説明

グラフトポリマー

【課題】顔料の分散性能に優れ、かつ得られた顔料分散組成物の経時の増粘が抑制されるグラフトポリマー、及びそれを用いた非水系顔料分散組成物を提供する。
【解決手段】(1)下記の主鎖と側鎖を含むグラフトポリマー、及び(2)前記グラフトポリマー、顔料及び非水系溶媒を含有する、非水系顔料分散組成物である。
主鎖:窒素原子を含有するビニルモノマー(a)由来の構成単位と、水酸基を含有するビニルモノマー(b)由来の構成単位とを含む共重合体
側鎖:ベンゼン環を含有する(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の構成単位を含む重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフトポリマー及びそれを用いた非水系顔料分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
固体顔料を有機溶剤中に分散するためにポリマー材料が有用であることは、従来から知られており、溶剤系ペイント組成物を調合するための顔料分散物を形成するために使用されてきた。そのような分散剤は、主に自動車の外装用の溶剤ペイントや、液晶ディスプレイーのカラーフィルター用のインキに幅広く使用されている。特にカラーフィルターの分野においては、近年の液晶ディスプレーは高品質化のため高い彩度、明度が求められ、カラーフィルター中の顔料にも微細化及び顔料の高濃度化が要求されている。このような顔料分散用のポリマーとしては、グラフトポリマーが良好な性能を有することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルコール性水酸基を有するモノマー、マクロモノマー及びこれらと共重合可能な他のモノマーの共重合体であるバインダーポリマー、顔料、及び感放射線性化合物を含有する感放射線性組成物が開示されている。
特許文献2には、有機溶剤中に、有機顔料と、末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、窒素原子含有基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとの共重合体とが分散されてなる顔料分散組成物が開示されている。
また、特許文献3には、マクロモノマーを主鎖にグラフトさせたグラフトコポリマーであって、主鎖にアミド官能基を顔料固定基として含む、顔料分散剤に適したポリマー組成物、及びそれを用いた顔料分散物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−140654号公報
【特許文献2】特開平10−339949号公報
【特許文献3】特表2003−517063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3の顔料分散体は、微粒化された顔料の分散性能は有するものの、該顔料分散体を用いて得られた顔料分散組成物は保存時に比較的大きな増粘が見られる。この様な保存時の増粘は、顔料分散組成物を、例えばインクジェットプリンタ用のインクとして用いる場合に吐出量に悪影響を与える等の問題を生じる。
本発明は、顔料の分散性能に優れ、かつ得られた顔料分散組成物の経時の増粘が抑制されるグラフトポリマー、及びそれを用いた非水系顔料分散組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、窒素原子及び水酸基を有する主鎖と、ベンゼン環を有する側鎖を有するグラフトポリマーを顔料分散剤として用いることにより、前記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)下記の主鎖と側鎖を含むグラフトポリマー。
主鎖:窒素原子を含有するビニルモノマー(a)由来の構成単位と、水酸基を含有するビニルモノマー(b)由来の構成単位とを含む共重合体
側鎖:ベンゼン環を含有する(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の構成単位を含む重合体
(2)前記(1)のグラフトポリマー、顔料及び非水系溶媒を含有する、非水系顔料分散組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、顔料の分散性能に優れ、かつ得られた顔料分散組成物の保存時における経時の増粘が抑制されるグラフトポリマー、及びそのグラフトポリマーを含有する非水系顔料分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[グラフトポリマー]
本発明のグラフトポリマーは、下記の主鎖と側鎖を含む。
主鎖:窒素原子を含有するビニルモノマー(a)(以下、単に「モノマー(a)」ともいう)由来の構成単位と、水酸基を含有するビニルモノマー(b)(以下、単に「モノマー(b)」ともいう)由来の構成単位とを含む共重合体
側鎖:ベンゼン環を含有する(メタ)アクリル酸エステル(c)(以下、単に「モノマー(c)」ともいう)由来の構成単位を含む重合体
本発明のグラフトポリマーにおいて、主鎖を構成するモノマー(a)由来の構成単位と、モノマー(b)由来の構成単位とを含む共重合体は、顔料を非水系溶媒中に分散させる際に、顔料への吸着部分となるものであり、側鎖を構成するモノマー(c)由来の構成単位を含む重合体は、主として非水系溶媒と相互作用し、また立体障害によって顔料同士の凝集を抑制することで分散安定性を向上させるものである。
以下、これらの各成分について説明する。
【0009】
(窒素原子を含有するビニルモノマー(a))
本発明に用いられるモノマー(a)の好適例としては、(メタ)アクリルアミド類、ビニルアミド類、ビニルピリジン類、含窒素スチレン系モノマー、含窒素(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド;N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜6のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド2−メチルプロピルスルホン酸;(メタ)アクリロイルモルホリン、モルホリノエチル(メタ)アクリルアミドなどのモルホリン基を有する(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロイルピペリジン、ピペリジノエチル(メタ)アクリルアミドなどのピペリジノ基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルアミド類としては、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0010】
ビニルピリジン類としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられ、含窒素スチレン系モノマーとしては、p−スチレンスルホンアミド、p−アミノスチレン、アミノメチルスチレン等が挙げられる。
含窒素(メタ)アクリル酸エステルとしては、N,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6)(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジアルキルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中では、顔料への吸着性の観点から、アミド結合を有するビニルモノマーが好ましく、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピロリドン類がより好ましく、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の総炭素数2〜6のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド及びN−ビニル−2−ピロリドンが更に好ましく、N−ビニル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0011】
(水酸基を含有するビニルモノマー(b))
本発明のグラフトポリマーが、主鎖にモノマー(b)由来の構成単位を含有することで、本発明のグラフトポリマーを用いた非水系顔料分散組成物(以下単に「本発明の組成物」ともいう)の経時の粘度変化が抑制される。モノマー(b)由来の構成単位の含有が、本発明の組成物の経時の増粘を抑制するメカニズムは定かではないが、モノマー(b)由来の構成単位の存在によって一旦顔料に吸着した後のグラフトポリマーの顔料からの脱着が抑制されるため、顔料同士の凝集やグラフとポリマーによる顔料間の架橋が抑制され、増粘が抑制されるものと考えられる。
本発明に用いられるモノマー(b)としては、ビニルアルコール、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、p−ビニルベンジルアルコール等が挙げられる。
これらの中では、本発明の組成物の経時の増粘抑制の観点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルがより好ましい。
【0012】
(ベンゼン環を含有する(メタ)アクリル酸エステル(c))
本発明に用いられるモノマー(c)としては、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中から、使用する非水系溶媒との親和性が高いモノマーを選択して使用することができる。例えば、溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを使用する際には、(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましい。
また、モノマー(c)は、非水系溶媒との親和性の観点から、水酸基を有していないことが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの両方を意味する。
また本発明においては、主鎖を構成するビニルモノマーであって、窒素原子と水酸基の両者を含有するビニルモノマーは、窒素原子を含有するビニルモノマー(a)として取り扱う。
前記モノマー(a)、(b)及び(c)の各々は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
顔料への吸着性の観点及び本発明の組成物の粘度上昇の抑制や顔料の分散粒径の適正化の観点から、本発明のグラフトポリマーにおける全構成単位中の各構成単位の好ましい組成は以下のとおりである。
全構成単位中のモノマー(a)由来の構成単位の含有量は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
全構成単位中のモノマー(b)由来の構成単位の含有量は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
全構成単位中のモノマー(c)由来の構成単位の含有量は、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは40〜90重量%、更に好ましくは50〜85重量%である。
全構成単位中、側鎖を構成する構成単位の含有量は、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、更に好ましくは60〜80重量%である。
本発明のグラフトポリマーの重量平均分子量は、顔料への吸着性の観点及び粘度上昇の抑制の観点から、好ましくは3,000〜500,000、より好ましくは5,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000、更に好ましくは、20,000〜60,000である。
グラフトポリマーの側鎖重合体の数平均分子量は、本発明のグラフトポリマーの分散性能、及び本発明の組成物の増粘抑制の観点から、好ましくは500〜20,000、より好ましくは700〜10,000、更に好ましくは1,000〜6,000である。
【0014】
[グラフトポリマーの製造方法]
グラフトポリマーの製造方法には特に制限はなく、(i)主鎖を構成する重合体に重合の開始点を導入し、その開始点から側鎖部分の構成単位であるモノマーを重合するgrafting-from法、(ii)主鎖を構成する重合体と側鎖を構成する重合体とをカップリング反応させる高分子反応法、及び(iii)主鎖の構成単位であるモノマーと側鎖を構成するマクロモノマーとを共重合するマクロモノマー法等が挙げられる。これらの中では合成の容易さという観点からマクロモノマー法が好ましい。
【0015】
<マクロモノマー法によるグラフトポリマーの製造>
マクロモノマー法によるグラフトポリマーの製造は、主鎖の構成単位であるモノマー(a)及びモノマー(b)と、側鎖を構成するモノマー(c)を含み、片末端にエチレン性不飽和二重結合を有するマクロモノマーを含有するモノマー混合物を共重合することで行うことができる。
マクロモノマー法によるグラフトポリマーの製造においては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他のモノマーを共重合させることができる。これらのモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等のスチレン類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
上記マクロモノマーとしては、片末端に(メタ)アクリロイル基やスチリル基等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(c)の単独重合体、又はモノマー(c)と共重合可能なモノマーとの共重合体が好ましい。
モノマー(c)と共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等のスチレン類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。これら共重合可能なモノマーの内、非水系溶媒との親和性の観点から、水酸基を持たないモノマーが好ましい。
【0016】
マクロモノマー法による共重合法に特に制限はなく、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等を採用しうるが、特に溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキル(炭素数1〜6)エーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキル(炭素数1〜6)エーテルアセテート等のエステル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系等が挙げられる。また必要に応じて、連鎖移動剤等を用いることもできる。連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類が挙げられる。
反応温度は、用いる重合開始剤、溶媒の種類等により適宜選択できるが、通常40〜100℃の範囲が好ましい。原料となるビニルモノマー及びマクロモノマーは、一括添加して反応させてもよいが、組成をコントロールするために、分割添加して反応させてもよい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法より、生成したグラフトポリマーを単離することができる。また得られたグラフトポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、カラム処理、抽出等により未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
【0017】
〔非水系顔料分散組成物〕
本発明の非水系顔料分散組成物は、前記グラフトポリマー、顔料、及び非水系溶媒を含有する。
[顔料]
本発明に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料いずれであってもよい。また必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えばカーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、レーキ顔料が挙げられる。アゾ顔料としてはC.I.ピグメントレッド3等の不溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1等の溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6等の銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
縮合多環顔料としては、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のインジゴ系顔料、C.I.ピグメントグリーン8等の金属錯体顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントオレンジ71等のジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、有機顔料が好ましく、縮合多環顔料がより好ましく、下記一般式(1)で表される、ジケトピロロピロール系顔料が特に好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は−SO3H基を示す。
ジケトピロロピロール系顔料の市販品の好適例としては、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「Irgaphor Red B-CF」、「Igaphor Red BK-CF」、「Irgaphor Red BT-CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin DPP Red BL」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」等が挙げられる。
顔料は、明度Y値の向上の観点から、その平均一次粒子径を好ましくは100nm以下、更に好ましくは20〜60nmにした微粒化処理品を用いることが望ましい。
顔料の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測してその平均をその粒子の粒子径とし、次に100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を、求めた粒子径の立方体と近似して求め、体積平均粒子径を求めそれを平均一次粒子径とする。
上記の顔料、特にジケトピロロピロール系顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
[非水系溶媒]
本発明に用いられる非水系溶媒は特に限定されないが、特にカラーフィルター用の油性インクとして用いる場合、沸点が100℃以上の高沸点有機溶媒を用いることが好ましい。このような高沸点有機溶媒としては、以下の(i)〜(vi)等が挙げられる。
(i)アルコール類:エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等
(ii)エチレングリコールアルキルエーテル類(セロソルブ類):エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等
(iii)ジエチレングリコールアルキルエーテル類(カルビトール類):ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等
(iv)プロピレングリコールジアルキルエーテル類:プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等
(v)アルキレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類:エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート等
(vi)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類:エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等
上記非水系溶媒の中では、グラフトポリマーの溶解性と、顔料、特にジケトピロロピロール系顔料の分散性の観点から、沸点が120℃以上、特に130℃以上の高沸点有機溶媒が好ましい。一方、本発明の非水系顔料分散組成物塗布後の溶媒除去の観点から溶媒の沸点は300℃以下であることが好ましい。(vi)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点:146℃)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA、沸点:247℃)等が特に好ましい。
これらの非水系溶媒(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
[非水系顔料分散組成物組成]
本発明の組成物は、前記グラフトポリマー、顔料、及び非水系溶媒を含有する。
グラフトポリマーの含有量は、良好な粘度及び塗膜物性を得る観点から、顔料に対し10〜300重量%が好ましく、20〜200重量%がより好ましく、40〜100重量%が更に好ましい。
本発明の組成物中の顔料の割合は、良好な着色性及び粘度を得る観点から、1〜30重量%が好ましく、2〜20重量%がより好ましい。
非水系溶媒の含有量は、良好な着色性及び粘度を得る観点から、本発明の組成物中の全固形分に対して、100〜10,000重量%が好ましく、200〜1,000重量%がより好ましい。
本発明の組成物中の体積中位粒径(D50)は、用途に応じ、適宜調整すればよいが、カラーフィルター用色材として良好なコントラスト比を得るためには、80nm以下が好ましく、20〜70nmがより好ましく、20〜60nmが更に好ましい。ここで、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が小粒径側から累積して50%になる粒径を意味する。体積中位粒径(D50)の値は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0022】
本発明の組成物は、前記グラフトポリマー、顔料、非水系溶媒以外に、バインダー、多官能モノマー、光重合開始剤、熱重合開始剤等を含有することもできる。
バインダーとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体とアルコール類との反応物、エポキシ基含有重合体等を挙げることができる。その重量平均分子量は、5000〜200,000が好ましい。バインダーの含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して20〜80重量%が好ましい。
多官能モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等を挙げることができる。カルボン酸を2個以上有する多価カルボン酸化合物及びその誘導体等も挙げることができる。多官能モノマーの含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して10〜60重量%が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類を挙げることができる。特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]が好ましい。光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合開始剤の含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して0.2〜10重量%が好ましい。
【0023】
[非水系顔料分散組成物の製造]
本発明の組成物は、前記グラフトポリマー、顔料、及び非水系溶媒、更に必要に応じて前記のバインダー、多官能モノマー等を混合・分散することにより得ることができる。その混合・分散方法に特に制限はない。例えば、ペイントシェーカー、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ、商品名)、ミニラボ8.3H型(Rannie社、商品名)に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社、商品名)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社、商品名)、アルティマイザー(スギノマシン株式会社、商品名)、ジーナスPY(白水化学株式会社、商品名)、DeBEE2000(日本ビーイーイー株式会社、商品名)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等を用いて、各成分を混合・分散することができる。混合・分散処理においては2種以上の前記混合・分散装置を多段的に組み合わせてもよい。
分散処理においてはメディア式分散機を用いることが好ましい。用いるメディアの材質としては、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、高分子材料、金属等が挙げられるが、耐摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。また、メディアの粒径としては、0.003〜0.5mmが好ましく、0.005〜0.09mmがより好ましく、0.01〜0.08mmが更に好ましい。
また、上記で得られた非水系顔料分散組成物から更に、顔料に未吸着のグラフトポリマーを除去することで、本発明の組成物を更に低粘度化することもできる。未吸着ポリマーを除去する方法としては、例えば、遠心分離処理、ろ過処理等が挙げられる。
【0024】
(遠心分離処理)
遠心分離処理においては、上記混合・分散処理で得られた非水系顔料分散体を、遠心分離機を用いて遠心分離し、液分と固形分とに分離し、液分を除去して固形分を回収する。顔料に吸着していないグラフトポリマーは液分(非水系溶媒)中に存在するため、遠心分離中ないし遠心分離後に、液分(上澄み液)の全部又は一部を除去することにより、顔料に吸着していないグラフトポリマーを適切に取り除くことができる。また、回収される固形分は、主としてグラフトポリマーが顔料に吸着した粒子からなり、遠心分離後にスラリー状ないしケーキ状となって、遠心分離機の側壁ないし底部に残存しているので、容易に回収することができる。
用いることのできる遠心分離機に特に制限はなく、例えば、丸善株式会社発行、化学工学会編「化学装置便覧」改訂二版第2刷(798頁参照)等に記載されている遠心沈降管型、円筒型、分離板型、バスケット型、スクリーンデカンター型等の遠心分離機を用いることができる。これらの中では、品種切り替え時の洗浄を容易に行うことができる等の操作性の観点から、バスケット型遠心分離機が好ましく、無孔壁バスケット型遠心分離機がより好ましく、特に、特開2003−93811号公報等に記載されているような、上澄み液にノズルを挿入し、該上澄み液を排出させる機能(スキミング機能)を備えているバスケット型遠心分離機が、上澄み液を連続的に排出することができるとともに、効率よく遠心分離を行うことができることから好ましい。
【0025】
(再分散処理)
遠心分離処理後は、必要に応じて、得られた固形分を非水系溶媒に再分散処理することができる。再分散処理は、顔料の凝集体を解砕・安定化することを目的とする。顔料は、微粒化に伴って、表面積、表面エネルギーが増加し、この表面エネルギーを低下させようとして顔料は再凝集を始めることから、この顔料を更に解砕し、顔料粒子を安定化するため、再分散処理を行うことが好ましい。
再分散の方法に特に限定はなく、前記のペイントシェーカーや高圧ホモジナイザー等の分散機を用いて、前記固形分を非水系溶媒に混合、分散させることができる。また、超音波ホモジナイザー等を用いて再分散することもできる。
【0026】
(ろ過処理)
ろ過処理の方式は特に制限はなく、全量ろ過方式でもクロスフローろ過方式でもよいが、供給する分散体中の懸濁物質等が膜面に堆積するのを防止等の観点から、クロスフローろ過方式が好ましい。用いるろ過膜の孔径としては、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、逆浸透膜(RO膜)、ナノフィルター(NF膜)等の孔径域を使用し得る。ろ過膜の孔径は、好ましくは1〜50nm、より好ましくは2〜30nm、更に好ましくは3〜20nmである。
用いられるろ過膜としては、有機溶媒により劣化しないものであれば特に限定されない。例えば、セルロース、304及び316ステンレススチール、漂白コットン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニルデン、ポリカーボネート、ポリ4フッ化エチレン等の各種の材料を主原料とするろ過膜が挙げられる。これらの中でも、ポリスルホン膜、ポリ4フッ化エチレン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリエチレンテレフタレート膜、ポリフッ化ビニルデン膜及びポリカーボネート膜が好ましく、ポリエーテルスルホン膜が更に好ましい。
【実施例】
【0027】
以下の実施例及び比較例において、「%」は特記しない限り「重量%」を意味する。
なお、得られたグラフトポリマーの分子量、不揮発分、非水系顔料分散組成物の粘度、粘度増加率、体積中位粒径(D50)の測定は、以下の方法により行った。
【0028】
(1)グラフトポリマーの数平均分子量、重量平均分子量の測定
クロロホルムにジメチルラウリルアミン(花王製;製品名ファーミンDM)を1mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8220GPC)、昭和電工株式会社製カラム(K−804L+K−804L))、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)グラフトポリマーの不揮発分の測定
シャーレにガラス棒と乾燥無水硫酸ナトリウム10gを量り取り、そこにポリマー溶液2gを入れ、ガラス棒で混合し、150℃の減圧乾燥機(圧力8kPa)で8時間乾燥した。乾燥後の重さを量り、次式より不揮発分を算出した。
不揮発分(%)={[サンプル重量−(乾燥後の重量−(シャーレ+ガラス棒+無水硫酸ナトリウムの重量))]/サンプル重量}×100
【0029】
(3)非水系顔料分散組成物の粘度の測定
調製した非水系顔料分散組成物の粘度を、EL型粘度計を用いて、測定温度20℃、測定時間1分、回転数20rpm、標準ローター(1°34′×R24)使用の条件下で、測定を行った。
(4)粘度増加率の算出
調製した顔料分散組成物を40℃の条件下で168時間保存し、保存前後の粘度変化を対比して、下記計算式により粘度増加率を求め、分散安定性を評価した。
粘度増加率=(40℃で168時間保存後の粘度/調製直後の粘度)
(5)体積中位粒径(D50)の測定
調製した顔料分散組成物をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(DGMBA)で300倍に希釈し、粒度分析計(シスメックス社製、商品名:ZETASIZER Nano−ZS)を用いて、測定条件として、ジケトピロロピロール系顔料の粒子屈折率:1.51とその密度:1.45g/cm3、DGMBAの屈折率:1.426とその粘度:3.60cPを入力して、20℃で測定した。
【0030】
実施例1
(1)片末端メタクリロイル型ポリメタクリル酸ベンジル(マクロモノマー)の合成
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸ベンジル100g、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)4.0g、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、「DGMBA」という)420gを仕込み、窒素置換した後、75℃で攪拌しながら、メタクリル酸ベンジル900g、3−メルカプトプロピオン酸36.0g、DGMBA285g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)8.0gを3時間かけて滴下した。更に、75℃で攪拌しながら、前記重合開始剤8.0g、3−メルカプトプロピオン酸3.6g、DGMBA95gを1時間かけて滴下した。更に、75℃で2時間攪拌し、末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル溶液を得た。窒素ガス導入管を空気導入管に変更後、メタクリル酸グリシジル(GMA)70.0g、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)(触媒)23.8g、メトキシフェノール2.4gを添加し、空気バブリングを行いながら、90℃で6時間攪拌し、片末端メタクリロイル型ポリメタクリル酸ベンジル(マクロモノマー)を得た。90℃で12時間後のマクロモノマー溶液の酸価(JIS K0070に準拠)は0.11mgKOH/gであった。
得られたマクロモノマーの数平均分子量は2200、重量平均分子量4200であり、不揮発分は55.8%であった。
【0031】
(2)マクロモノマー法によるグラフトポリマー(1)の製造
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、N−ビニル−2−ピロリドン(Vp)5.2g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)1.2g、前記(1)で得られたマクロモノマー溶液13.4g、DGMBA24.35gを仕込み、窒素置換した後、攪拌しながら78℃に昇温して、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)0.6g、DGMBA 3.9gを添加した。更に、78℃で攪拌しながら、Vp 7.8g、HEMA 6.0g、前記(1)で得られたマクロモノマー溶液67.2g、DGMBA 39.6g、前記重合開始剤1.0gを1時間30分かけて滴下した。更に、78℃で攪拌しながら、HEMA 4.8g、前記(1)で得られたマクロモノマー溶液53.8g、DGMBA 2.24g、前記重合開始剤0.4gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、前記重合開始剤0.1g、DGMBA 3.0gを添加し、78℃で1時間攪拌した。更に前記重合開始剤0.1g、DGMBA 3.0gを添加し、78℃で1時間攪拌した。冷却後、グラフトポリマー(1)溶液を得た。
得られたグラフトポリマー(1)の数平均分子量は7100、重量平均分子量は42000であり、不揮発分は40%であった。ガスクロマトグラフィーにより求めたVp、HEMAの反応率はそれぞれ90.50%、100%であった。また1H−NMR(重クロロホルム溶媒)測定の結果、メタクリロイル基由来の6.1、5.55ppmのピークが消失していることからHEMAとマクロモノマーが完全に反応していることを確認した。これらの結果より、得られたグラフトポリマー(1)中、各モノマー由来の構成単位の組成はVp:HEMA:ポリメタクリル酸ベンジル=11.9:12.1:76.0(%)である。
【0032】
比較例1〔マクロモノマー法によるグラフトポリマー(2)の製造〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、N−ビニル−2−ピロリドン(Vp)10.0g、前記(1)で得られたマクロモノマー溶液13.4g、DGMBA 24.35gを仕込み、窒素置換した後、攪拌しながら78℃に昇温して、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)0.6g、DGMBA 3.9gを添加した。更に、78℃で攪拌しながら、Vp 15.0g、前記(1)で得られたマクロモノマー溶液67.2g、DGMBA 39.6g、前記重合開始剤1.0gを1時間30分かけて滴下した。更に、78℃で攪拌しながら、前記(1)で得られたマクロモノマー溶液53.8g、DGMBA 2.24g、前記重合開始剤0.4gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、前記重合開始剤0.1g、DGMBA 3.0gを添加し、78℃で1時間攪拌した。更に前記重合開始剤0.1g、DGMBA 3.0gを添加し、78℃で1時間攪拌した。冷却後、グラフトポリマー(2)溶液を得た。
得られたグラフトポリマー(2)の数平均分子量は8200、重量平均分子量は45000であり、不揮発分は40%であった。ガスクロマトグラフィーにより求めたVpの反応率はそれぞれ92.0%であった。また1H−NMR(重クロロホルム溶媒)測定の結果、メタクリロイル基由来の6.1ppm、5.55ppmのピークが消失していることからマクロモノマーが完全に反応していることを確認した。これらの結果より、得られたグラフトポリマー(2)中の各モノマー由来の構成単位の組成はVp:HEMA:ポリメタクリル酸ベンジル=23.5:0:76.5(%)である。
【0033】
実施例2
(1)非水系顔料分散組成物(A)の製造
C.I.ピグメントレッド254(東洋インキ株式会社製、LIONOGEN RED LX−8318)20g、実施例1で得られたグラフトポリマー(1)溶液75g(ポリマーとして30g)、DGMBA 105gを直径0.3mmのジルコニアビーズ400gと一緒に500ccのポリ瓶に量り、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で3時間振とうし、金網でジルコニアビーズを濾過し、予備分散体を得た。更に得られた予備分散体100gを直径0.05mmのジルコニアビーズ100gと一緒に250ccのポリ瓶に量り、48時間振とうした。金網でジルコニアビーズを濾過し、顔料分散組成物(A)を得た。顔料分散組成物(A)の粘度は57mPa・s、D50は30nmであった。
(2)非水系顔料分散組成物(B)の製造
上記(1)で得られた顔料分散組成物(A)を、遠心分離機(日立工機株式会社製、商品名:himac CP56G)を用いて、25000rpmで24時間遠心分離し上澄みを除去した。顔料濃度が10%となるようにDGMBA を加え、超音波により再分散させて顔料分散組成物(B)を得た。顔料分散組成物(B)のグラフトポリマーの含有量は、顔料に対し75重量%であった。顔料分散組成物(B)の粘度は、16mPa・sであり、粘度増加率は1.40であった。結果を表1に示す。
【0034】
比較例2
実施例2において、グラフトポリマー(1)を比較例1で得られたグラフトポリマー(2)に変えた以外は、実施例2(1)と同様の操作を行い、非水系顔料分散組成物(C)を得た。顔料分散組成物(C)の粘度は77mPa・s、D50は30nmであった。
上記で得られた顔料分散組成物(C)を用いて、実施例2(2)と同様の操作を行い、非水系顔料分散組成物(D)を得た。顔料分散組成物(D)のグラフトポリマーの含有量は、顔料に対し82重量%であった。顔料分散組成物(D)の粘度は18mPa・sであり、粘度増加率は1.97であった。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1において、実施例2(1)の顔料分散組成物(A)と比較例2の顔料分散組成物(C)との対比、及び実施例2(2)の顔料分散組成物(B)と比較例2の顔料分散組成物(D)との対比から明らかなように、実施例2の顔料分散組成物は、比較例2の顔料分散組成物に比べて、顔料の微細化(分散性能)は同等であるが、粘度が低く、かつ分散安定性(粘度増加率の低さ)に優れているため、長時間の保存後にも安定な性能を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のグラフトポリマー及び非水系顔料分散組成物は、分散安定性に優れているため、長時間の保存後にも安定な性能を得ることができ、液晶表示素子や固体撮像素子等のカラーフィルター用色材として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の主鎖と側鎖を含むグラフトポリマー。
主鎖:窒素原子を含有するビニルモノマー(a)由来の構成単位と、水酸基を含有するビニルモノマー(b)由来の構成単位とを含む共重合体
側鎖:ベンゼン環を含有する(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の構成単位を含む重合体
【請求項2】
グラフトポリマーの全構成単位中、側鎖を構成する構成単位の含有量が30〜95重量%である、請求項1に記載のグラフトポリマー。
【請求項3】
側鎖重合体の数平均分子量が500〜20,000である、請求項1又は2に記載のグラフトポリマー。
【請求項4】
グラフトポリマーの重量平均分子量が3,000〜500,000である、請求項1〜3のいずれかに記載のグラフトポリマー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のグラフトポリマー、顔料及び非水系溶媒を含有する、非水系顔料分散組成物。
【請求項6】
グラフトポリマー、顔料及び非水系溶媒を分散処理した後に、遠心分離処理及び/又はろ過処理工程して得られる、請求項5に記載の非水系顔料分散組成物。

【公開番号】特開2012−87212(P2012−87212A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234957(P2010−234957)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】