説明

クレーン間衝突防止装置

【課題】 太陽光のセンサへの入射を防止することができ、センサの誤作動を防止することができるクレーン間衝突防止装置を提供すること。
【解決手段】 クレーンの隣接機同士の衝突を防止するクレーン間衝突防止装置であって、一のクレーンに取り付けられるセンサ43と、他のクレーンに取り付けられ、前記センサ43の投光部45から投光された光を、前記センサ43の受光部46に向けて反射させる反射部と備え、前記センサ43が、前記反射部の側に開口部を有する筐体44内に収容され、前記センサ43の前方側で、かつ前記筐体44の内側に、スリット48bが形成された遮光板48が配置されているとともに、前記反射部で反射された光が、前記スリット48bを介して前記センサ43の受光部46に入射されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン(例えば、コンテナクレーンやトランスファクレーン等)の隣接機同士の衝突を防止するクレーン間衝突防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンの隣接機同士の衝突を防止する衝突防止装置としては、光電スイッチ(センサ)と反射板(反射部)とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−97671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献のものでは、反射板で反射された反射光の他、太陽光が光電スイッチに入射してしまうおそれがある。そして、光電スイッチに太陽光が入射してしまうと、光電スイッチが誤作動を起こし、必要ない位置でのクレーンの減速や停止、およびクレーン同士の衝突を引き起こしてしまうおそれがある。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、太陽光のセンサへの入射を防止することができ、センサの誤作動を防止することができるクレーン間衝突防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明によるクレーン間衝突防止装置は、クレーンの隣接機同士の衝突を防止するクレーン間衝突防止装置であって、一のクレーンに取り付けられるセンサと、他のクレーンに取り付けられ、前記センサの投光部から投光された光を、前記センサの受光部に向けて反射させる反射部と備え、前記センサが、前記反射部の側に開口部を有する筐体内に収容され、前記センサの前方側で、かつ前記筐体の内側に、スリットが形成された遮光板が配置されているとともに、前記反射部で反射された光が、前記スリットを介して前記センサの受光部に入射されるように構成されている。
このようなクレーン間衝突防止装置によれば、センサの受光部の前方側(投光部から投光された赤外線が進んでいく側あるいは反射部で反射された赤外線が進入してくる側)に、スリットを備えた遮光板が配置されており、スリットを通過した光(先行するクレーン(あるいは追従するクレーン)に取り付けられた反射部で反射された光(例えば、赤外線))だけが受光部で感知(検知)されるようになっている。これにより、太陽光等のセンサを誤作動させるような光が受光部に到達することを防止することができて、センサの誤作動を防止することができる。
【0006】
本発明によるクレーンには、上記クレーン間衝突防止装置が具備されている。
このようなクレーンによれば、センサが誤作動を起こすことがないので、センサが誤作動することによって起こるクレーンの減速や停止、およびクレーン同士の衝突を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、太陽光のセンサへの入射を防止することができ、センサの誤作動を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明によるクレーン間衝突防止装置の一実施形態について、図1ないし図5を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係るクレーン間衝突防止装置を具備したクレーン(以下、「トランスファクレーン」という。)10の概略全体斜視図であり、図5は、図4に示すトランスファクレーン10を側方から(図4において左上側から、あるいは右下側から)見た要部側面図である。
【0009】
トランスファクレーン10は、コンテナCを段積みするタイヤ式ヤード用橋形クレーンであり、4個の脚体11によって建てられた門形のクレーン機体12を有している。
4個の脚体11の各々の下端部にはタイヤ式走行装置13が設けられており、クレーン機体12はタイヤ式走行装置13によって無軌道面上を走行することができるようになっている。なお、以降の説明において、前後左右の4個の脚体11に取り付けられているタイヤ式走行装置13を各脚体11毎に区別して表現する必要がある場合には、右前方部のタイヤ式走行装置13をRF、左前方部のタイヤ式走行装置13をLF、右後方部のタイヤ式走行装置13をRA、左後方部のタイヤ式走行装置13をLAと云うことがある。
【0010】
タイヤ式走行装置13は、取付軸21によって脚体11の下端部に少しだけ揺動可能に取り付けられたヨーク部材20を有している。ヨーク部材20の両端部には、各々垂直軸22,23が設けられており、各垂直軸22,23には、走行輪支持体24,25が垂直軸線周り(垂直軸22,23の中心軸線周り)に回転可能に設けられている。
【0011】
走行輪支持体24,25は、各々軸支承部24a,25aを有しており、軸支承部24a,25aには、各々水平方向に延在する車軸26,27が取り付けられている。車軸26は、タイヤ28,29を各々水平軸線周り(車軸26の中心軸線周り)に回転可能に支持し、車軸27は、タイヤ30,31を各々水平軸線周り(車軸27の中心軸線周り)に回転可能に支持している。また、走行輪支持体25にはタイヤ駆動モータ32が搭載されており、これにより、タイヤ30あるいはタイヤ31のいずれか一方のタイヤが回転駆動されるようになっている。
【0012】
タイヤ式走行装置13には、先行するトランスファクレーン(あるいは追従するトランスファクレーン)との衝突を防止するクレーン間衝突防止装置40が取り付けられている。このクレーン間衝突防止装置40は、センサ部41と、反射部42とを主たる要素として構成されている。そして、タイヤ走行装置13のうち、左後方部に位置するタイヤ走行装置LAおよび右前方部に位置するタイヤ式走行装置RFのヨーク部材20には、センサ部41が、左前方部に位置するタイヤ式走行装置LFおよび右後方部に位置するタイヤ式走行装置RAのヨーク部材20には、反射部42が取り付けられている(図5参照)。
【0013】
図1および図2に示すように、センサ部41は、センサ43と、ボックス(筐体)44とを備えている。センサ43は、赤外線(光)を投光(発光)する投光(発光)部45と、この投光部45から投光された赤外線が、先行するトランスファクレーン(あるいは追従するトランスファクレーン)に取り付けられた反射部42で反射され、この反射された赤外線を感知(検知)する受光部46とを備えている。
【0014】
ボックス44は、断面視コ字状を呈する板状の部材で、その内部にセンサ43を収容して、センサ43を風雨等から防護するためのものであり、図1(a)および図2(a)に示すように、ブラケット50を介してタイヤ式走行装置13(より詳しくは、タイヤ式走行装置LAおよびタイヤ式走行装置RF)のヨーク部材20の左側端面あるいは右側端面に取り付けられている。センサ43は、図示しない取付部材を介してこのボックス44の内側に固定されている。
また、ボックス44の内側で、かつ、センサ43の前方側(投光部45から投光された赤外線が進んでいく側あるいは反射部42で反射された赤外線が進入してくる側)には、取付部材47を介して遮光板48が取り付けられている。取付部材47は、断面視L字状を呈する板状の部材で、その長辺側に位置する部分の外表面が、ボックス44の上下方向に延びる内表面に接するように固定されている。一方、図1(c)に示すように、取付部材47の短辺側に位置する部分には、ボックス44の上下方向に沿って、四つの長穴(縦穴)47aが穿設されている。
【0015】
遮光板48には、取付部材47の四つの長穴47aに対応する位置に、遮光板48の上下方向と直交する方向(すなわち、ボックス44の上下方向と直交する方向)に沿って、四つの長穴(横穴)48aが穿設されている。取付部材47の長穴47aの中心と遮光板48の長穴48aの中心とは、略同じ位置にくるように形成されており、また、長穴47a,48aの大きさ(すなわち、幅と長さ)も略同じになるように形成されている。そして、遮光板48の下端部の略中央に位置する部分には、遮光板48の上下方向(すなわち、ボックス44の上下方向)に沿って、スリット48bが設けられている。本実施形態において、スリット48bの幅dは、3.5mmとされている(図1(b)参照)。
遮光板48は、取付部材47の短辺側に位置する部分の前方側(あるいは後方側)の表面に接するように配置され、四本の締結部材(例えば、ボルト・ナットやビス・ナット等)を介して取り付けられている。このとき、スリット48bの真後ろにセンサ43の受光部46が位置し、スリット48bの下端面よりも下側に投光部45が位置するとともに、センサ43の受光部46に太陽光が直接入射(到達)しないように遮光板48の位置が上下左右に調整された後、取付部材47に固定されるようになっている。また、本実施形態では、発光部45の前側端面と遮光板48の前側端面との距離Dが200mmとなる位置に、センサ43が取り付けられている。
【0016】
タイヤ式走行装置LFおよびタイヤ式走行装置RAのヨーク部材20に取り付けられた反射部42は、センサ43の投光部45から投光された赤外線を、赤外線が投光された方向に反射させるものであり、金属板にシートが貼られたものである。
【0017】
さてここで、図3(a)に示すように、発光部45の前側端面と遮光板48の前側端面との距離Dを60mmとした場合の、スリットの幅d(mm)と、(水平面内における)入射角度限界値(deg)との関係を図3(b)に示す。
図3(b)に示すように、例えば、スリットの幅dが2mmであれば、入射角度限界値は4degとなる。したがって、入射角が4deg以下であれば、先行するトランスファクレーン(あるいは追従するトランスファクレーン)に取り付けられた反射部42で反射された赤外線が受光部46に到達することとなるが、入射角が4degよりも大きいものは受光部46に到達しないこととなる。すなわち、先行するトランスファクレーン(あるいは追従するトランスファクレーン)に取り付けられた反射部42で反射された赤外線は、受光部46に到達するが、それ以外の光(例えば、太陽光等)は、追従するクレーンに遮蔽され、受光部46に到達しないようになっている。
【0018】
本実施形態によるクレーン間衝突防止装置40によれば、センサ43の受光部46の前方側(投光部45から投光された赤外線が進んでいく側あるいは反射部42で反射された赤外線が進入してくる側)に、スリット48bを備えた遮光板48が配置されており、スリット48bを通過した光(先行するトランスファクレーン(あるいは追従するトランスファクレーン)に取り付けられた反射部42で反射された赤外線)だけが受光部46で感知(検知)されるようになっている。これにより、太陽光等のセンサ43を誤作動させるような光が受光部46に到達することを防止することができて、センサ43の誤作動を防止することができる。
また、図1(a)および図2(a)に示すように、遮光板48が、ボックス44の前方側の端面よりもセンサ43の側、すなわち、ボックス44の内部に隠れるように配置されているので、雨等が遮光板48に直接かかってしまうことを防止することができるとともに、遮光板48のスリット48aに雨等の水滴が付着してしまうことを防止することができる。
そして、このようなクレーン間衝突防止装置40を備えたトランスファクレーン10においては、センサ43が誤作動することによって起こるクレーンの減速や停止、およびクレーン同士の衝突を確実に防止することができる。
【0019】
なお、本発明によるクレーン間衝突防止装置40は、上述したトランスファクレーン10のみに適用され得るものではなく、例えば、コンテナクレーンやトランスファクレーン10以外のヤード荷役機械(例えば、ストラドルキャリアやAGV等)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るクレーン間衝突防止装置の一実施形態を示す図であって、(a)はセンサ部の全体斜視図、(b)は遮光板の正面図、(c)はボックスの正面図である。
【図2】本発明に係るクレーン間衝突防止装置の一実施形態を示す図であって、(a)はセンサ部の側面図、(b)はセンサ部の正面図である。
【図3】スリットの幅d(mm)と、入射角度限界値(deg)との関係を示す図であって、(a)は配置図、(b)は発光部の前側端面と遮光板の前側端面との距離を60mmとした場合の、スリットの幅d(mm)と、入射角度限界値(deg)との関係を示すグラフである。
【図4】クレーン間衝突防止装置を具備したトランスファクレーンの概略全体斜視図である。
【図5】図4に示すトランスファクレーンを側方から(図4において左上側から、あるいは右下側から)見た要部側面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 トランスファクレーン(クレーン)
40 クレーン間衝突防止装置
42 反射部
43 センサ
44 ボックス(筐体)
45 投光部
46 受光部
48 遮光板
48b スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの隣接機同士の衝突を防止するクレーン間衝突防止装置であって、
一のクレーンに取り付けられるセンサと、他のクレーンに取り付けられ、前記センサの投光部から投光された光を、前記センサの受光部に向けて反射させる反射部と備え、
前記センサが、前記反射部の側に開口部を有する筐体内に収容され、前記センサの前方側で、かつ前記筐体の内側に、スリットが形成された遮光板が配置されているとともに、前記反射部で反射された光が、前記スリットを介して前記センサの受光部に入射されるように構成されていることを特徴とするクレーン間衝突防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーン間衝突防止装置を具備してなることを特徴とするクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−145443(P2007−145443A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338577(P2005−338577)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)