説明

クロマトグラフィー用カラム

【課題】ロッド状の担体を備えたクロマトグラフィー用カラムであって、分離性能が高く、かつ、未だ実用化されていない内径サイズのものを実現できる構造のものを提供する。
【解決手段】ロッド状の担体と該担体を被覆する被覆体と該被覆体の担体に対する密着性を調整する締着体とを備えており、締着体を螺旋状に成形された線材によって筒状に形成し、締着体に被覆体で覆われた担体を挿入した状態で締着体を捩じることによって被覆体で覆われた担体が締め付けられて被覆体の担体に対する密着性を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用カラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、近年、クロマトグラフィー用カラム(以下、「カラム」ともいう)の固定相形成において採用されているモノリス(三次元ネットワーク状の骨格とその空隙が一体となった)構造を有する担体は、多孔質粒子集合構造を有する担体と同様の比表面積を有するにもかかわらず、移動相を低圧・高速で送液でき、かつ、高い分離性能を有することから注目を集めており、その改良が進められている。
【0003】
モノリス構造を有する担体を固定相とするカラムは、その製造方法によって二種類に大別でき、一方は、予めロッド状に形成された担体を樹脂製の外筒体に挿入し、外筒体の熱膨張や熱収縮を利用して外筒体を担体に対して密着させる製造方法によるもの(以下、「第一従来カラム」という)であり、他方は、外筒体の中空内で担体を生成し、外筒体の内面に対して担体を結合させる製造方法によるもの(以下、「第二従来カラム」という)である。
【0004】
第一従来カラムとしては、後出特許文献1に、一体型多孔質体からなる充填物と、その外周を被覆する密着性、耐熱性、耐薬品性及び耐圧性を有する有機系樹脂外筒部材とを具備し、有機系樹脂外筒部材は、熱収縮チューブと、この熱収縮チューブの外側に設けられた熱硬化性樹脂層の二層構造より形成されている液体クロマトグラフィー用カラムが開示されている。また、市販品として、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)製の外筒体を高温で熱膨張させてモノリス構造を有する担体を挿入した後、外筒体を収縮させて外筒体を担体に密着させたクロマトグラフィー用カラムが知られている。
【0005】
第二従来カラムとしては、後出特許文献2に、第2の材料の表面と化学的に相互作用できる支持骨格官能基を含み重合した支持骨格ナノコンポジット(PSN)を備えるハイブリッド無機/有機キャピラリーモノリスが第2の材料内で形成されたカラムが開示されている。
【特許文献1】特開平10−197508号公報
【特許文献2】特表2007−515503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示された液体クロマトグラフィー用カラムによって試料を分離して得られるクロマトグラムは、特許文献1の図2に示されているとおり、各溶質のピークが重なった状態で現れており、分離性能が高いと言えるものではなかった。これは、充填物に対する外筒部材の密着度が制御できないため、カラム内で移動相が不均一な流路を形成し、注入された試料がそこを通過していることが原因の一つと推測される。
【0007】
また、前記市販品として知られているクロマトグラフィー用カラムにおいては、予め担体の表面を化学修飾したものを採用すると、高温で加熱して熱膨張させたPEEK樹脂製の外筒体に担体を挿入した際に、外筒体と接触した担体の外表面において熱による酸化等の化学反応が促されて分離性能に影響が出ることから、その性能劣化が影響し難くなる体積に対する外表面積の比率が低い担体を採用したカラム、換言すれば、内径サイズの大きいカラムしか実用化されていなかった。
【0008】
さらに、前記特許文献2に開示されるような第二従来カラムにおいては、担体を生成する際に必要となる焼成によって担体が収縮するため、外筒体の内径が小さいと、担体の体積に対する外筒体の内表面積の比率が高くなって担体の外筒体に対する結合が維持されるが、外筒体の内径が大きくなると、担体の体積に対する外筒体の内表面積の比率が低くなり担体の外筒体に対する結合が維持されなくなる。このため、担体の外筒体に対する結合が維持できるような内径サイズの小さいカラムしか実用化されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、ロッド状の担体を備えたクロマトグラフィー用カラムであって、分離性能が高く、かつ、未だ実用化されていない内径サイズを実現できる構造のクロマトグラフィー用カラムを提供することを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試作・実験を繰り返した結果、ロッド状の担体と該担体を被覆する被覆体と該被覆体の担体に対する密着性を調整する締着体とを備えたクロマトグラフィー用カラムにおいて、締着体を螺旋状の弾性体によって形成すれば、締着体に被覆体で覆われた担体を挿入した状態で締着体によって被覆体で覆われた担体が締め付けられて被覆体の担体に対する密着性を調節することができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0011】
即ち、本発明に係るクロマトグラフィー用カラムは、ロッド状の担体と該担体を被覆する被覆体と該被覆体の担体に対する密着性を調節する締着体とを備えており、締着体は螺旋状の弾性体によって形成されており、締着体に被覆体で覆われた担体を挿入した状態で締着体によって被覆体で覆われた担体が締め付けられて被覆体の担体に対する密着性が調節されるものである。
【0012】
また、本発明は、前記クロマトグラフィー用カラムにおいて、締着体が外筒体に挿入されており、外筒体によって締着体の内径の広がりが抑止されるものである。
【0013】
また、本発明は、前記クロマトグラフィー用カラムにおいて、外筒体の開口を塞ぐように接続具が取り付けられているものである。
【0014】
また、本発明は、前記いずれかのクロマトグラフィー用カラムにおいて、被覆体で覆われた担体の先端にシーリングが嵌められているものである。
【0015】
また、本発明は、前記被覆体で覆われた担体の先端にシーリングが嵌められているクロマトグラフィー用カラムにおいて、シーリングが被覆体で被覆された担体を挿入する中空に向かって傾斜したバンク面上に位置付けられており、シーリングを接続具によって締着体側へ押さえ付けることによってシーリングの被覆体に対する密着性が調節されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被覆体で覆われた担体の周面を螺旋状の弾性体によって形成された締着体によって囲んだので、締着体の弾性によって被覆体で覆われた担体が適度に締め付けられた状態となって被覆体の担体に対する密着性を維持でき、移動相による不均一な流路の形成を防ぐことができる。従って、締着体の内径を選択することによって被覆体で覆われた担体の締め付け度合いを調整することができ、分離性能の高いカラムを得ることができる。また、被覆体の担体に対する密着性を締着体の締め付けによって調節するため、被覆体を形成する素材の選択の幅が広がり、比較的低温で熱収縮や熱膨張する素材を採用できることから、予め化学修飾した担体に対して被覆体を被覆する際の加熱温度が低くなり、担体の外表面における化学反応を抑制することができる。これにより、従来においては実用化されていなかった内径サイズのカラムを形成することができる。
【0017】
従って、本発明は分離分析分野における分離性能や感度向上に関して産業上利用性が非常に高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
実施の形態1.
【0020】
図1は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解斜視図である。図2は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解断面図である。図3は図2に示すクロマトグラフィー用カラムを組み立てた状態を示した断面図である。これらの図において、1は、モノリス構造を有する担体2と、担体2を被覆する被覆体3と、被覆体3の担体2に対する密着性を調節する締着体4と、締着体4が挿入される外筒体5とを備えたクロマトグラフィー用カラムであり、外筒体5の両端には、締着体4に挿入される被覆体3で覆われた担体2の先端に嵌められるシーリング6を閉じ込めるように接続具7が装着される。
【0021】
担体2は、ロッド状に形成されている。担体2を形成する素材としては、シリカ、アルミナ、セルロース、アガロース、デキストリン、キサトン、ハイドロキシアパタイト又はジルコニアや、ポリスチレン(スチレン・ジビニルベンゼン共重合体)、ポリメタクリレート、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリビニルアルコールなどのポリマー等を用いることが好ましい。
【0022】
被覆体3は、担体2の周面を覆う筒状に形成されている。被覆体3を形成する素材としては、締着体4によって締め付けられることで担体2に対する密着性が向上するように柔軟性を有し、また、カラム1に流し込まれる薬品に対する耐性(耐薬品性)を備えたものを選択する。具体的には、フッ素樹脂、シリコンゴムなどの合成樹脂を用いることが好ましい。なお、フッ素樹脂は、比較的低温で熱収縮するため、化学修飾した担体2を被覆体3で覆う場合においても担体2の外表面における化学反応を促進することなく低温で熱収縮させることができるのでより好ましい。
【0023】
締着体4は、螺旋状の弾性体によって形成されている。そして、締着体4は、被覆体3で覆われた担体2を挿入した際に、被覆体3で覆われた担体2を適度に締め付けるように被覆体3で覆われた担体2の外径と同一の内径又は該外径よりも小さい内径に形成されており、また、締着体3に挿入された被覆体3で覆われた担体2の先端が両端から突出する長さに形成されている。なお、締着体4としては、金属を線材に加工してその線材を螺旋筒状に成形したものや、また、合成樹脂を金型で加工して螺旋状に成形したものを使用することができる。なお、螺旋状に成形される線材は、長尺状のものであれば断面の形状は特に限定されず、例えば、断面が円形、楕円形、多角形のものが含まれる。
【0024】
外筒体5は、被覆体3で覆われた担体2を締め付ける締着体4が挿入できるように筒状に形成されている。そして、外筒体5は、締着体の外径と同一の内径に形成されている。これにより、カラム1に注入される移動相の圧力によって締着体3の内径の広がりが抑止される。また、外筒体5は、両端面8に縁部を残して窪んだ段差9が形成されており、外面に接続具7がネジ止めされるネジ溝10が形成されている。なお、外筒体5は、締着体4と同じ長さに形成されているため、外筒体5に被覆体3で覆われた担体2を挿入すると、外筒体5の両端から被覆体3で覆われた担体2の先端が突出し、その先端にシーリング6が嵌められる。
【0025】
接続具7は、外筒体5の中空と連通するように設置されるリング体11と、リング体11と連通する外筒体5の中空の開口12を塞ぐように設置されるシール体13と、リング体11とシール体13とを外筒体5側へ押さえ付けるキャップ体14とから構成されている。
【0026】
リング体11は、外筒体5の端面8と対面する側に該端面8に形成された段差9に嵌る突起面15を有しており、突起面15と反対側に内側へ向かって傾斜するバンク面16を有している。そして、リング体11を外筒体5に対して連通するように設置した状態において、被覆体3で覆われた担体2の先端に嵌められたシーリング6がバンク面16上に位置付けられる。この時、シーリング6は、バンク面16上端から僅かに飛び出した状態となる。
【0027】
シール体13は、シーリング6のバンク面16上端から飛び出した部分を押さえ付ける押圧面17を有しており、押圧面17と反対側にキャップ体14と嵌り合う突起部18が形成されている。そして、シール体13には、クロマトグラフィー装置側の接続具(図示せず)を接続するための接続孔19が中心を通るように貫通している。
【0028】
キャップ体14は、外筒体5の端面8上に積み上げられたリング体11とシール体13とを収納できる中空を有する筒状に形成されており、一方の開口19がシール体13の突起部18に合致する大きさに閉じられている。キャップ体14の中空内面には、外筒体5の外面に形成されたネジ溝10と噛み合うネジ溝20が形成されている。
【0029】
次に、本実施の形態に係るカラムの組立手順を説明する。
【0030】
先ず、予めロッド状に形成された担体2を被覆体3に挿入した後に加熱して被覆体3を熱収縮させて担体2に密着させる。次に、締着体4の中空に被覆体3で覆われた担体2を挿入する。この時、締着体4の内径が被覆体で覆われた担体2の外径と同じ又は外径よりも小さいため、被覆体3で覆われた担体2が締着体4によって締め付けられて被覆体3の担体2に対する密着性が維持される。そして、締着体4は外筒体5の中空へ挿入される。続いて、外筒体5の両端面8にリング体11の突起面15を嵌め合わせて外筒体5とリング体11の中空を連通させる。この時、リング体11のバンク面16側に被覆体3で覆われた担体2の先端が突出した状態となり、その担体2の先端にシーリング6を嵌める。シーリング6は、バンク面16上に接した状態でバンク面16上端から僅かに飛び出した状態となる。次に、バンク面16上端から飛び出したシーリング6にシール体13の押圧面17を押し当てる。そして、外筒体5上に積み上げられたリング体11とシール体13に対してキャップ体14を被せてキャップ体14を外筒体5にネジ止めする。この時、キャップ体14を外筒体5に対して締め込むと、キャップ体14の閉じられた開口19にシール体13の突起部18が嵌り込んでキャップ体14によってシール体11が外筒体5側へ押さえ付けられるため、図3の拡大部分に示すように、シーリング6が変形しながらバンク面16の傾斜に誘導されて被覆体3で覆われた担体2の先端に対して強く密着する。この後、組み立てられたカラム1をクロマトグラフィー装置側の接続具と接続する。
【0031】
なお、前記組立手順においては、被覆体3を熱収縮する素材で形成した場合の手順を示したが、被覆体3を熱膨張する素材で形成した場合には、先ず、被覆体3を加熱して熱膨張させた後に該膨張した被覆体3に対して担体2を挿入し、その後、被覆体3を冷却して収縮させて担体2に密着すればよい。
【0032】
実施の形態2.
【0033】
本実施の形態は、前記実施の形態1における外筒体の変形例である。図4は本実施の形態における外筒体を示した縦断面図である。これらの図において、図1〜図3と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0034】
本実施の形態に係る外筒体5は、図4に示すように、端面8が内側に向かって傾斜するバンク状に形成されており、被覆体3で覆われた担体2の先端に嵌められるシーリング6はバンク状の端面8と接するように位置付けられる。
【0035】
本実施の形態によれば、外筒体5の端面8をバンク状に形成したので、接続具7を構成する部材としてリング体11を用いることなく、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0036】
実施の形態3.
【0037】
図5は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解斜視図である。図6は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解断面図である。図7は図6に示すクロマトグラフィー用カラムを組み立てた状態を示した断面図である。これらの図において、図1〜図3と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0038】
本実施の形態に係るカラム1においては、被覆体3で覆われた担体2に可塑性を有する樹脂を巻き付けて可塑層21を形成した後に締着体4に挿入している。これにより、締着体4を形成する線材の繋ぎ目の隙間22に可塑層21を形成する樹脂が入り込むため、被覆体3で覆われた担体2全体を締着体4によって均一に締め付けることができる。
【0039】
また、外筒体5は、両端面8が平坦に形成されており、被覆体3で覆われた担体2の先端に嵌められるシーリング6が平坦な両端面8に密着するように位置付けられる。
【0040】
さらに、接続具23は、図6に示すように、外筒体5の外面に形成されたネジ溝10に噛み合うネジ溝24が形成された中空部25と、中空部25の一方側の開口を閉じる押圧部26とから構成されている。そして、押圧部26には、クロマトグラフィー装置側の接続具を接続するための接続孔27が中心を通るように貫通している。
【0041】
次に、本実施の形態に係るカラム1の組立手順を説明する。
【0042】
先ず、予めロッド状に形成された担体2を被覆体3に挿入した後に加熱して被覆体3を熱収縮させて担体2に密着させる。次に、被覆体3で覆われた担体2に可塑性を有する樹脂を巻き付けて可塑層21を形成した後に締着体4に挿入する。この時、締着体4の内径が被覆体で覆われた担体2の外径と同じ又は外径よりも小さいため、被覆体3で覆われた担体2が締着体4によって締め付けられて被覆体3の担体に対する密着性が維持され、また、可塑層21を構成する樹脂が締着体4を形成する線材の繋ぎ目の隙間22に入り込むため、被覆体3で覆われた担体2全体が締着体4によって均一に締め付けられる。そして、外筒体5の中空に締着体4を挿入し、外筒体5及び締着体4の両端から突出した被覆体3で覆われた担体2の先端にシーリング6を嵌めた後、外筒体5の先端を接続具23の中空部25に差し込んでネジ止めする。この時、接続具23の押圧部26によってシーリング6が外筒体5側に押されて変形し、被覆体3で覆われた担体2の先端に対する密着性が増す。この後、組み立てられたカラム1をクロマトグラフィー装置と接続する。
【0043】
なお、前記各実施の形態においては、担体としてモノリス構造のものを採用しているが、本発明の構造を有するカラムは、ロッド状の担体であれば、モノリス構造を有するものに限定されることなく、他の構造を有するものを採用することもできる。
【0044】
実施例1〜3.
【0045】
モノリス構造のシリカからなる外径19mm、長さ50mmの円柱状の担体2を用意し、80〜150℃に加熱すると熱収縮するフッ素樹脂からなる内径25mm、長さ60mmの円筒状の被覆体3を用意した。そして、担体2を被覆体3に挿入して100℃にて加熱することにより、被覆体3を熱収縮させて担体2に密着させた。なお、被覆体3の担体2より長い部分は切除した。
【0046】
次に、ステンレスからなる線径2.0mmの線材を螺旋状に成形してなる内径21mm、外径25mm、長さ50mmの締着体4を用意し、ステンレスからなる内径25mm、長さ50mmの中空を有する外筒体5を用意し、ゴムからなる内径19mmのシーリング6を用意し、ステンレスからなるリング体11、シール体13及びキャップ体14から構成される接続具7を用意した。なお、シール体11の接続孔19における押圧面17に貫通する開口は直径1.5mmである。そして、被覆体3に覆われた担体2を締着体4に挿入した後、締着体4を捩りながら外筒体5に挿入し、シーリング6を閉じ込めるように接続具7を組み立てカラム1を得た。
【0047】
続いて、得られたカラム1の接続具7にクロマトグラフィー装置(商品名:ナノスペースSI-1;株式会社資生堂製)側の接続具を接続した。そして、クロマトグラフィー装置によってカラム1に試料を所定条件にて注入し、カラム1から溶出する物質を測定してクロマトグラムを作成した。
【0048】
なお、移動相は、メタノール60vol%と水40vol%とし、その流量を10ml/min(実施例1)、20ml/min(実施例2)及び30ml/min(実施例3)に設定した。また、試料として、ウラシル0.1mg/ml、安息香酸メチル2.2mg/ml、トルエン8.7mg/ml及びナフタレン0.9mg/mlを移動相に溶解したものを用意し、カラム温度を常温(25℃)にして測定を実施した。
【0049】
前記各測定によって得られたクロマトグラムを図8〜図10に示す。いずれの測定によって得られたクロマトグラムにおいても、各溶質がカラム内で充分分離されて溶出したことが検出された。そして、各図の最後に検出されたナフタレンのピーク4に基づいて理論段数を計算したところ実施例1においては2772、実施例2においては4437、実施例3においては4721という数値が得られた。
【0050】
実施例4〜7.
【0051】
モノリス構造のシリカからなる外径1.0mm、長さ54mmの円柱状の担体2を用意し、80〜150℃に加熱すると熱収縮するフッ素樹脂からなる内径1.3mm、長さ60mmの円筒状の被覆体2を用意した。そして、担体2を被覆体3に挿入して100℃にて加熱することにより、被覆体3を熱収縮させて担体2に密着させた。なお、被覆体3の担体2より長い部分は切除した。
【0052】
次に、ステンレスからなる線径0.3mmの線材を螺旋状に成形してなる内径1.7mm、外径4.0mm、長さ48mmの締着体4を用意し、ステンレスからなる内径4.0mm、長さ50mmの中空を有する外筒体5を用意し、ゴムからなる内径2.0mmのシーリング6を用意し、ステンレスからなる接続具22を用意した。なお、接続具22の接続孔26における押圧部25に貫通する開口は直径1.5mmである。そして、被覆体3に覆われた担体2を締着体4に挿入し、続いて、締着体4を内径が小さくなるように捩りながら外筒体5に挿入した後、シーリング6を閉じ込めるように接続具22を外筒体5にネジ止めしてカラム1を得た。
【0053】
続いて、得られたカラム1の接続具7にクロマトグラフィー装置(商品名:ナノスペースSI-2;株式会社資生堂製)側の接続具を接続した。そして、クロマトグラフィー装置によってカラム1に試料を所定条件にて注入し、カラム1から溶出する物質を測定してクロマトグラムを作成した。
【0054】
なお、移動相は、アセトニトリル60vol%と水40vol%とし、その流量を100μl/min(実施例4)、200μl/min(実施例5)、300μl/min(実施例6)及び400μl/min(実施例7)に設定した。また、試料として、エチルベンゼン0.2mg/ml、プロピルベンゼン0.2mg/ml、ブチルベンゼン0.2mg/ml、アミルベンゼン0.2mg/ml及びヘキシルベンゼン0.2mg/mlを移動相に溶解したものを用意し、カラム温度を40℃にして測定を実施した。
【0055】
前記各測定によって得られたクロマトグラムを図11〜14に示す。いすれの測定によって得られたクロマトグラムにおいても、各溶質がカラム内で充分分離されて溶出したことが検出された。そして、各図の最後に検出されたヘキシルベンゼンのピーク5に基づいて理論段数を計算したところ実施例4においては3304、実施例5においては3590、実施例6においては3339、実施例7においては2567という数値が得られた。
【0056】
なお、図8〜図14において、横軸は、カラムに試料が注入されてから経過した時間[min]を示しており、縦軸は、カラムから溶出する物質を検出するクロマトグラフィー装置に備えられたUV-VIS検知器により出力される電圧値[mV]を示している。また、図11〜図14において、各ピークの頂点付近に記載された4桁の数値は、そのピークの頂点における時間を示している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施の形態1に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解斜視図である。
【図2】実施の形態1に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解断面図である。
【図3】図2に示すクロマトグラフィー用カラムを組み立てた状態を示した断面図である。
【図4】実施の形態2に係る外筒体を示した断面図である。
【図5】実施の形態3に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解斜視図である。
【図6】実施の形態3に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解断面図である。
【図7】図6に示すクロマトグラフィー用カラムを組み立てた状態を示した断面図である。
【図8】実施例1の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図9】実施例2の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図10】実施例3の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図11】実施例4の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図12】実施例5の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図13】実施例6の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図14】実施例7の測定によって得られたクロマトグラムである。
【符号の説明】
【0058】
1 クロマトグラフィー用カラム
2 担体
3 被覆体
4 締着体
5 外筒体
6 シーリング
7 接続具
8 端面
9 段差
10 ネジ溝
11 リング体
12 開口
13 シール体
14 キャップ体
15 突起部
16 バンク面
17 押圧面
18 突起部
20 ネジ溝
21 可塑層
22 隙間
23 接続具
24 ネジ溝
25 中空部
26 押圧部
27 接続孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド状の担体と該担体を被覆する被覆体と該被覆体の担体に対する密着性を調節する締着体とを備えており、締着体は螺旋状の弾性体によって形成されており、締着体に被覆体で覆われた担体を挿入した状態で締着体によって被覆体で覆われた担体が締め付けられて被覆体の担体に対する密着性が調節されることを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。
【請求項2】
締着体が外筒体に挿入されており、外筒体によって締着体の内径の広がりが抑止される請求項1記載のクロマトグラフィー用カラム。
【請求項3】
外筒体の開口を塞ぐように接続具が取り付けられている請求項2記載のクロマトグラフィー用カラム。
【請求項4】
被覆体で覆われた担体の先端にシーリングが嵌められている請求項1乃至3のいずれかに記載のクロマトグラフィー用カラム。
【請求項5】
シーリングが被覆体で被覆された担体を挿入する中空に向かって傾斜したバンク面上に位置付けられており、シーリングを接続具によって締着体側へ押さえ付けることによってシーリングの被覆体に対する密着性が調節される請求項4記載のクロマトグラフィー用カラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−244087(P2009−244087A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90750(P2008−90750)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)