説明

クローラ式走行装置

【課題】駆動輪と従動輪との間にクローラを巻回し、該クローラの内周から所定の前後間隔で突出する一対の芯金間に棒状のクローラ外れ防止ガイドを配設してなるクローラ式走行装置において、凹溝や段差等の角部にクローラの幅方向端部が乗り上げて該クローラが幅方向に傾斜し、前記クローラ外れ防止ガイドが有効に作用せずにクローラ外れが発生するといった問題点を解消する。
【解決手段】クローラ4の内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金4a,4a間に設けた第1のクローラ外れ防止体16に対して、左右方向に偏移させた位置に第2のクローラ外れ防止体17,18を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪と従動輪との間にクローラを巻回してなる収穫作業車や運搬車等のクローラ式走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収穫作業車の一例であるコンバイン等においては、駆動輪と従動輪(遊動輪)との間に複数個の転輪を軸支して、これらの輪体間にクローラを巻回すると共に、該クローラの内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金間に棒状のクローラ外れ防止ガイドを設けた左右のクローラ式走行装置を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平2−8868号公報(第2−3頁、図1−図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、比較的小型の収穫作業車である歩行型ホウレン草収穫機等に採用されているクローラ式走行装置では、コンバインのように駆動輪と従動輪との間に複数個の転輪を設けることなく、駆動輪と従動輪との間にクローラ巻回し、該クローラの内周から所定の前後間隔で突出する一対の芯金間に棒状のクローラ外れ防止ガイドを設けている。
【0005】
そして、上述した歩行型ホウレン草収穫機は、ホウレン草が植付けられている畝を左右のクローラ式走行装置で跨いだ状態で、両クローラ式走行装置のクローラを駆動させて畝溝を走行しながらホウレン草の収穫作業を行なっているが、この収穫作業を行なう前に、野菜栽培管理ビークルに液肥追肥機を装着して畝溝を走行しながら追肥作業が行なわれていると、例えば図7に示すように、畝溝Mに野菜栽培管理ビークルの車輪で踏み固められた凹溝mが連続して形成されることがある。
【0006】
このように踏み固められた凹溝mや段差等がクローラ式走行装置5のクローラ4が接地駆動する畝溝Mに沿って連続的に形成されていると、前記凹溝mや段差等の角部にクローラ4の幅方向端部が乗り上げてしまうことがあり、その場合は、図7に示す如くクローラ4が幅方向に傾斜してしまうので、クローラ4の内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金4a,4a間に設けた棒状のクローラ外れ防止体16が有効に作用せず、クローラ外れが発生するといった問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、駆動輪と従動輪との間にクローラを巻回してなるクローラ式走行装置において、前記クローラの内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金間に第1のクローラ外れ防止体を設けると共に、該第1のクローラ外れ防止体に対して左右方向に偏移させた位置に第2のクローラ外れ防止体を設けたことを第1の特徴としている。
そして、第1のクローラ外れ防止体よりも第2のクローラ外れ防止体の前後方向の長さを長くなるように構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、駆動輪と従動輪との間に巻回したクローラの内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金間に第1のクローラ外れ防止体を設けると共に、該第1のクローラ外れ防止体に対して左右方向に偏移させた位置に第2のクローラ外れ防止体を設けたことによって、例えばクローラ式走行装置のクローラが接地駆動する畝溝に沿って管理ビークル等により踏み固められた凹溝や段差等が連続的に形成されているような場合、前記凹溝や段差等の角部にクローラの幅方向端部が乗り上げてしまっても、該クローラが幅方向に傾斜することを第2のクローラ外れ防止体でもって規制することができるので、それにより従来の問題点であるクローラ外れの発生を防止できるようになる。
そして、請求項2の発明によれば、第1のクローラ外れ防止体よりも第2のクローラ外れ防止体の前後方向の長さが長くなるように構成したことによって、クローラの接地部全域に亘って効果的にクローラ外れの発生を防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】歩行型ホウレン草収穫機の一部を省略した側面図(実施例1)。
【図2】歩行型ホウレン草収穫機の一部を省略した平面図(実施例1)。
【図3】歩行型ホウレン草収穫機の一部を省略した背面図(実施例1)。
【図4】クローラ外れ防止体の作用状態を示す一部を省略した背面図(実施例1)。
【図5】クローラ外れ防止体の作用状態を示す一部を省略した背面図(実施例2)。
【図6】クローラ外れ防止体の作用状態を示す一部を省略した背面図(実施例3)。
【図7】クローラ外れが発生する状態を示す要部背面図(従来の状態)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図3は、本発明を適用する歩行型ホウレン草収穫機1の一部を省略した側面図、平面図、及び背面図であって、歩行型ホウレン草収穫機1は、走行フレームFの基端部に回転自在に支持した駆動輪(駆動スプロケット)2と、走行フレームFの前端部に前後位置調整自在に装着した従動輪(アイドラ)3とにクローラ4を巻回した左右のクローラ式走行装置5,5を、側面視で機体前後方向の略中心位置に備えており、両クローラ式走行装置5,5は、ホウレン草(加工用ホウレン草)Sの植付けられている所定の畝幅Wを跨げるように離間させてある。そして、機体上部に備える走行用の原動機である図示しない電動モータ(直流モータ)から出力される動力を、図示しない変速装置とチェンケース6に内装されたチェン伝動機構を経て両クローラ式走行装置5,5の駆動輪2に伝達するように構成している。
【0012】
また、機体の前部には、所定幅の畝Gに植付けられて収穫可能状態まで成長したホウレン草Sの葉部を掻き込むブラシロール7と、該ブラシロール7によって葉部が掻き込まれるホウレン草Sの茎部を刈り取る上下一対のシャーブレードからなる刈歯8を備えており、この刈歯8は、電動モータ(直流モータ)9から出力される動力によって駆動する。
【0013】
そして、上述の如く刈歯8によって刈り取られたホウレン草Sは、側面視で右上がり傾斜で設けられたベルト搬送装置11の上側搬送経路上を揚上搬送された後、その終端から落下して下方に備える収容箱12に収容されるようになっている。尚、前記ブラシロール7とベルト搬送装置11は、図示しない共通の電動モータ(直流モータ)を動力源として駆動されるように構成している。
【0014】
また、機体の後部左側に手持ち式の操縦ハンドル13を設けると共に、該操縦ハンドル13の基部には、図示しない電動モータの正逆転を切換えて機体の前後進を選択する前後進切換スイッチ、刈歯8の起動/停止スイッチ、及びブラシロール7とベルト搬送装置11の起動/停止スイッチ等を配設した操縦パネル14を設けている。尚、図中符号15,15は、各電動モータに電力を供給するバッテリである。
【0015】
以上説明した構成により歩行型ホウレン草収穫機1のオペレータは、手持ち式操縦ハンドル13を把持して左右のクローラ式走行装置5,5を駆動せしめ、両クローラ式走行装置5,5をホウレン草Sが植付けられている畝Gを跨がせて、この畝Gの両側に形成されている畝溝M,Mに進入させた後、両クローラ式走行装置5,5のクローラ4を前進駆動させて畝溝M,Mに沿って機体を走行させながらホウレン草Sの収穫作業を行なえるようになっている。
【0016】
ところで、上述の如くホウレン草Sの収穫作業を行なう前に、図示しない野菜栽培管理ビークルに液肥追肥機を装着して畝溝M,Mを走行しながら追肥作業が行なわれていると、例えば図7に示すように、畝溝M,Mに野菜栽培管理ビークルの車輪で踏み固められた凹溝mが連続して形成されることがある。
【0017】
そして、このように踏み固められた凹溝mや段差等が左右のクローラ式走行装置5,5のクローラ4が接地駆動する畝溝Mに沿って連続的に形成されていると、前記凹溝mや段差等の角部にクローラ4の幅方向端部(例えば外側)が乗り上げてしまうことがあり、その場合は、図7に示す如くクローラ4が幅方向に傾斜(右下がり)してしまうので、クローラ4の内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金4a,4a間に設けた棒状のクローラ外れ防止体16(以下第1のクローラ外れ防止体とする)が有効に作用せず、クローラ外れが発生するといった問題点を有していた。
【0018】
尚、前記第1のクローラ外れ防止体16は、その前後方向中間部の上側にプレートからなる装着部材16aを一体的に固設してあり、該装着部材16aを走行フレームFに螺設することによって、クローラ4の内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金4a,4a間に第1のクローラ外れ防止体16を配設せしめている。そして、第1のクローラ外れ防止体16は、側面視で駆動輪2と従動輪3とに干渉しないようにクローラ4の前後方向に延出されると共に、クローラ4に摺接する前後端部がクローラ4に喰い込まないように上向きに屈曲形成されている。
【0019】
本発明の実施例1では、上述したクローラ外れを防止すべく第1のクローラ外れ防止体16に対して左右方向に偏移させた位置に第2のクローラ外れ防止体17,18を設けている。これら第2のクローラ外れ防止体17,18の前後方向中間部の上側にプレートからなる装着部材17a,18aを一体的に固設してあり、該装着部材17a,18aを第1のクローラ外れ防止体16の装着部材16aに共締め締結(螺設)している。そして、第2のクローラ外れ防止体17,18は、側面視で駆動輪2と従動輪3に重合するようにクローラ4の前後方向に延出されると共に、クローラ4に摺接する前後端部がクローラ4に喰い込まないように上向きに屈曲形成されている。
【0020】
このように駆動輪2と従動輪3との間に巻回したクローラ4の内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金4a,4a間に第1のクローラ外れ防止体16を設けると共に、該第1のクローラ外れ防止体16に対して左右方向に偏移させた位置に第2のクローラ外れ防止体17,18を設けたことによって、例えばクローラ式走行装置5,5のクローラ4が接地駆動する畝溝Mに沿って管理ビークル等により踏み固められた凹溝mや段差等が連続的に形成されているような場合、前記凹溝mや段差等の角部にクローラ4の幅方向端部が乗り上げてしまっても、該クローラ4が幅方向に傾斜することを図4に示す如く第2のクローラ外れ防止体17,18でもって規制することができるので、それにより従来の問題点であるクローラ外れの発生を防止できるようになる。そして、第1のクローラ外れ防止体16よりも第2のクローラ外れ防止体17,18の前後方向の長さが長くなるように構成してあり、クローラ4の接地部全域に亘って効果的にクローラ外れの発生を防止することができるようになる。
【実施例2】
【0021】
実施例1では、第1のクローラ外れ防止体16に対して左右方向に偏移させた位置、即ち第1のクローラ外れ防止体16の左右両側に第2のクローラ外れ防止体17,18を設けているが、例えばクローラ4が接地駆動する畝溝Mに沿って連続的に形成される凹溝mや段差等にクローラ4の幅方向の内側端部が乗り上げ易いような場合は、図5に示す如く第1のクローラ外れ防止体16の内側に第2のクローラ外れ防止体17を設ければ、前記凹溝mや段差等の角部にクローラ4の幅方向の内側端部が乗り上げて傾斜することを規制することができ、それによって従来の問題点であるクローラ外れの発生を防止することができる。
【実施例3】
【0022】
また、クローラ4が接地駆動する畝溝Mに沿って連続的に形成される凹溝mや段差等にクローラ4の幅方向の外側端部が乗り上げ易いような場合は、図6に示す如く第1のクローラ外れ防止体16の外側に第2のクローラ外れ防止体18を設ければ、前記凹溝mや段差等の角部にクローラ4の幅方向の外側端部が乗り上げて傾斜することを規制することができ、それによって従来の問題点であるクローラ外れの発生を防止することができる。即ち、クローラ外れが発生する状態に合わせて的確な位置に第2のクローラ外れ防止体17,18を設ければ、安価且つ効果的にクローラ外れの発生を防止することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、クローラ式走行装置を構成する駆動輪と従動輪との間に、複数個の転輪や揺動式の転輪装置を設けない比較的小型の運搬車等に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
2 駆動輪
3 従動輪
4 クローラ
4a 芯金
16 第1のクローラ外れ防止体
17 第2のクローラ外れ防止体(内側)
18 第2のクローラ外れ防止体(外側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪(2)と従動輪(3)との間にクローラ(4)を巻回してなるクローラ式走行装置において、前記クローラ(4)の内周面から所定の前後間隔で突出する一対の芯金(4a,4a)間に第1のクローラ外れ防止体(16)を設けると共に、該第1のクローラ外れ防止体(16)に対して左右方向に偏移させた位置に第2のクローラ外れ防止体(17,18)を設けたことを特徴とするクローラ式走行装置。
【請求項2】
第1のクローラ外れ防止体(16)よりも第2のクローラ外れ防止体(17,18)の前後方向の長さを長くなるように構成した請求項1に記載のクローラ式走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11698(P2011−11698A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159387(P2009−159387)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)