説明

グリルユニット及びこれを備えた加熱調理器

【課題】プルダウン機構におけるグリル扉の下降速度を抑制することができ、不快な衝突音等の発生を減少させることができるグリルユニット、及びこのグリルユニットを備えた加熱調理器を得る。
【解決手段】グリル扉20の下降動作に伴って引き伸ばされ、その変形に伴う弾性力で前記グリル扉20の下降速度を規制する弾性体90を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気やガス燃料を熱源とする加熱調理器において、それら熱源により調理を行うグリルユニット及びこのグリルユニットを備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、加熱調理器などに組み込まれているグリルユニットとして、「グリルケースにグリル受け皿がスライドレール手段によってスライドされて引き出し自在に構成されたグリルであって、前記スライドレール手段はグリルケースの両側に固定されるガイドレールと、前記ガイドレールに係合し、グリル受け皿の両側に配される被ガイドレールを備え、グリルケース左右の前記被ガイドレールに枠材を架設して皿受け枠を構成し、前記皿受け枠にグリル受け皿を取り外し自在に積載し、前記被ガイドレールはガイドレールに対してグリル受け皿の後部がグリルケースの開口位置にまで引き出し可能に構成」し、「前記皿受け枠に揺動フレームを上下に揺動自在に枢支連結し、前記揺動フレームの前端部にグリルケースの前部開口を開閉するグリル扉を取り付け」たものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−261280号公報(第3−4頁、図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のようなグリルユニットにおいては、グリル受け皿をグリルケースから引き出すと、グリル扉が揺動フレームで支持されるようになっており、この揺動フレームが所定以上下降しないように規制するためのストッパー(リンク金具)が設けられている。
しかしながら、このような従来のグリルユニットにおいて、グリル扉を揺動フレームで支持して下降させる構造(以下、「プルダウン構造」と称す)では、グリル扉を引き出した使用者が途中で手を離すと、グリル扉はその自重で勢いよく下降し、最も下降した規制位置では揺動フレームが他の構成部材(例えば、前記リンク金具など)と衝突して衝撃音が発生してしまう。この音は、グリルユニットを構成する金属部材同士が衝突する鋭い音であり、高級な調理機器と言われているIHクッキングヒータ等の複合調理器の使用者によっては、その高級感を損なって不快感を生じさせるという問題がある。
【0005】
また、グリル皿を取り出しやすくするためにグリル扉のプルダウン角度を大きくすることができるが、この場合、揺動フレームの角度も必然的に大きくなり、グリル扉の下降速度も大きくなってしまう。さらに最近はグリル皿が大形化する傾向にあるが、大形のグリル皿はその重量も重く、グリル扉の下降に伴う衝突の影響も大きくなる。このようなグリル扉の下降に伴う衝撃を軽減するために、グリル扉の下降速度を抑制することが大きな課題となっている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、プルダウン機構におけるグリル扉の下降速度を抑制することができ、不快な衝突音等のグリル扉下降に伴う衝撃の発生を減少させることができるグリルユニット、及びこのグリルユニットを備えた加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグリルユニットは、
前面側に前面開口部を有し、両側壁の内面の下部に固定ガイドレールが取付けられた箱状のグリル室と、
前記グリル室の前面開口部を開閉するグリル扉、前記固定ガイドレールに摺動自在に嵌合されて前方の一端部同士を剛性の部材で連結された摺動レール、及び前記摺動レールにその後方端部を回動自在に軸支されて前方端部で前記グリル扉を支持するプルダウンアームを有するグリル扉装置とを備え、
前記グリル扉が前記グリル室から所定位置に引き出された状態では、前記プルダウンアームの摺動レールによる軸支部を中心に前記グリル扉がその自重で下降し、
前記グリル扉の下降動作に伴って引き伸ばされ又は圧縮され、その変形に伴う弾性力で前記グリル扉の下降速度を規制する弾性体を備えた
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プルダウン機構におけるグリル扉の下降速度を抑制することができる。このため、グリル扉の下降に伴う衝撃を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係るグリルユニット10を備えた加熱調理器100の斜視図であり、グリル扉装置20を引き出した状態を示している。なお、後述のプルダウン機構30は図示していない。
図2は図1のグリルユニット10の縦断面図、図3は図2のグリル扉装置をグリル室内に収納した状態の縦断面図、図4は図2の摺動レールを引き出した状態の側面図である。
そして、図5は図4のA−A断面図である。
図6は、本実施の形態1に係るグリルユニット10を備えた加熱調理器100の斜視図であり、グリル扉装置20を引き出した状態を示している。この図6は、後述のプルダウン機構30を図示している点が、図1と異なる。
図7は、図6のグリル扉装置20を拡大して示した要部の斜視図である。
図8は、図6のプルダウン機構30の弾性体90を中心に示した要部平面図である。
図9は、図6のグリル扉装置20をグリル室11内に収納した状態の斜視図、図10は同じく図6のグリル扉装置をグリル室内から引き出した状態の斜視図である。図9、図10ともに後述のプルダウン機構30は図示していない。
図11は、摺動レール23と後部補強板80との関係を示す主要部の斜視図、図12は前部補強板60の取り付け前の斜視図である。
図13は、図6の摺動レール23とプルダウンアーム31との位置関係を示す一部分の斜視図である。
図14は、図6のグリル扉装置20をグリル室11内から引き出した状態の側面図で、グリル室11は断面で示している。
図15は、同じく図6のグリル扉装置20をグリル室11内へ押し戻す過程を示す側面図で、グリル室11は断面で示している。
【0010】
図1において、ほぼ箱状の本体ケース1の上面開口部には、例えば耐熱ガラスの如き非磁性材からなり、外周に天板支持枠2が設けられた平板状の天板3が着脱可能に装着されている。そして、天板3の上面には、金属製鍋などの調理容器Nの載置位置を示す複数の載置位置表示部4a〜4c(図には3個の場合が示してあるが、2個以上であればよい)が印刷により設けられている。また、天板支持枠2の後部側には、排気口5が設けられている。
【0011】
また、本体ケース1の前面側の両側には、加熱調理器100の動作設定などを行う主操作部6a、6bが設けられ、天板支持枠2の前面側には副操作部7が設けられている。主操作部6a、6bは、左右いずれか一方の側、又は本体ケース1の上部に設けることとしてもよい。なお、図示していないが、主操作部6a、6bの下面には外気取入口が設けられており、本体ケース1内には、天板3の載置位置表示部4a〜4cの下面に、例えば、誘導加熱コイルやヒータの如き加熱体が設けられており、また、これら加熱体を制御する制御部、外気取入口から取入れた外気により加熱体や制御部等を冷却するための送風機等が設けられている。
【0012】
主操作部6a、6bの間(主操作部が一方の側に設けられている場合はこれと並行して)には、グリルユニット10が設けられている。グリルユニット10は、本体ケース1内に設置されて前面が開口したほぼ箱状のグリル室11と、グリル皿40が着脱自在に載置されてグリル室11内に挿脱自在に収容される引出し式のグリル扉装置20を備えている。
【0013】
次に、グリル室11の構成について説明する。
図2〜図4において、グリル室11は、全体が金属製の薄板から一体にプレス成形して形成、あるいは、薄板の端部同士を溶接やネジで固定するなどして箱形状に組み立てて形成している。グリル室11は、本体ケース1の前面側に開口する前面開口部12を有し、その反対側には排気口13が設けられている。また両側壁内面の下部には、前後方向に亘って、断面ほぼコ字状の一対の固定ガイドレール14a、14b(以下、単に14と記すことがある)が、その開口部を対向させるようにして溶接等により取り付けられている。固定ガイドレール14の前端部には、ストッパー15が設けられている。なお、図示してないが、グリル室11の天井板の下面には、シーズヒータやハロゲンヒータの如き電気加熱体が配設されている。また底板の上面にもその底板と一定の間隔を保つようにグリル室11の背面から前方方向へ水平に展開したシーズヒータ等の電気加熱体が配設されている。
【0014】
次に、グリル扉装置20の構成について説明する。
グリル扉装置20は、下端部に取っ手22を有し、中央部に透明のガラス窓21A(図9参照)を設けたグリル扉21と、断面がほぼコ字状でありその開口部を外側に向けて一端がグリル扉21の両側に水平に取付けられた金属板製の摺動レール23a、23b(以下、単に23と記すことがある)を備えている。摺動レール23の前方端部と後方端部には、それぞれストッパー24a、24bが設けられており、これらは摺動レール23が前方及び後方へ過剰な移動を行うのを阻止するためのものである。
【0015】
図4、図5において、摺動レール23のウェブは、固定ガイドレール14のウェブよりも高く形成されており、摺動レール23のウェブと上下のフランジとの間にはリテーナ25が配設されている。リテーナ25は、その上下の長手方向に亘って形成された複数のポケットに回転自在なころ26を保持しており、固定ガイドレール14に沿って長手方向に移動自在となっている。
【0016】
図11において、摺動レール23a、23bの後端部の内側には、摺動レール23a、23bと溶接等の固定手段によって左右両端部が固定された後部補強板80が設けられている。後部補強板80は、補強材としての役割を果たし、ステンレス鋼板や鉄板等の薄板を加工して形成されている。この後部補強板80は幅が7cm程度の大きさであり、摺動レール23a、23bと固定されている左右両端部は下方にU字形に曲げられて屈曲部82を一体に形成している。
【0017】
この屈曲部82の上面は、摺動レール23a、23bの上面とほぼ同一水平面になるように揃えてあり、後述するグリル皿40を上面に載せたときにその水平感を損なわないようにしてある。また後部補強板80の後端縁は上方に直角に折り曲げてストッパー部81を形成してある。このストッパー部81は、グリル室11の前面開口部12からグリル皿40を挿入して摺動レール23a、23bの上に載せる際に、そのグリル皿40の後端縁が当たって後方移動の規制をし、位置決めとなりうる。
【0018】
また左右一対の屈曲部82の内部には、図11に示すように後述するプルダウンアーム31a(31b)が一定の微小間隙を挟んで位置している。このプルダウンアーム31a(31b)はその後端部31Eがピン32によって摺動レール23a、23bに軸支されており、そのピン32を中心として水平位置から斜め下の方向に自由に傾斜するよう揺動動作が可能となるように構成している。プルダウンアーム31a(31b)が傾斜した状態は、図6、図7及び図14に示している。
【0019】
次に、グリル扉装置20をグリル室11から引出す際の構成について説明する。
図1、図2及び図6は、グリル扉装置20を固定ガイドレール14に沿ってグリル室11から引き出した状態を示す。このときの摺動レール23近傍の動作について、図4を併せて参照しつつ説明する。グリル扉装置20を引き出すと、摺動レール23は固定ガイドレール14に沿って前方に移動する。そして、最前部まで引出すと、リテーナ25は、固定ガイドレール14のストッパー15と摺動レール23の後部側のストッパー24bとの間に挟まれた状態となり、また、摺動レール23の後端部は、ころ26を介して固定ガイドレール14の前端部に支持された状態となる。
【0020】
次に、グリル扉装置20をグリル室11に収納する際の構成について説明する。
図3、図9はグリル扉装置20をグリル室11内に収容した状態を示す。このときの摺動レール23近傍の動作について、図4を併せて参照しつつ説明する。グリル扉装置20を収納すると、摺動レール23は固定ガイドレール14に沿って後方に移動する。そして、摺動レール23のストッパー24aが固定ガイドレール14のストッパー15に当たって停止する。そして、グリル室11の前面開口部12は、グリル扉21によって閉塞される。
【0021】
グリル室11の奥行寸法に対してグリル皿40の前後移動範囲が短い場合は、グリル扉装置20を引き出したときにグリル皿全体がグリル室11から出ず、後部がグリル室内に残っているためグリル皿40の着脱が不便である。
そこで本実施の形態1では、グリル扉装置20を引き出した際に、グリル皿40のほぼ全体をグリル室11から露出させて着脱性を向上させるように工夫している。
具体的には、グリル扉装置20をグリル室11の前面開口部12に密着させた状態で、摺動レール23a、23bの後部がグリル室11の背面(後面)に形成した開口部16a、16bから背面外側に突出するように、摺動レール23a、23bの長さを設定している(図10、図14)。
【0022】
図9及び図15において、グリル室11の背面(後面)に形成した開口部16a、16bの外側には、この位置に対応して、磁力付勢手段50がグリル室11の背面に固定されている。磁力付勢手段50は、その外郭ケースの内部に永久磁石51が固定されている。また、摺動レール23a、23bの後端部には永久磁石52(図14、図15参照)が固定されている。したがって、摺動レール23a、23bが押し込まれる最終過程近くで永久磁石51、52が近づくと、互いに引き合い、摺動レール23a、23bをグリル室11に引き込むような力を発生させる。これにより、グリル扉装置20は永久磁石51、52の磁力でグリル室11の前面に密着状態となるように引き込まれたままとなる。なおこのような磁力付勢手段自体は既に色々な構造が知られている。またこの磁力付勢手段50は図1〜図13では図示を省略している。
【0023】
次に、グリル皿40の構成について説明する。
図2及び図5において、前記グリル皿40は、全体がステンレス鋼板や耐食性の高い皮膜、例えば上面から裏面など全表面に亘ってホーロー皮膜処理を施した鋼板等の金属板によって一体に形成されており、その中央の凹んだ皿部41の上端部外周には、載置部であるフランジ42が一体に折り曲げ形成で設けられている。そしてこのグリル皿40のフランジ42が、摺動レール23a、23b上に載置されている。グリル皿40の前後左右の側縁のうち、前方側のフランジ42Bは他の側のものと形状を異ならせてある。前方側のフランジ42Bの左右中央部には、横幅100mm程に亘り、盛り上がった逆さU字形部が形成され、その部分が後述する連結アーム70のアーム部70Aを上方から包むような状態で係合する。これにより、グリル皿40はその設置状態ではアーム部70Aによって前後方向に不必要な動きをしないように規制され、グリル皿40の位置決めをすることができる。
【0024】
このようにグリル皿40を正しい位置に設置した状態では、そのフランジ42の後端部42Aが前記後部補強板80のストッパー部81の真上に位置する。一方前方のフランジ42Bは、後述する連結アーム70のアーム部70Aの上に設置された状態となる。つまりグリル皿40はその左右のフランジ42が摺動レール23a、23b上面で、また前方のフランジ42Bはアーム部70Aの上面で、それぞれ支持された形になる。またグリル皿40の外部底面とグリル室11の底面との間には所定の空間BS(図5参照)が確保され、この空間内に設けたシーズヒータ等の下部電気発熱体により下方から加熱される構成になっている。
【0025】
次に、グリル扉装置20のプルダウン機構30の構成について説明する。
図7及び図14において、グリル扉装置20には、プルダウン機構30が設けられている。プルダウン機構30は、金属板製の一対のプルダウンアーム31a、31b(以下、単に31と記すことがある)を主要構成部品としている。プルダウンアーム31は、摺動レール23のウェブより幅狭で、長手方向の中央部近傍には長穴33が設けられており、その後端部側が摺動レール23のウェブの後側にピン32によって回動自在に軸支されている。
【0026】
このプルダウンアーム31a、31bの前方端部には、後述する前部補強板60(図12参照)を介して、グリル扉21が着脱自在に取り付けられている。そして、摺動レール23のウェブの前側には、保持アーム34a、34b(以下、単に34と記すことがある)が、ピン35により回動自在に軸支されている。保持アームの他端にはピン36が設けられており、このピン36は、プルダウンアーム31の長穴33に摺動自在に嵌入されている。
【0027】
図12において、前部補強板60は、全体がステンレスや耐食性のある鋼板等の薄板(板厚1mm程度)からプレス成形で一体に形成されており、その左右両側にはそれぞれ切り起こし辺61、62が垂直に形成されている。この切り起こし辺61、62は、プルダウンアーム31a、31bの前方端部かつ内側に位置するようにして密着状態で重ね合わされ、溶接やネジ止めにより強固に固定されている。
【0028】
また、切り起こし辺61、62は、プルダウンアーム31a、31bに固定された状態において、プルダウンアーム31の上面よりも上に突出しない高さ寸法Gで構成されている。なお、図12に一点鎖線で示したのは右側のプルダウンアーム31bであり、この図には図示していないが、同様に左側のプルダウンアーム31bの切り起こし辺62の左側面に密着状態に重ね合わされてネジや溶接等の手段で固定されている。
また、前部補強板60の奥行寸法は150mmもあり、これはグリル室の奥行寸法の約半分にも及ぶ大きさである。これにより、プルダウンアーム31a、31bはその中間部分から前方部分は大きく頑丈な前部補強板60によって一体的に結合された状態になるので、前方部分だけでなく全体の強度(剛性)が高められている。
【0029】
さらに、前部補強板60の前方端縁には、前板部63が垂直に切り起こし形成されている。前板部63は、その前面にグリル扉21を着脱自在に取り付けている。前板部63は、前記切り起こし辺61、62の前端61A、62Aと所定の間隔Sを置いて形成されている。また、前部補強板60の底面には、対称的形状で形成した二箇所の窓65が形成されている。
【0030】
前記間隔Sはプルダウン機構30が水平になっているとき、後述する連結アーム70が前板部63の後方に位置するためのものである。言い換えると、図7の状態からプルダウン機構30を持ち上げた場合、連結アーム70の前方空間に、前記グリル扉21が前板部63で支えられて上昇してくる。
【0031】
次に、プルダウン機構30及び摺動レール23に関して、剛性を確保するための構成を中心に説明する。
図13において、摺動レール23a、23bの前方端部には、金属で一体に形成された連結アーム70がネジ71によって固定されている。この連結アーム70により、摺動レール23a、23bの前端部同士が強固に一体的に連結され、外部からのねじり力等に対して十分な剛性が確保される。
【0032】
70Aは連結アーム70の下面から所定寸法Fだけ上方に位置しているアーム部であり、摺動レール23a、23bと固定された状態ではその上面から所定寸法Eだけ高くなるような寸法関係になっている。そしてこのアーム部70Aに対し、前記プルダウン機構30の一対のプルダウンアーム31a、31bがその上方から見て(下方位置で)直角に交差しているので、グリル扉装置20を閉じる場合に、プルダウンアーム31a、31bが取っ手22を介して使用者により上方に持ち上げられたとき、そのプルダウンアーム31a、31bの前端部上面がアーム部70Aの下面の所定位置に当たり、連結アーム70を持ち上げる。これにより結果的にプルダウン機構30と摺動レール23a、23bとは一体的になって使用者により水平状態になり、そのまま後方、すなわちグリル室11方向へ移動させることができる。
【0033】
図6に示すように、摺動レール23a、23bには、これと溶接等の固定手段で固定された中間補強板86が設けられている。中間補強板86は、ステンレス鋼板や鉄板等から形成されており、前述の後部補強板80と同様に、補強材としての役割を有する。このように、摺動レール23a、23bは、後部補強板80、中間補強板86、連結アーム70の3つの金属製部材により一体に結合され、ねじれ変形等を防止できる十分な剛性を保証できる構造となっている。
【0034】
次に、グリル扉装置20の下降に伴う衝撃を緩和するための構成について説明する。
図7、図8、図15において、プルダウンアーム31を貫通するようにして保持アーム34から突設されたピン36には、金属製の弦巻バネ等の弾性体90が接続されている。
図8において、弾性体90の両端部には、下方を開放したU字形の保持部90a、90bが形成されている。
ピン36は、その先端部に一段と細い小径部36aが形成されている。また、ピン36の先端面には、固定用のネジ83が取り付けられている。固定用のネジ83は、鍔部83aとネジ部83bとにより一体形成されている。ネジ部83bは、ピン36の中にねじ込まれている。
弾性体90の保持部90aは、ネジ83の鍔部83aによって、ピン36の先端部に抜け止め状態に固定される。
【0035】
図15において、グリル扉21の後側(グリル室11側)には、支持辺87が突設されており、この支持辺87にはピン84の根本部分が固定されている。ピン84は、前述のピン36と同様に、その先端部に一段と細い小径部84aが形成されている。
図8において、ピン84の先端部には、固定用ネジ85が取り付けられている。固定用ネジ85は、鍔部85aとネジ部85bとにより一体形成されている。ネジ部85bは、ピン84の中にねじ込まれている。
弾性体90の保持部90bは、固定用ネジ85の鍔部85aによって、ピン84の先端部に抜け止め状態に固定される。
このように構成した左右二対のネジ83、85は、ともに専用工具などで取り外すことができるので、弾性体90を取り外すことができる。したがって、長期間の使用により弾性体90の力が弱くなった場合には、容易に交換することができる。
【0036】
弾性体90は、2つのピン36、84の間で引っ張り状態で張架されており、ピン84はピン36側に常に引っ張られるような力が作用している。図15に模式的に示すように、初期の張架状態での弾性体90の長さをL1、グリル扉21が最も前方に引き出されたとき(プルダウンアーム31の長穴33の後縁にピン36が当接した状態)の長さをL2とする。グリル扉21が最も前方へ引き出されてからその自重で下方に下がるとき(プルダウンアーム31が下方へ揺動するとき)、弾性体90の引っ張り力は、その長さがL1からL2になるに伴い徐々に大きくなる。これにより、グリル扉21がその自重で下方に下がるときの速度は、弾性体90の弾性引っ張り力によって抑制される。したがって、グリル扉21の下降に伴う衝撃力を緩和することができる。
【0037】
また、プルダウンアーム31a、31bが取っ手22を介して使用者により上方に持ち上げられたとき、そのプルダウンアーム31a、31bの前端部上面はアーム部70Aの下面の所定位置に当たって連結アーム70が持ち上げられ、プルダウン機構30と摺動レール23a、23bとは一体的になって移動する状態になる。このとき、プルダウンアーム31a、31bの前端部上面とアーム部70Aの下面とは金属同士の衝突音が発生しうる。この衝突音を抑制するため、プルダウンアーム31a、31bの前端部上面とアーム部70Aの下面の互いに接する位置に、耐熱性ゴム等の緩衝材を取り付ける構成としてもよい。このようにすることで、衝突音を抑制してより使用者の使い勝手を向上させることができる。また、緩衝材の代わりに、板バネ上のクッション材を、プルダウンアーム31a、31bの前端部上面とアーム部70Aの下面のいずれか一方又は双方に取り付けてもよい。このようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0038】
上記のように構成したグリルユニット10を備えた加熱調理器100を使用する際の動作について説明する。
図5に示すように、摺動レール23a、23b上にフランジ42が設けられたグリル皿40を載置し、皿部41を摺動レール23a、23bの間に位置させる。そして、皿部41に被調理物を載置して、グリル皿40と共にグリル扉装置20をグリル室11内に収容した状態では、グリル扉21がグリル室11の前面開口部12を閉塞する。
【0039】
グリル皿40が上記のようにグリル室11の内部に収容された状態では、その上方の空間には電気加熱体があり、また下方空間にはグリル室11の下部空間BS(図5参照)に設けた電気加熱体があるので、これら電気加熱体に通電するとグリル室11内部は高温雰囲気になり、グリル皿40も高温度に熱せられて被調理物は加熱され、調理される。なお、図示していないが実際の調理では、グリル皿40の皿部41には金属製の焼網が着脱自在に置かれ、この焼網の上に被調理物が置かれることが多い。
【0040】
調理が終わったときは、グリル扉装置20をグリル室11から引き出し、被調理物又は被調理物が載置されたグリル皿40を取り出して、再びグリル扉装置20をグリル室11内に収容する。
【0041】
次に、グリル扉装置20をグリル室11から引き出す場合の動作について説明する。
グリル扉21を前方に引くと、摺動レール23a、23bは前方に引き出される。そして図14に示すように、グリル扉21の自重によりプルダウンアーム31はピン32を支点にして下方向に回動し、これに伴って保持アーム34もピン35を支点に下方向に回動し、ピン36が長穴33の後端部に当接して停止する。
【0042】
これにより、グリル扉21は摺動レール23に対して角度X(以下、プルダウン角度という)の位置まで下降し、その位置に保持される。このとき、前部補強板60を介して前端部でグリル扉21を支持しているプルダウンアーム31は、ピン32、35、36を介して摺動レール23に支持される。つまり前記グリル扉装置20が最大限引き出された状態では、前記グリル皿40はその略全体がグリル室11の前面開口部12より外側に露出し、かつこの状態でグリル扉装置20は固定レールから前方に引き出された摺動レール23によりその引き出し位置で安定する。その状態でグリル皿40を持ち上げて取り除いても、摺動レール23は勝手に移動することがなく、再びグリル皿40をセットするまでその位置にある。なおここでいう「安定」とは、摺動レール23がグリル室11側に勝手に引き込まれることがないことを指すもので、使用者が力を加えても移動しないという意味ではない。
【0043】
前記摺動レール23a、23bが図14に示すような位置に停止するのは、摺動レール23a、23bが前方に移動して、リテーナ25が固定ガイドレール14のストッパー15と、摺動レール23a、23bのストッパー24bとの間に挟まれて停止するからである。つまり、図14の位置に摺動レール23a、23bが安定するのは、グリル扉装置20や前部補強板60の重さも含めた摺動レール23a、23bの重さで摺動レール23a、23bが前方に引かれるが、固定ガイドレール14のストッパー15でリテーナ25の動きが規制されるからである。またこの状態で使用者がグリル皿40を持ち上げて取り出しても、摺動レール23a、23bが勝手に移動することはない。つまりその位置で安定している。
【0044】
図14に示すように、グリル扉装置20をグリル室11から最大限引き出した状態では、グリル扉21はその上端部の位置が下方に下がっており、グリル皿40を前方に取り出すにあたり、邪魔になることはほとんどない。
【0045】
またこのとき、摺動レール23がグリル室11の前面開口部から引き出された寸法をD1とすると、摺動レール23の上に置かれたグリル皿40は、その摺動レールの前端から所定の奥行寸法D2があり、このD2は上記D1に略近い大きさであるから、グリル皿40はその略全体がグリル室11の外に出た状態で摺動レール23の上に置かれていることとなる。そのため、前記グリル扉21が下方に下がっていることと相俟って、グリル皿40の取り出しや、グリル皿40の中に被調理物を入れる作業を楽に行うことができる。
【0046】
実際の製品では、グリル室11の内側寸法は幅363mm、奥行296mm、高さ107mmで、グリル皿40の後端40Aがグリル室11の前面開口より内部まで入っている寸法(図14のD2−D1に相当)は約10mmであり、この10mm程度はグリル皿40の取り出し操作の面で何ら支障はないから、グリル皿40の全体がグリル室11から露出していると言える。また少し横長の長方形をしているグリル皿40自体の寸法は、最大幅350mm、最大奥行は約290mm、皿部41の幅は320mm、奥行は約250mmで、従来のものに比較して大形で、それだけ重量もある。また前部補強板60はその奥行寸法が前記した通り150mmもあり、グリル室の奥行寸法の約半分にも及ぶ大きさであるから、グリル皿40をグリル室11に設置した状態ではそのグリル皿40の前半部分の下方は前部補強板60が下方を覆っていると言える。なお、前部補強板60は強度に影響しない程度ならば窓65を2つだけではなく、多数設けてもよく、また前部補強板60がグリル室内底部の発熱体の上方にあっても、グリル皿40が加熱されるのに何ら障害にはならない。
【0047】
なお、プルダウン角度Xを大きくするためには、例えば保持アーム34を長く形成すればよい。このようにすることでグリル扉21はその上端の位置がさらに下方に下がり、グリル皿40を前方に取り出すにあたって前方開放度が益々向上し、便利である。
【0048】
ところで、プルダウン角度Xがあることから、使用者がグリル扉21を最も前方まで引き出した状態でそのまま手を離すと、グリル扉21はその自重で下降する。この実施の形態1では、グリル扉21の自然落下のような急速な下降を防止するために前記弾性体90を設置している。すなわち、弾性体90は2つのピン36、84の間に引っ張り状態で張架されているため、グリル扉21が最も前方に引き出される状態からプルダウンアーム31の長穴33の後縁に前記ピン36が当接するまでの過程においては、グリル扉21と一体化されているピン84を常に引っ張る状態となっており、しかもグリル扉21が下降するに従ってその長さがL2まで長くなるようにピン84で引かれるから、グリル扉装置20がその自重で下方に下がるとき(プルダウンアーム31が下方へ揺動するとき)、弾性体90の引っ張り力は徐々に大きくなる。これによりグリル扉装置20がその自重で下方に下がるときの速度は加速度的に大きくなることはなく、弾性体90の引っ張り力で抑制され続け、最終的にプルダウンアーム31が最も下方位置で停止するときに、プルダウンアーム31の長穴33の後縁に前記ピン36が勢い良く衝突するような事態を避けることができる。これによりグリル扉装置20が勢い良く下降して金属部材同士の鋭い衝突音が発生するのを防ぐことができる。
しかも、弾性体90は、グリル扉21側のピン84とプルダウンアーム31側のピン36との間に引っ張り状態で張架されており、非常に簡単な構成となっている。このため、グリル扉21の下降速度を、安価で効率よく抑制することができ、メンテナンス性にも優れている。
【0049】
次に、図14、図15を参照しつつ、グリル扉装置20を矢印APで示す方向(後方)に押し、グリル室11内側へ移動させる場合の動作について説明する。図14に示すように、プルダウンアーム31がグリル室11の前面開口部12の下縁に押されて、ピン32を支点として時計周り方向に回動し(上方へ押し上げられ)、これに伴って保持アーム34もピン35を支点に時計周り方向に回転してピン36が長穴33の前部側に移動する。これにより、プルダウンアーム31と保持アーム34が摺動レール23とほぼ平行になって重なりあった状態となる。これをそのままグリル室11側に押していけば、グリル室11内に収容されてその前面開口部12をグリル扉21が閉塞する。
【0050】
図13に示したように、前記連結アーム70は、その下面から所定寸法Fだけ上方にアーム部70Aが位置しているので、その段差によりアーム部70Aの最上面と摺動レール23a、23bの上面の位置が同一水平面にないが、グリル皿40前後左右の側縁のうち、前方側のフランジ42Bにはその左右中央部に、連結アーム70のアーム部70Aを上方から包むよう、寸法Fに対応して上方へ盛り上がり、そこから下に曲げて下方に開いた逆さU字形部が形成され、この逆さU字形部によって設置状態ではアーム部70Aによって前後方向に大きく移動しないように形成されているので、グリル皿40全体が上記寸法Fによって傾いた状態に設置されることはなく、略水平に設置される。
【0051】
以上のように本実施の形態1によれば、プルダウンアーム31に引っ張りバネで構成された弾性体90を設けたので、グリル扉21がその自重で下降する際の速度を抑制することができる。このため、グリル扉21の下降に伴う衝撃力を緩和することができる。したがって、グリル扉21が他の構成部材と衝突する際の衝突音や、衝突に伴う故障等を回避することができる。
【0052】
なお、本実施の形態1では、引っ張りバネ形式の弾性体90を、一端側をグリル扉21に接続して他端側をピン36に接続して張架する場合の例について説明したが、弾性体90の他端側の接続先はピン36に限るものではない。例えば、中間補強板86に他端側を接続し、グリル扉21と中間補強板86との間で弾性体90を張架する構成としてもよい。このようにしても、弾性体90は常に中間補強板86に引っ張られているため、グリル扉21の下降速度を抑制して下降に伴う衝撃を緩和することができる。すなわち、弾性体90の他端側は、グリル扉21が下降してもその位置がしない部品に接続すればよく、摺動レール23、あるいは摺動レール23に直接若しくは間接的に接続された部品(具体例としては、中間補強板86や後部補強板80など)に接続してもよい。
【0053】
実施の形態2.
図16は、本発明に係る実施の形態2のグリルユニット10を示すもので、図16はグリル扉装置をグリル室内から引き出した状態の側面図を示している。なお、実施の形態1と同じ部分には同じ符号を付している。
【0054】
図14で説明したプルダウン機構30を有するグリル扉装置20においては、グリル室11に収容する際に、プルダウン角度Xが大きい場合、そのまま押し込むとプルダウンアーム31がグリル室11の前面開口部12の下縁部の抵抗(接触時の摩擦力)により押し込みにくいことがあり、このような場合は、グリル扉21を持ち上げて(プルダウン角度Xを小さくして)押し込むことが必要である。
【0055】
本実施の形態2ではこのような問題を解決するために、プルダウン機構30のプルダウンアーム31下面にアーチ状(緩やかな円弧状)の凹部37を設けたものである。凹部37は、グリル扉21が下降した状態からグリル扉装置20をグリル室11に収容する際に、プルダウンアーム31がグリル室11の前面開口部12の下縁部と接触する部分に設けられている。
【0056】
本実施の形態2によれば、プルダウンアーム31の下面にアーチ状の凹部37を設けたので、プルダウン角度Xに関係なく、グリル扉装置20を押し込む際に、プルダウン角度Xが小さい場合と同様にグリル扉21を持ち上げる力が働く。このため、グリル扉21を持ち上げずとも、後方へ向かって押すことにより、プルダウンアーム31のプルダウン角度Xは、徐々に小さくなり、ゼロ即ち水平に近づいていく。したがって、グリル扉21を持ち上げることなく、容易にグリル扉装置20をグリル室11内に収容することができる。
【0057】
なお、アーチ状の凹部37を形成する位置は、プルダウンアーム31の回転中心となるピン32に近い部分から、グリル扉21の方向へ所定の長さに亘って形成する必要がある。このようにすることで、プルダウンアーム31の円滑な動きを実現することができるとともに、グリル扉21を引き出した際にはグリル皿40の略全体をグリル室11から露出させることができる。
【0058】
本例のアーチ状の凹部は、摺動レールが固定ガイドレール内に嵌入されて摺動するグリルユニットに対しても適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0059】
以上のように本実施の形態2によれば、グリル扉21の下降速度を抑制することのできる弾性体90を設けたので、グリル扉21を引き出したときの下降に伴う衝撃を緩和することができる。
また、プルダウン機構30のプルダウンアーム31の下面にアーチ状の凹部37を設けたので、グリル扉21を持ち上げることなくグリル扉装置20を小さい力にて容易にグリル室11に収容することができる。このように、グリル扉21の引き出し時においても収納時においても使い勝手のよいグリルユニット10を得ることができる。
【0060】
実施の形態3.
図17と図18は、本発明の実施の形態3に係るグリルユニット10を示すもので、図17はグリル扉装置20をグリル室11内へ押し戻す過程を示す側面図、図18は同じくグリル扉装置20をグリル室11内から引き出した状態の側面図で、グリル室は断面で示している。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付している。また図17、図18とも弾性体90は図示していないが、弾性体90はその後部をピン36に支持させ、この部分からグリル扉装置20への引っ張り弾性力が作用するように構成している。
【0061】
本実施の形態3に係るグリルユニット10は、前述の実施の形態1に係るプルダウン機構30を有するグリルユニット10において、グリル室11の前面開口部12近傍のプルダウンアーム31が通過する軌跡上に、滑動体38を設けたものである。
【0062】
滑動体38は表面が滑る材質の金属や耐熱性樹脂で構成され、その上面が球面又は円弧面となるよう形成されている。グリル扉装置20を引き出しあるいは押し込むと、プルダウンアーム31は滑動体38の上面を摺動する。滑動体38はその材質及び形状により滑りやすくなっているので、プルダウンアーム31をなめらかに摺動させることができる。このため、グリル扉21を持ち上げることなく、容易にグリル扉装置20を引き出しあるいは収容することができる。
【0063】
なお、滑動体38として円筒状又は球状のローラを用い、これをプルダウンアーム31の摺動軌跡上に配置することとしてもよい。この場合、ローラ自体は、必ずしも摩擦係数の小さい(滑りやすい)材質のものである必要はない。このようにしても、プルダウンアーム31はローラ上の滑動体38上を摺動するため、グリル扉21を持ち上げることなく、小さな力で円滑にグリル扉装置20をグリル室11から引き出し、又は収容することができる。
【0064】
なお、本実施の形態3は、摺動レールが固定ガイドレール内に嵌入されたグリルユニットにも適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0065】
実施の形態4.
図19は、本発明の実施の形態4に係るグリルユニット10で、プルダウン機構30の主要部を示した一部断面平面図、図20はグリル扉装置20をグリル室11内から引き出した状態の斜視図である。なお、実施の形態1と同じ部分には同じ符号を付している。
【0066】
図19において、グリル扉21の裏面(内側面)には、金属製の連結棒91が接着等により連結されている。連結棒91のグリル扉21と反対側の端部には、一定の範囲に亘ってネジ部91Aが形成されている。そして、連結棒91を貫通させるようにして、支持金具92が設けられている。支持金具92は、グリル扉21と略平行な面92Aと、この面に略直角に連なる面92B、92Cとにより形成されている。面92Cは、プルダウンアーム31に略接触しており、長穴33を遊貫するピン36によって保持アーム34に固定されている。
また、支持金具92の面92Aには、圧縮状態にした金属製の弾性体95、座金94が順に接続されている。弾性体95としては、例えば圧縮バネ等を用いることができる。また、座金94の抜け止めを防止するためのものとして、連結棒91のネジ部91Aにはナット93が螺合されている。
【0067】
図20において、グリル扉装置20をグリル室11内から引き出した際の動作を説明する。使用者がグリル扉21を最も前方まで引き出し、そのまま手を離すと、グリル扉21はその自重で下降する。このとき、グリル扉21に支持金具92を介して接続された弾性体95は、その長さが短くなるように圧縮され、ピン36が長穴33の後端縁33Aに接近するにつれて弾性体95の弾性反発力は徐々に大きくなる。このため、グリル扉21の下降速度を抑制することができる。
【0068】
また、弾性体95の圧縮度合い、即ち、座金94と支持金具92との距離は、ナット93の位置を調整することにより調節することができる。例えば、座金94と支持金具92との距離を短くすると、弾性体95をより圧縮した状態にすることができる。この場合、弾性体95の弾性反発力はさらに大きくなり、グリル扉21の下降速度をより抑制することができる。このように、弾性体90の圧縮度合いを容易に変更することができ、グリル扉21の下降速度の調整を適切に行うことができる。
【0069】
以上のように本実施の形態4によれば、圧縮バネで構成された弾性体95を設けたので、グリル扉21がその自重で下降する際の速度を抑制することができる。このため、グリル扉21の下降に伴う衝撃力を緩和することができる。したがって、グリル扉21が他の構成部材と衝突する際の衝突音や、衝突に伴う故障等を回避することができる。
【0070】
なお、本発明における第一の支持部材及び第二の支持部材は、本実施の形態4の座金94及び支持金具92にそれぞれ相当する。本実施の形態4では、弾性体95の一端側を座金94に、他端側を支持金具92に接続する構成例を示したが、弾性体95の接続形態はこれに限るものではない。弾性体95の一端側をグリル扉21と一定の距離を保つようにして設けられた部材(実施の形態4の座金94に相当)に固定し、他端側をグリル扉21の下降動作に連動して動く部材(実施の形態4の支持金具92に相当)に固定する構成とすればよく、また、弾性体95を接続するための部品についても適宜選択することができる。
【0071】
また、上記の各実施の形態においては、電気熱源式の加熱調理器に本発明に係るグリルユニット10を設けた場合の例について説明したが、適用する加熱調理器はこれに限定するものではなく、他の構造の加熱調理器であってもよい。たとえばグリル室11内部がガスバーナで加熱され、天板3の下方には誘導加熱式熱源となるコイルと電気輻射式熱源となる電気加熱体が設けられた3種類の熱源を有する複合型加熱調理器であってもよい。このような加熱調理器に本発明に係るグリルユニット10を適用しても、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1に係るグリルユニットを備えた加熱調理器の斜視図である。
【図2】図1のグリルユニットの側断面図である。
【図3】図2のグリル扉装置をグリル室内に収納した状態の断面図である。
【図4】図2の摺動レールを引き出した状態の側面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るグリルユニットを備えた加熱調理器の斜視図であり、グリル扉装置を引き出した状態の図である。
【図7】図6のグリル扉装置を拡大して示した要部の斜視図である。
【図8】図6のプルダウン機構の弾性体を中心に示した要部平面図である。
【図9】図6のグリル扉装置の斜視図である。
【図10】図6のグリル扉装置からグリル扉を引き出した状態の斜視図である。
【図11】プルダウンアームと後部補強板との関係を示す主要部の斜視図である。
【図12】プルダウンアームへの取り付け前における補強板の斜視図である。
【図13】摺動レールとプルダウンアームとの位置関係を示す要部斜視図である。
【図14】グリル扉装置をグリル室内から引き出した状態の側面図である。
【図15】グリル扉装置をグリル室内へ押し戻す過程を示す側面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係るグリルユニットのグリル扉装置をグリル室内から引き出した状態の側断面図である。
【図17】本発明の実施の形態3に係るグリルユニットのグリル扉装置をグリル室へ押し戻す過程を示す側断面図である。
【図18】図17のグリル扉装置をグリル室内から引き出した状態の側断面図である。
【図19】本発明の実施の形態4に係るグリルユニットのプルダウン機構の主要部を示した一部断面平面図である。
【図20】本発明の実施の形態4に係るグリルユニットのプルダウン機構の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
1 本体ケース、10 グリルユニット、11 グリル室、12 開口部、14 固定ガイドレール、16 開口部、20 グリル扉装置、21 グリル扉、23 摺動レール、25 リテーナ、26 ころ、30 プルダウン機構、31 プルダウンアーム、32 ピン、33 長穴、34 保持アーム、36 ピン、37 凹部、38 滑動体、40 グリル皿、42 フランジ、60 前部補強板、70 連結アーム、70A アーム部、80 後部補強板(補強材)、86 中間補強板、90 弾性体、91 連結棒、92 支持金具、93 ナット、94 座金、95 弾性体、100 加熱調理器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側に前面開口部を有し、両側壁の内面の下部に固定ガイドレールが取付けられた箱状のグリル室と、
前記グリル室の前面開口部を開閉するグリル扉、前記固定ガイドレールに摺動自在に嵌合されて前方の一端部同士を剛性の部材で連結された摺動レール、及び前記摺動レールにその後方端部を回動自在に軸支されて前方端部で前記グリル扉を支持するプルダウンアームを有するグリル扉装置とを備え、
前記グリル扉が前記グリル室から所定位置に引き出された状態では、前記プルダウンアームの摺動レールによる軸支部を中心に前記グリル扉がその自重で下降し、
前記グリル扉の下降動作に伴って引き伸ばされ又は圧縮され、その変形に伴う弾性力で前記グリル扉の下降速度を規制する弾性体を備えた
ことを特徴とするグリルユニット。
【請求項2】
前記弾性体は、
前記グリル扉の所定位置と前記グリル扉の下降動作によってもその位置が変化しない部品との間に張架された、引っ張りバネにより構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のグリルユニット。
【請求項3】
前記弾性体は、
前記グリル扉の所定位置と前記摺動レールあるいは摺動レールに直接的若しくは間接的に組み付けられた部品との間に張架された、引っ張りバネにより構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のグリルユニット。
【請求項4】
前記弾性体は、
前記グリル扉と一定の距離を保つように固定された第一の支持部材と前記グリル扉の下降動作と連動して動く第二の支持部材との間に設けられた、圧縮バネにより構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のグリルユニット。
【請求項5】
前記摺動レール上にグリル皿が取り外し自在に載置される構成とし、
前記グリル扉を前記グリル室の前面開口部側へ移動させる場合に、前記プルダウンアームが前記摺動レールをその下方から支え、
前記グリル扉が最も前方に引き出された状態では、前記グリル皿はその全体が前記グリル室の前面開口部よりも外側に露出し、
かつ、この状態で前記グリル扉は、前記固定ガイドレールから前方に引き出された前記摺動レールによりその引き出し位置で安定状態となる
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項6】
前記剛性の部材は金属製の連結アームであり、
前記連結アームにより前記グリル皿の前方端縁を支え、かつ位置決めした
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項7】
前記摺動レールの後方の一端部同士を連結する補強材を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項8】
前記補強材は、前記グリル皿を設置した状態ではその下方に位置し、
前記補強材の後部には前記グリル皿の挿入位置を規制するストッパーを設けた
ことを特徴とする請求項7記載のグリルユニット。
【請求項9】
一端を前記摺動レールに回動自在に軸支された保持アームを有し、
前記プルダウンアームに長穴を形成して、前記保持アームの他端に設けたピンを前記プルダウンアームの長穴に摺動自在に嵌入した
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項10】
前記プルダウンアームの下面に、ほぼアーチ状の凹部を設けた
ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項11】
前記グリル室の前面開口部近傍の前記プルダウンアームの通過軌跡上に滑動体を設けた
ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項12】
前記グリル皿に、該グリル皿の位置決め手段を設けた
ことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項13】
前記グリル室の後壁に後部開口部を設け、
前記固定ガイドレール及び前記摺動レールを前記後部開口部から突出可能な長さに形成し、
前記ガイドレールの突出部分に磁力付勢手段を設けて、前記摺動レールが所定位置まで移動したときに該摺動レールに対してグリル室側への引き込み力を与える
ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項14】
前記摺動レールの内部に設けられた前記固定ガイドレールに沿って摺動可能な摺動部材と、
前記固定ガイドレールの両端部に設けられた第二のストッパー部材とを備え、
前記グリル扉が摺動レールとともに最も引き出された状態では、前記グリル皿はその全体がグリル室の前面開口部より外側に水平に露出し、
かつ、前記摺動部材が前記第二のストッパー部材に当接することにより前記グリル扉はグリル皿の有無に拘わらずその引き出し位置で安定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載のグリルユニット。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれかに記載のグリルユニットを備えたことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−48496(P2010−48496A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214529(P2008−214529)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】