説明

グミキャンディ様コーティング食品

【課題】可食性センターの表面に形成されるコーティング層がグミキャンディ様の食感を有する新しい食感のコーティング食品を提供すること。
【解決手段】可食性センターの表面にコーティング層を有するコーティング食品であって、前記コーティング層中の組成が、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下のα化澱粉、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下の化学的処理加工澱粉、40.0重量%以上かつ90.0重量%以下の糖質、5.0重量%以上かつ20.0重量%以下の水分であることを特徴とするグミキャンディ様コーティング食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング層を有するコーティング食品に関し、更に詳しくは、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有するグミキャンディ様コーティング食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品或いは医薬品(以下、可食性センターともいう)へのコーティングは多様化している。コーティングの中でも一般的に糖衣とよばれているものは、ハードコーティング、ソフトコーティングと大別される。ハードコーティングとは、可食性センターを回転釜内で転動させながら、これにコーティング用糖質液(以下、単に糖質液という場合がある)を添加してセンター表面に糖質皮膜を形成させた後、乾燥し、この添加と乾燥を繰り返して所望の厚さの糖衣層を形成して糖衣掛け製品を得る。ソフトコーティングとは、ハードコーティングと同様に可食性センターに糖質液を添加してセンター表面に糖質皮膜を形成させた後、糖質を含むコーティング用粉末(以下、単に糖質粉末という場合がある)を散布して、乾燥し、この添加と散布を繰り返して所望の厚さの糖衣層を形成して糖衣掛け製品を製造する。
【0003】
「食感」という観点からみると、ハードコーティングではパリパリ感のあるクランチ性ある糖衣を得られることが特徴であり、一方ソフトコーティングはソフトな食感の糖衣を得られることが特徴である。
【0004】
また、コーティングの1種として近年開発が盛んであるフィルムコーティングが挙げられる。例えば、コーティングされるべき芯材や裸錠に対して、その表面に薄い膜状の物質を形成させるコーティング処理の一つであり、コーティングに用いられる素材に応じ、芯材や裸錠の表面の平滑化、耐水性の付与、欠けの防止、形状維持などの様々な目的で実施されている。素材としては、ヒドロキシメチルセルロースおよび/またはメチルセルロースをベースとしたもの(特許文献1)や、酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した菌体残さからなる酵母細胞壁画分をベースとしたもの(特許文献2)、さらに口どけなど改善したワキシーコーンスターチ由来のヒドロキシアルキル化デキストリン、マルチトール、グリセリン脂肪酸エステルの3成分をベースとしたフィルムコーティングも提案されている(特許文献3)。また、さらに効率化するためアミロース含量をコントロールされた皮膜形成澱粉をベースとしたフィルムコーティングも提案されている(特許文献4)。しかしながら、これらは様々な素材を使用しており様々な目的からの改良は加えられてきたが、食感に関しては全く触れられてはいない。
【0005】
一方では、コーティングにおいて水分をコントロールする研究もなされてきている。例えば、保水剤としてα化澱粉を含有させたチョコレート組成物を被覆するという提案がなされている(特許文献5)。これは芯材からの水分移行を防ぐことが目的であり、理論上、被覆部分の上限の水分値は14%とあるが被覆部分の食感については触れられていない。また、糖蜜漬けフルーツからなる芯材をα化澱粉からなる水分遮断層で被覆する提案や(特許文献6)、澱粉と水溶性のカルシウムを下地にデキストリン、ペクチン酸塩及び水溶性増粘剤をさらにコーティングしゲル化させ安定させるコーティング処理食材の提案がなされている(特許文献7)。これらの提案も同様に、含水した芯材から滲み出しを防ぐことが目的であり、コーティング層部分の食感に関して触れられてはいない。
【0006】
また、新しい試みとしては食感変化を目的としたゲル化をさせるコーティングについての提案がなされている。例えば、カードランを用いた被覆の提案がなされている(特許文献8)。しかしながら、熱ゲル化したカードランは口どけが非常に悪いという問題がある。また、冷菓では、ペクチンとカルシウムを反応させた膜付冷菓の提案(特許文献9)や、クラッシュゲルで被覆するという提案(特許文献10)があるが、いずれも通常は、常温流通の菓子では不可能である。
【0007】
つまり、多様性をもったニーズの中で、常温流通菓子のコーティングに食感の変化が求められているが、いまだかつてグミキャンディ様の食感のような食感変化に富んだコーティングは実現されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−59147号公報
【特許文献2】特開2000−44878号公報
【特許文献3】特開2007−254299号公報
【特許文献4】特表2007−511584号公報
【特許文献5】特許第3760880号公報
【特許文献6】特許第4070911号公報
【特許文献7】特許第4386466号公報
【特許文献8】特開平3−172145号公報
【特許文献9】特公平05−002295号公報
【特許文献10】特許第4132688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、可食性センターの表面に形成されるコーティング層がグミキャンディ様の食感を有する新しい食感のコーティング食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、コーティング層中にα化澱粉、化学的処理加工澱粉と糖質を主成分とし該コーティング層の水分値をコントロールし、加温することで、驚くべきことに、コーティング層がグミキャンディ様の食感となり、新食感のコーティング層を有するコーティング食品を実現するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
本発明の第1は、可食性センターの表面にコーティング層を有するコーティング食品であって、前記コーティング層中の組成が、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下のα化澱粉、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下の化学的処理加工澱粉、40.0重量%以上かつ90.0重量%以下の糖質、5.0重量%以上かつ20.0重量%以下の水分であることを特徴とするグミキャンディ様コーティング食品に関する。
ここで、本発明においてグミキャンディ様コーティング食品とは、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有するコーティング食品を意味する。
【0012】
本発明の第2は、前記のグミキャンディ様コーティング食品の製造方法であって、可食性センターに、糖質をベースとした溶液を掛けた後、α化澱粉と化学的処理加工澱粉と糖質粉末とを含む混合粉末を掛け、加温を行いゲル化させることを特徴とするグミキャンディ様コーティング食品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るグミキャンディ様コーティング食品は、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有することで、新しい食感のコーティング食品を提供することができる。また、本発明に係るグミキャンディ様コーティング食品の製造方法により、可食性センターに対し、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有するグミキャンディ様コーティング層の形成が可能となる。さらに、グミキャンディ様コーティング食品の可食性センターを選択し組み合わせることで、食感、味のバリエーションを広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るグミキャンディ様コーティング食品は、可食性センターの表面にコーティング層を有するコーティング食品であって、前記コーティング層中の組成が、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下のα化澱粉、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下の化学的処理加工澱粉、40.0重量%以上かつ90.0重量%以下の糖質、5.0重量%以上かつ20.0重量%以下の水分であることを特徴とする。
【0015】
前記可食性センターとしては、特に限定はなく、チューインガム、キャンディー、タブレット、グミキャンディ、チョコレート、打錠菓子及び焼き菓子等の食品、並びに錠剤、丸剤及びカプセル剤等の医薬品を使用することができる。また、その形状も任意のものを採用することができる。
【0016】
本発明では、コーティング層を構成する成分として、糖質に加えて、特にα化澱粉と化学的処理加工澱粉とを含む。これらの特定の澱粉を採用することで、グミキャンディ様の食感を有するコーティング層が形成される理由は必ずしも明らかではないが、α化澱粉の加温によるゲル化と、化学的処理加工澱粉の保水性とが相俟って、コーティング層が適度な弾力性を有するグミキャンディ様の食感を有することになると考えられる。尚、化学的処理加工澱粉は主に保水性に寄与するが、ゲル化して弾力性付与に寄与する場合もある。
これら以外の未加工或いは加工済みの澱粉を用いても、グミキャンディ様の食感は得られない。
【0017】
前記α化澱粉は、既に糊化しているため加温により容易にゲル化する。このゲル化したα化澱粉が適度の弾力性を有するグミキャンディ様の食感を付与することに寄与する。当該α化澱粉としては、公知のもの、市販のものを適宜選択して用いることができる。また、各種由来の澱粉をα化して使用しても良い。具体的には、トウモロコシ由来のα化澱粉(例えば、デントコーンα化澱粉、ワキシーコーンα化澱粉)、馬鈴薯由来のα化澱粉(例えば、ポテトα化澱粉)、タピオカ由来のα化澱粉(例えば、タピオカα化澱粉)、小麦由来のα化澱粉(例えば、小麦α化澱粉)、米由来のα化澱粉(例えば、米α化澱粉)などを使用することができるが、これらに限定されるわけではない。また一種のα化澱粉を単独で使用してもよいし、2種以上混合使用することもできる。
本発明では、コーティング層中のα化澱粉の含有量が、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下である。1.0重量%未満になると弾力感のあるグミキャンディ様の食感は得られず、20.0重量%より大きくなると非常に硬い膜となりグミキャンディ様の食感を得ることはできない傾向にある。
【0018】
前記化学的処理加工澱粉は、未処理の澱粉に化学的な加工処理を施して親水性および疎水性が調整されており、水分が膨潤して保水性を有する。この保水性が、適度の弾力性および柔軟性の付与に寄与する。
本発明において化学的処理加工澱粉とは、澱粉質原料が化学的に処理された加工澱粉を意味し、物理的あるいは酵素的に処理された加工澱粉は含まれない。化学的処理とは、各種の化学物質を用いて澱粉を構成するグルコース鎖を化学的に修飾する、または澱粉分子間もしくは分子内架橋処理を行うことを意味する。このような化学的処理加工澱粉としては、コーティング層が所望のグミキャンディ様の食感を有するように、種々の化学的処理を行って得られた澱粉であれば良く、具体的には、リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酸化澱粉、などが挙げられる。より具体的には、近年、食品添加物として認可された、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉が挙げられる。またこれらは、単独で使用しても良いし、2種以上混合使用しても良い。
本発明では、コーティング層中の化学的処理加工澱粉の含有量が、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下である。1.0重量%未満になると十分な保水性が得られず硬い膜となり柔軟性のあるグミキャンディ様の食感は得られず、20.0重量%より大きくなると加工澱粉独特のぬめりのある食感となりグミキャンディ様の食感を得ることができない傾向にある。
尚、以下では、当該化学的処理加工澱粉を単に加工澱粉と略称する場合がある。
【0019】
前記糖質としては、特に制限はなく、公知のものを各種使用することができる。例えば、砂糖、水飴、糖アルコールである還元パラチノース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、エリスリトール、マンニトール、還元水飴などが挙げられる。もっとも、これらに限定されることはない。また、糖質は、一種類のものを単独で使用しても良いし、複数種のものを適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明では、コーティング層中の糖質の含有量が、40.0重量%以上かつ90.0重量%以下である。これにより、甘味を付与することができ、グミキャンディ様の食感となる。
【0020】
本発明では、コーティング層の水分の含有量(水分値)が5.0重量%以上かつ20.0重量%以下である。これにより、グミキャンディ様の弾力やジューシー感を得ることができる。また、水分値は、減圧乾燥法やカールフィッシャー法により測定することができる。
【0021】
本発明では、コーティング層に、上記の各種成分の他、本発明の効果が得られる範囲で、結合剤、酸味料、果汁成分、甘味料、香料、栄養成分等の各種添加剤が含まれていても良い。
【0022】
前記コーティング層の厚みは、特に限定はなく、可食性センターとの組み合わせによって、目的の食感に合わせて厚みを調整すればよい。このように、所望の可食性センターを選択し、所望の厚みのコーティング層と組み合わせることで、食感、味のバリエーションを広げることができる。また、グミキャンディ様コーティング層の上に、さらに他の様々なコーティングが可能であるため、本発明によるグミキャンディ様の食感を有するコーティング層との組み合わせで、さらに食感変化に富んだコーティング食品を提供できる。
【0023】
次に、本発明に係るグミキャンディ様コーティング食品の製造方法について、一好適例により説明する。
本発明のグミキャンディ様コーティング食品は、可食性センターに、糖質をベースとした溶液(以下、コーティング用糖質液という。)を掛けた後、α化澱粉と化学的処理加工澱粉と糖質粉末とを含む混合粉末(以下、コーティング用粉末という。)を掛け、加温を行いゲル化させることで得られるが、より具体的には以下の通りである。
【0024】
本発明では、先ず、所望の可食性センターに、コーティング用糖質液を掛ける。
該コーティング用糖質液には、前述の各種糖質が単独で、または、複数組合せて用いられる。コーティング用糖質液中の糖質の含量は、40〜90重量%、好ましくは50〜80重量%、さらに好ましくは60〜70重量%である。尚、コーティング用糖質液の残部は水である。
またコーティング用糖質液には、コーティング用糖質液をセンター表面に均一にコーティングさせることで表面を滑らかにする目的のため、結合剤を含むことができる。当該結合剤としては特に限定はないが、食品に一般的に使用される味質の観点から、アラビアガム、ゼラチン、プルランが好ましい。コーティング用糖質液中の結合剤の含量は、1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。
またコーティング用糖質液には、コーティング層の形成を阻害しない範囲で、酸味料、果汁、甘味料、香料、栄養成分等を添加することも可能である。
【0025】
可食性センターに、コーティング用糖質液を掛ける方法としては、公知の方法を用いて行えばよい。例えば、糖衣パンの回転容器内に、可食性センターを入れ、当該容器を回転させながら、10〜80℃で送風などを行い、コーティング用糖質液を掛けてゆく。
【0026】
次に、コーティング用糖質液が掛けられた可食性センターに、コーティング用粉末を掛ける。本発明では、このようにα化澱粉と加工澱粉を別途粉末状で添加する。このような方法で特定の澱粉を添加することにより、最終的に可食性センターの表面に滑らかなで均一なコーティング層を形成することが可能となる。一方、これらの特定の澱粉を前記のコーティング用糖質液に予め添加すると、粘度が著しく上昇し、可食性センターの表面にコーティング層を形成することが極めて困難となる。
本発明の製造方法では、コーティング用糖質液に含まれる水分が、特定の澱粉を含むコーティング用粉末に移行して、前記特定の澱粉が膨潤し、加温によるゲル化とともに一体化することでグミキャンディ様の食感を有するコーティング層が、可食性センターの表面に滑らかで均一に形成されるものと考えられる。
【0027】
該コーティング用粉末に含まれる糖質としては、粉末として使用可能なものであれば制限なく使用することができる。例えば、砂糖、糖アルコールである還元パラチノース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、エリスリトール、マンニトールなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、一種の糖質を単独で使用しても良いし、複数種の糖質を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
また、前記コーティング用粉末に含まれるα化澱粉および加工澱粉としては、上述したものを用いればよい。またコーティング用粉末に含まれる糖質、α化澱粉、加工澱粉等の含有量は特に限定はなく、ゲル化した後のコーティング層中で、α化澱粉が1.0重量%以上かつ20.0重量%以下であり、かつ加工澱粉が1.0重量%以上かつ20.0重量%以下となるように適宜調整すればよい。
当該コーティング用粉末には、コーティング層の形成を阻害しない範囲で、粉末として使用可能な酸味料、果汁粉末、甘味料、香料、栄養成分等を適宜添加してもよい。
さらに、コーティング用粉末の粒度としては、特に限定はないが、コーティング用粉末を掛けた際に、可食性センター表面に掛けられたコーティング用糖質液の層の表面ないし該層中に均一に分散させる観点から、100メッシュ以下が望ましい。
【0029】
コーティング用粉末を掛ける際の温度は、特に限定はないが、コーティング層をなめらかにするという観点から、10〜40℃が望ましい。尚、温度調整を行う場合は、コーティング用粉末の飛散を防止するため送風以外の方法で行うのが望ましい。
【0030】
上記のようにして、所望量のコーティング用粉末を添加した後、50〜80℃で送風などにより加温し、α化澱粉(場合により加工澱粉)をゲル化させて、グミキャンディ様コーティング食品を得ることができる。この際の加温時間は、コーティング層の水分値が所定範囲になるように適宜調節すれば良いが、概ね1〜15分である。また、この際コーティング層が乾燥される。
【0031】
なお、可食性センターにコーティング用糖質液を掛けた後、コーティング用粉末を掛け、加温を行いゲル化させる工程は、コーティング層の各組成の含有量を調整するため、適宜繰り返してもよい。
【0032】
また、使用するコーティング用粉末とコーティング用糖質液との重量比は、特に限定はないが、コーティング用粉末とコーティング用糖質液を両者とも均一にいきわたらせるため、全体として4:1〜1:4となるようにするのが好ましい。
【0033】
以上のようにして形成されたコーティング層は、可食性センターの表面に滑らかで均一に形成されており、また適度な弾力性を有することから、グミキャンディ様の食感を有することとなる。そのため、可食性センターの表面に当該コーティング層を有するグミキャンディ様コーティング食品は、可食性センターとの組み合わせにより、様々な食感、味を有することとなる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお、実施例中の「%」、「部」は、それぞれ「重量%」、「重量部」を意味する。
【0035】
(実施例1)
可食性センターとして表1に示す組成のタブレット1kg(単重0.2g)をレボーリングパンに入れ、パンを回転させながら、下記表2に示す配合のコーティング用糖質液(ブリックス(Bx.)70)を20g添加して、可食性センターの表面にコーティング用糖質液を掛けた後、下記表3に示すコーティング用粉末10gを添加して(表3中、粉糖とは、100メッシュ以下の砂糖を意味する。他の表につき、以下同じ。)、表面にコーティング用糖質液が掛けられた可食性センターにコーティング用粉末を掛けた。その後、5〜10分間、60℃の送風を行って加温してα化澱粉(α化トウモロコシ澱粉)と加工澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)をゲル化させるとともに、表面を乾燥した。
引き続き、同条件でコーティング用糖質液、コーティング用粉末の添加、加温によるゲル化(乾燥)することを10回繰り返して、タブレットの表面にコーティング層を形成した。
【0036】
当該コーティング層中の組成は、5.0重量%のα化澱粉、5.0重量%の加工澱粉、76.7重量%の糖質、水分値が10.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、常温において、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有した新しい食感のコーティング食品であった。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
(実施例2)
表3に示すコーティング用粉末10gに替えて、表4に示すコーティング用粉末5gを用い、60℃での加温時間を短くして約1分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、19.4重量%のα化澱粉、1.6重量%の加工澱粉、55.9重量%の糖質、水分値が20.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、常温において、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有した新しい食感のコーティング食品であった。
【0041】
【表4】

【0042】
(実施例3)
表3に示すコーティング用粉末10gに替えて、表5に示すコーティング用粉末5gを用い、60℃での加温時間を短くして約1分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、1.6重量%のα化澱粉、19.4重量%の加工澱粉、55.9重量%の糖質、水分値が20.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、常温において、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有した新しい食感のコーティング食品であった。
【0043】
【表5】

【0044】
(実施例4)
60℃での加温時間を長くして約15分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、5.3重量%のα化澱粉、5.3重量%の加工澱粉、80.9重量%の糖質、水分値が5重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、常温において、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有した新しい食感のコーティング食品であった。
【0045】
(実施例5)
60℃での加温時間を短くして約1分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、4.4重量%のα化澱粉、4.4重量%の加工澱粉、67.3重量%の糖質、水分値が20重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、常温において、コーティング層がグミキャンディ様の食感を有した新しい食感のコーティング食品であった。
【0046】
(比較例1)
表3に示すコーティング用粉末10gに替えて、表6に示すコーティング用粉末10gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、0.4重量%のα化澱粉、5.3重量%の加工澱粉、80.9重量%の糖質、水分値が10.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、コーティング層に十分なゲル化が得られずグミキャンディ様とは異なる食感のコーティング食品であった。
【0047】
【表6】

【0048】
(比較例2)
表3に示すコーティング用粉末10gに替えて、表7に示すコーティング用粉末10gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、5.3重量%のα化澱粉、0.4重量%の加工澱粉、80.9重量%の糖質、水分値が10.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、コーティング層が強固なゲル化によって硬くなりグミキャンディ様とは異なる食感のコーティング食品であった。
【0049】
【表7】

【0050】
(比較例3)
表3に示すコーティング用粉末10gに替えて、表8に示すコーティング用粉末10gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、21.5重量%のα化澱粉、4.0重量%の加工澱粉、61.8重量%の糖質、水分値が10.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、コーティング層が強固なゲル化によって硬くなりグミキャンディ様とは異なる食感のコーティング食品であった。
【0051】
【表8】

【0052】
(比較例4)
表3に示すコーティング用粉末10gに替えて、表9に示すコーティング用粉末10gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、4.0重量%のα化澱粉、21.5重量%の加工澱粉、61.8重量%の糖質、水分値が10.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、コーティング層が加工澱粉によるぬめりが発生し食感としてグミキャンディ様とは異なる食感のコーティング食品であった。
【0053】
【表9】

【0054】
(比較例5)
表2に示す配合のコーティング用糖質液20gに替えて、同10gを添加し、表3に示す配合のコーティング用粉末10gに替えて、同40gを添加し、60℃での加温時間を長くして約15分にしたこと以外は、実施例1と同様にしてタブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、9.8重量%のα化澱粉、9.8重量%の加工澱粉、75.7重量%の糖質、水分値が4.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、コーティング層が硬くグミキャンディ様の食感とは異なる食感のコーティング食品であった。
【0055】
(比較例6)
表3に示すコーティング用粉末10gに替えて、同5gを用い、60℃での加温時間を短くして約1分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、2.9重量%のα化澱粉、2.9重量%の加工澱粉、69.4重量%の糖質、水分値が21.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、コーティング層にグミキャンディ様の弾力がなくグミキャンディ様の食感とはことなる食感のコーティング食品であった。
【0056】
(比較例7)
表3に示すコーティング用粉末10gに替えて、表10に示すコーティング用粉末10gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、タブレットの表面にコーティング層を形成した。当該コーティング層中の組成は、5.0重量%のα化澱粉、5.0重量%の未加工の米澱粉、76.7重量%の糖質、水分値が10.0重量%であった。
こうして得られたコーティング食品は、タブレットをセンターとし、常温において、コーティング層が通常のソフトコーティングと何ら変わらない食感を有したコーティング食品であった。
【0057】
【表10】

【0058】
(比較例8)
表2に示す配合のコーティング用糖質液200gと、表3に示す配合のコーティング用粉末100gとを混合し、さらに加水溶解して、最終的にBx.70となるようにコーティングシロップを調製した。表1に示す組成のタブレット1kg(単重0.2g)をレボーリングパンに入れ、パンを回転させながら、前記コーティングシロップを掛け、60℃の送風を行ったところ、べたつきが発生し、コーティング層を形成することが不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
近年、食品の食感や味において様々なニーズが求められている。このような状況下において、本発明は、各種食品の表面にグミキャンディ様の食感を有するコーティング層の形成を実現し、可食性センターを選択することや、他のコーティング層をさらに形成することで、様々な食感の組み合わせが可能となり、食感、味のバリエーションを広げることができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性センターの表面にコーティング層を有するコーティング食品であって、前記コーティング層中の組成が、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下のα化澱粉、1.0重量%以上かつ20.0重量%以下の化学的処理加工澱粉、40.0重量%以上かつ90.0重量%以下の糖質、5.0重量%以上かつ20.0重量%以下の水分であることを特徴とするグミキャンディ様コーティング食品。
【請求項2】
請求項1記載のグミキャンディ様コーティング食品の製造方法であって、可食性センターに、糖質をベースとした溶液を掛けた後、α化澱粉と化学的処理加工澱粉と糖質粉末とを含む混合粉末を掛け、加温を行いゲル化させることを特徴とするグミキャンディ様コーティング食品の製造方法。


【公開番号】特開2012−10648(P2012−10648A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150461(P2010−150461)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】