説明

グリホサート耐性植物ならびにグリホサート耐性植物を作製および使用する方法

内因性遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を有する農作物植物であって、その誘導された突然変異対立遺伝子は、同じ種の野生型植物と比較した場合に、グリホサートに対する耐性を与え、そのグリホサート耐性は、その内因性植物遺伝子の該誘導された突然変異対立遺伝子の存在に起因する、農作物植物が提供される。内因性のコムギ遺伝子の少なくとも1つの誘導された突然変異対立遺伝子を有するグリホサート耐性植物、その後代および種子が提供される。グリホサート耐性植物を作製するための方法もまた提供される。グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を農作物および他の植物に誘導するための方法がさらに提供される。農作物植物の付近の雑草を制御するための方法がさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(継続)
本出願は、2004年1月21に出願された米国仮特許出願番号60/538,050および2004年8月20日に出願された同60/603,420の利益を主張し、これらの開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
雑草種は、長い間栽培分野で問題であった。雑草の制御は、かつては労働集約的作業であったが、雑草を効率的に枯死させる化学的除草剤の有効性により、より容易になった。改良された農作物品種および肥料に加えての除草剤の広範な使用は、農業における「緑の革命」に顕著に寄与してきた。特に有用な除草剤は、広い範囲の除草剤活性を有する除草剤である。残念ながら広い範囲の除草剤は代表的に、除草剤に曝露された農作物植物に有害な効果を有する。この問題を克服する1つの方法は、特定の広範な除草剤に耐性である植物を作製することである。
【0003】
多くの研究の主題であった特に広い範囲の除草剤は、N−ホスホノメチル−グリシンであり、これはまたグリホサートとしても公知である。グリホサートは、例えば、無耕農業において、農作物を植える前に雑草を制御するために、世界中の農業従事者に広く使用されている。さらに、グリホサートは、生産の周期または農作物のローテーションの間に雑草および自生植物を制御する効率的な手段である。グリホサートは、使用後に土壌に残存せず、そして、最も環境的に安全であり、かつ農業における使用のために利用可能である広範に有効である化学的除草剤の1つであると広く考えられている。
【0004】
グリホサートは、シキミ酸経路を阻害することによって植物を枯死させる。この経路は、アミノ酸、ビタミンおよび植物ホルモンを含む芳香族化合物の生合成をもたらす。グリホサートは、酵素3−エノールピルビルシキメート−3−ホスフェートシンターゼ(一般にはEPSPシンターゼまたはEPSPSと呼ばれる)に結合し、その酵素の活性を阻害することによって、ホスホエノールピルビン酸(PEP)および3−ホスホシキミ酸の5−エノールピルビル−3−ホスホシキミ酸への変換をブロックする。
【0005】
残念ながら天然でグリホサートに耐性であることが公知である農作物は存在せず、従って、栽培した農作物中での雑草の制御のためのこの除草剤の有用性は、限定されている。グリホサート耐性農作物植物を作製するための1つの方法は、遺伝子工学技術を使用して、EPSPS遺伝子の異種のグリホサート耐性形態をコードする遺伝子を農作物植物に導入することである。化学的変異誘発を使用して、EPSPSのグリホサート耐性形態を細菌内で生成し、グリホサート耐性植物を作製するために、異種遺伝子を植物に導入した。(例えば、非特許文献1を参照のこと)。異種EPSPS遺伝子は通常農作物植物中で過剰発現され、所望のレベルの耐性が得られる。
【0006】
細菌遺伝子におけるグリホサートに対する耐性は、EPSPSアミノ酸配列中の変化に起因することが報告されている(例えば、非特許文献2を参照のこと)。アミノ酸置換は、グリホサートの酵素への結合を減少させるのに十分に酵素の構造を変化させると考えられている。変化した酵素は、植物の成長および発生のための十分な生合成活性を保持するが、グリホサートによる阻害に対して耐性である。
【0007】
さらに、本来グリホサートに耐性である細菌種、アグロバクテリウム株CP4(特許文献1を参照のこと)が同定された。EPSPSのグリホサート耐性形態をコードする遺伝子は、この種からクローニングされ、その後遺伝子工学技術を使用して植物(例えばトウモロコシ(特許文献2を参照のこと)およびコムギ(特許文献3を参照のこと))に導入された。生じた遺伝的に改変された植物は、グリホサートの圃場での適用に耐性である。グリホサート耐性農作物植物は、遺伝子工学技術を使用して作製されてきたが、このような農作物の商業的な受け入れ性は、食品原料として遺伝的に改変された生物(GMO)に対して広範に耐性であることによって、妨げられてきた。
【0008】
理論上は、グリホサート耐性農作物植物を作製するための第2の方法は、変異誘発によって内因性のグリホサート感受性のEPSPS遺伝子を変化させ、それによって遺伝子工学技術を使用することなく、グリホサート耐性農作物植物を作製することである。高等真核生物に適用する場合の変異誘発技術に伴なう困難は、所望の表現型を得るために、十分な数の標的遺伝子に耐性を与える変異を誘導することである。各ハプロイドゲノムは、1つより多い標的遺伝子(例えば、多重遺伝子ファミリーの場合)を保有し得る。倍数体状態は、潜在的な遺伝子標的の数を増加する。多くの植物種は、機能的な倍数体であるか、その進化の間に倍数体段階を通る。産生されるEPSPS酵素の量に対する標的遺伝子の各コピーの相対的な寄与に対する知見はなく、特定の除草剤耐性変異が導入され得るか否か、および所望の除草剤耐性表現型を与えるのに必要である変異遺伝子の数については、不明確である。
【0009】
内因性のEPSPS遺伝子を改変することによってグリホサート耐性植物を作製するこれまでの試みは、限られた成功しかみなかった。ニンジン(非特許文献3)ならびにアルファルファ、大豆およびタバコ(非特許文献4)のグリホサート耐性細胞培養物が作製された。全ての例において、グリホサート耐性は、内因性のEPSPS酵素のアミノ酸配列の変化ではなく、遺伝子増幅による内因性のEPSPS遺伝子の発現の増加の結果であった。これらの遺伝子増幅したグリホサート耐性細胞株から作製された植物は、報告されなかった。従って、遺伝子増幅に起因するグリホサート耐性が、これらの植物で維持されるか否かについての示唆は存在しない。より重要なことは、遺伝子増幅に起因するグリホサート耐性が、インタクトな植物において遺伝的に安定であるか否か、そして後代の植物に遺伝するか否かについての示唆は存在しない。
【0010】
内因性のEPSPS遺伝子の改変によるグリホサート耐性植物の単離の困難性は、アラビドプシスにおいてさらに取り組まれてきた。エチルメタンスルホネート(EMS)で変異誘発したアラビドプシス株のM2後代が、グリホサート除草剤、イミダゾリノン除草剤、またはスルホニル尿素除草剤に対する耐性についてスクリーニングされた(非特許文献5)。125,000個のColumbia(M1)株および125,000個のLandsberg erecta(M1)株のM(2)後代の内で、グリホサート耐性変異体植物は同定されなかった。イミダゾリノン除草剤とスルホニル尿素除草剤との両方に耐性である変異体植物は単離された。これらの変異体集団において、50,000個より少ないM1株のスクリーニングは、アラビドプシスゲノムの任意のG:C塩基対における変異を95%の確率で見出すのに十分であると推定された。これらの結果は、他の除草剤に対して耐性である変異体を作製することに比較して内因性のEPSPS遺伝子にグリホサート耐性を与える変異を植物に作製することが非常に困難であることを強調している。
【特許文献1】米国特許第5,627,061号明細書
【特許文献2】欧州特許第1167531号明細書
【特許文献3】米国特許第6,689,880号明細書
【非特許文献1】Comaiら、「Science」、1983年、第221巻、p.370−71
【非特許文献2】Stalkerら、「J.Biol.Chez.」、1985年、第260巻、p.4724−28
【非特許文献3】Shyrら、「Mol.Gen.Genet.」、1992年、第232巻、p.377−82
【非特許文献4】Widholmら、「Physiol.Plant.」、2001年、第112巻、p.540−45
【非特許文献5】Janderら、「Plant.Physiol.」、2003年、第131巻、p.139−46
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、内因性の植物遺伝子の1つ以上の誘導された突然変異対立遺伝子、グリホサート耐性を与える突然変異対立遺伝子を有するグリホサート耐性植物を提供する。本明細書中に記載されるグリホサート耐性植物由来の植物の一部、植物細胞および種子もまた提供される。標的植物にグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を導入するための方法、標的植物のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を単離するための方法、グリホサート耐性を与える誘導された突然変異対立遺伝子を回収するための方法、グリホサート耐性のレベルをさらに増加させるための方法、グリホサート耐性を与える誘導された突然変異対立遺伝子を他の品種に移すための方法、および農作物の付近の雑草を制御するための方法がさらに提供される。
【0012】
一局面において、内因性の遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を有する植物が提供される。誘導された突然変異対立遺伝子は、同じ種または同じ品種の野生型(または「正常な」)植物と比較してグリホサートに対する耐性を与える。植物のグリホサート耐性は、内因性植物遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子の存在に起因する。いくつかの実施形態において、上記植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記植物は、農作物植物(例えば、作物学植物、野菜、芝生、園芸植物など)である。上記植物は、例えば、アルファルファ、豆類、ヌカボ属の草、ギョウギシバ、イチゴツナギ属の草、スズメノチャヒキ属の草、穀類、ニンジン、ヒヨコマメ、綿、ササゲ、キュウリ、ツルナシインゲン、ウシノケグサ属の草、ソラマメ(field bean)、亜麻、まぐさ(forage grasses)、ニンニク、ケナフ、アオイマメ、ハウチワマメ、アブラナ、タマネギ、エンドウマメ、落花生、コショウ、キマメ、パイナップル、ジャガイモ、ライグラス、大豆、カボチャ、テンサイ、ヒマワリ、トマトなどである。上記穀類は、例えば、オオムギ、トウモロコシ、キビ、カラスムギ、イネ、ライ麦、サトウモロコシ、ライコムギ、コムギなどであり得る。上記コムギは、例えば、パンコムギまたはデュラムコムギであり得る。
【0014】
上記植物は、1エーカーあたり約8オンス、1エーカーあたり約16オンス、1エーカーあたり約24オンス、1エーカーあたり約32オンス、1エーカーあたり約40オンス、1エーカーあたり約52オンスまたはそれ以上の投薬量に対して耐性であり得る。いくつかの実施形態において、上記植物は、内因性遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を少なくとも2つ有し、この誘導された対立遺伝子は、グリホサートに対する耐性を与える。
【0015】
関連する局面において、グリホサート耐性植物由来の種子およびグリホサート耐性の後代の植物が提供される。
【0016】
別の局面において、グリホサートに対する耐性を与える内因性の遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を保有する倍数体植物が提供される。グリホサート耐性は、内因性の植物遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子の存在に起因する。いくつかの実施形態において、倍数体植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。
【0017】
上記グリホサート耐性倍数体植物は、例えば、ライコムギまたはコムギ植物などの穀類であり得る。上記コムギ植物は、例えば、T.aestivum種、T.turgidu種、T.timopheevii種、T.zhukovskyi種またはこれらのハイブリッドであり得る。いくつかの実施形態において、上記コムギは、パンコムギまたはデュラムコムギである。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記倍数体植物は、異なる内因性の遺伝子に少なくとも2つの異なる誘導された突然変異対立遺伝子を保有し得、各変異は、グリホサートに対する耐性を与える。上記誘導された突然変異対立遺伝子は、例えば、遺伝子ファミリーの異なるコピーに存在し得るか、または異なるゲノムに存在し得る。関連する局面において、このような倍数体植物に由来する種子および後代が提供される。
【0019】
なお別の局面において、内因性コムギ遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を保有する倍数体コムギ植物が提供される。上記誘導された突然変異対立遺伝子は、グリホサートに対する耐性を与える。いくつかの実施形態において、上記コムギ植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。
【0020】
上記倍数体コムギ植物は、1エーカーあたり約8オンス、1エーカーあたり約16オンス、1エーカーあたり約24オンス、1エーカーあたり約32オンス、1エーカーあたり約40オンス、1エーカーあたり約52オンスまたはそれ以上の投薬量に対して耐性であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記倍数体コムギ植物は、異なる内因性の小麦遺伝子に、少なくとも2つの異なる誘導された突然変異対立遺伝子を保有し、この突然変異対立遺伝子は、グリホサートに対する耐性を与える。例えば、上記誘導された突然変異対立遺伝子は、同じであるかまたは異なるコムギゲノムの異なるEPSPS遺伝子に存在し得る。関連する局面において、このような倍数体コムギ植物の種子および後代が提供される。
【0022】
別の局面において、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を植物のゲノムに導入するための方法が提供される。上記方法は、代表的に、標的植物由来の種子を提供する工程;この種子を有効量の少なくとも2つの変異誘発物質と連続的に接触させ、変異誘発した種子を生じる工程;この変異誘発した種子を発芽させ、M1変異誘発した植物を形成し、M2世代の種子を産生させる工程;このM2世代の種子を発芽させ、M2世代の植物を産生させる工程;このM2世代の植物にグリホサートを適用する工程;およびこのM2世代の植物をスクリーニングしてグリホサート耐性植物を同定する工程を包含する。
【0023】
いくつかの実施形態において、グリホサートは、1エーカーあたり少なくとも約8オンス、1エーカーあたり少なくとも約16オンス、1エーカーあたり少なくとも約24オンス、1エーカーあたり少なくとも約32オンス、1エーカーあたり少なくとも約40オンス、1エーカーあたり少なくとも約52オンスまたはそれ以上の投薬量で適用される。グリホサートは、例えば、M2後代植物が、3〜5枚の葉の段階のときに適用され得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記方法は、2つの異なるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を誘導する工程を包含し、それぞれは、同じゲノムかまたは異なるゲノムのどちらかにある異なる遺伝子に存在する。上記植物は、例えば、農作物植物(例えば、作物学植物、野菜、芝生または園芸植物)であり得る。上記植物は、例えば、アルファルファ、豆類、ヌカボ属の草、ギョウギシバ、イチゴツナギ属の草、スズメノチャヒキ属の草、穀類、ニンジン、ヒヨコマメ、ワタ、ササゲ、キュウリ、ツルナシインゲン、ウシノケグサ属の草、ソラマメ、亜麻、まぐさ、ニンニク、ケナフ、アオイマメ、ハウチワマメ、アブラナ、タマネギ、エンドウマメ、落花生、コショウ、キマメ、パイナップル、ジャガイモ、ライグラス、大豆、カボチャ、テンサイ、ヒマワリ、トマトなどであり得る。上記穀類は、例えば、オオムギ、トウモロコシ、キビ、カラスムギ、イネ、ライ麦、サトウモロコシ、ライコムギ、コムギなどえあり得る。上記コムギは、例えば、パンコムギまたはデュラムコムギであり得る。
【0025】
別の局面において、植物のゲノムにさらなるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を導入することにより、グリホサート耐性のレベルを増加させるための方法が提供される。上記方法は、代表的に、誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を有する標的植物から種子を提供する工程;この種子を有効量の少なくとも2つの変異誘発物質と連続的に接触させ、変異誘発した種子を生じる工程;この変異誘発した種子を発芽させ、M1変異誘発した植物を形成し、M2世代の種子を産生させる工程;M2世代の種子を発芽させ、M2世代の植物を産生させる工程;このM2世代の植物にグリホサートを適用する工程;およびこのM2世代の植物をスクリーニングして、より高いレベルのグリホサート耐性を有するグリホサート耐性植物を同定する工程を包含する。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記方法は、誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を、非グリホサート耐性植物に交配して、グリホサート耐性の後代の植物を形成する工程をさらに包含し得る。関連する局面において、種子は、上記植物から獲得され得る。
【0027】
なお別の局面において、標的植物のグリホサート耐性を変化させる方法が提供される。上記方法は、第1のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有する第1の植物を、上記標的植物と交配させてグリホサート耐性表現型を有する後代の植物を形成する工程を包含し、この後代の植物は、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有する。いくつかの実施形態において、上記後代の植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。他の実施形態において、上記標的植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を保有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記後代の植物は、1つ以上のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子および組換えグリホサート耐性遺伝子を有し得、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子と組換えグリホサート耐性遺伝子との両方がグリホサート耐性表現型に寄与する。上記後代の植物のグリホサート耐性表現型は、例えば、標的植物のグリホサート耐性表現型より大きくてもよい。いくつかの実施形態において、複数のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子が標的植物に交配される。
【0029】
なお別の局面において、標的植物のグリホサート耐性のレベルを増加させる方法が提供される。上記方法は、第1のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有する第1の植物を、異なるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有する標的植物と交配させて、どちらの親よりも高いグリホサート耐性表現型を有する後代植物を形成する工程を包含し、この後代植物は、両方の親のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有する。いくつかの実施形態において、上記後代植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。他の実施形態において、上記標的植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を保有する。
【0030】
なお別の局面において、農作物植物(例えば、作物学植物、園芸植物、芝生、野菜種など)の付近の雑草を制御する方法が提供される。上記方法は概してグリホサートを雑草、および必要に応じて農作物植物に適用する工程を包含し、この農作物植物は、この植物の野生型の品種と比べてグリホサートに対する耐性の増加を与える、誘導された突然変異対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態において、上記農作物植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。
【0031】
いくつかの実施形態において、グリホサートは、1エーカーあたり少なくとも約8オンス、1エーカーあたり少なくとも約16オンス、1エーカーあたり少なくとも約24オンス、1エーカーあたり少なくとも約32オンス、1エーカーあたり少なくとも約40オンス、1エーカーあたり少なくとも約52オンスまたはそれ以上の投薬量で適用される。上記雑草は、例えば、一年草、二年草、多年草、広葉の雑草および自生農作物であり得、このような雑草としては、野生のカラスムギ、エノコログサ、シバムギ、アオゲイトウ、セイヨウヒルガオ、野生のソバ、ヤグルマギク、カラスノチャヒキ、イヌビエ、ゴートグラール(goat grall)、ブラックグラス(black grass)、シナガワハギ、タデ、ヨウガラシ、ホウキギ、オナモミ、モンバノキ、ヒメヒマワリ、隔年ヨモギ(biennial wormwood)および/またはロシアアザミが挙げられるが、これらに限定されない。雑草は、適用したグリホサートの投薬量に対して感受性である。
【0032】
農作物植物(例えば、作物学植物、野菜、芝生または園芸植物)は、例えば、アルファルファ、豆類、ヌカボ属の草、ギョウギシバ、イチゴツナギ属の草、スズメノチャヒキ属の草、穀類、ニンジン、ヒヨコマメ、綿、ササゲ、キュウリ、ツルナシインゲン、ウシノケグサ属の草、ソラマメ、亜麻、まぐさ、ニンニク、ケナフ、アオイマメ、ハウチワマメ、アブラナ、タマネギ、エンドウマメ、落花生、コショウ、キマメ、パイナップル、ジャガイモ、ライグラス、大豆、カボチャ、テンサイ、ヒマワリ、トマトなどである。上記穀類は、例えば、オオムギ、トウモロコシ、キビ、カラスムギ、イネ、ライ麦、サトウモロコシ、ライコムギ、コムギなどであり得る。上記コムギは、例えば、パンコムギまたはデュラムコムギであり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、遺伝子操作方法を使用することなく、グリホサート耐性植物の作製することの問題点を克服した。さらに、本発明者らは、植物、特にグリホサート耐性植物の単離に適用される際の変異誘発技術の困難を克服した。グリホサート耐性植物は、本明細書中に記載される方法を使用して、変異誘発技術により作製された。従って、本発明は、後代植物に安定して遺伝する内因性の植物遺伝子の少なくとも1つの誘導された突然変異対立遺伝子を有するグリホサート耐性植物を提供する。
【0034】
本発明は、本明細書中に記載されるグリホサート耐性植物由来の植物の一部、植物細胞および種子もまた提供する。標的植物におけるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を単離および導入するための方法、グリホサート耐性を与える誘導された突然変異対立遺伝子を回収するための方法、グリホサート耐性のレベルをさらに増加させるための方法、グリホサート耐性を与える誘導された突然変異対立遺伝子を他の品種に移すための方法、ならびに農作物の付近の雑草を制御するための方法がさらに提供される。
【0035】
誘導された変異は、標的植物の内因性遺伝子において誘導される。「内因性遺伝子」とは、植物のゲノムに通常存在する遺伝子または植物品種改良技術によって植物に導入される遺伝子をいう。例えば、用語「内因性遺伝子」は、植物ゲノムに通常存在する遺伝子、同じ植物種の異なる品種、異なる栽培品種、異なる系などと交配させることにより、そして関連する種(例えば、フタツブ系コムギ(emmer)と交配されたコムギ)と交配させることにより、植物(例えば、コムギ)に導入された遺伝子を包含する。用語「内因性遺伝子」は、このような遺伝子が、植物品種改良技術(例えば、「広い」交配種を作製するための技術を包含する従来の植物品種改良技術)によって標的植物に導入され得ない場合、他の属由来の異種の遺伝子は、除く。例えば、組換え方法によって導入された細菌遺伝子は、内因性植物遺伝子ではない。グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、代表的にその正常な染色体遺伝子座に存在し、例えば、野生型遺伝子の対立遺伝子である。いくつかの実施形態において、内因性遺伝子は、EPSPS遺伝子である。他の実施形態において、その遺伝子は、グリホサートN−アセチルトランスフェラーゼ酵素をコードし得る。複数のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子(例えば、EPSPS遺伝子の複数の対立遺伝子)が、倍数体植物に存在する場合、それらは、同じゲノムまたは異なるゲノムに位置され得る。例えば、4倍体コムギまたは6倍体コムギにおいて、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、適用可能な場合、Aゲノム、Bゲノムおよび/またはDゲノムに存在し得る。
【0036】
グリホサート耐性を与える「誘導された突然変異対立遺伝子」は、変異誘発技術(下記を参照のこと)から生じる変異を有し、天然に生じる事象(例えば、自然突然変異)による植物遺伝子の変化のことはいわない。後者は、変異促進性処理の非存在下で生じる。グリホサート耐性を与える変異は、例えば、対立遺伝子改変体またはその遺伝子の対立遺伝子を作製するための、植物ゲノムの内因性遺伝子内の一つ以上のDNAヌクレオチド挿入、欠失、置換(例えば、転移またはトランスバージョン)などに起因し得る。グリホサート耐性を与える誘導された突然変異対立遺伝子はまた、本明細書中では、「グリホサート耐性突然変異対立遺伝子」または「誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子」といわれる。誘導された突然変異対立遺伝子は、野生型の内因性遺伝子、またはその改変体またはその対立遺伝子に作製され得る。誘導された突然変異対立遺伝子は、安定であり、単独でかまたは他の誘導された突然変異対立遺伝子と組合せて、その対立遺伝子を保有する植物の表現型に遺伝的な変化を生じる。
【0037】
特定の実施形態において、グリホサート耐性植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。本明細書中で使用する場合、「組換えグリホサート耐性遺伝子」とは、遺伝子操作方法によって被験体植物に導入される場合にグリホサートに対する耐性を与える、異種の遺伝子(すなわち、異なる異種交配しない科、属もしくは種由来の遺伝子)またはキメラ遺伝子(すなわち、キメラプロモーターに作動可能に連結した異種遺伝子を含む遺伝子融合物)をいう。植物が組換えグリホサート耐性遺伝子を有するか否かを決定する方法としては、例えば、DNAハイブリダイゼーションを用いる方法、ポリメラーゼ連鎖反応を用いる方法、ノーザンハイブリダイゼーションを用いる方法などが挙げられる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Publish.、Cold Spring Harbor、New York(2001);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley and Sons、New York(1999)を参照のこと;これらは、本明細書中に参考として援用される)。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応は、組換えグリホサート耐性遺伝子と結合したキメラプロモーターおよび/またはターミネーターを検出するために使用され得る。組換えグリホサート耐性遺伝子を有さず、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有する植物は、本明細書中では、「非トランスジェニック植物」といわれる。これらの植物は、グリホサート耐性形質に関しては非トランスジェニックであるが、他の形質または遺伝子に関してはトランスジェニックであっても非トランスジェニックであってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、優性であり得る。他の実施形態において、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、共優性、半優性あるいは劣性であり得る。グリホサート耐性突然変異対立遺伝子またはグリホサート耐性突然変異対立遺伝子の組合せによって植物に与えられる表現型は、グリホサートの特定の投薬量に対して決定され得る。
【0039】
グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、優性の遺伝形質、半優性の遺伝形質あるいは場合によっては劣性の遺伝形質(例えば、耐性のM2種子由来の後代のM3世代の分離に基づいて)を有し得る。グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、これらの形質の伝達を可能にする植物品種改良技術(例えば、変異体の自家受粉によって、F1ハイブリッドへの有性的な組換えによってなど)によって後代に伝達され得る。従って、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、植物品種改良の分野の当業者によって、例えば、市販の栽培品種、品種および実験用株に導入され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「グリホサート」は、N−ホスホノメチルグリシンの除草剤的に有効な任意の形態(そのいくつかの塩のいずれか(例えば、イソプロピルアミン塩またはトリメチルスルホニウム塩)が挙げられる)および植物内でグリホサートイオンの産生をもたらす他の形態を包含する。いくつかの実施形態において、グリホサートは、ROUNDUP ULTRAMAX(登録商標)除草剤(Roundup(登録商標)およびRoundup Ultramax(登録商標)は、Monsantoの登録商標である)である。
【0041】
グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、植物内で単独で、または組合せて存在し得る。グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、異なる変異が、同一の植物内で遺伝的に組み合わされて耐性のレベルを増加し得るというようなさらなる効果を示し得る。例えば、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、単独または組合せて、組み合わされた異なるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子の数に依存して、1エーカーあたり少なくとも約8オンス、1エーカーあたり少なくとも約12オンス、1エーカーあたり少なくとも約16オンス、1エーカーあたり少なくとも約20オンス、1エーカーあたり少なくとも約24オンス、1エーカーあたり少なくとも約28オンス、1エーカーあたり少なくとも約32オンス、1エーカーあたり少なくとも約36オンス、1エーカーあたり少なくとも約40オンス、1エーカーあたり少なくとも約44オンス、1エーカーあたり少なくとも約48オンス、1エーカーあたり少なくとも約52オンスまたはそれ以上のグリホサートの投薬量に対する耐性を与え得る。本明細書中で使用される場合、「エーカーあたりのオンス」は、1エーカーあたりに適用されたグリホサートの50%溶液(イソプロピルアミン塩として)のオンス数をいう。圃場において、示された投薬量のグリホサートが、例えば、1エーカーあたり10〜20ガロンの輸送体積(carrying volume)で適用され得る。温室内では、示された投薬量のグリホサートが、例えば、1エーカーあたり80ガロンの体積で適用され得る。
【0042】
グリホサートの投薬量に対する耐性とは、そのグリホサートの投薬量によって生存する(すなわち、植物が枯死しない)植物の能力をいう。いくつかの場合、耐性植物は、一時的に黄色くなるか、またはそうでなければ他のいくつかのグリホサートに誘導される損傷(例えば、過剰の分げつ形成(tillering)および/または成長阻害)を示し得るが、回復する。グリホサート耐性はまた、同じ品種または同じ栽培品種の野生型植物に対して決定され得る。参照(例えば、野生型すなわち非変異体、正常な遺伝子型)植物は、グリホサートに対して感受性であると当業者に認識され得る同一の品種または栽培品種(通常は、変異誘発していない親)の植物であり得る。
【0043】
特定の実施形態において、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、単独でかまたは組み合わせで、増加したレベルのグリホサートに対して耐性を与える。本明細書中で使用する場合、「増加したレベルのグリホサート」とは、1エーカーあたり少なくとも約12オンス、1エーカーあたり少なくとも約16オンス、1エーカーあたり少なくとも約20オンス、1エーカーあたり少なくとも約24オンス、1エーカーあたり少なくとも約28オンス、1エーカーあたり少なくとも約32オンス、1エーカーあたり少なくとも約36オンス、1エーカーあたり少なくとも約40オンス、1エーカーあたり少なくとも約44オンス、1エーカーあたり少なくとも約48オンス、1エーカーあたり少なくとも約52オンスまたはそれ以上の投薬量をいう。
【0044】
別の局面において、グリホサートに対する植物の耐性を改変するための方法が提供される。特定の実施形態において、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子は、グリホサートに感受性の植物(例えば、グリホサートの形質に関して「野生型」すなわち正常な植物)に誘導され得る。変異誘発技術は、内因性の植物遺伝子のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を誘導するために使用され得る。変異誘発のさらなるラウンドが、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有するグリホサート耐性標的植物にさらなるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を誘導するために、当業者によって使用され得る。本明細書中で使用される場合、「変異誘発技術」とは、突然変異誘発物質(例えば、標的植物または標的植物部分における変異の頻度を増加させる化学的因子または物理的因子)による植物または植物部分の変異誘発をいう。例示的な実施形態において、Konzakの二重化学的変異誘発技術(米国特許第6,696,294号(2000年12月18日に出願された米国特許出願第09/719,880号)および国際特許公開WO99/65292に記載される(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される))は、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を内因性の植物遺伝子に誘導するために使用され得る。
【0045】
グリホサート耐性は、種々の植物種に導入され得る。本明細書中で使用される場合、用語「植物」は、任意の段階の成熟度または発生における植物を包含することが意図される。植物部分としては、茎、根、花、胚珠、雄ずい、葉、胚、分裂領域、カルス組織、葯培養物、配偶体、胞子体、花粉、小胞子、プロトプラスト、種子などが挙げられるが、これらの限定されない。
【0046】
変異誘発のための適切な植物種としては、単子葉植物と双子葉植物との両方が挙げられる。適切な単子葉植物としては、例えば、ショウブ目、オモダカ目、サトイモ目、ヤシ目、クサスギカズラ目、パイナップル目、ツユクサ目、カヤツリグサ目、ヤマノイモ目、ヒダテラ目、アヤメ目、イグサ目、ユリ目、ラン目、タコノキ目、イネ目、ガマ目およびショウガ目の種が挙げられる。例示的な単子葉植物としては、例えば、バナナ、オオムギ、トウモロコシ(corn)(トウモロコシ(maize))、サトウモロコシ(穀物型または飼い葉型)、カラスムギ、パイナップル、イネ、ライ麦、コムギ、タマネギ、ニンニク、ライコムギ、イチゴツナギ属の草(Poa pratensis)、カモガヤ、スズメノチャヒキ属の草、多年性のライグラス、ヌカボ属の草、丈の高いウシノケグサ属の草および他のウシノケグサ属の草、ギョウギシバおよび他の芝の種および飼い葉草種が挙げられる。
【0047】
適切な双子葉植物としては、例えば、アンボレラ目、セリ目、モチノキ目、ウマノスズクサ目、キク目、アウストロベイレヤ目、ベルベリドプシス目、ムラサキ目、アブラナ目、ツゲ目、カネラ目、ナデシコ目、ニシキギ目、マツ目、センリョウ目、ミズキ目、クロッソマ目、ウリ目、ビワモドキ目、マツムシソウ目、ツツジ目、マメ目、ブナ目、ガリア目、リンドウ目、フクロソウ目、グンネラ目、シソ目、クスノキ目、モクレン目、キントラノオ目、アオイ目、フトモモ目、スイレン目、カタバミ目、コショウ目、ヤマモガシ目、キンポウゲ目、バラ目、ビャクダン目、ムクロジ目、ユキノシタ目、ナス目、ヤマグルマ目、ブドウ目およびハマビシ目の種が挙げられる。例示的な実施形態において、双子葉植物は、例えば、綿、レタス、大豆、ホウレンソウ、ヒマワリ、アルファルファ、クローバー種、ジャガイモ、トマト、マメ種およびエンドウマメ種(例えば、アズキおよびエンドウ)およびセイヨウアブラナ(キャノーラが挙げられる)であり得る。
【0048】
代表的な実施形態において、上記植物は、例えば、コムギ、イネ、オオムギ、ライコムギ、トウモロコシ(へこんだトウモロコシ、ややへこんだトウモロコシ、硬いトウモロコシ、スイートコーン、ポップコーン)、サトウモロコシ(穀物型または飼い葉型)、キャノーラ、ニンジン、コーヒー、綿、ツルナシインゲン、ナス、飼い葉農作物、ソラマメ、ササゲ、亜麻、アルファルファ、カラスムギ、アブラナ、タマネギ、落花生、エンドウマメ、コショウ、多年草、ジャガイモ、サツマイモ、イネ、ライ麦、ライグラス、サトウモロコシ、大豆、ヒマワリ、茶、タバコなどの農作物植物であり得る。適切な飼い葉農作物としては、例えば、シバムギ、カナリアサード、スズメノチャヒキ属の草、ハマムギ属の草、飼い葉サトウモロコシ、スーダングラス、イチゴツナギ属の草、カモガヤ、アルファルファ、サンフォイン(sanfoin)、鳥の足のようなシャジクソウ属の草(birdsfoot trefoil)、ウマゴヤシ属の草、シロバナルピナス、タチオランダゲンゲ、ムラサキツメクサ、シロツメクサ、およびシナガワハギが挙げられる。他の実施形態において、上記植物は、例えば、穀類(例えば、オオムギ、トウモロコシ(corn)(トウモロコシ(maize))、カラスムギ、イネ、ライ麦、サトウモロコシ、ライコムギ、コムギ、キビなど)、芝生、まぐさなどであり得る。イネ科(grass family)(イネ科(Gramineae))の適切なメンバーとしては、例えば、サトウモロコシ、イネ、カラスムギ、コムギ、ライコムギ、ライ麦、まぐさ(例えば、カモガヤ)、多年性のウシノケグサ属の草、スズメノチャヒキ属の草、芝および緑色の芝生(greens grasses)(例えば、Poa pratensis)などが挙げられる。他の適切な植物としては、例えば、キマメ、ハウチワマメ、アオイマメ、ケナフ、ササゲおよびスイッチグラスが挙げられる。適切なクローバー(クローバー種)としては、例えば、スイートクローバー(ホワイトスイートクローバーおよびイエロースイートクローバー)ならびに他のメリロツス種が挙げられる。ナス科の適切なメンバーとしては、例えば、トマト、ジャガイモ、トウガラシ、コショウおよびナスが挙げられる。マメ科の適切なメンバーとしては、エンドウマメ、落花生、大豆、ササゲおよび豆類が挙げられる。他の適切な植物としては、ベルノニア(Vernonia anthelminica)、ベニバナ(Carthamus tinctorus L)、トウジンヒエ(Pennisetum americanum L)、キビ(Panicum miliaceum L.)およびシロガラシ(Sinapis alba L.)が挙げられる。植物種は、二倍体植物種または倍数体植物種であり得る。本明細書中で使用される場合、「倍数体」とは、少なくとも3組の染色体またはゲノムを含む植物種をいう(例えば、三倍体、四倍体、六倍体または八倍体)。
【0049】
上記植物は、例えば、任意の適切な植物種の、栽培品種、品種、品種改良株またはクローン(単為生殖品種を含む)をさらに含み得る。用語「栽培品種」または「品種」とは、当業者によってある栽培品種もしくは品種を別の栽培品種もしくは品種から区別するのに十分であると受け入れられている共通の一組の特徴または形質を共有することによって規定される種内の植物の群をいう。任意の所定の栽培品種または品種の全ての植物が、全ゲノムまたは分子レベルのどちらかで遺伝的に同一であるか、または任意の所定の植物が、全ての遺伝子座でホモ接合型であるという意味は、どちらの用語にも存在しない。栽培品種または品種は、純種の栽培品種または品種が自家受粉して95%より多い後代がその形質を保有する場合、特定の形質について「純種」であると考えられる。クローンの複製は、有性生殖することなく、同一の表現型の複製を保証する。同様に、単為生殖種(イチゴツナギ属の草、ブッフェルグラス(buffel grass)およびヤギュウシバなど)は、わずかに有性生殖をしたとしてもほぼ100%の割合でその単為生殖表現型を複製する。
【0050】
用語「品種改良株」または「株」は、当業者がある品種改良株もしくは株を別の品種改良株もしくは株から区別するのに十分であると受け入れられている共通の一組の特徴または形質を共有することによって規定される栽培品種内の植物の群をいう。任意の所定の品種改良株または株の全ての植物が、全ゲノムまたは分子レベルのどちらかで遺伝的に同一であるか、または任意の所定の植物が、全ての遺伝子座でホモ接合型であるという意味は、どちらの用語にも存在しない。品種改良株または株は、純種の株または品種改良株が自家受粉して95%より多い後代がその形質を保有する場合、特定の形質について「純種」であると考えられる。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「コムギ」および「コムギ植物」とは、パンコムギ属のメンバー(T.aestivum、T.turgidum、T.timopheevii、T.dicoccoides、T.zhukovskyi、T.monococcumおよびT.urartuならびにこれらの組換え体およびハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない)である植物をいう。T.aestivum亜種の例としては、T.aestivum(一般的なコムギ)、T.compactum(クラブコムギ)、T.macha(マカコムギ)、T.vavilovi(バビロビコムギ)、T.speltaおよびT.sphaerococcum(インド矮性コムギ)が挙げられる。T.turgidum亜種の例としては、T.turgidum、T.carthlicum、T.dicoccom、T.durum、T.paleocolchicum、T.polonicum、T.turanicumおよびT.dicoccoidesが挙げられる。T.monococcum亜種の例としては、T.monococcum(アインコーン)、T.aegilopoidesおよびT.urartuが挙げられる。
【0052】
例示的な実施形態において、コムギ植物は、ハードレッドウィンターコムギ、ハードレッドスプリングコムギ、ソフトレッドウィンターコムギ、ハードホワイトスプリングコムギ、ハードホワイトウィンターコムギまたはソフトホワイトスプリングコムギ、ソフトホワイトウィンターコムギなどである。代表的に、上記コムギは、栽培品種または品種改良株である。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「ライコムギ」および「ライコムギ植物」とは、ライ麦植物(Secale cereale)を、四倍体コムギ植物(例えば、Triticum turgidum)または六倍体コムギ植物(例えば、Triticum aestivum)のどちらかと交配させて、稔性の安定な合成的な亜種を達成するために染色体を倍化することによって作製される植物をいう。ライコムギ植物の例としては、例えば、X Triticosecale Wittmack(ここで、Xは、合成的な起源である)、cvs Jenkins、Juan、102、Alzo、Prestoなどが挙げられる。
【0054】
他の例示的な植物種としては、例えば、Hordeum vulgare(六条麦)、Hordeum disticum(二条麦)、Triticum turgidum durum(市販される全てのデュラムコムギ)、Triticum turgidum turanicum(長粒型デュラムコムギ)、Avena sativa(モミのないカラスムギ(hulled oat))、Avena nuda(モミのあるカラスムギ(hulless oat))、Oryza sativa種japonica(短粒型、糯米種(例えば、Calrose栽培品種)、Oryza sativa ssp indica(インディカ米、長粒型、およびバスモティ型栽培品種(例えば、Texmati);Oryza glabberima(アフリカ米)、トウモロコシ(例えば、へこんだトウモロコシ、ややへこんだトウモロコシ、硬いトウモロコシ、ポップコーンまたはスイートコーン)が挙げられる。
【0055】
別の局面において、植物のグリホサート耐性は、誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子(単数または複数)を、植物品種改良技術によって標的植物に導入することによって変化され得る。例えば、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子(単数または複数)は、植物品種改良技術によって標的栽培品種、品種または株に導入され得る。このような技術はまた、複数のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を標的栽培品種、標的品種または標的株に導入するため、またはさらなるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を、既に1つ以上のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有するグリホサート耐性標的栽培品種、標的品種または標的株に(例えば、交配によって)導入するために使用され得る。生じた後代は、例えば、商業的生産および/または研究目的に使用される所望のグリホサート耐性栽培品種、品種または株であり得る。さらに、生じる後代は、品種改良プログラムの中間物であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、植物のグリホサート耐性は、誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子(単数または複数)を、組換えグリホサート耐性遺伝子(単数または複数)を有する標的植物に(例えば、交配することによって)導入することによって増加され得るか、または変化され得る。グリホサート耐性突然変異対立遺伝子または複数のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子が、植物品種改良技術により導入され得る。特定の実施形態において、生じる後代植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。他の実施形態において、生じる後代植物は、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子(単数または複数)および組換えグリホサート耐性遺伝子(単数または複数)の両方を有する。後代植物のグリホサート耐性表現型は、例えば、標的植物のグリホサート耐性表現型より大きいものであり得る。生じる後代植物は、例えば、商業的生産および/または研究目的に使用される所望のグリホサート耐性栽培品種、品種または株であり得る。さらに、生じる後代植物は、品種改良プログラムの中間物であり得る。
【0057】
特定の実施形態において、植物におけるグリホサート耐性は、植物内に誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子(単数または複数)の存在に起因する(すなわち、組換えグリホサート耐性遺伝子(単数または複数)による寄与は存在しない)。他の実施形態において、グリホサート耐性は、誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子(単数または複数)および組換えグリホサート耐性遺伝子(単数または複数)の両方の存在に起因し、ここでグリホサート耐性突然変異対立遺伝子(単数または複数)および組換えグリホサート耐性遺伝子(単数または複数)の両方が、グリホサート耐性表現型に寄与する。
【0058】
さらなる局面において、後代植物、後代植物細胞および後代種子は、グリホサート耐性植物から産生され得るか、グリホサート耐性植物により産生され得る。後代植物、後代植物細胞および後代種子は、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子または複数のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有し得る。後代植物は、一番目の世代の子孫として直接的に、またはグリホサート耐性植物の祖先の子孫として間接的にグリホサート耐性植物に由来し得る。本発明に従って、種子は、グリホサート耐性植物に由来し得るか、またはそのような植物の後代に由来し得る。特定の実施形態において、種子は、グリホサート耐性に関して純種である。
【0059】
別の局面において、グリホサート耐性植物の付近の雑草を制御する方法が提供される。この方法は、グリホサートを雑草および必要に応じてグリホサート耐性植物に適用する工程を包含し、この植物のグリホサート耐性は、この植物のゲノム内のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子の存在に起因する。グリホサートは代表的に、雑草を枯死させる。関連する局面において、圃場の雑草を制御する方法が提供される。この方法は、グリホサート耐性植物が出現し、3〜5枚の葉の段階に成長した後に、グリホサートを圃場に適用する工程を包含し、この植物のグリホサート耐性は、この植物のゲノム内のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子の存在に起因する。グリホサートは代表的に、雑草のみを枯死させる。
【0060】
グリホサート耐性植物は、例えば、農作物植物(例えば、作物学植物、野菜、芝生または園芸植物)であり得る。この植物は、例えば、アルファルファ、豆類、ヌカボ属の草、ギョウギシバ、イチゴツナギ属の草、スズメノチャヒキ属の草、穀類、ニンジン、ヒヨコマメ、綿、ササゲ、キュウリ、ツルナシインゲン、ウシノケグサ属の草、ソラマメ、亜麻、まぐさ、ニンニク、ケナフ、アオイマメ、ハウチワマメ、アブラナ、タマネギ、エンドウマメ、落花生、コショウ、キマメ、パイナップル、ジャガイモ、ライグラス、大豆、カボチャ、テンサイ、ヒマワリ、トマトなどであり得る。上記穀類は、例えば、オオムギ、トウモロコシ、キビ、カラスムギ、イネ、ライ麦、サトウモロコシ、ライコムギ、コムギ,などであり得る。上記コムギは、例えば、パンコムギまたはデュラムコムギであり得る。いくつかの実施形態において、グリホサート耐性植物は、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない。他の実施形態において、グリホサート耐性植物は、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子および組換えグリホサート耐性遺伝子を有する。
【0061】
グリホサートは、例えば、1エーカーあたり少なくとも約8オンス、1エーカーあたり少なくとも約12オンス、1エーカーあたり少なくとも約16オンス、1エーカーあたり少なくとも約20オンス、1エーカーあたり少なくとも約24オンス、1エーカーあたり少なくとも約28オンス、1エーカーあたり少なくとも約32オンス、1エーカーあたり少なくとも約36オンス、1エーカーあたり少なくとも約40オンス、1エーカーあたり少なくとも約44オンス、1エーカーあたり少なくとも約48オンス、1エーカーあたり少なくとも約52オンスまたはそれ以上の投薬量で適用される
雑草は、例えば、一年草、二年草、多年草、広葉の雑草および自生農作物植物であり得;このような雑草としては、野生のカラスムギ、エノコログサ、シバムギ、アオゲイトウ、セイヨウヒルガオ、野生のソバ、ヤグルマギク、カラスノチャヒキ、イヌビエ、ゴートグラール(goat grall)、ブラックグラス(black grass)、シナガワハギ、タデ、ヨウガラシ、ホウキギ、オナモミ、モンバノキ、ヒメヒマワリ、隔年ヨモギ(biennial wormwood)および/またはロシアアザミが挙げられるが、これらに限定されない。本方法は、必要に応じて、例えば、植物を成長させる工程、種子を収穫する工程および/または種子を新たに植える工程をさらに包含し得る。
【0062】
以下の実施例は、本発明の種々の局面の単なる例証として提供され、本発明を制限するとは決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
グリホサート耐性コムギ植物を、化学的変異誘発によって単離した。これらのコムギ植物は、1つ以上の誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有する。
【0064】
(手順)
変異誘発:グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を導入するためのコムギ種子の変異誘発を、Konzakの方法に従って行なった。この方法は、米国特許第6,696,294号(2000年12月18日に出願された米国特許出願第09/719,880号)に開示される(この開示は、本明細書中に参考として援用される)。
【0065】
変異誘発手順は、以下のようであった:各コムギ品種または各コムギ株の約3kgの種子を、その土地の水道水を入れた容器に、室温(約72°F)にて約6時間予め浸した。予め浸した後、水道水を蒸留水と取り替え、その種子を2〜4Lのプラスチック容器に入れ、3ml/Lまたは3.5mL/Lのエチルメタンスルホネート(EMS)変異誘発物質を添加した。処理を、ヒュームフード内で行なった。その種子に、室温にて2時間変異誘発物質溶液を吸収させ、その後、EMS溶液を使い捨て可能な容器に注ぎ出し、その種子に1Lの0.001Mリン酸緩衝液(pH3.5)を添加した。次いで、2ml/Lの1Mアジ化ナトリウム(AZ)溶液を各処理容器に添加し、1時間吸収させた。各変異誘発物質による処理時間の間、処理される種子を含む容器を、約10分間毎に、10〜15秒間定期的に振盪し、種子の間への化学的変異誘発物質の均一な分布を確実にした。アジド処理の後、化学的溶液を使い捨て可能な容器に注ぎ出し、次いで、種子を水道水で2度リンスし、プラスチックトレイ内のペーパータオル上に広げ、乾燥させた。その種子を、約15%の水分含量になるまで室温にて約48時間再び乾燥させた。
【0066】
再乾燥させた、変異誘発した種子を、植え付けトレイに移し、M1世代の植物の産生のために圃場に蒔いた。M1世代の植物は、自家受粉によりM2(二番目の世代)種子を産生する。成熟時に、M1植物を(M2種子とともに)まとめて収穫した。このM2種子を乾燥領域で保存し、エアークリーナーを用いて破片を除去し、スクリーニング試験のために植え付けを行なうまで貯蔵した。
【0067】
M2後代のスクリーニング試験を、Washingtonの二箇所(WardenおよびPullman)で行なった(表1では、それぞれ「W」または「P」と略す)。Pullmanでは、5個体以上の品種/株/遺伝子型を、M2変異誘発した種子から構成されるバルクミックスに組合わせた。Wardenでは、種子のロットを、個々の品種/株毎に蒔いた。
【0068】
種子のロットを一列に蒔き、1つの畝は圃場の隅から隅までに至り(約6フィート)、穀物の小さい畝を伴なっていた。異なるM2種子ロットを、各種子ロットを完全に使うまで、一方の次に他方を蒔いた。Wardenの圃場は、約4エーカーの大きさであり、長方形型であり、スプリンクラーにより水を与えた。植物が3〜5枚の葉の段階(種子を蒔いてから約4〜5週間)になったときに、グリホサート(50.2%の有効成分であるグリホサート、N−(ホスホノメチル)グリシンイソプロピルアミン塩;49.8%の他の成分;Monsanto ROUNUP ULTRAMAX(登録商標))を適用した。圃場に、1エーカーあたり約16オンスの投薬量のグリホサート(市販製品の50%)を一回噴霧し、さらに4週間後、処理後生存する少数の植物を掘り出し、さらなる成長、評価および試験のためにPullmanの温室に移した。グリホサートは、圃場では、1エーカーあたり20ガロンの体積で適用するか、または温室では、1エーカーあたり80ガロンの体積で適用した。
【0069】
一回目の除草剤適用では適用しなかった圃場の未噴霧区域が存在したので、二回目の1エーカーあたり16オンスのグリホサートの噴霧を、約7〜9枚の葉の段階で、圃場全体に適用した。再度、約4週間後、少数の生存する植物を掘り出し、さらなる成長、評価および試験のためにPullmanの温室に移した。選択した植物を圃場で成熟させ、後のスクリーニングのためにM3種子を収穫した。植物を温室に移して数週間以内に、それらは、その移動から回復したようであった。その後、小さいロットの植物に除草剤噴霧を適用するために設計されたチャンバ内で、全てに、1エーカーあたり80ガロンの水に相当する1エーカーあたり40オンスにて、グリホサートを噴霧した。圃場からいくつか選択されたものは、適用したグリホサート用量に対して耐性であったが、大部分の植物は、温室試験において感受性であることが証明され、選択されたものは「逸脱体(escapes)」であると考えられた。噴霧処理後、その植物を成長させた。
【0070】
DNA分析(後述)のために植物組織のサンプルを採取した。その後、その植物(全て秋播性)を、2ヶ月間の春化処理期間のために冷却チャンバ内に配置し、その後、それらを温室に戻し、後代の試験のために種子をつけさせた。
【0071】
M2変異誘発したコムギの第2のロットを、Pullman、Washingtonの外側の小さい圃場領域に蒔いた。このロットの植物は、ハードレッドスプリング(HRS)コムギの実験株NPBM00505のM2ストック、ならびに二種の実験スプリングデュラムのM2種子および二種のNorthwest Plant BreedingのソフトホワイトウインターコムギのM2を含んでいた。実生が出現し、3〜5枚の葉の段階まで成長した後、1エーカーあたり20オンスのグリホサートを、圃場で成長している実生を植物に適用した。除草剤を適用して約3〜4週間後、生存する少数の植物(約32個体)を掘り出し、温室の鉢に移し、温室内で成長させた。圃場からの移動から約2週間の回復後、全ての選択した植物に、1エーカーあたり約40オンスの用量のグリホサート除草剤(市販製品濃度の約50%)を噴霧した。約2週間後、葉のサンプルを、DNA分析のために採取した。
【0072】
この植物を種子をつけるまで成長および発育を続けさせた。冬コムギ選択物を、2ヶ月間の期間にわたる春化処理のために6℃の冷却チャンバへ移した。春コムギ植物を発育させ、後代の除草剤耐性形質の分析のために種子をつけさせた。冬コムギ植物を春化処理期間の後、種子をつけさせるために発育させた。
【0073】
HRSコムギ植物は、成熟後の休眠を有することがわかっているかなり多量の種子をつけた。この休眠を克服するために、種子を最初にペトリ皿で処理(窒素源(硝酸ナトリウム)およびカイネチン)を開始し、休眠の打破を補助した。この工程は、種子を4°Fの冷蔵庫にて約1〜2週間発芽させる工程を包含し、その後、種子は、茎頂を露出させることにより発芽の徴候を示した。発芽した種子を、3〜5枚の葉の段階まで成長させるために小さい温室のトレイに移した。この時点で、市販の50%グリホサート製品を用いて作ったグリホサート溶液を噴霧し、圃場スクリーニング研究に使用した(表1を参照のこと)。
【0074】
DNA分析:植物組織のサンプルを、組換えグリホサート耐性試験(GMO分析)のために採取した。このサンプルを、NOSターミネーター配列および35sプロモーター配列の存在について、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により試験した。NOSターミネーター配列および35sプロモーター配列は、Roundup ReadyTMコムギおよび遺伝的に操作したグリホサート耐性形質を保有するトウモロコシ植物に存在する。PullmanサンプルおよびWardenサンプルは、GMOマーカーに対して陰性であることがわかった(表1)。
【0075】
(結果)
グリホサート耐性植物を、ハードレッドスプリングコムギ、ハードホワイトスプリングコムギ、ハードレッドウィンターコムギ、ハードホワイトウィンターコムギおよびソフトホワイトウィンターコムギから単離した。各品種のグリホサート耐性植物を、グリホサート耐性形質の遺伝的形質および伝達性を確認するために試験した。
【0076】
グリホサート耐性植物は、1エーカーあたり8オンス、16オンス、24オンスおよび/または32オンスの投薬量に対して耐性であった。さらに、特定のグリホサート耐性コムギ植物は、1エーカーあたり少なくとも40オンスまでの投薬量のグリホサートに対して耐性を示した。
【0077】
このグリホサート耐性植物を後代試験した。突然変異対立遺伝子は、遺伝的であり、優性、半優性あるいは場合によっては劣性であることが示された。例えば、3つのM2 HRSコムギ変異体由来の後代(表1を参照のこと、8s、9s、10s(後述))は、少なくとも1つのホモ接合型のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有しているようである(すなわち、コムギ変異体HRS00505−8s、9sおよび10sのM3後代は、8オンスの投薬量のグリホサートに対して大部分が耐性であった)。1エーカーあたり8オンスの投薬量のグリホサートを噴霧したときに、他のM2(ヘテロ接合型)変異体植物由来の後代は、3:1の遺伝的分離比を示すか、2つの変異体植物の後代については、15:1の非耐性植物に対する耐性植物の比を示した(9sのグリホサート耐性の後代(gT−9sと名付けた)由来の種子を、American Type Culture Collectionに、ATCC受託番号PTA−6482として2004年12月21日に寄託した)。
【0078】
いくつかの場合、グリホサート耐性植物は、最初にグリホサート感受性の特徴である葉の黄変を示したが、後に、緑色の分げつ(tiller)を生じ、正常に発育を続けた。他のいくつかの実生は、成長阻害および過剰な分げつを示したが、回復した。15:1の比を示すグリホサート耐性植物は、実際、種子に適用された変異原性処理によって、二つの独立して遺伝した変異体遺伝子座が同じ胚細胞に誘導されたことを実証した。このことは、二つの化学的な変異誘発物質を種子にタンデムに適用する方法の結果として、種子の胚の同じ細胞における二つの独立した変異の誘導によりもたらされ得る。
【0079】
グリホサート耐性春コムギ植物については、耐性植物由来の花粉を使用して非耐性のコムギに多数の交配を行った。これらの遺伝的分析を、それぞれ別個の変異体植物におけるグリホサート耐性形質(単数または複数)の遺伝性および伝達性を確認するために開始した。種子が成熟した後、後代試験を開始した。
【0080】
ハードレッドスプリング株については、Pullmanの温室内で種子をつけさせた。収穫した種子を発芽させてすぐに、各選択した植物株のM3世代種子の後代を、1エーカーあたり8オンスの除草剤の適用に対する耐性の評価のために温室のトレイに蒔いた。
【0081】
グリホサート耐性変異体コムギ植物のさらなる研究において、耐性形質を非耐性の遺伝的なバックグラウンドに移すためにまた交配を行なった。M3後代の結果は、耐性形質がメンデル遺伝を示すことを示したが、多くの場合、複数のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子が、同一の後代に存在し得る。このような場合、後代は、おそらく各後代に遺伝したグリホサート耐性突然変異対立遺伝子の数および性質に依存して、用量依存性のグリホサート耐性を示すようである。
【0082】
1つの植物、NPBM00505−14s由来のM3世代後代の試験において、6個体の植物に1エーカーあたり40オンスの用量を噴霧した。6個体の植物の内の4個体は、1エーカーあたり40オンスの適用に枯死したが、2個体の植物は、いくつかの黄色くなった苗条を示した後、回復し、次いで、正常な緑色の分げつを生じ、これは、成長し続けた。この植物は、最終的に、稔性の穂状花序を生じた。NPBM00505−14sの生存する2個体の植物由来の葉のサンプルを採取し、DNA分析に供した。その結果により、その植物のグリホサート耐性が、GMO生殖質による汚染(すなわち、組換え遺伝子を含んでいる)には起因しないことが確認された。
【0083】
次いで、M2植物NPB00505−14s由来の他のM3後代を、より大きい規模の組の除草剤噴霧処理のために成長させた。1エーカーあたり8オンスの用量のグリホサートを噴霧したこの植物(14s)由来の後代を、耐性について15個体の耐性:1個体の非耐性(感受性)の比に分離した。このことは、選択したM2植物が、2つの独立したグリホサート耐性遺伝子座を保有していたことを示唆する(表1)。
【0084】
1エーカーあたり8オンスのグリホサート適用により同定される両方の変異を保有する植物を同定するために、さらなる試験を開始した。14s植物由来の後代の3つの平地に、1エーカーあたり16オンスまたは32オンスの用量の除草剤を噴霧した。これらの試験の分析は、7個体の非耐性の実生に対する9個体の耐性の実生の分離頻度によると、2つの突然変異遺伝子座によって提供される耐性レベルが、除草剤耐性に相加的に寄与しながら相互作用し、各変異遺伝子座は、1エーカーあたり16オンスのグリホサートに対する耐性に寄与することを示唆した。1エーカーあたり32オンスの用量に対する耐性は、9個体の非耐性の実生に対する7個体の耐性の実生の比に従って、突然変異対立遺伝子の相加的な相互作用によって達成した。二つの変異のどちらも、それらがホモ接合型であったとしても1エーカーあたり32オンスの用量に対する耐性を提供しないようであるが、各対立遺伝子の一方が、ヘテロ接合型で存在する場合、1エーカーあたり32オンスの用量に対する耐性が提供され、これは、独立に優性に遺伝した変異遺伝子座と同じくグリホサート耐性突然変異対立遺伝子の相互作用に起因する。
【0085】
いくつかの変異体春コムギ後代の試験の結果を表1に示す。この結果により、M2植物の耐性を確認し、またその後代によって、誘導された変異耐性が安定に遺伝し、1つまたは2つの独立して誘導された突然変異対立遺伝子によって制御されていることを実証した。また、異なるコムギ品種の後代に存在する変異体は、独立の変異事象に起因しているはずである。このような変異は、六倍体コムギのAゲノム、Bゲノムおよび/またはDゲノムの1つ以上に位置する遺伝子座の異なる突然変異対立遺伝子を意味し得る。要約すると、1つの変異体HRSコムギ植物の後代の分析は、1エーカーあたり8オンスおよび1エーカーあたり16オンスの濃度のグリホサートに対する、ほぼ等しく、独立し、かつ相加的に相互作用するレベルの耐性を与える2つの変異が誘導されたことを示唆する。
【0086】
【表1−1】

【0087】
【表1−2】

【0088】
【表1−3】

35S配列およびNOS配列に対するPCR試験
2回噴霧した。
3回噴霧した。
「P」は、Pullmanの場所を示し;「W」は、Wardenの場所を示し;「T」は、耐性を示し;「S」は、感受性を示し;「HT」は、耐性であるが、「高分げつ」であることを示し;「S/R」は、感受性であるが、回復したことを示し;「RR陽性コントロール」は、Roundup Ready(登録商標)植物(Roundup Ready(登録商標)は、Monsantoの登録商標である)を示し、「NYT」は、試験がなされていないことを意味する。
【0089】
注:いくつかの試験において、1エーカーあたり8オンスの用量は、植物の枯死を引き起こすには低すぎた。これは、感受性であると分類された植物の多くが、除草剤の適用から回復し、緑色の苗条を生じたからである。従って、これらの植物は、植物の最初の感受性に従って最初に計数した(表1のS/Rと指定)。この結果は、特定の品種または株について、1エーカーあたり16オンスのグリホサートの用量が、グリホサートに耐性である植物に対してグリホサートに感受性である植物を容易に区別するために必要な最少量であり得ることを示唆する。同定されたほとんどの変異体対立遺伝子は、1エーカーあたり少なくとも16オンスの用量割合に対して耐性を提供するが、いくつかの変異体は、1エーカーあたり24オンスの割合(M4のスクリーニングデータ)、1エーカーあたり32オンスの割合、または1エーカーあたり40オンスの割合の除草剤に耐性であるか、またはそれより高い割合の除草剤に耐性であり得る。
【0090】
(実施例2)
グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を、非耐性コムギ植物に移し得る。ELTANに戻し交配することによって、F1ハイブリッド[M2 ELTAN×ELTAN](DH−米国特許第6,764,854号;その開示は、本明細書注に参考として援用される)から二重半数体(DH)株を作製するかまたはF2株を作製することにより、M2 ELTAN(=ME2)内のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子と同様に、SWW内のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を移す。この株を、1エーカーあたり16オンス、32オンス、40オンスまたは52オンスの用量のグリホサートに対する耐性について試験する。
【0091】
【表2】

(実施例3)
グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を、後代植物において組換える。NPB00505−M9sおよびNPB00505−M8sのグリホサート耐性植物は、二重半数体(DH)株が生じるF1を形成するために交配することによって合わされ得、これらを次いで、16オンス、32オンス、40オンスまたは52オンスの用量のグリホサートに対する耐性について試験する。
【0092】
グリホサート耐性突然変異対立遺伝子の他の組合せが、以下のように単離され得る:
【0093】
【表3】

(実施例4)
双子葉植物種(双子葉植物)のグリホサート耐性品種が、以下の記載に従って作製され得る。手短かには、以下の変化を有するKonzakの変異誘発手順(米国特許第6,696,294号)を、処理した種子に対する吸収損傷を減少させるため、および変異誘発した種子の発芽を増強させるために使用した。双子葉植物の種子に、プライミング前処理を与えた(「マトリコンディショニング(matriconditioning)」と称されることもある)(Khanら、Crop Science 32:231〜7(1992)。1000gのCeliteTMまたはKeniteTM(珪藻土)を、3250mlの水と混合し、その後、500gの種子をその中に混合した。その混合物を、大きい容器(例えば、プラスチックの1ガロンの瓶)に移し、約65°Fにて約18時間〜約36時間回転させるか、またはプライミング期間の間4〜6時間毎に混合した。瓶内には、十分な空間があり、従って種子の混合物および粉末は、流れ、瓶が回転するにつれて継続的に混合される。プライミング処理後、種子を、ふるいにかけることにより珪藻土から取り除き、約2分間の時間にわたって水でリンスする。約3Lの種子および3Lの蒸留水を容器内であわせる。水の体積は、各容器内の種子をちょうど覆うのに十分である。EMS(エチルメタンスルホネート)を、1Lあたり約2.0〜4.0mlの濃度まで添加し、その容器を穏やかに振盪し、種子を変異誘発物質溶液と混合する。その混合物を、2時間の処理時間の間、各10分間ごとに、少なくとも10〜15秒間、再度穏やかに振盪する。変異誘発処理の後、EMS溶液を、使い捨て可能な容器にデカントして廃棄し、EMSを分解するためにチオ硫酸ナトリウムを添加した。
【0094】
EMS処理後、3リットルのリン酸緩衝液(一塩基性NaHPO、pH3.0〜3.5に調整)を添加して種子を覆う。次いで、1Lあたり2mlの1Mのアジ化ナトリウムのストック溶液を、EMS用量に関係なく、各瓶に緩衝液の1Lあたりに添加する。この混合物を、各振盪約10〜15秒間で1時間の期間にわたって繰り返し振盪する。1時間のアジド処理後、アジド溶液を使い捨て可能な可能容器に注ぎ出し、次いで、種子を4〜5分間にわたって2〜3回水道水によりリンスする。所望の場合、変異誘発物質処理した種子は、殺真菌剤(CaptanTMなど)で処理され得る。次いで、種子をふるい上に配置し、過剰の水を排出させ、種子体積の約5倍の乾燥珪藻土(KeniteTM)上に配置し、全ての過剰な水を除去するために混合した。遊離した水を吸収するための、珪藻土の量が十分でないか、または珪藻土の粉末が著しく湿っている場合、湿った粉末を除去するために種子をふるいにかけ、新鮮かつ乾燥した珪藻土を使用して、処理した種子と合わせる。
【0095】
次いで、種子/粉末混合物を、トレイを覆っている綿またはバーラップの布上に広げ、少量の粉末のみ(種子体積の3倍)で種子を覆い、水分が蒸発するようにする。再乾燥を補助するために、種子に送風するためにファンを配置し得る。時々混合し直しながら約24〜36時間後、種子は、種子生存度の試験を開始するために十分に乾燥する。次いで、種子より小さいふるいを使用して種子から粉末を振り落とし、種子をトレイに配置し、適度に涼しい部屋(例えば、温室のベンチ上で、約65〜70°F)でさらに乾燥させる。種子は、変異誘発物質処理が完了した後、可能な限りすぐに植えられるべきである。
【0096】
十分に再乾燥した後、種子を土壌に植え、変異誘発した植物のM1世代を生じさせ、これは、M2世代の種子を生じる。次いで、M2世代の種子は、M2植物を生じるために植えられ、M2植物に、その植物が十分に成長した(代表的には、3〜5枚の葉の段階)後、除草剤グリホサートを噴霧する。除草剤が、大部分の集団を枯死させる期間を可能にした後、M2のバルクの後代の植物の圃場をスクリーニングし、推定上の耐性植物を同定し、それは、掘り出され、種子を生じさせるために成長させるために温室に移されるか、または、圃場にて成熟する。
【0097】
移した実生が、温室への移動から回復した後、それらに、除草剤の再試験のために噴霧し、その耐性を確認し、次いで、種子を生じさせ得る。生じた種子は、その除草剤耐性を確認するため、耐性の遺伝的分離を決定するために後代の集団を生じさせるため、そしてそれらの除草剤耐性を再確認するために使用され得る。耐性植物を別の鉢に植え替え、その成長を続けさせ、種子を生じさせ、次いで、変異遺伝子の相加作用により耐性のレベルを増加させるために、異なる変異体間で交配させるために使用され得る。生じ得る二次変異体を分離個体間から取り除くために、通常少なくとも1回の戻し交配が望ましい。次いで、この変異体は、例えば、さらなる使用または商品化のために品種または株を開発するために使用され得る。
【0098】
(実施例5)
自家受粉する種については、Konzak(米国特許第6,696,294号)によって記載されるか、または実施例4において改変されるコムギのための変異誘発技術が使用され得る。適切な種としては、例えば、オオムギ、カラスムギ、ライコムギ、サトウモロコシ、キャノーラ、大豆および他のマメ科植物および特定の芝類が挙げられる。実施例4に記載される方法は、双子葉植物種の種子生存度を保持するために特に有用である。生じ得る二次変異体を分離個体間から取り除くために、通常少なくとも1回の戻し交配が望ましい。
【0099】
(実施例6)
他家受粉する単子葉植物種については、Konzak(米国特許第6,696,294号)によって記載されるか、または実施例4において改変されるコムギのための変異誘発技術が使用され得る。適切な種としては、例えば、トウモロコシ(corn)(トウモロコシ(maize))および特定の芝類が挙げられる。M1変異誘発した植物を自然に他家受粉させるが、その集団は、他の交配し得る種/品種から離れた領域で成長させなければならない。M2実生は、コムギに対してなされた圃場と同じくらいの圃場でスクリーニングされ得る。生じ得る二次変異体を分離個体間から取り除くために、通常少なくとも1回の戻し交配が望ましい。
【0100】
(実施例7)
単為生殖種については、実施例4の変異誘発技術が使用され得る。MA2種子を生じさせるために、後代のM1世代を成長させる。MA2種子を圃場に蒔き、その植物が十分に成長した後、それらに少なくとも16オンスの用量のグリホサートを噴霧する。次いで、耐性植物を掘り出し、確認試験および成長させて種子を生じさせるために、温室に移す。確認された耐性植物を、種子を生じさせるために成長させる。この植物は、耐性について分離を示さないことが証明されているべきである。この種子は、耐性が、商業に適切に公開される場合、さらなる増殖のために使用され得る。
【0101】
(実施例8)
野菜種、ラディッシュ、ナス、レタスなど(キャノーラおよびアブラナを含む)については、種子は、実施例4のように珪藻土を使用する改変された方法におけるように変異誘発され得る。EMSの量は、調整され得る。M2世代を生じさせるために、処理した種子を成長させ、次いで、これを除草剤に対する耐性についてスクリーニングするために蒔く。十分な耐性を有する変異体は、次いで種々の開発のために親として使用され得る。生じ得る二次変異体を分離個体間から取り除くために、通常少なくとも1回の戻し交配が望ましい。選択した植物は、増殖および商品化のために、または耐性品種を開発するためのさらなる品種改良のために使用され得る。
【0102】
(実施例9)
例えば、トウモロコシ、サトウモロコシ、タマネギ、ニンジン、アメリカボウフウなどのような近交系は、コムギについて記載されるものとほとんど同じにかまたは実施例4のように変異誘発され得、耐性植物は、コムギについて記載されるように単離され得る。生じ得る二次変異体を分離個体間から取り除くために、通常少なくとも1回の戻し交配が望ましい。耐性についての選択個体は、次いで、戻し交配手順を使用してハイブリッドの近交株に形質を移すために親として使用され得る。
【0103】
(実施例10)
テンサイについては(テンサイの市販の品種は、多くの場合三倍体である)、優性のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子が、四倍体株で単離され得る。次いで、生じた耐性植物は、多くの品種の親になり得る。一旦耐性選択個体が同定されるか、または変異体間で組換え品種改良により作り出されると、四倍体株は、任意の二倍体株を非耐性の親として使用して三倍体品種を生じるために使用され得る。
【0104】
(実施例11)
ニンジン、タマネギ、トマトなどのようなハイブリッドの他の種については、変異体は、実施例4に記載されるものとほとんど同じに作製される。選択された変異体は、形質を近交系に移すために使用される。予備的な試験が、その形質の優性が十分であることを示す場合、F1ハイブリッドが耐性になるので、任意の2つの近交系の内の少なくとも1つのみが、耐性を保有する必要がある。
【0105】
前述の実施例は、特許請求された本発明の範囲を例証するために提供され、その範囲を制限するために提供されるのではない。本発明の他の変形は、当業者に容易に明らかになり、添付の特許請求の範囲に包含される。本明細書中に引用される全ての出版物、特許、特許出願および他の参考文献は、本明細書中に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を有する農作物植物であって、該誘導された突然変異対立遺伝子は、同じ種の野生型植物と比較した場合に、グリホサートに対する耐性を与え、該グリホサート耐性は、該内因性植物遺伝子の該誘導された突然変異対立遺伝子の存在に起因する、農作物植物。
【請求項2】
組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
前記植物が、アルファルファ、豆類、ヌカボ属の草、ギョウギシバ、イチゴツナギ属の草、スズメノチャヒキ属の草、穀類、ニンジン、ヒヨコマメ、綿、ササゲ、キュウリ、ツルナシインゲン、ウシノケグサ属の草、ソラマメ、亜麻、まぐさ、ニンニク、ケナフ、アオイマメ、ハウチワマメ、アブラナ、タマネギ、エンドウマメ、落花生、コショウ、キマメ、パイナップル、ジャガイモ、ライグラス、大豆、カボチャ、テンサイ、ヒマワリまたはトマトである、請求項1に記載の植物。
【請求項4】
前記穀類が、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、キビ、カラスムギ、イネ、ライ麦、サトウモロコシまたはライコムギ植物である、請求項3に記載の植物。
【請求項5】
前記植物が、アルファルファ、豆類、ヌカボ属の草、ギョウギシバ、イチゴツナギ属の草、スズメノチャヒキ属の草、ニンジン、ヒヨコマメ、綿、ササゲ、キュウリ、ツルナシインゲン、ウシノケグサ属の草、ソラマメ、亜麻、まぐさ、ニンニク、ケナフ、アオイマメ、ハウチワマメ、アブラナ、タマネギ、エンドウマメ、落花生、コショウ、キマメ、パイナップル、ジャガイモ、ライグラス、大豆、カボチャ、テンサイ、ヒマワリまたはトマトである、請求項3に記載の植物。
【請求項6】
前記コムギが、パンコムギ植物またはデュラムコムギ植物である、請求項4に記載の植物。
【請求項7】
1エーカーあたり約8オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項1に記載の植物。
【請求項8】
1エーカーあたり約16オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項7に記載の植物。
【請求項9】
1エーカーあたり約24オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項8に記載の植物。
【請求項10】
1エーカーあたり約32オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項9に記載の植物。
【請求項11】
1エーカーあたり約40オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項10に記載の植物。
【請求項12】
1エーカーあたり約52オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項11に記載の植物。
【請求項13】
異なる内因性の遺伝子の少なくとも2つの異なる誘導された突然変異対立遺伝子を有する請求項1に記載の植物であって、各突然変異対立遺伝子がグリホサートに対する耐性を与える、植物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の植物に由来する、種子。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の植物に由来する、後代の植物。
【請求項16】
請求項15に記載の植物に由来する、種子。
【請求項17】
同じ種の野生型植物と比較してグリホサートに対する耐性を与える内因性の遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を有する倍数体植物であって、該グリホサート耐性が、該内因性の植物遺伝子の該誘導された突然変異対立遺伝子の存在に起因する、倍数体植物。
【請求項18】
前記倍数体植物が、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない、請求項17に記載の倍数体植物。
【請求項19】
穀類である、請求項17に記載の倍数体植物。
【請求項20】
前記穀類が、ライコムギ植物またはコムギ植物である、請求項19に記載の倍数体植物。
【請求項21】
前記コムギが、T.aestivum種、T.turgidum種、T.timopheevii種、T.zhukovskyi種またはこれらのハイブリッドである、請求項20に記載の倍数体植物。
【請求項22】
前記コムギが、パンコムギまたはデュラムコムギである、請求項21に記載の倍数体植物。
【請求項23】
異なる内因性の遺伝子に少なくとも2つの異なる誘導された突然変異対立遺伝子を有する請求項17に記載の倍数体植物であって、各突然変異対立遺伝子が、グリホサートに対する耐性を与える、倍数体植物。
【請求項24】
前記誘導された突然変異対立遺伝子が、異なるゲノムに存在する、請求項23に記載の倍数体植物。
【請求項25】
請求項17〜24のいずれか1項に記載の倍数体植物に由来する種子。
【請求項26】
請求項17〜24のいずれか1項に記載の倍数体植物に由来する後代の植物。
【請求項27】
請求項26に記載の後代の植物に由来する、種子。
【請求項28】
1エーカーあたり約8オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項17に記載の植物。
【請求項29】
1エーカーあたり約16オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項28に記載の植物。
【請求項30】
1エーカーあたり約24オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項29に記載の植物。
【請求項31】
1エーカーあたり約32オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項30に記載の植物。
【請求項32】
1エーカーあたり約40オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項31に記載の植物。
【請求項33】
1エーカーあたり約52オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項32に記載の植物。
【請求項34】
グリホサートに対する耐性を与える内因性のコムギ遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を有する倍数体コムギ植物であって、該コムギ植物が、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない、倍数体コムギ植物。
【請求項35】
1エーカーあたり約8オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項34に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項36】
1エーカーあたり約16オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項35に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項37】
1エーカーあたり約24オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項36に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項38】
1エーカーあたり約32オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項37に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項39】
1エーカーあたり約40オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項38に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項40】
1エーカーあたり約52オンスのグリホサートの投薬量に対して耐性を有する、請求項39に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項41】
前記コムギがパンコムギまたはデュラムコムギである、請求項34に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項42】
グリホサートに対する耐性を与える異なる内因性のコムギ遺伝子に少なくとも2つの異なる誘導された突然変異対立遺伝子を有する、請求項34に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項43】
異なる内因性の遺伝子に、2つの異なる誘導された突然変異対立遺伝子を有し、該突然変異対立遺伝子のそれぞれが、異なるEPSPS遺伝子に存在する、請求項42に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項44】
前記誘導された突然変異対立遺伝子が、異なるコムギゲノムに存在する、請求項42に記載の倍数体コムギ植物。
【請求項45】
請求項34〜44のいずれか1項に記載の植物に由来する、コムギ種子。
【請求項46】
請求項34〜44のいずれか1項に記載の植物に由来する、後代のコムギ植物。
【請求項47】
請求項46に記載の後代のコムギ植物に由来する、種子。
【請求項48】
内因性遺伝子の誘導された突然変異対立遺伝子を有するコムギ植物であって、該誘導された突然変異対立遺伝子は、野生型のコムギ植物と比較した場合に、グリホサートに対する耐性を与え、該グリホサート耐性は、以下のグリホサート耐性株:NPB00505−8s、NPB00505−9s、NPB00505−10s、NPB00505−13s、NPB00505−14s、NPB00505−17s、NPB00505−18s、NPB00505−21s、NPB−E1、NPB−1WW、NPB−2WW、NPB−E2またはNPB−26WWの内の1つに由来する該誘導された突然変異対立遺伝子の存在に起因する、コムギ植物。
【請求項49】
植物のゲノムにグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を誘導するための方法であって、以下:
標的植物から種子を提供する工程;
該種子を有効量の少なくとも2つの変異誘発物質と連続的に接触させ、変異誘発した種子を生じる工程;
該変異誘発した種子を発芽させ、M1変異誘発した植物を形成し、M2世代の種子を産生させる工程;
該M2世代の種子を発芽させ、M2世代の植物を産生させる工程;
該M2世代の植物にグリホサートを適用する工程;
該M2世代の植物をスクリーニングしてグリホサート耐性植物を同定する工程であって、該グリホサート耐性植物が、誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を有する、工程;および
グリホサート耐性M2植物を自家受粉させて、M3種子およびグリホサート耐性の後代の植物を産生する工程;
を包含する、方法。
【請求項50】
1エーカーあたり少なくとも約8オンスの投薬量にて、前記M2世代植物にグリホサートを適用する工程を包含する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
1エーカーあたり少なくとも約16オンスの投薬量にて、前記M2世代植物にグリホサートを適用する工程を包含する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
1エーカーあたり少なくとも約20オンスの投薬量にて、前記M2世代植物にグリホサートを適用する工程を包含する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
1エーカーあたり少なくとも約24オンスの投薬量にて、M2世代植物にグリホサートを適用する工程を包含する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
1エーカーあたり少なくとも約32オンスの投薬量にて、前記M2世代植物にグリホサートを適用する工程を包含する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
1エーカーあたり少なくとも約40オンスの投薬量にて、前記M2世代植物にグリホサートを適用する工程を包含する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
1エーカーあたり少なくとも約52オンスの投薬量にて、前記M2世代植物にグリホサートを適用する工程を包含する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
少なくとも2つの異なるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を誘導する工程を包含する、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
少なくとも2つの異なるグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を誘導する工程を包含し、各突然変異対立遺伝子が異なるゲノムの遺伝子である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記標的植物が、少なくとも1つのグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を保有する、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
前記変異誘発した植物が、3〜5枚の葉の段階と7〜9枚の葉の段階との間のときに、グリホサートが適用される、請求項49に記載の方法。
【請求項61】
前記標的植物が農作物植物である、請求項49に記載の方法。
【請求項62】
前記農作物植物が、穀類、アルファルファ、豆類、ヌカボ属の草、ギョウギシバ、イチゴツナギ属の草、スズメノチャヒキ属の草、ニンジン、ヒヨコマメ、綿、ササゲ、キュウリ、ツルナシインゲン、ウシノケグサ属の草、ソラマメ、亜麻、まぐさ、ニンニク、ケナフ、アオイマメ、ハウチワマメ、アブラナ、タマネギ、エンドウマメ、落花生、コショウ、キマメ、パイナップル、ジャガイモ、ライグラス、大豆、カボチャ、テンサイ、ヒマワリまたはトマトである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記穀類が、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、キビ、カラスムギ、イネ、ライムギまたはライコムギ植物である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記コムギ植物が、パンコムギまたはデュラムコムギである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記誘導されたグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を、非グリホサート耐性植物に交配させてグリホサート耐性の後代の植物を形成する工程をさらに包含する、請求項49〜64に記載の方法。
【請求項66】
前記グリホサート耐性の後代の植物から種子を獲得する工程をさらに包含する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
標的植物のグリホサート耐性を変化させる方法であって、以下:
第1のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を有する第1の植物を、該標的植物と交配させてグリホサート耐性表現型を有する後代の植物を形成する工程であって、該後代の植物が、グリホサート耐性突然変異対立遺伝子を有する、工程、
を包含する、方法。
【請求項68】
前記後代の植物が組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法に従って調製されたグリホサート耐性植物。
【請求項70】
前記標的植物が、少なくとも1つのグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を有する、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記標的植物が、組換えグリホサート耐性遺伝子を有する、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記後代の植物が前記組換えグリホサート耐性遺伝子をさらに有し、前記グリホサート耐性突然変異対立遺伝子と組換えグリホサート耐性遺伝子との両方が、前記グリホサート耐性表現型に寄与する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
請求項72に記載の方法に従って調製されたグリホサート耐性植物。
【請求項74】
前記後代の植物のグリホサート耐性表現型が、前記標的植物のグリホサート耐性表現型より大きい、請求項67または70に記載の方法。
【請求項75】
複数のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を前記標的植物に導入する工程を包含する、請求項67に記載の方法。
【請求項76】
前記標的植物が、第2のグリホサート耐性突然変異対立遺伝子を有し、前記後代の植物のグリホサート耐性表現型が、該標的植物のグリホサート耐性表現型より大きい、請求項67に記載の方法。
【請求項77】
農作物植物の付近の雑草を制御する方法であって、以下:
グリホサートを雑草および該農作物植物に適用する工程であって、該農作物植物が、該植物の野生型品種と比較した場合にグリホサートに対する耐性の増加を与える少なくとも1つの誘導された突然変異対立遺伝子を有する、工程
を包含する、方法。
【請求項78】
前記農作物植物が、組換えグリホサート耐性遺伝子を有さない、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記グリホサートを、1エーカーあたり少なくとも約8オンスの投薬量にて適用する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記グリホサートを、1エーカーあたり少なくとも約16オンスの投薬量にて適用する工程を包含する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記グリホサートを、1エーカーあたり少なくとも約24オンスの投薬量にて適用する工程を包含する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記グリホサートを、1エーカーあたり少なくとも約32オンスの投薬量にて適用する工程を包含する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記グリホサートを、1エーカーあたり少なくとも約40オンスの投薬量にて適用する工程を包含する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記グリホサートを、1エーカーあたり少なくとも約52オンスの投薬量にて適用する工程を包含する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記雑草が、一年草、二年草、多年草、広葉の雑草、自生農作物植物またはロシアアザミである、請求項77に記載の方法。
【請求項86】
前記農作物植物が、穀類、アルファルファ、豆類、ヌカボ属の草、ギョウギシバ、イチゴツナギ属の草、スズメノチャヒキ属の草、ニンジン、ヒヨコマメ、綿、ササゲ、キュウリ、ツルナシインゲン、ウシノケグサ属の草、ソラマメ、亜麻、まぐさ、ニンニク、ケナフ、アオイマメ、ハウチワマメ、アブラナ、タマネギ、エンドウマメ、落花生、コショウ、キマメ、パイナップル、ジャガイモ、ライグラス、大豆、カボチャ、テンサイ、ヒマワリまたはトマトである、請求項77に記載の方法。
【請求項87】
前記穀類が、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、キビ、カラスムギ、イネ、ライ麦またはライコムギ植物である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記コムギが、デュラムコムギ植物またはパンコムギ植物である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
種子が、デュラムコムギ植物またはパンコムギ植物から収穫される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記農作物植物から種子を収穫する工程をさらに包含する、請求項77に記載の方法。

【公表番号】特表2007−521810(P2007−521810A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551202(P2006−551202)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/001568
【国際公開番号】WO2005/072186
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506249990)オメガ ジェネティックス, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】