説明

クロロシランの精製装置及びクロロシラン製造方法

【課題】塩化反応炉で生成したクロロシランを含むガスの中から塩化アルミニウムを効率的に除去する。
【解決手段】容器1の中に塩化ナトリウムを充填して加熱手段17により加熱しておき、該塩化ナトリウムの層16の中に、金属シリコンと塩化水素の反応により生成されたクロロシランを含むガスを通過させることにより、該ガス中に含まれる塩化アルミニウムと塩化ナトリウムとの複塩を生成し、該複塩を分離させた後のガスをガス回収管26から回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シリコンと塩化水素の反応により生成されたトリクロロシラン等のクロロシランを含むガスから塩化アルミニウムを除去するクロロシランの精製装置及びクロロシラン製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンを製造するための原料として使用されるトリクロロシランは、塩化反応炉で金属シリコン粉末に塩化水素ガスを反応させることで製造され、その後、多段階の蒸留を経て純度が高められる。この塩化反応炉で発生するガス中には、生成されるトリクロロシランの他に、四塩化珪素、水素、及び未反応ガスとして塩化水素が含まれているとともに、原料として用いた金属シリコンの微粉や金属シリコン中の不純物(Fe、Al、Ti、Ni等)が反応して生成された金属塩化物が含まれる。
【0003】
この金属塩化物のうち塩化アルミニウム(AlCl)は、比較的昇華点が低い(183℃/2.5atm)が、塩化反応以降の系内がその昇華点以下の雰囲気であると固化し易く、その後の工程でタンクや配管等に堆積して閉塞や腐食の原因となる。そこで、従来では、例えば、塩化反応炉の後工程である蒸留塔の塔底から堆積物を定期的に抜き出す、あるいは金属シリコン中のアルミニウム濃度が極めて低い原料を使用するなどの対策が採られていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−1804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蒸留塔の塔底に塩化アルミニウムを単に堆積させるだけでは、その堆積物を抜き出す作業を頻繁に行う必要があり、また、金属シリコン中のアルミニウム濃度を規定する方法では、使用に供される金属シリコンが制限され、コスト高を招く原因となり易い。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、塩化反応炉で生成したクロロシランを含むガスの中から塩化アルミニウムを効率的に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクロロシランの精製装置は、塩化ナトリウムを充填した容器に、該塩化ナトリウムの層を加熱する加熱手段と、金属シリコンと塩化水素の反応により生成されたクロロシランを含むガスが供給されるガス供給管と、前記塩化ナトリウムの層を通過した後のガスが排出されるガス回収管とが設けられていることを特徴とする。
【0008】
すなわち、容器の中に塩化ナトリウムを充填して加熱しておき、その塩化ナトリウムの層の中に、金属シリコンと塩化水素の反応により生成されたクロロシランを含むガスを通過させることにより、ガス中に含まれる塩化アルミニウムと塩化ナトリウムとの反応により複塩を生成し、この複塩を分離させた後のガスを回収するものである。この塩化アルミニウム(AlCl)と塩化ナトリウム(NaCl)とから生成される複塩は、塩化アルミニウムナトリウム(NaAlCl)であり、155℃以上で融液状態となっているものである。
【0009】
また、本発明の精製装置において、前記容器内に、これを上下に仕切るように網板が設けられるとともに、該網板よりも下方位置に前記ガス供給管が接続され、網板よりも上方位置に前記ガス回収管が接続されており、前記塩化ナトリウムは、前記網板の上に充填されていることを特徴とする。
【0010】
この精製装置においては、網板上に充填された塩化ナトリウムの間を経由してガスが通過することにより、ガスが塩化ナトリウムの層内に広く行き渡り、複塩を効率的に生成することができる。塩化ナトリウムとしては、塊状の造粒塩あるいはその成型品が適用され、その大きさとしては網板から落下しない程度であればよい。
【0011】
また、本発明の精製装置において、前記ガス供給管の上流位置に、前記クロロシランを含むガス中のダストを除去するフィルター装置が設けられ、該フィルター装置は、ポリテトラフルオロエチレンの織物を用いたフィルター又はポリテトラフルオロエチレンを連続多孔質体としてなるメンブレンフィルターを有することが好ましい。
【0012】
金属シリコンと塩化水素の反応により生成されたクロロシランを含むガス中には、金属シリコンの粉末がダストとして混在している。この金属シリコン粉末が混在したまま前記容器の中に送り込まれると、容器の中に充填されている塩化ナトリウムに付着し、その表面を覆って塩化ナトリウムを粘土状質にしてしまうため、ガスが通過し難くなって塩化ナトリウムが塩化アルミニウムと反応しなくなる。そこで、この容器に送り込まれる前にフィルターを経由してダストを除去するのである。この場合、前記クロロシランを含むガス中には未反応の塩化水素も含まれるため、フィルターとして金属製のものを使用すると、孔食や割れが発生するおそれがあるので、ポリテトラフルオロエチレンの織物を用いたフィルター又はポリテトラフルオロエチレンを連続多孔質体としてなるメンブレンフィルターを用いて、フィルターとしての耐久性を高めるようにしている。
【0013】
さらに、本発明のクロロシランの精製装置において、前記容器の少なくとも底部外面を覆うジャケットが形成されるとともに、該ジャケットに熱媒体が供給され、容器の底部に、生成された複塩を排出する複塩排出管が前記ジャケットを貫通するように接続され、その貫通部に前記複塩排出管を囲む筒状壁が形成され、該筒状壁の外側に前記ジャケットが形成されていることを特徴とする。
【0014】
この精製装置では、容器内で生成された複塩が容器の底の複塩排出管から排出される際に、容器の底部の複塩が複塩排出管の入り口部分に集合しながら複塩排出管に流れ込むことになり、その複塩排出管と炉壁との接合部が複塩による摩耗などのダメージを受け易い。この場合、容器の底部外面にはジャケットが形成されて熱媒体が流通しているため、炉壁に万一孔が開けられてしまうとジャケットの熱媒体が容器内に浸入してしまうことになるので、複塩排出管の回りを囲む筒状壁によってジャケットとドレン管とを離間させ、複塩排出管との接合部付近の炉壁に万一孔が開けられたとしても、ジャケットには影響しないようにしている。
【0015】
本発明のクロロシラン製造方法は、前記いずれかに記載のクロロシランの精製装置を用いて精製したクロロシランを製造する方法であって、前記クロロシランを含むガスを前記ガス供給管から前記容器内に供給し、該容器内に充填された前記塩化ナトリウムの層を通過させ、前記ガス回収管から回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のクロロシランの精製装置及びクロロシラン製造方法によれば、クロロシランを含むガスを塩化ナトリウムの層の中に通過させて、ガス中の塩化アルミニウムと塩化ナトリウムとの複塩を生成するようにしたので、ガスの中から塩化アルミニウムが除去され、その後の蒸留工程等において配管の閉塞や腐食の発生を抑制することができる。また、容器に送る前にフィルターを通すことにより、ダストを除去した状態で容器に供給することができ、ダストの影響によって塩化ナトリウムの機能を損なうことなく、有効に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る精製装置の一実施形態を示す一部を縦断面にした概略説明図である。
【図2】一実施形態の精製装置における容器の伝熱管を示す縦断面図である。
【図3】一実施形態の精製装置における容器の底部と複塩排出管との接合部付近の縦断面図である。
【図4】一実施形態の精製装置に用いられるフィルター装置の縦断面を示す概略説明図である。
【図5】本発明に係る精製装置の他の実施形態を示す一部を縦断面にした概略説明図である。
【図6】本発明の効果確認のために行った実施例の装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るクロロシランの精製装置及びクロロシラン製造方法の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1から図4は精製装置の一実施形態を示しており、この精製装置は、容器1と、この容器1内に送り込まれるガスからダストを除去するためのフィルター装置2と、容器1内に充填される塩化ナトリウムを乾燥しながら保持する乾燥器3と、容器1内で生成された
複塩を処理する複塩処理系4とを備える構成とされている。
【0019】
容器1は、図1に示すように、上下方向に沿う円筒状の胴体部11と、この胴体部11の下端に連結された凹状の底部12と、胴体部11の上端に連結されたドーム状の天板部13とを備えている。
【0020】
胴体部11の下部には格子板14が設けられて、胴体部11の内部を上下に仕切るようにしており、その格子板14の上に網板15が載置状態に設けられ、この網板15の上に、塩化ナトリウムが充填されるようになっている。この場合、格子板14は鉄によって形成されているが、網板15は、ニッケル基耐食合金であるハステロイ(登録商標)が使用されている。網板15にハステロイを使用するのは、スチールでは後述の複塩によって浸食されてしまい、またステンレス鋼では塩素の影響と考えられる割れが発生する可能性があるからである。
【0021】
また、塩化ナトリウムは、ペレット状の造粒塩あるいはその成型品が適用されており、例えば32mm×22mm×12mm〜46mm×37mm×20mmの固形物とされる。造粒塩の粒の形は塊状でもよい。塩化ナトリウムの粒の大きさは限定されないが、塩化ナトリウムの長径方向の大きさが、隣り合う伝熱管17同士の間隔より十分小さくすることが好ましい。さらに、その大きさとしては網板15から落下しない程度であればよい。図1の破線のハッチングで示す領域に充填されており、符号16がその塩化ナトリウムの層を示している。
【0022】
また、網板15の上方位置の胴体部11内には、加熱手段として複数の伝熱管17が胴体部11の周方向に適宜の間隔をおいて設けられている。これら伝熱管17は、全体としてはL字状に屈曲しており、胴体部11の側壁から半径内方に突出して胴体部11の上下方向に沿って上向きに延びるように配置され、図1に示されるように、塩化ナトリウム層16の全体に埋没するように配置されている。また、各伝熱管17は、図2に示すように内管21と外管22との二重管構造とされ、その内管21は上端が開口して外管22の上端に連通している。そして、内管21から導入されたスチーム等の熱媒体が内管21の上端の開口から外管22内にあふれ、外管22と内管21との間の環状空間を経由して外管22の下端のドレン管23から排出されるように構成されている。なお、伝熱管17と胴体11の側壁との間、及び伝熱管17相互の間には十分な間隔が開けられ、塩化ナトリウムが部分的に詰ることがないようにされている。
【0023】
また、格子板14の下方の底部12には、その側方からガスを供給するガス供給管24と、後述するように底部12の最深部から複塩を下方に排出するための複塩排出管25とが接続され、一方、天板部13には、ガス回収管26と、塩化ナトリウムの投入口27と、のぞき窓付きのノズル管28とが接続されている。
【0024】
また、容器1の底部12の外面には、図3に示すように、この底部12を覆って二重壁とするようにジャケットの外壁31が設けられており、空間部32に熱媒体が流通させられるようになっている。ジャケットは外壁31と、底部12と、それらの間の空間32とを有する。そして、底部12から下方に延びる複塩排出管25は、この外壁31を貫通するように設けられるが、容器1の底部12下面には、複塩排出管25の回りを囲むように筒状壁33が設けられ、この筒状壁33の外側に外壁31が設けられていることにより、外壁31と複塩排出管25とが筒状壁33によって離間させられた状態とされている。複塩排出管25と底部12との接合部は、複塩が容器1の底部12から複塩排出管25に流れ込む際に複塩による摩耗などのダメージを最も受け易く、この接合部は、その部分に万一孔が開けられても外壁31内の空間部32に達しないように設計されているのである。
【0025】
この場合、筒状壁33と複塩排出管25との間の空間を閉塞するようにリング状の端板34が設けられており、これら筒状壁33、複塩排出管25、端板34により、容器1の底部12の外側に、複塩排出管25を囲むリング状室35が形成され、このリング状室3
5の底にドレン管36が接続されている。なお、容器1の底部12と複塩排出管25との接合部付近に、これらの内面を覆うように、例えばハステロイ(登録商標)等の耐食合金からなるライナーを内貼りするようにしてもよい。
【0026】
一方、フィルター装置2は、ガス供給管24の上流に設けられている。このフィルター装置2は、例えば図4に示すようなバグフィルターが用いられており、タンク41内に、複数の筒状のフィルター42が吊り下げられている構成である。タンク41下部のガス導入管43から導入されたガスが筒状フィルター42内に導かれ、該フィルター42を通過してタンク41上部のガス排出管44から排出され、容器1のガス供給管24に送り出される。このフィルター装置2に使用されているフィルター42は、金属製のものを使用すると、孔食や割れが発生するおそれがあるため、ポリテトラフルオロエチレンの織物を用いたフィルター又はポリテトラフルオロエチレンを微細な連続多孔質体としてなるメンブレンフィルターが使用されている。また、タンク41の上部には、フィルター42に振動を加える加振装置45が設けられており、フィルター42で捕捉されたダストを払い落すことができるようになっている。符号46は、払い落されたダストを排出するダスト排出管である。
【0027】
乾燥器3は、容器1の上方に設けられており、タンク51内に一定量の塩化ナトリウムを貯留して乾燥しておくようになっている。また、タンク51内の下部はホッパー51aとされ、その下部開口52を開閉するための栓53が設けられている。そして、そのホッパー51aの下部開口52が容器1の投入口27の上方に配置されている。
【0028】
また、複塩処理系4は、図示は省略するが、容器1から受け取った複塩を一時貯留するタンクと、このタンクから抜き出した複塩を加水分解する処理槽とを備える構成とされている。
【0029】
このように構成した精製装置において、前工程の塩化反応炉において金属シリコンと塩化水素との反応によって発生したトリクロロシランを含むガスは、まずフィルター装置2に導入され、内部のフィルター42によってダストが捕捉された後に容器1に送られる。このダストには、金属シリコンの粉末が含まれている。この金属シリコン粉末が混在したまま容器1の中に送り込まれると、容器1内の塩化ナトリウムの表面を覆って粘土状質にしてしまうため、ガスが通過し難くなって塩化ナトリウムが機能しなくなる。このため、この容器1に送り込まれる前にフィルター装置2によって金属シリコン粉末等のダストを除去するのである。
【0030】
そして、容器1に供給されたガスは、その底部12から格子板14、網板15を通って塩化ナトリウム層16に送り込まれる。この塩化ナトリウム層16は、その内部に設置されている伝熱管17からの熱により例えば155〜200℃、好ましくは160〜200℃に加熱されており、その塩化ナトリウム層16内をガスが通過する間に、ガス中の塩化アルミニウム(AlCl)と塩化ナトリウム(NaCl)とにより、これらの複塩である塩化アルミニウムナトリウム(NaAlCl)を生成し、塩化ナトリウム層16から出て複塩が分離された後のガスがガス回収管26から排出される。この場合、塩化ナトリウムは多数の塊状のものとされているので、塩化ナトリウム層16にはこれら塊状物の間に空間が形成されており、このため、ガスが塩化ナトリウム層16内に広く行き渡って接触し、複塩を効率的に生成することができる。
【0031】
一方、生成された複塩は、155℃以上で融液となるものであり、網板15及び格子板14を通過して容器1の底部12に流れ落ち、複塩排出管25から複塩処理系4に送られて、加水分解処理がなされる。また、容器1内の塩化ナトリウムは消費されて徐々に減少するので、定期的に乾燥器3から塩化ナトリウムを補充することが行われる。
【0032】
このようにして塩化アルミニウムが除去されたガスは、その後、トリクロロシランの純度を高めるため、蒸留工程等に送られるが、前述した精製工程において金属シリコンの粉末や塩化アルミニウムが除去されているので、配管の閉塞や腐食の発生が抑制される。
【0033】
一方、図5は本発明の精製装置の他の実施形態を示しており、この実施形態においては、塩化ナトリウムが充填される容器61の胴体部11内に配置されている伝熱管62が、胴体11の側壁を貫通して上部から下部にわたって設けられている。この場合、伝熱管62は胴体11の側壁を複数回貫通しながら胴体11の周方向に連続して設けられており、容器61の内部に配置された部分では、図5に示すように上下方向に延び、下端部で折り返すように形成されている。また、この伝熱管62には熱媒体として油が供給されるようになっている。その他の構成については、一実施形態のものと同様の構成であり、共通要素には一実施形態のものと同一符号を付して説明を省略する。この場合も、伝熱管62は上方から塩化ナトリウムを落下させて充填する際等に、途中で詰ることがないように、胴体11の側壁との間、及び伝熱管62相互の間に十分な間隔が開けられる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、加熱手段として、容器内に伝熱管を配設したが、バンドヒーター、テープヒーター等により容器の外側から加熱する構成のものでもよく、それを伝熱管と併用してもよい。また、フィルター装置にバグフィルターを用いたが、他の構造のフィルター装置であってもよい。また、容器の底部の外側に筒状壁と端板とによりリング状室を形成したが、少なくとも筒状壁を有していればよい。端板は省略してもよい。筒状壁を複塩排出管の回りに二重管状に設けてもよい。
【実施例】
【0035】
金属シリコン粉末と塩化水素ガスを前工程の塩化反応炉で反応させたクロロシランガスを図6に示すようにバグフィルター(フィルター装置)2に導入して、クロロシランガス中の金属粉末ダストを除去した後、クロロシランガスを塩化ナトリウムが充填された容器1に供給し、数時間〜数十時間にわたり、150〜220℃の温度で反応させて、容器入口前Aおよび容器出口後Bにおけるガスを採取した。採取したガスは凝縮させて、原子発光分光光度計(ICP−AES)により塩化アルミニウム中のAlの成分を測定し、クロロシラン中に含まれる塩化アルミニウムの重量割合の確認を行った。
なお、バグフィルター2には、ポリテトラフルオロエチレン製のフィルターを用いた。容器1は、内径155.2mm、高さ1300mmのもので、胴体の周囲をテープヒーターで覆って周囲から加熱した。炉内温度の測定箇所を図6中に符号Tで示している。網板15としては、直径3mmのワイヤを4mm間隔で縦横に編み込んだものを使用した。塩化ナトリウムとしては、40×40×18mmのNaCl分が98.53wt%の造粒塩を用いた。採取したガスは、−60℃以下のドライアイス−メタノール液によって凝縮した。その結果を表1に示す。表中の除去率は、(入口前濃度−出口後濃度)/入口前濃度の百分率である。
【0036】
【表1】

【0037】
この表1からわかるように、数時間におけるクロロシランガスの精製においては155℃以上の温度において塩化アルミニウムの除去率は、66.5〜97.3%であった。いずれの測定においても、反応時間帯での容器内での閉塞は発生しなかった。
なお、塩化ナトリウムを充填した容器の稼動を停止し、容器内の温度が低下した際に、容器内の複塩の凝固が確認されたため、実稼動における容器内の温度が低下した場合の閉塞を避けるために、複塩の再溶融温度を確認したところ、約155〜160℃で溶融することが確認された。したがって、容器内を155℃以上、好ましくは160℃以上に加熱するのがよい。
【符号の説明】
【0038】
1 容器
2 フィルター装置
3 乾燥器
4 複塩処理系
11 胴体部
12 底部
13 天板部
14 格子板
15 網板
16 塩化ナトリウム層
17 伝熱管(加熱手段)
21 内管
22 外管
23 ドレン管
24 ガス供給管
25 複塩排出管
26 ガス回収管
27 投入口
28 ノズル管
31 外壁
32 空間部
33 筒状壁
34 端板
35 リング状室
36 ドレン管
41 タンク
42 フィルター
43 ガス導入管
44 ガス排出管
45 加振装置
46 ダスト排出管
51 タンク
51a ホッパー
52 下部開口
53 栓
61 容器
62 伝熱管
A 容器入口前のガス採取位置
B 容器出口後のガス採取位置
T 温度測定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ナトリウムを充填した容器に、該塩化ナトリウムの層を加熱する加熱手段と、金属シリコンと塩化水素の反応により生成されたクロロシランを含むガスが供給されるガス供給管と、前記塩化ナトリウムの層を通過した後のガスが排出されるガス回収管とが設けられていることを特徴とするクロロシランの精製装置。
【請求項2】
前記容器内に、これを上下に仕切るように網板が設けられるとともに、該網板よりも下方位置に前記ガス供給管が接続され、網板よりも上方位置に前記ガス回収管が接続されており、前記塩化ナトリウムは、前記網板の上に充填されていることを特徴とする請求項1記載のクロロシランの精製装置。
【請求項3】
前記ガス供給管の上流位置に、前記クロロシランを含むガス中のダストを除去するフィルター装置が設けられ、該フィルター装置は、ポリテトラフルオロエチレンの織物を用いたフィルター又はポリテトラフルオロエチレンを連続多孔質体としてなるメンブレンフィルターを有することを特徴とする請求項1又は2記載のクロロシランの精製装置。
【請求項4】
前記容器の少なくとも底部外面を覆うジャケットが形成されるとともに、該ジャケットに熱媒体が供給され、容器の底部に、生成された複塩を排出する複塩排出管が前記ジャケットを貫通するように接続され、その貫通部に前記複塩排出管を囲む筒状壁が形成され、該筒状壁の外側に前記ジャケットが形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のクロロシランの精製装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のクロロシランの精製装置を用いて精製したクロロシランを製造する方法であって、前記クロロシランを含むガスを前記ガス供給管から前記容器内に供給し、該容器内に充填された前記塩化ナトリウムの層を通過させ、前記ガス回収管から回収することを特徴とするクロロシラン製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−256197(P2009−256197A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69090(P2009−69090)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】