説明

クローズ型除去処理システムの除去装置

【課題】アスベストを含む吹き付け材の除去に使用されるクローズ型除去システムの除去装置を提供する。
【解決手段】除去装置4は、回転軸40に対し垂直方向の向きに被加工面5Aと接触して吹き付け材の剥離・除去機能を発揮する垂直回転型の回転ブラシ41を備え、集塵カバー42に空気吸引ホース7が接続され、集塵カバーは回転ブラシの回転軸の支持部49に取り付けられ、集塵カバーにおいて回転ブラシの回転方向の前方側端部に回転ブラシが被加工面から剥離・除去した剥離片や粉塵類を受け止めて集塵カバー内の吸引空気流路43へ誘導するシールブラシ44が取り付けられ、回転ブラシの外周面に接近する円弧状配置に空気流制御板45が設置され、この空気流制御板により、集塵カバー内の吸引空気流路を形成する空気吸い込み口46およびサイドスリット47の空気流路横断面積が空気吸引ホースの空気流路横断面積とほぼ等しい大きさとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に建物の鉄骨等に吹き付けられたアスベストを含む吹き付け材の除去に使用されるクローズ型除去処理システムの技術分野に属し、更に云えば、吹き付け材を除去した際に剥離片(破片)や粉塵類を空気吸引方式により飛散させないように効率よく回収でき、しかも被加工物の面形状や構造に応じて吹き付け材を取り残しなくきれいに除去できる回転ブラシ型式除去装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
建物の鉄骨等に吹き付けられたアスベストを含む吹き付け材のロボットによる除去工事は、通例、図1に一例を示したように、先ず剥離片や粉塵類が外部へ飛散しないように仕切り材1により気密状態に密閉された作業場空間を準備し、その作業場内にロボットアーム2を搭載した自走式昇降作業台車3を設備し、作業担当者は作業場空間の外から監視しつつロボットアーム2と自走式昇降作業台車3を遠隔操作し、ロボットアーム2に取り付けた除去装置4により、鉄骨5の吹き付け材6を除去する作業が進められる。
この除去作業で発生する剥離片及び粉塵類を飛散させることなく回収するため、除去装置4へ接続した吸引ホース7をサイクロン8と接続し、同サイクロン8で遠心分離した剥離片及び粉塵類は直下のホッパ9へ落下させる。そして、ロータリバルブ10を介して設けた直下の排出口に梱包用袋11を取り付け、必要に応じて水ポンプ12により散水するなどして剥離片及び粉塵類の完璧な回収と梱包処理を行う。
一方、前記サイクロン8の頂部を、排風手段として採用した例えばブロアー13(又は真空ポンプなど)の吸い込み口と吸引ホース14で接続して空気吸引を行い、同ブロアー13の吐出口にはフィルタ装置15を接続して、排気中の粉塵細粒の飛散を防止する構成とされている。
上記のようにロボットを使用することで、過酷で危険なアスベストの除去作業を人間から解放でき、休み無く働くロボットの使用で施工性の向上が期待できる。
【0003】
鉄骨等に吹き付けられたアスベストを含む吹き付け材の除去に関する既往の技術や公開された発明等は多種多様に存在する。しかし、依然として鉄骨梁5等の複雑な形状や構造部分等の加工対象について十分な対応ができ、吹き付け材の取り残しがなく、効率的な除去作業が可能な除去装置は未だ見当たらない。
例えば下記の特許文献1に開示されたアスベスト除去装置の除去ヘッドおよび除去工具は、建造物の壁面や天井面のアスベストを除去する目的のものである。特にその除去ヘッドは半球形状の除去工具と、これを覆うヘッドケース、及び泡噴射管を備え、ヘッドケースに空気吸引の回収ホースが接続された構成と認められる。ヘッドケースの開口縁に被加工面に密接するブラシシールが設けられている。以上要するに、壁面にブラシシールが押し付けられた状態で除去工具が回転してアスベストを除去し、泡噴射管が壁面に向かって薬剤からなる泡を噴射して飛散を防止すると記載されているが、所詮平面的な壁面の吹き付け材を剥離・除去する作業にしか適用可能性がないと認められ、鉄骨梁等の複雑な形態の対象物の加工に対応できる構成ではない。
【0004】
また、下記の特許文献2に開示されたアスベスト自動除去装置とアスベスト除去具も、回転型除去装置は、その回転軸が被加工面に垂直な配置とされ、フードが回転型除去装置の周囲を被加工面へ垂直に接して閉鎖する態様で使用することが条件とされる構成であり、やはり平面的な壁面の吹き付け材除去作業にしか適用可能性がないと認められる。
同様に、下記の特許文献3に開示されたアスベスト回収装置も、建築物の天井面に吹き付けられたアスベストを除去、回収する装置であり、剥離用ブラシを外周面に植えた剥離ローラが回転して耐火被覆を破壊し剥離させる構成である。剥離したアスベストを含む破材を吸引するボックスとの組み合わせで構成されているが、やはり平面的な壁面の吹き付け材を剥離・除去する作業にしか適用可能性がないと認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−193643号公報
【特許文献2】特開2008−248472号公報
【特許文献3】特開2008−297729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、既往技術や公開された発明等は多種多様に存在するが、いずれも平面的な壁面や天井面などに吹き付けられたアスベストの剥離・除去作業に適用することを主眼として開発されており、鉄骨梁等の複雑な面形状や凹凸のある構造部分等に吹き付けられた耐火被覆等の剥離、除去作業には適用可能性がないに等しいと認められる。しかも吹き付け材の取り残しがなく、効率的な除去作業が可能な除去装置は未だ見当たらない。
【0007】
本発明の目的は、天井面に対するような上向き姿勢による吹き付け材の剥離・除去作業は勿論のこと、壁面に対するような水平横向き姿勢による剥離・除去作業、或いは床面に対するような下向き姿勢による剥離・除去作業のいずれにも等しく適用でき、また、ロボットアームに取り付けて遠隔操作により吹き付け材の剥離、除去作業を行うことに適し、しかも剥離した吹き付け材の破片や粉塵類の飛散を防止して回収する機能に優れた構成の除去装置を提供することである。
本発明の次の目的は、回転ブラシによる剥離・除去装置、特に回転軸に対して垂直方向の向きに被加工面と接触させて吹き付け材の剥離・除去の機能を発揮する垂直回転型の回転ブラシを採用し、鉄骨梁等の複雑な面形状や狭い場所、凹凸のある構造部分の吹き付け材を剥離・除去する作業に適し、その上、被加工面から剥離、除去した吹き付け材の剥離片(破片)や粉塵類を効率良く確実に捕捉して回収して梱包処理することができ、小回りの効く剥離、除去作業を安全に効率よく進められ、吹き付け材の取り残しが少ない構成の除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るクローズ型除去処理システムの除去装置は、
アスベスト等の吹き付け材6を除去装置4で剥離・除去して、その剥離片や粉塵類は排風手段による空気吸引方式により回収し、更に空気と分離して梱包可能に処理するクローズ型除去処理システムの除去装置であって、
前記除去装置4は、回転軸40に対して垂直方向の向きに被加工面5Aと接触して吹き付け材の剥離・除去機能を発揮する垂直回転型の回転ブラシ41を備え、前記回転ブラシ41の外周部分を覆う集塵カバー42に排風手段により空気吸引される空気吸引ホース7が接続されており、
前記集塵カバー42は前記回転ブラシ41の回転軸40の支持部49に取り付けられており、同集塵カバー42において回転ブラシ41の回転方向の前方側端部に同回転ブラシ41が被加工面5Aから剥離・除去した剥離片や粉塵類を受け止めて集塵カバー42内の吸引空気流路43へ誘導するシールブラシ44が被加工面5Aに対してほぼ垂直に立つ姿勢に取り付けられており、
前記集塵カバー42内の吸引空気流路43に沿って、前記回転ブラシ41の外周面に接近する円弧状配置に空気流制御板45が設置され、この空気流制御板45により、集塵カバー42内の吸引空気流路43を形成する空気吸い込み口46およびサイドスリット47の空気流路横断面積が前記空気吸引ホース7の空気流路横断面積とほぼ等しい大きさとされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したクローズ型除去処理システムの除去装置において、
集塵カバー42は、垂直回転型回転ブラシ41の外周面とそれに続く両側面を覆うように横断面が溝形形状とされ、且つ少なくとも同回転ブラシ41により被加工面5Aの吹き付け材6を剥離・除去する作業に支障ない大きさの開口部をあけた形状とされ、この集塵カバー42は回転ブラシ41の回転軸40を片持ち支持する軸受け部48を設けた支持部49に取り付けられており、同支持部に前記回転軸40を回転駆動する回転原動機が設置されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載したクローズ型除去処理システムの除去装置において、
集塵カバー42において、回転ブラシ41の回転方向の前方側端部および後方側端部の双方にそれぞれ、回転ブラシ41が被加工面5Aから剥離・除去した剥離片や粉塵類を受け止めて集塵カバー42内の吸引空気流路43へ誘導するシールブラシ44、44が、被加工面5Aに対してほぼ垂直に立つ姿勢に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の除去装置4は、回転軸40に対して垂直方向の向きに被加工面5Aと接触して吹き付け材の剥離・除去機能を発揮する垂直回転型回転ブラシ41で構成しているので、ロボットアーム2で回転軸40の向きを垂直上向き姿勢とするか、水平横向き姿勢にするか、或いは垂直下向きの姿勢にするかの操作により、天井面に対するような上向き姿勢による吹き付け材の剥離・除去作業、若しくは壁面に対するような水平横向き姿勢による剥離・除去作業、又は床面に対するような下向き姿勢による剥離・除去作業などを、被加工物の種類や現場の状況に応じて自由自在に実施することができる。そして、ロボットアーム2に取り付けて、同ロボットアーム2の遠隔操作により、吹き付け材6の剥離、除去の作業を行う用途に適する。
しかも垂直回転型回転ブラシ41は、可能な限り小径とし、且つそのブラシ幅を狭く構成することに適し、それに応じて集塵カバー42も必要最少限度の大きさでコンパクトな構成にできるので、小回りが効き、鉄骨梁等の複雑な面形状や狭い場所、凹凸のある構造部分の吹き付け材6を剥離・除去する作業の適応させられ、被加工物の細部まで効率良く確実にきれいに吹き付け材6の剥離・除去作業を進められ、吹き付け材6の取り残しの少ない作業を進めることができる。もとより垂直回転型回転ブラシ41は、そのブラシ幅が広い構成にすることも容易であり、広幅の垂直回転型回転ブラシ41を使用すれば、吹き付け材6の剥離・除去作業を高能率に行うこともできる。
【0011】
本発明の除去装置4はまた、集塵カバー42において回転ブラシ41の回転方向の前方側端部に、同回転ブラシ41が被加工面5Aから剥離・除去した剥離片や粉塵類を受け止めて集塵カバー42内の吸引空気流路43へ誘導するシールブラシ44が被加工面5Aに対してほぼ垂直に立つ姿勢に取り付けているから、回転ブラシ41で剥離・除去した吹き付け材6の破片や粉塵類は、先ずは前方のシールブラシ44が確実に受け止め、漏らさず吸引空気流路43へ誘導するから、取りこぼしを生じない。
しかも集塵カバー42内の吸引空気流路43に沿って前記回転ブラシ41の外周面に接近する円弧状配置に空気流制御板45を設置し、この空気流制御板45により、集塵カバー42内の吸引空気流路43を形成する空気吸い込み口46およびサイドスリット47の空気流路横断面積を、空気吸引ホース7の空気流路横断面積とほぼ等しい大きさに構成したから、空気吸引ホース7を通じて集塵カバー42内の吸引空気流路43に及ぼされる空気吸引力はいずれの場所でも十分強力であり、前記シールブラシ44に受け止められ誘導される吹き付け材6の剥離破片や粉塵類は漏らさず強力に吸引空気流路43へ吸引して捕捉し、吸引空気流に乗せて空気吸引ホース7からサイクロン8へと確実に回収できる。回収した吹き付け材6の剥離破片や粉塵類は直ちに梱包用袋11に詰めた梱包状態で最終処分を行うことができる。
そして、仕切り材1により気密状態に密閉された作業場空間内で、除去装置4による吹き付け材6の剥離・除去作業を進めても、作業場空間内を比較的に清浄な空気状態に保つことができ、作業上やむなく作業場空間へ出入りする作業担当者の健康上にもさしたる悪影響を及ぼさない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】クローズ型除去処理システムによる吹き付け材の剥離・除去作業の実施概要を示した立面図である。
【図2】A〜Cは本発明による除去装置の実施例1を示した側面図と同断面方向の断面図、および正面方向の断面図である。
【図3】A〜Cは本発明による除去装置の実施例1を示した側面図と同断面方向の断面図、および正面方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るクローズ型除去処理システムの除去装置は、例えば図1に使用例を示したように、剥離片や粉塵類を作業場の外へ飛散させないように仕切り材1により気密状態に密閉された作業場空間を準備し、好ましくは同作業場内にロボットアーム2を搭載した自走式昇降作業台車3を設備し、ロボットアーム2に除去装置4を取り付け、作業担当者は、作業場空間の外からカメラモニタにより監視しつつロボットアーム2と自走式昇降作業台車3を遠隔操作して、鉄骨5の吹き付け材6を剥離・除去する作業を進める。
前記の除去作業で発生する吹き付け材6の剥離片(破片)及び粉塵類を飛散させないで回収する手段として、前記除去装置4へ接続した吸引ホース7をサイクロン8と接続し、同サイクロン8で遠心分離した剥離片及び粉塵類は直下のホッパ9へ落下させる。そして、ロータリバルブ10を介して設けた直下の排出口へ梱包用袋11を取り付け、必要に応じて水ポンプ12により散水するなどして、剥離片及び粉塵類の完璧な回収と梱包処理を剥離作業と同時に行う。
一方、前記サイクロン8の頂部は、排風手段として採用した例えばブロアー13(又は真空ポンプなども可)の吸い込み口と吸引ホース14で接続して空気吸引を行う。同ブロアー13の吐出口にはフィルタ装置15を接続し、排気中の粉塵細粒の飛散を防止する。
【実施例1】
【0014】
上記したクローズ型除去処理システムで使用する除去装置4の構成は、図2A〜Cに実施例1を示したように、回転軸40に対して垂直方向の向きに被加工面5Aと接触して吹き付け材6の剥離・除去機能を発揮する垂直回転型の回転ブラシ41が主体をなす。因みに、この垂直回転型回転ブラシ41は、具体的な図示は省略したが、回転軸40に固定された回転ディスク(ワイヤホイール)の外周面にスチールワイヤブラシ又は合成樹脂製ブラシを植え付けて構成される。したがって、回転ブラシ41が被加工面(鉄骨面)へ食い込んで損傷させる虞はない。また、被加工面5Aに多少の不陸が存在しても、それを自在に乗り越えて吹き付け材6の剥離を進められる。その上、垂直回転型回転ブラシ41は、小型で狭い場所でも小回りが効くように、その外径を125mm程度、ブラシ幅は50mm程度に構成することができ、これを例えば3000rpm程度の高速回転をさせると、吹き付け材6の厚さが40〜50mm程度である場合、吹き付け材6の剥離速度25mm/min(1時間当たりの作業面積4.5m/h)を達成できる。また、吹き付け材6の厚さが20〜25mm程度である場合、その剥離速度は100mm/min(1時間当たりの作業面積18m/h)の作業能率を実現可能である。
もっとも、回転ブラシ41の外径とブラシ幅、およびブラシの材質などは、吹き付け材6の性状や剥離作業対象(例えば鉄骨梁5)の材質と構造物形状、面状態などに応じて大小様々に用意して作業を効率的に進めることが可能である。
【0015】
上記垂直回転型回転ブラシ41により被加工面5Aから剥離・除去した吹き付け材6の剥離片(破片)および粉塵類の飛散を可及的に抑制、防止して確実に捕捉、回収し、作業場空間の空気汚染を防ぐ手段として、同回転ブラシ41の外周部を覆う集塵カバー42が設けられており、この集塵カバー42に排風手段により空気吸引される空気吸引ホース7が接続されている。
集塵カバー42の構成は、図2に示したように、垂直回転型回転ブラシ41の外周面と、それに続く両側面部分を必要な範囲まで覆うように横断面が溝形形状に構成されている。そして、回転ブラシ41で被加工面5Aの吹き付け材6を剥離・除去する作業に支障ない大きさの開口部をあけて、そこに回転ブラシ41が露出する構成とされている。
図2Aは、回転ブラシ41の外周部を少なくとも180°まで覆った構成を示している。前記横断面が溝形の深さは、図2Cに見るとおり、回転ブラシ41の両側面を、吹き付け材6の剥離、除去作業時に発生する剥離片や粉塵類を外方へ飛散させることなく、且つ空気吸引作用により捕捉、回収する効果に必要な深さを有する構成とされている。しかも、回転ブラシ41の外周部に形成する吸引空気流路43が、空気吸引ホース7の空気流路横断面積とほぼ等しい大きさとなり、空気吸引作用が全域に等しく波及し得る深さに形成される。
【0016】
本発明では、上記した吸引空気流路43の形成を補完する手段として、集塵カバー42内の吸引空気流路43に沿って、前記回転ブラシ41の外周面に接近する円弧状配置に空気流制御板45が設置されている。この空気流制御板45の設置手段については、詳しい構造の図示を省略したが、可能な限り吸引空気流路43の空気流を乱さないほど細い線状の支持材で集塵カバー42へ安定状態に支持させる。かくすると、空気流制御板45によって集塵カバー42内の吸引空気流路43の全域、および同吸引空気流路43を形成する空気吸い込み口46およびサイドスリット47の空気流路横断面積を、前記空気吸引ホース7の空気流路横断面積とほぼ等しい大きさに形成することができる。
つまり、集塵カバー42内の吸引空気流路43の横断面積が不均一になりがちな部位について、空気流制御板45を設置することにより補正することができ、集塵カバー42内の吸引空気流路43の全域、とりわけ空気吸い込み口46およびサイドスリット47の部分において空気吸引ホース7の空気流路横断面積とほぼ等しい流路の大きさを実現することが容易である。かくして空気吸引ホース7を通じて及ぼされる、ブロアー13による空気吸引作用(誘引作用)は、集塵カバー42の吸引空気流路43の全域に強力に及ぶところとなる。よって、回転ブラシ41が鉄骨梁5等の被加工面5Aから剥離・除去した吹き付け材6の剥離片および粉塵類は、漏らさず確実に捕捉して吸引空気流に乗せて運び、作業場空間に飛散することは可及的に防止、抑制できる。
【0017】
上記集塵カバー42は、その片側面(図2Cの右側面)が、上記垂直回転型回転ブラシ41の回転軸40を片持ち支持する軸受け部48の支持部49に取り付けられている。前記支持部49に、回転ブラシ41の回転軸40を回転駆動する電気モータの如き回転原動機(図示は省略)が設置されている。もっとも、回転ブラシ41の回転軸40は、集塵カバー42の両側面部に配置した軸受け部48により両端支持する構成で実施することもできる。但し、そのように構成すると、図2Cに見るとおり、集塵カバー42の両側面に軸受け部48が大きく出っ張ることになり、狭小な場所での小回りの効く剥離・除去作業に不利、不便となるので好ましくはない。
なお、上記回転ブラシ41を回転駆動する回転原動機としては、上記支持部49へ直接設置する電気モータなどに限らず、自走式昇降作業台車3の台車上に大型高速の電気駆動モータ等を設置して、同モータが回転駆動するフレキシブルシャフトを、回転軸40へ直結した角度変換ギアボックスと連結して回転する構成で実施することもできる。
【0018】
集塵カバー42には、同集塵カバー42において回転ブラシ41の回転方向の前方側端部(図2Aの右側端部)に、同回転ブラシ41が被加工面5Aから剥離・除去して弾き飛ばされた剥離片や粉塵類を確実に受け止めて、集塵カバー42の上記吸引空気流路43の方へ誘導するシールブラシ44が、被加工面5Aに対してほぼ垂直に立つ姿勢に密集状態に一定の厚さを形成して取り付けられている。つまり、シールブラシ44は、上記空気吸引ホース7を通じて直近の吸い込み口46へ及ぼされる、ブロアー13による空気吸引作用(誘引作用)を利用して、捕捉、誘導した剥離片や粉塵類を確実に集塵カバー42内の吸引空気流路43へ誘導し、回収作用を高めることに寄与する。このシールブラシ44は、例えば細線状の合成樹脂ブラシで形成され、集塵カバー42の前方側端部の形状に倣って閉鎖形状に取り付けられている。
【実施例2】
【0019】
なお、図3に示した実施例2は、除去装置4としての構成は上記実施例1と殆ど全部共通するが、集塵カバー42における、シールブラシ44の配置構成が異なる。即ち、上記垂直回転型回転ブラシ41の回転方向の前方側端部のみならず、後方側端部の双方にそれぞれ、回転ブラシ41が被加工面5Aから剥離・除去させた剥離片や粉塵類を受け止めて集塵カバー42内の吸引空気流路43へ誘導する二つのシールブラシ44、44が、被加工面5Aに対してほぼ垂直に立つ姿勢に取り付けられている。
したがって、上記実施例1の除去装置4は、図2Bに示したように、回転ブラシ41を反時計回り方向へ回転させ、同除去装置4を図2Bの右方向へ被加工面5Aと平行移動させる動きによって、被加工面5Aの吹き付け材6を剥離・除去する、いわば単一方向にのみ機能する構成である。
しかし、実施例2の除去装置4は、図3Bに示したように、やはり回転ブラシ41を反時計回り方向へ回転させ、同除去装置4を図3Bの右方向へ平行移動させる動きによって被加工面5Aの吹き付け材6を剥離・除去することができることは勿論のこと、図示は省略したが、逆に回転ブラシ41を時計回り方向へ回転させ、同除去装置4を図3Bの左方向へ平行移動させる動きによっても被加工面5Aの吹き付け材6を剥離・除去することができる、いわば双方向に機能する構成である。
よって、吹き付け材6の剥離・除去作業を、往復型として効率よく進めることができる。また、作業対象物の場所や形状、構造その他の条件に応じて必要な、小回りを効かせた剥離作業を進めることができる。
【0020】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。当業者が必要に応じて通常行う設計変更や、変形応用等の範囲内で様々に実施することが可能であることを申し添える。
【符号の説明】
【0021】
6 吹き付け材
4 除去装置
40 回転軸
5 鉄骨梁
5A 被加工面
41 回転ブラシ
42 集塵カバー
43 吸引空気流路
7 空気吸引ホース
44 シールブラシ
45 空気流制御板
46 空気吸い込み口
47 サイドスリット
48 軸受け部
49 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベスト等の吹き付け材を除去装置で剥離・除去し、その剥離片や粉塵類は排風手段による空気吸引方式により回収し、更に空気と分離して梱包可能に処理するクローズ型除去処理システムの除去装置であって、
前記除去装置は、回転軸に対して垂直方向の向きに被加工面と接触して吹き付け材の剥離・除去機能を発揮する垂直回転型の回転ブラシを備え、前記回転ブラシの外周部分を覆う集塵カバーに排風手段により空気吸引される空気吸引ホースが接続されており、
前記集塵カバーは前記回転ブラシの回転軸の支持部に取り付けられており、同集塵カバーにおいて回転ブラシの回転方向の前方側端部に同回転ブラシが被加工面から剥離・除去した剥離片や粉塵類を受け止めて集塵カバー内の吸引空気流路へ誘導するシールブラシが被加工面に対してほぼ垂直に立つ姿勢に取り付けられており、
前記集塵カバー内の吸引空気流路に沿って、前記回転ブラシの外周面に接近する円弧状配置に空気流制御板が設置され、この空気流制御板により、集塵カバー内の吸引空気流路を形成する空気吸い込み口およびサイドスリットの空気流路横断面積が前記空気吸引ホースの空気流路横断面積とほぼ等しい大きさとされていることを特徴とする、クローズ型除去処理システムの除去装置。
【請求項2】
集塵カバーは、垂直回転型回転ブラシの外周面とそれに続く両側面を覆うように横断面が溝形形状とされ、且つ少なくとも同回転ブラシにより被加工面の吹き付け材を剥離・除去する作業に支障ない大きさの開口部をあけた形状とされ、この集塵カバーは回転ブラシの回転軸を片持ち支持する軸受け部を設けた支持部に取り付けられており、同支持部に前記回転軸を回転駆動する回転原動機が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載したクローズ型除去処理システムの除去装置。
【請求項3】
集塵カバーにおいて、回転ブラシの回転方向の前方側端部および後方側端部の双方にそれぞれ、回転ブラシが被加工面から剥離・除去した剥離片や粉塵類を受け止めて集塵カバー内の吸引空気流路へ誘導するシールブラシが、被加工面に対してほぼ垂直に立つ姿勢に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したクローズ型除去処理システムの除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−209574(P2010−209574A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56254(P2009−56254)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19〜20年度 経済産業省の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けた研究「アスベスト含有建材等安全回収・処理等技術開発」の委託事業の成果に係る特許出願、産業再生法第30条(又は産業技術力強化法第19条)の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】