説明

グリストラップの排液処理方法及び排液処理装置

【課題】 従来の排液処理装置では、グリストラップ内に戻した液体が「水質汚濁防止法排出基準」など所定の水質基準に適合しているか不明であり、外部への排水可否判断が難しい、といった課題があった。
【解決手段】 グリストラップ内の排液に処理剤を添加する処理剤添加工程と、前記排液と処理剤とを、グリストラップ内又は/及び汲み上げポンプで汲み上げポンプ内に汲み上げてその汲み上げポンプ内で混合攪拌して排液を処理液とする混合攪拌工程と、前記排液又は/及び処理液の水質を測定し、その測定水質と基準水質の双方又は測定水質のみを表示する水質測定表示工程と、前記処理液をグリストラップ内、又は/及びグリストラップ外に排出する排出工程と、を処理液の測定水質が前記基準水質又はそれに近くなるまで繰り返し実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば、給食センタ−、レストラン、ホテル、食物加工所、スーパー、デパート、病院といった各種施設の厨房、その他の調理場等の内部又は屋外に設置されているグリストラップ内の排液を処理する排液処理方法と、その排液処理に使用される排液処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給食センタ−、ホテル、食物加工所、スーパー、デパート、病院、飲食店などの厨房においては、調理油、生ごみ、食べ残しの食物類、箸、爪楊枝、紙屑、ビニール屑、その他の塵芥、それらに伴う液体等(以下、これらを「排液」という。)が日常的に発生する。わが国では、「水質汚濁防止法排出基準」に適合しない排液を下水管、排水管に直接排水することは禁止されているため、現在は厨房内又は外に設置されている貯液槽(グリストラップ)に排液を溜めておき、グリストラップ内の排液を、例えば、週に一度、月に一度といったように定期的に清掃業者に依頼して清掃しているのが実情である。
【0003】
しかし、従来の排液処理方法は、清掃業者が排液を処理した後に、さらに排液を中和剤で中和したうえで下水道や浄化槽に排出する必要があるため、二次的な費用や労力がかかりその分コスト高となっていた。また、次回の定期清掃日となるまでにグリストラップ内には排液が充満し、その排液が排水管や下水管に未処理のまま流れ出てしまうこともあり、環境汚染や厨房内の悪臭の原因となっていた。
【0004】
本願発明者は、先に特許文献1、2に示すグリストラップの排液処理装置を開発した。これは排液処理装置を自動車に搭載した排液処理車であり、グリストラップから排液を吸引するバキューム、バキュームが吸引した排液中の塵芥及び汚泥を破砕して除去する撹拌分離機、吸引した排液を油分と水分とに分離する油水分離室、油水分離室内の排液を加熱して油分と水分との分離を促進する燃焼装置、油水分離室で分離された油分から塵芥及び汚泥を除去して燃料油とし、その燃料油を前記油水分離室の燃焼装置に燃料として供給する油精製機、油水分離室で分離された水分から塵芥及び汚泥を除去して水とし、その水をグリストラップに戻す遠心分離機を備えるものである。
【0005】
特許文献1、2の排液処理装置によれば、グリストラップから吸引した排液を油水分離して水分のみをグリストラップに戻すことができるため、排水管、下水管に流れ込む排液の量を軽減することが可能であり、この結果、環境を汚染せず、衛生的にグリストラップを清掃することができるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−737号公報
【特許文献2】特開2007−14926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2記載の排液処理装置には次のような課題があった。
(1)特許文献1、2記載の排液処理装置で処理を行い、再度グリストラップ内に戻した液体が「水質汚濁防止法排出基準」など所定の水質基準に適合しているか不明であり、外部への排水可否判断が難しい。
(2)特許文献1、2記載の排液処理装置で処理を行った液体の水質測定を行ったとしても、例えば「水質汚濁防止法排出基準」の一般項目は15項目もあり、全ての基準値を調べ各々比較して合否判定するのは著しく手間と時間を要する。
(3)特許文献1、2記載の排液処理装置は、排液を加熱して油分と水分との分離を促進させる方式であるため、作業可能温度になるまでの準備(ウォームアップ)に時間がかかり、作業性が悪かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は前記課題を解決し、確実かつ容易に「水質汚濁防止法排出基準」など所定の水質基準に適合した状態で排液を外部に排出することができるグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置を提供するものである。
【0009】
本願発明のグリストラップの排液処理方法の一つは、グリストラップ内の排液に処理剤を添加する処理剤添加工程と、前記排液と処理剤とを、グリストラップ内又は/及び汲み上げポンプで汲み上げポンプ内に汲み上げてその汲み上げポンプ内で混合攪拌して排液を処理液とする混合攪拌工程と、前記排液又は/及び処理液の水質を測定し、その測定水質と基準水質の双方又は測定水質のみを表示する水質測定表示工程と、前記処理液をグリストラップ内、又は/及びグリストラップ外に排出する排出工程と、を処理液の測定水質が前記基準水質又はそれに近くなるまで繰り返し実施する方法である。
【0010】
本願発明のグリストラップの排液処理方法の一つは、グリストラップ内の排液を汲み上げポンプで汲み上げポンプ内に汲み上げるとともに、汲み上げ中又は汲み上げ後に処理剤を添加する処理剤添加工程と、前記排液と処理剤を汲み上げポンプ内で混合攪拌して排液を処理液とする混合攪拌工程と、前記処理液の水質を測定し、その測定水質と所定の基準水質を表示する水質測定表示工程と、前記処理液をグリストラップ内、又は/及びグリストラップ外に排出する排出工程と、を処理液の測定水質が基準水質又はそれに近くなるまで繰り返し実施する方法である。
【0011】
本願発明のグリストラップの排液処理方法は、前記グリストラップの排液処理方法において、処理剤添加工程、混合攪拌工程、水質測定表示工程、排出工程のいずれか一又は二以上の工程で、排液又は処理液を殺菌、脱色、及び脱臭のいずれか一又は二以上の機能を備えたフィルタに通過させる方法とすることもできる。
【0012】
本願発明のグリストラップの排液処理装置は、グリストラップ内の排液を汲み上げる汲み上げポンプと、処理剤と排液とを混合攪拌して処理液とする混合攪拌器と、処理液の水質を測定する水質測定器と、前記水質測定器で測定された測定水質と基準水質の双方又は測定水質のみを表示可能な表示器と、処理液の測定水質と基準水質を比較可能な比較手段と、を備えた装置である。
【0013】
本願発明のグリストラップの排液処理装置は、水質測定器及び表示器を着脱可能とすることも、排液又は処理液を殺菌、脱色、及び脱臭のいずれか一又は二以上の機能を有するフィルタを備えたものとすることも、水質測定器で測定された測定水質と基準水質を印刷可能な印刷器を備えたものとすることもできる。
【0014】
本願発明のグリストラップの排液処理装置は、前記記載のグリストラップの排液処理装置において、水質測定器で測定された測定水質と基準水質に基づいて、処理液に処理剤を添加して混合攪拌する処理を制御し得る制御装置を備えたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
(1)本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置は、排液や処理液の水質測定値と水質基準が表示されるので、そのまま外部へ排出できるか、排液処理したうえで外部へ排出すべきかを容易に判断できる。
(2)本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置は、処理液が水質基準に適合したことを確認できるので、確実に水質基準に適合した排液のみを外部へ排出することが可能となり、環境を汚染することがない。
(3)本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置は、特許文献1、2のように排液の加熱を必要としないことから、排液処理作業前のウォームアップ時間が省略されて作業効率が向上し、また、排液が高温とならず異臭が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】既存のグリストラップの一例を示す断面図。
【図2】本願発明のグリストラップの排液処理装置の実施形態の一例を示す斜視説明図。
【図3】本願発明の排液処理装置に処理タンクが備えられた場合の実施形態を示す斜視説明図。
【図4】本願発明の排液処理装置をグリストラップ内に配置して使用する実施形態を示す斜視説明図。
【図5】本願発明の排液処理装置をグリストラップの縁に吊り下げて使用する実施形態の側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
はじめにグリストラップA内における通常の排液処理を図1に基づいて説明する。厨房などで生じた排液B(通常、塵芥が含まれている)がグリストラップA内に排出されると、排液Bに含まれる塵芥はグリストラップA内のバスケットCで回収される。グリストラップA内は数枚の仕切りDが設けられており、これによって排液Bの流速は減速するため、比重差からグリセリンと脂肪酸が結合した油脂分Eは上方に、水分F(通常、汚泥を含む)は下方に分離される。分離された水分Fは、トラップGを経て徐々に下水道や浄化槽に排出される。
【0018】
このように従来のグリストラップによる排液処理では、水分Fのみを外部に排出し油脂分Eは別途処理していたのに対して、本願発明はこの油脂分Eも処理して外部に排出するものである。より詳しくは、油脂分Eと水分Fを化学反応で脂肪酸に変化させる(グリセリンと切り離す)。油脂を脂肪酸とすることで、油脂分Eそのものより生分解性がはるかに高まる。
【0019】
以下、本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置の第1の実施形態を図2に基づいて説明する。当該実施形態は、グリストラップA内に直接鹸化剤を投入し、排液Bを図2に示す排液処理装置1によって処理するものである。
排液処理装置1は、図2に示すように、汲み上げポンプ2、排出ポンプ3、塵芥除去器4、モータMが一つのケース5内に収容されている。ケース5は、底面に車輪6やハンドル7を取り付けて移動可能とすることもできる。
【0020】
(処理剤添加工程)
グリストラップA内の排液Bに直接処理剤である鹸化剤を投入する。排液Bと鹸化剤の混合比率は、石鹸化効率やコスト等の面から5:1程度が好ましいが、排液Bの汚れ具合によってこの比率を変え、例えば、汚れが著しい場合は鹸化剤の割合を大きく、汚れが少ない場合は鹸化剤の割合を小さくすることもできる。
【0021】
本願発明で使用する鹸化剤は、排液B、特に排液B中の油脂分Eを石鹸液状にする(石鹸化液にする)ことができるものであり、液状、ゲル状、粉状、その他の形状のものが使用され、一例として、出願人の商品(商品名「クリンエコフロー」)等を用いることができる。「クリンエコフロー」に含有される主成分は、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、ヤシ脂肪酸ジェタノールアミド、無機質類数種、精製水などである。なお、本願発明では排液Bを改質可能であって環境に優しいものであれば、鹸化剤の他に界面活性剤、消臭剤、中和剤、それら二以上の混合剤等を使用することもできる。
【0022】
(混合攪拌工程)
図2に示すように、汲み上げポンプ2には連結パイプ2aが連結され、この連結パイプ2aの先には汲み上げパイプ又はホース(以下これらを「汲み上げホース8」という。)が連結され、この汲み上げホース8の先端はグリストラップA内の排液Bに差し込まれている。
モータMの駆動により汲み上げポンプ2を作動させ、汲み上げホース8を通して鹸化剤が添加された排液Bを吸引し、汲み上げポンプ2内に貯蔵する。
汲み上げポンプ2はグリストラップA内の排液Bを吸引する能力を必要とし、液体を吸引・吐出可能なバキューム、水中ポンプ、陸上ポンプ、その他の任意の電動式ポンプ等を用いることができる。また、汲み上げホース8は可撓性を有するものが適する。
【0023】
汲み上げポンプ2内に貯蔵された排液Bは、汲み上げポンプ2内に備えられる混合攪拌器(図示しない)によって鹸化剤と混合攪拌され石鹸化液となる。この混合攪拌処理が終わると、石鹸化液状態の排液Bは移送パイプ又はホース(以下、これらを「移送ホース9」という)を通じて塵芥除去器4内に排出される。この移送ホース9は、汲み上げホース8同様可撓性を有するものが適する。
排出された石鹸化液状態の排液Bは、塵芥除去器4の通孔10を通過してトレイ11の中に流入し、さらにトレイ11の下部に接続されているホース12に流下する。この際、通孔10を通過し得なかった塵芥は、塵芥除去器4内に残って後に除去回収される。
【0024】
ホース12を流下した石鹸化液状態の排液Bは排出ポンプ3に貯蔵される。その後、後述する「排出工程」において、排出ポンプ3の連結パイプ3aに連結された排出パイプ又はホース(以下これらを「排出ホース13」という。)を経てグリストラップA内に排出される。この排出ホース13は、汲み上げホース8同様に可撓性を有するものが適する。排出ポンプ3内に貯蔵される間に、さらに石鹸化液状態の排液Bを混合攪拌すると、より確実に石鹸化液とすることができる。
【0025】
ホース12にフィルタHを設け、このフィルタHを流下させることで石鹸化液状態の排液Bを濾過、脱色、脱臭といった処理を行うこともできる。このフィルタHは、水中の汚れを除く効能を有するナノバブルあるいはマイクロ・ナノバブルを生成する装置を用いることができる。特に、オゾンによって生成されたナノバブル、マイクロ・ナノバブルは非常に強力な殺菌効果や消毒効果があり、その殺菌能力は塩素系殺菌剤に比べると約10倍で、そのうえトリハロメタンなど有害性物質を発生しないという効果もある。
なお、フィルタHの配置箇所はホース12に限らず濾過、脱色、脱臭の効率が良くなるよう適宜選択可能で、配置数も同様に適宜選択することができる。
【0026】
(水質測定表示工程)
混合攪拌工程を経た石鹸化液状態の排液Bは、図2に示す水質測定器14によって水質測定される。水質を測る場合、その測定項目は種々あり例えば「水質汚濁防止法(排水基準を定める省令)」では、排出水の排出基準として有害物質による汚染状態と有害物質以外による汚染状態に分け、さらに有害物質による汚染状態では、カドミウム及びその化合物、シアン化合物、六価クロム化合物の含有量など27の測定項目が掲げられ、有害物質以外による汚染状態では15項目が掲げられている。
表1に、「水質汚濁防止法(排水基準を定める省令)」で定める、有害物質以外による汚染状態を測るための測定項目とその基準値を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
水質測定器14では、全ての測定項目を測ることのできる計器類を備えたものとすることもできるが、排水の水質基準は監督する自治体によっても異なり、排出先によっては任意に水質基準を定められる場合もあるので、1又は2以上の測定項目を測ることのできる計器類を備えたものとすることもできる。
なお、水質測定器14は排出ホース13の途中、グリストラップAの中、排出ポンプ3の中などに設置できるうえ、一箇所又は二箇所以上に設置することができる。また図2に示すように、水質測定器14に短い管とフランジを取り付けボルトによる取り付け構造とするなど、容易に排出ホース13に着脱できる構造とすることができる。このように水質測定器14を排液処理装置1の本体とは別体として着脱容易なものとすることもできるし、水質測定器14をあらかじめ排液処理装置1の本体に組み込んだ構造とすることもできる。水質測定器14をフィルタHと一体型にし、装置全体の小型化を図ることもできる。
【0029】
水質測定器14で測定された測定値あるいはリトマス試験紙などによる測定結果(以下、これらをまとめて「測定水質」という。)は、情報伝達手段(図示しない)によりモニター15に伝達されて表示される。また、事前に目標とする測定項目ごとの基準値あるいはリトマス試験紙などによる判定基準(以下、これらをまとめて「基準水質」という。)をパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という。)などの情報格納手段に入力して格納しておき、この基準水質情報もあわせて表示することもできる。すなわち、水質測定器14で測定された測定水質がパソコンに伝達され、既に格納された測定項目とその基準水質とを合わせて情報整理し、その結果をモニター15に伝達して、測定項目−測定水質−基準水質といった具合に表示させる。このように、測定項目ごとに測定水質と基準水質を対応させて表示すると、排液Bの処理状態(汚染状態)が容易に確認できる。なお、モニター15が情報格納手段を備えている場合には、必ずしもパソコンを必要とはしない。
【0030】
モニター15では、測定項目、測定水質、基準水質の組み合わせに代えて、あるいはこれに加えて項目ごとに合否判定を表示することもできる。この合否判定は、事前に格納された基準水質と水質測定器14から伝達された測定水質を基にパソコンで計算し、その計算結果をモニター15に伝達して表示させる。表示内容としては、例えば、水素イオン濃度の測定水質が基準水質の範囲内に収まっていれば、水素イオン濃度については基準適合を意味する青色表示(その他、OKなど)とし、浮遊物質量が基準水質を5%ほど超えている場合は黄色表示(その他、注意など)、基準水質を極度に超えている場合は赤色表示(その他、NGなど)とすることもできる。また、各測定項目から総合的に判断して合否判定表示をすることもできる。
【0031】
パソコンあるいは情報格納手段を備えたモニター15にプリンタを接続すると、モニター15に表示する内容を印刷(印字)させることもできる。日付や時間、又は気温や湿度などとともに印刷しファイリングすれば、周辺環境に応じた鹸化剤の最適量の解析など、種々の解析、予測に役立つものとなる。
【0032】
モニター15は、ケース5などに組み込んで本体と一体型とすることもできるし、あるいは本体とは別体としてケース5などに着脱容易とすることもできる。
【0033】
(排出工程)
水質測定器14を通過した石鹸化液状態の排液Bは、モータMの駆動により排出ポンプ3を作動させて、排出ホース13を経て再度グリストラップA内に戻すか、又はグリストラップAの外部の下水道や浄化槽に排出する。水質測定器14を排出ホース13の途中や排出ポンプ3の中などに設置した場合、排出ホース13の排出先を2系統以上設け、測定水質に応じて排液Bの排出先を切り替えることもできる。すなわち、基準水質に適合すると判断された場合には、排出ポンプ3の排出先を下水道や浄化槽に切り替え、基準水質に適合しないと判断された場合には、排出先をグリストラップA内に切り替える。この切り替えは、手動とすることもできるし、制御装置を設けて自動制御方式を採ることもできる。
【0034】
グリストラップAに、グリストラップA用の水質測定器14aを設置すればグリストラップA内の排液Bの処理状態(汚染状態)が把握できる。水質測定器14aで測定された測定水質はパソコン(若しくは情報格納手段を備えたモニター15)に伝達され、この測定水質と既にパソコンに格納されている測定項目及びその基準水質とを合わせてモニター15に伝達し、表示させる。グリストラップA内の排液Bが目標の水質となっていなければ、再度、処理剤添加工程、混合攪拌工程、水質測定表示工程、排出工程といった一連の排液処理を実施し、モニター15に表示された水質測定器14aの測定水質が目標の値に到達していれば排液処理を終了する。この一連の排液処理を繰り返し実施するか否かは、人によって判断して操作することもできるが、事前に格納された基準水質と水質測定器14aから伝達された測定水質を基にパソコンで計算し、その計算結果に基づいて制御装置により自動運転させることもできる。
【0035】
(実施形態2)
本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置の第2の実施形態を図2に基づいて説明する。本実施形態は、排液処理装置1に処理剤容器16が備えられた場合を説明するものであり、その基本的構造や排液処理方法等は実施形態1と共通する。
【0036】
図2に示す処理剤容器16は、処理剤である鹸化剤を収容可能な容器である。この処理剤容器16の底面には処理剤供給路16aが連結され、この処理剤供給路16aの下端は連結パイプ2aに接続され、処理剤容器16内の鹸化剤が汲み上げホース8で汲み上げられた排液Bと混合されるようにしてある。処理剤供給路16aは管状であり、その途中に開閉弁16bが設けられ、前記開閉弁16bの開閉操作によって鹸化剤の流量調整、供給停止、供給開始の操作が可能となっている。図2では、処理剤容器16を連結パイプ2aの上方に配置し、鹸化剤を自由落下させて連結パイプ2a内の排液Bに添加させるが、処理剤容器16を低い位置に配置し、汲み上げポンプ2の駆動により処理剤容器16内の鹸化剤を吸引する構造としてもよい。もちろん、図2のように処理剤容器16を連結パイプ2aの上方に配置した場合であっても、汲み上げポンプ2の駆動により処理剤容器16内の鹸化剤を吸引するものとしてもよい。
【0037】
(実施形態3)
本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置の第3の実施形態を図3に基づいて説明する。本実施形態は、排液処理装置1に処理タンク17が備えられた場合を説明するものであり、その基本的構造や排液処理方法等は実施形態1〜2と共通する。
【0038】
処理タンク17は排液Bと鹸化剤を混合して貯めることのできるタンクであって、図3に示すように移送ホース9が差込まれて汲み上げポンプ2で吸引された排液Bが処理タンク17内に送り込まれるようにしてある。更に処理剤容器16に連結された処理剤供給路16aも処理タンク17内に差込まれて鹸化剤が供給されるようにしてある。処理タンク17内には塵芥除去器4が設けられ、実施形態1で説明したように排液Bに含まれる塵芥は塵芥除去器4内に残って後に除去回収される。
【0039】
処理タンク17内には、回転軸18aと羽根18bを備える攪拌装置18が配置されており、回転軸18aの回転による羽根18bの攪拌作用に伴い、処理タンク17内で排液Bと鹸化剤が混合攪拌されることで、排液Bは石鹸液化される。処理タンク17内で石鹸化液状態となった排液Bは、ホース12を通して排出ポンプ3内に吸引される。
【0040】
(実施形態4)
本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置の第4の実施形態を図4に基づいて説明する。本実施形態は、グリストラップAの排液B内に汲み上げポンプ19を沈めた排液処理装置1を用いる場合を説明するものであり、その基本的構造や排液処理方法等は実施形態1〜3と共通する。
【0041】
この排液処理装置1は、図4に示すように、汲み上げポンプ19はグリストラップAの排液B内に沈められ収納ケース20内に収められたものである。汲み上げポンプ19に連結された汲み上げホース8の吸引口21からグリストラップA内の排液Bを吸引し、汲み上げポンプ19を通過させて石鹸液化した後に、排出ホース13の排出口22から排出できるようにしてある。
【0042】
汲み上げホース8の途中には、処理剤容器16に連結された処理剤供給路16aが接続されており、モータMにより汲み上げポンプ19を作動させて汲み上げホース8の吸引口21からグリストラップA内の排液Bを吸引すると同時に、処理剤容器16から鹸化剤を吸引する。モータMは、汲み上げポンプ19に内蔵しておくこともできる。また図4の例では処理剤容器16がグリストラップAの外に配置されているが、処理剤容器16はケース5内に設置することもできる。処理剤供給路16aは管状であり、その途中には開閉弁16bを設けることもできる。
【0043】
汲み上げポンプ19内に吸引された排液Bは鹸化剤と混合攪拌されて石鹸化液となる。図4の汲み上げポンプ19は、吸引した液体を攪拌して送り出すものであることにおいては前記実施形態1〜3の汲み上げポンプ2と同じであるが、汚泥吸引用水中ポンプなどのように塵芥や汚泥を含む排液Bを吸引しても故障しにくい構造のものを使用することが望ましい。
【0044】
図4に示す収納ケース20は、汲み上げポンプ19を被覆しグリストラップA内の排液Bから保護する筐体である。汲み上げポンプ19及び収納ケース20をグリストラップA内の排液B中に入れる場合は、例えば、収納ケース20を支持台23(図4)で支持したり、収納ケース20をグリストラップAの周縁に係止して排液B中に吊下げたりすることができる。支持台23は、汲み上げポンプ19及び収納ケース20の高さを調節することができる。
【0045】
排出ホース13の途中には水質測定器14が取り付けられ、排出ホース13の排出口22は塵芥除去器4内にセットされている。排出ホース13から排出される石鹸化液状態の排液Bを塵芥除去器4に排出することにより塵芥及び汚泥が分離除去されるようにしてある。塵芥除去器4を通過した排液Bは、塵芥除去器4の下に配置されたフィルタHで濾過、脱色、脱臭等された後にグリストラップA内に流下する。
【0046】
前記実施形態1〜3同様、ケース5の外面にはモニター15が設置され、グリストラップAの排液B内にはグリストラップA用の水質測定器14aを設置することができる。
【0047】
(実施形態5)
本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置の第5の実施形態を図5に基づいて説明する。本実施形態は、汲み上げポンプ内蔵型の開口ケースが備えられた排液処理装置1を用いる場合を説明するものであり、その基本的構造や排液処理方法等は実施形態1〜3と共通する。
【0048】
この排液処理装置1は、図5に示すように、汲み上げポンプ内蔵型の開口ケース24が設けられ、開口ケース24の一部はグリストラップAの排液B内に沈められている。開口ケース24にある開口部25からグリストラップA内の排液Bを吸引し、開口ケース24を通過させて石鹸液化した後に、排出ホース13から排出できるようにしてある。
【0049】
開口ケース24は汲み上げポンプを収容可能なサイズとしてあり、開口ケース24の側面にグリストラップA内の排液Bを取り込むための開口部25が設けられている。図5に示す開口部25は一例であり、開口部25の大きさ、数、形成位置は任意に選択することができる。開口ケース24内には前記開口部25から取り込んだ排液Bを一時的に貯蓄しておくための貯蓄スペース26を設けてある。
【0050】
開口ケース24は、グリストラップAの周縁に渡した棒状またはパイプ状の長尺な支持材27に吊り下げられた吊り具28で支持され、昇降機(例えば、ウインチ)29の操作で昇降できるようにしてある。吊り具28は金属製のチェーンであるが、それ以外のもの、例えば、ロープ、帯等であっても良いし、吊り具28は一本でも二本以上でも良い。
【0051】
吊り具28はグリストラップAの周縁以外にも、例えば、グリストラップAの上方に設置した支持材27に吊り下げて係止することができる。より具体的には、グリストラップAの天板を外し、その開口部分に単管パイプ、角鋼管、H形鋼といった細長棒材などの支持材27を架設し、その支持材27に吊り具28を吊り下げる。開口ケース24を昇降機29で吊り下げることで、グリストラップA内の液の量が減少しても汲み上げポンプで確実に排液Bが汲み上げられ、昇降機29を操作することにより手軽に昇降させることができる。開口ケース24の開口部25は、グリストラップA内の排液Bの油脂層(排液Bの油脂分Eの層)内に浸しておくことが望ましい。
【0052】
開口ケース24には、処理剤容器16に連結された処理剤供給路16aが接続されており、開口ケース24に内蔵された汲み上げポンプによって開口部25からグリストラップA内の排液Bを吸引すると同時に、処理剤容器16から鹸化剤を吸引する。図5の例では処理剤容器16がグリストラップAの外に配置されているが、処理剤容器16はグリストラップA内に設置することもできる。処理剤供給路16aは管状であり、その途中には開閉弁16bを設けることもできる。
【0053】
開口ケース24内に吸引された排液Bは鹸化剤と混合攪拌されて石鹸化液となる。開口ケース24に内蔵される汲み上げポンプは、吸引した液体を攪拌して送り出すものであることにおいては前記実施形態1〜3の汲み上げポンプ2と同じであるが、汚泥吸引用水中ポンプなどのように塵芥や汚泥を含む排液Bを吸引しても故障しにくい構造のものを使用することが望ましい。
【0054】
排出ホース13の途中には水質測定器14が取り付けられ、排出ホース13の先には塵芥除去器30が配置されている。この塵芥除去器30は、開口ケース24と同じく支持材27に吊り下げられている。排出ホース13から排出される石鹸化液状態の排液Bを塵芥除去器30に排出することにより、塵芥及び汚泥が分離除去されるようにしてある。また塵芥除去器30の下にはフィルタHが配置されていて、塵芥除去器30を通過した排液Bは、フィルタHで濾過、脱色、脱臭等された後にグリストラップA内に流下する。
【0055】
前記実施形態1〜3同様、ケース5の外面にはモニター15が設置され、グリストラップAの排液B内にはグリストラップA用の水質測定器14aを設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明のグリストラップの排液処理方法及び排液処理装置は、給食センタ−、ホテル、食物加工所、スーパー、デパート、病院、飲食店などの厨房で利用できるほか、工場や農場で排出される排液の処理に応用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 排液処理装置
2 汲み上げポンプ
2a (汲み上げポンプの)連結パイプ
3 排出ポンプ
3a (排出ポンプの)連結パイプ
4 塵芥除去器
5 ケース
6 車輪
7 ハンドル
8 汲み上げホース
9 移送ホース
10 通孔
11 トレイ
12 ホース
13 排出ホース
14 水質測定器
14a(グリストラップA用)水質測定器
15 モニター
16 処理剤容器
16a処理剤供給路
16b開閉弁
17 処理タンク
18 攪拌装置
18a回転軸
18b羽根
19 汲み上げポンプ
20 収納ケース
21 吸引口
22 排出口
23 支持台
24 開口ケース
25 開口部
26 貯蓄スペース
27 支持材
28 吊り具
29 昇降機
30 塵芥除去器
A グリストラップ
B 排液
C バスケット
D 仕切り
E 油脂分
F 水分
G トラップ
H フィルタ
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリストラップ内の排液に処理剤を添加する処理剤添加工程と、
前記排液と処理剤とを、グリストラップ内又は/及び汲み上げポンプで汲み上げポンプ内に汲み上げてその汲み上げポンプ内で混合攪拌して排液を処理液とする混合攪拌工程と、
前記排液又は/及び処理液の水質を測定し、その測定水質と基準水質の双方又は測定水質のみを表示する水質測定表示工程と、
前記処理液をグリストラップ内、又は/及びグリストラップ外に排出する排出工程と、を処理液の測定水質が前記基準水質又はそれに近くなるまで繰り返し実施することを特徴とするグリストラップの排液処理方法。
【請求項2】
グリストラップ内の排液を汲み上げポンプで汲み上げポンプ内に汲み上げるとともに、汲み上げ中又は汲み上げ後に処理剤を添加する処理剤添加工程と、
前記排液と処理剤を汲み上げポンプ内で混合攪拌して排液を処理液とする混合攪拌工程と、
前記処理液の水質を測定し、その測定水質と所定の基準水質を表示する水質測定表示工程と、
前記処理液をグリストラップ内、又は/及びグリストラップ外に排出する排出工程と、を処理液の測定水質が基準水質又はそれに近くなるまで繰り返し実施することを特徴とするグリストラップの排液処理方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のグリストラップの排液処理方法において、
処理剤添加工程、混合攪拌工程、水質測定表示工程、排出工程のいずれか一又は二以上の工程で、排液又は処理液を殺菌、脱色、及び脱臭のいずれか一又は二以上の機能を備えたフィルタに通過させることを特徴とするグリストラップの排液処理方法。
【請求項4】
グリストラップ内の排液を汲み上げる汲み上げポンプと、処理剤と排液とを混合攪拌して処理液とする混合攪拌器と、処理液の水質を測定する水質測定器と、前記水質測定器で測定された測定水質と基準水質の双方又は測定水質のみを表示可能な表示器と、処理液の測定水質と基準水質を比較可能な比較手段と、を備えたことを特徴とするグリストラップの排液処理装置。
【請求項5】
請求項4記載のグリストラップの排液処理装置において、水質測定器及び表示器が着脱可能であることを特徴とするグリストラップの排液処理装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載のグリストラップの排液処理装置において、排液又は処理液を殺菌、脱色、及び脱臭のいずれか一又は二以上の機能を有するフィルタを備えたことを特徴とするグリストラップの排液処理装置。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれかに記載のグリストラップの排液処理装置において、
水質測定器で測定された測定水質と基準水質を印刷可能な印刷器を備えたことを特徴とするグリストラップの排液処理装置。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれかに記載のグリストラップの排液処理装置において、
水質測定器で測定された測定水質と基準水質に基づいて、処理液に処理剤を添加して混合攪拌する処理を制御し得る制御装置を備えたことを特徴とするグリストラップの排液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−101848(P2011−101848A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257635(P2009−257635)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(504233362)株式会社日本エコシス (8)
【Fターム(参考)】