クローラ走行装置
【課題】外れ止めガイドの軽量化を図り、その外れ止めガイドの下縁がゴムクローラの内周面側に摺接してゴム層を剥がすことを回避し、外れ止めガイドの上に多量の泥土が堆積することを回避できるようにする。
【解決手段】左右一対の芯金突起の間に位置する外れ止めガイド7の前部の下面側には、前方側ほど前上がり形状となる前端下縁77aを備え、前端側が先細り形状で、かつ後方上方側ほど外広がりとなる舟形の下向き面7Bを備え、外れ止めガイド7の前部の上面側には、後方側ほど後上がり形状の上縁79を備え、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の上向き面7Aを備えた。
【解決手段】左右一対の芯金突起の間に位置する外れ止めガイド7の前部の下面側には、前方側ほど前上がり形状となる前端下縁77aを備え、前端側が先細り形状で、かつ後方上方側ほど外広がりとなる舟形の下向き面7Bを備え、外れ止めガイド7の前部の上面側には、後方側ほど後上がり形状の上縁79を備え、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の上向き面7Aを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記クローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のクローラ走行装置では、クローラベルトの外れを防止するために、左右一対の芯金突起の間に位置させて外れ止めガイドを設けている。このような外れ止めガイドを備えたクローラ走行装置としては、下記[1]に記載のものが知られている。
[1]前後方向に長く形成されたガイド部の上部に、そのガイド部よりも左右両端が横向き突出するように、横幅の広い上部受板を一体に形成した外れ止めガイド(特許文献1ではクローラガイド)を備え、クローラが突起物に乗り上げるなどして上方へ突き上げられたときに、前記横幅の広い上部受板が芯金突起の上端と接触して、ガイド部が芯金の係合部に接触することを避けられるように構成したもの(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録 第2543716号公報(第2頁第4欄〜第5欄、第1図、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載のクローラ走行装置では、外れ止めガイドを備えることによって、クローラベルトの横ズレ等によるベルトの外れを防止し得るものであるが、次のような問題がある。
このクローラベルトの左右一対の芯金突起は、ゴム製のクローラベルト内に埋設されている芯金の本体部分と一体に構成されていて、その芯金突起部分のみがクローラベルトの内周面側へ突出する構造となっている。
このクローラベルトが、例えば圃場の突起部分に乗り上げてクローラベルトに下側からの突き上げ作用が働くなどしたとき、芯金突起が外れ止めガイドの横幅の広い上部受板の存在している箇所で突き上げられた場合には、その芯金突起の頂部に上部受板が接当して芯金突起の上昇を抑制し、クローラベルトと外れ止めガイドとの大きな上下位置変化を抑制することができる。しかしながら、前記芯金突起が外れ止めガイドの横幅の広い上部受板の存在している箇所よりも前方側で突き上げられた場合には、その芯金突起の頂部の上昇を規制するものがなく、芯金突起の頂部が上部受板の前端縁に接当し、芯金突起もしくは上部受板の損傷を招く虞がある。
このため、外れ止めガイド側の横幅の広い上部受板を、前記芯金突起に突き上げ作用が生じないような前方位置にまで幅広く延出する必要があり、また上部受板自体も頑丈な強度を確保するために比較的重くなり、外れ止めガイドが重量の大きいものと成りやすいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、外れ止めガイドの軽量化を図るとともに、外れ止めガイドの上に多量の泥土が堆積することを回避できるようにしたクローラ走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
本発明の技術手段は請求項1に記載のように、ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記クローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置であって、
前記左右一対の芯金突起の間に位置して、前記クローラベルトの外れを防止するための外れ止めガイドを備え、
前記外れ止めガイドの前部の下面側には、前方側ほど前上がり形状となる前端下縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方上方側ほど外広がりとなる舟形の下向き面を備え、
前記外れ止めガイドの前部の上面側には、後方側ほど後上がり形状の上縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の上向き面を備えていることを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した構成によると、外れ止めガイドは、その前部に、下面側では、前方側ほど前上がり形状となる前端下縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方上方側ほど外広がりとなる舟形の下向き面を備え、上面側では、後方側ほど後上がり形状の上縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の上向き面を備えている。
したがって、外れ止めガイドの前部の下面側に存在する舟形の下向き面が前方側の泥土を横側方へ案内して、外れ止めガイドの上側に泥土が乗り上がることを抑制し、かつ、外れ止めガイドの前部の上面側では、屋根形の上向き面が存在していることによって、一旦外れ止めガイドの上向き面に乗り上がった泥土を後方下方側へ案内しながら滑落させるので、外れ止めガイドの前部の上面側に多量の泥土が堆積することを避けられる。
【0008】
その結果、外れ止めガイドの上に多量の泥土が堆積することを回避して、その泥土の除去作業に多大な手数を要することをも回避できる利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、外れ止めガイドには、芯金突起の内側側面との接当によって、その外れ止めガイドの下縁がクローラベルトの内周面側に接当することを阻止する近接規制部を設けてあることである。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、外れ止めガイドの下縁がクローラベルトの内面側に接当することを、外れ止めガイド自身に備えた近接規制部が芯金突起の内側側面と接当することによって阻止するように構成されているので、この外れ止めガイドがクローラベルト内面側に摺接することを避けられる。
したがって、クローラベルトに下側からの突き上げ作用が働くなどした場合に、芯金突起同士の間に位置する外れ止めガイドの下縁が、前記芯金の内周面側を覆うゴムの層に摺接して、このゴム層が早期のうちに損壊してしまうことがない。
また、外れ止めガイドの前記近接規制部は、芯金突起の頂部にではなく芯金突起の内側側面と接当するように形成されるものであり、外れ止めガイド自身の横側面箇所によって構成することができるので、近接規制部を構成するための特別の部材を外れ止めガイドの上側に連設して、芯金突起の頂部側に接当させることにより近接規制を行うような構造のものに比べ、外れ止めガイドを小型で軽量のものに形成し易いという利点がある。
【0011】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項3に記載のように、外れ止めガイドは、屋根形の上向き面を備える部分よりも後方側に、上方開放の凹入空間を備え、その凹入空間の底面側には、外れ止めガイドの最下端面から前後方向で外れた位置に、前記凹入空間に連通する泥抜き孔を形成してあることである。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、外れ止めガイドは、屋根形の上向き面を備える部分よりも後方側に上方開放の凹入空間を備えることによってさらに軽量化される。
そして、その軽量化のために用いられる凹入空間は、前記屋根形の上向き面よりも後方側に備えられていることにより、その凹入空間への泥土の入り込みを屋根形の上向き面での泥土滑落作用によって抑制できる。また、一旦凹入空間に泥土が入り込んでも、凹入空間の底面側には泥抜き孔が形成されているので、入り込んだ泥土も泥抜き孔を通してある程度排出でき、泥土の多量の堆積を回避し易い。
さらに、前記凹入空間の底面側に形成される泥抜き孔は、外れ止めガイドの最下端面から前後方向で外れた位置に形成されているので、泥抜き孔が形成された部位の外れ止めガイドの下面とクローラベルトの内周面との間に、前記外れ止めガイドの最下端面とクローラベルトの内周面との間よりも大きな間隔が形成されることになる。
したがって、泥抜き孔の出口側にクローラベルトの内周面が近接しすぎて出口を塞いだ状態となることを避け、前記出口を開放状態に維持され易くして泥土の排出が良好に行われ易い。
【0013】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項4に記載のように、外れ止めガイドは、側面視で転輪と重複する位置に上方開放の凹入空間が位置するように配設されていることである。
【0014】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、外れ止めガイドに設けられる上方開放の凹入空間は、側面視で転輪と重複する箇所に位置するので、クローラ走行装置での旋回作動中に、機体の横側方側から前記凹入空間側へ移行しようとする泥土を、転輪の存在によってある程度抑制して、凹入空間への泥土の入り込みを制限し易くなる。また、仮に凹入空間内に泥土が入り込んでも、その位置は側面視で転輪によって遮蔽された状態となっているので、堆積した泥土によって見映えが悪くなることも回避し易い。
【0015】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項5に記載のように、外れ止めガイドの前部の上面側における後上がり形状の上縁の後端側は、この外れ止めガイドをトラックフレームへ取り付けるための取付部に連結されていることである。
【0016】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5で示した構成によると、外れ止めガイドの前部の上面側における後上がり形状の上縁の後端側を、その外れ止めガイドをトラックフレームへ取り付けるための取付部に対して連結したことにより、前記外れ止めガイドの前部の上面側における後上がり形状の上縁を備えた上向き面を、外れ止めガイドの補強手段として有効利用することができる。
つまり、クローラ走行装置が圃場の突部に乗り上げるなどして、外れ止めガイドに対して前方下方側からの突き上げ力が作用した場合、その突き上げ力によって外れ止めガイドの先端側が変形させられるおそれがあるが、本発明では、前記後上がり形状の上縁を備えた上向き面を、外れ止めガイドの補強手段として利用したので、その突き上げ力に抗して外れ止めガイド先端側の変形を抑制し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】クローラ走行装置の全体側面図である。
【図3】クローラベルトの平面図である。
【図4】図3におけるIV-IV線断面図である。
【図5】アイドラホィールとクローラベルトとの接当状態を示す説明図である。
【図6】クローラベルトのベルト周方向での部分断面図である。
【図7】芯金突起部分を示す概略斜視図である。
【図8】駆動スプロケットの一部を示す斜視図である。
【図9】外れ止めガイドを示し、(a)が平面図、(b)が側面図である。
【図10】外れ止めガイドを示し、(a)が図9におけるXa-Xa線方向視の矢視図、(b)が図9におけるXb-Xb線方向視の矢視図、(c)が図9におけるXc-Xc線断面図、(d)が図9におけるXd-Xd線断面図である。
【図11】クローラベルトに対する関連部材の作用状態を示し、(a)が駆動スプロケットとの関係を示す説明図、(b)がアイドラホィールとの関係を示す説明図、(c)が外れ止めガイドとの関係を示す説明図である。
【図12】外れ止めガイドの取付部近くでの、芯金突起との近接規制状態を示し、(a)が基準姿勢、(b)が最大近接姿勢を示す説明図である。
【図13】外れ止めガイドの最下端面を備える箇所での、芯金突起との近接規制状態を示し、(a)が基準姿勢、(b)が最大近接姿勢を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔トラクタの全体構成〕
図1は、本発明に係るクローラ走行装置2を機体後部側に設けたセミクローラ型トラクタを示す。このセミクローラ型トラクタは、4輪駆動型のトラクタをセミクローラ型に仕様変更したものであり、キャビン付きのトラクタ本機1の前部に操向可能な左右一対の前輪10を備えるとともに、機体後部に主推進装置として左右一対のクローラ走行装置2を備えて構成されている。また、機体後部には、図示しない三点リンク機構を介して耕耘装置や収穫装置、あるいは各種の中間管理用の作業装置を連結するように構成されている。
【0019】
〔クローラ走行装置〕
図1,2に示すように、前記クローラ走行装置2は、トラクタ本機1における後部ミッションケース11に後輪駆動用として備えられた後車軸12に連結した大径の駆動スプケット3を備えている。
この駆動スプロケット3と、トラックフレーム20の前後に備えられたアイドラホィール4,4、およびトラックフレーム20の長手方向に並列配備された複数の転輪5に亘ってクローラベルト6を巻回張設してある。
このクローラ走行装置2の左右方向のトレッドは、畑地における畝の間を走行するために前輪10のトレッドとほぼ同一に設定されている。
【0020】
図2に示すように、前記転輪5は前後方向に3個が並設され、最前端側の転輪5はトラックフレーム20に対して固定ブラケット21を介して位置固定状態に取り付けてある。
そして、その後方側の2個の転輪5,5は、前記トラックフレーム20に取り付けられた支持ブラケット22に対して、中間部を横軸心x周りで上下揺動自在に枢着された天秤状部材23の両端側に振り分け配置してあり、シーソー揺動自在に構成されている。
【0021】
上記各転輪5とクローラベルト6とがベルト横幅方向で所定の位置関係を保ち、かつ転輪5からクローラベルト6が外れることを防止するための外れ止めガイド7が前後2箇所に設けてある。
前側の外れ止めガイド7は、最前端の転輪5を固定支持する固定ブラケット21の下端側に連設してあり、後側の外れ止めガイド7は、天秤状部材23の下端側で、最後端位置の転輪5の前後にわたる状態で連設してある。
【0022】
〔クローラベルト〕
前記クローラベルト6は、図3乃至図7に示すように構成されている。
このクローラベルト6は、ゴム材で無端帯状に成形されたベルト本体60に芯金61がベルト周方向に一定ピッチで埋設されているとともに、各芯金61の間におけるベルト内周面側に、駆動スプロケット3の駆動爪体31が係入してクローラベルト6側へ動力を伝えるための係合用凹部62が形成されている。
【0023】
各芯金61は、ベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に向けて転輪案内用の左右一対の芯金突起63が突設され、この芯金突起63の間を駆動スプロケット3および前後のアイドラホィール4,4が通過するよう構成されている。
また、各芯金突起63の横外側箇所に位置するベルト本体60の内周面には転輪5が転動移動する偏平な転輪軌道面64が形成されるとともに、ベルト本体60の外周面側には、ベルト周方向で前記係合用凹部62と表裏で重複する位置に、芯金突起63部分を除くベルト本体60の厚さより厚い推進ラグ65が一体に突出形成されている。
【0024】
前記芯金61と前記係合用凹部62との間におけるベルト本体60の内周面側には、係合用凹部62に係入した駆動スプロケット3の駆動爪体31の駆動力を芯金61に伝えるための受圧用ブロック部66が設けられている。つまり、係合用凹部62に入り込んだ金属製の駆動用爪体31によってゴム製の受圧用ブロック部66が圧縮作用を受けながら金属製の芯金61に駆動力を伝えるように構成されているものであり、駆動用爪体31と芯金61との金属同士の直接の接触を避けて騒音の発生を回避できるようにしている。
【0025】
また、前記受圧用ブロック部66は、図5に示すように、この受圧用ブロック部66の内周面側にアイドラホィール4が接触した状態で、アイドラホィール4の外周面と芯金61の内周面との間に、アイドラホィール4と芯金61との直接の接触を避けるための所定の隙間S3を形成するように、芯金61の内周面よりもベルト内周面側へ突出させて形成してある。
【0026】
前記芯金突起63は、図4乃至図7に示すように、芯金61の一部に一体形成されたベルト内周面側へ突出する金属製の突起部分61aを、ベルト本体60を構成するゴム材からなる山形突起部67で覆うことによって外形形状がほぼ山形状に形成されている。
つまり、芯金突起63は、図4に示すベルト幅方向でも、図6に示すベルト周方向でも、断面視で山形状に形成されている。そして、図7に示すように、芯金突起63のベルト幅方向での内方側に向く面が、アイドラホィール4や外れ止めガイド7に対する案内面Cとなる傾斜面によって形成されている。
また、この山形状の芯金突起63は、その頂部63aが、ベルト周方向に沿う線とその線に直交するように外側に向けられた線とで平面視T字状に形成され、かつ山形突起部67の前記案内面Cにおける前記頂部63a近くのベルト幅方向での外側に位置する箇所に凹部63bを設けた形状に形成されている。
【0027】
〔駆動スプロケット〕
前記駆動スプロケット3は、図2及び図8に示すように構成されている。
すなわち、後車軸12に連結した大径の円盤状部材30と、その円盤状部材30の外周縁から径方向の外方へ突出するように設けられた駆動用爪体31とを備えて構成されている。
この駆動用爪体31は、図8及び図11(a)に示すように、円盤状部材30の板面に対して横方向へ張り出すことにより、係合用凹部62のベルト横幅方向の長さと同程度の横幅を備え、左右の芯金突起63の両方にわたる長さと同程度に形成されている。
前記円盤状部材30のベルト横幅方向での厚みは、左右一対の芯金突起63の対抗間隔よりも薄く形成され、この円盤状部材30が左右の芯金突起63,63の間に入り込んだ状態で回転駆動される。
【0028】
〔外れ止めガイド〕
前記外れ止めガイド7は、図2、及び図9〜図13に示すように構成されている。
すなわち、最前端位置の転輪5、及び最後端位置の転輪5が設けられた位置で、左右の芯金突起63,63同士の間に位置するように、トラックフレーム20に連設された固定ブラケット21、及び支持ブラケット22に連設の天秤状部材23に連結固定される各外れ止めガイド7は、前後何れも同じもので構成してある。
【0029】
この外れ止めガイド7は、図9に示すように、全体が側面視で舟形状に形成してあり、その前後2箇所に、前記固定ブラケット21、又は支持ブラケット22に連設の天秤状部材23に対する連結固定用のねじ孔71,71を備えた取付部72,72を設けてある。
前記固定ブラケット21、又は天秤状部材23に対する取り付け姿勢で、外れ止めガイド7の最下端となる位置は、図2、及び図9(b)に示すように、転輪5の回転中心pからの垂線y1と交差する位置である。この外れ止めガイド7の最下端位置は、左右の芯金突起63,63の間でクローラベルト6の内周面に対して最も近接する状態となるのであるが、この外れ止めガイド7の、前記垂線y1と交差する箇所でのベルト横幅方向での接当箇所となる側面Bの幅L1が、前記クローラベルト6側の芯金突起63のベルト周方向での中心線y2が存在する箇所での芯金突起63の上部における接当箇所での横幅L2よりも大きく設定されている(図12、図13参照)。
【0030】
前記外れ止めガイド7のベルト横幅方向での接当箇所である側面Bの幅L1は、図9(a),(b)に示すように、外れ止めガイド7のベルト周方向(前後方向)における直線状部分L3の長さ範囲で同一であるように形成してあり、この直線状部分L3よりも前方側及び後方側では、図9(a)に示すように外れ止めガイド7の前後端が平面視で先細り状に形成してあり、側面視では図9(b)に示すように、前後端が上側へ反り上がった形状に形成されている。
さらに外れ止めガイド7の前記直線状部分L3のうち、前記垂線y1と交差する箇所の近くでは、図9(b)に示すように、垂線y1に対して直交する直交下縁部分73(最下端面に相当)が存在する直交下縁範囲L4が形成され、その前後における前記直線状部分L3のうち、前記直交下縁範囲L4よりも前方の前側下縁部分74は少し前上がり形状に形成してあり、前記直交下縁範囲L4よりも後方の後側下縁部分75は少し後上がり形状に形成してある。
【0031】
このように外れ止めガイド7の下縁形状を形成してあるのは次の理由による。つまり、図2に示すように、全ての転輪5が平坦地に位置する場合を想定した場合、その全ての転輪5に対する下方側の接線よりも、クローラ走行装置2の前端側及び後端側のアイドラホィール4,4の下縁が高く位置している。このため、クローラベルト6が、最前端の転輪5よりも前側では少し前上がり状態に掛張され、最後端の転輪5よりも後側では少し後上がり状態に掛張されるので、外れ止めガイド7の下縁とクローラベルト6の内周面との間に必要な間隙を維持するためである。
【0032】
この外れ止めガイド7は、図9(a),(b)に示すように、前側の取付部72と後側の取付部72との間に、上方側が開放された鋳抜きによる凹入空間76を形成してある。この凹入空間76は、外れ止めガイド7の素材の節減と全体重量の軽減を図るためのものであり、外れ止めガイド7の必要強度を損なわない範囲で、できるだけ大きく形成されている。
この外れ止めガイド7の凹入空間76は、図9(b)に示すように、転輪5の回転中心pからの垂線y1が前後方向でのほぼ中心箇所に位置する状態で、前後の取付部72,72同士の間に形成してあり、かつ、図2に示すように、側面視で外れ止めガイド7の前後の取付部72,72にわたる範囲に存在する転輪5が、前記凹入空間76が転輪5と重複する位置関係で外れ止めガイド7をトラックフレーム20に装着してある。
【0033】
この凹入空間76の底部側には、前記直交下縁部分73(最下端面に相当)が存在する直交下縁範囲L4から前後に離れた位置に、前記凹入空間76に連通する泥抜き孔76aを形成してある。
この位置に形成された泥抜き孔76aは、前記直交下縁部分73(最下端面に相当)が、仮にクローラベルト6の内周面に接した状態でも、クローラベルト6の内周面から少し浮き上がるように離れて、泥抜き孔76aの出口側がクローラベルト6の内周面によって塞がれることが無いように構成されている。
実際には、後述する外れ止めガイド7の近接規制部Aが存在することで、前記直交下縁部分73(最下端面に相当)が、クローラベルト6の内周面に接した状態となることは避けられるので、泥抜き孔76aの出口側とクローラベルト6の内周面との間の間隔はさらに広く維持される。
【0034】
さらに外れ止めガイド7は、図9(a),(b)、及び図10(a)乃至図10(d)に示すように形成されている。
すなわち、前側の取付部72よりも前方側における外れ止めガイド7の下向き面7Bは、図9(b)に示すように、側面視で前方側ほど前上がり形状となる前端下縁77aと、この外れ止めガイド7の側面Bのうち、前記直線状部分L3を越えて前方側へ延出された前端側面部分77bとで構成されている。 そして、この前端側面部分77bが後方上方側ほど外広がりとなり、前記前上がり形状の前端下縁77aと前端側面部分77bとで下向き面7Bが舟形に形成されている(図10(a),(c)参照))。
【0035】
また、前側の取付部72よりも前方側における外れ止めガイド7の上向き面7Aは、図9(a),(b)に示すように、最先端側に平坦で後下がりの上面78aを備えている。そして、その後下がりの上面78aに引き続く上面78bは、側面視で後方側ほど後上がり形状の上縁79を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形に形成されている(図9(a),(b)、及び図10(a),(c)参照)。
【0036】
上記の後上がりの上縁79の後端は取付部72の前面に連なるように一体形成されており、外れ止めガイド7の下向き面7B側から作用する外力に対して、外れ止めガイド7の前端側を補強する役割を果たしている。
そして、外れ止めガイド7の下向き面7B側では、後方上方側ほど外広がりとなる舟形の形状によって前方側の泥土を横側方へ案内排出し、また、外れ止めガイド7の上向き面7A側では、その上向き面7Aに乗った泥土を、後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の面によって滑落させるように案内する。
【0037】
前記外れ止めガイド7の前側の取付部72と後側の取付部72との間には、前記凹入空間76が形成されている。その凹入空間76が存在する箇所での断面形状は、図10(c)に示すように、上方開放のV字状である。この断面箇所は、転輪5の回転中心pからの垂線y1と交差する位置での断面である。
この凹入空間76が存在する箇所よりも後方側では、外れ止めガイド7の下向き面7Bが後上がりの後端下縁77cを備え、後方上方側ほど外広がりの傾斜面で、かつ後方側が細くなる先細り形状に形成されている。
【0038】
外れ止めガイド7の前端側及び後端側が平面視で先細り形状に形成されているのは、前述のようにベルト横幅方向での幅L1を広くした外れ止めガイド7による案内作用をスムースに行わせるためである。さらにまた、前述のように、外れ止めガイド7の前後端が平面視での先細り形状に加えて上側へ反り上がった形状に形成されているのは、前後端の反り上がり部分がクローラベルト6に直接に接触することを回避できるようにするためである。
【0039】
このように構成された外れ止めガイド7は、図12(a)及び図13(a)に示す基準姿勢(全ての転輪5が転輪軌道面64に接してクローラベルト6が全体に平均的な圧力を受けている状態での走行姿勢)では、外れ止めガイド7の最下端となる位置とクローラベルト6の内周面との間には、十分大きな間隔S1を備えるように、転輪5の接触面と外れ止めガイド7の下縁との相対高さ位置が設定されている。
【0040】
ところが、図12(b)及び図13(b)に示すように、最大近接姿勢(凸部に乗り上げるなどして一部の転輪5の下方から集中的な突き上げ力が作用する状態での走行姿勢)では、クローラベルト6が部分的に圧縮あるいは屈曲して、外れ止めガイド7が相対的にクローラベルト6の内周面に接近する状態となる。
しかしながら、本発明では、前述のように、外れ止めガイド7のベルト横幅方向での接当箇所の横幅L1が、クローラベルト6側の芯金突起63の上部における接当箇所での横幅L2よりも大きく設定されているので、図示のように、外れ止めガイド7とクローラベルト6の内周面との接近の際に、外れ止めガイド7の接当箇所と芯金突起63の上部における接当箇所との接当によって、それ以上の接近が阻止され、両者の接触を回避するように間隔S2を確保することができる。
つまり、前記外れ止めガイド7に設定された横幅L1を有した前記直線状部分L3における範囲の接当箇所によって、その外れ止めガイド7の下縁73,74,75がクローラベルト6の内周面側に接当することを阻止する近接規制部Aが構成されている。
【0041】
上記の外れ止めガイド7の近接規制部Aは、外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bのうち、前記芯金突起63の案内面Cの上部における接当箇所に対して接当する箇所によって構成されているものであり、前記両側面B,Bは、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度よりも、少し角度の大きいテーパーとなるように傾斜角度を設定してある。
したがって、外れ止めガイド7が比較的強く左右の芯金突起63,63の間に嵌り込んでも、近接規制部Aでの接触面積は比較的小さく、強く噛み込んで外れにくくなるというような事態を避けやすい。
【0042】
〔アイドラホィール〕
アイドラホィール4,4は、図2及び図11(b)に示すように、左右の芯金突起63,63の間に入り込む状態で、かつ、クローラベルト6の内周面に接した状態で遊転回動する。
このとき、アイドラホィール4,4の外周面は、前述したように、クローラベルト6の受圧用ブロック部66の内周面側に接触した状態で回転されるので、この箇所での騒音の発生を回避することができる。
そして、アイドラホィール4,4の両側面は、左右の芯金突起63,63の金属部分と接触する可能性はあるが、この箇所では、アイドラホィール4,4とクローラベルト6とは、殆ど相対移動のない状態で回動しているので、たとえ金属部分同士が触れあっても、この箇所ではあまり大きな騒音にはならず、やはり騒音の発生を抑制することができる。
【0043】
〔別実施形態の1〕
外れ止めガイド7としては、実施の形態で説明したような上方開放の凹入空間76の底部側で、直交下縁部分73(最下端面に相当)が存在する直交下縁範囲L4から前後に離れた位置に泥抜き孔76aを形成したものに限らず、凹入空間76の底部側における前後方向での全体にわたって連続した泥抜き孔76aを形成するなど、任意の範囲に設けても良い。
また、このような上方開放の凹入空間76を設けずに、外れ止めガイド7を全体的に中空状に形成するなどしても良い。
【0044】
〔別実施形態の2〕
外れ止めガイド7の上向き面7A側では、実施の形態で説明したように、最先端側に後下がりの平坦な上面78aを設けて、それに引き続いて後上がりの上縁79を備えた上面78bを設けるものに限らず、外れ止めガイド7の最先端側から後上がりの上縁79を備えた上面78bを設けて、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形に形成したものであってもよい。
尚、上記の上向き面7に形成される屋根形の形状としては、上記の実施形態で示したような断面が逆V字状の頂部を有して、後上がりの上縁79が尖鋭な稜線となる形状のものに限らず、例えば、断面形状の頂部に少し扁平な部分を有した台形状であったり、頂部が円弧状となる断面形状のものであっても良く、要は、この上向き面7A上での泥土の堆積を抑止できるように、泥土を滑落させ得るものであれば、任意の形状を採用することができる。
【0045】
〔別実施形態の3〕
外れ止めガイド7としては、実施の形態で説明したような上向き面7Aを、クローラ走行装置2の進行方向前方側の端部にのみ形成した例を示したが、これに限らず、上記上向き面7Aと同様な屋根形の上向き面7Aを、クローラ走行装置2の進行方向後方側の端部にも形成しても良い。この場合には、クローラ走行装置2のクローラベルト6を逆転駆動した場合における泥土の堆積防止に有効である。
【0046】
〔別実施形態の4〕
外れ止めガイド7の近接規制部Aとして、実施の形態では、外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bを、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度よりも、少し角度の大きいテーパーとなるように傾斜角度を設定したものを示したが、これに限らず、前記外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bと、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度を同じ角度に設定してもよい。このように同じ角度に設定すると、接当箇所の面積を広くして単位面積当たりの面圧を下げることができるので、接当箇所での摩耗度合いを軽減し得る点での有利さがある。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のクローラ走行装置は、実施形態で示したトラクタの他、コンバインや建設機械などの各種の車両の推進装置として用いることができる
【符号の説明】
【0048】
2 クローラ走行装置
3 駆動スプロケット
4 アイドラホィール
5 転輪
6 クローラベルト
7 外れ止めガイド
7A 上向き面
7B 下向き面
20 トラックフレーム
60 ベルト本体
61 芯金
62 係合用凹部
63 芯金突起
64 転輪軌道面
72 取付部
76 凹入空間
76a 泥抜き孔
77a 前端下縁
79 上縁
A 近接規制部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記クローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のクローラ走行装置では、クローラベルトの外れを防止するために、左右一対の芯金突起の間に位置させて外れ止めガイドを設けている。このような外れ止めガイドを備えたクローラ走行装置としては、下記[1]に記載のものが知られている。
[1]前後方向に長く形成されたガイド部の上部に、そのガイド部よりも左右両端が横向き突出するように、横幅の広い上部受板を一体に形成した外れ止めガイド(特許文献1ではクローラガイド)を備え、クローラが突起物に乗り上げるなどして上方へ突き上げられたときに、前記横幅の広い上部受板が芯金突起の上端と接触して、ガイド部が芯金の係合部に接触することを避けられるように構成したもの(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録 第2543716号公報(第2頁第4欄〜第5欄、第1図、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載のクローラ走行装置では、外れ止めガイドを備えることによって、クローラベルトの横ズレ等によるベルトの外れを防止し得るものであるが、次のような問題がある。
このクローラベルトの左右一対の芯金突起は、ゴム製のクローラベルト内に埋設されている芯金の本体部分と一体に構成されていて、その芯金突起部分のみがクローラベルトの内周面側へ突出する構造となっている。
このクローラベルトが、例えば圃場の突起部分に乗り上げてクローラベルトに下側からの突き上げ作用が働くなどしたとき、芯金突起が外れ止めガイドの横幅の広い上部受板の存在している箇所で突き上げられた場合には、その芯金突起の頂部に上部受板が接当して芯金突起の上昇を抑制し、クローラベルトと外れ止めガイドとの大きな上下位置変化を抑制することができる。しかしながら、前記芯金突起が外れ止めガイドの横幅の広い上部受板の存在している箇所よりも前方側で突き上げられた場合には、その芯金突起の頂部の上昇を規制するものがなく、芯金突起の頂部が上部受板の前端縁に接当し、芯金突起もしくは上部受板の損傷を招く虞がある。
このため、外れ止めガイド側の横幅の広い上部受板を、前記芯金突起に突き上げ作用が生じないような前方位置にまで幅広く延出する必要があり、また上部受板自体も頑丈な強度を確保するために比較的重くなり、外れ止めガイドが重量の大きいものと成りやすいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、外れ止めガイドの軽量化を図るとともに、外れ止めガイドの上に多量の泥土が堆積することを回避できるようにしたクローラ走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
本発明の技術手段は請求項1に記載のように、ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記クローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置であって、
前記左右一対の芯金突起の間に位置して、前記クローラベルトの外れを防止するための外れ止めガイドを備え、
前記外れ止めガイドの前部の下面側には、前方側ほど前上がり形状となる前端下縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方上方側ほど外広がりとなる舟形の下向き面を備え、
前記外れ止めガイドの前部の上面側には、後方側ほど後上がり形状の上縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の上向き面を備えていることを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した構成によると、外れ止めガイドは、その前部に、下面側では、前方側ほど前上がり形状となる前端下縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方上方側ほど外広がりとなる舟形の下向き面を備え、上面側では、後方側ほど後上がり形状の上縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の上向き面を備えている。
したがって、外れ止めガイドの前部の下面側に存在する舟形の下向き面が前方側の泥土を横側方へ案内して、外れ止めガイドの上側に泥土が乗り上がることを抑制し、かつ、外れ止めガイドの前部の上面側では、屋根形の上向き面が存在していることによって、一旦外れ止めガイドの上向き面に乗り上がった泥土を後方下方側へ案内しながら滑落させるので、外れ止めガイドの前部の上面側に多量の泥土が堆積することを避けられる。
【0008】
その結果、外れ止めガイドの上に多量の泥土が堆積することを回避して、その泥土の除去作業に多大な手数を要することをも回避できる利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、外れ止めガイドには、芯金突起の内側側面との接当によって、その外れ止めガイドの下縁がクローラベルトの内周面側に接当することを阻止する近接規制部を設けてあることである。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、外れ止めガイドの下縁がクローラベルトの内面側に接当することを、外れ止めガイド自身に備えた近接規制部が芯金突起の内側側面と接当することによって阻止するように構成されているので、この外れ止めガイドがクローラベルト内面側に摺接することを避けられる。
したがって、クローラベルトに下側からの突き上げ作用が働くなどした場合に、芯金突起同士の間に位置する外れ止めガイドの下縁が、前記芯金の内周面側を覆うゴムの層に摺接して、このゴム層が早期のうちに損壊してしまうことがない。
また、外れ止めガイドの前記近接規制部は、芯金突起の頂部にではなく芯金突起の内側側面と接当するように形成されるものであり、外れ止めガイド自身の横側面箇所によって構成することができるので、近接規制部を構成するための特別の部材を外れ止めガイドの上側に連設して、芯金突起の頂部側に接当させることにより近接規制を行うような構造のものに比べ、外れ止めガイドを小型で軽量のものに形成し易いという利点がある。
【0011】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項3に記載のように、外れ止めガイドは、屋根形の上向き面を備える部分よりも後方側に、上方開放の凹入空間を備え、その凹入空間の底面側には、外れ止めガイドの最下端面から前後方向で外れた位置に、前記凹入空間に連通する泥抜き孔を形成してあることである。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、外れ止めガイドは、屋根形の上向き面を備える部分よりも後方側に上方開放の凹入空間を備えることによってさらに軽量化される。
そして、その軽量化のために用いられる凹入空間は、前記屋根形の上向き面よりも後方側に備えられていることにより、その凹入空間への泥土の入り込みを屋根形の上向き面での泥土滑落作用によって抑制できる。また、一旦凹入空間に泥土が入り込んでも、凹入空間の底面側には泥抜き孔が形成されているので、入り込んだ泥土も泥抜き孔を通してある程度排出でき、泥土の多量の堆積を回避し易い。
さらに、前記凹入空間の底面側に形成される泥抜き孔は、外れ止めガイドの最下端面から前後方向で外れた位置に形成されているので、泥抜き孔が形成された部位の外れ止めガイドの下面とクローラベルトの内周面との間に、前記外れ止めガイドの最下端面とクローラベルトの内周面との間よりも大きな間隔が形成されることになる。
したがって、泥抜き孔の出口側にクローラベルトの内周面が近接しすぎて出口を塞いだ状態となることを避け、前記出口を開放状態に維持され易くして泥土の排出が良好に行われ易い。
【0013】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項4に記載のように、外れ止めガイドは、側面視で転輪と重複する位置に上方開放の凹入空間が位置するように配設されていることである。
【0014】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、外れ止めガイドに設けられる上方開放の凹入空間は、側面視で転輪と重複する箇所に位置するので、クローラ走行装置での旋回作動中に、機体の横側方側から前記凹入空間側へ移行しようとする泥土を、転輪の存在によってある程度抑制して、凹入空間への泥土の入り込みを制限し易くなる。また、仮に凹入空間内に泥土が入り込んでも、その位置は側面視で転輪によって遮蔽された状態となっているので、堆積した泥土によって見映えが悪くなることも回避し易い。
【0015】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項5に記載のように、外れ止めガイドの前部の上面側における後上がり形状の上縁の後端側は、この外れ止めガイドをトラックフレームへ取り付けるための取付部に連結されていることである。
【0016】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5で示した構成によると、外れ止めガイドの前部の上面側における後上がり形状の上縁の後端側を、その外れ止めガイドをトラックフレームへ取り付けるための取付部に対して連結したことにより、前記外れ止めガイドの前部の上面側における後上がり形状の上縁を備えた上向き面を、外れ止めガイドの補強手段として有効利用することができる。
つまり、クローラ走行装置が圃場の突部に乗り上げるなどして、外れ止めガイドに対して前方下方側からの突き上げ力が作用した場合、その突き上げ力によって外れ止めガイドの先端側が変形させられるおそれがあるが、本発明では、前記後上がり形状の上縁を備えた上向き面を、外れ止めガイドの補強手段として利用したので、その突き上げ力に抗して外れ止めガイド先端側の変形を抑制し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】クローラ走行装置の全体側面図である。
【図3】クローラベルトの平面図である。
【図4】図3におけるIV-IV線断面図である。
【図5】アイドラホィールとクローラベルトとの接当状態を示す説明図である。
【図6】クローラベルトのベルト周方向での部分断面図である。
【図7】芯金突起部分を示す概略斜視図である。
【図8】駆動スプロケットの一部を示す斜視図である。
【図9】外れ止めガイドを示し、(a)が平面図、(b)が側面図である。
【図10】外れ止めガイドを示し、(a)が図9におけるXa-Xa線方向視の矢視図、(b)が図9におけるXb-Xb線方向視の矢視図、(c)が図9におけるXc-Xc線断面図、(d)が図9におけるXd-Xd線断面図である。
【図11】クローラベルトに対する関連部材の作用状態を示し、(a)が駆動スプロケットとの関係を示す説明図、(b)がアイドラホィールとの関係を示す説明図、(c)が外れ止めガイドとの関係を示す説明図である。
【図12】外れ止めガイドの取付部近くでの、芯金突起との近接規制状態を示し、(a)が基準姿勢、(b)が最大近接姿勢を示す説明図である。
【図13】外れ止めガイドの最下端面を備える箇所での、芯金突起との近接規制状態を示し、(a)が基準姿勢、(b)が最大近接姿勢を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔トラクタの全体構成〕
図1は、本発明に係るクローラ走行装置2を機体後部側に設けたセミクローラ型トラクタを示す。このセミクローラ型トラクタは、4輪駆動型のトラクタをセミクローラ型に仕様変更したものであり、キャビン付きのトラクタ本機1の前部に操向可能な左右一対の前輪10を備えるとともに、機体後部に主推進装置として左右一対のクローラ走行装置2を備えて構成されている。また、機体後部には、図示しない三点リンク機構を介して耕耘装置や収穫装置、あるいは各種の中間管理用の作業装置を連結するように構成されている。
【0019】
〔クローラ走行装置〕
図1,2に示すように、前記クローラ走行装置2は、トラクタ本機1における後部ミッションケース11に後輪駆動用として備えられた後車軸12に連結した大径の駆動スプケット3を備えている。
この駆動スプロケット3と、トラックフレーム20の前後に備えられたアイドラホィール4,4、およびトラックフレーム20の長手方向に並列配備された複数の転輪5に亘ってクローラベルト6を巻回張設してある。
このクローラ走行装置2の左右方向のトレッドは、畑地における畝の間を走行するために前輪10のトレッドとほぼ同一に設定されている。
【0020】
図2に示すように、前記転輪5は前後方向に3個が並設され、最前端側の転輪5はトラックフレーム20に対して固定ブラケット21を介して位置固定状態に取り付けてある。
そして、その後方側の2個の転輪5,5は、前記トラックフレーム20に取り付けられた支持ブラケット22に対して、中間部を横軸心x周りで上下揺動自在に枢着された天秤状部材23の両端側に振り分け配置してあり、シーソー揺動自在に構成されている。
【0021】
上記各転輪5とクローラベルト6とがベルト横幅方向で所定の位置関係を保ち、かつ転輪5からクローラベルト6が外れることを防止するための外れ止めガイド7が前後2箇所に設けてある。
前側の外れ止めガイド7は、最前端の転輪5を固定支持する固定ブラケット21の下端側に連設してあり、後側の外れ止めガイド7は、天秤状部材23の下端側で、最後端位置の転輪5の前後にわたる状態で連設してある。
【0022】
〔クローラベルト〕
前記クローラベルト6は、図3乃至図7に示すように構成されている。
このクローラベルト6は、ゴム材で無端帯状に成形されたベルト本体60に芯金61がベルト周方向に一定ピッチで埋設されているとともに、各芯金61の間におけるベルト内周面側に、駆動スプロケット3の駆動爪体31が係入してクローラベルト6側へ動力を伝えるための係合用凹部62が形成されている。
【0023】
各芯金61は、ベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に向けて転輪案内用の左右一対の芯金突起63が突設され、この芯金突起63の間を駆動スプロケット3および前後のアイドラホィール4,4が通過するよう構成されている。
また、各芯金突起63の横外側箇所に位置するベルト本体60の内周面には転輪5が転動移動する偏平な転輪軌道面64が形成されるとともに、ベルト本体60の外周面側には、ベルト周方向で前記係合用凹部62と表裏で重複する位置に、芯金突起63部分を除くベルト本体60の厚さより厚い推進ラグ65が一体に突出形成されている。
【0024】
前記芯金61と前記係合用凹部62との間におけるベルト本体60の内周面側には、係合用凹部62に係入した駆動スプロケット3の駆動爪体31の駆動力を芯金61に伝えるための受圧用ブロック部66が設けられている。つまり、係合用凹部62に入り込んだ金属製の駆動用爪体31によってゴム製の受圧用ブロック部66が圧縮作用を受けながら金属製の芯金61に駆動力を伝えるように構成されているものであり、駆動用爪体31と芯金61との金属同士の直接の接触を避けて騒音の発生を回避できるようにしている。
【0025】
また、前記受圧用ブロック部66は、図5に示すように、この受圧用ブロック部66の内周面側にアイドラホィール4が接触した状態で、アイドラホィール4の外周面と芯金61の内周面との間に、アイドラホィール4と芯金61との直接の接触を避けるための所定の隙間S3を形成するように、芯金61の内周面よりもベルト内周面側へ突出させて形成してある。
【0026】
前記芯金突起63は、図4乃至図7に示すように、芯金61の一部に一体形成されたベルト内周面側へ突出する金属製の突起部分61aを、ベルト本体60を構成するゴム材からなる山形突起部67で覆うことによって外形形状がほぼ山形状に形成されている。
つまり、芯金突起63は、図4に示すベルト幅方向でも、図6に示すベルト周方向でも、断面視で山形状に形成されている。そして、図7に示すように、芯金突起63のベルト幅方向での内方側に向く面が、アイドラホィール4や外れ止めガイド7に対する案内面Cとなる傾斜面によって形成されている。
また、この山形状の芯金突起63は、その頂部63aが、ベルト周方向に沿う線とその線に直交するように外側に向けられた線とで平面視T字状に形成され、かつ山形突起部67の前記案内面Cにおける前記頂部63a近くのベルト幅方向での外側に位置する箇所に凹部63bを設けた形状に形成されている。
【0027】
〔駆動スプロケット〕
前記駆動スプロケット3は、図2及び図8に示すように構成されている。
すなわち、後車軸12に連結した大径の円盤状部材30と、その円盤状部材30の外周縁から径方向の外方へ突出するように設けられた駆動用爪体31とを備えて構成されている。
この駆動用爪体31は、図8及び図11(a)に示すように、円盤状部材30の板面に対して横方向へ張り出すことにより、係合用凹部62のベルト横幅方向の長さと同程度の横幅を備え、左右の芯金突起63の両方にわたる長さと同程度に形成されている。
前記円盤状部材30のベルト横幅方向での厚みは、左右一対の芯金突起63の対抗間隔よりも薄く形成され、この円盤状部材30が左右の芯金突起63,63の間に入り込んだ状態で回転駆動される。
【0028】
〔外れ止めガイド〕
前記外れ止めガイド7は、図2、及び図9〜図13に示すように構成されている。
すなわち、最前端位置の転輪5、及び最後端位置の転輪5が設けられた位置で、左右の芯金突起63,63同士の間に位置するように、トラックフレーム20に連設された固定ブラケット21、及び支持ブラケット22に連設の天秤状部材23に連結固定される各外れ止めガイド7は、前後何れも同じもので構成してある。
【0029】
この外れ止めガイド7は、図9に示すように、全体が側面視で舟形状に形成してあり、その前後2箇所に、前記固定ブラケット21、又は支持ブラケット22に連設の天秤状部材23に対する連結固定用のねじ孔71,71を備えた取付部72,72を設けてある。
前記固定ブラケット21、又は天秤状部材23に対する取り付け姿勢で、外れ止めガイド7の最下端となる位置は、図2、及び図9(b)に示すように、転輪5の回転中心pからの垂線y1と交差する位置である。この外れ止めガイド7の最下端位置は、左右の芯金突起63,63の間でクローラベルト6の内周面に対して最も近接する状態となるのであるが、この外れ止めガイド7の、前記垂線y1と交差する箇所でのベルト横幅方向での接当箇所となる側面Bの幅L1が、前記クローラベルト6側の芯金突起63のベルト周方向での中心線y2が存在する箇所での芯金突起63の上部における接当箇所での横幅L2よりも大きく設定されている(図12、図13参照)。
【0030】
前記外れ止めガイド7のベルト横幅方向での接当箇所である側面Bの幅L1は、図9(a),(b)に示すように、外れ止めガイド7のベルト周方向(前後方向)における直線状部分L3の長さ範囲で同一であるように形成してあり、この直線状部分L3よりも前方側及び後方側では、図9(a)に示すように外れ止めガイド7の前後端が平面視で先細り状に形成してあり、側面視では図9(b)に示すように、前後端が上側へ反り上がった形状に形成されている。
さらに外れ止めガイド7の前記直線状部分L3のうち、前記垂線y1と交差する箇所の近くでは、図9(b)に示すように、垂線y1に対して直交する直交下縁部分73(最下端面に相当)が存在する直交下縁範囲L4が形成され、その前後における前記直線状部分L3のうち、前記直交下縁範囲L4よりも前方の前側下縁部分74は少し前上がり形状に形成してあり、前記直交下縁範囲L4よりも後方の後側下縁部分75は少し後上がり形状に形成してある。
【0031】
このように外れ止めガイド7の下縁形状を形成してあるのは次の理由による。つまり、図2に示すように、全ての転輪5が平坦地に位置する場合を想定した場合、その全ての転輪5に対する下方側の接線よりも、クローラ走行装置2の前端側及び後端側のアイドラホィール4,4の下縁が高く位置している。このため、クローラベルト6が、最前端の転輪5よりも前側では少し前上がり状態に掛張され、最後端の転輪5よりも後側では少し後上がり状態に掛張されるので、外れ止めガイド7の下縁とクローラベルト6の内周面との間に必要な間隙を維持するためである。
【0032】
この外れ止めガイド7は、図9(a),(b)に示すように、前側の取付部72と後側の取付部72との間に、上方側が開放された鋳抜きによる凹入空間76を形成してある。この凹入空間76は、外れ止めガイド7の素材の節減と全体重量の軽減を図るためのものであり、外れ止めガイド7の必要強度を損なわない範囲で、できるだけ大きく形成されている。
この外れ止めガイド7の凹入空間76は、図9(b)に示すように、転輪5の回転中心pからの垂線y1が前後方向でのほぼ中心箇所に位置する状態で、前後の取付部72,72同士の間に形成してあり、かつ、図2に示すように、側面視で外れ止めガイド7の前後の取付部72,72にわたる範囲に存在する転輪5が、前記凹入空間76が転輪5と重複する位置関係で外れ止めガイド7をトラックフレーム20に装着してある。
【0033】
この凹入空間76の底部側には、前記直交下縁部分73(最下端面に相当)が存在する直交下縁範囲L4から前後に離れた位置に、前記凹入空間76に連通する泥抜き孔76aを形成してある。
この位置に形成された泥抜き孔76aは、前記直交下縁部分73(最下端面に相当)が、仮にクローラベルト6の内周面に接した状態でも、クローラベルト6の内周面から少し浮き上がるように離れて、泥抜き孔76aの出口側がクローラベルト6の内周面によって塞がれることが無いように構成されている。
実際には、後述する外れ止めガイド7の近接規制部Aが存在することで、前記直交下縁部分73(最下端面に相当)が、クローラベルト6の内周面に接した状態となることは避けられるので、泥抜き孔76aの出口側とクローラベルト6の内周面との間の間隔はさらに広く維持される。
【0034】
さらに外れ止めガイド7は、図9(a),(b)、及び図10(a)乃至図10(d)に示すように形成されている。
すなわち、前側の取付部72よりも前方側における外れ止めガイド7の下向き面7Bは、図9(b)に示すように、側面視で前方側ほど前上がり形状となる前端下縁77aと、この外れ止めガイド7の側面Bのうち、前記直線状部分L3を越えて前方側へ延出された前端側面部分77bとで構成されている。 そして、この前端側面部分77bが後方上方側ほど外広がりとなり、前記前上がり形状の前端下縁77aと前端側面部分77bとで下向き面7Bが舟形に形成されている(図10(a),(c)参照))。
【0035】
また、前側の取付部72よりも前方側における外れ止めガイド7の上向き面7Aは、図9(a),(b)に示すように、最先端側に平坦で後下がりの上面78aを備えている。そして、その後下がりの上面78aに引き続く上面78bは、側面視で後方側ほど後上がり形状の上縁79を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形に形成されている(図9(a),(b)、及び図10(a),(c)参照)。
【0036】
上記の後上がりの上縁79の後端は取付部72の前面に連なるように一体形成されており、外れ止めガイド7の下向き面7B側から作用する外力に対して、外れ止めガイド7の前端側を補強する役割を果たしている。
そして、外れ止めガイド7の下向き面7B側では、後方上方側ほど外広がりとなる舟形の形状によって前方側の泥土を横側方へ案内排出し、また、外れ止めガイド7の上向き面7A側では、その上向き面7Aに乗った泥土を、後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の面によって滑落させるように案内する。
【0037】
前記外れ止めガイド7の前側の取付部72と後側の取付部72との間には、前記凹入空間76が形成されている。その凹入空間76が存在する箇所での断面形状は、図10(c)に示すように、上方開放のV字状である。この断面箇所は、転輪5の回転中心pからの垂線y1と交差する位置での断面である。
この凹入空間76が存在する箇所よりも後方側では、外れ止めガイド7の下向き面7Bが後上がりの後端下縁77cを備え、後方上方側ほど外広がりの傾斜面で、かつ後方側が細くなる先細り形状に形成されている。
【0038】
外れ止めガイド7の前端側及び後端側が平面視で先細り形状に形成されているのは、前述のようにベルト横幅方向での幅L1を広くした外れ止めガイド7による案内作用をスムースに行わせるためである。さらにまた、前述のように、外れ止めガイド7の前後端が平面視での先細り形状に加えて上側へ反り上がった形状に形成されているのは、前後端の反り上がり部分がクローラベルト6に直接に接触することを回避できるようにするためである。
【0039】
このように構成された外れ止めガイド7は、図12(a)及び図13(a)に示す基準姿勢(全ての転輪5が転輪軌道面64に接してクローラベルト6が全体に平均的な圧力を受けている状態での走行姿勢)では、外れ止めガイド7の最下端となる位置とクローラベルト6の内周面との間には、十分大きな間隔S1を備えるように、転輪5の接触面と外れ止めガイド7の下縁との相対高さ位置が設定されている。
【0040】
ところが、図12(b)及び図13(b)に示すように、最大近接姿勢(凸部に乗り上げるなどして一部の転輪5の下方から集中的な突き上げ力が作用する状態での走行姿勢)では、クローラベルト6が部分的に圧縮あるいは屈曲して、外れ止めガイド7が相対的にクローラベルト6の内周面に接近する状態となる。
しかしながら、本発明では、前述のように、外れ止めガイド7のベルト横幅方向での接当箇所の横幅L1が、クローラベルト6側の芯金突起63の上部における接当箇所での横幅L2よりも大きく設定されているので、図示のように、外れ止めガイド7とクローラベルト6の内周面との接近の際に、外れ止めガイド7の接当箇所と芯金突起63の上部における接当箇所との接当によって、それ以上の接近が阻止され、両者の接触を回避するように間隔S2を確保することができる。
つまり、前記外れ止めガイド7に設定された横幅L1を有した前記直線状部分L3における範囲の接当箇所によって、その外れ止めガイド7の下縁73,74,75がクローラベルト6の内周面側に接当することを阻止する近接規制部Aが構成されている。
【0041】
上記の外れ止めガイド7の近接規制部Aは、外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bのうち、前記芯金突起63の案内面Cの上部における接当箇所に対して接当する箇所によって構成されているものであり、前記両側面B,Bは、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度よりも、少し角度の大きいテーパーとなるように傾斜角度を設定してある。
したがって、外れ止めガイド7が比較的強く左右の芯金突起63,63の間に嵌り込んでも、近接規制部Aでの接触面積は比較的小さく、強く噛み込んで外れにくくなるというような事態を避けやすい。
【0042】
〔アイドラホィール〕
アイドラホィール4,4は、図2及び図11(b)に示すように、左右の芯金突起63,63の間に入り込む状態で、かつ、クローラベルト6の内周面に接した状態で遊転回動する。
このとき、アイドラホィール4,4の外周面は、前述したように、クローラベルト6の受圧用ブロック部66の内周面側に接触した状態で回転されるので、この箇所での騒音の発生を回避することができる。
そして、アイドラホィール4,4の両側面は、左右の芯金突起63,63の金属部分と接触する可能性はあるが、この箇所では、アイドラホィール4,4とクローラベルト6とは、殆ど相対移動のない状態で回動しているので、たとえ金属部分同士が触れあっても、この箇所ではあまり大きな騒音にはならず、やはり騒音の発生を抑制することができる。
【0043】
〔別実施形態の1〕
外れ止めガイド7としては、実施の形態で説明したような上方開放の凹入空間76の底部側で、直交下縁部分73(最下端面に相当)が存在する直交下縁範囲L4から前後に離れた位置に泥抜き孔76aを形成したものに限らず、凹入空間76の底部側における前後方向での全体にわたって連続した泥抜き孔76aを形成するなど、任意の範囲に設けても良い。
また、このような上方開放の凹入空間76を設けずに、外れ止めガイド7を全体的に中空状に形成するなどしても良い。
【0044】
〔別実施形態の2〕
外れ止めガイド7の上向き面7A側では、実施の形態で説明したように、最先端側に後下がりの平坦な上面78aを設けて、それに引き続いて後上がりの上縁79を備えた上面78bを設けるものに限らず、外れ止めガイド7の最先端側から後上がりの上縁79を備えた上面78bを設けて、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形に形成したものであってもよい。
尚、上記の上向き面7に形成される屋根形の形状としては、上記の実施形態で示したような断面が逆V字状の頂部を有して、後上がりの上縁79が尖鋭な稜線となる形状のものに限らず、例えば、断面形状の頂部に少し扁平な部分を有した台形状であったり、頂部が円弧状となる断面形状のものであっても良く、要は、この上向き面7A上での泥土の堆積を抑止できるように、泥土を滑落させ得るものであれば、任意の形状を採用することができる。
【0045】
〔別実施形態の3〕
外れ止めガイド7としては、実施の形態で説明したような上向き面7Aを、クローラ走行装置2の進行方向前方側の端部にのみ形成した例を示したが、これに限らず、上記上向き面7Aと同様な屋根形の上向き面7Aを、クローラ走行装置2の進行方向後方側の端部にも形成しても良い。この場合には、クローラ走行装置2のクローラベルト6を逆転駆動した場合における泥土の堆積防止に有効である。
【0046】
〔別実施形態の4〕
外れ止めガイド7の近接規制部Aとして、実施の形態では、外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bを、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度よりも、少し角度の大きいテーパーとなるように傾斜角度を設定したものを示したが、これに限らず、前記外れ止めガイド7の下窄まり状の傾斜を有した両側面B,Bと、左右の芯金突起63の案内面C,Cの傾斜でなすテーパーの角度を同じ角度に設定してもよい。このように同じ角度に設定すると、接当箇所の面積を広くして単位面積当たりの面圧を下げることができるので、接当箇所での摩耗度合いを軽減し得る点での有利さがある。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のクローラ走行装置は、実施形態で示したトラクタの他、コンバインや建設機械などの各種の車両の推進装置として用いることができる
【符号の説明】
【0048】
2 クローラ走行装置
3 駆動スプロケット
4 アイドラホィール
5 転輪
6 クローラベルト
7 外れ止めガイド
7A 上向き面
7B 下向き面
20 トラックフレーム
60 ベルト本体
61 芯金
62 係合用凹部
63 芯金突起
64 転輪軌道面
72 取付部
76 凹入空間
76a 泥抜き孔
77a 前端下縁
79 上縁
A 近接規制部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記クローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置であって、
前記左右一対の芯金突起の間に位置して、前記クローラベルトの外れを防止するための外れ止めガイドを備え、
前記外れ止めガイドの前部の下面側には、前方側ほど前上がり形状となる前端下縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方上方側ほど外広がりとなる舟形の下向き面を備え、
前記外れ止めガイドの前部の上面側には、後方側ほど後上がり形状の上縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の上向き面を備えていることを特徴とするクローラ走行装置。
【請求項2】
外れ止めガイドには、芯金突起の内側側面との接当によって、その外れ止めガイドの下縁がクローラベルトの内周面側に接当することを阻止する近接規制部を設けてある請求項1記載のクローラ走行装置。
【請求項3】
外れ止めガイドは、屋根形の上向き面を備える部分よりも後方側に、上方開放の凹入空間を備え、その凹入空間の底面側には、外れ止めガイドの最下端面から前後方向で外れた位置に、前記凹入空間に連通する泥抜き孔を形成してある請求項1又は2記載のクローラ走行装置。
【請求項4】
外れ止めガイドは、側面視で転輪と重複する位置に上方開放の凹入空間が位置するように配設されている請求項3記載のクローラ走行装置。
【請求項5】
外れ止めガイドの前部の上面側における後上がり形状の上縁の後端側は、この外れ止めガイドをトラックフレームへ取り付けるための取付部に連結されている請求項1〜4の何れか1項記載のクローラ走行装置。
【請求項1】
ゴム材からなるベルト本体に芯金をベルト周方向に一定ピッチで埋設するとともに、各芯金のベルト幅方向中間部位からベルト内周面側に転輪案内用の左右一対の芯金突起を突設し、この芯金突起の横外側箇所に位置するベルト本体内周面に転輪が転動移動する転輪軌道面を形成してあるクローラベルトと、そのクローラベルトにベルト周方向での回転動力を付与する駆動スプロケットと、前記クローラベルトの内周面側を案内するアイドラホィールと、前記転輪とを備えたクローラ走行装置であって、
前記左右一対の芯金突起の間に位置して、前記クローラベルトの外れを防止するための外れ止めガイドを備え、
前記外れ止めガイドの前部の下面側には、前方側ほど前上がり形状となる前端下縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方上方側ほど外広がりとなる舟形の下向き面を備え、
前記外れ止めガイドの前部の上面側には、後方側ほど後上がり形状の上縁を備えるとともに、前端側が先細り形状で、かつ後方下方側ほど外広がりとなる屋根形の上向き面を備えていることを特徴とするクローラ走行装置。
【請求項2】
外れ止めガイドには、芯金突起の内側側面との接当によって、その外れ止めガイドの下縁がクローラベルトの内周面側に接当することを阻止する近接規制部を設けてある請求項1記載のクローラ走行装置。
【請求項3】
外れ止めガイドは、屋根形の上向き面を備える部分よりも後方側に、上方開放の凹入空間を備え、その凹入空間の底面側には、外れ止めガイドの最下端面から前後方向で外れた位置に、前記凹入空間に連通する泥抜き孔を形成してある請求項1又は2記載のクローラ走行装置。
【請求項4】
外れ止めガイドは、側面視で転輪と重複する位置に上方開放の凹入空間が位置するように配設されている請求項3記載のクローラ走行装置。
【請求項5】
外れ止めガイドの前部の上面側における後上がり形状の上縁の後端側は、この外れ止めガイドをトラックフレームへ取り付けるための取付部に連結されている請求項1〜4の何れか1項記載のクローラ走行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−251569(P2011−251569A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124955(P2010−124955)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
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