説明

グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を含む結晶の取得方法

【課題】
グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメイン(ドメイン)と非ステロイド骨格を有するリガンド(リガンド)との複合体(複合体)からなる結晶の取得方法を提供可能とすること。
【解決手段】
精製ドメインとドメインとの融合蛋白発現微生物をリガンド非存在下で培養し、回収された微生物の菌体破砕物から融合蛋白を精製ドメインと精製用担体との結合性に基づき回収し、融合蛋白の精製ドメインに存在するプロテアーゼ切断性リンカー(リンカー)をプロテアーゼにより切断することにより複合体を分離・回収し、かつ、前記の破砕・回収・分離工程においてリンカーをプロテアーゼにより切断する前までの工程において微生物又は細胞或いは融合蛋白とリガンドとを接触させる「複合体の取得方法」で得られた複合体に結晶化処理を施すことにより得られる結晶を回収する「複合体を含む結晶の取得方法」。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を含む結晶の取得方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
核内受容体は、細胞質又は核内に局在し、リガンドの結合に応じて活性化するリガンド依存性転写因子のファミリ−として規定される(例えば、非特許文献1参照)。このファミリ−の一群であるステロイド受容体には、グルココルチコイド受容体(GR)、鉱質コルチコイド受容体(MR)、アンドロゲン受容体(AR)、プロゲステロン受容体(PR)及びエストロゲン(ER)受容体等が含まれている。ステロイド受容体に対するリガンドには、エストラジオ−ル、プロゲステロン及びコルチゾ−ル等が知られている。これらのリガンドは細胞の周囲の流体中に存在するときに受動拡散によって外側の細胞膜を通り抜け、特定の核内受容体に結合して受容体/リガンド複合体を形成する。ついで、この複合体は細胞の核に移動し、そこで細胞DNAの特定の遺伝子に結合する。DNAに結合すると当該複合体は前記遺伝子によってコ−ドされるタンパク質の産生を調節する。この観点から、核内受容体に結合し天然のリガンドの作用を模倣する化合物は「アゴニスト」と呼ばれ、一方、天然のリガンドの作用を抑制する化合物は「アンタゴニスト」と呼ばれる。
グルココルチコイド受容体は、リガンドによる刺激のないときは、熱ショックタンパク質(Hsp90、Hsp70、Hsp56)との複合体を形成しており細胞質に存在する。グルココルチコイド受容体は、リガンドの結合によって熱ショックタンパク質から解離し、核内へ移行した後、DNA及び/又はタンパク質と特異的に相互作用し、そして遺伝子発現を制御する。
グルココルチコイド受容体にアゴニストが結合すると、Iκ−Bが発現する。そして発現したIκ−BとNFκ−Bとが相互作用することにより、抗炎症作用を示すと考えられている。グルココルチコイド受容体は、AP−1、NFκ−B等の転写因子と相互作用することにより、抗炎症作用を示すと考えられている。
グルココルチコイド受容体のアゴニストとしては、例えば、コルチゾル、コルチコステロン等を挙げることができる。すでに多くの合成グルココルチコイド受容体アゴニストが存在し、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニシロン(prednisilone)等が代表的なものである。グルココルチコイド受容体に作用するステロイドは、有効な抗炎症剤であることが示されたにも関わらず、類似したリガンド結合ドメインを有する鉱質コルチコイド受容体(MR)、アンドロゲン受容体(AR)、プロゲステロン受容体(PR)、及びエストロゲン受容体(ER)等のステロイド受容体との交叉反応の結果、選択性、長期投与における副作用が知られているために、その使用には多くの制限等が存在している。
【0003】
グルココルチコイド受容体の作動薬剤の研究にあたっては、1種又はそれ以上のステロイド受容体に対して特異性を有するが、他のステロイド受容体又は細胞内レセプタ−に対する交差反応性が減少しているか又は存在しない非ステロイド化合物の同定、検索、評価又は設計が、当分野において非常に価値がある。
【0004】
ところで、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとステロイド骨格を有するリガンドとの複合体を含む結晶の作製する方法としては、例えば、大腸菌BL21(DE3)株をステロイド骨格リガンドであるデキサメタゾンが添加された培地を用いて培養することにより、6Xポリヒスチジンタグ及びGSTタグとの融合タンパク質としてグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインを発現させ、これを精製及び結晶化する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び非特許文献2参考)。また例えば、昆虫細胞SF9をステロイド骨格リガンドであるデキサメタゾンが添加された培地を用いて培養することにより、ポリヒスチジンタグとの融合タンパク質としてグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインを発現させ、これを精製及び結晶化する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【非特許文献1】Evans RM, Science, 240, 889 (1988)
【非特許文献2】Bledsoe RK等, Cell, 110, 93 (2002):プロテイン・デ−タ・バンクの登録番号:1M2Z
【非特許文献3】Kauppi B等, J Biol Chem, 278, 22748 (2003):プロテイン・デ−タ・バンクの登録番号:1P93、1NHZ
【特許文献1】国際公開第2003/015692号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開 第1375517号
【特許文献3】国際公開第2003/090666号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとステロイド骨格を有するリガンドとの複合体を含む結晶の作製する方法では、これらのグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインを発現する大腸菌又は昆虫細胞を培養するための培地にステロイド骨格を有するデキサメタゾン等のリガンドを添加する必要があるため、大量のデキサメタゾン等のリガンドを準備することが不可欠であった。このため、目的とする非ステロイド骨格を有するリガンド等のリガンドが少量しか準備できない場合には、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインと当該リガンドとの複合体を含む結晶を得ることができなかった。
従って、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインと非ステロイド骨格を有するリガンドとの化学的相互作用性に係る情報を提供するための結晶を再現性良く作製可能することは、グルココルチコイド受容体の変異体、作動薬剤又は拮抗薬剤等を同定、検索、評価又は設計するために非常に有益なことであり、切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる状況の下、本発明者らは鋭意検討した結果、非ステロイド骨格リガンドとして6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-oneを用いて、かつ、特定な結晶作製方法により、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインと非ステロイド骨格を有するリガンドとの複合体を含む結晶が再現性良く、容易に得ることが可能になることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体の取得方法であり、
(1)(a)精製ドメインと(b)グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとの融合タンパク質を発現する遺伝子組み換え微生物又は細胞を、リガンド非存在下で培養する工程、
(2)前記工程により得られる前記微生物又は細胞を回収し、回収された前記微生物又は細胞を破砕する工程、
(3)前記工程により得られる菌体破砕物から前記融合タンパク質を、前記精製ドメインと精製用担体との結合性に基づき回収する工程、
(4)前記工程により得られる前記融合タンパク質から、当該タンパク質の精製ドメインに存在するプロテアーゼ切断性リンカーをプロテアーゼにより切断することにより、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を分離する工程、及び
(5)前記工程により得られる前記複合体を回収する工程
を有し、かつ、
(6)前記破砕工程、前記融合タンパク質の回収工程、又は、前記分離工程において前記融合タンパク質の精製ドメインに存在するプロテアーゼ切断性リンカーをプロテアーゼにより切断する前までの工程において、前記微生物又は細胞或いは前記融合タンパク質とリガンドとを接触させる工程
を含むことを特徴とする取得方法(以下、本発明複合体取得方法と記すこともある。);
2.前記精製ドメインが、金属キレートペプチドが付加されてなるチオレドキシンとプロテアーゼ切断性リンカーとからなるポリペプチドであることを特徴とする前項1記載の取得方法
3.前記グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインが、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインであることを特徴とする前項1又は2記載の取得方法;
4.グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を含む結晶の取得方法であって、
前項1又は2記載の取得方法により得られた複合体に結晶化処理を施すことにより得られる結晶を回収する工程を有することを特徴とする結晶の取得方法;
5.前記グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインが、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインであることを特徴とする前項4記載の結晶の取得方法(以下、本結晶取得方法と記すこともある。);
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインと非ステロイド骨格を有するリガンドとの複合体を含む結晶が再現性良く、容易に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書において、アミノ酸、ペプチド、タンパク質は下記に示すIUPAC−IUB生化学命名委員会(CBN)で採用された略号を用いて表される。また、特に明示しない限りペプチド及びタンパク質のアミノ酸配列は、左端から右端にかけてN末端からC末端となるように、またN末端が1番になるように表される。
【0010】
A又はAla:アラニン残基、 D又はAsp:アスパラギン酸残基、
E又はGlu:グルタミン酸残基、 F又はPhe:フェニルアラニン残基、
G又はGly:グリシン残基、 H又はHis:ヒスチジン残基、
I又はIle:イソロイシン残基、 K又はLys:リジン残基、
L又はLeu:ロイシン残基、 M又はMet:メチオニン残基、
N又はAsn:アスパラギン残基、 P又はPro:プロリン残基、
Q又はGln:グルタミン残基、 R又はArg:アルギニン残基、
S又はSer:セリン残基、 T又はThr:スレオニン残基、
V又はVal:バリン残基、 W又はTrp:トリプトファン残基、
Y又はTyr:チロシン残基、 C又はCys:システイン残基。
また、アミノ酸に関し光学異性体がありうる場合には、特に明示しなければL−体を示すものとする。
【0011】
本発明におけるグルココルチコイド受容体は、例えば、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するグルココルチコイド受容体であって、哺乳動物、好ましくはマウス、ヒト、特に好ましくはヒト由来のものである。
【0012】
<アミノ酸配列>
(a)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列であり、かつグルココルチコイド受容体としての機能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であり、かつグルココルチコイド受容体としての機能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつグルココルチコイド受容体としての機能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、かつグルココルチコイド受容体としての機能を有する蛋白質のアミノ酸配列
【0013】
ここで、前記(b)にある「アミノ酸が欠失、付加もしくは置換」や前記(c)にある「80%以上の配列同一性」及び(d)にある「80%以上の配列同一性」には、例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質が細胞内で受けるプロセシング、該蛋白質が由来する生物の種差、個体差、器官、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異(例えば、部位特異的変異導入法や突然変異処理等によって、天然の蛋白質をコードするDNAに変異を導入し発現させることにより作出された蛋白質が有するアミノ酸配列中に存在するアミノ酸の変異)等が含まれる。
【0014】
前記(b)にある「アミノ酸が欠失、付加もしくは置換」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1、2又は3で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
【0015】
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個(ここで「数個」とは、2〜約10個程度である。)、又はそれ以上である。かかる改変の数は、脂肪蓄積を促進する能力を見出すことのできる範囲であれば良い。
【0016】
また前記欠失、付加又は置換のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、(1)グリシン、アラニン;(2)バリン、イソロイシン、ロイシン;(3)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、(4)セリン、スレオニン;(5)リジン、アルギニン;(6)フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0017】
本発明において「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673-4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX-MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
【0018】
本発明における配列同一性は、例えば、アミノ酸配列基準の場合には80%以上であることが好ましく、また塩基配列基準の場合には80%以上であることが好ましい。もちろん上記条件を満たす限りにおいて、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、第1番目から第160番目までのアミノ酸配列における配列同一性が50%以上であり、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち第161番目から第418番目、配列番号2又は3で示されるアミノ酸配列のうち、第1番目から258番目における配列同一性が90%以上であるような配列同一性であってもよい。
【0019】
前記(e)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)を含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSCで50℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0020】
具体的には例えば、本発明におけるヒト由来のグルココルチコイド受容体は、例えば、アクセス番号P04150(SwissProt)(Hollenberg,S.M et al., Nature、318:635−41(1985))等に記載されており、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するものである。
本発明における「リガンド結合ドメイン」とは、例えば、リガンド結合を招くステロイド受容体のC末端のリガンド結合部位を意味する。
本発明における、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインは、例えばヒト由来のグルココルチコイド受容体、(SwissProt)(Hollenberg,S.M et al., Nature、318:635−41(1985))等に記載されているアミノ酸配列において、C末端側のリガンド結合部位を意味する。
本発明における、ヒトグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインは、N末端側がアミノ酸配列において、例えば、第500番目から第533番目からが挙げられる。好ましくは、第510番目から第531番目までである。より好ましくは第522番目からである。
本発明における、ヒトグルココルチコイド受容体のリガンド結合ドメインは、C末端側がアミノ酸配列において、例えば、第777番目までである。
本発明における、ヒトグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインは、より具体的に例えば、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインは、第522番目から第777番目を意味している。
他の哺乳動物由来のグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインの場合には、前記ヒト由来のグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインに対応する領域を意味している。
但し、本発明におけるグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインの開始部位及び終了部位は、必ずしも厳密なものではなく、その機能が保持されることを条件として、N末端及び/又はC末端に数残基いずれかの方向にずれたもの、或いは、N末端及び/又はC末端にアミノ酸が付加したものも包含される。
尚、このような一次構造上の僅かな差異は当該グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインの全体的な立体構造に対して大きな影響を与えず、通常、その機能は保たれると考えられる。
グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインは、リガンド結合ポケットを含む。本発明の結晶に関して、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメイン中の残基は、結晶構造中のリガンドへのそれらの空間的な近接性により定義される。用語「リガンド結合ドメイン」はリガンド結合ドメインの相同体又はその一部をも含む。
本発明におけるリガンド結合ポケットは、Met560、Leu563、Asn564、Leu566、Gly567、Gln570、Trp600、Met601、Met604、Ala605、Ala607,Leu608、Arg611、Phe623、Met639、Gln642、Met646、Leu732、Typ735、Cys736、Thr739、Phe749、Leu753を含むアミノ酸残基より構成される又はその相同体である。
本発明における、リガンド結合ポケットは、リガンドを結合する、及びリガンド結合ドメインに位置する構造中の空間に関する。
本発明におけるグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインに用いている変異体は、例えば、野生型(配列番号3参照)、F602Sの1重変異体、C638Dの1重変異体、又は、F602S及びC638Dの2重変異体(配列番号2参照)等を挙げることができる。好ましくは、F602S及びC638Dの2重変異体等が挙げられる。
【0021】
本発明におけるリガンドは、グルココルチコイド受容体との結合作用性を有するようなものであれば特に限定されるものではない。例えば、米国特許第3,683,091号、特公昭45−014056、特公平6−263688、国際公開第95/10266号パンフレット、特公昭45−36500、欧州特許出願公開第0 188 396号、C.F. Bigge等, J. Med. Chem., 36、 1977−1995 (1993)、 P.R.Kanjilal等, J. Org. Chem., 50、 857−863 (1985)、G. Sinha, J. Chem. Soc., Perkin Trans. I, (10), 2519−2528 (1983)、U. r. Ghatak、M. Sarkar及びS. K. Patra, Tetrahedron Letters No.32、 pp.2929−2931 (1978)、p. N. Chakrabortty等, Indian J. Chem., 12 (9), 948−55 (1974)、 E. Fujita等, J. Chem. Soc., Perkin Trans. I, (1)、 165−77 (1974)、H. Sdassi等, Synthetic Communications, 25 (17), 2569−2573 (1995)、 T. Ibuka等, Yakugaku Zasshi 87 (8), 1014−17 (1967)、日本特許第09052899号、米国特許第5,696,127号、米国特許第5,767,113号、欧州特許出願公開第0 683 172号、D. Bonnet−Delpon等, Tetrahedron, 52 (1), 59−70 (1996)、国際公開第98/26783号パンフレット、国際公開第98/27986号パンフレット、国際公開第98/31702号パンフレット、欧州特許出願公開第0 903 146号、J. A. Findlay等, Tetrahedron Letters, No.19、 pp.869−872 (1962)、ドイツ特許出願公開第19856475号、国際公開第99/41256号パンフレット、国際公開第99/41257号号パンフレット、国際公開第00/06137号号パンフレット、国際公開第99/33786号号パンフレット、国際公開第99/41257号パンフレット、国際公開第99/63976号パンフレット、国際公開第00/006137号パンフレット、国際公開第00/032584号パンフレット、国際公開第00/07972号パンフレット、国際出願第PCT/IB00/00366号又は国際公開第02/24702号パンフレット等に記載された化合物を挙げることができる。
より具体的には例えば、リガンドとしてステロイド骨格を有するリガンドである
(A)デキサメタゾン

(B)RU38486


(C)フルチカゾンプロピオネイト



等を挙げることができ、またリガンドとして非ステロイド骨格を有するリガンドである6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-one


等が挙げられる。尚、当該化合物は、国際公開第02/10143号に記載される方法により製造することができる。
【0022】
グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体は、下記の取得方法(即ち、本発明複合体取得方法)によって取得することができる。
本発明複合体取得方法は、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体の取得方法であり、
(1)(a)精製ドメインと(b)グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとの融合タンパク質を発現する遺伝子組み換え微生物又は細胞を、リガンド非存在下で培養する工程(第一工程)、
(2)前記工程により得られる前記微生物又は細胞を回収し、回収された前記微生物又は細胞を破砕する工程(第二工程)、
(3)前記工程により得られる菌体破砕物から前記融合タンパク質を、前記精製ドメインと精製用担体との結合性に基づき回収する工程(第三工程)、
(4)前記工程により得られる前記融合タンパク質から、当該タンパク質の精製ドメインに存在するプロテアーゼ切断性リンカーをプロテアーゼにより切断することにより、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を分離する工程(第四工程)、及び
(5)前記工程により得られる前記複合体を回収する工程(第五工程)
を有し、かつ、
(6)前記破砕工程、前記融合タンパク質の回収工程、又は、前記分離工程において前記融合タンパク質の精製ドメインに存在するプロテアーゼ切断性リンカーをプロテアーゼにより切断する前までの工程において、前記微生物又は細胞或いは前記融合タンパク質とリガンドとを接触させる工程(リガンド接触工程)
を含む。
【0023】
本発明複合体取得方法の第一工程において、前記精製ドメインが、金属キレ−トペプチドが付加されてなるチオレドキシンとプロテア−ゼ切断性リンカ−とからなるポリペプチドであることが好ましい。また、前記グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインが、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインであることが好ましい。
【0024】
精製ドメインは、(a1)本発明複合体取得方法の第三工程において融合タンパク質を精製するために、当該精製ドメインと精製用担体との結合性に基づき回収することが可能となるような部位と、(a2)本発明複合体取得方法の第四工程において融合タンパク質をプロテア−ゼにより切断することにより、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を分離することが可能となるような部位(即ち、当該タンパク質の精製ドメインに存在するプロテア−ゼ切断性リンカ−)と、必要に応じて、(a3)当該複合体を安定化させるためのポリペプチドとからなる。尚、前記の(a3)部位は前記の(a1)部位そのものである場合もある。
前記の(a1)部位としては、例えば、固定された金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュ−ルのような金属キレ−トペプチド若しくはヒスチジン−トリプトファンモジュ−ルのような金属キレ−トペプチド等が付加されてなるチオレドキシン、赤血球凝集素(HA)タグ(インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピト−プに対応する;Wilson,I.ら(1984)Cell 37:767)、マルト−ス結合性ポリペプチド、FLAGS発現/アフィニティ−精製系で使用されるFLAGエピト−プ(Immunex Corp, Seattle, WA)及びE−エピト−プタグ(E−タグ)等を挙げることができる。好ましくは、ヒスチジン−トリプトファンモジュ−ルのような金属キレ−トペプチドが付加されてなるチオレドキシン、マルト−ス結合性ポリペプチドが挙げられ、より好ましくは、ヒスチジン−トリプトファンモジュ−ルのような金属キレ−トペプチドが付加されてなるチオレドキシンが挙げられる。ここで「ヒスチジン」における残基は、例えば、Porathら, Protein Expression and Purification, 3:263-281 (1992)等に記載されるような、固定化された金属イオンアフィニティ−クロマトグラフィ−(IMIAC)に対する精製を容易にするものである。
前記の(a2)部位としては、例えば、FactorXa Protease(血液凝固因子Xa)切断部位、PreScission Protease切断部位、スロンビン切断部位のような機能を有するもの等を挙げることができる。
前記の(a3)部位としては、例えば、当該複合体の水溶性を高めるためのポリペプチド、当該部位に続くグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体の三次元構造を再現良く導くことができるようなポリペプチド等を挙げることができる。好ましくは、チオレドキシン等を挙げることができる。
【0025】
(a)精製ドメインと(b)グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとの融合タンパク質を発現する遺伝子組み換え微生物又は細胞は、宿主となる微生物において当該融合タンパク質を発現できる発現ベクターを通常の遺伝子工学的手法を用いて構築し、次いで構築された発現ベクターを通常の遺伝子工学的手法を用いて当該微生物又は細胞に導入することにより作製することができる。作製された遺伝子組み換え微生物又は細胞は、例えば、温度変化又は化学誘導等の適切な手段により、前記発現ベクターが有するプロモ−タ−の転写活性を促進しながら、非リガンド存在下の適切な培養条件で培養すればよい。尚、多数の微生物又は細胞(細菌、植物、動物(特に哺乳動物)及び古細菌起源の細胞を含む)の培養及び産生のために参考となる文献としては、例えば、Sambrook,Ausubel及びBerger(すべて前出)、並びに、Freshney, Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique、第3版 (1994)、Wiely−Liss, New York及びそこに引用された参考文献; Doyle and Griffiths, MAMMALIAN CELL CULTURE:ESSENTIAL TECHNIQUES (1997), John Wiley and Sons, NY; Humason, Animal Tissue Techniques, 第4版 (1979), W.H.Freeman and company; 並びに Ricciardelliら, In vitro Cell Dev.Biol.25:1016−1024 (1989); Payneら, Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems (1992), John Wiley & Sons, Inc., New York ; Gamborg及びPhillips(編), Plant Cell,Tissue and Organ Culture ; Fundamental Methods Springer Lab Manual (1995),Springer−Verlag (Berlin Heidelberg New York) 及び Plant Molecular Biology, R.R.D.Croy編、Bios Scientific Publishers (1993), Oxford, U.K.ISBN0 12 198470 6; Atlas及びParks(編), The Handbook of Microbiological Media (1993), CRC Press,Boca Raton,FL.; Sigma−Aldrich,Inc (St.Louis,MO)からのLife Sience Research Cell Culture Catalogue (1998) (「Sigma−LSRCCC」); Sigma−Aldrich,Inc.(St.Louis,MO)からのThe Plant Culture Catalogue and supplement(1997)(「Sigma−PCCS」); TymmsIn vitro Transcription and Translation Protocols: Methods in Molecular Biology, 第37巻 (1995), Garland Publishing, NY.等を挙げることができる。
【0026】
本発明複合体取得方法の第ニ工程において、前記微生物又は細胞を回収するための方法としては、遠心分離等が挙げられる。また、前記遺伝子組み換え微生物又は細胞を破砕するための方法としては、例えば、凍結−解凍サイクル処理、超音波処理、機械的破壊処理又は細胞溶解剤処理等の通常の物理的又は化学的破壊処理等に基づく微生物工学的手法等を挙げることができる。
【0027】
本発明複合体取得方法の第三工程において、前記菌体破砕物から前記融合タンパク質を回収するには、市販品であるタギングシステム等のようなアフィニティ−クロマトグラフィ−等を使用することにより、前記精製ドメインと精製用担体との結合性に基づき回収すればよい。必要に応じてさらに、硫酸アンモニウム若しくはエタノ−ル沈殿、酸性抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィ−、ホスホセルロ−スクロマトグラフィ−、疎水性相互作用クロマトグラフィ−、アフィニティ−クロマトグラフィ−、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ−又はレクチンクロマトグラフィ−等の各種のタンパク質精製方法と組み合わせて精製・回収してもよい。尚、多数の精製・回収のために参考となる文献としては、例えば、Sandana, Bioseparation of Preteins (1997), Academic Press,Inc.; Bollagら, Protein Methods 第2版 (1996), Wiley−Liss, NY; Walker, The Pretein Protocols Handbook (1996), Humana Press, NJ; Harris及びAngal, Protein Purification Applications: A Practical Approach (1990), IRL Press at Oxford, Oxford, England; Harris及びAngal, Protein Purification Methods: A Practical Approach, IRL Press at Oxford, Oxford, England; Scopes, Protein Purification: Principles and Practice 第3版 (1993), Springer Verlag, NY; Janson及びRyden, Protein : Principles, High Resolution Methods and Applycations, 第2版 Purification (1998), Wiley−VCH,NY; 又はWalker, Protein Protocols on CD−ROM (1998), Humana Press, NJ.等を挙げることができる。
【0028】
本発明複合体取得方法の第四工程において、前記融合タンパク質を(a)精製ドメインと(b)グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインに分離する。本発明複合体取得方法の第四工程において、プロテアーゼは、プロテアーゼは、例えば、FactorXa Protease (血液凝固因子Xa)、PreScission Protease、スロンビンのようなプロテアーゼ等を挙げることができる。プロテアーゼ切断の条件は、精製ドメインと前記複合体を分離できるものであれはよく、プロテアーゼの種類による。例えば、温度は4℃〜20℃であり、好ましくは4℃である。プロテアーゼの切断に要する時間は、例えば6時間〜48時間であり、好ましくは、10時間〜20時間である。しかしながら、加えるプロテアーゼの量により、融合タンパク質の切断される効率は変化するので、融合タンパク質が、精製ドメインとグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとに分離することができれば、切断に要する時間は厳密ではない。プロテアーゼを添加する溶液の融合タンパク質の濃度は、当該複合体が沈殿を引き起こさない濃度であれば、何ら問題はないが、例えば、0.001mg/ml〜10mg/mlであり、好ましくは0.1mg〜2mgである。より好ましくは、0.5mg/〜1.0mg/mlである。
【0029】
本発明複合体取得方法の第五工程において、前記複合体を回収するには、例えば、硫酸アンモニウム若しくはエタノ−ル沈殿、酸性抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィ−、ホスホセルロ−スクロマトグラフィ−、疎水性相互作用クロマトグラフィ−、アフィニティ−クロマトグラフィ−、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ−又はレクチンクロマトグラフィ−等の各種のタンパク質精製方法と組み合わせて精製・回収してもよい。尚、多数の精製・回収のために参考となる文献としては、例えば、Sandana, Bioseparation of Preteins (1997), Academic Press,Inc.; Bollagら, Protein Methods 第2版 (1996), Wiley−Liss, NY; Walker, The Pretein Protocols Handbook (1996), Humana Press, NJ; Harris及びAngal, Protein Purification Applications: A Practical Approach (1990), IRL Press at Oxford, Oxford, England; Harris及びAngal, Protein Purification Methods: A Practical Approach, IRL Press at Oxford, Oxford, England; Scopes, Protein Purification: Principles and Practice 第3版 (1993), Springer Verlag, NY; Janson及びRyden, Protein : Principles, High Resolution Methods and Applycations, 第2版 Purification (1998), Wiley−VCH,NY; 又はWalker, Protein Protocols on CD−ROM (1998), Humana Press, NJ.等を挙げることができる。例えば、前記複合体を濃縮し、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製してもよいし、陰イオン交換クロマトグラフィーを通過させた後、もしくは、吸着させてさらに精製してもよい。
本発明複合体取得方法の第五工程において、前記工程により融合タンパク質を切断した溶液について、溶液を置換する方法は、例えば、PD10カラム(アマシャムバイオサイエンス)や透析等を用いてもよい。溶液を置換した後に、市販品であるタギングシステム等のようなアフィニティ−クロマトグラフィ−等の通過物を得ることにより、前記工程で分離した複合体を回収することができる。例えば、陰イオン交換カラム、ゲルろ過クロマトグラフィー等により、更に複合体を精製してもよい。前記複合体を精製した後に、セントリプレップセントリコン、アミコン又はマイクロコン等の濃縮用の装置を用いて濃縮してもよい。
第五工程により得られる前記複合体を回収するには、前記複合体の含まれる溶液をピペットマン等を用いて保存容器内に回収してもよいし、−80℃に保存してもよい。第五工程の各段階において、精製したサンプルを回収して、結晶化処理を施してもよい。
【0030】
本発明複合体取得方法は、上記工程のうちの特定な工程と関連しながらリガンド接触工程を含むことが重要であり、具体的には、前記破砕工程、前記融合タンパク質の回収工程(第二工程)、又は、前記分離工程において前記融合タンパク質の精製ドメインに存在するプロテアーゼ切断性リンカーをプロテアーゼにより切断する前までの工程において、前記微生物又は細胞或いは前記融合タンパク質とリガンドとを接触させる工程を含む。当該工程の存在により、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体の三次元構造がより安定に保持されることに繋がることになる。
本発明の複合体取得方法は、上記工程において、例えば、前期微生物又は細胞或いは前記融合タンパク質を保持してなる溶液に、リガンドが溶解している溶液を添加することで、自然拡散により接触させることができる。その際のリガンドの終濃度は、例えば0.001pM〜500mMであり、好ましくは、1nM〜200mMであり、より好ましくは、1nM〜100mMである。実施例においては、前記工程における第二工程から第五工程において、前記融合タンパク質とリガンドを、例えば、10mMの濃度で接触させればよい。リガンドは、例えば、Dimethyl sulfoxide、メタノールやエタノール等の溶媒に溶解して保存していてもよい。
尚、上記リガンド接触工程を実施する限り、上記の特定な工程以降の次工程はリガンド存在下において実施しても構わない。
【0031】
次に、本結晶は、下記の結晶取得方法(即ち、本結晶取得方法)によって取得することができる。
本結晶取得方法は、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を含む結晶の取得方法であって、本発明複合体取得方法により得られた複合体に結晶化処理を施すことにより得られる結晶を回収する工程を有する。
【0032】
本結晶取得方法において、前記グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインが、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインであることが好ましい。
【0033】
本結晶取得方法における結晶化処理は、例えば、目的のタンパク質溶液に沈殿剤を添加する操作又は溶媒量を蒸発等により減少させる操作等により、当該タンパク質が溶液状態から非溶解状態になる際に、結晶として析出する性質を利用している。また、結晶化させる条件として、当該タンパク質の種類、状態若しくは濃度、塩濃度、水素イオン濃度(pH)、添加する沈殿剤の種類、温度等の物理的及び化学的な因子が関与している。更には、沈殿剤添加や溶媒量の調整方法としては、例えば、Blundell,T.L.及びJohnson,L.N.,PROTEIN CRYSTALLOGRAPHY,第59−82頁,(1976)Academic Press,New York等に記載されるような、バッチ法、透析法、蒸気拡散法等の処理のための手法を挙げることができる。
蒸気拡散法には、例えば、ハンギングドロップ法、シッティングドロップ法及びオイルバッチ法等があり、好ましくはオイルバッチ法である。当該オイルバッチ法において用いられるオイルとしては、例えば、シリコンオイル、パラフィンオイル、シリコンオイルとパラフィンオイルとを一定の混合比で混合したオイル(好ましくは、シリコンオイルとパラフィンオイルとを1:1の混合比で混合したオイル)等が挙げられる。通常、結晶化スクリ−ニングのプレ−トのWellに分注するオイルの種類及び分注量により、結晶化ドロップの蒸気拡散の速度を調節すればよい。具体的には例えば、オイルの分注量としては10μl〜200μl程度、好ましくは30μl〜60μl程度、さらに好ましくは40μl程度を挙げることができる。
結晶化処理において使用される結晶化プレ−トとしては、72Well、96Well、384Well及び1536Well等のプレ−トを使用すればよいが、結晶化スクリ−ニングに使用できうるプレ−トであれば特にWellの数には制限はない。
【0034】
本結晶取得方法において、本発明複合体取得方法により得られた複合体に結晶化処理を施す際に、必要に応じてグルココルチコイド受容体のコアクチベ−タ−ペプチドを存在下において結晶化処理を施してもよい。
共存させるコアクチベ−タ−ペプチドとしては、例えば、TIF2コアクチベ−タ−ペプチド等を挙げることができる。
TIF2コアクチベ−タ−ペプチドとしては、NR BOX3であり、具体的には、例えば、KENALLRYLLDK、KKKENALLRYLLDKDD、PVSPKKKENALLRYLLDKDDT、QEPVSPKKKENALLRYLLDKDDTKDのアミノ酸配列からなるLXXLLモチ−フを有するアミノ配列からなるものを用いればよい。好ましくは、PVSPKKKENALLRYLLDKDDT(配列番号8)のアミノ酸配列からなるLXXLLモチ−フを有するアミノ配列からなるものを挙げることができる。
【0035】
本結晶取得方法の結晶化処理において準備される「目的のタンパク質溶液」は、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体、必要に応じてさらに、グルココルチコイド受容体のコアクチベ−タ−ペプチド、を含有する溶液であり、当該溶液中のグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体の濃度は、例えば、1mg/ml程度以上であればよく、さらに好ましくは2mg/ml程度以上である。
上記の結晶化処理において結晶を析出させるために用いられる水溶性物質としては、当該物質を溶液内に添加することにより、当該溶液中のタンパク質の溶解度を減少させ、しかもタンパク質を変性させることなく凝集させ、結晶として析出させることが可能であるような塩類、有機溶媒、高分子化合物等を挙げることができる。
上記の塩類の具体的な例としては、例えば、食塩、硫酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム等の無機塩類を挙げることができる。好ましくは、食塩、酢酸アンモニウム、イミダゾ−ル又は酒石酸アンモニウム等が挙げられる。より好ましくは、イミダゾ−ル又は酢酸アンモニウムを挙げることができる。
上記高分子化合物の具体的な例としては、例えば、ポリエチレングリコ−ル等を挙げることができる。好ましくは、平均分子量約1000〜15,000程度のポリエチレングリコ−ルであり、より好ましくは約6000〜8000程度のポリエチレングリコ−ルであればよい。
このような水溶性物質の溶液内への添加濃度は、例えば、水溶性物質が塩類である場合には、終濃度約5〜70%(W/W)、好ましくは約10〜60%(W/W)であればよい。水溶性物質が高分子化合物である場合には、終濃度約0.5〜50%(W/W)、好ましくは、約1.3%〜4.0%(W/W)であればよい。
また、前記「目的のタンパク質溶液」のpHは、通常、約2〜10程度に保つことがよい。好ましくは約7〜9程度に保つことがよい。当該溶液の温度は、通常、約1〜40℃程度に保つことがよい。好ましくは4〜25℃程度に保つことがよく、より好ましくは4〜20℃程度に保つことがよい。結晶化処理に要する時間は、約1分間〜2ケ月間程度であればよい。
このようにして結晶化処理を施すことにより得られる結晶を回収することにより取得された結晶は、必要に応じて、種結晶としてシ−ティング及び/又はマクロシ−ティングに用いることによって、X線結晶構造解析に適した大きさの結晶にさらに成長させることもできる。
【0036】
本結晶は、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を含む斜方晶系の結晶であり、空間群がI2に属し、単位格子がa=48.04オングストローム、b=116.54オングストローム、c=164.03オングストローム、α=β=γ=90°である。尚、本発明における「グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を含む斜方晶系の結晶」の構成成分としては、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメイン及びリガンドの両構成成分以外に、グルココルチコイド受容体のコアクチベ−タ−ペプチドを構成成分として含有していてもよい。
また本結晶は、一般的なX線結晶構造解析の手法により、2.8オングストロームの分解能で解析することもできる。
【0037】
このような2構成成分である結晶又は3構成成分である結晶を取得するために本発明複合体取得方法において用いられる代表的なリガンドは、非ステロイド骨格を有するリガンドであり、より代表的には、非ステロイド骨格を有し、かつ、アゴニスト活性を有するリガンドである。具体的な化合物としては、6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-oneである。また同様に本発明複合体取得方法において用いられる代表的なグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインである。必要に応じて共存させる代表的なコアクチベ−タ−ペプチドは、TIF2コアクチベ−タ−ペプチド(より具体的には、PVSPKKKENALLRYLLDKDDT(配列番号8)のアミノ酸配列からなるLXXLLモチ−フを有するアミノ配列からなるもの)である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
実施例1 (発現ベクターの構築)
グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインをクロ−ニングし、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメイン(522−777)を配列番号4及び5で示される塩基配列からなるプライマ−(配列番号4:GGTATTGAGGGTCGCCTGGTGCCACGCGGTTCTCCTGCAACGTTACCACAACT、配列番号5:AGAGGAGAGTTAGAGCCTCACTTTTGATGAAACAGAA)を用いてPCRにより増幅した。次いで、得られた増幅DNAをpET32/XaLICベクタ−(Novagen)にクロ−ン化した。クロ−ン化されたヒト由来のグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインを配列番号6及び7で示される塩基配列からなるプライマ−(配列番号6:ATCATCATCATTCTTCTGGTGGTATGAAAGAAACCGCTGC、配列番号7:GCAGCGGTTTCTTTCATACCACCAGAAGAATGATGATGAT)を用いてクイックチェンジ部位特異的突然変異誘発(QuickChange Site directed mutagenesis)によりpET32/XaLICベクタ−(Novagen)上のスロンビン切断部位を削除した。N末端から順にチオレドキシンタグ、ポリヒスチジンタグ、スロンビン切断部位を含めるように発現ベクターを構築した。当該発現ベクターでF602のSによる置換及びC638のDによる置換をクイックチェンジ部位特異的突然変異誘発(QuickChange Site-Direct Mutagenesis)キット(STRATAGENE)を用いて行った。このようにして得られた発現ベクターを大腸菌(E. coli)菌株BL21(DE3)に形質転換した。
【0040】
実施例2 (タンパク質発現及び精製)
グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインをpET32/XaLICベクタ−(Novagen)のT7プロモ−タ−により駆動して融合タンパク質として発現させた。大腸菌BL21(DE3)を、0.5mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドが添加された2xYT培地(組成:16g, tryptone, 10 g yeast extract, 5 g NaCl/L culture)を用いてリガンド非存在下で、15℃で16〜20時間培養した後、遠心分離(7330g, 12min, 4℃)で大腸菌を回収することにより、菌体ペレットを得た。得られた菌体ペレットを−80℃で保存した。
約80gの菌体ペレットを300mlの50mM Tris−HCl、pH8.0、150mM NaCl、10% Glycerol、10mM β −merchaptoethanol、2M UREAに懸濁した後、これに6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-oneを10μMの濃度となるように添加した。得られた菌混合物をDigital Sonifer S-450D(BRANSON)を用いて超音波処理(レベル5の強度、氷上、20分間)に施すことにより、菌体破砕物を得た。菌体破砕液を、遠心分離(38900g, 30min, 4℃)で遠心後、上清を回収した。
次に、得られた上清をニッケルキレ−ト化樹脂上でのクロマトグラフィ−に供した後、0.04−0.5Mイミダゾ−ルの勾配溶出により、前記融合タンパク質(約90%純度)を全部で10〜30mg回収した。得られた融合タンパク質(即ち、チオレドキシン及びポリヒスチジンと融合されてなるヒト由来のグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメイン)のアミノ酸配列を配列番号1に示す。尚、配列番号1における第157番目から第162番目までのアミノ酸領域がスロンビン切断部位である。
【0041】
得られた融合タンパク質をPD−10カラム(アマシャムバイオサイエンス)に供した後に得られた溶液の溶媒を50mM Tris−HCl、pH8.0、150mM NaCl、10% Glycerol、10mM β −merchaptoethanol、10μM 6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-one、10mM imidazoleのリガンド含有緩衝液に置換した。置換後の前記溶液に、スロンビン(アマシャムバイオサイエンス)を500U添加した後一晩、4℃で置くことにより、前記融合タンパク質中のスロンビン切断部位を開裂させた。得られた開裂物の溶液を、50mM Tris−HCl、pH8.0、150mM NaCl、10% Glycerol、10mM DTT、10mM imidazole、25mlで平衡化された、予めNi−NTA Superflow(アマシャムバイオサイエンス)5mlが充填された16/20カラム(アマシャムバイオサイエンス)に供することにより、図2に示すグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を回収した。
回収された前記複合体を25mlの50mM Tris−HCl、 pH8.0、10%Glycerol、10mM DTTで平衡化されたHitrap Q HP 5ml(アマシャムバイオサイエンス)カラムを通過させた後に、Centricon YM10(アミコン)を用いて14mg/mlまで濃縮した。
濃縮後のグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインを50mM Tris−HCl、 pH8.0、10% Glycerol、10mM DTT、10μM 6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-one、500mM 酢酸アンモニウム、100μM TIF2コアクチベ−タ−ペプチド(配列番号8)からなる溶液を用いて10倍量の体積に希釈した後、当該希釈物をMicrocon YM10(アミコン)を用いて濃縮・回収することにより、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとからなる複合体であって、TIF2コアクチベ−タ−ペプチドを含有する複合体の精製物を得た。
【0042】
実施例3 (結晶化)
実施例2で得られた複合体の精製物をマイクロバッチ法に基づいた下記操作により、結晶化させた。
プレ−トは96穴プレ−ト(コ−ニング)を使用し、40μlのオイルを添加した。オイルはシリコンオイル(HAMPTON RESERCH)とパラフィンオイル(HAMPTON RESERCH)とを1:1で混合したものを用いた。
オイル下で、0.4μlの各種の沈殿剤と2.0μlの実施例2で得られた複合体の精製物とを混合し、これを結晶化サンプルとした。
4℃で約1か月後に、沈殿剤が下記の組成である場合における1つの結晶化ドロップの中から、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンド(6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-one)とからなる複合体であって、TIF2コアクチベ−タ−ペプチドを含有する複合体を含む結晶(即ち、本結晶)が複数個得られた。
【0043】
<沈殿剤の組成>
<沈殿剤の組成>
組成1.8%(W/V) PEG4000、0.1M 酢酸アンモニウム、0.1M HEPES(pH7.5)
組成2.1M イミダゾ−ル(pH7.0)
【0044】
このようにして調製された本結晶と、上記と同様な組成を有する沈殿剤とを1:1で混合してなる結晶化ドロップを、40μlの上記と同様な組成を有するオイル内で調製することにより、新たな結晶化ドロップを20℃で作製した。
作製された結晶化ドロップに、上記ですでに調製された本結晶の複数個を、種結晶として添加した。結晶は経時的に大きくなり、7〜10日間後には測定可能な大きさまで成長した。
成長した本結晶の一例を図2(沈殿剤の組成が組成1である場合)及び図3(沈殿剤の組成が組成2である場合)に示す。
【0045】
実施例4 (デ−タ測定)
実施例3で調製された本発明結晶をレ−ヨン製ル−プ(HAMPTON RESERCH)で掬い、クライオプロテクタントとして20%グリセロ−ルが添加されたリザ−バ−溶液に1〜3秒間浸透させた後、液体窒素により急速冷凍した。急速冷凍後の本発明結晶を液体窒素中で保存した。保存後の本発明結晶を100K窒素気流下でX線回折強度を、振動法により収集した。デ−タ測定は波長1.5418オングストロームのX線を用いて行った。検出器はR-AXIS IV++(リガク)であり、読み取り装置部は、直径300×300mmのイメ−ジングプレ−トを用いた。カメラ長は200mmであり、露光時間を15分間とした。振動角は1度とした。またデ−タ処理及び分析のために、Crystal Clear 1.3 (リガク)を使用した。本発明結晶から得られたX線回折写真を図1に示す。
測定されたデ−タを解析した結果、本発明結晶は、空間群がI2に属し、単位格子がa=48.04オングストローム、b=116.54オングストローム、c=164.03オングストローム、α=β=γ=90°である結晶であることが判明した。
【0046】


【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインと非ステロイド骨格を有するリガンドとの複合体を含む結晶が再現性良く、容易に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明結晶から得られたX線回折写真である。
【図2】図2は、沈殿剤の組成が組成1(8%(W/V) PEG4000、0.1M 酢酸アンモニウム、0.1M HEPES(pH7.5))である場合において調製された、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンド(6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-one)とからなる複合体であって、TIF2コアクチベ−タ−ペプチドを含有する複合体を含む結晶(本発明結晶)を示す図(写真)である。
【図3】図3は、沈殿剤の組成が組成2(1M イミダゾ−ル(pH7.0))である場合において調製された、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンド(6-[[3-[1-(2-Chloro-5-fluorophenyl)cyclobutyl]-2-hydroxy-2-trifluoromethylpropionyl]amino]-4-methyl-2,3-benzoxazin-1-one)とからなる複合体であって、TIF2コアクチベ−タ−ペプチドを含有する複合体を含む結晶(本発明結晶)を示す図(写真)である。
【配列表フリーテキスト】
【0049】
配列番号4
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマ−
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマ−
配列番号6
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマ−
配列番号7
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマ−

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体の製造方法であり、
(1)(a)精製ドメインと(b)グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとの融合タンパク質を発現する遺伝子組み換え微生物又は細胞を、リガンド非存在下で培養する工程、
(2)前記工程により得られる前記微生物又は細胞を回収し、回収された前記微生物又は細胞を破砕する工程、
(3)前記工程により得られる菌体破砕物から前記融合タンパク質を、前記精製ドメインと精製用担体との結合性に基づき回収する工程、
(4)前記工程により得られる前記融合タンパク質から、当該タンパク質の精製ドメインに存在するプロテアーゼ切断性リンカーをプロテアーゼにより切断することにより、グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を分離する工程、及び
(5)前記工程により得られる前記複合体を回収する工程
を有し、かつ、
(6)前記破砕工程、前記融合タンパク質の回収工程、又は、前記分離工程において前記融合タンパク質の精製ドメインに存在するプロテアーゼ切断性リンカーをプロテアーゼにより切断する前までの工程において、前記微生物又は細胞或いは前記融合タンパク質とリガンドとを接触させる工程
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記精製ドメインが、金属キレートペプチドが付加されてなるチオレドキシンとプロテアーゼ切断性リンカーとからなるポリペプチドであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインが、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインであることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインとリガンドとの複合体を含む結晶の取得方法であって、
請求項1又は2記載の製造方法により得られた複合体に結晶化処理を施すことにより得られる結晶を回収する工程を有することを特徴とする結晶の取得方法。
【請求項5】
前記グルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインが、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメインであることを特徴とする請求項4記載の結晶の取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−262779(P2006−262779A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85672(P2005−85672)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】