロッド40を回転移動し、他方のサドルフレーム28aに締結されたカラー32aは、カラー32aが有するカラープレート43の端面が従動車輪26aの面に接するまで従動車輪26a方向にカラープレート43が有するカラーロッド40を噛合するねじ山に沿って回転移動されることにより、平行差Lが生じないよう従動車輪26aの位置を移動し固定されることが可能な調整機構を有する。
【0032】
尚、図4から図5(b)に示す本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、カラー32aにおいてサドルフレーム28aに対向する端面に多角形又は円形の頭部を備えることにより、工具又は手動によってより容易に回転させることができ、操作性の良い構造とすることもできる。同様に、カラー32aにおいてサドルフレーム28aに対向する端面に工具又は手動で回すための溝又は穴を備えても前記と同様の効果が得られる。
【0033】
図6(a)から図7に示す本発明の実施例のクレーンサドルは、車軸27が軸方向に移動することで、次のように平行差Lの値を小さくする。車軸27は、異なる外径を有する大径円柱部と小径円柱部とを同軸上に配置した段付円柱形状であり、大径円柱部表面にねじ山を備えている。大径円柱部はガーダー10側のサドルフレーム28aが有する車軸取付穴の内径に備えるねじ山と大径円柱部が備えるねじ山が噛合し締結され、小径円柱部は建屋壁側のサドルフレーム28aに嵌め合いによって取付けられている。
【0034】
小径円柱部には従動車輪26aが回転自在に取付けられており、従動車輪26aは車軸27の大径円柱部とカラー32aの間に挟まれるように位置している。従動車輪26aは大径円柱部とカラー32aに接することにより軸方向への移動を妨げられ、位置を固定される。
【0035】
ここで、図6(a)及び図6(b)はカラー32aが従動車輪26aに固定されている場合の実施例であり、円周溝を有する車軸27の溝部に1つ以上のキー状のカラー32aが嵌め込まれ、位置を固定される。カラー32aは、車軸27の溝部から外れることのないよう、ボルト等の機械要素により従動車輪26aに締結されている。
【0036】
上記の実施例は、図2(a)に示すように走行用駆動車輪25aの走行中心軸X−X軸と従動車輪26aの走行中心軸Y−Y軸に平行差Lが生じた場合、サドルフレーム28aに噛合するねじ山に沿って、車軸27の大径円柱部を平行差Lが小さくなる方向に回転移動することにより、従動車輪26aの位置を平行差Lが0となる位置に移動し固定することが可能な調整機構を有する。
【0037】
さらに、図7に示すように、建屋50a、50b上に沿って設けられた走行レール11a、11b上にクレーンサドル20a、20bが設置されている場合、建屋50a、50bとクレーンサドル20a、20bの間に作業スペースがない為、建屋50a、50b側に調整機構を設け調整を行うことが出来ない為、クレーンを地上に降ろしてから作業する必要があるが、本発明は、ガーダー10側からの調整のみで平行差Lの値を小さくすることが可能である。
【0038】
このように本発明によれば、各々のサドルフレーム28a、28bの各従動車輪26a、26bに備えられるカラー32a、32bが、走行中心軸の平行差を小さくなるよう従動車輪の位置を調整可能な機構を有することにより、クレーンサドルの組立誤差や、サドルフレームを構成する部材の曲り等で走行用駆動車輪の走行中心軸と従動車輪の走行中心軸にずれが生じた場合にも、サドルフレームの寸法精度を出し、部材の個々で異なる曲りを矯正することなく、走行用駆動車輪と従動車輪の走行中心軸を容易に一致させることができ、車輪の芯出し作業性の良いクレーン走行装置及び走行装置付きクレーンを提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…電動巻上機、2…電動トロリ、3…操作入力装置、4…クレーンフック、5…巻上機制御部、10…ガーダー、11a、11b…走行レール、12…サドル制御部、20a、20b…クレーンサドル、21…電動機、22…ブレーキ、23…減速部、24…最終減速段、25a、25b…走行用駆動車輪、26a、26b…従動車輪、27…車軸、28a、28b…サドルフレーム、29…車軸ストッパ、30…ダンパー、31…最終減速段カバー、32a、32b…カラー、40…カラーロッド、41…ボールベアリング、42…抜け止め、43…カラープレート、50a、50b…建屋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の走行レール上に走行可能に配される一対のクレーンサドルと、前記一対のクレーンサドルを連結するガーダーと、を有するクレーン走行装置であって、
前記クレーンサドルは、
サドルフレームと、
前記サドルフレームに車軸によって回転自在に支持され、前記走行レール上を転動するように備えられる車輪と、
前記サドルフレームと対向する前記車輪の一方の面の間と前記サドルフレームと対向する車輪の他方の面の間に、前記車輪の側面に接するようにして各々備えられるカラーを有し、
前記車輪は側面を前記カラーによって規制されることにより、車輪位置を前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とするクレーン走行装置。
【請求項2】
前記カラーは、円筒形状であるとともに、円筒の高さ方向に切れ目を持つ弾性体であり、前記切れ目に対して円周方向に力を加えると力に応じて円筒形の切れ目の隙間が拡大し、かかった力を取り去れば円筒形の切れ目の隙間が縮小し元の形状に戻ることにより、力を加えて拡大した切れ目の隙間によって前記車軸に取付及び取外可能な構造を有し、
前記車軸によって回転自在に複数の前記カラーが支持され、
前記カラーの位置が、前記サドルフレームと対向する車輪の一方の面の間から、前記サドルフレームと対向する前記車輪の他方の面の間に1つカラーの幅以上移動されることにより、前記車輪の位置が、移動された前記カラーの幅と同じ距離を前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とする請求項1に記載のクレーン走行装置。
【請求項3】
前記カラーは、円柱形状であって、その表面にねじ山が形成され、
前記サドルフレームは、前記カラーが取付けられるよう設けられたカラー取付穴の内面に前記カラーに形成されたねじ山と噛合するねじ山が形成され、前記カラーとねじ山にて締結せしめたことにより、前記車輪の位置が、前記カラーが前記サドルフレームと噛合するねじ山に沿って回転運動されることによって前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とする請求項1に記載のクレーン走行装置。
【請求項4】
前記カラーは、一方の端面に工具又は手動で回すための多角形又は円形の頭部を有することを特徴とする請求項3に記載のクレーン走行装置。
【請求項5】
前記カラーは、一方の端面に工具又は手動で回すための溝又は穴を有することを特徴とする請求項3に記載のクレーン走行装置。
【請求項6】
前記カラーは、前記車輪と接する端面に回転自在に取付けられた、板状のストッパプレートを有することを特徴とする請求項3に記載のクレーン走行装置。
【請求項7】
一対の走行レール上に走行可能に配される一対のクレーンサドルと、前記一対のクレーンサドルとを連結するガーダーと、を有するクレーン走行装置であって、
前記クレーンサドルは、
サドルフレームと、
前記サドルフレームが備える、異なる外径を有する大径円柱部と小径円柱部とを同軸上に配置した段付円柱形状の車軸と、
前記車軸の前記小径円柱部に回転自在に支持され、走行レール上を転動するように備えられる車輪と、
前記車輪の側面が大径円柱部の面に接するように位置を固定するカラーを有し、
前記車輪は、前記車軸を軸方向に移動することによって、前記車軸の前記大径円柱部と前記カラーの端面によって車軸に固定されている前記車輪の位置を軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とするクレーン走行装置。
【請求項8】
前記車軸は、大径円柱部表面にねじ山が形成されており、前記大径円柱部は一方の前記サドルフレーム側面が有する車軸取付穴の内径に形成されたねじ山と大径円柱部が備えるねじ山が噛合し締結され、前記小径円柱部は他方の前記サドルフレーム側面に嵌め合いによって取付けられていることにより、
前記車輪の位置が、前記車軸が前記サドルフレームと噛合するねじ山に沿って回転運動されることによって前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とする請求項7に記載のクレーン走行装置。
【請求項1】
一対の走行レール上に走行可能に配される一対のクレーンサドルと、前記一対のクレーンサドルを連結するガーダーと、を有するクレーン走行装置であって、
前記クレーンサドルは、
サドルフレームと、
前記サドルフレームに車軸によって回転自在に支持され、前記走行レール上を転動するように備えられる車輪と、
前記サドルフレームと対向する前記車輪の一方の面の間と前記サドルフレームと対向する車輪の他方の面の間に、前記車輪の側面に接するようにして各々備えられるカラーを有し、
前記車輪は側面を前記カラーによって規制されることにより、車輪位置を前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とするクレーン走行装置。
【請求項2】
前記カラーは、円筒形状であるとともに、円筒の高さ方向に切れ目を持つ弾性体であり、前記切れ目に対して円周方向に力を加えると力に応じて円筒形の切れ目の隙間が拡大し、かかった力を取り去れば円筒形の切れ目の隙間が縮小し元の形状に戻ることにより、力を加えて拡大した切れ目の隙間によって前記車軸に取付及び取外可能な構造を有し、
前記車軸によって回転自在に複数の前記カラーが支持され、
前記カラーの位置が、前記サドルフレームと対向する車輪の一方の面の間から、前記サドルフレームと対向する前記車輪の他方の面の間に1つカラーの幅以上移動されることにより、前記車輪の位置が、移動された前記カラーの幅と同じ距離を前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とする請求項1に記載のクレーン走行装置。
【請求項3】
前記カラーは、円柱形状であって、その表面にねじ山が形成され、
前記サドルフレームは、前記カラーが取付けられるよう設けられたカラー取付穴の内面に前記カラーに形成されたねじ山と噛合するねじ山が形成され、前記カラーとねじ山にて締結せしめたことにより、前記車輪の位置が、前記カラーが前記サドルフレームと噛合するねじ山に沿って回転運動されることによって前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とする請求項1に記載のクレーン走行装置。
【請求項4】
前記カラーは、一方の端面に工具又は手動で回すための多角形又は円形の頭部を有することを特徴とする請求項3に記載のクレーン走行装置。
【請求項5】
前記カラーは、一方の端面に工具又は手動で回すための溝又は穴を有することを特徴とする請求項3に記載のクレーン走行装置。
【請求項6】
前記カラーは、前記車輪と接する端面に回転自在に取付けられた、板状のストッパプレートを有することを特徴とする請求項3に記載のクレーン走行装置。
【請求項7】
一対の走行レール上に走行可能に配される一対のクレーンサドルと、前記一対のクレーンサドルとを連結するガーダーと、を有するクレーン走行装置であって、
前記クレーンサドルは、
サドルフレームと、
前記サドルフレームが備える、異なる外径を有する大径円柱部と小径円柱部とを同軸上に配置した段付円柱形状の車軸と、
前記車軸の前記小径円柱部に回転自在に支持され、走行レール上を転動するように備えられる車輪と、
前記車輪の側面が大径円柱部の面に接するように位置を固定するカラーを有し、
前記車輪は、前記車軸を軸方向に移動することによって、前記車軸の前記大径円柱部と前記カラーの端面によって車軸に固定されている前記車輪の位置を軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とするクレーン走行装置。
【請求項8】
前記車軸は、大径円柱部表面にねじ山が形成されており、前記大径円柱部は一方の前記サドルフレーム側面が有する車軸取付穴の内径に形成されたねじ山と大径円柱部が備えるねじ山が噛合し締結され、前記小径円柱部は他方の前記サドルフレーム側面に嵌め合いによって取付けられていることにより、
前記車輪の位置が、前記車軸が前記サドルフレームと噛合するねじ山に沿って回転運動されることによって前記車輪の円筒中心軸方向に移動可能な調整機構を有することを特徴とする請求項7に記載のクレーン走行装置。
【図1】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7】
【公開番号】特開2013−75737(P2013−75737A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216005(P2011−216005)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】
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