説明

グラウンド強化構造および電子機器

【課題】プリント基板を金属製の電子機器筐体に導電接続するグラウンド強化構造を提供する。
【解決手段】電子機器筐体3に挿入されたプリント基板1の金属板2を、電子機器筐体3のスリット7から挿入された導電性板バネ5bに接触させるグラウンド強化構造において、導電性のスリットカバー5aを導電性板バネ5bと一体化する。電子機器筐体3内へスリット7から導電性板バネ5bを挿入し、スリット7を覆うスリットカバー5aを電子機器筐体3の表面に固定して導電接続することで、スリット開口における電磁波ノイズ発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器から発生する電磁波ノイズの抑制のために、電子機器の筐体とプリント基板を導電接続するグラウンド強化構造および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高速化、高性能化などにより、電子機器からの電磁波ノイズ放射による他の電子機器への影響が問題になっている。この電磁波ノイズ放射による他の電子機器への影響はEMI(Electro Magnetic Interference )と呼ばれ、主に無線機器、通信機器の受信障害や、電子機器の誤動作を引き起こす。そのため、30MHz〜1GHz、あるいは30MHz〜2GHzの周波数帯域において、電子機器からの電磁波ノイズ放射の規制を行っており、電子機器製造メーカはこの規制に適合するように製品を設計製造する必要がある。
【0003】
そこで、電子機器からの電磁波ノイズ抑制のために、特許文献1に開示されたように、電子機器の金属筐体のシールド性能を高めるための導電性の弾性接触部材(板バネ)やガスケットを筐体に装着することが知られている。
【0004】
また、近年では、ユーザーの多様な希望に対応できるように、ユーザーが目的とする機能を選択し、その機能を満たすために電子機器のプリント基板の交換・増設を行うことや、プリント基板のメモリを増設することのできる電子機器が増えており、図5に示すようなグラウンド強化構造が提案されている。これは、交換・増設用のプリント基板501にスペーサを介して金属板502を接続し、そのグラウンド強化を、電子機器筐体503のプリント基板挿入ボックス504の内部の金属部分と、プリント基板501に接続された金属板502とを、ガスケットや板バネ等の弾性接触部材からなるグラウンド強化部材505によって導電接続することにより行うものである。しかしながら、電子機器筐体503のプリント基板挿入ボックス開口506は、交換・増設用のプリント基板501の基板形状に合わせて細長く、特に、事務機などにおいては、交換・増設用の基板サイズが大きく、プリント基板挿入ボックス504の奥行きは長くなることも多い。そのためプリント基板挿入ボックス開口506から、プリント基板挿入ボックス504の内部に板バネ等からなるグラウンド強化部材505を挿入して固定することは作業性が悪く、組立効率が悪化しやすい。さらに、プリント基板501を交換・挿入など行う作業中に、グラウンド強化部材505には、特に挿入方向に大きな負荷がかかるため、挿入方向の負荷を受けてもグラウンド強化部材505がはずれないようにしなければならない。そのために、グラウンド強化部材505には、取り付けやすさと堅牢さの両立が求められる。
【0005】
そこで、プリント基板に接続された金属板のほうに板バネ等からなるグラウンド強化部材を取り付けることにより、プリント基板のグラウンド強化を達成する方法が考えられるが、この方法では、交換・増設用のプリント基板すべてに板バネ等を取り付ける必要があるため、部品の数が増えてコストの上昇を招く。また、交換・増設用のプリント基板に取り付けられた板バネ等をユーザーが触れて、ユーザーがケガをする危険性や、板バネ等の接触性が劣化するおそれがある。
【特許文献1】特開2003−179376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、図6に示すように、電子機器筐体503のプリント基板挿入ボックス504の側面にスリット507を形成し、そこから板バネ等のグラウンド強化部材505を挿入し、固定することにより、交換・増設用のプリント基板501との導電接続をとり、プリント基板501のグラウンド強化を行う構成が提案されている。この構成では、プリント基板挿入ボックス504の側面のスリット507にグラウンド強化部材505を差し込み、プリント基板501に接続された金属板502に接触させる。グラウンド強化部材505は、電子機器筐体503の表面にリベットなどで簡単にしかも堅牢に固定できるので、組立効率も良好で、コストアップの問題も解決できる。
【0007】
しかしながら、電子機器筐体503にスリット507を形成すると、グラウンド強化部材505はスリット507を跨いで、その表側と裏側で導電接続されているが、スリット507の対向する開口縁(長辺)同士は導電接続されていない。そのため、スリット507の両側で電位差が発生することにより、スリット507がアンテナとして働き、電磁波ノイズ抑制特性が大幅に悪化してしまう。
【0008】
これを回避するためにスリット幅を小さくすると、グラウンド強化部材の接触面積が減少し、十分なグラウンド強化ができなくなってしまう。また、スリットを小さくして、数を増やす方法も考えられるが、グラウンド強化部材を取り付ける箇所が増えてしまい、組立工数の増大がコストアップにつながる。
【0009】
本発明は上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、グラウンド強化部材の組み付けが簡単であって、電子機器の筐体のシールド特性も良好であるグラウンド強化構造および電子機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のグラウンド強化構造は、導電性の筐体と、前記筐体内に組み付けられるプリント基板と、前記筐体に前記プリント基板を導電接続するグラウンド強化部材と、前記グラウンド強化部材を前記筐体の外側から組み込むために前記筐体に配設された開口部と、前記筐体の前記開口部を横切って前記筐体の表面に導電接続する導体部材と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のグラウンド強化構造によれば、電子機器の組立作業性を損なうことなく、電子機器内部のプリント基板のグラウンド強化を実現するとともに、グラウンド強化部材を組み込むために筐体に形成されたスリット等の開口部からのノイズ発生を効果的に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は実施例1による電子機器のグラウンド強化構造を示すもので、同図の(a)はプリント基板1および金属製(導電性)の筐体である電子機器筐体3と、グラウンド強化部5のスリットカバー5aを取りはずした状態を示す模式斜視図、(b)は(a)のグラウンド強化部5と電子機器筐体3のスリット7等を示す部分立面図、(c)は(b)の内部構成を示す部分断面図である。
【0014】
電子機器に対して交換・増設を行うプリント基板1は、導電性スペーサ1aを介して接続された金属板2を有し、電子機器筐体3内のプリント基板挿入ボックス4に挿入される。
【0015】
電子機器筐体3はプリント基板挿入ボックス4の側面に開口部であるスリット7を有し、グラウンド強化部5は、導体部材であるスリットカバー5aと、柔軟性のあるグラウンド強化部材である導電性板バネ5bの2つの部分が一体化され、リベット5cによって電子機器筐体3の表面に固定されている。なお、図1の(a)は、説明を簡単にするためにスリットカバー5aを省略したものである。
【0016】
グラウンド強化部5の導電性板バネ5bにより、プリント基板1が金属板2を介して電子機器筐体3と導電接続されるとともに、スリットカバー5aにより、電子機器筐体3のスリット7の長辺側が互いに導電接続され、これによって、スリット7からの電磁波ノイズの放射を抑制している。このグラウンド強化部5の電子機器への組み付けは、グラウンド強化部5の導電性板バネ5bを電子機器筐体3のスリット7に差し込み、スリットカバー5aでスリット7を覆うように配置し、電子機器筐体3の表面にリベット5cで固定するだけでよい。
【実施例2】
【0017】
図2は実施例2によるグラウンド強化構造を示すもので、グラウンド強化部材15は、導体部であるスリットカバー部15aを、グラウンド強化部材15の本体部である導電性板バネ部15bと一体的に設けたバネ部材であり、電子機器筐体3のスリット7から導電性板バネ部15bを内部に挿入し、電子機器筐体3の内部のプリント基板1に接続された金属板2に接触させてグラウンド強化を行う。また、グラウンド強化部材15のスリットカバー部15aによってスリット7の表面側を導電接続することにより、スリット7からの電磁波ノイズ放射を抑制する。
【0018】
図2の(a)に示すように、スリット7からグラウンド強化部材15が組み付けられ、(b)に示すように、グラウンド強化部材15のスリットカバー部15aがリベット15cによって電子機器筐体の表面に固定され、(c)に示すように、導電性板バネ部15bが金属板2に導電接続される。
【0019】
本実施例では、電子機器内でプリント基板1のグラウンド強化を行うためのグラウンド強化部材15を電子機器筐体3の表側にリベット15cによって固定し、電子機器筐体3に設けられたスリット7の長辺側を複数のスリットカバー部15aによって導電接続する。
【0020】
グラウンド強化部材15は、このようにスリット7の開口幅を横切って導電接続するスリットカバー部15aと導電性板バネ部15bの2つの部分が一体化されており、スリット7を通して内部へ挿入された導電性板バネ部15bにより金属板2と電子機器筐体3を導電接続させてプリント基板1のグラウンド強化を行うとともに、スリットカバー部15aによりスリット7の表面側を導電接続することで、電子機器筐体3からの電磁波ノイズ放射を抑制している。
【0021】
グラウンド強化部材15の電子機器筐体3への組み付けは、グラウンド強化部材15の導電性板バネ部15bをスリット7に差し込み、スリットカバー部15aがスリット7を跨ぐように配置して、電子機器筐体3にリベット15cで固定するだけでよい。
【0022】
なお、リベット15cの代わりに、ビス、溶接、導電性接着剤など導電接続をとれるものを用いてもよい。また、固定のため一部分のみ接着剤を用い、接着剤を用いていない部分の接触で導電接触する方法でもよい。その他の点は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0023】
図3は実施例3によるグラウンド強化部材25を示す。これは、グラウンド強化部材25を電子機器筐体3に固定するための係止手段であるクリップ形状部25dを付加したものである。図3の(a)はスリット7を跨ぐように固定されたグラウンド強化部材25を示す部分立面図、(b)はグラウンド強化部材25のクリップ形状部25dを示す部分断面図、(c)はグラウンド強化部材25の導電性板バネ部25bを示す部分断面図、(d)は導体部であるスリットカバー部25aを示す部分断面図である。
【0024】
本実施例においては、電子機器筐体3に形成されたスリット7の長辺側を導電接続するスリットカバー部25aをリベット25cによって電子機器筐体3に固定し、スリットカバー部25aと、柔軟性のある導電性板バネ部25bと、スリット7の開口縁に係止するクリップ形状部25dの3つの部分が一体化されてグラウンド強化部材25を構成している。
【0025】
スリット7を通した導電性板バネ部25bにより金属板2と電子機器筐体3が導電接続されて、プリント基板1のグラウンド強化を行い、リベット25cとクリップ形状部25dによってグラウンド強化部材25を電子機器筐体3に固定するとともに、スリット7の表面側をスリットカバー部25aによって導電接続し、電子機器筐体3からの電磁波ノイズ放射を抑制している。
【0026】
グラウンド強化部材25の電子機器筐体3への組み付けは、グラウンド強化部材25の導電性板バネ部25bをスリット7に差し込み、スリットカバー部25aをスリット7にかぶせて一方の開口縁にクリップ形状部25dを係止させ、スリット7の他方の開口縁にスリットカバー部25aをリベット25cによって固定するだけでよい。リベット留めがスリットの片側のみで済むため、組立効率を向上させることができる。その他の点は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0027】
図4は実施例4によるグラウンド強化部材35を示すもので、電子機器の放射電磁波規制値が1GHzまでの場合において、電子機器筐体に形成された開口長A=20cmのスリット7から挿入されたグラウンド強化部材35の導電性板バネ部35bを、電子機器内部のプリント基板に接続された金属板に接触させてグラウンド強化を行い、かつ、グラウンド強化部材35のスリットカバー部35aによってスリット7の表面側を導電接続する。
【0028】
本実施例によるグラウンド強化部材35は、電子機器筐体に形成された開口長20cmのスリット7から電子機器筐体内に挿入される導電性板バネ部35bと、スリットカバー部35aを一体的に設けたバネ部材であり、リベット35cによって電子機器筐体に固定される。スリット7がアンテナとして働く共振周波数は、スリット7の開口長さAで決まるもので、本実施例では開口長Aが20cmであることから、共振周波数は長さ20cmが半波長となる周波数750MHzである。従って、放射電磁波規制値が周波数1GHzまでの場合には問題となる可能性がある。
【0029】
そこで、周波数1GHzにおいて半波長共振する長さ15cmより、スリット7の実質的な開口長を短くすれば、スリット共振による電磁波ノイズの放射を抑制できる点に着目して、開口長20cmのスリット7をグラウンド強化部材35のスリットカバー部35aによって実質的な開口長15cm未満に分割する。すなわち、スリット7の長辺を2分割するようにグラウンド強化部材35のスリットカバー部35aを配置し、リベット35c等に電子機器筐体に固定することにより、実質的なスリット開口長を約10cmとする。これによって、スリット7の共振周波数は1.5GHzとなり、電子機器筐体が1GHz以下で共振しないように構成することができる。その他の点は実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1を示すもので、(a)はプリント基板と電子機器筐体を示す模式斜視図、(b)は(a)のグラウンド強化部を示す部分立面図、(c)は(b)の断面を示す部分断面図である。
【図2】実施例2を示すもので、(a)はグラウンド強化部材を示す部分立面図、(b)はグラウンド強化部材のスリットカバー部を示す部分断面図、(c)はグラウンド強化部材の導電性板バネ部を示す部分断面図である。
【図3】実施例3を示すもので、(a)はグラウンド強化部材を示す部分立面図、(b)はグラウンド強化部材のクリップ形状部を示す部分断面図、(c)はグラウンド強化部材の導電性板バネ部を示す部分断面図、(d)はグラウンド強化部材のスリットカバー部を示す部分断面図である。
【図4】実施例4によるグラウンド強化部材を示す部分立面図である。
【図5】一従来例を示す図である。
【図6】別の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 プリント基板
2 金属板
3 電子機器筐体
4 プリント基板挿入ボックス
5 グラウンド強化部
5a スリットカバー
5b 導電性板バネ
7 スリット
15、25、35 グラウンド強化部材
15a、25a、35a スリットカバー部
15b、25b、35b 導電性板バネ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の筐体と、前記筐体内に組み付けられるプリント基板と、前記筐体に前記プリント基板を導電接続するグラウンド強化部材と、前記グラウンド強化部材を前記筐体の外側から組み込むために前記筐体に配設された開口部と、前記筐体の前記開口部を横切って前記筐体の表面に導電接続する導体部材と、を備えていることを特徴とするグラウンド強化構造。
【請求項2】
導電性の筐体と、前記筐体内に組み付けられるプリント基板と、前記筐体に前記プリント基板を導電接続するグラウンド強化部材と、前記グラウンド強化部材を前記筐体の外側から組み込むために前記筐体に配設された開口部と、を有し、前記グラウンド強化部材が、前記筐体の前記開口部を横切って前記筐体の表面に導電接続する導体部を備えていることを特徴とするグラウンド強化構造。
【請求項3】
前記グラウンド強化部材が、前記筐体の前記開口部の開口縁に係止する係止手段を備えていることを特徴とする請求項2記載のグラウンド強化構造。
【請求項4】
前記グラウンド強化部材の前記導体部によって、前記開口部の開口長が電磁波ノイズ波長の1/2以下に分断されていることを特徴とする請求項2または3記載のグラウンド強化構造。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項記載のグラウンド強化構造を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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