説明

グラファイト粉末の製造および処理方法

本発明は、炭素材料、特にはグラファイト粉末、の製造および熱処理の、特には、アチソン型炉中での、充填剤を通して電流が流れることを可能にする粒子状形態の黒鉛状材料から本質的になる機能性充填剤を用いた、方法に関する。充填剤の粒子状形態は、より大きな柔軟性を可能とし、そして直接および間接加熱の度合いの制御に用いることができ、従来法と比べてより均一な製品をもたらす。このような黒鉛状材料は、典型的にはポリマー、電池または他の用途の添加剤として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、電池または他の用途において添加剤として用いられる、炭素材料、特にはグラファイト粉末の製造および処理のための、熱処理装置および新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年に至って、多くの領域における、向上した性能を備えた新規なグラファイトに対する要求が、新しい生産技術への必要性を創出してきている。この点における2つの重要な因子は、柔軟性と生産性である。特に、リチウムイオン電池の負極用のグラファイトの開発はこの領域における増大した注目を集めている。
【0003】
20世紀初期に開発されたアチソン技術(米国特許第933,944号)は、抵抗加熱による炭素質材料の加熱処理のためのプロセスを開示している。バインダーの存在の下でのコークスの黒鉛化を基にしたこのプロセスは、その限界を示している。黒鉛化された炭素(グラファイト)は粉砕されなければならない。生成されたグラファイトは、粉砕したてである結果としての、相当に活性な表面によって特徴付けられる。
【0004】
基本的には、アチソンに基づいた全ての黒鉛化プロセスは、このバッチプロセスの高額の投資および費用の掛かる取り扱いを欠点として有している。更に、アチソン特許に記載されているように、均一な製品の製造には、炭化ケイ素でかなりの程度構成される外殻を分離する場合に、特別な注意を必要とすることが知られている。
【0005】
図1中に示されるように、アチソン炉における炭素質材料の熱処理は、2つの異なる機構:1)抵抗加熱(ジュール効果または直接加熱)および2)熱伝導(間接加熱)によって起こる。アチソン炉の充填物は、通常は処理される炭素質材料からなっており、炭素質材料は、グラファイト芯(固体の棒(ロッド)またはバーからなる)の周りに配置されており、ここでこの芯は電気エネルギーを供給する電極の間に並んでいる(図2を参照)。この芯は、電極間で電流が流れることを可能にしており、これによって固体の芯材料が、抵抗加熱によって加熱される。黒鉛化プロセスは、芯とこの芯を取り囲む炭素質材料の間の接触表面領域で開始し、そして熱い芯からの熱伝導による、炭素質材料の間接加熱によって誘発される。この芯の周りの炭素質材料のオーム抵抗は、黒鉛化の進行に伴い低下し、そしてその結果として、接触領域の加熱は、ますます直接加熱の結果となる。要約すれば、炭素質材料の黒鉛化は、芯から半径方向に、炉の炭素質充填物の外側表面へと進行する。上記の記載から、直接および間接加熱の程度は、炉の半径に亘って均一ではないが、しかしながら炭素質材料の中心に近い部分は、遠い部分よりも、より直接加熱を受けることを容易に推論することができる。炭素質材料の充填物の、炉の直径に亘る異なる部分へ加わる加熱の違いは、炉の外側部分における雰囲気の冷却効果によって度合いを強められ、炉の直径に亘る黒鉛化の勾配をもたらし、そして従って、結果として得られる製品の均一性の欠如をもたらす。
【0006】
一方で、黒鉛化のためのアチソンプロセスは、多くの利点を有している。例えば、装置は堅牢であり、そしてほとんど誤作動することがない。従って、アチソンプロセスは、黒鉛状材料の調製に未だに普通に用いられている。しかしながら、当技術分野においては、よく知られた装置の利点と、得られる製品のより均一な性質とを併せ持つ、黒鉛状材料の改善された調製方法への要求が存在している。
【0007】
中国特許出願公開第1834205号明細書には、加熱用芯が、固体導電性炭素材料の多数の1.8メートル片で形成された導電加熱芯の幾つかのバーで典型的には構成されている黒鉛化の手順が報告されている。この方法の欠点は、加熱芯を形成するために多くの大きな固体炭素材料片を用い、そして配置する必要性によって、このプロセスは、煩雑であること、そして形態が相当に制限されることの両方である、ことである。従って、この手順はむしろ少しの一連の製品に限定されている。
【0008】
米国特許第7,008,526号明細書では、予め粉砕された炭素質前駆体の黒鉛化が扱われている。この出願は自ずから予め粉砕された炭素質前駆体だけに限定しているので、そこに記載されたプロセスの有用性は従って限定されている。更に、アチソン炉ではなく、マッフル炉がこの出願のための加熱源であり、従って加熱は伝熱(間接加熱)のみを通して起こすことができる。
【0009】
英国特許出願公開第2185559号明細書には、電気抵抗による炭素体の連続的な黒鉛化のためのプロセスが記載されている。ここに記載されているプロセスは、従って、処理される炭素質材料が炉中に一度に充填され、そして次いで処理の最後の後に炉から取り出される、アチソン型プロセスとは基本的に異なっている。
【0010】
ソビエト連邦特許出願公開第1765115号明細書には、炭素質材料の更なる熱処理方法が記載されており、ここでは炉は、処理プロセスに必要な熱を伝達するための固体誘電体材料の「グリッド」を含んでいる。従って、可能性のあるプロセス形態は、導電性要素の複雑化された機構のために、相当に制限される。
【0011】
米国特許第6,783,747号明細書には、容器の使用が記載されており、その壁はグラファイトで作られており、それは黒鉛化される材料で満たされている。電極から供給された電流は、容器壁を通して流れ、容器壁が今度はジュール効果によって加熱される。このような方法で発生した熱は、次いで箱の内側の処理される粉末へと実質的に熱伝導を経由して伝達される。この技術は多くの欠点を有している:
−費用の掛かる箱を用いなければならない、
−容器中での攻撃的なガスの発生のための腐食による箱の大きな損耗、
−箱を充填し、配置し、そして空にするために要する、緩慢で、そして費用の掛かる取り扱い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
最先端技術に留意すれば、所望の熱処理された炭素質製品が、アチソン型の炉中で、効率的に、かつ好都合に調製することができる改善されたプロセスへの必要性がなお存在している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、炭素質材料(例えば、グラファイト粉末)の調製または処理のための方法を開発し、そこではアチソン型炉中のグラファイトの固体芯(従来技術では、通常は、棒(rods)またはバーで構成されている)が粒子状形態のグラファイト材料で置換されている。黒鉛状材料が、電流がこの材料を通して流れる場合に、観察されるジュール効果によって所望の抵抗加熱を生み出すように作用する限りは、それはまた「機能性充填剤」と称することができる。更に、処理すべき炭素質材料を入れているグラファイト容器の使用がもはや必要でないので、本発明のこの新規なプロセスは、その結果として、従来技術よりもより効率的かつ安全の両方である。
【0014】
本発明によって提供される、粒子状形態(粉末化された、または粒状化された材料)の「機能性充填剤」の使用は、プロセスパラメータの選択においてより大きな柔軟性を可能とし、直接および間接加熱の度合いの制御を容易にし、そして多くの機器構成における使用が可能となり、これらのことは、本発明を説明するために、以下により詳細に説明される。
【0015】
1つの態様では、本発明は、処理される炭素質材料に加えて、粒子状形態の黒鉛状材料から本質的になる機能性充填剤が、充填物を通して電流が流れることを可能にするために、反応器へと加えられることを特徴とする、アチソン型炉中での炭素質材料の熱処理のプロセスを提供する。
【0016】
典型的には、この機能性充填剤の黒鉛状材料は、約1μm〜約10mm、好ましくは約10μm〜約1mmの範囲の平均粒子径を有している。本発明の機能性充填剤は、従って、主に導電性黒鉛状材料から構成されるが、しかしながら、黒鉛化またはグラファイト処理プロセスにおいて通常用いられるいずれかの添加剤もまた含むことができる。
【0017】
本発明のプロセスで得られた炭素質材料は、典型的には、慣用のプロセスで得られる材料に比べて、増大した均質性によって特徴付けられる。更には、本発明のプロセスは、熱処理の間の炭素質材料の直接および間接加熱の度合いを制御することによって得られる材料の特性を調整するための好都合な方法を提供する。後者は、以下により詳細に説明するように、アチソン型炉内部の処理される材料と機能性充填剤とを適切に配置することによって成し遂げられる。機能性充填剤と処理される材料との配置の「微調整」の可能性を通じて、得られる製品の目的とする特性に応じて、基本的には、間接加熱に対する直接加熱のいずれの度合いをも達成することができる。
【0018】
従って、本発明によって提供される新規なプロセスは、アチソン型の炉の内部でより均一な加熱を達成することを可能にさせることもまた直ちに明らかである。
【0019】
態様によっては、炭素質材料は、本発明のプロセスによって黒鉛化される材料である。他の態様では、炭素質材料は、本発明のプロセスによって、熱処理される、および/または精製される黒鉛状材料である。好ましくは、処理される炭素質材料および/または機能性充填剤は、本質的に均一な粒子径の、すなわち狭い粒子径分布を備えたものである。後者は、処理された材料を、反応器中に存在する機能性充填剤から分離するために、明らかに有利である。
【0020】
本発明のプロセスは、典型的には約2000℃〜3500℃以下の温度で実施される。好ましくは、アチソン型プロセス中での黒鉛化の温度は、約2500℃超である。
【0021】
機能性充填剤および処理される炭素質材料に加えて、本プロセスは、体積絶縁材料、すなわち低導電性を有する材料として、他の炭素質材料を用いることができる。繰り返すと、前記体積絶縁材料は、典型的には粒子状形態であり、そして好ましくは本質的に均一な粒子径のものである。
【0022】
特定の態様では、直接および間接加熱の度合いの制御は、
a)処理される炭素質材料、および
b)充填物を通して電流が流れることを可能にする、粒子状形態の黒鉛状材料からなる機能性充填剤、
からなる混合物の形態で、炭素質材料をアチソン型炉へと充填することによって達成される。
【0023】
態様によっては、a)とb)の混合物は、結果として得られる混合物の浸透限界を克服する量で、機能性充填剤を含んでいる。この浸透限界は、2つの材料の特定の性質に依存しており、当業者によって容易に決定されることができる。大抵の場合には、機能性充填剤の少なくとも5%の含量が、この混合物の十分な導電性を得るために必要である。処理される炭素質材料が黒鉛状材料であり、そして従って、既に導電性である場合の態様では、勿論のこと、処理される黒鉛状材料へは、より少ない機能性充填剤しか加える必要がないか、または機能性充填剤は全く加える必要がない。
【0024】
他の態様では、処理される炭素質材料の直接および間接加熱の度合いは、黒鉛状材料と熱処理される炭素質材料との相互の三次元配置によって制御される。
【0025】
態様によっては、本プロセス中の直接および間接加熱の度合いは、処理される炭素質材料を、1層もしくは2層以上の黒鉛状材料の層で分離された、層の形態で、アチソン型炉へ充填し、粒子状形態のこの黒鉛状材料が、所望の電流が流れることを可能にする機能性充填剤として作用することによって、制御される。好ましくは、この炭素質材料および黒煙状材料の層は、アチソン型炉の横断面から見た場合に、交互の様式で配置されている。
【0026】
他の代替の態様では、本プロセスにおける直接および間接加熱の度合いは、炭素質材料を、芯「バー」(粒子状材料からなる)の形態で、アチソン型炉へと充填することによって制御され、この芯バーは、電流が流れることを可能にする機能性充填剤によって取り囲まれている。
【0027】
更に代替の態様では、本プロセスにおける直接および間接加熱の度合いは、処理される炭素質材料をアチソン型炉へと充填し、そして粒子状形態の黒鉛状材料を、電極間に1つもしくは2つ以上の「バー」の形態で配置して、電流が流れることを可能にすることによって制御することができる。好ましい態様では、黒鉛状材料の「バー」は、横断面で見た場合には、矩形の形状である。勿論のこと、機能性充填剤は、粒状形態で本プロセス中に入り、そして本プロセスの最後に粒子状形態で取り出される。
【0028】
上記のいずれかの態様においては、黒鉛状機能性充填剤と炭素質材料は、便利には、異なる粒径であることができ、このことによって、当技術分野において利用できる標準的な技術によって、機能性充填剤からの処理された炭素質粒子の分離が可能となる。好ましい態様では、熱処理後の冷えた炉の内容物は、用いられた充填剤および炭素質材料のそれぞれの粒径に応じたメッシュの大きさを有する篩を通して分級される。
【0029】
態様によっては、低導電性を備えた粒子状形態の炭素質材料が、処理される炭素質材料および機能性充填剤に加えて、反応器へと加えられる。このような材料は、ここでは固体体積絶縁体と称される。好ましい態様では、固体体積絶縁体として作用する前記炭素質材料は、低導電性を有している。好適な例としては、コークス(石油コークスなど)、無煙炭などがある。
【0030】
更に他の態様では、炭素質材料は、黒鉛容器内部に入れてアチソン型炉へと充填することができ、この黒鉛容器は粒子状形態の黒鉛状材料中に埋め込まれて、電流が流れることを可能にする(機能性充填剤)。
【0031】
上記の態様のいずれかにおいては、炭素質材料および/または機能性充填剤として作用する黒鉛状材料は、更に1種もしくは2種以上の触媒化合物、核剤、バインダー、コーティングもしくはこのようなプロセスで通常用いられる他のいずれかの添加剤を含むことができる。
【0032】
炭素質材料の代表的な形態としては、コークス(未焼結の、またはか焼した)、石油コークス、ピッチコークス、炭化した木材もしくは他の生物起源の製品、ニードルコークス、スポンジコークス、冶金コークス、コールタール系炭素およびメソ炭素、無煙炭、合成グラファイト、天然グラファイト、膨張黒鉛、炭化ポリマー、カーボンブラック、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
処理のために好適な、または機能性充填剤として作用する黒鉛状材料の代表的な形態としては、合成グラファイト、天然グラファイト、膨張黒鉛またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明のプロセスを実施するために好適なアチソン型炉を示している。
【図2】図2は、慣用の方法で充填されたアチソン型炉を示しており、グラファイトの芯が処理される炭素質材料によって取り囲まれている。
【図3】図3は、アチソン型炉を示しており、機能性充填剤が処理される炭素質材料の芯の周りに充填されている。
【図4】図4は、アチソン型炉を示しており、機能性充填剤および処理される炭素質材料が混合物の形態で充填されている。
【図5】図5は、アチソン型炉を示しており、機能性充填剤が、処理される炭素質材料間の層の形態で充填されている。
【図6】図6は、アチソン型炉を示しており、機能性充填剤が、処理される炭素質材料によって取り囲まれた2本のバーの形態で充填されている。
【図7】図7は、アチソン型炉を示しており、処理される炭素質材料は、機能性充填剤の内部に埋め込まれたグラファイト容器中に置かれている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の目的の1つは、アチソン型の炉を用いた、実質的に均質なグラファイトの調製のための効率的なプロセスを提供することである。本発明者らは、粒子状形態の機能性充填剤を用いることによって、直接および間接加熱の度合いコントロールすることができ、そのことを通して得られる熱処理された炭素質材料の特性が、要望通りに微調整できることを見出した。本発明のプロセスによって得られる製品は、例えば、リチウムイオン電池に用いることができる。
【0036】
本発明のプロセスは、
・直接および間接加熱の組み合わせによる、炭素質粉末および/または顆粒の熱処理のための、効率的でかつ費用効果の高いプロセス、
・グラファイトを精製するための、および不純物を取り除くための、効率的でかつ費用効果の高いプロセス、ならびに
・熱の注入を調節するのにより大きな柔軟性(特には直接および間接加熱の度合いに関して)を可能にする、効率的でかつ費用効果の高いプロセス、
を提供する。
【0037】
本発明のプロセスを用いることによって、例えば合成グラファイトの精製された形態を、反応器の内部における炭素質材料と粒子状形態の黒鉛状機能性充填剤との空間的配置をコントロールすることによって、生成することができる。例えば、間接加熱に対する直接加熱の所望の度合いは、炭素質材料と前記黒鉛状材料の層化構造(例えば、層厚さ、層の数、もしくは層の配向)、黒鉛状材料に対する炭素質材料の比率、あるいは炭素質材料および/または黒鉛状材料の粒子の大きさをコントロールすることによって達成することができる。更に、炭素質材料と黒鉛状材料の間の体積比はまた、直接および間接加熱の所望の度合いを得るために変えることができる。勿論のこと、これらの操作のいずれかは、組み合わせて用いることもできる。
【0038】
本発明は更に、粒子径が層の厚さおよび充填操作と適合する限り、処理される炭素質材料は、予め粉砕されていても、または予め粉砕されていなくてもよい。
【0039】
1.炉および粒子の充填
反応器(アチソン型炉)は、通常は金属枠と耐熱性ライニングを含んでいる。電極は、図1中に示されているように、反応器の両端に配置されている。
【0040】
間接加熱に対する直接加熱の度合いは、得られる材料の性質に影響を与えるので、反応器内の熱処理される炭素質材料と機能性充填剤との空間的な配置は、通常は得られる材料の所望の特性を得るようになされている。粉末および/または顆粒は、典型的には、これらの材料を選択された位置に運ぶ、コンピュータに誘導されたアームによって配置される。
【0041】
態様によっては、炭素質材料と粒子状形態の黒鉛状機能性充填剤は、炉の内部において、複数の交互の層で配置することができる。種々の層の厚さは、予めプログラムすることができる。更に、これらの層中のそれぞれの材料の粒子径は、予め定められた特徴に基づいて選択することができる。これらのパラメーター、ならびに当業者に知られている他のパラメーターは、単独で、または組み合わせてのいずれかで、炭素質材料の所望の水準の加熱速度に影響を及ぼすように選択することができる。
【0042】
処理される炭素質材料および粒子状形態の機能性充填剤(図の参照符号表中の(l)および(m)をそれぞれ参照)は、例えば加熱を開始する前に所定位置に留まることができる厚紙シートによって、または加熱の開始の前に取り除かれる金属シートによって分離することができる。あるいは、これらの異なる材料は、それらがそれらの形態を保持するか、またはこのプロセスを通して閉じ込められたままであることを可能にする、いずれかの他の技術によって分離することができる。この意味では、それぞれの材料を規定する別個の領域は、囲い込み、独立した物理的障壁のないモノリス形態を呈している。
【0043】
また、他の態様では、これらの材料は、異なる結晶化水準を有する、ならびにその粒子径が異なる、混合された粉末および/または顆粒として存在することができる。アチソン型炉プロセスにおいては、炉の絶縁は、耐熱性材料からなる外側ライニングを単に含むのではなく、処理される炭素質材料と電流が流れることを可能にする機能性充填剤の周りの、絶縁充填物をも含むことができる。上記で説明した通り、このような固体体積絶縁材料は、典型的には、低導電性を有する炭素質材料、例えば石油コークスなどを含んでいる。
【0044】
間接加熱に対する直接加熱の度合いの制御は、幾つかの異なる空間的配置によって成し遂げることができる。例えば、粒子状形態の機能性充填剤を処理される炭素質材料の芯の周りに充填することによって(図3を参照)、および/または機能性充填剤の厚さ(図3のm参照)および/または処理される炭素質材料(図3のl参照)を調整することによって、半径方向での直接加熱の進行が、処理の間の低減された熱勾配をもたらさす。炭素質材料は急速に加熱され、そして厚さ全体に亘って急速な黒鉛化を受け、そうして大部分の熱は抵抗(すなわち、直接)加熱を通じて、直接に加えられる。
【0045】
他の態様では、機能性充填剤と処理される炭素質材料は、交互の層の形態で炉へと充填することができる(図5を参照)。あるいは、粒子状形態の機能性充填剤は、「バー」の形態で充填することができ(図6を参照)、電極の間に並べられ、そして処理される炭素質材料を貫通する。繰り返すが、炉の直径に亘る熱勾配は、充填された材料のこのような配置によって低減される。
【0046】
他の態様では、機能性充填剤および処理される炭素質材料は、混合物の形態で炉に充填することができる(図4を参照)。混合物中の機能性充填剤の含量および機能性充填剤の粒径は、加熱の速度ならびに直接と間接加熱の相対的水準に影響を与え、あるいは相対的水準を制御するために変えることができ、そして用いることができる。混合物の種類は、品質だけでなく、処理要件を決定する因子となる可能性がある。処理される材料と、そのすでに黒鉛化された変種との混合物は、取り出しおよび篩分け工程を単純化することができるし、ならびに操作者が比率を適正に調整することによって新規な材料を生成させることを可能にする。
【0047】
より粗い機能性品種と、処理される微細な材料との混合物は、篩分け工程を容易にすることができる。本願出願人は、いずれの種類の理論にも拘束されることも望まないが、大部分の抵抗熱は、機能性充填剤の粒子表面の接触で発生され、そして混合物は、導電性複合材として機能し(導電性の、および導電性のより低い、あるいは絶縁性でさえある材料を混合することによって)、それぞれの複合材は、特定の熱履歴を受けた新しい製品をもたらすことができることが理解される。機能性充填剤粒子の間の接触表面の全体数が増加した場合には、直接加熱の効果も同様に増加することが理解されるであろう。更には、熱処理によって処理される材料の抵抗率が低下すると、直接加熱は複合材中で、累進的に間接加熱を置き換えるようになる。
【0048】
態様によっては、処理される炭素質材料は、既に相対的に低い抵抗率を示している可能性がある。このような場合には、その処理される炭素質材料は、それ自体の機能性充填剤としても作用することができる。
【0049】
上記の態様の全てにおいて、熱処理の最後の後での、処理された炭素質粒子の機能性充填剤からの分離工程は、異なる粒径の機能性充填剤と炭素質材料を用いることによって単純化することができる。例えば、冷たい炉の内容物は、用いられた充填剤および炭素質材料のそれぞれの粒径に対応するメッシュの大きさを有する篩を通して分級することができる。
【0050】
更に他の代替の態様では、処理される炭素質材料は、1つの、そして好ましくは2つ以上のグラファイトからなる容器(図7)中に炭素質材料を充填することによって、炉へと充填することができ、ここでは充填された容器は、炉内部の機能性充填剤内に埋め込まれる。この態様では、炭素質材料の加熱は、かなりの程度まで間接加熱であるが、何故ならば、グラファイト容器内部の処理される炭素質材料を通しては、電流が少ししか通過しないか、または通過しないためである。
【0051】
上記の態様のいずれかでは、機能性充填剤および/または炭素質材料は、意図する反応の速度を増加させるために、1種もしくは2種以上の更なる触媒化合物を含むことができる。黒鉛化のための触媒は、当技術分野で知られており、そして炭化物形成性成分、例えば、鉄、酸化ケイ素もしくはケイ素金属、酸化ホウ素もしくはホウ素金属、酸化アルミニウムもしくはアルミニウム金属、が挙げられるが、それらには限定されない。また、機能性充填剤および炭素質材料は、バインダー、コーティング、および当技術分野で通常用いられる他の添加剤を含むことができる。
【0052】
2.炉の設計
一般には、アチソン型炉は当技術分野において知られている。本発明の目的では、図中に図解されている第3の固体体積絶縁体は、通常は低電導率を有する炭素質材料、例えば石油コークスまたは無煙炭、あるいは他の好適な(不活性)材料からなっている。後者が熱処理される材料と直接に接触している場合には、その粒子径は、プロセスの最後において好都合の分離が可能となるように、通常は異なるように選択される。第2の固体絶縁体は、通所は耐熱性材料、例えば炭化ケイ素または好適な金属酸化物からなっている。
【0053】
本発明の目的では、通常用いられるよりも、より小さい大きさのアチソン型炉を用いることが有利である可能性がある。標準的なアチソンプロセスのエネルギー効率は非常に高くはないので、黒鉛化はしばしば約100トンの範囲の炭素質材料が黒鉛化されるような総充填量を有する非常に大きな炉中で実施されている。しかしながら、ここに記載されているような、規定された三次元配置または形状を有する反応器への充填に到達する目的では、より小さい大きさの炉が用いられた場合に、炉の制御された充填および排出を実施することがしばしばより容易である。
【0054】
3.結果
直接および間接加熱が、熱処理された材料に極めて異なる特徴を与えることが見出された。このことは、炭素質材料は直接加熱によってのみ処理されている実験から、一方で他の実験では同じ炭素質の投入材料が、その他は同様の設定で、間接加熱によってのみ処理されている実験から得られた結果によって示されている。直接加熱は、図4中に記載された配置に従って実施された。間接加熱は、図7中に記載された配置に従って実施された。
【0055】
下記の表中に示された結果から理解することができるように、間接加熱によって黒鉛化された材料よりも、直接加熱は、−−黒鉛化後と同様の粒子径を有する無定形炭素の出発物質について−−、より高いキシレン密度、結晶性グラファイトドメインのより大きな厚さLc、より高いBET比表面積、ならびにより小さいグラファイト層間距離c/2で示される、より高い結晶化度を備えた材料を発生させる。平均して、より大きな黒鉛層だが、しかしながらより小さな平均層間距離が観察され、そして表面積/粒子径の比率は、直接加熱の場合には、若干より高い開孔度を示している。これらの実験から得られた詳細なパラメーターは表1中に列挙されている。
【0056】
【表1】

【0057】
遊離体および製品パラメーターの観察された変化から、適切な反応条件を選ぶことによって、特には本発明のプロセスにおいて直接および間接加熱の所望の比率を選択することによって、所望の製品パラメーター、例えば結晶化度を選択することが可能であることが明らかである。
【0058】
4.本発明の利点
(1)粒子状形態の黒鉛状材料から本質的になる機能性充填剤の使用は、炭素質材料の充填物を通した電流の流れを促進し、そしてまたプロセスの形態に大きな柔軟性を可能にする。
【0059】
(2)前記炭素を主成分とする成分の空間的配置にともなう前記機能性充填剤の使用は、直接および間接加熱の度合いの制御を可能とし、それが次には所望のように選択された製品のパラメーターを可能とする。
【0060】
(3)炭素質材料の予めの粉砕は、粒子径が他のプロセスパラメーター(すなわち、機能性充填剤と第3の固体体積絶縁体)と適合するのであれば必要ではない。
【0061】
本願出願人の知る限りにおいては、炭素質材料の熱処理のためのプロセスであって、粒子状形態の黒鉛状材料から本質的になる機能性充填剤が、充填物を通して電流が流れるのを可能とするために反応器へと加えられるプロセスは、従来技術には記載されていなかった。
【0062】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載された態様の多くの修正および変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。本発明およびその利点が、以下の、限定するものではない例の中で更に説明される。
【実施例】
【0063】
例1
慣用のアチソン型プロセス設定に従って処理される材料が、図2中に示されているように、より電導性の芯材料の外側に配置された。出発材料および直接加熱後に得られた製品の特性が、以下の表2中に与えられている。
【0064】
【表2】

【0065】
例2
全般的には、例1中と同じ反応器の種類および出発材料を用いた。しかしながら、この実験では、処理される材料は、図3中に示されているように、より電導性の充填剤材料の内部にあった。出発材料および製品の特性は、以下の表3中に与えられている。
【0066】
【表3】

【0067】
例1および2は、同じ出発材料および同じ電流の入力で、2つの異なる空間的配置(一方は導電性材料を内側に、他方は導電性材料を外側に)は、特には結晶性(キシレン密度および結晶性グラファイトドメインLcを参照)および製品の比表面積の点で、異なる2つの製品を発生させた。
【0068】
例3
異なるグラファイト品質の精製は、図1に示された炉中で実施された。このプロセスにおいては、特別な導電性の筋(nerve)または芯は用いなかった。
【0069】
表4(下記)には、2つの異なるグラファイト材料についての本発明の精製プロセスを説明している。主な物理的特徴が、熱処理前後の材料について報告されている。処理された材料は、処理の均一性を例証するために、反応器の上端および下端で分析された。灰分および水分によって与えられた全体的な純度は、出発材料の種類に関係なく著しく向上していることを認めることができる。微量元素は消失して、そして1ppm未満または、もはや検出不能である。バナジウムが、低減しているものの、やや高い水準で残っている。硫黄含量は、大きく減少しているが、またこのことはグラファイトの種類に依存する可能性がある。これらの結果によって例示されるように、反応器の上端および下端の間で著しい差異は観察することができず、本発明のプロセスは、反応器を通して、高度に均質な製品を生成することを立証している。
【0070】
【表4】

【0071】
図の参照符号
a)電源
b)電気接続
c)電極
d)電極筐体
e)炉の金属枠
f)可撓性絶縁体
g)第1の絶縁体
h)第2の固体絶縁体(耐熱性固体、例えば炭化ケイ素またはグラファイトの酸化物)
i)第3の固体体積絶縁体(低電導性を備えた炭素質材料からなる)
l)処理される炭素質材料
m)電導性黒鉛状材料(「機能性充填剤」)
n)黒鉛容器(処理される炭素質材料を収容している)
【図1A−1B】

【図2A−2B】

【図3A−3B】

【図4A−4B】

【図5A−5B】

【図6A−6B】

【図7A−7B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アチソン型炉中での炭素質材料の熱処理のための方法であって、処理される該炭素質材料に加えて、粒子状形態の黒鉛状材料から本質的になる機能性充填剤が、充填物を通して電流が流れることを可能にするために、該反応器に加えられる、方法。
【請求項2】
前記機能性充填剤の前記黒鉛状材料が、約1μm〜約10mm、好ましくは約10μm〜約1mmの範囲の粒子径を有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応器内部の熱処理される前記炭素質材料および前記機能性充填剤の空間的配置が、得られる材料の目的とする特性を得るようになされている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記炭素質材料の直接および間接加熱の度合いが、前記機能性充填剤と熱処理される前記炭素質材料との相互の空間的配置によって制御される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記炭素質材料が、
a)処理される前記炭素質材料、および
b)前記充填物を通して電流が流れることを可能にさせる、粒子状形態の黒鉛状材料からなる前記機能性充填剤、
からなる混合物の形態で前記アチソン型炉へと充填される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記機能性充填剤が、浸透限界を克服する量で存在している、好ましくは前記混合物中に機能性充填剤が少なくとも5質量%の量で存在している、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記炭素質材料が、1層もしくは2層以上の前記機能性充填剤の層で分離された、層の形態で、前記アチソン型炉へと充填されており、好ましくは炭素質材料および機能性充填剤の前記層は、横断面から見て交互の様式で配向されている、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記炭素質材料が、芯バーの形態で前記アチソン型炉へと充填されており、前記芯バーは電流が流れることを可能にする前記機能性充填剤で取り囲まれている、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
処理される前記炭素質材料が、前記アチソン型炉へと充填されており、粒子状形態の前記黒鉛状材料が、1つもしくは2つ以上のバーの形態で電極間に配置されており、好ましく黒鉛状材料の前記バーは、横断面から見た場合に矩形の形状である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記炭素質材料が、黒鉛容器内部にあって、アチソン型炉へと充填されており、そして前記黒鉛容器は、電気が流れることを可能にする前記機能性充填剤中に埋め込まれている、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記機能性充填剤と前記炭素質材料が、異なる粒径であり、それによって前記機能性充填剤の粒子からの前記処理された炭素質粒子の分離が可能となる、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理の後の冷たい炉の内容物が、用いられた充填剤および炭素質材料のそれぞれの粒径に応じたメッシュの大きさを有している篩を通して分級される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記炭素質材料および/または前記機能性充填剤が、1種もしくは2種以上の触媒化合物または他の添加剤を更に含む、請求項1〜12記載の方法。
【請求項14】
処理される前記炭素質材料および前記機能性充填剤に加えて、低導電性の粒子状形態の炭素質材料が、固体体積絶縁体として前記反応器へと加えられる、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
低電導性を備えた前記炭素質材料が、石油コークスおよび無煙炭から選ばれる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
処理される前記炭素質材料が、黒鉛化される材料である、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記炭素質材料が、処理および/または精製される黒鉛状材料である、請求項1〜15記載の方法。
【請求項18】
前記炭素質材料の加熱が、慣用のアチソンプロセスと比べて向上した均一性を特徴とする、請求項1〜17記載の方法。
【請求項19】
前記炭素質材料が、実質的に均一に加熱される、請求項18記載の方法。

【公表番号】特表2012−506835(P2012−506835A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532667(P2011−532667)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064161
【国際公開番号】WO2010/049428
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511089686)ティムカル ソシエテ アノニム (3)
【Fターム(参考)】