説明

グラジエント分析における分析手段への送液方法、及び送液装置

【課題】 液体クロマトグラフ装置を用いたグラジエント分析において、微小流量であっても正確な組成変化を実現するための送液方法を提供すること。
【解決の手段】 グラジエント作成装置を用いて、分析手段へ経時的に異なる組成の溶離液を送液する際、
流路切替手段により、グラジエント作成カラムと前記混合手段により混合された溶離液が流れる流路とを接続し、前記グラジエント作成カラムの長さ方向に沿って前記混合手段により混合された溶離液を収容する工程、及び
前記流路切替手段により、前記グラジエント作成カラムと前記分析手段に接続されている流路とを接続し、前記グラジエント作成カラムに収容された溶離液を前記工程によって溶離液を収容する方向とは逆の方向に前記分析手段へ送液する工程により送液することで、前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グラジエント分析において、分析手段へ経時的に異なる組成の溶離液を送液する方法、及び送液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ装置における溶離液の送液用ポンプとしては、使い勝手のよさと送液の安定性のよさからプランジャ式ポンプがよく用いられる(特許文献1)。
【0003】
一般的なプランジャ式ポンプの構造を図1から3に示す。プランジャ式ポンプ(10)はチャンバ(11)、プランジャ(12)、入口側チェック弁(13)、出口側チェック弁(14)で構成される(図1)。入口側チェック弁(13)及び出口側チェック弁(14)は、それぞれ下からシート(15)、ボール(16)の順に構成される(図2及び3)。ボール(16)とシート(15)が密着した状態では、液体は通過できない(図2(b)、図3(b))。
【0004】
液体を吸引する工程では(図1(a))は、プランジャ(15)は右方向に移動する。これにより、チャンバ(11)内は陰圧状態になるため、入口側チェック弁(13)のボール(16)は上方向に持ち上がり開放状態となり(図2(a))、出口側チェック弁(14)のボール(16)は重力により下がりシート(15)に密着し閉止状態となって(図3(b))、液体がチャンバ(11)内に吸引される。液体を吐出する工程では(図1(b))は、プランジャ(12)は左方向に移動する。これにより、チャンバ(11)内は加圧になるため、入口側チェック弁(13)のボール(16)が下がり、シート(15)に密着し閉止状態となり(図2(b))、出口側チェック弁(14)のボール(16)は上方向に持ち上がり開放状態となって(図3(a))、チャンバ(11)内の液体が吐出される。前記吸引工程、吐出工程を繰り返すことで、連続的に液体が流れる。
【0005】
液体クロマトグラフィでは、1種類の溶離液で分析を行なうアイソクラティック溶出法と2種類以上の溶離液組成を変化させて分析を行なうグラジエント溶出法がある。
【0006】
アイソクラティック溶出法では1つの溶離液を1つのポンプで一定の流量で送液を行なう。そのため、毎分数から数十μL程度の流量であっても、プランジャ式ポンプを用いて安定的に送液することができる。
【0007】
一方、グラジエント溶出法では溶離液の数だけポンプを配して、総量を一定に保ち分析を行なう。2種類の溶離液を使用した場合は、ポンプA(溶離液A)とポンプB(溶離液B)の流量を変化させ、組成に変化をもたせる。例えば、毎分1.00mLで、溶離液A:100%(溶離液B:0%)から溶離液A:0%(溶離液B:100%)のグラジエントを行なう場合、ポンプAは毎分1.00mLから徐々に流量を下げ、最終的に停止する。逆にポンプBは停止状態から徐々に流量を上げていき、最終的には、毎分1.00mLで送液される。ポンプA、ポンプBの総量は常に毎分1.00mLである(図4)。
【0008】
プランジャ式ポンプは、概ね毎分100μL以上の流量では、優れたグラジエント特性を有するが、流量が低くなるにつて、特性が悪くなる傾向がある。その理由として、流量が低いほど、プランジャ(11)の移動速度が遅くなり、チェック弁(15)内のボール(16)の動作が緩慢になるためである。特に、停止状態から流量を上げて行く側のポンプ(前記例ではポンプB)は、グラジエント開始時の動作が不安定になる。図5に模式図を示す。ポンプBは、停止状態から流量を徐々に上げるため、チャンバ(11)内の圧力が、ボール(16)を押し上げるに必要な圧力に達するまで溶離液は流れない。一方、一定送液状態から流量を下げて行く側のポンプ(前記例ではポンプA)は、グラジエント終了時まで動作は安定である(図5(a))。そのため、特にグラジエント開始時に、設定値からの組成及び総流量の乖離が起こる。また、その乖離度合いも変化することから、グラジエントの再現性に大きな影響を与える(図5(b))。グラジエント分析の際、グラジエント開始時の組成および総流量が不安定になると、その後の分析全体に影響を及ぼす(図5(c))。
【0009】
液体クロマトグラフ装置における溶離液の送液用ポンプの別の態様としては、シリンジ式ポンプがある。当該ポンプは、低流量でもプランジャ式ポンプと比較し安定な送液ができるものの、シリンジ容量が有限であること、連続的な使用が困難であること、各バッチ間に差異が生じやすいといった欠点を有する。
【0010】
グラジエント分析に必要な溶離液を供給する装置としては、
複数種類の溶離液をそれぞれ制御された流量で制御した流量で送液する送液手段と、
前記送液手段から送液された溶離液を混合する混合器と、
前記混合器により混合された溶離液を管内にその長さ方向に沿って供給した順に収容していくグラジエントチューブと、
前記グラジエントチューブを前記送液手段と分析装置との間で切り替えて接続する流路切替バルブを備えた装置があり(特許文献2)、前記装置を液体クロマトグラフに応用することで、混合器による溶離液の組成変化の時間遅れがないグラジエント分析を可能としている。しかしながら、当該装置によるグラジエント分析では、グラジエントチューブに供給された溶離液を分析手段に送液する際に、前記混合器により混合された溶離液の供給方向と同じ方法に送液している。そのため、前述したプランジャポンプを用いたときに生じる問題を解決することは困難であった。また、特許文献2の装置におけるグラジエントチューブは固定容量であるため、分析装置中の分析カラムの容量が変化した場合、柔軟に対応するのが困難であった。
【0011】
【特許文献1】特開2002−243712号公報
【特許文献2】特開2003−014718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、液体クロマトグラフ装置を用いたグラジエント分析において、微小流量であっても正確な組成変化を実現するための送液方法、及び送液装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の発明を包含する:
第一の発明は、複数種類の溶離液をそれぞれ制御された流量で送液する送液手段と、
前記送液手段により送液された溶離液を混合する混合手段と、
前記混合手段により混合された溶離液を供給された順に長さ方向に沿って収容するグラジエント作成カラムと、
前記グラジエント作成カラムと、前記混合手段により混合された溶離液が流れる流路、または分析手段に接続されている流路とを接続するための流路切替手段を備えた、
グラジエント作成装置を用いて、分析手段へ経時的に異なる組成の溶離液を送液する、分析手段への送液方法であって、
以下に示す工程からなることを特徴とする、前記送液方法である:
(1)前記流路切替手段により、前記グラジエント作成カラムと前記混合手段により混合された溶離液が流れる流路とを接続し、前記グラジエント作成カラムの長さ方向に沿って前記混合手段により混合された溶離液を収容する工程
(2)前記流路切替手段により、前記グラジエント作成カラムと前記分析手段に接続されている流路とを接続し、前記グラジエント作成カラムに収容された溶離液を(1)の工程で溶離液を収容する方向とは逆の方向に前記分析手段へ送液する工程
第二の発明は、前記送液手段がプランジャ式ポンプであることを特徴とする、第一の発明に記載の送液方法である。
【0014】
第三の発明は、前記分析手段が液体クロマトグラフ装置であることを特徴とする、第一または第二の発明に記載の送液方法である。
【0015】
第四の発明は、複数種類の溶離液をそれぞれ制御された流量で送液する送液手段と、
前記送液手段により送液された溶離液を混合する混合手段と、
前記混合手段により混合された溶離液を供給された順に長さ方向に沿って収容するグラジエント作成カラムと、
前記グラジエント作成カラムと、前記混合手段により混合された溶離液が流れる流路、または分析手段に接続されている流路とを接続するための流路切替手段を備えた、
グラジエント作成装置において、
前記グラジエント作成カラムが交換可能であることを特徴とする、前記グラジエント作成装置である。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、送液手段を用いて比較的安定した送液性能が得られる流量で複数種類の溶離液を送液し、混合手段にて各溶離液を混合後、経時的に異なる組成の溶離液をグラジエント作成カラムにその長さ方向に沿って収容する。次に、送液手段を用いて溶離液を微小流量で送液し、前記グラジエント作成カラム内に収容された経時的に異なる組成の溶離液を、収容された方向とは逆方向に押し出すことで、所望の組成からなる溶離液を分析手段に送液することを特徴としている。
【0018】
本発明の送液方法における送液手段としては、微小流量を送液可能なプランジャ式ポンプ、及びシリンジ式ポンプが例示できるが、特に停止状態から稼動する際の動作が不安定である、プランジャ式ポンプに対し本発明の送液方法を適用するのが好ましい。
【0019】
本発明の送液方法における、送液手段により送液された溶離液を混合するための混合手段としては、単に各溶離液が流れる流路を合流する手段、及び各溶離液が流れる流路が合流する部位にミキサー(混合器)を設置した手段が例示できるが、後者の場合は特に微小流量を送液する場合、混合器の有する内部容量により混合器内の溶離液の置換に時間を要するため、前者の手段が好ましい。
【0020】
本発明の送液方法における、グラジエント作成カラムとしては、分析に必要な溶離液を収容可能な容量以上の容量を有するカラムであれば、形状、材料など特に限定されるものはなく、一例として、中が空洞のステンレスチューブがあげられる。また、両端にフィルタ(52)を備えたパイプ(53)に、不活性な微小粒子(54)を充填したカラム(50)もグラジエント作成カラムとして用いることができる(図6)。不活性な微小粒子(54)を充填した筒状のカラム(50)を使用した場合、前記カラムに収容される経時的に異なる組成の溶離液の組成変化がより平滑化されることが期待できる。なお、本発明の送液装置は、前記グラジエント作成カラムが分析手段中の分析カラムの容量に応じて交換可能であることを特徴としている。
【0021】
本発明の送液方法を用いたシステム構成の一例を図7に示す。図7のシステム構成では、分析を行なう流路(実線)とグラジエント作成流路(破線)とに大別される。分析を行なう流路は、溶離液C(33)、ポンプC(23)、試料注入バルブ(42)、分析カラム(70)、検出器(80)の順に配置され、当該流路は微小流量で送液される。一方、グラジエント作成流路は、溶離液A(31)、送液ポンプA(21)、溶離液B(32)、送液ポンプB(22)、経時的に異なる組成の溶離液を収容するためのグラジエント作成カラム(50)が配置され、当該流路は前記分析を行なう流路の流量の、概ね5から100倍の流量で送液される。そして、流路切替バルブ(41)により、グラジエント作成カラム(50)を微小分析に使用する流路(実線)、またはグラジエントを作成する流路(破線)と接続する。
【0022】
本発明の送液方法を用いたグラジエント分析を3つの工程に分けて説明する(図8)。なお、分析試料を分析カラムから溶出する力は、溶離液Aよりも溶離液Bの方が大きいものとする。
【0023】
工程1 グラジエントカーブの作成
流路切替バルブ(41)をOFF(図9(a))の状態にし、ポンプA(21)から送液された溶離液A(31)と、ポンプB(22)から送液された溶離液B(32)とが混合した溶離液が、グラジエント作成カラム(50)に送液され、前記カラム(50)を通過した溶離液が排出(91)されるようにする。ポンプA(21)、ポンプB(22)により、分析で実際に使用する溶離液の組成変化とは逆の組成変化の溶離液をグラジエント作成カラム(50)に供給する。
【0024】
実際に分析で使用するグラジエントを溶離液B:0%(溶離液A:100%)から溶離液B:100%(溶離液A:0%)、実際の分析での流量をFa、グラジエントカーブ作成時の流量をFgとした場合の、時間及び組成のパターンを表1及び2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

この間、分析カラム(70)には、ポンプC(23)から溶離液C(33)が流量Faで送液される。溶離液C(33)はグラジエント作成に使用する溶離液A(31)または溶離液B(32)と同一であることが望ましい。なお、溶離液C(33)が溶離液A(31)と同一とすると、当該工程で分析カラム(70)の初期化がなされるため、好ましい。
【0027】
工程2 グラジエント逆転写
流路切替バルブ(41)をON(図9(b))の状態にし、ポンプC(23)を用いて、工程1で収容した方向とは逆方向に溶離液C(33)を流量Faで送液することで、グラジエント作成カラム(50)に収容された溶離液を押し出し、分析カラム(70)に流れるようにする。なお、前記カラム(70)を通過した溶離液は系外へ排出(92)される。
【0028】
工程3 分析
工程2の状態で、試料注入バルブ(42)より試料を注入し、分析カラム(70)を用いた分析が行なわれる。
【0029】
以上3つの工程により、低流量でかつ正確な経時的に異なる組成の溶離液を分析カラムに送液し、分析を行なうことができる。本発明の送液方法を用いたグラジエント分析の模式図を図10に示す。特にポンプA、ポンプBにプランジャ式ポンプを使用した場合、前記ポンプに由来する溶離液の組成及び流量精度が劣る領域が、グラジエント分析では終了時に当たるため、グラジエント分析全体への影響を抑えることができる(図11)。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、グラジエント作成装置を用いて分析手段へ経時的に異なる組成の溶離液を送液する際に、
流路切替手段により、グラジエント作成カラムと混合手段により混合された溶離液が流れる流路とを接続し、前記グラジエント作成カラムの長さ方向に沿って前記混合手段により混合された溶離液を収容する工程、及び
前記流路切替手段により、前記グラジエント作成カラムと前記分析手段に接続されている流路とを接続し、前記グラジエント作成カラムに収容された溶離液を前記工程において溶離液を収容する方向とは逆の方向に前記分析手段へ送液する工程、
を行ない、送液することを特徴としている。本発明の送液方法により、液体クロマトグラフ装置を用いたグラジエント分析において、微小流量であっても正確な組成変化を実現するができる。
【0031】
さらに、送液手段がプランジャ式ポンプの場合は、前記ポンプに由来する溶離液の組成及び流量精度が不安定な領域がグラジエント分析終了時となるため、プランジャ式ポンプであっても正確な組成変化を実現することができる。
【0032】
また、本発明の送液装置は、グラジエント作成装置において、前記グラジエント作成カラムが交換可能であることを特徴としており、特許文献2の装置と比較し、分析手段中の分析カラムの容量変化に柔軟に対応することができる。
【実施例】
【0033】
実施例1 本発明の送液方法を用いた液体クロマトグラフシステム(その1)
本発明の送液方法を利用した液体クロマトグラフシステムの構成を図12に示す。図12のシステム構成では、微小分析を行なう流路(実線)とグラジエント作成流路(破線)に大別される。微小分析を行なう流路は、送液ポンプC(33)、試料注入バルブ(42)、分析用マイクロカラム(70)、紫外可視検出器(80)、抵抗管(111)が配置され、微小流量で送液される。グラジエント作成流路には、送液ポンプA(21)、送液ポンプB(22)、経時的に異なる組成の溶離液を収容するためのグラジエント作成カラム(50)、抵抗管(112)が配置され、グラジエントが作成される。そして、2位置切り替えバルブ(41)により、グラジエント作成カラム(50)を、微小分析を行なう流路(実線)、またはグラジエント作成流路(破線)と接続する。試料注入バルブ(42)、分析用マイクロカラム(70)、2位置切り替えバルブ(41)は熱的安定性を確保するため、同一の恒温槽(100)内に配置し、43℃で一定温度に制御を行なった。
【0034】
測定条件は分析用マイクロカラム(70)として、内径1mm、長さ30mm、粒径3μmのODSカラム(東ソー社製)、溶離液A(31)及びC(33)としてアセトニトリル/水(25/80)、溶離液B(32)としてアセトニトリル/水(90/10)を使用した。ポンプ(31、32、33)はプランジャ式ポンプである東ソー社製CCPMを一部改良して使用した。試料としては、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘプチルの6種を混合したものを用いた。グラジエント作成用カラム(50)は外径1/16インチ、内径0.6mm、長さ2mの空のステンレスチューブを使用した(容量:565μL)。
【0035】
微小分析を行なう流路(実線)は、毎分4μLに設定し、溶離液C(33)を一定流量で分析カラムに送液した。グラジエント作成流路(破線)は、毎分80μLに設定し、溶離液B:100%(溶離液A:0%)から溶離液A:100%(溶離液B:0%)まで2.5分のグラジエントを行ない、グラジエント作成カラム(50)に供給した(表3)。この条件で、微小分析を行なう流路(実線)には、毎分4μLで、溶離液B:0%(溶離液A:100%)から溶離液B:100%(溶離液A:0%)まで50分(2.5×80÷4)のグラジエントが行なわれることになる(表4)。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

再現性の結果を図13から15に示す。図13はクロマトグラム(n=10)、図14は溶出時間の変化(n=10)、図15は溶出時間の再現性を、それぞれ示す(n=10×2)。図15に示すように、分析流量が毎分4μLという低流量であっても、各ピークの溶出時間の再現性は0.2から0.5%と良好な値が得られた。よって、本発明の送液方法を用いることにより、一般的に使用されているプランジャ式ポンプを使用しても高精度な分析が可能であることが分かる。図12のシステムは、連続測定が可能であり、かつ精度、使い勝手、操作性に優れたシステムであるといえる。
【0038】
本実施例では、微小分析に使用する流路(実線)のポンプC(33)の溶離液として、溶離液Aと同一の組成を使用した。この場合、分析用マイクロカラム(70)は2位置切り替えバルブ(41)がOFF(図9(a))の状態で、常にカラムの初期化がなされることになり、2位置切り替えバルブ(42)をON(図9(b))にすることにより、即分析が可能となる(図16)。
【0039】
また、微小分析を行なう流路(実線)の溶離液C(33)として、溶離液B(32)と同一の組成を使用することも可能である。この場合、分析用マイクロカラム(70)は2位置切り替えバルブ(41)がOFF(図9(a))の状態で、常にカラムの洗浄がなされることになり、カラムの寿命が延びることが期待できる。なお、溶離液C(33)として、溶離液B(32)と同一のものを使用する場合は、グラジエント作成カラム(50)に経時的に異なる組成の溶離液を収容した後に、初期化するための溶離液A(31)を追加供給することで実現可能である。この場合、2位置切り替えバルブ(41)をON(図9(b))にした後、分析用マイクロカラム(70)には前記カラム(70)を初期化するための溶離液A(31)が流れた後、実際のグラジエントがかかる。試料注入は分析用マイクロカラム(70)の初期化が終了した時点で行なうことになる(図17参照)。この他、溶離液A、Bと異なる組成の溶離液の使用も可能である。
【0040】
実施例2 本発明の送液方法を用いた液体クロマトグラフシステム(その2)
本発明の送液方法を利用した液体クロマトグラフシステムの別の構成を図18に示す。各ポンプ(21、22、23)をシリンジ式ポンプにした他は、実施例1に記載の液体クロマトグラフ装置と同様の構成である、図18の装置であっても、実施例1のときと同様、低流量域での安定したグラジエント分析を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】プランジャ式ポンプの基本的な構造を示す図。(a)は吸引工程の状態、(b)は吐出工程の状態をそれぞれを示す。
【図2】入口側チェック弁の基本的な構造を示す図。(a)は開放時の状態、(b)は閉止時の状態をそれぞれ示す。
【図3】出口側チェック弁の基本的な構造を示す図。(a)は開放時の状態、(b)は閉止時の状態をそれぞれ示す。
【図4】理想的な状態で2液のグラジエント分析を行なう場合の、ポンプA、ポンプBの流量変化を示した模式図。(a)は各ポンプの流量変化を示した図であり、縦軸は総流量に対する比率、横軸は時間を表す。実線はポンプA、破線はポンプBを表す。(b)はポンプA、ポンプBの総流量の変化を示した図であり、縦軸は総流量、横軸は時間を表す。
【図5】プランジャ式ポンプを用いて微小流量でグラジエント分析を行なう場合の、ポンプA、ポンプBの流量変化を示した模式図。(a)は各ポンプの流量変化を示した図であり、縦軸は総流量に対する比率、横軸は時間を表す。実線はポンプA、破線はポンプBを表す。(b)はポンプA、ポンプBの総総量の変化を示した図であり、縦軸は総流量、横軸は時間を表す。(c)はクロマトグラムに与える影響を模式的に示した図である。縦軸は吸光度、横軸は時間を表す。
【図6】本発明の送液方法で用いるグラジエント作成カラムの一例図。(a)は全体図であり、(b)はA−A’断面図である。
【図7】本発明の送液方法を用いたシステム構成を示した図。実線は分析を行なう流路、破線はグラジエント作成流路をそれぞれ示す。
【図8】本発明の送液方法を用いたグラジエント分析の説明図。
【図9】流路切替バルブによる切替様式を表した図。(a)はOFF状態、(b)がON状態をそれぞれ示す。
【図10】本発明の送液方法を用いたグラジエント分析における、組成変化を示した模式図。(a)が工程1の組成変化、(b)が工程2及び3における組成変化をそれぞれ示す。
【図11】本発明の送液方法を用いて、プランジャ式ポンプにてグラジエント分析を行なう場合の、ポンプA、ポンプBの流量変化を示した模式図。(a)は各ポンプの流量変化を示した図であり、縦軸は総流量に対する比率、横軸は時間を表す。実線はポンプA、破線はポンプBを表す。(b)はポンプA、ポンプBの総総量の変化を示した図であり、縦軸は総流量、横軸は時間を表す。(c)はクロマトグラムに与える影響を模式的に示した図である。縦軸は吸光度、横軸は時間を表す。
【図12】実施例1で用いたシステム構成を示した図。
【図13】本発明の送液方法でグラジエント分析を行なったときのクロマトグラム(n=10)。横軸は時間、縦軸は吸光度を表す.
【図14】本発明の送液方法でグラジエント分析を行なったときの各ピーク溶出時間の変化を示したグラフ。横軸は測定回数、縦軸は溶出時間を表す。
【図15】本発明の送液方法でグラジエント分析を行なったときの各ピーク溶出時間のCv(%)を示したグラフ。横軸は試料名、縦軸は溶出時間Cv%を表す。
【図16】本発明の送液方法を用いたグラジエント分析における、組成変化を示した模式図(溶離液Cの組成が溶離液Aと同一の組成の場合)。(a)が工程1の組成変化、(b)が工程2及び3における組成変化をそれぞれ示す。
【図17】本発明の送液方法を用いたグラジエント分析における、組成変化を示した模式図(溶離液Cの組成が溶離液Bと同一の組成の場合)。(a)が工程1の組成変化、(b)が工程2及び3における組成変化をそれぞれ示す。
【図18】実施例2で用いたシステム構成を示した図。
【符号の説明】
【0042】
10 プランジャ式ポンプ
11 チャンバ
12 プランジャ
13 入口側チェック弁
14 出口側チェック弁
15 シート
16 ボール
21、22、23 ポンプ
31、32、33 溶離液
41 流路切替バルブ
42 試料注入バルブ
50 グラジエント作成カラム
51 エンドフィッティング
52 フィルタ
53 パイプ
54 微小粒子
60 サンプルチューブ
70 分析カラム
80 検出器
91、92 廃液
100 恒温槽
111、112 抵抗管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の溶離液をそれぞれ制御された流量で送液する送液手段と、
前記送液手段により送液された溶離液を混合する混合手段と、
前記混合手段により混合された溶離液を供給された順に長さ方向に沿って収容するグラジエント作成カラムと、
前記グラジエント作成カラムと、前記混合手段により混合された溶離液が流れる流路、または分析手段に接続されている流路とを接続するための流路切替手段を備えた、
グラジエント作成装置を用いて、分析手段へ経時的に異なる組成の溶離液を送液する、分析手段への送液方法であって、
以下に示す工程からなることを特徴とする、前記送液方法:
(1)前記流路切替手段により、前記グラジエント作成カラムと前記混合手段により混合された溶離液が流れる流路とを接続し、前記グラジエント作成カラムの長さ方向に沿って前記混合手段により混合された溶離液を収容する工程
(2)前記流路切替手段により、前記グラジエント作成カラムと前記分析手段に接続されている流路とを接続し、前記グラジエント作成カラムに収容された溶離液を(1)の工程で溶離液を収容する方向とは逆の方向に前記分析手段へ送液する工程
【請求項2】
前記送液手段がプランジャ式ポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の送液方法。
【請求項3】
前記分析手段が液体クロマトグラフ装置であることを特徴とする、請求項1または2に記載の送液方法。
【請求項4】
複数種類の溶離液をそれぞれ制御された流量で送液する送液手段と、
前記送液手段により送液された溶離液を混合する混合手段と、
前記混合手段により混合された溶離液を供給された順に長さ方向に沿って収容するグラジエント作成カラムと、
前記グラジエント作成カラムと、前記混合手段により混合された溶離液が流れる流路、または分析手段に接続されている流路とを接続するための流路切替手段を備えた、グラジエント作成装置において、
前記グラジエント作成カラムが交換可能であることを特徴とする、前記グラジエント作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−145369(P2010−145369A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326206(P2008−326206)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)