説明

クロロチオールホルメートの製造方法

【課題】優れた品質のクロロチオールホルメート(II)を良好な収率で製造しうる方法を提供すること。
【解決手段】反応器内で、有機溶媒中、カルボン酸アミドの存在下、アルケニルメルカプタン(I)とホスゲンとを反応させることにより、クロロチオールホルメート(II)を製造する方法であって、カルボン酸アミド総量の10〜50重量%を予め入れた反応器内に、アルケニルメルカプタン(I)、ホスゲン及び残部のカルボン酸アミド(すなわち該アミド総量の50〜90重量%)を反応器内に供給することを特徴とするクロロチオールホルメート(II)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器内で、塩基触媒存在下、有機溶媒中、式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物〔以下、アルケニルメルカプタン(I)ということがある。〕とホスゲンとを反応させることにより、式(II)
【0004】
【化2】

【0005】
(式中、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物〔以下、クロロチオールホルメート(II)ということがある。〕を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0006】
反応器内で、有機溶媒中、塩基触媒存在下、アルケニルメルカプタン(I)とホスゲンとを反応させてクロロチオールホルメート(II)を製造する方法として、例えば、特開2007−204428号公報(特許文献1)には、アルケニルメルカプタン(I)1モルに対してカルボン酸アミドを0.05モル使用し、カルボン酸アミドを入れていない反応器に、アルケニルメルカプタン(I)、ホスゲン及びカルボン酸アミドを供給する方法や、アルケニルメルカプタン(I)1モルに対してカルボン酸アミドを0.05モル使用し、アルケニルメルカプタン(I)総量及びカルボン酸アミド総量を予め入れた反応器に、ホスゲンを供給する方法が記載されている。
【0007】
また、特開2007−290987号公報(特許文献2)には、アルケニルメルカプタン(I)1モルに対してトリエチルアミンを0.05モル使用し、アルケニルメルカプタン(I)総量の25重量%及びトリエチルアミン総量の25重量%を予め入れた反応器内に、残りのアルケニルメルカプタン(I)、ホスゲン及び残りのトリエチルアミンを供給する方法や、アルケニルメルカプタン(I)1モルに対してトリエチルアミンを0.05モル使用し、アルケニルメルカプタン(I)総量及びトリエチルアミン総量を予め入れた反応器に、ホスゲンを供給する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−204428号公報
【特許文献2】特開2007−290987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の方法では、目的物であるクロロチオールホルメート(II)のほかに、式(III)
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物〔以下、副生物(III)ということがある。〕の副生量が増加してしまうことがあり、クロロチオールホルメート(II)の品質や収率の点でも必ずしも満足のいくものではなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、副生物(III)の副生を良好に抑制し、優れた品質のクロロチオールホルメート(II)を良好な収率で製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討の結果、上記目的を達成しうる本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、反応器内で、有機溶媒中、カルボン酸アミドの存在下、式(I)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0016】
で示される化合物とホスゲンとを反応させることにより、式(II)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
【0019】
で示される化合物を製造する方法であって、
カルボン酸アミド総量の10〜50重量%を予め入れた反応器内に、式(I)で示される化合物、ホスゲン及び残部のカルボン酸アミド(すなわち該アミド総量の50〜90重量%)を反応器内に供給することを特徴とする式(II)で示される化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、副生物(III)の副生を良好に抑制し、優れた品質のクロロチオールホルメート(II)を良好な収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、式(I)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0024】
で示される化合物〔アルケニルメルカプタン(I)〕をホスゲンと反応させる。式(I)中、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。アルケニルメルカプタン(I)としては、例えば、2−プロペニルメルカプタン(アリルメルカプタン)、2−ブテニルメルカプタン、3−メチル−2−ブテニルメルカプタン、2−ペンテニルメルカプタン、2−ヘキセニルメルカプタン、2−ヘプテニルメルカプタン等が挙げられる。中でも、2−プロペニルメルカプタン(アリルメルカプタン)を原料とする場合に、本発明の方法は有利に採用される。
【0025】
ホスゲンの使用量は、アルケニルメルカプタン(I)に対して、通常1モル倍以上、好ましくは1.05〜2モル倍である。なお、ホスゲンは、ガス状のものを用いてもよいし、液状のものを用いてもよい。
【0026】
本発明では、カルボン酸アミドを触媒として使用することにより、前記反応を円滑に進行させることができる。カルボン酸アミドは、N,N−二置換カルボン酸アミド、N−一置換カルボン酸アミド又は無置換のカルボン酸アミドであることができ、その典型的な例は、次の式(IV)で示すことができる。
【0027】
3−C(=O)−NR45 (IV)
【0028】
(式中、R3、R4及びR5はそれぞれ、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0029】
ここで、アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。また、アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。中でも、R4及びR5が共にアルキル基、特に炭素数1〜5程度の低級アルキル基であるN,N−ジアルキルカルボン酸アミドが好ましく用いられる。
【0030】
カルボン酸アミドの使用量は、アルケニルメルカプタン(I)1モルに対して、0.01〜0.09モルであるのが好ましい。カルボン酸アミドの使用量が、アルケニルメルカプタン(I)1モルに対して、0.01モル以上であると反応が円滑に進行しうる。カルボン酸アミドの使用量が、0.09モル以下であると副生物(III)の副生量が減少しうる。
【0031】
有機溶媒としては、反応後の後処理で反応液を水と混合して油水分離するという操作を採用し易いことから、水と非混和性のものが好ましく用いられる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタンのような脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンのような脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンのようなハロゲン化脂肪族炭化水素;モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルのようなエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステルなどが挙げられる。中でも芳香族炭化水素が好ましく用いられる。
【0032】
有機溶媒の使用量は、アルケニルメルカプタン(I)に対して、通常1〜10重量倍、好ましくは1〜5重量倍である。
【0033】
本発明では、カルボン酸アミド総量の10〜50重量%を予め入れた反応器内に、アルケニルメルカプタン(I)、ホスゲン及び残部のカルボン酸アミド(すなわち該アミド総量の50〜90重量%)を供給することにより、式(III)
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
【0036】
で示される化合物〔副生物(III)〕の副生を良好に抑制し、優れた品質のクロロチオールホルメート(II)を良好な収率で製造することができる。また、反応器内に予め入れておくカルボン酸アミドの量は、該アミド総量に対し、好ましくは30〜50重量%である。
【0037】
一方、アルケニルメルカプタン(I)は、その総量をホスゲン及び所定量のカルボン酸アミドとともに反応器内に供給してもよいし、その一部を予め反応器内に入れておき、次いで、残りをホスゲン及び所定量のカルボン酸アミドとともに反応器内に供給してもよい。また、ホスゲンも同様に、その総量をアルケニルメルカプタン(I)及び所定量のカルボン酸アミドとともに反応器内に供給してもよいし、その一部を予め反応器内に入れておき、次いで、残りをアルケニルメルカプタン(I)及び所定量のカルボン酸アミドとともに反応器内に供給してもよい。
【0038】
有機溶媒は、予め反応器内に入れておいてもよく、また、アルケニルメルカプタン(I)、ホスゲン、カルボン酸アミドとともに反応器内に供給してもよい。
【0039】
なお、アルケニルメルカプタン(I)の供給及びホスゲンの供給は、それぞれ、間隔を空けることなく連続的に行ってもよいし、所定の間隔を空けて間歇的に行ってもよい。また、アルケニルメルカプタン(I)の供給開始とホスゲンの供給開始、及びアルケニルメルカプタン(I)の供給終了とホスゲンの供給終了は、それぞれ、必ずしもちょうど一致させる必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲でずらしてもよい。通常は、ホスゲンと共に供給されるアルケニルメルカプタン(I)の量が、使用するアルケニルメルカプタン(I)全体の80%以上となるようにすればよく、また、アルケニルメルカプタン(I)と共に供給されるホスゲンの量が、使用するホスゲン全体の80%以上となるようにすればよい。
【0040】
アルケニルメルカプタン(I)は、冷却して供給するのが望ましい。これにより、副生物(III)の副生を抑制しうるのにくわえ、アルケニルメルカプタン(I)2分子が酸化されてジスルフィドが生成する反応や、アルケニルメルカプタン(I)がクロロチオールホルメートと反応してジチオールカーボネートが生成する反応等を抑制することができる。アルケニルメルカプタン(I)の冷却温度は、その種類にもよるが、通常−20〜5℃程度である。
【0041】
反応温度は通常0〜80℃、好ましくは30〜50℃である。また、反応は通常、常圧付近で実施されるが、必要により加圧下又は減圧下で行ってもよい。反応方式としては、連続式、半連続式、回分式のいずれも採用することができる。
【0042】
かくして、式(II)
【0043】
【化8】

【0044】
(式中、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
【0045】
で示される化合物〔クロロチオールホルメート(II)〕を含む反応混合物を良好な品質及び収率で得ることができる。反応後の後処理操作については適宜選択されるが、例えば、反応混合液に水、好ましくは酸性水を加えて、過剰のホスゲンが残存していれば、これを加水分解し、次いで油水分離することにより、有機相として、クロロチオールホルメートの有機溶媒溶液を得るのがよい。こうして得られた溶液は、必要に応じて洗浄や蒸留、晶析などにより精製した後、各種用途に使用できる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、実施例中、アリルクロロチオールホルメート〔式(II)中、R及びRが水素原子である化合物〕の収率や含有量は、ガスクロマトグラフィーにより分析し、算出した。また副生物(III)〔ここでは、式(III)中、R及びRが水素原子である化合物〕の含有量は、反応終了後の反応混合液をサンプリングし、これにアミンを加えた調製液をガスクロマトグラフィーにより分析し、クロロチオールホルメート(II)のアミド体に対する副生物(III)のアミド体の面積比から算出した。
【0047】
参考例1
<アリルメルカプタン〔式(I)中、R及びRが水素原子である化合物〕の調製>
還流冷却器、温度計、攪拌器及びジャケット付き滴下ロートを備えたガラス製反応器に、水硫化ナトリウム水和物(水硫化ナトリウム含有量=70重量%、硫化ナトリウム含有量=4.20重量%、硫化ナトリウム/水硫化ナトリウム=6.0重量%)230.30g(2.868モル)、水200.11g、キシレン160.02g、69.6重量%トリエチルベンジルアンモニウムクロリド水溶液111.24g(0.333モル)を入れて攪拌し、反応器内の気相部に窒素を導入して窒素気流下とした。
次いで、アリルクロリド200.01g(2.561モル)をジャケット付き滴下ロートに入れて−2〜5℃に冷却し、この冷却したアリルクロリドを、反応液の温度を40℃に保ちながら、7時間かけて滴下し、さらに40℃で3時間保温した。得られた反応液を0〜10℃に冷却した後、これに水240.11gを添加して、析出した塩化ナトリウムを溶解させ、次いで油水分離し、有機相として、アリルメルカプタンのキシレン溶液345.67gを得た。該キシレン溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アリルクロリドに対するアリルメルカプタンの収率は83.92%であった。
【0048】
実施例1
ホスゲンガス導入管、還流冷却器、温度計、攪拌器及びジャケット付き滴下ロートを備えたガラス製反応器に、参考例1に記載の方法で得られたアリルメルカプタン65.34g(0.402モル)、N,N−ジメチルホルムアミド2.37g(0.032モル、該アミド総量に対し40重量%)及びキシレン403.21gを入れて攪拌し、反応器内の気相部に窒素を導入して窒素気流下とした。次いで、反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、ホスゲン41.80g(0.423モル)を2時間かけて液中に導入した。次にアリルメルカプタン195.31g(1.207モル)、N,N−ジメチルホルムアミド3.53g(0.048モル、該アミド総量に対し60重量%)の混合液をジャケット付き滴下ロートに入れ0〜5℃に冷却し、反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、5時間かけて滴下すると共に、ホスゲン104.50g(1.056モル)を5時間かけて液中に導入した。さらに反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、ホスゲン20.90g(0.211モル)を1時間かけて液中に導入した。その後39〜41℃で3時間保温した。得られた反応液を0〜5℃に冷却し、水264.08gを添加して未反応のホスゲンを分解した後、油水分離し、有機相として、アリルクロロチオールホルメートのキシレン溶液740.76gを得た。
該溶液中のアリルクロロチオールホルメートの含有量は25.60重量%であり、アリルメルカプタンに対するアリルクロロチオールホルメートの収率は86.24%であった。また、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、クロロチオールホルメート(II)のアミド体に対する副生物(III)のアミド体の面積比は0.03%であった。
【0049】
比較例1
ホスゲンガス導入管、還流冷却器、温度計、攪拌器及びジャケット付き滴下ロートを備えたガラス製反応器に、参考例1に記載の方法で得られたアリルメルカプタン80.00g(0.521モル)、N,N−ジメチルホルムアミド7.62g(0.104モル、該アミド総量に対し100重量%)及びキシレン496.00gを入れて攪拌し、反応器内の気相部に窒素を導入して窒素気流下とした。次いで、反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、ホスゲン51.54g(0.521モル)を2時間かけて液中に導入した。次にアリルメルカプタン240.00g(1.563モル)をジャケット付き滴下ロートに入れ0〜5℃に冷却し、反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、6時間かけて滴下すると共に、ホスゲン154.61g(1.563モル)を6時間かけて液中に導入した。その後39〜41℃で3時間保温した。得られた反応液を0〜5℃に冷却し、2%塩酸379.91gを添加して未反応のホスゲンを分解した後、油水分離し、有機相として、アリルクロロチオールホルメートのキシレン溶液910.60gを得た。
該溶液中のアリルクロロチオールホルメートの含有量は25.21重量%であり、アリルメルカプタンに対するアリルクロロチオールホルメートの収率は80.64%であった。また、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、クロロチオールホルメート(II)のアミド体に対する副生物(III)のアミド体の面積比は0.17%であった。
【0050】
比較例2
ホスゲンガス導入管、還流冷却器、温度計、攪拌器及びジャケット付き滴下ロートを備えたガラス製反応器に、参考例1に記載の方法で得られたアリルメルカプタン97.50g(0.550モル)、N,N−ジメチルホルムアミド17.68g(0.242モル、アリルメルカプタン総量に対し11mol%、該アミド総量に対し100重量%)及びキシレン604.50gを入れて攪拌し、反応器内の気相部に窒素を導入して窒素気流下とした。次いで、反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、ホスゲン54.37g(0.550モル)を2時間かけて液中に導入した。次にアリルメルカプタン292.50g(1.649モル)をジャケット付き滴下ロートに入れ0〜5℃に冷却し、反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、6時間かけて滴下すると共に、ホスゲン163.11g(1.649モル)を6時間かけて液中に導入した。その後39〜41℃で3時間保温した。得られた反応液を0〜5℃に冷却し、2%塩酸400.79gを添加して未反応のホスゲンを分解した後、油水分離し、有機相として、アリルクロロチオールホルメートのキシレン溶液1079.40gを得た。
該溶液中のアリルクロロチオールホルメートの含有量は21.59重量%であり、アリルメルカプタンに対するアリルクロロチオールホルメートの収率は77.60%であった。また、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、クロロチオールホルメート(II)のアミド体に対する副生物(III)のアミド体の面積比は0.72%であった。
【0051】
比較例3
ホスゲンガス導入管、還流冷却器、温度計、攪拌器及びジャケット付き滴下ロートを備えたガラス製反応器に、参考例1に記載の方法で得られたアリルメルカプタン37.52g(0.220モル)、トリエチルアミン1.78g(0.018モル、該アミン総量に対し40重量%)及びキシレン232.51gを入れて攪拌し、反応器内の気相部に窒素を導入して窒素気流下とした。次いで、反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、ホスゲン22.83g(0.231モル)を2時間かけて液中に導入した。次にアリルメルカプタン112.51g(0.659モル)、トリエチルアミ2.67g(0.0264モル、該アミン総量に対し60重量%)の混合液をジャケット付き滴下ロートに入れ0〜5℃に冷却し、反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、5時間かけて滴下すると共に、ホスゲン57.08g(0.577モル)を5時間かけて液中に導入した。さらに反応液の温度を39〜41℃に保ちながら、ホスゲン11.42g(0.115モル)を1時間かけて液中に導入した。その後39〜41℃で3時間保温した。得られた反応液を0〜5℃に冷却し、水143.29gを添加して未反応のホスゲンを分解した後、油水分離し、有機相として、アリルクロロチオールホルメートのキシレン溶液416.11gを得た。
該溶液中のアリルクロロチオールホルメートの含有量は23.87重量%であり、アリルメルカプタンに対するアリルクロロチオールホルメートの収率は82.71%であった。また、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、クロロチオールホルメート(II)のアミド体に対する副生物(III)のアミド体の面積比は0.05%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内で、有機溶媒中、カルボン酸アミドの存在下、式(I)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物とホスゲンとを反応させることにより、式(II)
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物を製造する方法であって、
カルボン酸アミド総量の10〜50重量%を予め入れた反応器内に、式(I)で示される化合物、ホスゲン及び残部のカルボン酸アミドを反応器内に供給することを特徴とする式(II)で示される化合物の製造方法。
【請求項2】
カルボン酸アミドが、N,N−ジアルキルカルボン酸アミドである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
カルボン酸アミドの使用量が、式(I)で示される化合物1モルに対して0.01〜0.09モルである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(I)で示される化合物が、アリルメルカプタンである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
有機溶媒が芳香族炭化水素である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−163427(P2010−163427A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286045(P2009−286045)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】