説明

クロマトグラフィー方法

本発明は、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを再生するための方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド、特にペグ化ポリペプチドの精製のために有用なクロマトグラフィー分離方法の分野にある。
【0002】
発明の背景
タンパク質は今日の医療ポートフォリオにおいて重要な役割を果たす。ヒトへの適用のために、各治療タンパク質は別々の基準を満たさなければならない。生物薬剤のヒトへの安全性を確保するために、産生プロセス中に蓄積する副産物を特に除かなければならない。規制仕様を満たすために、1つ又は複数の精製工程が製造プロセスに従わなければならない。とりわけ、純度、処理量、及び収率が、適切な精製プロセスを決定する際に重要な役割を果たす。
【0003】
様々な方法が、タンパク質精製のために十分に確立されており、広く使用される。例えば、微生物タンパク質でのアフィニティークロマトグラフィー(例、プロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例、陽イオン交換(スルホプロピル又はカルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)、及び混合モードイオン交換)、親イオウ性吸着(例、ベータメルカプトエタノール及び他のSHリガンドによる)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例、フェニル−セファロース、アザアレーン親和性樹脂、又はm−アミノフェニルボロン酸)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例、Ni(II)−及びCu(II)−アフィニティー材料)、分子ふるいクロマトグラフィー、及び電気泳動方法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)である。
【0004】
例えば、次のための抱合体が報告されている:ポリエチレングリコール(PEG)及びインターロイキン6(EP 0 442 724)、PEG及びエリスロポエチン(WO 01/02017)、エンドスタチン及び免疫グロブリンを含むキメラ分子(US 2005/008649)、分泌抗体ベースの融合タンパク質(US 2002/147311)、アルブミンを含む融合ポリペプチド(US 2005/0100991;ヒト血清アルブミンUS 5,876,969)、ペグ化ポリペプチド(US 2005/0114037)、及びインターフェロン融合物。
【0005】
Necina, R., et al.(Biotechnol. Bioeng. 60 (1998) 689-698)は、高電荷密度を示すイオン交換媒体による細胞培養上清から直接的にヒトモノクローナル抗体を捕捉した報告した。WO 89/05157において、細胞培養液を陽イオン交換処置に直接的にかけることによる産物免疫グロブリンの精製のための方法が報告される。マウス腹腔からのモノクローナルIgG抗体の1段階精製が、Danielsson, A., et al., J. Immun. Meth. 115 (1988), 79-88により記載される。イオン交換クロマトグラフィーによりポリペプチドを精製するための方法が、WO 2004/024866において報告され、そこでは、勾配洗浄を使用して、1つ又は複数の混入物から目的のポリペプチドを分離する。EP 0 530 447において、3つのクロマトグラフィー工程の組み合わせによりIgGモノクローナル抗体を精製するための方法が報告される。モノペグ化インターロイキン1受容体アンタゴニストの簡易精製が、Yu, G., et al., Process Biotechnol. 42 (2007) 971-977により報告される。Wang et al. (Wang, H., et al., Peptides 26 (2005) 1213-1218) は、2段階陽イオン交換クロマトグラフィーによる、大腸菌において発現させたhTFF3の精製を報告する。Yun et al. (Yun, Q., et al., J. Biotechnol. 118 (2005) 67-74) は、2連続イオン交換クロマトグラフィー工程によるペグ化rhG−CSFの精製を報告する。
【0006】
発明の概要
本発明の一局面は、目的の化合物の溶出後に陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを再生するための方法であって、以下の工程:
− 吸着ポリペプチドを、塩化ナトリウムを少なくとも500mMの濃度で含む水性緩衝溶液でカラムから溶出すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− 0.5M水酸化ナトリウム溶液をカラムに適用すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− 0.5Mリン酸二水素ナトリウム及び1Mリン酸を含む溶液をカラムに適用すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− 0.5M水酸化ナトリウム溶液をカラムに少なくとも4時間適用すること、及び
− カラムを精製水でフラッシングすることにより陽イオン交換カラムを再生すること
を、この順番で含む方法である。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、第1の局面として、以下の工程:
− 残留結合ポリペプチドを、塩化ナトリウムを含む水性緩衝溶液で陽イオン交換カラムから除去すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− 水酸化ナトリウム溶液をカラムに適用すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− リン酸二水素ナトリウム及びリン酸を含む溶液をカラムに適用すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− 0.5M水酸化ナトリウム溶液をカラムに少なくとも4時間適用すること、及び
− カラムを精製水でフラッシングすることにより陽イオン交換カラムを再生すること
を含む、目的の化合物の溶出後の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムの再生のための方法を含む。
【0008】
本出願内で使用する「精製水」という用語は、米国薬局方に従った注射用の水を意味する。
【0009】
本出願内で使用する「イオン交換材料」という用語は、イオン交換クロマトグラフィー中の固定相として使用する共有結合した荷電置換基を担持する固定高分子量マトリクスを意味する。全体的な電荷中性のために、共有結合していない対イオンはそれに結合する。「イオン交換材料」は、その共有結合していない対イオンを、周囲溶液の同様に荷電したイオンと交換する能力を有する。その交換可能な対イオンの電荷に応じて、「イオン交換樹脂」は、陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂と呼ぶ。荷電基(置換基)の性質に応じて、「イオン交換樹脂」は、例えば、陽イオン交換樹脂の場合において、スルホン酸樹脂(S)、又はスルホプロピル樹脂(SP)、又はカルボキシメチル樹脂(CM)と呼ぶ。荷電基/置換基の化学的性質に応じて、「イオン交換樹脂」は、共有結合した荷電置換基の強度に応じて、強又は弱イオン交換樹脂にさらに分類できる。例えば、強陽イオン交換樹脂は、荷電置換基として、スルホン酸基、好ましくはスルホプロピル基を有し、弱陽イオン交換樹脂は、荷電置換基として、カルボン酸基、好ましくはカルボキシメチル基を有し、そして、弱陰イオン交換樹脂は、荷電置換基としてジエチルアミノエチル基を有する。一実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムはスルホプロピル陽イオン交換樹脂を含み、即ち、それはスルホプロピル陽イオン交換クロマトグラフィーカラムである。
【0010】
異なるタイプのイオン交換材料、即ち、固定相が、異なる名称で、多数の会社から入手可能であり、例えば、陽イオン交換材料はBio-Rex(登録商標)(例、タイプ70)、Chelex(登録商標)(例、タイプ100)、Macro-Prep(登録商標)(例、タイプCM、High S、25 S)、AG(登録商標)(例、タイプ50W、MP)をBioRad Laboratoriesから全て入手可能であり、WCX 2をCiphergenから入手可能であり、Dowex(登録商標)MAC-3をDow Chemical Companyから入手可能であり、Mustang C及びMustang SをPall Corporationから入手可能であり、Cellulose CM(例、タイプ23、52)、Hyper-D、PartisphereをWhatman plc.から入手可能であり、Amberlite(登録商標)IRC(例、タイプ76、747、748)、Amberlite(登録商標)GT 73、Toyopearl(登録商標)(例、タイプSP、CM、650M)をTosoh Bioscience GmbHから全て入手可能であり、CM 1500及びCM 3000をBioChrom Labsから入手可能であり、SP-Sepharose(商標)、CM-Sepharose(商標)をGE Healthcareから入手可能であり、Poros樹脂をPerSeptive Biosystemsから入手可能であり、Asahipak ES(例、タイプ502C)、CXpak P、IEC CM(例、タイプ825、2825、5025、LG)、IEC SP(例、タイプ420N、825)、IEC QA(例、タイプLG、825)をShoko America Inc.から入手可能であり、50W陽イオン交換樹脂をEichrom Technologies Inc.から入手可能である。一実施態様において、陽イオン交換材料は、Macro-Prep(登録商標)High Sもしくは25S、又はMacroCap SP、又はToyopearl(登録商標)SP 650M、又はSource S、又はSP Sepharose、又はPOLYCAT Aなどの強陽イオン交換材料である。例示的な陰イオン交換材料は、Dowex(登録商標)1をDow Chemical Companyから入手可能であり、AG(登録商標)(例、タイプ1、2、4)、Bio-Rex(登録商標)5、DEAE Bio-Gel 1、Macro-Prep(登録商標)DEAEをBioRad Laboratoriesから全て入手可能であり、陰イオン交換樹脂タイプ1をEichrom Technologies Inc.から入手可能であり、Source Q、ANX Sepharose 4、DEAE Sepharose(例、タイプCL-6B、FF)、Q Sepharose、Capto Q、Capto SをGE Healthcareから全て入手可能であり、AX-300をPerkinElmerから入手可能であり、Asahipak ES-502C、AXpak WA(例、タイプ624、G)、IEC DEAEをShoko America Inc.から全て入手可能であり、Amberlite(登録商標)IRA-96、Toyopearl(登録商標)DEAE、TSKgel DEAEをTosoh Bioscience GmbHから全て入手可能であり、Mustang QをPall Corporationから入手可能である。
【0011】
本出願内で使用する「フラッシング」という用語は、2つ又は複数のカラム容積の特定溶液でのカラムの洗浄を意味する。
【0012】
「同じタイプの陽イオン交換材料」という用語は、同一の陽イオン交換材料を用いることにより実施される2つの連続したイオン交換クロマトグラフィー工程を意味する。これは、連続陽イオン交換クロマトグラフィー工程を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程のための陽イオン交換材料の第1部分の使用、及び第2の陽イオン交換クロマトグラフィーのための同じ陽イオン交換材料の第2部分の使用;又は両方の陽イオン交換クロマトグラフィー工程のための同じ陽イオン交換材料の使用;のいずれかにより実施することを意味する。
【0013】
「段階溶出」又は「段階溶出方法」という用語は、本願で互換的に使用し、例えば、溶出、即ち、材料から結合化合物の解離を起こす物質の濃度を、一度に、即ち、1つの値/レベルから次の値/レベルに直接的に、上げるか又は下げる方法を意味する。この「段階溶出」において、1つ以上の条件、例えば、pH、イオン強度、塩濃度、及び/又はクロマトグラフィーの流量を、一度に、第1の、例えば、開始値から、第2の、例えば、最終値まで全て変化させ、即ち、条件を、直線的変化とは対照的に、増加的に、即ち、段階的に変化させる。「段階溶出方法」において、イオン強度の各増大後、新しい分画を回収する。この分画は、対応するイオン強度の増大によりイオン交換材料から回収される化合物を含む。各増大後、条件は、溶出方法における次の工程まで維持する。
【0014】
「連続溶出」及び「連続溶出方法」という用語は、本願で互換的に使用され、例えば、溶出、即ち、材料から結合化合物の解離を起こす物質の濃度を、連続的に上げるか又は下げる、即ち、濃度が一連の小工程により変化し、各々で溶出を起こす物質の濃度が2%、好ましくは1%の変化より大きくない方法を意味する。この「連続溶出」において、1つ以上の条件、例えば、pH、イオン強度、塩濃度、及び/又はクロマトグラフィーの流量を、直線的に又は指数関数的に又は漸近的に変化させてよい。好ましくは、変化は直線的である。
【0015】
本出願内で使用する「適用する」という用語及びその文法的な相当語句は、例えば、精製すべき目的物質を含む溶液を固定相と接触させる精製方法の部分的工程を意味する。これは、a)溶液を、固定相を位置づけたクロマトグラフィー装置に加えること、又は、b)固定相を溶液に加えることを意味する。a)の場合において、例えば、精製すべき目的物質を含む溶液を固定相に通過させて、固定相と溶液中の物質の間の相互作用を可能にする。条件、例えば、pH、伝導度、塩濃度、温度、及び/又は流速などの条件に応じて、溶液の一部の物質が固定相に結合して、その結果溶液から除去される。他の物質は溶液中に残るか又は固定相から脱着する。溶液中の物質はフロースルー中に見出すことができる。「フロースルー」はクロマトグラフィー装置の通過後に得られる溶液を意味し、目的物質を含む適用溶液、又は緩衝液(カラムをフラッシングするため、又は固定相に結合した1つ以上の物質の溶出を起こすために使用する)のいずれかであってもよい。一実施態様において、クロマトグラフィー装置はカラム、又はカセットである。目的物質は、精製工程後に、当業者に周知の方法、例えば、沈殿、塩析、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、凍結乾燥、アフィニティークロマトグラフィー、又は溶媒容積減少(solvent volume reduction)などにより溶液から回収して、実質的に均質な形態で目的物質を得ることができる。b)の場合において、固定相を、例えば、固形物として、例えば、精製すべき目的物質を含む溶液に加えて、固定相と溶液中の物質の間の相互作用を可能にする。相互作用後、固定相を、例えば、ろ過により除去し、それにより、例えば、目的物質が、固定相に結合し、溶液からそれと共に除去されるか、又は固定相に結合せず、溶液中に残るかである。
【0016】
本出願内で使用する「結合に適した条件下で」という用語及びその文法的な相当語句は、目的物質、例えば、ペグ化エリスロポエチンが、それと、例えば、イオン交換材料を接触させた際に、固定相に結合することを意味する。これは、目的物質の100%が結合していることを必ずしも意味しないが、しかし、目的物質の本質的に100%が結合している、即ち、目的物質の少なくとも50%が結合している、好ましくは目的物質の少なくとも75%が結合している、好ましくは目的物質の少なくとも85%が結合している、より好ましくは目的物質の95%超が固定相に結合している。
【0017】
本出願内で使用する「緩衝化」という用語は、酸性又は塩基性物質の添加又は放出に起因するpHの変化が緩衝物質により平らになる溶液を意味する。そのような効果をもたらす任意の緩衝物質を使用できる。一実施態様において、薬学的に許容可能な緩衝物質、例えば、リン酸もしくはその塩、酢酸もしくはその塩、クエン酸もしくはその塩、モルホリン、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸もしくはその塩、ヒスチジンもしくはその塩、グリシンもしくはその塩、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)もしくはその塩が使用できる。好ましい実施態様において、リン酸もしくはその塩、又は酢酸もしくはその塩、又はクエン酸もしくはその塩、又はヒスチジンもしくはその塩を使用する。任意に、緩衝溶液は、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、クエン酸ナトリウム、又はクエン酸カリウムなどの追加の塩を含んでよい。
【0018】
一般的なクロマトグラフィー方法及びその使用は、当業者に公知である。例えば、Chromatography, 5th edition, Part A: Fundamentals and Techniques, Heftmann (ed) Elsevier Science Publishing Company 1992 Chromatography 5th ed 51 A 1992;Advanced Chromatographic and Electromigration Methods in Biosciences, Deyl, Z. (ed.), Elsevier Science BV, Amsterdam, The Netherlands, (1998);Chromatography Today, Poole, C. F., and Poole, S. K., Elsevier Science Publishing Company, New York, (1991);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982);Sambrook, J., et al. (ed), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989;又はCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M., et al. (eds), John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと。
【0019】
エリスロポエチンのペグ化は、通常、ポリペグ化エリスロポエチン、モノペグ化エリスロポエチン、非ペグ化エリスロポエチン、活性化PEGエステルの加水分解産物、ならびに、エリスロポエチン自体の加水分解産物などの異なる化合物の混合物をもたらす。実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを得るために、これらの物質を分離し、目的の化合物を精製しなければならない。
【0020】
従って、本発明の第2の局面は、実質的に均質な形態でモノペグ化エリスロポエチンを得るための方法であって、以下の工程:
a)分子量が20kDa〜40kDaの活性化ペグ化試薬を使用してエリスロポエチンをペグ化すること、
b)工程a)において得られるペグ化エリスロポエチンを2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程(第1及び第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程で同じタイプの陽イオン交換材料を用いる)で精製すること、
c)モノペグ化エリスロポエチンを、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから実質的に均質な型で回収すること、
d)本発明の方法により陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを再生すること
を含む方法を提供する。
【0021】
この方法は、グリコシル化した、即ち、哺乳動物細胞、好ましくはCHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞、Per.C6(登録商標)細胞、又はHeLa細胞により産生され、その後に化学的にペグ化した、ペグ化組換えポリペプチドの精製のために特に有用である。一実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムの再生は以下の工程:
− 結合ポリペプチドを、塩化ナトリウムを含む水性緩衝溶液で陽イオン交換カラムから除去すること、
− カラムを、精製水、好ましくは少なくとも2つのカラム容積でフラッシングすること、
− 水酸化ナトリウム溶液をカラムに、好ましくは少なくとも2つのカラム容積で適用すること、
− カラムを、精製水、好ましくは少なくとも2つのカラム容積でフラッシングすること、
− リン酸二水素ナトリウム及びリン酸を含む溶液をカラムに、好ましくは少なくとも3つのカラム容積で適用すること、
− カラムを、精製水、好ましくは少なくとも2つのカラム容積でフラッシングすること、
− 0.5M水酸化ナトリウム溶液をカラムに少なくとも4時間、好ましくは4時間適用すること、及び
− カラムを、精製水、好ましくは少なくとも2つのカラム容積でフラッシングすることにより陽イオン交換カラムを再生すること
を含む。
【0022】
方法の第1の工程において、エリスロポエチンをペグ化する。ペグ化反応において使用するポリ(エチレングリコール)(PEG)ポリマー分子は、分子量約20kDa〜40kDaを有する(本明細書で使用する「分子量」により、PEGの平均分子量が理解されるはずであり、なぜなら、ポリマー化合物としてのPEGは、規定の分子量で得られず、しかし、実際に、分子量分布を有する;「約」という用語は、前記PEG調製物において、一部の分子が示した分子量よりも重い、及び、いくらか軽く、即ち、約という用語は分子量分布を指し、それにおいてPEG分子の95%が示した分子量の+/−10%内の分子量を有する。例えば、分子量30kDaは27kDa〜33kDaの範囲を意味する)。
【0023】
「エリスロポエチン」という用語は、配列番号1又は配列番号2の配列を有するタンパク質、又はそれと実質的に相同であるタンパク質もしくはポリペプチドを指し、その生物学的特性は、赤血球産生の刺激ならびに骨髄中の赤血球前駆細胞(committed erythroid progenitor)の分裂及び分化の刺激に関する。組換えエリスロポエチンは、組換えDNA技術によるか又は内因性遺伝子の活性化による真核細胞、例えば、CHO細胞、又はBHK細胞、又はHeLa細胞における発現を介して調製でき、即ち、エリスロポエチン糖タンパク質は内因性遺伝子の活性化により発現される。例えば、US 5,733,761、US 5,641,670、US 5,733,746、WO 93/09222、WO 94/12650、WO 95/31560、WO 90/11354、WO 91/06667、及びWO 91/09955を参照のこと。一実施態様において、本発明のエリスロポエチンはヒトEPOの配列に基づく。好ましい実施態様において、ヒトエリスロポエチンは配列番号1又は配列番号2に示すアミノ酸配列を有し、より好ましくは、ヒトエリスロポエチンは配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。「エリスロポエチン」という用語は、また、配列番号1又は配列番号2のタンパク質の変異体を意味し、それにおいて1つ又は複数のアミノ酸残基が変化、欠失、又は挿入しており、例えば、EP 1 064 951、又はUS 6,583,272において報告される、修飾されていないタンパク質と同じ生物学的活性を有する。変異体は、グリコシル化のための1〜6つまでの追加部位を有するヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列を有しうる。ペグ化エリスロポエチンの特異的活性を、当技術分野において公知の様々なアッセイにより決定できる。本発明の精製ペグ化エリスロポエチンの生物学的活性は、ヒト患者への注入によるタンパク質の投与が、非注入群又は対照群の被験者と比較して、骨髄細胞における網状赤血球及び赤血球の産生増大をもたらすほどである。本発明に従って得られ、そして精製されるペグ化エリスロポエチンの生物学的活性を、Pharmeuropa Spec. Issue Biologicals BRP Erythropoietin Bio 97-2 (1997) 31-48の方法によりテストできる。
【0024】
本発明の「PEG」又は「PEG基」は、必須部分としてポリ(エチレングリコール)を含む残基を意味する。そのようなPEGは、分子の化学合成に起因するか又は分子の部分の最適な距離のためのスペーサーである、結合反応のために必要であるさらなる化学基を含むことができる。これらのさらなる化学基は、PEGポリマー分子の分子量の算出のために使用されない。また、そのようなPEGは、互いに連結された1つ又は複数のPEG側鎖からなりうる。1を超えるPEG鎖を伴うPEGは、マルチアーム(multiarmed)又は分岐PEGと呼ばれる。分岐PEGは、例えば、ポリエチレンオキシドの、グリセロール、ペンタエリトリオール、及びソルビトールなどの様々なポリオールへの付加により調製できる。分岐PEGは、例えば、EP 0 473 084、US 5,932,462において記載される。分子量20−35kDaのPEGとして、直鎖PEG分子を一実施態様において使用し、分子量が35kDaを超える、特に40kDaのPEGポリマーとして、分岐PEGを別の実施態様において使用する。PEG 40kDaとして、2アーム(two-armed)PEGが特に好ましい。
【0025】
「ペグ化」という用語は、ポリペプチドのN末端及び/又は内部リジン残基でのポリ(エチレングリコール)残基の共有結合を意味する。タンパク質のペグ化は最新技術において広く公知であり、例えば、Veronese, F. M., Biomaterials 22 (2001) 405-417において概説される。PEGは、異なる官能基及び異なる分子量を有するポリ(エチレングリコール)、直鎖及び分岐PEGならびに異なる連結基を使用して連結できる(Francis, G. E., et al., Int. J. Hematol. 68 (1998) 1-18;Delgado, C., et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Systems 9 (1992) 249-304も参照のこと)。エリスロポエチンのペグ化は、例えば、WO 00/44785において記載されるペグ化試薬を伴う水溶液中で、一実施態様において分子量5kDaと40kDaの間のNHS活性化直鎖又は分岐PEG分子を使用して実施できる。ペグ化は、また、Lu, Y., et al., Reactive Polymers 22 (1994) 221-229に従って固相で実施できる。非ランダムにN末端がペグ化されたポリペプチドを、WO 94/01451に従って産生することもできる。
【0026】
そのような方法は、リジン残基の1つ又は複数のεアミノ基で、及び/又はN末端アミノ基でペグ化されるエリスロポエチンをもたらす。N末端アミノ酸での選択的ペグ化は、Felix, A. M., et al., ACS Symp. Ser. 680 (Poly(ethylene glycol) (1997) 218-238に従って実施できる。選択的N末端ペグ化は、固相合成中に、Nαペグ化アミノ酸誘導体のペプチド鎖のN−1末端アミノ酸への共役により達成できる。側鎖のペグ化は、固相合成中に、Nεペグ化リジン誘導体の成長鎖への共役により実施できる。N末端及び側鎖のペグ化の組み合わせは、上記の通りに固相合成内で、又は、活性化PEG試薬をアミノ脱保護ペプチドに適用することによる溶液相合成により実行可能である。
【0027】
適したPEG誘導体は、一実施態様において約5〜約40kDa、好ましい実施態様において約20〜約40kDa、及びより好ましい実施態様において約30〜約35kDaの平均分子量を有する活性化PEG分子である。PEG誘導体は直鎖又は分岐のPEGでありうる。PEGタンパク質及びPEGペプチド抱合体の調製における使用に適した多種類のPEG誘導体が、Shearwater Polymers(Huntsville, AL, U.S.A.; www.nektar.com)から入手できる。
【0028】
活性化PEG誘導体は当技術分野において公知であり、例えば、PEGビニルスルホンについて、Morpurgo, M., et al., J. Bioconjug. Chem. 7 (1996) 363-368において記載される。直鎖及び分岐鎖のPEG種は、ペグ化フラグメントの調製に適する。反応性PEG試薬の例は、ヨード−アセチル−メトキシ−PEG、又はメトキシ−PEG−ビニルスルホンである(mは一実施態様において約450〜約900までの整数であり、Rは1〜6つの炭素原子を有する直鎖又は分岐の低級アルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピルなどであり、メチルが好ましい):
【化1】

【0029】
これらのヨード活性化物質の使用は当技術分野において公知であり、例えば、Hermanson, G. T.により、Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego (1996) p. 147-148において記載される。
【0030】
一実施態様において、PEG種は活性化PEGエステル、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルプロピオナート、又はN−ヒドロキシスクシンイミジルブタナート、又はPEG−NHSなどのN−ヒドロキシスクシンイミドである(Monfardini, C., et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。一実施態様において、PEGは、メトキシ−PEG−N−ヒドロキシスクシンイミド(MW30000;Shearwater Polymers, Inc.)などのアルコキシ−PEG−N−ヒドロキシスクシンイミドを使用してN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
【化2】


により活性化され、式中R及びmは上で定義する通りである。一実施態様において、PEG種はメトキシポリ(エチレングリコール)酪酸のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルである。「アルコキシ」という用語はアルキルエーテル基を指し、「アルキル」という用語は、最高4つの炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロピル、好ましくはメトキシを意味する。
【0031】
本出願内で使用する「実質的に均質な形態」という用語は、得られる、含まれる、又は使用されるペグ化エリスロポエチンが、付着した規定数のPEG基を有するものであることを意味する。一実施態様において、ペグ化エリスロポエチンはモノペグ化エリスロポエチンである。調製物は、未反応(即ち、PEG基を欠く)エリスロポエチン、ポリペグ化エリスロポエチン、ならびにペグ化反応中に生成されるポリペプチドのフラグメントを含みうる。「実質的に均質な形態」という用語は、モノペグ化エリスロポエチンの調製物が、少なくとも50%(w/w)のモノペグ化エリスロポエチン、少なくとも75%のモノペグ化エリスロポエチン、少なくとも90%のモノペグ化エリスロポエチン、又は95%を超えるモノペグ化エリスロポエチンを含むことを意味する。パーセント値は、モノペグ化エリスロポエチンが得られる陽イオン交換クロマトグラフィーに対応するクロマトグラムの面積%に基づく。
【0032】
本発明は、実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを得るためのモノペグ化エリスロポエチンの精製のための方法を報告する。驚くべきことに、いずれも同じタイプの陽イオン交換材料を用いる2つの連続陽イオン交換クロマトグラフィー工程の組み合わせが、実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを提供することが見出されている。従って、本発明は、モノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチンを含む溶液を提供すること、2つの連続陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実施すること、第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において精製モノペグ化エリスロポエチンを回収すること(同じタイプの陽イオン交換材料を両方の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において使用する)、及び本発明の第1の局面に従った方法により陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを再生することの工程を含む、モノペグ化エリスロポエチンの精製のための方法を提供する。
【0033】
第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において精製モノペグ化エリスロポエチンの回収は、第2の陽イオン交換クロマトグラフィー材料からモノペグ化エリスロポエチンを溶出することによる。本発明の方法の一実施態様において、溶出方法において用いられる2つの陽イオン交換クロマトグラフィー工程は異なる。第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、一実施態様において、段階溶出方法として実施し、即ち、使用する緩衝液のイオン強度を段階的に、即ち、一度に、1つのイオン強度値から次のイオン強度値に増大させる。段階溶出方法は、一実施態様において、三段階溶出方法として実施する。第1の工程において、主にポリペグ化エリスロポエチンを陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから溶出する。イオン強度における第2の増大によって、基本的に、対応する分子ふるいクロマトグラムの面積(面積%)に基づき60%を超える純度を伴うモノペグ化エリスロポエチンが溶出される。イオン強度における第3の増大によって、主に残りの非ペグ化エリスロポエチンがカラムから溶出される。
【0034】
第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、一実施態様において、連続溶出方法として実施し、即ち、緩衝液のイオン強度を連続的に増大させる。対応するクロマトグラムの面積に基づき0.5%未満の低分子量型を一実施態様において含む、実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを得るために、モノペグ化エリスロポエチンを含む溶出分画を合わせる。緩衝液は、一実施態様において、濃度10mM〜250mMまで、好ましくは50mM〜150mMまで、より好ましくは約100mMで存在する。
【0035】
従って、本発明の方法において、2つの連続陽イオン交換クロマトグラフィー工程は以下の工程:
a)モノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチンの混合物を含む水性緩衝溶液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに、前記モノペグ化エリスロポエチンが前記第1カラム中に含まれる陽イオン交換材料に結合するために適した条件下で適用すること、
b)モノペグ化エリスロポエチンを、貫流緩衝液のイオン強度の段階的増大を伴う段階溶出方法により第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収すること(モノペグ化エリスロポエチンの相対含量が、工程a)の適用混合物と比較して増大する)、
c)工程b)からの回収モノペグ化エリスロポエチンを、第2陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに、前記エリスロポエチンが前記第2カラムに含まれる陽イオン交換材料に結合するために適した条件下で適用すること(前記第2カラムに含まれる陽イオン交換材料は第1カラム中の陽イオン交換材料と同じタイプである)、
d)実質的に均質な形態の精製モノペグ化エリスロポエチンを、貫流緩衝液のイオン強度の連続増大を伴う連続溶出方法により、前記第2陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収すること
である。
【0036】
ポリペプチドのペグ化によって、通常、均質な形態のペグ化産物は提供されない。それは、さらに、モノペグ化、ポリペグ化、及び非ペグ化産物の混合物として得られる。従って、方法の工程a)において適用するペグ化エリスロポエチンの溶液は、水性緩衝液中のモノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチン、ならびに低分子量型又はフラグメントの混合物である。異なる物質の相対含量は、分子ふるいクロマトグラフィー(SE−HPLC)により決定する。分子ふるいクロマトグラムにおける相関ピークの面積、即ち、ピーク下の面積の総和は、分子ふるいクロマトグラムの総面積である。単一ピークの分画は、面積%として、即ち、クロマトグラムの総面積の相対面積分画として与えられる。
【0037】
一般的なクロマトグラフィー方法、その使用、及び関連用語は、当業者に公知である。例えば、Chromatography, 5th edition, Part A: Fundamentals and Techniques, Heftmann (ed.), Elsevier Science Publishing Company, Chromatography 5th ed., 51 A (1992)及び他の関連テキストを参照のこと。クロマトグラフィーの間、緩衝液は陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを貫流する。この「貫流緩衝液」は、クロマトグラフィー方法の工程の必要条件に従って調整する。それは、目的物質を、クロマトグラフィー材料に輸送する(適用する)、及びそれから輸送する(溶出する)。
【0038】
第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において、モノペグ化、ポリペグ化、及び非ペグ化エリスロポエチンの混合物を、約1mg/mlのタンパク質濃度で、約100mMリン酸カリウムで約pH3.0に緩衝化した水溶液中の第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する。本出願内で使用する「約」という用語は、所与の値の前後10%の範囲、即ち、±10%を意味する。適用前後に第1カラムを同じ緩衝溶液で洗浄する。段階溶出方法における第1段階のために、緩衝液を、約100mMリン酸カリウム、約90mM塩化ナトリウムを伴う約pH3.0の緩衝液に変える。この緩衝液で、加水分解したPEG試薬、即ち、対応するペグ化炭酸、未反応カップリング試薬、及びポリペグ化エリスロポエチンを、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから溶出する。三段階溶出方法における第2段階のために、緩衝液を、約100mMリン酸カリウム、約250mM塩化ナトリウムを伴う約pH3.0の緩衝液に変える。この工程において、モノペグ化エリスロポエチンを第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する。この溶出段階の回収した貫流緩衝液を、精製水で約1:5〜1:8に希釈する。第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程後、回収したモノペグ化エリスロポエチンには遊離PEGがない。
【0039】
第1の陽イオン交換クロマトグラフィーの第2段階の回収した貫流緩衝液は、相対含量が増大したモノペグ化エリスロポエチンを含んでおり、即ち、モノペグ化エリスロポエチンの重量当たり又は面積%当たり(第2工程の回収した貫流緩衝液の分子ふるいクロマトグラフィーのクロマトグラムにおける)の分画が、第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程の前と比較した場合に増大している。一実施態様において、モノペグ化エリスロポエチンの相対含量は少なくとも60面積%である。好ましい実施態様において、モノペグ化エリスロポエチンの相対含量は少なくとも80面積%である。
【0040】
モノペグ化エリスロポエチンのさらなる精製のために、第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実施する。第2の陽イオン交換クロマトグラフィーのために、約100mMのリン酸カリウム濃度及び約pH3.0のpHに調整した第2の溶出段階の回収及び希釈した貫流緩衝液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムと同じタイプの、陽イオン交換材料を含む第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する。一実施態様において、第2の陽イオン交換カラム及びそれに含まれる陽イオン交換材料は、第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程のと同じである。モノペグ化エリスロポエチンは、約pH3.0の約50mM塩化ナトリウムを伴う濃度約100mMのリン酸カリウム緩衝液で開始し、そして、約pH3.0の約500mM塩化ナトリウムを伴う濃度約100mMのリン酸カリウム緩衝液で終了する直線勾配を適用することにより第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する。塩化ナトリウム濃度における変化は、10のカラム容積にわたり直線型である。貫流緩衝液を分画し、各分画を1Mリン酸水素二カリウムで希釈して、pH値を約pH6〜8に増大させる。
【0041】
第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程後、モノペグ化エリスロポエチンが、実質的に均質な形態で、好ましくは面積当たり少なくとも95%の純度で得られる。
【0042】
当業者はイオン交換クロマトグラフィーの技術に精通している。陽イオン交換材料に結合したポリペプチドの回収工程において、イオン交換カラムを通過する緩衝液/溶液のイオン強度、即ち、伝導度が増大する。これは、緩衝塩濃度の増大によるか、又は他の塩、いわゆる溶出塩の緩衝溶液への添加のいずれかにより達成できる。溶出方法に応じて、緩衝液/塩濃度を、一度に(段階溶出方法)、又は連続的に(連続溶出方法)、濃縮緩衝液又は溶出塩溶液の分画添加により増大させる。一実施態様において、溶出塩は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、又はクエン酸もしくはリン酸の他の塩、又はこれらの成分の任意の混合物である。好ましい実施態様において、溶出塩はクエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの混合物である。
【0043】
本方法の一実施態様において、陽イオン交換材料は、強陽イオン交換材料、好ましい実施態様においてToyopearl(登録商標)SP 650 M、別の好ましい実施態様においてスルホプロピル陽イオン交換材料である。溶出を起こす塩の濃度は、一実施態様において5mM〜500mM、好ましい実施態様において5mM〜400mM、特に好ましい実施態様において5mM〜250mMの範囲である。本発明の別の実施態様において、溶出を起こす塩は、同時に、緩衝物質、例えば、クエン酸もしくはその塩又はリン酸もしくはその塩として使用される。
【0044】
モノペグ化エリスロポエチンは、当技術分野において公知の方法により、薬学的に許容可能な担体又は媒体との注入のために適した薬学的組成物中で使用してよい。例えば、適切な組成物は、WO 97/09996、WO 97/40850、WO 98/58660、及びWO 99/07401において記載されている。本発明の産物を製剤化するための好ましい薬学的に許容可能な担体には、ヒト血清アルブミン、ヒト血漿タンパク質などがある。本発明の化合物は、等張化剤、例えば132mM塩化ナトリウムを含む、pH7の10mMリン酸ナトリウム/カリウム緩衝液中で製剤化してよい。任意に、薬学的組成物は保存剤を含んでよい。薬学的組成物は、異なる量のモノペグ化エリスロポエチン、例えば10〜1000μg/ml、例えば50μg又は400μgを含んでよい。
【0045】
本発明のエリスロポエチン糖タンパク質産物の投与は、ヒトにおいて赤血球の形成をもたらす。従って、モノペグ化エリスロポエチン糖タンパク質産物の投与によって赤血球の産生において重要であるこのエリスロポエチンタンパク質が補充される。モノペグ化エリスロポエチン糖タンパク質産物を含む薬学的組成物は、様々な手段により、単独で又は状態もしくは疾患の一部として、低い又は欠損した赤血球産生により特徴付けられる血液疾患を経験するヒト患者に投与するために効果的な強度で製剤化できる。薬学的組成物は、皮下又は静脈内注入などの注入により投与してよい。モノペグ化エリスロポエチン糖タンパク質産物の平均量は変動しうる。抱合体の正確な量は、処置中の状態の正確なタイプ、処置中の患者の状態、ならびに組成物中の他の成分などの要因の対象となる優先度の問題である。例えば、0.01〜10μg/kg(体重)、好ましくは0.1〜1μg/kg(体重)を、例えば週1回投与してよい。
【0046】
驚くべきことに、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムは、分離効率の大幅な低下なく、本発明の方法で再生できることが見出されている。本発明の再生方法で、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを、少なくとも40の分離サイクル、一実施態様において少なくとも50の分離サイクル、さらなる実施態様において少なくとも60の分離サイクルで、分離効率(図1を参照のこと)及び収率(図2を参照のこと)の大幅な低下なく使用できることが示されている。本出願内で使用する「分離サイクル」という用語は、一連のi)カラムの平衡化、ii)カラムで分離すべき溶液の適用、iii)カラムの洗浄、iv)カラムからの吸着化合物の回収、v)カラムの洗浄、vi)カラムの再生を意味する。また、本発明の再生方法で、分離効率における低下が避けられるだけでなく、負荷能力における低下を防止できることが見出されている(図2を参照のこと)。
【0047】
本出願内で使用する「分離効率」という用語は、陽イオンクロマトグラフィーカラムが溶液の化合物を分離する能力を意味する。本出願内で使用する「大幅な低下なく」という用語は、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムが、同じ化合物を含む溶液の連続クロマトグラフィーにおいて、同じ、即ち、+/−5%の変動内で、一実施態様において+/−2.5%の変動内で化合物の分離を提供することを意味する。本出願内で使用する「負荷能力」という用語は、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収される目的の化合物の量を意味する。
【0048】
以下の実施例、配列表、及び図は本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲を添付の特許請求の範囲において示す。本発明の精神から逸脱することなく、示した手順を修正できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】再生プロセスのサイクル数バリデーション中での第1のクロマトグラフィーの貫流緩衝液プールにおけるモノペグ化エリスロポエチンの純度。
【図2】再生プロセスのサイクル数バリデーション中での第1のクロマトグラフィーの貫流緩衝液プールにおけるモノペグ化エリスロポエチンの収率。
【0050】
材料及び方法
SE−HPLC
SE−HPLCによってタンパク質がそれらの見掛け上の分子量に従って分離される。従って、この方法によって、モノペグ化エリスロポエチン(低分子量型及びフラグメント)、ポリペグ化型及びより高い凝集体のエリスロポエチンの存在を検出できる。HPLCには220nm検出器及びSuperose 6 HRカラム(寸法10×300mm、Pharmacia Biotech, Cat-Nr: 17-0537-01)又はSuperose 6 10/300 GLカラム(Pharmacia Biotech, Cat-Nr: 17-5172-01)が備わっている。カラムは、均一溶媒の条件下で、室温で、約0.4ml/分の流速を使用して操作する。移動相緩衝液は、300mM塩化ナトリウムを伴うpH6.8の50mMリン酸ナトリウム緩衝液である。使用するHPLCシステムに応じて、この方法は、100μl又は500μlのいずれかのサンプル適用容積で実施できる。サンプルは、移動相緩衝液で、約0.5mg/ml(100μl負荷)又は約0.1mg/ml(500μl負荷)のタンパク質濃度まで希釈する。タンパク質濃度が0.1mg/ml未満のサンプルは、未希釈で使用できる。溶出タンパク質は検出器波長220nmで検出する。
【0051】
RP−HPLC:
純度はRP−HPLCにより分析し、モノペグ化エリスロポエチンをオリゴ型及び関連物質から分離する。アッセイは、Poroshellカラムで、アセトニトリル/水性TFA勾配を使用して実施する。溶出プロファイルを220nmでのUV吸光度としてモニタリングする。モノペグ化エリスロポエチン及び関連物質又はオリゴ型のパーセンテージは、溶出タンパク質の全ピーク面積に基づき算出する。
【0052】
実施例1
モノペグ化エリスロポエチンの精製
エリスロポエチンは、例えばWO 01/87329に従って産生し、そして、WO 96/135718に報告される通りに精製できる。ペグ化エリスロポエチンは、例えばWO 03/029291に従って産生できる。
【0053】
a)SP Toyopearl 650 Mでの第1のクロマトグラフィー
第1のクロマトグラフィー工程は、SP Toyopearl(登録商標)650Mを充てんしたスルホプロピル(SP)カラムで実施する。カラムは室温で操作する。第1のカラムの最高負荷能力は、カラム容積(CV)1リットル当たり1.5gタンパク質と規定する。カラムは、pH2.9〜3.1の100mMリン酸カリウム緩衝液(SP−A緩衝液)で平衡化した。負荷工程後、カラムは、増加量のNaClを含む一連のリン酸カリウム緩衝液で洗浄及び溶出した。遊離のペグ化炭酸、即ち、加水分解PEG試薬、及びポリペグ化型を、SP−A緩衝液、及び90mM塩化ナトリウムを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH2.9〜3.1)(SP−B緩衝液)での貫流、及び続く洗浄工程においてそれぞれ除去した。モノペグ化エリスロポエチンを、250mM塩化ナトリウムを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH2.9〜3.1)(SP−C緩衝液)を適用することにより溶出し、容器中に回収し、そして精製水で直接1:5に希釈した。この回収した溶出液を「SP溶出液プールI」と呼ぶ。カラムを続いて、750mM塩化ナトリウムを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH2.9〜3.1)(SP−D緩衝液)で洗浄し、未反応エリスロポエチンを除去し、そしてカラムを再生した。
【0054】
b)SP Toyopearl 650 Mでの第2のクロマトグラフィー
第2のカラムは室温で操作した。SP−A緩衝液での平衡化後、SP溶出液プールIをカラムに適用し、カラムをその後にSP−A緩衝液で洗浄した。モノペグ化エリスロポエチンは、50〜500mMの塩化ナトリウムの傾きを伴う直線勾配を、pH2.9〜3.1の100mMリン酸カリウム緩衝液で緩衝化した10のカラム容積にわたり適用することにより溶出した。産物ピークを8つまでの単一分画に分画し、各分画を1Mリン酸水素二カリウムで直接希釈し、pHを6〜8に増大させた。モノペグ化エリスロポエチンの溶出が完了した後、勾配の傾きを増大させて、500mM塩化ナトリウムを含む100mMリン酸カリウム(pH2.9〜3.1)での迅速なカラム洗浄をもたらすことができる。
【0055】
c)SP Toyopearl 650 Mカラムの再生
両方のカラムの樹脂を一連の7工程において再生した。カラムを精製水、続いて0.5M水酸化ナトリウム溶液でフラッシングした。アルカリ溶液を精製水で置換し、酸洗浄(0.5Mリン酸二水素ナトリウム、1Mリン酸)が続く。別の精製水工程後、カラムを0.5M水酸化ナトリウムで≧4時間、発熱物資を除去した。苛性再生後、カラムを精製水で再び洗浄した。精製水(PW III)を限外ろ過により産生した。PW IIIの品質は、米国薬局方の注射用水のそれと同等である。テストはPh. Eur.及びUSPに従って実施する。上に概説する第1のクロマトグラフィー工程に従って実施する対照実行中、残留するタンパク質又はPEG部分は各貫流緩衝液中で検出できなかった。60サイクル後の樹脂のSDS−PAGE分析によってゲル上に残留するタンパク質又はPEG部分は示されなかった。これらのデータに基づき、残留するタンパク質又はPEG部分のバッチ間の持ち越しは除外でき、このようにカラムの再生は非常に効果的である(図1も参照のこと)。各クロマトグラフィーにおいて得られた収率の決定によって低下は示されなかった(図2も参照のこと)。
【0056】
【表1】

【0057】
図1及び2において示す通り、全サイクルでの第1のクロマトグラフィー工程について、貫流緩衝液プール中のモノペグ化エリスロポエチンの純度及び収率は、明らかに少なくとも80%純度及び少なくとも35%収率の範囲内である。また、カラムの寿命中にモノペグ化エリスロポエチンの純度における傾向は観察できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の化合物の溶出後に陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを再生するための方法であって、以下の工程:
− 吸着ポリペプチドを、塩化ナトリウムを少なくとも500mMの濃度で含む水性緩衝溶液でカラムから溶出すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− 0.5M水酸化ナトリウム溶液をカラムに適用すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− 0.5Mリン酸二水素ナトリウム及び1Mリン酸を含む溶液をカラムに適用すること、
− カラムを精製水でフラッシングすること、
− 0.5M水酸化ナトリウム溶液をカラムに少なくとも4時間適用すること、及び
− 陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを、カラムを精製水でフラッシングすることにより再生すること
を、この順番で含む方法。
【請求項2】
実質的に均質な形態でモノペグ化エリスロポエチンを得るための方法であって、以下の工程:
a)分子量が20kDa〜40kDaの活性化ペグ化試薬を使用してエリスロポエチンをペグ化すること、
b)工程a)において得られるペグ化エリスロポエチンを2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程(第1及び第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程で同じタイプの陽イオン交換材料を用いる)で精製すること、
c)モノペグ化エリスロポエチンを、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから実質的に均質な型で回収すること、
d)以下の順番の以下の工程により陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを再生すること:
i)結合ポリペプチドを、塩化ナトリウムを含む水性緩衝溶液で陽イオン交換カラムから除去すること、
ii)カラムを精製水でフラッシングすること、
iii)水酸化ナトリウム溶液をカラムに適用すること、
iv)カラムを精製水でフラッシングすること、
v)リン酸二水素ナトリウム及びリン酸を含む溶液をカラムに適用すること、
vi)カラムを精製水でフラッシングすること、
vii)0.5M水酸化ナトリウム溶液をカラムに少なくとも4時間適用すること、及び
viii)陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを、カラムを精製水でフラッシングすることにより再生すること
を含む方法。
【請求項3】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーカラムが強陽イオン交換クロマトグラフィーカラムであることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーカラムがスルホプロピル陽イオン交換クロマトグラフィーカラムであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記緩衝剤が、リン酸もしくはその塩、又は酢酸もしくはその塩、又はクエン酸もしくはその塩、又はヒスチジンもしくはその塩であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記エリスロポエチンが配列番号1又は2のアミノ酸配列を伴うヒトエリスロポエチンであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記PEGが分子量20〜35kDaを有し、直線型であることを特徴とする、請求項2又は6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記PEGが分子量40kDaを有し、分岐していることを特徴とする、請求項2又は6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程が段階溶出として実施され、前記第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程が直線溶出として実施されることを特徴とする、請求項2及び6〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを少なくとも40の分離サイクルで使用し得ることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−533845(P2010−533845A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516415(P2010−516415)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005768
【国際公開番号】WO2009/010271
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT