説明

グラブバケット

【課題】左右のシェルを開放したとき、シェル内の土砂がシェル内壁面に付着して残ることなく、落下させる。
【解決手段】A型フレーム2に、シェル3L,3R及びセンターブロック4とを有し、浚渫作業を行うグラブバケット1である。各シェル3L,3Rの内壁面に沿って、可撓性を有する弾性シート11が設けられ、シェル3L,3Rの開放時に、弾性シート11の少なくとも一部が、下方に撓み、シェル3L,3Rの内壁面と間の隙間を広げるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫船などに用いるグラブバケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浚渫船などに用いられるグラブバケットとして、A型フレームに左右一対のシェルが開閉可能に設けられたものは知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
浚渫作業は、図4及び図5に示すように、浚渫船21のクレーン22からロープ23にて吊り下げられグラブバケット24を用いて、海域などの海岸汚染防止枠25(シルトプロテクター)内で、水底土砂をつかみ揚げて、舷側に1〜2m程度離れて位置している土砂運搬船27に積載するものである。
【0004】
この作業は、海岸汚染防止枠25内で、グラブバケット24のシェル28L,28Rを図6(a)に示すように開放し、海岸汚染防止枠25(シルトプロテクター)内で水底土砂Sをつかみ揚げて、図6(b)に示すようにグラブバケット24のシェル28L,28Rを閉じ、クレーン22の旋回によりグラブバケット24を土砂運搬船27まで移動させる。それから、土砂運搬船27上でグラブバケット24のシェル28L,28Rを開き、水底土砂を土砂運搬船27上に落下させ、グラブバケット24のシェル28L,28Rは、開放状態を維持して、海岸汚染防止枠25上に戻り、同じ作業を繰り返すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3884028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グラブバケット24にてつかみ上げられる水底土砂Sは、濡れているので、土砂運搬船27上でグラブバケット24のシェル28L,28Rを開放しても、図7に示すように、前記水底土砂の一部S1がシェル28L,28Rの内壁面に付着したままで、下方の土砂運搬船27上に落下しない場合が生ずる。このように、シェル28L,28Rのシェル内壁面に土砂が付着したままであると、グラブバケット24のシェル28L,28Rが開放状態で、土砂運搬船27上から、海岸汚染防止枠25上に移動する際に、シェル内壁面に付着している土砂が、土砂運搬船27と海岸汚染防止枠25との間(図5の領域U参照)に落下し、海域(海岸)を汚染してしまうおそれがある。
【0007】
この発明は、左右のシェルを開放したとき、シェル内の土砂がシェル内壁面に付着して残ることなく、落下させることができるグラブバケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、A型フレーム、左右のシェル、センターブロックとを有し、浚渫作業を行うグラブバケットであって、前記各シェルの内壁面に沿って、可撓性を有する弾性シートが設けられ、前記シェルの開放時に、前記弾性シートの少なくとも一部が、下方に撓み、前記シェルの内壁面と間の隙間を広げるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、シェルの開放時に、前記弾性シートの少なくとも一部が、下方に撓み、前記シェルの内壁面と間の隙間を広げるようになっているので、下方に撓むことで弾性シートが振れ、その振れによって弾性シートに付着している水底土砂が振り落とされる。よって、左右のシェルを開放したとき、シェルの内壁面に付着している土砂を振り落として確実に落下させることができるので、シェル内壁面に土砂が付着して残ることが回避される。
【0010】
請求項2に記載のように、前記シェルの内壁面には、内方に突出する複数のボス部が設けられ、前記ボス部に対し前記弾性シートが固定されていることが望ましい。
【0011】
このようにすれば、ボス部の高さに相当する大きさの隙間が、シェル内壁面と弾性シートのシート面との間に形成されるので、弾性シートがシェル内壁面に密着することが回避され、弾性シートを確実に撓ませることができる。
【0012】
請求項3に記載のように、前記ボス部は、前記シェルの回転軸方向に列状に配置されていることが望ましい。
【0013】
このようにすれば、列状のボス部の間に位置する弾性シートが、下方に撓むことができるので、弾性シートを大きく撓ませることができる。
【0014】
請求項4に記載のように、前記弾性シートは、前記ボス部に対し、板状部材を介してボルトにて固定されていることが望ましい。
【0015】
このようにすれば、ボス部と板状部材との間に弾性シートを挟んで保持するので、弾性シートを損傷することなく、シェル内壁面に設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記のように、シェルの開放時に、前記弾性シートの少なくとも一部が、下方に撓み、前記シェルの内壁面と間の隙間を広げるようになっているので、下方に撓むことで弾性シートが振れ、その振れによって弾性シートに付着している水底土砂が振り落とされる。よって、左右のシェルを開放したとき、シェル内の土砂がシェル内壁面に付着して残ることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るグラブバケットについて、シェルを閉じた状態で示す断面図である。
【図2】同シェルを開いた状態で示す断面図である。
【図3】(a)は図2のA部を拡大して示す図、(b)は図3(a)のB方向矢視図である。
【図4】グラブバケットを使用するグラブ浚渫船の側面図である。
【図5】同平面図である。
【図6】(a)(b)はそれぞれグラブバケットの動作説明図である。
【図7】土砂の残留状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、グラブバケット1は、浚渫船のクレーンの2本の吊支ロープにて吊り下げられるA型フレーム2と、そのA型フレーム2の下側に左右一対のシェル3L,3Rおよびセンターブロック4(下部フレーム)が取り付けられている。A型フレーム2は、前記2本の吊支ロープに吊環5a,5aを介して連結される上部フレーム5と、この上部フレーム5の両端部に上端部が連結されるタイロッド6L,6Rとを備える。
【0020】
センターブロック4にはシェル3L,3Rの中央部が回転軸7を介して回転可能に軸支されている。シェル3L,3Rの外側ブラケット部3La,3Raは、固定ピン8L,8Rを介して、タイロッド6L,6Rの下端部に連結されている、
そして、上部フレーム5には上シーブ9L,9Rが回転可能に軸支されている。センターブロック4には下シーブ10が回転可能に軸支されている。上シーブ9L,9Rと下シーブ10との間にシェル開閉用の開閉ロープ(図示せず)を掛け回してシェル3L,3Rを開閉可能なるようにしている。
【0021】
各シェル3L,3Rの内壁面であって、シェル3L,3Rの開放時に上側に位置する部分には、図3に示すように、その内壁面に沿って、可撓性を有する弾性シート11が設けられている。シェル3L,3Rの内壁面には、内方に突出する複数のボス部(シェル3L側のボス部3Lbのみ図示)が設けられ、このボス部が設けられている位置で弾性シート11が固定されている。このボス部は、シェル3L,3Rの回転軸7方向に列状に平行に配列され、各ボス部に対し、弾性シート11が、前記列方向に長い板状部材12を介してボルト13にて固定されている。
【0022】
続いて、前述したグラブバケット1を用いた浚渫作業を、図5を利用して説明する。
【0023】
海岸汚染防止枠25内でグラブバケット1のシェル3L,3Rを開放し、海岸汚染防止枠25(シルトプロテクター)内で水底土砂をつかみ揚げて、シェル3L,3Rを閉じ、クレーン22の旋回によりグラブバケット1を土砂運搬船27まで移動させる。
【0024】
それから、土砂運搬船27上でグラブバケット24のシェル3L,3Rを開放し、バケット内の水底土砂を土砂運搬船27上に落下させる。このとき、シェル3L,3Rの開放時には、弾性シート11の一部(平行に延びる列状のボス部の間の部分)が下方に撓む。つまり、シェル3L,3Rの内壁面と弾性体シート11との間の隙間が広げられる(図3(a)一点鎖線参照)。
【0025】
このように弾性シート11が、列状のボス部の間において下方に撓むので、弾性シート11が振れ、その振れによって弾性シート11に付着している水底土砂が下方に振り落とされる。よって、シェル3L,3Rを開放したときに、従来のようにシェル3L,3R内の土砂がシェル内壁面に付着して残ることが回避される。
【0026】
特に、ボス部を利用して弾性シートを11を取り付けているので、そのボス部の高さにほぼ相当する大きさの隙間が、シェル内壁面と弾性シート11のシート面との間に予め形成されることになり、弾性シート11がシェル内壁面に密着することを回避することができる。よって、シェル開放時に弾性シート11を下方に確実に撓ませ、振らせることをがきる。これにより、シェル3L,3R内の土砂がシェル内壁面に付着して残ることが効果的に回避される。また、ボス部を列状とし、その列状のボス部の間において、弾性シート11を下方に撓ませるので、弾性シート11の撓み(振れ)を大きくすることができる。
【0027】
それから、グラブバケット1のシェル3L,3Rは、開放状態を維持して、海岸汚染防止枠25上に戻るが、シェル内壁面に付着している土砂はないので、移動の途中に土砂が落下して、周囲を汚損することもない。
【符号の説明】
【0028】
1 グラブバケット
2 A型フレーム
3L,3R シェル
3Lb ボス部
4 センターブロック
5 上部フレーム
6L,6R タイロッド
7 回転軸
8L,8R 固定ピン
11 弾性シート
12 板状部材
13 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型フレームに、シェル及びセンターブロックとが一体になった浚渫ユニットを固定ピンを用いて取り付けてなり、浚渫作業を行うグラブバケットであって、
前記各シェルの内壁面に沿って、可撓性を有する弾性シートが設けられ、
前記シェルの開放時に、前記弾性シートの少なくとも一部が、下方に撓み、前記シェルの内壁面と間の隙間を広げるように構成されていることを特徴とするグラブバケット。
【請求項2】
前記シェルの内壁面には、内方に突出する複数のボス部が設けられ、前記ボス部に対し前記弾性シートが固定されている請求項1記載のグラブバケット。
【請求項3】
前記ボス部は、前記シェルの回転軸方向に列状に配置されている請求項2記載のグラブバケット。
【請求項4】
前記弾性シートは、前記ボス部に対し、板状部材を介してボルトにて固定されている請求項2または3記載のグラブバケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−166928(P2012−166928A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30594(P2011−30594)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(591043477)寄神建設株式会社 (17)
【Fターム(参考)】