説明

グルコサミンを製造するためのプロセス及び物質

【課題】 遺伝的に修飾された微生物の発酵によってグルコサミンを製造するための方法及び物質を提供する。
【解決手段】
本発明に包含されるのは、グルコサミンを製造する本方法に有用な、遺伝的に変更された微生物はもとより、組換え核酸分子、及びそのような組換え核酸分子が生産するタンパク質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、発酵によってグルコサミンを製造する方法に関する。本発明は、グルコサミンを製造するのに役立つ微生物の遺伝的に修飾された菌株にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アミノ糖は、通常、複合オリゴ糖類及び多糖類中に単量体残基として見出される。グルコサミンは、単糖であるグルコースのアミノ誘導体である。グルコサミンその他のアミノ糖は、天然の多くの多糖類の重要な成分である。例えば、アミノ糖を含む多糖類は、細胞のための、構造タンパク質に類似する構造物質を形成することが可能である。
【0003】
グルコサミンは、動物及びヒトの骨関節炎症状の治療に用途を有する、栄養剤製品として製造される。グルコサミンの市場は、驚異的な成長を遂げている。更に、グルコサミンに関して世界的な市場価格が有意に侵食されることは、予測されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グルコサミンは、現在は、N−アセチル−D−グルコサミンから誘導される複合炭水化物である、キチンの酸加水分解によって得られる。これに代えて、グルコサミンは、様々にアセチル化されたキトサンの酸加水分解によって製造することもできる。これらの方法は、(基質からグルコサミンへの50%の変換という範囲の)生産物の収率が乏しいという短所を有する。その上、原料(すなわちカニの殻のようなキチンの供給源)の入手可能性は、ますます限られてきている。そのため、商業的な販売及び使用を目的とした、グルコサミンを高収率に製造する費用効果的な方法に対する業界の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発酵によってグルコサミンを製造する方法であって、
(a)グルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性を増大する少なくとも一つの遺伝的修飾を有する微生物を炭素、窒素及びリン酸塩の同化できる供給源を含む発酵培地で培養する工程であって、前記遺伝的修飾が、
(i)グルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性を有する、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている組換え核酸分子による前記微生物の形質転換と、
(ii)前記グルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性を増大する、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている遺伝子の遺伝的修飾であって、前記遺伝的修飾が、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている前記遺伝子の少なくとも一つのヌクレオチドの欠失、挿入及び置換からなる群から選択される少なくとも一つの核酸修飾を結果として生じ、前記少なくとも一つの核酸修飾がグルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性の増大を結果として生じることとからなる群から選択され、
前記培養する工程により、グルコサミン−6−リン酸及びグルコサミンからなる群から選択される生成物が前記微生物から生成されて蓄積される工程、及び
(b)前記生成物を回収して精製する工程
を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】Escherichia coliにおける、グルコサミン及びN−アセチル−グルコサミン、並びにリン酸化されたその誘導体の生合成と異化との経路の模式図。
【図2】Escherichia coliにおける、グルコサミン過剰産生のためのアミノ糖代謝に関連する経路に対する修飾の模式図。
【図3】manXYZ、ptsG及びΔnagの突然変異の組合せを有する、Escherichia coli株の形成の模式図。
【図4】培養への追加のグルコース及び硫酸アンモニウムを供給することの、グルコサミン蓄積に対する効果を示す折れ線グラフ。
【図5】グルコサミン−6−リン酸シンターゼが、グルコサミン−6−リン酸及びグルコサミンによって阻害されることを示す折れ線グラフ。
【図6】突然変異したglmSクローンにおけるグルコサミン−6−リン酸シンターゼ活性の生成物阻害を示す折れ線グラフ。
【図7】突然変異したglmS遺伝子を有するEscherichia coli株の構築のための方策の模式図。
【図8】組み込まれた突然変異glmS遺伝子を有するEscherichia coli株における、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの生成物阻害を示す折れ線グラフ。
【図9】組み込まれた突然変異glmS遺伝子を有する突然変異Escherichia coli株における、グルコサミン産生を示す折れ線グラフ。
【図10】グルコサミン産生株における、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの阻害を示す折れ線グラフ。
【図11A】グルコサミン産生株における、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの45℃での熱安定性を示す折れ線グラフ。
【図11B】グルコサミン産生株における、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの50℃での熱安定性を示す折れ線グラフ。
【図12】グルコサミン産生に対するIPTG濃度の効果を示す曲線グラフである。
【図13】グルコサミン産生に対するIPTG濃度及び温度の効果を立証する折れ線グラフ。
【図14A】グルコサミン産生株2123−54による30℃での増殖及びグルコサミン産生を示す折れ線グラフ。
【図14B】グルコサミン産生株2123−54による37℃での増殖及びグルコサミン産生を示す折れ線グラフ。
【図15A】菌株2123−49による30℃でのグルコサミン産生を示す折れ線グラフ。
【図15B】菌株2123−124による30℃でのグルコサミン産生を示す折れ線グラフ。
【図16A】グルコサミン産生株による37℃のグルコース制限発酵器内でのグルコサミン産生を示す折れ線グラフ。
【図16B】グルコサミン産生株による30℃のグルコース制限発酵器内でのグルコサミン産生を示す折れ線グラフ。
【図16C】グルコサミン産生株による30℃のグルコース過剰発酵器内でのグルコサミン産生を示す折れ線グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の概要)
本発明の一実施態様は、微生物の発酵によってグルコサミンを製造する方法に関する。この方法は、(a)発酵培地で、アミノ糖代謝経路に遺伝的修飾を有する微生物を培養する工程と;(b)培養する工程から製造された、グルコサミン−6−リン酸及びグルコサミンの群から選ばれる生成物を回収する工程とを含む。そのようなアミノ糖代謝経路は、グルコサミン−6−リン酸を別の化合物に変換する経路、グルコサミン−6−リン酸を合成する経路、グルコサミン又はグルコサミン−6−リン酸を前記微生物外に輸送する経路、グルコサミンを前記微生物内に輸送する経路、及びグルコサミン−6−リン酸の生成に関与する基質に対して競合する経路の群から選ばれる。発酵培地は、炭素、窒素及びリン
酸塩の同化できる供給源を含む。好適実施態様では、前記微生物は、細菌又は酵母、より好ましくはエシェリキア属の細菌、さらに好ましくはEscherichia coliである。
【0008】
一実施態様では、前記生成物は、微生物からの細胞内グルコサミン−6−リン酸の回収、及び/又は発酵培地からの細胞外グルコサミンの回収によって回収することが可能である。更にいくつかの実施態様では、回収する工程は、発酵培地からグルコサミンを精製すること、微生物からグルコサミン−6−リン酸を単離すること、及び/又はグルコサミン−6−リン酸を脱リン酸して、グルコサミンを生成することを包含する。一実施態様では、少なくとも約1g/Lの生成物が回収される。
【0009】
更に別の実施態様では、培養する工程は、炭素源を前記発酵培地中に約0.5〜約5%の濃度に保つことを含む。別の実施態様では、培養する工程を約28〜約37℃の温度で実施する。更に別の実施態様では、培養する工程を発酵器で実施する。
【0010】
本発明の一実施態様では、微生物は、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ、N−アセチルグルコサミン特異酵素IINag 、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、PEP:グルコースPTSの酵素IIGlc 、PEP:マンノースPTSのEIIM,P/IIIMan、及びホスファターゼを包含するが、これらに限定されないタンパク質をコードしている遺伝子に修飾を有する。
【0011】
別の実施態様では、前記遺伝的修飾は、微生物中のグルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用を増強する遺伝的修飾を包含する。そのような遺伝的修飾は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用を増大するため、及び/又は前記微生物によってグルコサミン−6−リン酸シンターゼを過剰発現させるための、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている組換え核酸分子による前記微生物の形質転換を包含する。一実施態様では、前記組換え核酸分子は、転写調節配列に機能的に結合されている。更に別の実施態様では、前記組換え核酸分子は、前記微生物のゲノムに組み込まれている。更に別の実施態様では、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている前記組換え核酸分子は、前記シンターゼの作用を増大する遺伝的修飾を有する。そのような遺伝的修飾を生じた結果、例えば、グルコサミン−6−リン酸シンターゼのグルコサミン−6−リン酸による生成物阻害が低下し得る。
【0012】
一実施態様では、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸配列を有する本発明の組換え核酸分子は、アミノ酸配列である配列番号16をコードしている。別の実施態様では、そのような組換え核酸分子は、配列番号13、配列番号14及び配列番号15の群から選ばれる核酸配列を含む。本発明の好適な組換え核酸分子は、pKLN23−28、nglmS−282184及びnglmS−281830を含む。
【0013】
やはり本発明に包含されるのは、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの作用を増大する遺伝的修飾を有する、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ(すなわちグルコサミン−6−リン酸シンターゼ相同体)をコードしている組換え核酸分子である。そのような遺伝的修飾は、例えば、前記シンターゼのグルコサミン−6−リン酸生成物による阻害を軽減することが可能である。一実施態様では、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている本発明の組換え核酸分子における、そのような遺伝的修飾は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼのアミノ酸残基の付加、置換、欠失及び/又は誘導体形成の群から選ばれる、少なくとも一つのアミノ酸の修飾を結果として生ずる。一実施態様では、そのようなアミノ酸の修飾は、修飾されたタンパク質(すなわち相同体)における、アミノ酸配列配列番号16中の下記のアミノ酸の位置:Ile(4)、Ile(272)、Ser(
450)、Ala(39)、Arg(250)、Gly(472)、Leu(469)の一つ又はそれ以上に相当する、アミノ酸配列の位置においてである。別の実施態様では、そのようなアミノ酸の修飾は、(a)Ile(4)に代えて脂肪族ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(b)Ile(272)に代えて脂肪族ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(c)Ser(450)に代えて脂肪族の側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(d)Ala(39)に代えて脂肪族ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(e)Arg(250)に代えて含硫黄側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(f)Gly(472)に代えて脂肪族ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(g)Leu(469)に代えて脂肪族の側鎖基を有するアミノ酸残基へ;及び(h)(a)〜(g)の組合せの置換の群から選ばれる。
【0014】
本発明の更に別の実施態様では、上記のアミノ酸の修飾は、好ましくは、Ile(4)に代えてThrへ、Ile(272)に代えてThrへ、Ser(450)に代えてProへ、Ala(39)に代えてThrへ、Arg(250)に代えてCysへ、Gly(472)に代えてSerへ、Leu(469)に代えてProへ、及びそれらの組合せの群から選ばれる置換である。
【0015】
別の実施態様では、本発明の遺伝的に修飾された組換え核酸分子は、配列番号19、配列番号22、配列番号25、配列番号28又は配列番号31の群から選ばれるアミノ酸配列を含む、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸配列を含む。別の実施態様では、本発明の遺伝的に修飾された組換え核酸分子は、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、配列番号29及び配列番号30の群から選ばれる核酸配列を含む。本発明の好適な遺伝的に修飾された組換え核酸分子は、pKLN23−49、pKLN23−54、pKLN23−124、pKLN23−149、pKLN23−151、nglmS−492184、nglmS−491830、nglmS−542184、nglmS−541830、nglmS−1242184、nglmS−1241830、nglmS−1492184、nglmS−14918 30、nglmS−1512184及びnglmS−1511830を含む。
【0016】
本発明の別の実施態様は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用を有するグルコサミン−6−リン酸シンターゼであって、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用の増強を結果として生ずる遺伝的修飾を有する、核酸配列がコードしているグルコサミン−6−リン酸シンターゼに関する。そのような核酸配列は、本発明の組換え核酸分子に関して上記に説明した。
【0017】
本発明の更に別の実施態様は、発酵によってグルコサミンを製造する方法であって、以下の工程を含む方法に関する。
(a)炭素、窒素及びリン酸塩の同化できる供給源を含む発酵培地で、(1)グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸配列を含む、単離された核酸分子に修飾を発生させて、修飾された複数の核酸配列を生成する工程;(2)微生物を前記修飾された核酸配列で形質転換して、遺伝的に修飾された微生物を形成する工程;(3)前記遺伝的に修飾された微生物を、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用についてスクリーニングする工程;及び(4)増強されたグルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用を有する、前記遺伝的に修飾された微生物を選別する工程から成る方法によって形成される、増強されたグルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用を有する前記遺伝的に修飾された微生物を培養する工程
(b)前記生成物を回収する工程
前記培養する工程は、グルコサミン−6−リン酸及びグルコサミンの群から選ばれる生成物を前記微生物から生成する。
【0018】
別の実施態様では、本発明の微生物は、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ、N−アセチルグルコサミン特異酵素IIN ag 、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフ
ェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、PEP:グルコースPTSの酵素IIGlc 、及びPEP:マンノースPTSのEIIM,P/IIIManをコードしている遺伝子に、そのようなタンパク質の作用を軽減する追加的な遺伝的修飾を有する。別の実施態様では、本発明の微生物は、ホスファターゼをコードしている遺伝子に、前記ホスファターゼの作用を増強する追加的な遺伝的修飾を有する。好適実施態様では、本発明の微生物は、下記のタンパク質:N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ及びN−アセチルグルコサミン特異酵素IINag をコードしている遺伝子に、そのような遺伝子の少なくとも一部の欠失を包含するが、これらに限定されない、追加的な遺伝的修飾を有する。
【0019】
本発明の別の実施態様は、発酵によってグルコサミンを製造する方法であって、(a)炭素、窒素及びリン酸塩の同化できる供給源を含む発酵培地で、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている組換え核酸分子で形質転換したEscherichia coliを培養
して、生成物を生成する工程と、(b)前記生成物を回収する工程とを含む方法に関する。前記生成物は、前記Escherichia coliから回収される細胞内グルコサミン−6−リン
酸、及び/又は前記発酵培地から回収される細胞外グルコサミンを包含する。この実施態様では、組換え核酸分子は、Escherichia coliによるグルコサミン−6−リン酸シンタ
ーゼの発現を増強し、転写調節配列に機能的に結合されている。一実施態様では、組換え核酸分子は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼのグルコサミン−6−リン酸生成物阻害を低下させる遺伝的修飾を含む。別の実施態様では、Escherichia coliは、nagA
、nagB、nagC、nagD、nagE、manXYZ、glmM、pfkB、pfkA、glmU、glmS、ptsG及び/又はホスファターゼ遺伝子の群から選ばれる少なくとも一つの遺伝子に追加的な遺伝的修飾を有する。更に別の実施態様では、前記追加的な修飾は、nagA、nagB、nagC、nagD、nagEの欠失、及びmanXYZ遺伝子の突然変異を含んでいて、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ及びN−アセチルグルコサミン特異酵素IINag の酵素活性の増大を結果として生ずる。
【0020】
本発明の更に別の実施態様は、生合成の方法によってグルコサミンを生成するための微生物に関する。前記微生物は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている、転写調節配列に機能的に結合された、組換え核酸分子で形質転換される。前記組換え核酸分子は、更に、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの作用を増強する遺伝的修飾を含む。組換え核酸分子の発現は、前記微生物によるグルコサミンの産生を増大させる。好適実施態様では、前記組換え核酸分子は、前記微生物のゲノムに組み込まれる。更に別の実施態様では、前記微生物は、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ、N−アセチルグルコサミン特異酵素IINag 、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、PEP:グルコースPTSの酵素IIGlc 、及び/又はPEP:マンノースPTSのEIIM,P/IIIManよりなる群から選ばれるタンパク質をコードしている遺伝子に、前記タンパク質の作用を軽減する少なくとも一つの追加的な遺伝的修飾を有する。別の実施態様では、前記微生物は、ホスファターゼをコードしている遺伝子に、ホスファターゼの作用を増強する遺伝的修飾を有する。更に別の実施態様では、前記微生物は、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ及びN−アセチルグルコサミン特異酵素IINag をコードしている遺伝子に、前記タンパク質の酵素活性を低下させる遺伝的修飾を有する。好適実施態様では、前記遺伝的修飾は、前記遺
伝子の少なくとも一部の欠失である。
【0021】
更に別の実施態様では、前記微生物は、nagA、nagB、nagC、nagD、nagE、manXYZ、glmM、pfkB、pfkA、glmU、ptsG及び/又はホスファターゼ遺伝子の群から選ばれる遺伝子に修飾を有する、Escherichia coliであ
る。一実施態様では、そのようなEscherichia coliは、nagレギュロン遺伝子の欠失
を有し、別の実施態様では、そのようなEscherichia coliは、nagレギュロン遺伝子
の欠失、及びmanXYZ遺伝子に遺伝的修飾を有するため、manXYZ遺伝子がコードしているタンパク質は、作用が軽減されている。
【0022】
本発明の更に別の実施態様は、14g/l のK2 HPO4 、16g/l のKH2 PO4 、1g/l のクエン酸Na3・2H2 O、5g/l の(NH4 2 SO4 、20g/l のグルコース
、10mMのMgSO4 、1mMのCaCl2 、及び約0.2〜約1mMのIPTGを含むpH7.0の発酵培地で、乾燥細胞重量で少なくとも約8g/l
の細胞密度まで、約28〜約37℃で約10〜約60時間培養したときに、少なくとも約1g/l のグルコサミンを産生する、上記の微生物である。
【0023】
本発明の別の実施態様は、生合成の方法によってグルコサミンを生成するための微生物であって、(a)転写調節配列に機能的に結合されている、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている組換え核酸分子と;(b)N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ、N−アセチルグルコサミン特異酵素IINag 、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、PEP:グルコースPTSの酵素IIGlc 、及び/又はPEP:マンノースPTSのEIIM,P/IIIManの群から選ばれるタンパク質をコードしている遺伝子における、前記タンパク質の作用を軽減する少なくとも一つの遺伝的修飾とを有する微生物である。別の実施態様では、前記微生物は、ホスファターゼをコードしている遺伝子に、ホスファターゼの作用を増強する少なくとも一つの遺伝的修飾を有する。前記組換え核酸分子の発現は、前記微生物におけるグルコサミン−6−リン酸シンターゼの作用を増強する。更に別の実施態様では、前記組換え核酸分子は、前記微生物のゲノムに組み込まれる。
(発明の詳細な説明)
本発明は、グルコサミンを製造する生合成の方法に関する。そのような方法は、グルコサミンを産生するよう遺伝的に修飾された微生物の発酵を包含する。本発明は、グルコサミンを産生するのに役立つ、遺伝的に修飾された微生物、例えばEscherichia coliの菌
株にも関する。本明細書に用いられる限りで、用語「グルコサミン」と「N−グルコサミン」とは、相互可換的に用いることが可能である。同様に、用語「グルコサミン−6−リン酸」と「N−グルコサミン−6−リン酸」とは、相互可換的に用いることが可能である。グルコサミンは、GlcNと略すこともでき、グルコサミン−6−リン酸は、GlcN−6−Pと略すこともできる。
【0024】
発酵によってグルコサミンを製造する本発明の新規な方法は、安価であり、現在の加水分解法によって製造されるグルコサミンの原価あたり収量を上回る、グルコサミンの収量を生じることが可能である。加えて、本明細書に記載のような、遺伝的に修飾された微生物を用いることによって、本発明の方法は、グルコサミンの製造に関する特定の問題又は変化する需要に適合するよう、容易に変更することが可能である。
【0025】
アミノ糖であるN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びグルコサミン(GlcN)は、主要な高分子、特に複合糖質(すなわち、共有結合したオリゴ糖鎖を有する高分子)の生合成の前駆体であるため、微生物では根本的に重要である。例えば、Escherichi
a coliでは、N−アセチルグルコサミン及びグルコサミンは、細胞エンベロープの2種
類の高分子である、ペプチドグリカン及びリポ多糖類の前駆体である。ペプチドグリカン又はリポ多糖類の生合成を遮断する突然変異は、致死的であって、細胞エンベロープの完全性の喪失、及び最終的には細胞溶解を結果として生ずる。
【0026】
本発明の一実施態様は、微生物の発酵によってグルコサミンを製造する方法に関する。この方法は、(a)発酵培地で、グルコサミン−6−リン酸を別の化合物に変換する経路、グルコサミン−6−リン酸を合成する経路、グルコサミン又はグルコサミン−6−リン酸を微生物外に輸送する経路、グルコサミンを前記微生物内に輸送する経路、及びグルコサミン−6−リン酸の産生に関与する基質に対して競合する経路を包含する、アミノ糖代謝経路に遺伝的修飾を有する微生物を培養して、微生物からの細胞内グルコサミン−6−リン酸、及び/又は細胞外グルコサミンを包含し得る産生物を製造する工程と;(b)前記細胞内グルコサミン−6−リン酸を前記微生物から、及び/又は前記細胞外グルコサミンを前記発酵培地から回収する工程とを含む。発酵培地は、炭素、窒素及びリン酸塩の同化できる供給源を含む。
【0027】
本発明の別の実施態様は、発酵によってグルコサミンを製造する方法に関する。そのような方法は、(a)炭素、窒素及びリン酸塩の同化できる供給源を含む発酵培地で、転写調節配列に機能的に結合された、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている、組換え核酸分子で形質転換したEscherichia coliを培養する工程と;(b)グルコサ
ミン−6−リン酸及びグルコサミンの群から選ばれる生成物を回収する工程とを含む。前記組換え核酸分子は、Escherichia coliによるグルコサミン−6−リン酸シンターゼの
発現を増強する。更に別の実施態様では、組換え核酸分子は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼのグルコサミン−6−リン酸生成物阻害を低下させる遺伝的修飾を含む。更に別の実施態様では、Escherichia coliは、nagA、nagB、nagC、nagD、
nagE、manXYZ、glmM、pfkB、pfkA、glmU、ptsG及び/又はホスファターゼ遺伝子の群から選ばれる少なくとも一つの遺伝子に追加的な遺伝的修飾を有する。
【0028】
本発明の発酵法によって有意に高収率のグルコサミンを製造するには、微生物を、グルコサミンの産生を増大させるよう遺伝的に修飾する。本明細書に用いられる限りで、遺伝的に修飾した微生物、例えばEscherichia coliは、その正常な(すなわち野生型のか、
又は天然に産する)形態から修飾した(すなわち突然変異させたか、又は変化させた)ゲノムを有する。微生物の遺伝的修飾は、古典的な菌株開発及び/又は分子遺伝学的手法を用いて達成することが可能である。そのような手法は、例えば、Sambrook et al.,1989, Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Pressに一般的に開示されている。
前記参考文献〔Sambrook et al., 前掲〕は、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる。加えて、微生物の遺伝的修飾の手法は、実施例の項に詳しく説明される。遺伝的に修飾された微生物は、天然の遺伝学的変種はもとより、そのような修飾が望みの効果を微生物内に与えるようにして、核酸分子を挿入、削除又は修飾した(すなわち、例えばヌクレオチドの挿入、欠失、置換及び/又は逆位によって、突然変異させた)微生物も包含することが可能である。本発明によれば、遺伝的に修飾した微生物は、組換え手法を用いて修飾されている微生物を包含する。本明細書に用いられる限りで、遺伝子の発現、遺伝子の機能、又は遺伝子産物(すなわち遺伝子がコードしているタンパク質)の機能の低下を結果として生ずる遺伝的修飾は、遺伝子の(全体的又は部分的)不活性化、欠失、中断、遮断又はダウンレギュレーションを意味することが可能である。例えば、そのような遺伝子がコードしているタンパク質の機能の低下を結果として生ずる、遺伝子における遺伝的修飾は、遺伝子の完全な欠失(すなわち遺伝子が存在せず、そのためタンパク質が存在しない)、タンパク質の不完全であるか、若しくは皆無である翻訳を結果として生ずる
、遺伝子の突然変異(例えば、タンパク質が発現されない)、又はタンパク質の天然の機能を低下又は滅失する、遺伝子の突然変異(例えば、酵素活性若しくは作用が低下しているか、又は皆無であるタンパク質が発現される)を結果として生ずることが可能である。遺伝子発現又は機能の増大を結果として生ずる遺伝的修飾は、遺伝子の増幅、過剰産生、過剰発現、活性化、増強、追加又はアップレギュレーションと称することが可能である。
【0029】
本発明の一実施態様では、微生物の遺伝的修飾は、本発明によるアミノ糖代謝経路に関与するタンパク質の作用を増大するか、又は軽減する。そのような遺伝的修飾は、いかなる種類の修飾も包含することができ、特に、組換え手法又は古典的突然変異誘発によって実施される修飾を包含する。例えば、一実施態様では、本発明の微生物は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの作用を増大する遺伝的修飾を有する。本明細書で検討される、グルコサミン−6−リン酸シンターゼその他の酵素の作用(又は活性)を増大することとは、問題の微生物における、前記酵素の機能性の増大を結果として生ずるいかなる遺伝的修飾も意味し、酵素の、より高い活性(例えば比活性又はin vivo 酵素活性)、酵素の低下した阻害又は分解、及び酵素の過剰発現を包含することに留意しなければならない。例えば、生来のプロモーターのそれより高いレベルの発現を与えるプロモーターの利用によって、遺伝子のコピー数を増加させることができ、発現レベルを上昇させることができるか、又は酵素の作用を増強する遺伝子工学若しくは古典的突然変異誘発によって、遺伝子を代えることが可能である。グルコサミン−6−リン酸シンターゼの作用を増大するよう遺伝的に修飾した、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸分子の例は、実施例の項に記載されている。同様に、本明細書で検討される酵素の作用を軽減することとは、問題の微生物における、酵素の機能性の低下を結果として生ずるいかなる遺伝的修飾も意味し、酵素の活性(例えば比活性)の低下、酵素の阻害又は分解の増大、及び酵素の発現の低下又は排除を包含する。例えば、本発明の酵素の作用は、酵素の生産の遮断若しくは低減、酵素活性の低減、又は酵素活性の阻害によって低下させることが可能である。酵素の生産の遮断又は低減は、酵素をコードしている遺伝子を、増殖培地中の誘導性化合物の存在を必要とするプロモーターの制御下に置くことを包含することが可能である。誘導物質が培地から枯渇するような条件を確立することによって、酵素をコードしている遺伝子の(したがってまた酵素合成の)発現を停止させることができると思われる。酵素活性の遮断又は低減は、米国特許第4,743,546号明細書(引用によって本明細書に組み込まれる)に記載されたのと類似の、切除手法という取組み方を用いることも包含することができると思われる。この取組み方を用いるには、目的の酵素をコードしている遺伝子を、ゲノムからの遺伝子の特異的な、制御された切除を可能にする、特異的な遺伝的配列の間にクローニングする。切除は、例えば、米国特許第4,743,546号明細書におけるような、培養体の培養温度の移動によってか、又はその他の何らかの物理的若しくは栄養上のシグナルによって促すことができると思われる。
【0030】
アミノ糖は、糖類のアミノ誘導体(例えば、ヒドロキシル基に代えてアミノ基を有する糖類)である。本発明によれば、アミノ糖代謝経路は、アミノ糖の生合成、同化又は異化に関与又は影響する生化学的ないかなる経路でもある。本明細書に用いられる限りで、アミノ糖代謝経路は、アミノ糖及びその前駆体の細胞内外への輸送に関与する経路を包含し、アミノ糖の生合成又は異化に関与する基質を求めて競合する生化学的経路も包含する。例えば、最も初期に形成されたアミノ糖の一つへの直接前駆体は、フルクトース−6−リン酸(F−6−P)であって、グルタミン(Gln、すなわちアミノ基供与体)との生化学的反応で、グルコサミン−6−リン酸を形成する。フルクトース−6−リン酸は、解糖経路での中間体でもある。したがって、解糖経路は、基質であるフルクトース−6−リン酸を求めて競合することによって、グルコサミン−6−リン酸生合成経路と競合する。加えて、グルコサミン−6−リン酸は、一連の生化学的反応によって、他のアミノ糖へと変換し、様々な高分子の構成要素を形成することが可能である。その限りで、グルコサミン−6−リン酸の生合成に影響する範囲での、フルクトース−6−リン酸/グルコサミン−
6−リン酸経路、フルクトース−6−リン酸解糖経路、及びグルコサミン−6−リン酸/高分子生合成経路は、すべて、本発明におけるアミノ糖代謝経路であると考えられる。
【0031】
一般に、アミノ糖代謝経路が遺伝的に修飾された微生物は、上記に考察したとおり、同じ条件下で培養された野生型微生物と比較すると、上記の一つ又はそれ以上のアミノ糖代謝経路に結果として変化を生ずる、少なくとも一つの遺伝的修飾を有する。アミノ糖代謝経路のそのような修飾は、微生物がアミノ糖を産生できる能力を変化させる。本発明によれば、遺伝的に修飾された微生物は、好ましくは、同じ条件下で培養された野生型微生物に比して増強された、グルコサミンを産生できる能力を有する。グルコサミンの産生に影響するアミノ糖代謝経路は、一般的には、下記の種類の経路の少なくとも一つに分類することができる:(a)グルコサミン−6−リン酸をその他の化合物に変換する経路、(b)グルコサミン−6−リン酸を合成する経路、(c)グルコサミンを細胞内に輸送する経路、(d)グルコサミン又はグルコサミン−6−リン酸を細胞外に輸送する経路、及び(e)グルコサミン−6−リン酸の産生に関与する基質に対して競合する経路。
【0032】
本発明の方法に有用な遺伝的に修飾された微生物は、一般には、(a)グルコサミン−6−リン酸をその他の化合物に変換できる能力の低下(すなわち、グルコサミン−6−リン酸異化又は同化経路の阻害)、(b)グルコサミン−6−リン酸を生産(すなわち合成)できる能力の増強、(c)グルコサミンを細胞内に輸送できる能力の低下、(d)グルコサミン−6−リン酸又はグルコサミンを細胞外に輸送できる能力の増強、及び/又は(e)グルコサミン−6−Pの産生に関与する基質を競合する生化学的反応に利用できる能力の低下を結果として生ずる、少なくとも一つのアミノ糖代謝経路に関与する、少なくとも一つの修飾された遺伝子を有する。
【0033】
本発明は、商業的に有用な量のグルコサミンを発酵法で生産できる能力(すなわち、好ましくは、同じ条件下で培養された野生型に比して増強された、グルコサミンを生産できる能力)を有する、微生物を用いることを含む方法を開示していることを理解されたい。この方法は、対応する野生型タンパク質に比して変えられた(例えば、増大又は低減された)機能を有するタンパク質の生産(発現)を結果として生ずる、アミノ糖代謝経路に関与するタンパク質をコードしている、一つ又はそれ以上の遺伝子の遺伝的修飾によって達成される。そのような変えられた機能は、遺伝子工学による微生物がグルコサミンを産生できる能力を高める。当業者は、本明細書に別途記載されたような、例えば、実施例に記載された特異的選別の手法によって変えられた、特定の機能(例えば、グルコサミン−6−リン酸を産生できる強化された能力)を有する遺伝的に修飾された微生物の産生は、異なる様々な遺伝的修飾のためではあれ、与えられた機能上の要件を満たす多くの生物を生じ得ることを認識すると思われる。例えば、与えられた核酸配列における、異なる無作為のヌクレオチド欠失及び/又は置換は、すべて、同じ表現型の結果を生じ得る(例えば、前記配列がコードしているタンパク質の作用の低減)。本発明は、本明細書に述べたような特徴性を有する微生物の産生を結果として生ずる、そのようないかなる遺伝的修飾も企図している。
【0034】
様々な微生物について、アミノ糖代謝経路の多くが解明されている。特に、グルコサミン及びN−アセチルグルコサミン、並びにそれらのリン酸化された誘導体の生合成や異化の経路が、Escherichia coliで解明されている。これらの経路は、これらのアミノ糖の
炭素源としての利用のための多重輸送系を包含する。Escherichia coliにおけるアミノ
糖の輸送、異化及び生合成に直接関わる酵素やタンパク質をコードしている遺伝子は、クローニングかつ配列決定されている。加えて、アミノ糖代謝の実質的にあらゆる段階で遮断された、Escherichia coliの突然変異株が単離されている。Escherichia coliについて、アミノ糖代謝の既知の経路を、図1に示す。
【0035】
下記に詳しく考察されるとおり、アミノ糖代謝経路に関与する経路及び遺伝子の多くが、本発明までに解明されてはいるものの、商業的有意量のグルコサミンを産生できる微生物を発生させるのに、可能な多くの遺伝的修飾のうちのいずれが必要であるかは、知られなかった。実際に、本発明こそは、公知のいかなる野生型又は突然変異微生物のグルコサミン産生能もはるかに上回るグルコサミン産生能を有する、グルコサミン産生性微生物を設計かつ加工した最初のものである。本発明者らは、そのような遺伝的に修飾された微生物が、商業的利用のためのグルコサミンを製造する方法に有用であることを認識した最初のものでもある。
【0036】
本発明の発酵法に用いられる微生物は、好ましくは、細菌又は酵母である。より好ましくは、そのような微生物は、エシェリキア属の細菌である。Escherichia coliは、本発
明の発酵法に用いるのに最も好ましい微生物である。Escherichia coliの特に好ましい
菌株は、K−12、B及びW、最も好ましくはK−12を包含する。Escherichia coli
が最も好ましいが、グルコサミンを産生し、グルコサミンの産生を高めるよう遺伝的に修飾することができるいかなる微生物も、本発明の方法に用いることができることを理解されたい。本発明の発酵法に用いるための微生物は、産生生物と称することもできる。
【0037】
微生物であるEscherichia coliのアミノ糖代謝経路は、本発明の具体的な実施態様を
下記に説明する際に取り扱う。その他の微生物、特にその他の細菌も、類似のアミノ糖代謝経路、並びにそのような経路内で類似の構造や機能を有する遺伝子及びタンパク質を有することが認識されよう。その限りで、Escherichia coliに関して下記に考察される原
理は、他の微生物にも適用することが可能である。
【0038】
本発明の一実施態様では、遺伝的に修飾された微生物は、グルコサミン−6−リン酸を合成できる、強化された能力を有する微生物を包含する。本発明によれば、ある産生物を「合成できる、強化された能力」とは、前記産生物の合成に関わるアミノ糖代謝経路における、前記微生物が、同じ条件下で培養された野生型微生物に比して増加した量の前記産生物を産生するような、いかなる増強又はアップレギュレーションも意味する。本発明の一実施態様では、微生物がグルコサミン−6−リン酸を合成できる能力の強化は、グルコース−6−リン酸シンターゼ遺伝子の発現の増幅によって達成されるが、それは、Escherichia coliではglmS遺伝子であって、その産物がグルコサミン−6−リン酸シンタ
ーゼである。グルコサミン−6−リン酸シンターゼは、フルクトース−6−リン酸及びグルタミンがグルコサミン−6−リン酸及びグルタミン酸を形成する反応を触媒する。グルコサミン−6−リン酸シンターゼの発現の増幅は、Escherichia coliでは、例えば、g
lmS遺伝子をコードしている組換え核酸分子の導入によって、達成することが可能である。
【0039】
glmSの過剰発現は、グルコサミン−6−リン酸の細胞内蓄積、及び最終的にはグルコサミンの産生に非常に重要であって、それは、細胞内でのグルコサミン−6−リン酸シンターゼのレベルが、解糖からの、及びグルコサミン−6−リン酸合成への炭素の流れの再指向を制御することになるからである。glmS遺伝子は、Escherichia coli染色体
上の84min に位置し、染色体のこの領域の配列解析は、glmSが、二元機能酵素であるグルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコードしているglmU遺伝子とともに、あるオペロン中に存在することを明らかにしている。グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼは、グルコサミン−6−リン酸が、一連の生化学的反応を通じて高分子へと組み込まれる、アミノ糖代謝経路内で機能する。glmSの上流には、明らかなプロモーター配列が全く検出されず;glmUSオペロンの転写は、glmUの上流の二つのプロモーター配列から開始される。したがって、glmS遺伝子は、人為的プロモーターの制御下でクローニ
ングするのが好ましい。このプロモーターは、充分なレベルのグルコサミン−6−リン酸シンターゼを産生生物中に維持するのに要求されるglmS発現レベルを与えるような、適切ないかなるプロモーターであることもできる。好適なプロモーターは、(誘導可能であるよりも)構成的であるプロモーターであって、それは、高価な誘導物質の添加の必要性が、そのために回避されるからである。そのようなプロモーターは、通常、遺伝的修飾によって、例えば、より弱い、突然変異リプレッサー遺伝子を用いることによって、機能的に構成的にするか、又は「漏出性」にした誘導プロモーター系を含む。glmSとともに用い得る、特に好ましいプロモーターは、lac、λPL 及びT7である。glmSの遺伝子用量(コピー数)は、最大産生物形成の必要条件に応じて変えることが可能である。一実施態様では、組換えglmS遺伝子を、Escherichia coli染色体に組み込む。
【0040】
したがって、例えばE. coli ではglmS遺伝子がコードしている、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸配列を含む、組換え核酸分子で形質転換された微生物、例えばE. coli を提供することは、本発明の一実施態様である。そのような核酸配列を含む、好ましい組換え核酸分子は、アミノ酸配列の配列番号16を含む、グルコサミン−6−リン酸をコードしている核酸配列を含む組換え核酸分子を包含する。本発明のその他の好ましい組換え核酸分子は、配列番号13、配列番号14及び/又は配列番号15の群から選ばれる核酸配列を含む核酸分子を包含する。本発明の特に好ましい組換え核酸分子は、核酸分子のnglmS−282184及び/又はnglmS−281830を含む核酸分子を包含する。本発明の一組換え分子は、本明細書ではpKLN23−28と称して、配列番号13、14及び15を含み、微生物でグルコサミン−6−リン酸シンターゼを発現するのに特に有用である。上記に特定された核酸分子は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼのタンパク質をコードしている、野生型の(すなわち天然に産するか、又は内在性の)核酸配列を含む組換え核酸分子を表わす。相同である(すなわち修飾された、及び/又は突然変異した)グルコサミン−6−リン酸シンターゼのタンパク質をコードしている核酸配列を含む、遺伝的に修飾された核酸分子も、本発明によって包含され、下記に詳しく説明する。
【0041】
Escherichia coliからのグルコサミン−6−リン酸シンターゼの報告されたKmは、フ
ルクトース−6−リン酸及びグルタミンについて、それぞれ、2mM及び0.4mMである。これらは、比較的高い値である(すなわち、その基質に対する酵素の親和力は、かなり弱い)。したがって、その基質に対する親和力が改良された、グルコサミン−6−リン酸シンターゼを有する微生物を提供することは、本発明の別の実施態様である。その基質に対する親和力が改良されたグルコサミン−6−リン酸シンターゼは、適切ないかなる遺伝的修飾又はタンパク質加工の方法によっても製造することが可能である。例えば、コンピュータに基づくタンパク質加工を用いて、その基質に対する、より大きい安定性と、より優れた親和力とを有するグルコサミン−6−リン酸シンターゼタンパク質を設計することが可能である。例えばMaulik et al., 1997, Molecular Biotechnology: Therapeu tic Applications and Strategies, WIley- Liss, Inc. (引用により、その全体
が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0042】
White 〔1968, Biochem. J., 106:847-858〕は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼが、グルコサミン−6−リン酸によって阻害されることを初めて立証した。本発明者らは、この阻害が、商業的利用のために設計された、本発明のグルコサミン産生株におけるグルコサミン蓄積を制限する重要な因子であることを決定した。したがって、グルコサミン−6−リン酸の産生物フィードバック阻害が低下した、グルコサミン−6−リン酸シンターゼを有する微生物を提供することは、本発明の更に別の実施態様である。生産物阻害が低下したグルコサミン−6−リン酸シンターゼは、例えば、突然変異させた(すなわち遺伝的に修飾された)グルコサミン−6−リン酸シンターゼ遺伝子であることができ、適切ないかなる遺伝的修飾法によっても生成することが可能である。例えば、グルコサミン−
6−リン酸シンターゼをコードしている組換え核酸分子を、ヌクレオチドを挿入、削除及び/又は置換するためのいかなる方法によっても、例えばエラー・プローン(error-p rone) PCRによって修飾することが可能である。この方法では
、増幅に用いたDNAポリメラーゼによって、高頻度の誤った取り込みというエラーへと導く条件下で、遺伝子を増幅する。その結果、高頻度の突然変異が、PCR産物中に得られる。この方法は、実施例5に詳しく説明される。そうして、得られるグルコサミン−6−リン酸シンターゼの遺伝子突然変異は、突然変異しなかった組換えグルコサミン−6−リン酸シンターゼの核酸分子を有する微生物に比して、増大されたグルコサミン生成を試験微生物に与える能力について突然変異遺伝子を試験することによって、低下した生産物阻害に対してスクリーニングすることが可能である。グルコサミン−6−リン酸シンターゼの低下した生産物阻害は、一般には、酵素の比活性が、天然に産するグルコサミン−6−リン酸酵素に対して、同じままであるか、又は実際には低下したときでさえ、増大した作用を有するグルコサミン−6−リン酸シンターゼを結果として生ずることに留意しなければならない。したがって、天然に産するグルコサミン−6−リン酸シンターゼに比して、比活性が修飾されないか、又は低減されさえした、増大した作用、及び増大したin vivo 酵素活性を有する、遺伝的に修飾されたグルコサミン−6−リン酸シンターゼを産生することは、本発明の一実施態様である。増大した比活性を有する、遺伝的に修飾されたグルコサミン−6−リン酸シンターゼも本発明によって包含される。
【0043】
したがって、突然変異体又は相同体であるグルコサミン−6−リン酸シンターゼタンパク質をコードしている核酸配列を含む、遺伝的に修飾された組換え核酸分子で形質転換された微生物、例えばEscherichia coliを提供することは、本発明の一実施態様である。
そのようなグルコサミン−6−リン酸シンターゼタンパク質は、本明細書では、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ相同体と称することが可能である。タンパク質相同体は、下記に詳しく説明される。そのような核酸配列を含む、好適な核酸分子は、配列番号19、配列番号22、配列番号25、配列番号28及び/又は配列番号31の群から選ばれるアミノ酸配列を含む、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸配列を含む組換え核酸分子を包含する。その他の好適な組換え核酸分子は、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、配列番号29及び/又は配列番号30の群から選ばれる核酸配列を含む。本発明に有用な、特に好適な、遺伝的に修飾された組換え核酸分子は、nglmS−492184、nglmS−491830、nglmS−542184、nglmS−541830、nglmS−1242184、nglmS−1241830、nglmS−1492184、nglmS−1491830、nglmS−1512184及びnglmS−1511830の群から選ばれる核酸分子を含む、核酸分子を包含する。プラスミドpKLN23−49、pKLN23−54、pKLN23−124、pKLN23−149及びpKLN23−151は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ相同体を微生物で発現するのに特に有用である、本発明の組換え核酸分子である。
【0044】
グルタミン(Gln)の適切な細胞内供給は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ反応に決定的に重要である。グルコサミン−6−リン酸についての合成及び分解経路の検分は、フルクトース−6−リン酸とグルコサミン−6−リン酸との継続的な相互変換がグルタミンの無駄の多い枯渇を結果として生ずる、潜在的な無益回路の存在を明らかにしている。本発明の一実施態様では、グルタミンの供給を、細胞内でのグルタミン産生を増大させるための産生生物の遺伝的修飾、又は発酵培地の修飾(すなわち、発酵培地へのグルタミンの添加)のいずれかによって増加させて、グルタミンの供給が、グルコサミン−6−リン酸の産生を制約しないことを確保することが可能である。
【0045】
本発明の別の実施態様では、フルクトース−6−リン酸とグルコサミン−6−リン酸との潜在的な無益回路に、グルコサミン−6−リン酸がフルクトース−6−リン酸に変換さ
れる逆反応を阻害又は遮断することによって対処する。この実施態様では、微生物を、この変換を触媒する、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼの遺伝子、すなわちEscherichia coliではnagB遺伝子である遺伝子が不活性化又は欠失を有するよう、遺伝的に
修飾する。nagBは、nagレギュロンの一部であるいくつかのnag遺伝子の一つである。グルコサミン及びN−アセチルグルコサミンの分解に関与するnag遺伝子は、Escherichia coli染色体上の15min に位置するレギュロンとして存在する。別の実施態
様では、nagレギュロン全体を不活性化又は削除する。nagレギュロン全体を削除することの利点は、下記に詳しく考察する。
【0046】
上記に考察したとおり、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの過剰産生は、フルクトース−6−リン酸合成からグルコサミン−6−リン酸合成への分岐を結果として生ずる。しかし、他の多くの酵素が、基質であるフルクトース−6−リン酸を求めて競合する。したがって、本発明の一実施態様は、これらの競争的副反応が遮断された微生物を包含する。好適実施態様では、ホスホフルクトキナーゼをコードしている遺伝子が完全にか、又は部分的に不活性化された微生物を提供する。解糖経路における第二段階は、Escherichia
coliでは、pfkA及びpfkB遺伝子によってコードされる二つのアイソザイムとして存在する、ホスホフルクトキナーゼによるフルクトース−6−リン酸からフルクトース−1,6−二リン酸への変換である。pfkA又はpfkB遺伝子のいずれかの完全若しくは部分的不活性化は、解糖経路へのフルクトース−6−リン酸の進入を減速し、フルクトース−6−リン酸からグルコサミン−6−リン酸への変換を増大させる。本明細書に用いられる限りで、遺伝子の不活性化とは、そのような遺伝子の活性(すなわち発現又は機能)の、活性の減衰、又は活性の完全な欠如を包含する低下を結果として生ずる、遺伝子のいかなる修飾も意味することが可能である。
【0047】
本発明の更に別の実施態様では、遺伝的に修飾された微生物は、グルコサミン−6−リン酸を他の化合物に変換できる能力が低下している。上記のとおり、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼの不活性化は、一つのそのような修飾を表わすが、グルコサミン−6−リン酸は、他の生化学的反応の基質として働く。Escherichia coliにおけるリポ多糖
類及びペプチドグリカンのような高分子の産生へと導く経路に関わる第一の段階は、Escherichia coliではglmM遺伝子の産物である、ホスホグルコサミンムターゼによる、
グルコサミン−6−リン酸からグルコサミン−1−リン酸への変換である。リポ多糖類及びペプチドグリカン生合成の経路へのこの酵素活性の関与は、glmM遺伝子のクローニングにより、最近確認された。そのため、glmM遺伝子の調節、及びその同族産物であるホスホグルコサミンムターゼは、詳しく研究されていない。しかし、ホスホグルコサミンムターゼは、研究されたその他すべてのヘキソースリン酸ムターゼという酵素と同様に、リン酸化によって調節されることが示されている。酵素レベルでのこの種の調節は、一般には、経路の最終産物のレベルに強い感受性を有する。そのため、ホスホグルコサミンムターゼを介しての炭素流は、自己調節的であり、グルコサミン−6−リン酸が蓄積する際に問題となることはないと思われる。しかし、glmM遺伝子の配列は公知であるため、ホスホグルコサミンムターゼをコードしている遺伝子が妨害又は削除されている微生物を提供することは、本発明の好適実施態様である。より好ましくは、ホスホグルコサミンムターゼをコードしている遺伝子は、突然変異によってダウンレギュレートされているが、完全には不活性化されていないため、細胞エンベロープの死活的に重要な構成要素の生合成を完全には遮断しない。
【0048】
グルコサミン−6−リン酸から別の化合物への変換を結果として生ずる、別の経路は、酵素のN−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼによって触媒される。N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼは、グルコサミン−6−リン酸(加うるにアセチルCoA)からN−アセチルグルコサミン−6−リン酸への変換の逆反応を触媒することが可能である。これは、グルコサミン−6−リン酸及びN−アセチルグルコサ
ミン−6−リン酸の無益回路を結果として生ずることになり、グルコサミン及びN−アセチルグルコサミンの混合物で構成される生成物を生じかねない。したがって、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼをコードしている、Escherichia coliでは
nagA遺伝子である遺伝子が不活性化された、遺伝的に修飾された微生物を提供することは、本発明の更に別の実施態様である。
【0049】
微生物におけるグルコサミンの輸送系を不活性化する結果、グルコサミンが細胞によって分泌されたならば、取り込まれないようにすることは、本発明の更に別の実施態様である。この修飾は、細胞に対して有毒であり得る、グルコサミンの高い細胞内レベルを回避するのに役立ち、生成物が細胞外に存続することから、その回収を容易にする。本発明の好適実施態様では、グルコサミンの輸送系を不活性化して、それが微生物によって分泌されたならば、グルコサミンを微生物の外部に保つ。唯一の炭素源としてのグルコサミンによるEscherichia coliの増殖の際、グルコサミンは、PEP:マンノースホスホトラン
スフェラーゼ(PTS)系によって細胞内に輸送されるが、これは、グルコサミンを細胞内に輸送できるばかりでなく、グルコサミンによって誘導もされる。したがって、グルコサミンを細胞内に輸送できる能力を欠く微生物を提供することは、本発明の一実施態様である。例えば、manXYZ突然変異株(すなわち、PEP:マンノースPTSのEIIM,P/IIIManをコードしている遺伝子を欠くか、又は突然変異を有するEscherichia coli)は、この機序によってグルコサミンを細胞内に輸送することができない。一方、Escherichia coliのPEP:グルコースPTSは、グルコースとグルコサミンとの双方を細胞内に輸送することができるが、グルコサミンは、この系を誘導することができない。そのため、manXYZ突然変異株をグルコサミンで増殖させるには、第一に、細胞を、グルコースで増殖させて、(代替的な)グルコース輸送系の発現を誘導し、グルコース(好適な炭素源)を細胞内に輸送させなければならない。そうして、これらの誘導された細胞は、グルコース輸送体を経由して、グルコサミンを細胞内に輸送できるようになる。類似の状況は、PEP:フルクトースPTSによるグルコサミンの輸送についても存在するが、この場合は、酵素IIFru によるグルコサミン輸送は、僅かである。これらの二次的なグルコサミン輸送経路を阻害する方法は、下記に考察する。(上記の)PEP:グルコースPTSにおける機能が低下した微生物を提供することは、本発明の更に別の実施態様である。そのような修飾は、培養培地からのグルコサミンの「再吸収」を回避するのに必要であり得る。例えば、ptsG突然変異体(すなわち、PEP:グルコースPTSの酵素IIGlc をコードしている遺伝子を欠くか、又は突然変異を有するEscherichia coli)がそ
うである。そのような微生物は、グルコースを炭素源として用いて増殖できる能力が低下していると思われるため、そのような生物は、PEP:グルコースPTS非依存性の機序によってグルコースを取り込むように、更に遺伝的に修飾することが可能である。例えば、PEP:グルコースPTSに欠陥を有するが、グルコースで増殖できる能力を依然として有する、突然変異微生物を選別できることが示されている〔Flores et al., 1996, Nature Biotechnology 14:620-623〕。
【0050】
Escherichia coliのnagレギュロンのDNA配列決定は、次のことを明らかにして
いる。すなわち、nagE遺伝子は、細胞内へのグルコサミン輸送に関与する、PEP糖ホスホトランスフェラーゼ(PTS)系のN−アセチルグルコサミン特異酵素IINag というタンパク質をコードしていて、前記レギュロンの一方の腕に存在し、その他方の腕に位置する別のnag遺伝子(nagBACD)から分岐して転写される。したがって、Escherichia coliの、グルコサミンを細胞内に輸送できる能力の低下を結果として生ずるよ
うな別の遺伝的修飾は、nagE遺伝子、又は本発明の方法に用いられるいかなる微生物でも類似の酵素をコードしている、遺伝子の不活性化若しくは欠失である。
【0051】
上記に考察したとおり、本発明の一実施態様では、本発明の方法に有用な、遺伝的に修飾されたEscherichia coliという微生物は、nagレギュロン全体が欠失している。染
色体上のnagレギュロン全体の欠失は、グルコサミン−6−リン酸の産生に不都合な多くの遺伝子がまとめて不活性化されるため、好ましい。遺伝子nagA、nagB及びnagEは、上記に詳しく考察した。nagC遺伝子は、nagレギュロンのリプレッサーとしてばかりでなく、glmUSオペロンのアクチベーターとリプレッサーとの双方としても作用する、調節タンパク質をコードしている。glm遺伝子類は、上記に詳しく考察した。nagD遺伝子の機能は、知られていないが、nagレギュロン内に存在するため、アミノ糖代謝に関係すると考えられる。したがって、Escherichia coliでは、nag
レギュロンの完全な欠失は、Escherichia coliの、グルコサミンを過剰産生するよう設
計された菌株における初期細胞内産物(グルコサミン−6−リン酸)の異化を回避する。nagレギュロンの欠失がある、好適なEscherichia coli突然変異株は、ΔnagEB
ACD::tcの欠失/挿入を有するEscherichia coliである。
【0052】
glmUSオペロンの活性化(nagCの一機能)に関しては、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしているglmS遺伝子の活性化が望ましいものの、glmU遺伝子産物、すなわちグルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼのレベルの上昇は、細胞エンベロープ構成要素への炭素流の吸収へと導きかねないため、グルコサミン−6−リン酸の蓄積に対して不都合である。したがって、本発明の方法に有用な微生物において、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼを不活性化することは、本発明の一実施態様である。glmUSオペロン又はその等価体が不活性化又は削除された微生物で、微生物内の人為的プロモーターの制御下で、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている遺伝子を組換えにより生成することによって、微生物を遺伝的に修飾することは、本発明の更に別の実施態様である。
【0053】
本明細書に記載の遺伝的に修飾された微生物における初期細胞内産物は、グルコサミン−6−リン酸である。Escherichia coliを包含する多くの微生物では、グルコサミン−
6−リン酸は、一般には、細胞外への輸送以前にグルコサミンへと脱リン酸される。にもかかわらず、グルコサミン−6−リン酸からグルコサミンへの変換に適するホスファターゼ活性を有するよう、遺伝的に修飾された微生物を提供することは、本発明の更に別の実施態様である。そのようなホスファターゼは、例えば、アルカリ性ホスファターゼを包含するが、これらに限定されない。好適実施態様では、そのようなEscherichia coliは、
ホスファターゼ活性のレベル(すなわちホスファターゼの作用)が上昇して(すなわち増強され)ている。
【0054】
上記に指摘したとおり、本発明のグルコサミンの製造法では、遺伝的に修飾されたアミノ糖代謝経路を有する微生物を、グルコサミンの製造のための発酵培地で培養する。適切な、又は効果的な発酵培地とは、本発明の遺伝的に修飾された微生物が、培養されたときグルコサミンを産生することができる、いかなる培地をも意味する。そのような培地は、一般には、同化できる炭素、窒素及びリン酸源を含む水性培地である。そのような培地は、適切な塩類、無機物、金属その他の栄養素も含む。本明細書に記載の微生物に対する遺伝的修飾の一つの利点は、そのような遺伝的修飾は、アミノ糖の代謝を有意に修飾するが、産生生物のための栄養上のいかなる必要条件も創出しないことである。したがって、唯一の炭素源としてグルコースを含有する、最小塩類培地を発酵培地として用いるのが好ましい。グルコサミン発酵に最小塩類−グルコース培地を用いることは、グルコサミン産生物の回収及び精製も容易にする。
【0055】
本発明の微生物は、慣用の発酵バイオリアクター内で培養することが可能である。微生物は、回分培養、流加培養、細胞再循環及び連続発酵を包含するが、これらに限定されない、いかなる発酵法によっても培養することが可能である。好ましくは、本発明の微生物
は、回分培養又は流加培養発酵法によって増殖させる。
【0056】
本発明の一実施態様では、接種の前に、発酵培地を、望みの温度、一般には約20〜約40℃、好ましくは約25〜約40℃に到達させるが、約28〜約37℃、ある実施態様では約30〜約37℃の温度が、より好ましい。本発明者らは、T7−lacプロモーターの制御下の核酸分子でトランスフェクションされた、本発明の微生物におけるグルコサミン産生(実施例の項を参照されたい)は、微生物を30℃で培養したときは、増殖が停止した後も継続されるが、37℃では、増殖とグルコサミン産生とが、同調して生じることを発見した。37℃での増殖は、30℃でより僅かに良好であるが、30℃でのグルコサミン産生は、37℃でよりも有意に良好である。本発明の微生物による増殖及びグルコサミン産生に最適な温度は、様々な要因に応じて変動できることに注目されたい。例えば、微生物における組換え核酸分子の発現のための特定のプロモーターの選択は、最適培養温度に影響する。当業者は、標準的手法、例えば、本発明の一微生物に関する実施例の項に記載されたものを用いて、本発明のいかなる微生物についても、最適な増殖及びグルコサミン産生温度を容易に決定することが可能である。
【0057】
培地には、遺伝的に修飾された微生物の活発に増殖する培養体を、妥当な増殖期間後に、高い細胞密度を生じるのに充分な量で接種する。細胞は、約10g/l
以上、好ましくは約10〜約40g/l 、より好ましくは約40g/l 以上の細胞密度まで増殖させる。この工程は、一般には、約10〜約60時間を要する。
【0058】
発酵の過程の際は、充分な酸素を培地に加えて、初期細胞増殖の際の細胞増殖を維持し、代謝及びグルコサミン産生を維持しなければならない。酸素は、好都合には、培地のかき混ぜ及び通気によって与える。慣用の方法、例えば攪拌及び振盪を用いて、培地をかき混ぜ、かつ通気してよい。好ましくは、培地中の酸素濃度は、飽和値(すなわち、大気圧及び約30〜40℃での培地中の酸素の溶解度)の約15%より大きく、より好ましくは飽和値の約20%より大きいが、発酵が不都合に影響されなければ、より低い濃度への逸脱が生じてもよい。培地の酸素濃度は、例えば酸素電極による、慣用の方法によって監視することが可能である。その他の酸素源、例えば希釈されない酸素ガス、及び窒素以外の不活性気体で希釈した酸素ガスを用いることが可能である。
【0059】
発酵によるグルコサミンの製造は、好ましくは、グルコースを唯一の炭素源として用いることに基づくため、好適実施態様では、Escherichia coliに、PEP:グルコースP
TSが誘導されることになる。したがって、PEP:マンノースPTSの機能的なEIIM,P/IIIManの不在下でさえ(例えば、manXYZ突然変異を有するEscherichia coliで)、生成物、すなわちグルコサミンは、依然として、細胞によって、誘導されたグ
ルコース輸送系を経由して取り込まれることになる。しかし、過剰なグルコースの存在下では、グルコサミンの取り込みは、強く抑制される。したがって、発酵バイオリアクター内に過剰量のグルコースを保つことによって、グルコサミンという生成物の取り込みを妨げることは、本発明の一実施態様である。本明細書に用いられる限りで、「過剰量の」グルコースとは、正常な条件、例えば上記の培養条件下で微生物の増殖を維持するのに要するそれを上回る量のグルコースを意味する。好ましくは、グルコース濃度は、発酵培地の約0.5〜約5重量/体積%の濃度に保つ。別の実施態様では、グルコース濃度は、発酵培地の約5〜約50g/l 、はるかに好ましくは発酵培地の約5〜約20g/l の濃度に保つ。一実施態様では、発酵培地のグルコース濃度は、適切ないかなる方法(例えばグルコース試験片の使用)によっても監視し、グルコース濃度が、枯渇に至ったか、又は近いときは、追加のグルコースを培地に加えることが可能である。別の実施態様では、グルコース濃度は、発酵培地の半連続的又は連続的な供給によって保つ。グルコースについて本明細書に開示されたパラメータは、本発明の発酵培地に用いられるいかなる炭素源にも適用することが可能である。炭素源は、それがグルコサミン産生工程を増強するならば、発酵の
際の適切ないかなる量の時間でも検出不能レベルに到達させ得るということも、更に理解される。
【0060】
グルコサミンの産生を産生生物によって維持及び/又は増強する必要に応じて、発酵培地のその他の成分及びパラメータを補強かつ/又は制御することは、本発明の更に別の実施態様である。例えば、一実施態様では、発酵培地は、硫酸アンモニウムを含み、培地中の硫酸アンモニウム濃度は、過剰な硫酸アンモニウムの追加によって補強する。好ましくは、硫酸アンモニウムの量は、発酵培地中に約0.1〜約1%(重量/体積)、好ましくは約0.5%のレベルに保つ。更に別の実施態様では、発酵培地のpHは、pHの変動について追跡する。本発明の発酵法では、pHは、好ましくは、約pH6.0〜約8.0、より好ましくは約pH7.0のpHに保つ。本発明の方法では、発酵培地の出発pHがpH7.0であるならば、前記発酵培地のpHは、pH7.0からの重大な変動について追跡し、例えば水酸化ナトリウムの添加によって、しかるべく調整する。
【0061】
本発明の更に別の実施態様は、炭素流束を、酢酸塩生産から、より無害な副生物の生産へと再指向させることである。そのような方法によって、発酵培地中の過剰量のグルコースに付随する毒性の問題を、回避することが可能である。炭素流束を酢酸塩生産から、より無害な副生物へと再指向させる方法は、当技術に公知である。
【0062】
本発明の回分発酵法では、発酵は、グルコサミンの形成が、細胞外グルコサミンの蓄積が証拠立てるとおりに、基本的に停止するまで継続する。全発酵時間は、一般には、約40〜約60時間、より好ましくは約48時間である。連続発酵法では、グルコサミンを、それが培地中に蓄積されるにつれてバイオリアクターから除去することが可能である。本発明の方法は、細胞内及び細胞外グルコサミン−6−リン酸、並びに細胞内又は細胞外グルコサミンを含む、生成物の産生を結果として生ずる。
【0063】
本発明の方法は、細胞内グルコサミン−6−リン酸又は細胞外グルコサミンであり得る生成物を回収することを更に包含する。語句「グルコサミンを回収すること」とは、単に、生成物を発酵バイオリアクターから捕集することを意味し、必ずしも分離又は精製の追加的工程を含意しない。例えば、回収する工程は、培養体全体(すなわち微生物及び発酵培地)をバイオリアクターから取り出すこと、細胞外グルコサミンを含有する発酵培地を、バイオリアクターから取り出すこと、かつ/又は細胞内グルコサミン−6−リン酸を含有する微生物を、バイオリアクターから取り出すことを意味し得る。これらの工程の後に、精製工程を更に実施することが可能である。グルコサミンは、好ましくは、実質的に純粋な形態で回収する。本明細書に用いられる限りで、「実質的に純粋な」とは、グルコサミンの、商業的販売用の栄養剤化合物としての有効な使用に堪える純度を意味する。一実施態様では、グルコサミン生成物を、好ましくは、産生生物その他の発酵培地成分から分離する。そのような分離を達成する方法を、下記に説明する。
【0064】
好ましくは、本発明の方法によって、少なくとも約1g/l の生成物(すなわちグルコサミン及び/又はグルコサミン−6−リン酸)を、微生物及び/又は発酵培地から回収する。より好ましくは、本発明の方法によって、約5g/l 以上、はるかに好ましくは約10g/l 以上、更に好ましくは約20g/l 以上、なお更に
好ましくは約50g/l 以上の生成物を回収する。一実施態様では、グルコサミン生成物は、約1〜約50g/l の量で回収する。
【0065】
一般には、本発明の方法で製造されるグルコサミンのほとんどは、細胞外性である。微生物は、慣用の方法、例えば濾過又は遠心分離によって、発酵培地から除去することが可能である。一実施態様では、生成物を回収する工程は、発酵培地からのグルコサミンの精製を包含する。グルコサミンは、慣用の方法、例えばクロマトグラフィー、抽出、晶出(
例えば蒸発晶出)、膜分離、逆浸透及び蒸留によって、無細胞発酵培地から回収する。好適実施態様では、グルコサミンは無細胞発酵培地から晶出によって回収する。別の実施態様では、生成物を回収する工程は、細胞外グルコサミンを濃縮する工程を包含する。
【0066】
一実施態様では、グルコサミン−6−リン酸は、細胞内に蓄積し、生成物を回収する工程は、グルコサミン−6−リン酸を微生物から単離することを包含する。例えば、グルコサミン生成物を分解しない方法によって、微生物の細胞を溶菌させ、溶解物を遠心分離して、不溶性の細胞砕片を除去し、次いで、上記のような慣用の方法によってグルコサミン及び/又はグルコサミン−6−リン酸である生成物を回収することによって、生成物を回収することが可能である。
【0067】
本明細書に記載の遺伝的に修飾された微生物中の当初の細胞内産物は、グルコサミン−6−リン酸である。リン酸化された中間体は、微生物からの輸出の際に、最もあり得ることには、微生物の周辺腔にアルカリ性ホスファターゼが存在するために、脱リン酸されることが一般的に認容されている。本発明の一実施態様では、グルコサミン−6−リン酸は、望みの生成物、すなわちグルコサミンの産生を容易にするために、天然に産するホスファターゼによって、細胞からの輸出の前又は間に脱リン酸される。この実施態様では、組換えによって与えられた細胞内のホスファターゼ活性の増幅、又はホスファターゼによる発酵培地の処理の必要性は、除外される。別の実施態様では、産生生物内のホスファターゼのレベルは、内因性ホスファターゼ遺伝子の遺伝的修飾、又は微生物の、ホスファターゼ遺伝子を発現させる組換えによる修飾を包含するが、これらに限定されない方法によって上昇させる。更に別の実施態様では、回収された発酵培地を、グルコサミン−6−リン酸が培地に放出された後、例えば上記のように細胞を溶菌させたときに、ホスファターゼで処理する。
【0068】
上に特筆したとおり、本発明の方法は、有意量の細胞外グルコサミンを製造する。特に、前記方法は、細胞外グルコサミンを製造する結果、全グルコサミンの約50%より多くが細胞外性であり、より好ましくは全グルコサミンの約75%より多く、最も好ましくは全グルコサミンの約90%より多くが細胞外性である。本発明の方法によって、約1g/l より多い、より好ましくは約5g/lより多い、はるかに好ましくは約10g/l より多い、
更に好ましくは約20g/l より多い
、なお更に好ましくは約50g/l より多い、細胞外グルコサミン濃縮物の製造を達成することが可能である。
【0069】
本発明の一実施態様は、発酵によってグルコサミンを製造する方法であって、(a)アミノ糖代謝経路が遺伝的に修飾されたEscherichia coliを、炭素、窒素及びリン酸の同
化できる供給源を含む発酵培地で培養して、生成物を生成する工程と、(b)前記生成物を前記発酵培地から回収する工程とを含む方法に関する。前記生成物は、Escherichia coliから回収される、細胞内グルコサミン−6−リン酸、及び/又は発酵培地から回収さ
れる細胞外グルコサミンを包含する。
【0070】
本発明の一実施態様は、生合成の方法によってグルコサミンを製造するための微生物に関する。前記微生物は、転写調節配列に機能的に結合された、グルコサミン−6−リン酸をコードしている組換え核酸分子で形質転換される。前記組換え核酸分子は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼのグルコサミン−6−リン酸生成物阻害を低下させる、遺伝的修飾を有する。前記組換え核酸分子の発現は、前記微生物によるグルコサミン−6−リン酸シンターゼの発現を増大する。好適実施態様では、組換え核酸分子は、微生物のゲノムに組み込まれている。更に別の実施態様では、微生物は、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ、N−アセチルグルコサミン特異酵素IINag 、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチ
ルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、PEP:グルコースPTSの酵素IIGlc 、PEP:マンノースPTSのEIIM,P/IIIMan、及び/又はホスファターゼの群から選ばれるタンパク質をコードしている遺伝子の、少なくとも一つの追加的な遺伝的修飾を有する。前記遺伝的修飾は、その作用が好ましくは増大されているホスファターゼの場合以外は、タンパク質の作用を軽減する。別の好適実施態様では、微生物は、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ及びN−アセチルグルコサミン特異酵素IINag をコードしている遺伝子に、タンパク質の作用を軽減する遺伝的修飾を有する。一実施態様では、前記遺伝的変更は、遺伝子の少なくとも一部の欠失である。
【0071】
好適実施態様では、遺伝的に修飾された微生物は、細菌又は酵母、より好ましくはエシェリキア属の細菌、はるかに好ましくはEscherichia coliである。遺伝的に修飾されたEscherichia coliは、好ましくは、nagA、nagB、nagC、nagD、nagE、manXYZ、glmM、pfkB、pfkA、glmU、glmS、ptsG又はホスファターゼ遺伝子を包含するが、これらに限定されない遺伝子に修飾を有する。別の実施態様では、そのような遺伝的に修飾されたEscherichia coliは、nagレギュロン遺
伝子の欠失を有し、更に別の実施態様では、nagレギュロン遺伝子の欠失、及びmanXYZ遺伝子の遺伝的修飾を有するため、manXYZ遺伝子がコードしているタンパク質は、軽減された作用を有する。
【0072】
本発明の更に別の実施態様は、生合成の方法によってグルコサミンを生成するための微生物であって、転写調節配列に機能的に結合された、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている組換え核酸分子を有し;N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼ、グルコサミン−6−リン酸デアミナーゼ、N−アセチルグルコサミン特異酵素IINag 、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ−N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、PEP:グルコースPTSの酵素IIGlc 及び/又はPEP:マンノースPTSのEIIM,P/IIIManの群から選ばれるタンパク質をコードしている遺伝子に、少なくとも一つの遺伝的修飾を有する微生物に関する。前記遺伝的修飾は、前記タンパク質の作用を軽減し、前記組換え核酸分子の発現は、微生物によるグルコサミン−6−リン酸シンターゼの発現を増大する。別の実施態様では、微生物は、ホスファターゼ遺伝子に、そのような遺伝子によってコードされているホスファターゼが増大された作用を有するような、少なくとも一つの遺伝的修飾を有する。好適実施態様では、組換え核酸分子は、微生物のゲノムに組み込まれている。
【0073】
本発明の別の実施態様は、14g/l のK2 HPO4 、16g/l のKH2 PO4 、1g/l のクエン酸Na3・2H2 O、5g/l の(NH4 2 SO4 、20g/l のグルコース、1
0mMのMgSO4 、1mMのCaCl2 、及び1mMのIPTGを含むpH7.0の発酵培地で、乾燥細胞重量で少なくとも約8g/l の細胞密度まで、37℃で約24時間培養したときに、少なくとも約1g/l のグルコサミンを産生する、上記の微生物のいずれにも関する。
【0074】
本発明のより好ましい実施態様は、14g/l のK2 HPO4 、16g/l のKH2 PO4 、1g/l のクエン酸Na3・2H2 O、5g/l の(NH4 2 SO4 、20g/l のグルコ
ース、10mMのMgSO4 、1mMのCaCl2 、及び約0.2〜約1mMのIPTGを含むpH7.0の発酵培地で、乾燥細胞重量で少なくとも約8g/l の細胞密度まで、約28〜約37℃で約10〜約60時間培養したときに、少なくとも約1g/l のグルコサミンを産生する、上記の微生物のいずれにも関する。好適実施態様では、IPTGの量は、約0.2mMである。
【0075】
本発明の更に別の実施態様は、本明細書に記載の培養条件下で培養したとき、少なくとも約1g/l 、好ましくは約5g/l 以上、より好ましくは約10g/l 以上、はるかに好ましくは約20g/l 以上、なお更に好ましくは約50g/l 以上のグルコサミン及び/又はグルコサミン−6−リン酸を産生する、上記の遺伝的に修飾された微生物のいずれにも関する。本発明の別の実施態様は、前記遺伝的に修飾された微生物と同じ条件下で培養された、野生型の(すなわち修飾されていない、天然に産する)微生物より、約2倍以上多くのグルコサミン及び/又はグルコサミン−6−リン酸、好ましくは約5倍以上、より好ましくは約10倍以上、より好ましくは約25倍以上、より好ましくは約50倍以上、はるかに好ましくは約100倍以上、はるかに好ましくは約200倍以上多くのグルコサミン及び/又はグルコサミン−6−リン酸シンターゼを産生する、上記の遺伝的に修飾された微生物のいずれにも関する。具体的な微生物の多くは、実施例の項で同定する。本発明の追加の実施態様は、これらの微生物、及び実施例中に具体的に同定された微生物の、検索特徴を有する微生物を包含する。そのような微生物は、好ましくは、酵母又は細菌、より好ましくは細菌、最も好ましくはE. col i であ
る。そのような検索特徴は、実施例中の微生物の、グルコサミンを産生できる能力を包含する、いずれ又はすべての遺伝子型及び/若しくは表現型上の特徴性を包含することが可能である。
【0076】
本発明の好適な微生物は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている組換え核酸分子で形質転換された、Escherichia coliの菌株を包含する。好ましくは、その
ような核酸分子は、微生物のゲノムに組み込まれている。特に好ましい微生物は、Escherichia coli2123−12株である。2123−12株は、そのゲノムに、配列番号1
5の核酸配列を含む組換え核酸分子を有し、前記配列は、配列番号16のアミノ酸配列を有する、野生型の(すなわち正常で修飾されていないか、又は天然に産する)グルコサミン−6−リン酸シンターゼの酵素のコーディング領域を表わす。本発明の特に好ましい微生物は、前記シンターゼが増大された(上記の)作用を有するように遺伝的に修飾された、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸配列を含む、核酸分子で形質転換される。最も好ましくは、そのような遺伝的修飾は、グルコサミンを産生できる微生物の能力を、そのような核酸分子で形質転換されなかった微生物に比して高める。本発明の特に好ましい、遺伝的に修飾された微生物は、実施例の項に記載され、E. coli 2123−49、2123−54、2123−124、2123−149及び2123−151株を包含する。
【0077】
遺伝的修飾によってグルコサミンを産生できる能力が強化された、微生物の発生は、古典的な菌株発生と分子遺伝学的手法との双方を用いて達成することが可能である。一般的には、グルコサミン産生が増強された微生物を創出するための方策は、(1)グルコサミン−6−リン酸の産生が否定的に影響される(例えば阻害される)アミノ糖代謝経路の少なくとも一つ、好ましくは二つ以上を不活性化又は欠失させ、(2)グルコサミン−6−リン酸の産生が増強されるアミノ糖代謝経路の少なくとも一つ、好ましくは二つ以上を増幅することである。その限りで、本発明の遺伝的に修飾された微生物は、(a)グルコサミン−6−リン酸を他の化合物へと変換する能力が低下し(すなわち、グルコサミン−6−リン酸の異化又は同化経路の阻害)、(b)グルコサミン−6−リン酸を産生する(すなわち合成する)能力が強化され、(c)グルコサミンを細胞内に輸送する能力が低下し、(d)グルコサミン−6−リン酸若しくはグルコサミンを細胞外に輸送する能力が強化され、かつ/又は(e)グルコサミン−6−リン酸の産生に関与する基質を、競合する生化学的反応に用いる能力が低下している。
【0078】
本明細書に以前に考察したとおり、一実施態様では、遺伝的に修飾された微生物は、そのような修飾が望みの効果を前記微生物内に与えるようにして、核酸分子が、例えばヌクレオチドの挿入、欠失、置換及び/又は逆位によって、削除、挿入又は修飾された微生物
であることが可能である。そのような遺伝的修飾は、何らかの実施態様では、望みの効果を前記微生物内に与える、タンパク質のアミノ酸配列中の、挿入、欠失、置換のようなアミノ酸の修飾を結果として生ずる、核酸分子によってコードされているタンパク質に対するコーディング領域内に存在することが可能である。遺伝的に修飾された微生物は、組換え技術によって、例えば微生物への単離された核酸分子の導入によって、修飾することが可能である。例えば、遺伝的に修飾された微生物は、目的のタンパク質、例えばその発現の増大が望まれるタンパク質をコードしている組換え核酸分子をトランスフェクションすることが可能である。トランスフェクションされた核酸分子は、染色体外に留まることができるか、或いはトランスフェクションされた(すなわち組み換えられた)宿主細胞の染色体内の一つ又はそれ以上の部位に、発現されるその能力が保持されるようにして、組み込むことが可能である。好ましくは、本発明の宿主細胞に核酸分子をトランスフェクションさせたならば、核酸分子は、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。組み込むことの有意義な利点は、核酸分子が、細胞内に安定的に維持されることである。好適実施態様では、組み込まれた核酸分子は、前記核酸分子の発現を制御するために誘導することができる、転写調節配列(下記に説明する)に機能的に結合される。
【0079】
核酸分子は、無作為か、又は照準されるかのいずれかの組み込みによって、宿主細胞のゲノムに組み込むことが可能である。そのような組み込みの方法は、当技術に公知である。例えば、実施例2に詳しく説明されるとおり、E. coli のATCC47002株(表1)は、ColE1という複製起点を含むプラスミドを維持できない無能力をその際に与える突然変異を有する。そのようなプラスミドをこの菌株に移転したとき、前記プラスミドに含まれる遺伝的標識形質についての選別は、結果として染色体へのプラスミドの組み込みを生ずる。この菌株は、例えば、目的の遺伝子と、E. coli lacZ遺伝子の5′−及び3′−末端に挟まれた、選別できる指標とを有するプラスミドで形質転換することが可能である。lacZ配列は、進入DNAを、染色体に含まれるlacZ遺伝子に照準させる。lacZ遺伝子座での組み込みは、酵素β−ガラクトシダーゼをコードしている健全lacZ遺伝子を、問題の遺伝子によって中断された部分的lacZ遺伝子に置き換える。成功した組込み体は、β−ガラクトシダーゼに陰性であることで選別することが可能である。遺伝的に修飾された微生物は、ある方法、例えば、形質導入用バクテリオファージを用いることによって、受容体細胞ゲノムに核酸分子を導入することによっても形成することが可能である。組換え技術及び形質導入用バクテリオファージ技術を用いて、本発明の遺伝的に修飾された、異なるいくつかの微生物を形成することは、当技術に公知であり、実施例の項で詳しく説明する。本発明によれば、遺伝子、例えばpstG遺伝子は、天然のpstG遺伝子に関連するすべての核酸配列、例えば、この遺伝子がコードしているpstGタンパク質(PEP:グルコースPTSの酵素IIGlc )の生産を制御する調節領域(例えば、しかし限定はしないが、転写、翻訳又は翻訳後制御領域)はもとより、コーディング領域自体も含む。別の実施態様では、遺伝子、例えばpstG遺伝子は、与えられたpstG遺伝子をコードしている核酸配列に類似するが、同一ではない配列を含む、対立遺伝子変種(すなわち、天然に産する対立遺伝子変種)であることが可能である。与えられた核酸配列を有するpstG遺伝子の対立遺伝子変種は、ゲノム中の、前記与えられた核酸配列を有する遺伝子と基本的には同じ遺伝子座(又は複数の座)に発生するが、例えば突然変異又は組換えによって生じた自然変異のために、類似するが同一ではない配列を有する遺伝子である。対立遺伝子変種は、一般には、比較しようとする遺伝子がコードしているタンパク質のそれに類似する活性を有する、タンパク質をコードしている。対立遺伝子変種は、前記遺伝子の5′又は3′非翻訳領域(例えば調節制御領域)における修飾も含む。対立遺伝子変種は、当業者には周知であり、与えられた微生物、例えばE. coli 内に、及び/又は2種類若しくはそれ以上の微生物の群のうちに見出されると予測されるものと思われる。
【0080】
語句「核酸分子」は、物理的な核酸分子を主として意味し、語句「核酸配列」は、核酸
分子上のヌクレオチドの配列を主として意味するが、二つの語句は、特に、アミノ糖代謝経路に関与する遺伝子をコードできる核酸分子又は核酸配列に関しては、相互可換的に用いることが可能である。加えて、語句「組換え分子」は、転写調節配列に機能的に結合した核酸分子を主として意味するが、宿主細胞内で単離かつ発現される語句「核酸分子」と相互可換的に用いることが可能である。
【0081】
本発明のある種の核酸分子、特にEscherichia coliの核酸分子の核酸配列を知ること
は、当業者が、例えば、(a)これらの核酸分子のコピーを作成し、かつ/又は(b)そのような核酸分子の少なくとも一部を含む核酸分子(例えば、完全長遺伝子、完全長コーディング領域、調節制御配列、断端コーディング領域)を得るのを許す。そのような核酸分子は、適切なライブラリー又はDNAをスクリーニングするためのオリゴヌクレオチドのプローブ、及びオリゴヌクレオチドのプライマーを用いた、適切なライブラリー又はDNAのPCR増幅を用いる、伝統的なクローニング手法を包含する、様々な方法で得ることが可能である。スクリーニングするためのか、又はそれから核酸分子を増幅するための好適なライブラリーは、細菌及び酵母ゲノムのDNAライブラリー、特にEscherichia coliゲノムのDNAライブラリーを包含する。遺伝子をクローニングかつ増幅する手法は
、例えばSambrookら〔前掲〕に開示されている。
【0082】
本発明によれば、単離された核酸分子は、その天然の環境から取り出された(すなわちヒトの操作に付された)核酸分子である。その限りで、「単離された」は、核酸分子が精製されている程度を反映しない。単離された核酸分子は、DNA、RNA、又はDNA若しくはRNAのいずれかの誘導体を包含することが可能である。核酸分子の最大の大きさに対する限度は、前記核酸分子が、遺伝子の一部、遺伝子全体、又は複数の遺伝子若しくはその部分を包含できるからには、実際的限度以外は皆無である。
【0083】
本発明の単離された核酸分子は、その天然の入手源から、全体的な(すなわち完全な)遺伝子、又は前記遺伝子との安定的なハイブリッドを形成できるその一部として得ることが可能である。単離核酸分子は、組換えDNAの技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)又は化学的合成を用いて生成することもできる。単離核酸分子は、天然の核酸分子と、天然の対立遺伝子変種、及びヌクレオチドを、修飾が微生物内で望みの効果を与えるように、挿入、削除及び/又は逆転させた、修飾された核酸分子を包含するが、これらに限定されないその相同体とを包含する。
【0084】
核酸分子相同体は、当業者に公知の数多くの方法(例えばSambrookら〔前掲〕を参照されたい)を用いて生成することが可能である。例えば、古典的な突然変異誘発手法及び組換えDNA手法、例えば部位指向性突然変異誘発、突然変異を誘導するような核酸分子の化学的処理、核酸フラグメントの制限酵素切断、核酸フラグメントの結合、核酸配列の選ばれた領域のPCR及び/又は突然変異誘発、核酸分子混合物を「造成する」、オリゴヌクレオチド混合物の合成、及び混合物群の結合、並びにそれらの組合せを包含するが、これらに限定されない様々な手法を用いて、核酸分子を修飾することが可能である。核酸分子相同体は、修飾された核酸の混合物から、前記核酸がコードしているタンパク質の機能についてのスクリーニング、及び/又は野生型遺伝子とのハイブリダイゼーションによって選ぶことが可能である。そのような手法の例は、実施例の項で詳しく説明する。
【0085】
本発明の一実施態様では、本発明の核酸分子の核酸相同体は、好ましくは、前記核酸相同体がコードしているタンパク質の作用の変更を結果として生ずる、遺伝的修飾を含む。例えば、本発明の一実施態様では、グルコサミン−6−リン酸シンターゼのタンパク質相同体をコードしている核酸配列を含む、遺伝的に修飾された組換え核酸分子であって、前記遺伝的修飾が、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ相同体の作用を、好ましくは、そのような遺伝的修飾の不在下で、天然に産するグルコサミン−6−リン酸シンターゼをコ
ードしている組換え核酸分子に比して増強する、組換え核酸分子を提供する。そのような遺伝的修飾は、例えば、グルコサミン−6−リン酸生成物阻害を低下させたか、及び/又は非活性を上昇させたグルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードすることによって、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの作用を強化することが可能である。遺伝的修飾を有するそのような組換え核酸分子は、本明細書では、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている、野生型核酸分子の核酸相同体と称される。本発明によれば、前記タンパク質をコードしている核酸分子の遺伝的修飾の結果としての、修飾を有するタンパク質は、本明細書では、タンパク質相同体、又は与えられたタンパク質の相同体と称される。
【0086】
したがって、例えば、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ活性を有し、本発明に有用な、グルコサミン−6−リン酸シンターゼタンパク質は、完全長グルコサミン−6−リン酸シンターゼタンパク質、完全長グルコサミン−6−リン酸シンターゼタンパク質の、酵素活性を有する部分、又はそのようなタンパク質のいかなる相同体、例えば、アミノ酸残基が、削除(例えば、前記タンパク質の断端バージョン、例えばペプチド)、挿入、逆転、置換及び/又は(例えば糖鎖形成、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化及び/又はグリコシルホスファチジルイノシトールの付加によって)誘導体化された、少なくとも一つ若しくはいくつかのアミノ酸の修飾を有する、グルコサミン−6−リン酸シンターゼタンパク質であることが可能である。
【0087】
本発明に記載のアミノ糖代謝経路内のタンパク質の、いずれのタンパク質相同体も、天然タンパク質のアミノ酸配列(すなわち天然に産する、修飾されていないか、又は野生型の)に充分に類似する、アミノ酸配列を有するタンパク質であるため、前記相同体をコードしている核酸配列は、ストリンジェントな条件下で、前記天然タンパク質をコードしている核酸分子に(すなわち、と)(すなわち、前記天然タンパク質のアミノ酸配列をコードしている核酸鎖の相補体に)ハイブリダイズすることが可能である。本発明のいかなる核酸配列の核酸配列相補体も、前記配列が言及される方の鎖に相補的である(すなわち、分子全体で二重らせんを形成することができる)、核酸鎖の核酸配列を意味する。本発明の二本鎖核酸分子は、それに対して一方の鎖について核酸配列が決定されて、配列番号で表わされるが、前記配列番号の相補体である配列を有する、相補鎖も含むことに留意されたい。その限りで、本発明の核酸分子は、二本鎖又は一本鎖のいずれであってもよいが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に明示される、与えられた配列番号と、及び/又は前記配列番号の相補体(本明細書に明示されることもあり、されないこともある)と安定的なハイブリッドを形成する核酸分子を包含する。相補的配列を推論する方法は、当業者に公知である。
【0088】
本発明のタンパク質相同体の最小の大きさは、対応する天然タンパク質をコードしている核酸分子の相補的配列と安定的なハイブリッドを形成できる、核酸分子によってコードされるのに充分な大きさである。加えて、本発明のタンパク質相同体の最小の大きさは、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用を有するのに充分な大きさ(例えば、触媒又は酵素活性を有する部分)であり、好ましくは、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ作用が増大されている。その限りで、そのようなタンパク質相同体をコードしている核酸分子の大きさは、核酸組成、及び核酸分子と相補的配列との間の相同性百分率はもとより、ハイブリダイゼーション条件自体(例えば、温度、塩濃度及びホルムアミド濃度)にも依存する。そのような核酸分子の最大の大きさに対する限度は、前記核酸分子が、遺伝子の一部、遺伝子全体、又は複数の遺伝子若しくはその部分を包含できるからには、実際的限度以外は皆無である。同様に、本発明のタンパク質相同体の最小の大きさは、長さが約4〜約6アミノ酸であって、好ましい大きさは、そのようなタンパク質の完全長部分、多価部分(すなわち、それぞれが機能を有する一つより多くのドメインを有する融合タンパク質)、又は機能的部分が望まれるか否かに依存する。
【0089】
本明細書に用いられる限りで、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、その条件下で核酸分子が類似の核酸分子を特定するのに用いられる、標準的ハイブリダイゼーション条件を意味する。そのような標準的条件は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Press, 1989に開示されており、引用によってその全体が、本明細書に組み込まれる(具体的には9.31〜9.62、11.7及び11.45〜11.61ページを参照されたい)。加えて、適切なハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を算出して、ヌクレオチドの様々な程度の誤対合を許すハイブリダイゼーションを達成するための処方は、例えば、Meinkoth et al., 1984,
Anal. Biochem. 138, 267-284;Meinkoth et al. 〔前掲〕に記載され、引用によってその全体が、本明細書に組み込まれる。
【0090】
より詳しくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、本明細書に用いられる限りで、ハイブリダイゼーション反応において、プローブで調べるのに用いようとする核酸分子と、少なくとも約70%、より特定的には少なくとも約75%、最も特定的には少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許す条件を意味する。そのような条件は、DNA:RNA又はDNA:DNAハイブリッドのいずれを形成しようとするかに応じて変動することになる。DNA:DNAハイブリッドについて算出された融解温度は、DNA:RNAハイブリッドについてより10℃低い。特定の実施態様では、DNA:DNAハイブリッドのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約20〜約35℃、より好ましくは約28〜約40℃、はるかに好ましくは約35〜約45℃の温度で、0.1xSSC(0.157M Na+ )のイオン強度でのハイブリダイゼーションを包含する。特定の実施態様では、DNA:RNAハイブリッドのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約30〜約45℃、より好ましくは約38〜約50℃、はるかに好ましくは約45〜約55℃の温度で、0.1xSSC(0.157M Na+ )のイオン強度でのハイブリダイゼーションを包含する。これらの値は、約100ヌクレオチドより大きい分子、0%のホルムアミド、及び約50%のG+C含量に対する融解温度の計算に基づく。これに代えて、Tm は、Sambrookら〔前掲〕、11.55〜11.57ページに説明されているとおり、経験的に算出することもできる。
【0091】
本発明によるアミノ糖代謝経路に関与するタンパク質のタンパク質相同体は、自然対立遺伝子変異又は自然突然変異の結果であることが可能である。本発明のタンパク質相同体は、タンパク質に対する直接的修飾、又は例えば、上記に考察したとおり、古典的若しくは組換えDNA手法を用いて、無作為のか、若しくは照準された突然変異誘発を実施する、タンパク質をコードしている遺伝子に対する修飾を包含するが、これらに限定されない、当技術に公知の手法を用いて生成することもできる。
【0092】
本発明の一実施態様では、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている、本発明の組換え核酸分子における遺伝的修飾は、グルコサミン−6−リン酸シンターゼのアミノ酸残基の、付加、置換、欠失及び/又は誘導体化の群から選ばれる、少なくとも一つのアミノ酸の修飾(すなわち、コードされているタンパク質のアミノ酸配列における修飾)を結果として生ずる。コードされているタンパク質のアミノ酸配列におけるそのような修飾は、野生型のか、又は天然に産するグルコサミン−6−リン酸シンターゼ、例えばアミノ酸配列配列番号16を有するグルコサミン−6−リン酸シンターゼと比較する限りで、決定することが可能である。そのようなアミノ酸の修飾の一つ又はそれ以上は、アミノ酸配列配列番号16を有する、天然に産するグルコサミン−6−リン酸シンターゼに比して増強された、グルコサミン−6−リン酸シンターゼの作用を結果として生ずる。一実施態様では、そのようなアミノ酸の修飾は、修飾されたタンパク質(すなわち相同体)での、配列番号16のアミノ酸配列の、下記のアミノ酸の位置の一つ又はそれ以上に対応するアミノ酸配列位置に存在する:Ile(4)、Ile(272)、Ser(450)、A
la(39)、Arg(250)、Gly(472)、Leu(469)。
【0093】
別の実施態様では、そのようなアミノ酸の修飾は、(a)Ile(4)に代えて脂肪族ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(b)Ile(272)に代えて脂肪族ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(c)Ser(450)に代えて脂肪族の側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(d)Ala(39)に代えて脂肪族ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(e)Arg(250)に代えて含硫黄側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(f)Gly(472)に代えて脂肪族ヒドロキシル側鎖基を有するアミノ酸残基へ;(g)Leu(469)に代えて脂肪族の側鎖基を有するアミノ酸残基へ;及び(h)(a)〜(g)の組合せの、置換の群から選ばれる。本発明によれば、脂肪族ヒドロキシル基を有するアミノ酸残基は、セリン及びトレオニンを包含し、脂肪族の側鎖基を有するアミノ酸残基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びプロリンを包含する。
【0094】
本発明の更に別の実施態様では、上記のアミノ酸の修飾は、好ましくは、Ile(4)に代えてThrへ、Ile(272)に代えてThrへ、Ser(450)に代えてProへ、Ala(39)に代えてThrへ、Arg(250)に代えてCysへ、Gly(472)に代えてSerへ、Leu(469)に代えてProへ、及びそれらの組合せの群から選ばれる置換である。そのようなアミノ酸の修飾を結果として生ずる、遺伝的修飾を有する組換え核酸分子の具体的な例は、実施例の項に詳しく説明する。
【0095】
作用が増大されたグルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸配列を含む、好ましい遺伝的に修飾された組換え核酸分子は、配列番号19、配列番号22、配列番号25、配列番号28及び/又は配列番号31の群から選ばれるアミノ酸配列を含む、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている核酸配列を含む組換え核酸分子を包含する。その他の好ましい遺伝的に修飾された組換え核酸分子は、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、配列番号29及び/又は配列番号30の群から選ばれる核酸配列を含む。特に好ましい、本発明に役立つ遺伝的に修飾された組換え核酸分子は、pKLN23−49、pKLN23−54、pKLN23−124、pKLN23−149、pKLN23−151、nglmS−492184、nglmS-491830 、nglmS−542184、nglmS−541830、nglmS−1242184、nglmS−1241830、nglmS−1492184、nglmS−1491830、nglmS−15121 84及びnglmS−1511830の群から選ばれる核酸分子を含む核酸分子を包含する。
【0096】
本発明は、核酸分子を細菌内に送達できる、いかなるベクターにも挿入された、本発明の少なくとも一つの単離核酸分子を含む組換えベクターを包含する。そのようなベクターは、前記ベクターに挿入しようとする単離核酸分子に隣接して、天然には見出されない単離細菌核酸配列を有することが可能である。前記ベクターは、RNA又はDNAのいずれであることもでき、一般には、プラスミドである。組換えベクターは、核酸分子のクローニング、配列決定、及び/又はそれ以外の核酸分子の操作の際に、用いることが可能である。組換えベクターの一つの種類は、本明細書では、組換え核酸分子と称し、より詳しく下記に説明するが、核酸分子の発現に用いることが可能である。好適な組換えベクターは、形質転換された細菌又は酵母の細胞、特にEscherichia coliの細胞内で複製すること
ができる。
【0097】
細胞内への核酸分子の形質転換は、核酸分子を細胞に挿入することができる、いかなる方法によって達成することもできる。形質転換の手法は、トランスフェクション、電気穿孔法、及び微量注入法を包含するが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の組換え分子は、DNA又はRNAのいずれであってもよく、追加の調節配列、例えば翻訳調節配列、複製起点、及び組換え細胞に融和できるその他の調節配列を含むこともできる。本発明の1種類又はそれ以上の組換え分子は、コード化生成物(例えばグルコサミン−6−リン酸シンターゼ)を生成するのに用いることが可能である。一実施態様では、コード化生成物を、前記タンパク質を生成するのに効果的な条件下で、本発明の核酸分子を発現することによって生成する。そのような条件(すなわち培養条件)は、上記に説明されており、実施例の項で更に考察する。コード化タンパク質を生成するための好適な方法は、本発明の1種類又はそれ以上の組換え分子を宿主細胞にトランスフェクションして、組換え細胞を形成することによる。
【0099】
上記に考察したとおり、本発明の好適な組換え分子は、nglmS−282184、nglmS−281830、nglmS−492184、nglmS−491830、nglmS−542184、nglmS−541830、nglmS−1242184、nglmS−1241830、nglmS−1492184、nglmS−1491830、nglmS−1512184、nglmS−1511830、pKLN23−28、pKLN23−49、pKLN23−54、pKLN23−124、pKLN23−149及び/又はpKLN23−151を包含する。
【0100】
組換え細胞は、好ましくは、細菌細胞(すなわち宿主細胞)を、それぞれ、一つ又はそれ以上の転写調節配列を含む発現ベクターに機能的に結合された、1種類又はそれ以上の核酸分子を含む、1種類若しくはそれ以上の組換え分子で形質転換することによって形成する。語句「機能的に結合された」とは、分子が、宿主細胞内に形質転換されたときに、発現されることができるような方式での、発現ベクターへの核酸分子の挿入を意味する。本明細書に用いられる限りで、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換し、指定された核酸分子の発現を実施することができる、DNA又はRNAベクターである。好ましくは、発現ベクターは、宿主細胞内で複製することもできる。本発明では、発現ベクターは、一般には、プラスミドである。本発明の発現ベクターは、酵母の宿主細胞、又は細菌の宿主細胞、好ましくはEscherichia coliの宿主細胞内で機能する(すなわち、遺伝子発現を指
令する)いかなるベクターも包含する。本発明の好適な組換え細胞は、実施例の項で説明する。
【0101】
本発明の核酸分子は、転写調節配列、翻訳制御配列、複製起点、及び組換え細胞に融和でき、本発明の核酸分子の発現を制御する調節配列のような、調節配列を含む発現ベクターに機能的に結合することが可能である。特に、本発明の組換え分子は、転写調節配列を含む。転写調節配列は、転写の開始、延長及び終結を制御する配列である。特に重要な転写調節配列は、転写開始を制御するもの、例えばプロモーター、エンハンサー、オペレーター及びリプレッサー配列である。適する転写調節配列は、酵母又は細菌細胞、好ましくはEscherichia coli内で機能することができる、いかなる転写調節配列も包含する。様
々なそのような転写調節配列が、当業者に公知である。
【0102】
当業者は、組換えDNA手法の使用は、例えば、宿主細胞内で核酸分子のコピー数、核酸分子が転写される効率、得られる転写体が翻訳される効率、及び翻訳後修飾の効率を操作することによって、形質転換された核酸分子の発現を改良できることが認識できると思われる。本発明の核酸分子の発現を増強するのに役立つ組換え手法は、高コピー数プラスミドとの核酸分子の機能的な結合、宿主細胞染色体への核酸分子の組込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写調節シグナル(例えばプロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換又は修飾、本発明の核酸分子の、宿主細胞のコドン用法に対応させる修飾、転写体を不安定化させる配列の削除、及び発酵の際に組換え酵素の産生から組換え細胞の増殖を時間的に分離する制御シグナルの使用を包含するが、これらに限定されない。発現された本発明の組換えタンパク質の活性は、そのようなタンパク質をコードしている核酸分子を断片化し、修飾し、又は誘導体化することによって改良し得る。そのよう
な修飾は、実施例の項で詳しく説明する。
【0103】
下記の実験結果は、例示の目的で与えられ、発明の対象範囲を限定しようとするものでない。
(実施例)
(実施例1)
以下の実施例は、グルコサミンの分解に関与するアミノ酸糖代謝経路が遮断された変異型Escherichia coli株の作製の記載である。
【0104】
本明細書に記載された全てのグルコサミン過剰産生株の構築のための出発株は、E. coli K−12(Bachmann,1987,「大腸菌及びネズミチフス菌(Escherichia coli and Salmonella typhimurium)」, Cellular and Molecular Biology,1190-1219頁;参照としてその全体が本明細書に組み込まれる)の原栄養性F−
λ−誘導体である、E. coli W3110(ATCC第25947号としてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから公衆に入手可能)であった。以下の実施例において使用され作製された全ての株のリストを、表1に提供する。
【0105】
【表1】

【0106】

【0107】

【0108】
nagE遺伝子、manXYZ遺伝子、及びptsG遺伝子への変異の導入(グルコサミンの輸送を遮断)、並びにグルコサミン−6−リン酸の代謝に関与するnagA遺伝子、nagB遺伝子、nagC遺伝子、及びnagD遺伝子への変異の導入により、グルコサミンの取り込み及び分解が遮断された宿主株を構築した。これらの遺伝子は、それぞれ、本明細書において既に詳細に記載されている。形質導入バクテリオファージP1vir
参照としてその全体が本明細書に組み込まれる、Miller, 1972, 「分子遺伝学の実験(Experi ments in Molecular Genetics )」, Cold Spring Harbor Laboratory に記載され
ている)を使用して、これらの遺伝子の変異を、株に導入した。
【0109】
この技術においては、バクテリオファージP1vi rを使用して、ある株(ドナー株)由来の遺伝子又は変異を、レシピエント株に移入する。バクテリオファージP1virをドナ
ー株において増殖させると、産生されたファージ粒子の極一部は、ファージDNAの正常な相補鎖ではなくドナー由来の染色体DNAを含有する。ドナー株において増殖したバクテリオファージをレシピエント株に感染させると、ドナー株由来の染色体DNAを含有するこれらのバクテリオファージ粒子は、そのDNAをレシピエント株に移入することが可能である。ドナー株由来のDNAに関する強力な選択が存在する場合、ドナー株由来の適当な遺伝子又は変異を含有するレシピエント株を選択することが可能である。
【0110】
ドナー株においてP1vir を増殖させるため、既存のバクテリオファージ・ストックを使用して、その株の培養物に感染させた。600nmにおける吸光度が、培養物1mL当たり約6×108細胞に相当する、約1.0になるまで、レシピエント株をLBMC培地(10g/l バクト・トリプトン、5g/l 酵母抽出物、10g/l NaCl、1mM MgCl2 、5mM CaCl2 )中37℃で増殖させた。次いで、10細胞当たり約1ファージという割合で、ファージ・ストックの希釈物を1mLの培養物に感染させた。混合物を振盪せずに37℃で20分間インキュベートし、次いで125mLバッフル・エルレンマイヤー・フラスコ(baffled Erlenmeyer flask)中の10mLの予め加温されたLBMCブロスへ移した。得られた培養物を37℃で2〜3時間、激しく振盪した。この間、細菌の増殖を示す、培養物の濁度の増加が一般的に観察された。このインキュベーション時間の最後に向けて、バクテリオファージ増殖による細胞溶解を示す、培養物の透明化が起こった。溶解が起こった後、培養物を氷上で冷却し、数滴のクロロホルムを添加し、フラスコを軽く振盪した。次いで、フラスコの内容物を遠心分離して、細胞片及びクロロホルムを除去したところ、得られた上清は、1mL当たり108 個と109 個の間のバクテリオファージを一般的に含有していた。
【0111】
前記のような適当なドナー株において増殖させたP1virによる形質導入により、突然
変異をレシピエント株に移入した。P1virによる形質導入のため、レシピエント株の培
養物を、LBMCブロス中で37℃で一夜増殖させた。0.1mLの培養物を、無菌テスト・チューブ中の0.1mLのバクテリオファージ溶解物又は溶解物の段階希釈物と混合し、37℃で20分間インキュベートした。0.2mLの1M クエン酸ナトリウムをチューブに
添加し、混合物を選択培地に播いた。各形質導入のため、未感染細胞を含有する対照及び細胞を含まないバクテリオファージ溶解物を前記と同様に実施した。グルコサミン分解が遮断された株の作製のため、以下のようなテトラサイクリン耐性に関する選択を行った。12.5μg/mLテトラサイクリン及び10mMクエン酸ナトリウムを含有するLB培地(10g/l バクト・トリプトン、5g/l 酵母抽出物、10g/l NaCl)へ播くことにより、テトラサイクリン耐性変異体を選択した。
【0112】
nag遺伝子の変異を欠失変異と同時に導入した(Δnag::TcR )。この変異を含有するIBPC590株(プラムブリッジ(Plumbridge)、表1)においては、nag遺伝子がテトラサイクリン耐性(TcR )決定基と交換されている。結果として、テトラサイクリン耐性に関する選択により、nag機能を除去する変異が、適当なレシピエント宿主に移入される。この場合、目的の変異内にTcR 決定基が含有されているため、Δnag変異及びTcR 変異は100%連鎖していた。即ち、IBPC590からTcR 決定基を受容したレシピエント株は全て、Δnag変異も受容していた。これは、IBPC590において増殖させたP1virによる感染から得られたテトラサイクリン耐性株の増殖
表現型を調査することにより確認された。そのような株は全て、グルコサミン又はN−アセチルグルコサミンを炭素源として含有する培地上で増殖することができず、Δnag変異の存在が示された。
【0113】
それぞれIBPC566及びIBPC522(プラムブリッジ(Plumbridge)、表1)株において増殖させたファージを使用したP1vir形質導入により、manXYZ遺伝子
及びptsG遺伝子の変異も導入した。これらの株も、目的の変異と連鎖したテトラサイクリン耐性決定基を含有していた(それぞれ、zdj−225::Tn10及びzcf−229::Tn10と名付けた)。これらの株においては、TcR 決定基は遺伝子内には存在しないが、遺伝子と連鎖している。従って、TcR 決定基を受容したレシピエント株の全てが、目的の変異を含有しているわけではなかった。連鎖の程度は、TcR 決定基と目的の変異との染色体上の距離の指標である。結果として、manXYZ及びptsGに関してテトラサイクリン耐性株をスクリーニングする必要があった。manXYZ株は、増殖のための唯一の炭素源としてのマンノース上で徐々に増殖し、グルコサミン上では増殖することができなかった。ptsG株は、唯一の炭素源としてのグルコース上で徐々に増殖した。
【0114】
前記の変異の選択は全てテトラサイクリン耐性に関するものであったため、複数の変異を導入する場合には、工程の間に株をテトラサイクリン感受性にする必要があった。これを達成するため、テトラサイクリン耐性株を、テトラサイクリン感受性変異体を選択するTCS培地(15g/l 寒天、5g/l バクト・トリプトン、5g/l 酵母抽出物、50mg/l塩酸クロルテトラサイクリン、10g/l NaCl、10g/l NaH2 PO4 ・H2 O、12mg/lフザリン酸、及び0.1mM ZnCl2 )(参照としてその全体が本明細書に組み込まれる、Maloy and Nunn, 1981, J.Bacteriol., 145:1110-1112 に記載されている)に播いた。この培地上に生じたコロニーを、再び同培地に線状接種することにより精製し、次いで12.5μg/mLテトラサイクリンを含むLB培地及び含まないLB培地に播くことにより、個々のコロニーをテトラサイクリン感受性についてチェックした。
【0115】
manXYZ変異、ptsG変異、及びΔnag変異の組み合わせを含有する株の作製のための前記のスキームを、図3に概略的に示す。
(実施例2)
以下の実施例は、glmS遺伝子のクローニング及び過剰発現、並びにE. coli 染色体へのT7−glmS遺伝子カセットの組み込みの記載である。
【0116】
glmS遺伝子のクローニング及び過剰発現
発表されているglmS遺伝子の配列(参照としてその全体が本明細書に組み込まれる、Walker et al., 1984, Biochem. J., 224:799-815 )から得られた情報を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してW3110株(表1)から単離されたゲノミックDNA由来の遺伝子を増幅するためのプライマーを合成した。PCR増幅に使用されたプライマーは、Up1及びLo8と名付けられ、以下のような配列を有していた。
Up1:5 ′-CGGTCTCCCATGTGTGGAATTGTTGGCGC-3′(配列番号1)
Lo8:5 ′-CTCTAGAGCGTTGATATTCAGTCAATTACAAACA-3 ′(配列番号2)
Up1プライマーは、glmS遺伝子の最初の20ヌクレオチドに相当する配列(配列番号1のヌクレオチド10〜29に表されている)を含有しており、その前にはBsaI制限エンドヌクレアーゼ認識部位(GGTCTC、配列番号1のヌクレオチド2〜7に表されている)が存在していた。Lo8プライマーは、glmS遺伝子の下流の145塩基と171塩基の間の位)に相当する置(配列番号2のヌクレオチド8〜34に表されている配列を含有しており、その前にはXbaI制限エンドヌクレアーゼ認識部位(TCTAGA、配列番号2のヌクレオチド2〜7に表されている)が存在していた。BsaI部位及びXbaI部位が隣接した遺伝子の下流の171塩基対のDNAを含むglmS遺伝子を含有するDNA断片を生成させるため、標準的なプロトコルを使用してPCR増幅を実施した。このDNA断片を、製造業者より供給された物質及び説明書を使用してベクターpCR−Script(登録商標)SK(+)(Stratagene Cloning Systems,La Jolla,California)にクローニングした。得られたプラスミドを、pKLN23−20と名付けた。
【0117】
このクローニングの一つの結果として、遺伝子の下流に非反復SacI制限エンドヌクレアーゼ部位が配置された。これは、制限エンドヌクレアーゼBsaI及びSacIを使用して、pKLN23−20からglmS遺伝子を含有するDNA断片を切り出すことを可能にした。次いで、発現ベクターpET−24d(+)(Novagen, Inc., Madison, Wisconsin )のNcoI部位とSacI部位の間に、この断片をクローニングし、pKLN23−23を生成させた。pET−24d(+)発現ベクターは、T7プロモーター系(Studier and Moffatt, 1986, J.Mol.Biol., 189:113-130 )に基づいている。このようなクローニングの結果、pET−24d(+)上に含まれるT7−lacプロモーターの後ろにglmS遺伝子が配置された。T7−lacプロモーターは、T7 RNAポリメラ
ーゼにより特異的に認識され、T7 RNAポリメラーゼをコードするクローニングされ
たT7遺伝子1を含有する株においてのみ発現される。クローニングされたT7ポリメラーゼ遺伝子は、λDE3と名付けられた欠陥バクテリオファージλファージ上に含まれる。λDE3要素が染色体に組み込まれている株は、lacUV5プロモーターにより駆動されるT7 RNAポリメラーゼ遺伝子を含有する。これらの株においては、ラクトース
のアナログであるイソプロピルチオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を使用して、T7 RNAポリメラーゼ遺伝子の発現を誘導することが可能である。従って、その
ような培養物へのIPTG添加の結果、T7 RNAポリメラーゼ遺伝子が誘導され、T
7又はT7−lacプロモーターにより調節される任意の遺伝子が発現される。
【0118】
pKLN23−23がT7−lacプロモーターにより駆動されるglmS遺伝子を含有することを確認するため、プラスミドをBL21(DE3)株(Novagen, Inc)(表1)に移入した。BL21(DE3)/pKLN23−23株を、50mg/lカナマイシンを含有するLB培地中でデュプリケートで増殖させた(カナマイシン耐性はプラスミドによりコードされる)。デュプリケートの一方を、1mM IPTGで誘導し、もう一方は誘導しなかった。ドデシル流酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動により、これらの2つの培養物由来の全タンパク質を調査したところ、glmS遺伝子産物の予想サイズに相当する約70,000分子量の顕著なタンパク質が、誘導された培養物由来の細胞に観察されたが、誘導していない培養物由来の細胞には観察されなかった。誘導された培養物からの予備酵素アッセイは、誘導された培養物中のグルコサミン−6−リン酸シンターゼ
活性が、野生型株で典型的に観察される活性よりも数百倍高いことを示した。
【0119】
E. coli 染色体へのT7−glmS遺伝子カセットの組み込み
T7−lacプロモーターにより駆動されるglmS遺伝子(T7−glmS遺伝子カセット)を、多段階工程によりE. coli 株の染色体に移入した。最初に、カセットをプラスミドpBRINT−Cm(参照としてその全体が本明細書に組み込まれる、Balbas et al., 1996, Gene 96:65-69)にクローニングした。次いで、Balbas et al., 1996 (前記)により記載された技術により、遺伝子カセットを株ATCC47002(表1)の染色体に組み込み、T−71株及びT−81株(表1)を生成させた。最後に、下記のようなP1virによる形質導入に
より、遺伝子カセットを目的の株に移入した。
【0120】
プラスミドの制限エンドヌクレアーゼBglIIによる部分消化、及び制限エンドヌクレアーゼHinDIII による完全消化を実施することにより、pKLN23−23からT7−glmSカセットを切り出した。プラスミドpKLN23−23は、T7プロモーターの約20塩基対上流にBglII部位を含有している。glmS遺伝子も、2つのBglII部位を含有している。この酵素による部分消化は、2つの内部の部位を回避しつつ、T7プロモーター上流のプラスミドを切断するために必要であった。プラスミドpKLN23−23は、glmS遺伝子の下流に非反復HinDIII 部位も含有している。次いで、切り出されたT7−glmSカセットを、pBRINT−Cmの非反復のBamHI部位とHinDIII 部位の間にクローニングした。この結果、pKLN23−27及びpKLN23−28と名付けられたプラスミドが作製された。プラスミドpKLN23−27及びpKLN23−28は、E. coli lacZ遺伝子の5′末端及び3′末端と隣接したクロラムフェニコール耐性決定基に加え、T7−glmSカセットを含有している。
【0121】
株ATCC47002(表1)は、ColE1複製開始点を含有するpBRINT−Cmのようなプラスミドを維持することを不可能にする変異を含有している。そのようなプラスミドをこの株に移入すると、プラスミド上に含まれる遺伝学的マーカーの選択の結果、プラスミドが染色体に組み込まれる(Balbas et al., 1996 (前記))。前記のように、プラスミドpKLN23−27及びpKLN23−28は、T7−glmSカセット並びにE. co li lacZ遺伝子の5
′末端及び3′末端と隣接したクロラムフェニコール耐性決定基を含有している。lacZ遺伝子は、進入してきたDNAを染色体内に含まれるlacZ遺伝子へと指向させる。lacZ遺伝子座における組み込みにより、酵素β−ガラクトシダーゼをコードする完全なlacZ遺伝子が、T7−glmS−Cmカセットににより割り込まれた部分的なlacZ遺伝子と交換される。結果として、lacZにおける組み込みは、株をβ−ガラクトシダーゼ陰性にする。プラスミドは、5′−lacZ−T7−glmS−Cm−lacZ−3′カセットから遠位にアンピシリン耐性決定基も含有する。lacZにおける組み込み及びプラスミド欠損は、アンピシリン感受性も引き起こす。
【0122】
プラスミドpKLN23−27及びpKLN23−28を株ATCC47002に移入し、10μg /mLクロラムフェニコール、1mM IPTG、及び40μg/mL5−ブロモ−
4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal)を含有するLB培地に細胞を播いた。培地中に含まれるX−galは、色原性β−ガラクトシダーゼ基質である。β−ガラクトシダーゼによるX−galの加水分解は、青色の誘導体を生じる。X−gal及び天然lacZ遺伝子を誘導するIPTGの包含により、青色のlacZ陽性コロニー及び白色のlacZ陰性コロニーが生じる。次いで、白色(lacZ陰性)クロラムフェニコール耐性コロニーを、選択し精製した。次いで、100μg/mLアンピシリンを含むLB培地及び含まないLB培地に播くことにより、アンピシリン感受性について株を確認した。Balbas et al., 1996 (前記)により記載されたようなPCRスキーム
を使用して、DNA組み込みをさらに確認した。それぞれプラスミドpKLN23−27及びpKLN23−28の所望のセグメントのATCC47002の染色体への組み込みにより、組み込み体T−71及びT−81(表1)が得られた。
【0123】
次いで、株T−71及びT−81で調製された溶解物を使用して、実施例1に記載のようなP1vir形質導入により、W3110(DE3)株、7101−9
(DE3)株、7101−17(DE3)株、及び2123−4(DE3)株にT7−glmS−Cmカセットを移入した。これらの株は、T7−lacプロモーターからの発現に必要なλDE3要素に加え、Δnag変異、manXYZ変異、及びptsG変異の様々な組み合わせを含有している。ノバゲン社(Novagen, Inc. )(Madison, Wisconsin)により製造されたλDE3溶原化キットを使用して、これらの株にλDE3要素を導入した。形質導入体を、30μg/mLクロラムフェニコール及び10mMクエン酸ナトリウムを含有するLB寒天プレート上で選択した。X−gal及びIPTGを含有するプレート上でβ−ガラクトシダーゼ活性の欠損を確認し、Balbas et al., 1996 (前記)により記載されたようなPCRスキームを使用して、DNA組み込みをさらに確認した。
【0124】
IPTGを含むLB培地及び含まないLB培地で増殖させた後、組み込まれたT7−glmSカセットを含有する産生株において、グルコサミン−6−リン酸シンターゼ活性を測定した(表2)。グルコサミン−6−リン酸シンターゼは、下記のような比色アッセイ又は分光測光アッセイ(Badet et al., 1987, Biochemistry 26:1940-1948 )のいずれかを使用して、粗細胞抽出物においてアッセイされた。これらのアッセイのために使用された抽出物は、湿状態の細胞ペースト1グラム当たり5mLの0.1M KH2 PO4 /K2 HPO4 (pH7.5)中に、洗浄した細胞ペレットを懸濁させ、懸濁液を16,000psi のフレンチプレスに通過させ、破壊された細胞懸濁液を35,000〜40,000×gで15から20分間遠心分離することにより調製された。上清を、アッセイのための酵素源として使用した。
【0125】
比色アッセイのため、45mM KH2 PO4 /K2 HPO4 、20mMフルクトース−6−リン酸、15mM L−グルタミン、2.5mM EDTA(pH7.5)、及び細胞抽出物を含有する1mLの反応液を調製した。反応液を37℃で20分間インキュベートし、4分間の加熱により停止させた。得られた沈殿物を遠心分離により除去し、ザルキン(Z alkin)(1985, Meth. Enzymol. 113:278-281)により本質的に記載されたようなエルソン(Elson )及びモルガン(Morgan)の方法(1933, Biochem. J. 27:1824-1828)の変法によ
り、グルコサミン−6−リン酸について上清をアッセイした(これらの文献はいずれも参照としてその全体が本明細書に組み込まれる)。前記の上清100μL に12.5μL の飽和NaHCO3 及び12.5μL の冷却した新鮮に調製された5%無水酢酸水溶液を添加した。室温で3分間インキュベートした後、過剰の無水酢酸を除去するため混合物を3分間加熱した。室温まで冷却した後、150μL の0.8Mホウ酸カリウム(pH9.2)(KOHでpH9.2に調整された0.8M H3 BO3 )を添加し、混合物を3分間加熱した。室温まで冷却した後、1.25mLのエールリッヒ試薬(0.125N HClを含有する氷酢酸中の1%p−ジメチルアミノベンズアルデヒド)を各チューブに添加した。37℃で30分間インキュベートした後、585nmにおける吸光度を測定し、標準曲線を使用して形成されたグルコサミン−6−リン酸の量を決定した。基質であるフルクトース−6−リン酸が存在しない場合、又は加熱された抽出物をアッセイに使用した場合には、585nmにおける有意な吸光度は観察されなかった。
【0126】
分光測光アッセイにおいては、50mM KH2 PO4 /K2 HPO4 、10mMフルクトース−6−リン酸、6mM L−グルタミン、10mM KCl、0.6mMアセチルピリジンアデニンジヌクレオチド(APAD)、及び50〜60単位のL−グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(L-glutamic dehydrogenase)(ウシ肝臓由来のシグマ(Sigma )II型)を含有
する1mLの反応液を、室温で反応させた。抽出物の添加後、365nmにおける吸光度をモニターすることにより活性を追跡し、抽出物の非存在下で観察された小さな吸光度増加に関して補正した。9100というAPADのモル吸光率を使用して、活性を計算した。
【0127】
【表2】

【0128】
表2は、組み込まれたT7−glmSカセットを含有する産生株におけるグルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性が、IPTGで誘導した場合、誘導しない場合よりも、平均して約3倍から4倍高いことを示している。活性は、典型的には1分当たり抽出物1mL当たり0.05〜0.1μモルの範囲であった天然プロモーターにより駆動される野生型glmS株で得られた活性よりも、実質的に高かった。株の一つ、2123−6は、活性が他の株で観察されたよりも低く、培地中のIPTGの存在により影響を受けなかったため、異常な組み込みイベントを経たと考えられる。
(実施例3)
以下の実施例は、グルコサミン蓄積に対する株の遺伝子型の効果を示す。
【0129】
実施例2に記載のようにして作製されたT7−glmS組み込み体を有する株、及びDNAが組み込まれていない対応する親株を、20g/l グルコース、10mM MgSO4 、1mM CaCl2 、及び1mM IPTGが補充されたM9A培地(14g/l K2 HPO4 、16g/l KH2 PO4 、1g/l クエン酸Na3 ・2H2 O、5g/l (NH4 2 SO4 (pH7.0))を含有する振盪フラスコ中で増殖させた。2日間にわたり定期的に試料を振盪し、実施例2に記載された修飾されたエルソン−モルガン・アッセイを使用して、培養上清中のグルコサミン濃度を測定した。無水酢酸処理を使用したアッセイ及び使用しないアッセイを試料に対して行い、標準曲線を使用して、正味の吸光度から、存在するグルコサミンの量を決定した。
【0130】
濃度がピークに達する時間である24時間の培養後のグルコサミン濃度を、表3に示す。表3に示された結果は、有意なグルコサミン産生が起こるためには、T7−glmS遺伝子カセットが存在しなければならないことを示している。データは、宿主におけるΔnag変異の存在が、それが存在しない場合と比較してグルコサミン蓄積の有意な増加を引き起こすことも示している。manXYZ変異の効果は、この実験においてほとんど観察されなかった。しかし、さらなる振盪フラスコ実験において、2123−12株は、一貫してわずかに高いグルコサミン濃度を蓄積した。
【0131】
【表3】

【0132】
(実施例4)
以下の実施例は、培養物への栄養供給がグルコサミン蓄積に対して有する効果を証明するものである。
【0133】
初期の実験において、グルコースが培養物から枯渇した場合にグルコサミン蓄積が停止することが観察された。表4及び図4に要約されている実験において、グルコース及び硫酸アンモニウムが枯渇した際にそれらを追加的に供給することにより、増加したグルコサミン蓄積が達成されうることが見出された。この実験のため、2123−12株を、10mM MgSO4 、1M CaCl2 、及び1mM
IPTGが補充されたM9A培地で増殖させた。初期グルコース濃度及び供給様式は、
表4に示されるように様々であった。フラスコの一つにおいて、初期硫酸アンモニウム濃度は、M9A培地で通常使用される5g/l ではなく10g/l であった。ジアスティクス(Diastix )(登録商標)グルコース・テスト・ストリップ(glucose test strips )(Bayer Corporation Diagnostics Division, Elkhart, Indiana)を使用して、培養中、振盪フラスコ内のグルコース濃度をモニターした。グルコース濃度が枯渇するか、又はほぼ枯渇したとき(<5g/l が残存)、表4に示されるようにしてグルコース及び/又は硫酸アンモニウムを補充した。培養中、pHもモニターした。7.0という初期pHからpHが有意に変動した場合には、水酸化ナトリウムを用いて7.0に調整した。
【0134】
【表4】

【0135】
図4が示すように、グルコースの補給量の増加は、グルコサミン蓄積に対して正の効果を有していた。グルコース及び硫酸アンモニウム(それぞれ、20g/l
及び5g/l を添加)を定期的に供給することにより、供給しない場合に観察された蓄積よりも約4倍高い、0.4g/l のグルコサミンの最大の蓄積が観察された。
(実施例5)
以下の実施例は、グルコサミン−6−リン酸産生物阻害に対する感受性が減少したグルコサミン−6−リン酸シンターゼ酵素をコードする変異型glmS遺伝子の単離の記載である。
【0136】
グルコサミン−6−リン酸シンターゼがグルコサミン−6−リン酸により阻害されることを、ホワイト(White )(1968, Biochem. J., 106:847-858)が最初に証明した。実施例2に記載されたようなグルコサミン−6−リン酸シンターゼに関する分光測光アッセイを使用して、グルコサミン−6−リン酸シンターゼに対するグルコサミン−6−リン酸及びグルコサミンの効果を測定した。産生物阻害の決定のため、様々な濃度の添加されたグルコサミン−6−リン酸の存在下でアッセイを行った。
【0137】
図5に示されるように、酵素はグルコサミン−6−リン酸により有意に阻害され、グルコサミンによりわずかに阻害された。これらの結果は、White, 1968 (前記)により得られた結果と類似している。この阻害は、グルコサミン産生株におけるグルコサミン蓄積を制限するための重要な因子であるかもしれない。
【0138】
産生株におけるグルコサミン合成をさらに増加させるため、生産物阻害が減少したグルコサミン−6−リン酸シンターゼ異型をコードするglmS遺伝子の変異体を単離すべく努力した。これを達成するため、クローニングされた遺伝子をエラー・プローンPCRの技術を使用して増幅した。この方法においては、増幅のため使用されるDNAポリメラーゼによる高頻度の誤取り込みエラーを引き起こす条件下で、遺伝子が増幅される。結果として、PCR産物中に高頻度の変異が得られる。
【0139】
プラスミドpKLN23−28は、T7プロモーターの25塩基対上流、glmS遺伝子の開始の111塩基対上流に非反復制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する。プラスミドは、glmS遺伝子の177塩基対下流に非反復HinDIII 部位も含有する。それぞれSpeI部位の直上流及びHinDIII 部位の下流の領域に相当する、以下の配列のPCRプライマーを合成した。
5 ′-ATGGATGAGCAGACGATGGT-3 ′(配列番号3)
5 ′-CCTCGAGGTCGACGGTATC-3′(配列番号4)
これらのプライマー(配列番号3及び配列番号4)を用いた増幅により、完全なglmS遺伝子を含む2247塩基対領域の突然変異導入が可能となった。PCR条件は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれる、Moore and Arnold,1996, Nature Biotechnology 14:458-467に記載されたようなものであった。簡単に説明すると、各1mMの4つのデオキシヌクレオチド三リン酸、16.6mM硫酸アンモニウム、67mMトリスHCl(pH8.8)、6.1mM MgCl2、6.7μM EDTA、10mM β−メルカプトエタノール、10μL DMSO、各30ngのプライマー(配列番号3及び配列番号4)、7ng又は35ngのKpnIで直鎖化されたプラスミドpKLN23−28、並びに2.5単位のTaqDNAポリメラーゼ(Perkin Elmer-Cetus, Emeryville, California)を含有する100μL の溶液を調製した。反応混合物を70μL の鉱油でカバーし、サーモサイクラー内に設置し、以下の工程を25サイクル繰り返した。
94℃で1分間
42℃で1分間
72℃で2分間
これらの条件下で、1000塩基対当たり約1個の変異というエラー頻度が報告されている(Moore and Arnold,1996 (前記))。反応産物を回収し、精製し、SpeI及びHinDIII で消化し、pKLN23−28のSpeI−HinDIII 骨格断片にクローニングすることにより、それはpKLN23−28のSpeI−HinDIII 断片上の野生型glmS遺伝子と効率的に置換された。クローニングされたDNAを使用してNova
Blue株(Novagen, Inc., Madison, Wisconsin )を形質転換し、形質転換された細胞をアンピシリンを含有するLB培地に播いた。アンピシリン・プレートから計9000個のプラスミド含有コロニーをプールし、プールされた細胞からプラスミドDNAを調製し、クローニングされたglmS遺伝子内に変異を含有するpKLN23−28誘導プラスミドのライブラリーを生成させた。
【0140】
エラー・プローンPCRにより生成させた変異型プラスミドを、Δnag manXYZ宿主バックグラウンドにおいて増加したグルコサミン産生を与える能力についてスクリーニングした。このスクリーニングは、E. coli のグルコサミン要求株に交差供給するプラスミド含有株の能力を調査する、バイオアッセイの形態であった。
【0141】
グルコサミン−6−リン酸シンターゼに欠陥があるE. coli (Sarvas, 1971,
J.Bacteriol. 105:467-471; Wu and Wu, 1971, J. Bacteriol. 105:455-466)及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis )(Freese et al., 1970, J.Bacteriol. 101:1046-1062 )の株は、増殖のためにグルコサミン又はN−アセチルグルコサミンを必要とする。N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NG)を用いた突然変異導入の後、E. coli のグルコサミン要求株を単離した。LE392株(表1)を、1mL当たり6×108細胞という細胞密度になるまで、LB培地中で増殖させた。50μL の2.5mg/mL NGが溶解したメタノールを、この培養物2mLに添加し、混合物を37℃で20分間インキュベートした。この処理の結果、株の約10%が生存した。突然変異を導入された細胞を遠心分離により収集し、0.9%NaClへの懸濁及び再遠心分離により細胞を2回洗浄した。洗浄された細胞を希釈し、1プレート当たり50コロニー形成単位と200コロニー形成単位の間の密度で、0.2g/l N−アセチルグルコサミンを含有する栄養寒天培地(NA;5g/l バクト・ペプトン、3g/l ウシ抽出物、15g/l 寒天)に播いた。約13,000コロニーを播いた。これらのコロニーを0.2g/l N−アセチルグルコサミンを含むNA寒天及び含まないNA寒天でレプリカ平板を作成した。22個のコロニーが、0.2g/l N−アセチルグルコサミンを含むNA上では増殖したが、0.2g/l N−アセチルグルコサミンを含まないNA上では増殖しなかった。0.2g/l N−アセチルグルコサミンを含むNAに線状接種することによりこれらのコロニーを精製し、それらの増殖表現型を再チェックした。選択された最初の22コロニーのうち、5個がLE392のglmS変異体の予想される表現型を有していた。それらは、NA上では増殖することができなかったが、0.2g/l グルコサミン又は0.2g/l N−アセチルグルコサミンが補充されたNA上では増殖した。それらは、グルコース最小寒天上では増殖できなかったが、0.2g/l N−アセチルグルコサミンが補充されたグルコース最小寒天上では増殖した。これらの変異体のうちの一つを2123−16(表1)と名付けた。
【0142】
交差供給アッセイのため、増殖のための主要な炭素源としてグリセロール又はフルクトースのいずれかを含有する寒天プレートに、前記のようにして単離されたグルコサミン要求株である2123−16株の培養物由来の細胞を重層した。グルコサミン産生株を寒天に穿刺し、穿刺部周囲の指標株の増殖の「ハロー」のサイズに基づき、グルコサミンを産生する能力を調査した。比較的大きなハローに囲まれたこれらの穿刺部を、比較的多量のグルコサミンを産生するものと見なした。
【0143】
交差供給アッセイに使用された培地は、40mg/lのL−メチオニン(LE392又は2123−16の増殖に必要)及び2g/l のグリセロール又はフルクトースのいずれかが補充されたM9最小培地(6g/l Na2 HPO4 、3g/l KH2
PO4 、0.5g/l NaCl、1g/l NH4 Cl、1mM MgSO4 、0.1mM
CaCl2 )からなっていた。以下のようにして、これらのプレートに2123−16
株を重層した。株2123−16の培養物を、1g/l N−アセチルグルコサミンを含有するLB培地中で37℃で一夜増殖させた。遠心分離により培養物を収集し、0.9%Na
Clへの懸濁及び再遠心分離により細胞を2回洗浄した。洗浄された細胞を最初の容量の0.9%NaClに懸濁させた。重層するプレート毎に、洗浄された細胞懸濁液0.1mLを3mLの融解(50℃)Fトップ(F-top )寒天(8g/l NaCl、8g/l 寒天)3mLと混合し、プレートに注入した。
【0144】
pKLN23−28変異型プラスミドのライブラリーを7101−17(DE3)株へ移入し、形質転換された細胞を100μg/mLアンピシリンを含有するLB寒天に播いた。これらのプレート上に生じた各コロニーは、変異型プラスミド・ライブラリーの個々のメンバーを含有していた。LB+アンピシリン・プレートからそれらを拾い上げ、続いて
(1)LB寒天+アンピシリン
(2)2123−16株を重層したグリセロール最小寒天
(3)2123−16株を重層したフルクトース最小寒天
に穿刺することによりコロニーをスクリーニングした。
【0145】
全てのプレートを37℃で約24時間インキュベートした。このインキュベート時間の後、重層されたプレートの穿刺部の周囲に2123−16指標株の増殖のハローを観察することができた。対応するLB+アンピシリン・プレートから比較的大きいハローを生じたコロニーを拾い上げ、精製のため線状接種した。一次スクリーニングにおいて、4368個の変異体候補がスクリーニングされ、96個の一次候補が同定された。それらを再スクリーニングすると、30個が残りも優れているようであり、即ち比較的大きい指標株のハローを生じた。
【0146】
前記のようにして単離されたプラスミド含有株のうちの6個を用いて実施した酵素アッセイにより、株のうちの3個が、対照株7101−17(DE3)/pKLN23−28由来の酵素よりも、グルコサミン−6−リン酸による阻害に対する感受性が低いことが示された。その株を、100μg/mLアンピシリン及び1mM IPTGを含有するLBブロス中で一夜増殖させた。これらの培養物から収集された細胞から調製された抽出物を、添加されたグルコサミン−6−リン酸の存在下及び非存在下で、(実施例2に記載の)分光測光アッセイを使用してグルコサミン−6−リン酸シンターゼについてアッセイした。11C、65A、及び8Aと名付けられた変異型クローンは、対照株よりもグルコサミン−6−リン酸に対する感受性が有意に低かった(図6)。その他の変異体は、このアッセイにより対照と区別不可であった。
(実施例6)
以下の実施例は、生産物阻害の減少を引き起こすglmSの変異を有するグルコサミン産生株の構築及び特徴決定の記載である。
【0147】
クローニングされたT7−glmS構築物をE. coli 染色体へ移入するために以前に使用されたATCC47002株に、前記のクローン11C、52B、及び8Aから単離されたプラスミドDNAを移入した。組み込みは、実施例2に記載の方法を使用して容易に達成され、組み込まれたDNAを実施例1に記載のようなP1形質導入により7101−17(DE3)株に移入した。これらの手法により、PCRにより生成したglmS遺伝子内の変異の存在を除き、2123−12株と同一の遺伝子型を有する株が産生された。これらの新規な変異型産生株を、それぞれ2123−49、2323−51、及び2123−54と名付けた。株構築法の要約を図7に示す。
【0148】
2123−12株、2123−49株、2123−51株、及び2123−54株を、1mM IPTGを含有するLBブロス中で一夜増殖させた。これらの培養物から収集された細胞から調製された抽出物を、添加されたグルコサミン−6−リン酸の存在下及び非存在下で、実施例2に記載の分光測光アッセイを使用してグルコサミン−6−リン酸シンターゼについてアッセイした。これらのアッセイの結果を図8に示す。
【0149】
これらの変異体におけるグルコサミン産生は、2123−12と比較して有意に上昇していた。実施例4に既に記載されたグルコース及び硫酸アンモニウムの供給プロトコルを使用して増殖させた振盪フラスコ培養物におけるグルコサミン産生をアッセイすると、培養物を約14という細胞密度(O.D.600 として測定)(細胞の乾重量で約8.4g/l )まで増殖させたとき、2123−49株、2123−51株、及び2123−54株は、2123−12株の0.3g/l と比較して、それぞれ1.5g/l 、2.4g/l 、及び5.8g/l のグルコサミンを産生した(図9)。
(実施例7)
以下の実施例は、生産物阻害の減少を引き起こすglmSの変異を有する、さらに別の株の作製の記載である。
【0150】
実施例5に記載のようなエラー・プローンPCRにより生成した変異型プラスミドを含有するさらに6,344個のコロニーを、やはり実施例5に記載されている交差供給アッセイを使用してスクリーニングした。54個のコロニーが残りのコロニーよりも大きいハローを生じた。54個のコロニー全てからDNAを単離し、glmSの変異を除けば2123−12と同遺伝子の株を、実施例6に記載のようにして構築した。
【0151】
これらの変異体の大部分におけるグルコサミン産生は、2123−12株と比較して有意に上昇していた。新たに単離された変異体の中で、最も多くグルコサミンを産生した株は、2123−124と名付けられた株であった。実施例4に記載されたグルコース及び硫酸アンモニウムの供給プロトコルを使用して振盪フラスコにおける産生をアッセイすると、この株は、3.6g/l のグルコサミンを産生したが、それに対し、平行して行われた実験において2123−54株では4.3g/l であった。
(実施例8)
以下の実施例は、プラスミドpKLN23−28内に存在するクローニングされた野生型glmS遺伝子の配列決定の記載である。さらに、それぞれ2123−49株、2123−54株、及び2123−124株を構築するために使用された、変異型glmS遺伝子を含有するプラスミドpKLN23−49、pKLN23−54、及びpKLN23−124内に存在する配列を決定し、記載する。
【0152】
アンプリタック(AmpliTaq)DNAポリメラーゼを用いたアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)(ABI)プリズム・ダイ・ターミネーター・サイクル(Prism Dye Terminator Cycle)配列決定法を使用して、DNA配列決定反応を実施した。伸長した産物を、ABIDNA配列決定機373A又は377上のゲル電気泳動により分離した。ABIのABIシーケンシング・アナリシス(Sequencing Analysis )3.0ソフトウェア及びジーン・コーズ(Gene Codes)のシーケンチャー(Sequencher)3.1を使用して配列を分析した。
【0153】
配列決定に使用されたプライマーは以下の通りである。
PK-1:5′-TGGATGAGCAGACGATGG-3 ′(配列番号5)
PK-2:5′-TCCGTCACAGGTATTTATTC-3 ′(配列番号6)
PK-3:5′-AGCTGCGTGGTGCGTAC-3′(配列番号7)
PK-4:5′-GGACCGTGTTTCAGTTCG-3 ′(配列番号8)
PK-5A:5 ′-GCCGTGGCGATCAGTAC-3′(配列番号9)
PK-6A: 5 ′-GCCAATCACCAGCGGAC-3′(配列番号10)
PK-7:5′-ATGGTTTCCCGCTACTGG-3 ′(配列番号11)
PK-8:5′-GAACCAAGGTAACCCAGC-3 ′(配列番号12)
野生型glmS遺伝子を含有するプラスミドpKLN23−28のヌクレオチド配列は、本明細書において配列番号13として表される7408bpの核酸配列であると決定さ
れた。配列番号13の1130位と3313位の間の2184塩基対を、前記のプライマーを使用して決定した。配列番号13の1130〜3313位を表す核酸分子は、本明細書においてnglmS−282184と呼ばれ、さらに配列番号14として同定される。nglmS−282184は、実施例5に記載の変異型プラスミドを構築するために使用されたSpeI部位及びHinDIII 部位を含むことが示された。配列番号13の残りのDNA配列は、pKLN23−28の構築に使用されたベクターの既知の配列に基づいている。プラスミドpKLN23−49、pKLN23−54、及びpKLN23−124において、同一の2184塩基対の領域が配列決定された。これらのプラスミド(表5)の変異型nglmS遺伝子について論じる場合、変異型glmS含有プラスミドのヌクレオチド配列内の変異の特定のヌクレオチド位が、配列番号13を参照として使用して記載されることに注意されたい。
【0154】
配列番号13及び14は、配列番号15により表される核酸配列を有する、本明細書においてnglmS−281830と呼ばれる核酸分子であるglmS遺伝子産物(即ち、GlcN6Pシンターゼ酵素)をコードするオープン・リーディング・フレームを含有している。配列番号15は、配列番号13のヌクレオチド1253から3082であり、ヌクレオチド1253〜1255に開始コドンを有し、ヌクレオチド3080〜3082に終止コドンを有する。配列番号15は、本明細書においてGlcN6P−S−28と呼ばれる609アミノ酸のタンパク質をコードしており、その推定アミノ酸配列は本明細書において配列番号16として表される。本明細書に記載の変異株により産生された変異型glmS遺伝子産物について論じる場合、変異型glmS遺伝子産物のアミノ酸配列内の特定の変異が、配列番号16を参照として使用して記載されることに注意されたい。
【0155】
前記のプライマーは、配列番号13の以下のヌクレオチド位に相当する。
PK−1(配列番号5):配列番号13の1087〜1104位
PK−2(配列番号6):配列番号13と相補的な核酸配列の3378〜3359位
PK−3(配列番号7):配列番号13の1707〜1723位
PK−4(配列番号8):配列番号13と相補的な核酸配列の2772〜2755位
PK−5A(配列番号9):配列番号13の2667〜2683位
PK−6A(配列番号10):配列番号13と相補的な核酸配列の1798〜1782位PK−7(配列番号11):配列番号13の2177〜2194位
PK−8(配列番号12):配列番号13と相補的な核酸配列の2364〜2347位
pKLN23−28由来の核酸分子nglmS−281830の核酸配列(配列番号15又は配列番号13の1253〜3082位)は、2509位及び2510位(配列番号13を参照)において、発表されている配列(Walker,J.E,et al.,1984, 「大腸菌uncオペロン周囲のDNA配列(DNA sequence around the Escherichia coli unc operon )」,
Biochem.J. 224:799-815)と異なっている。本実施例において決定されたpKLN23
−28のこれらの位置のヌクレオチドは、それぞれG及びCであったが、発表されている配列において報告されているヌクレオチドはC及びGであった。それ以外は、glmS遺伝子の発表されている配列と決定された配列は同一であった。glmS遺伝子の上流及び下流で決定された配列は、pKLN23−28の構築に使用されたベクターの既知の配列及びプラスミドを構築するために使用された方法に基づき予想されたものであった。
【0156】
プラスミドpKLN23−49、pKLN23−54、及びpKLN23−124の変異型glmS遺伝子のヌクレオチド配列を、前記のpKLN23−28と同様にして決定した。変異は、これらのプラスミドの各々に見出された。pKLN23−28(配列番号13)について決定された野生型配列と比較した、対応する変異型glmS遺伝子産物の変異及び予測されるアミノ酸変化を、表5に要約する。
【0157】
【表5】

【0158】
プラスミドpKLN23−49は、変異型glmS遺伝子を含む、本明細書においてnglmS−492184と呼ばれる2184bp核酸分子を含有する。nglmS−492184の核酸配列は、本明細書において配列番号17として表される。本明細書においてnglmS−491830と呼ばれる、配列番号17のヌクレオチド124から1953までの核酸分子は、配列番号17のヌクレオチド124〜126に開始コドンを有し、ヌクレオチド1951〜1953に終止コドンを有する、本発明の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードするオープン・リーディング・フレームを表す。nglmS−491830の核酸配列は、本明細書において配列番号18として表される。配列番号18は、本明細書においてGlcN6P−S−49と呼ばれる609アミノ酸の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼ・タンパク質をコードし、その推定アミノ酸配列は本明細書において配列番号19として表される。配列番号17は、表5にプラスミドpKLN23−49について示されているような変異を除き、配列番号13の1130位から3313位(即ち、配列番号14)と同一の核酸配列を有する。配列番号18は、表5にプラスミドpKLN23−49について示されているような変異を除き、配列番号13の1253位から3082位(即ち、配列番号15)と同一の核酸配列を有する。
【0159】
プラスミドpKLN23−54は、変異型glmS遺伝子を含む、本明細書においてnglmS−542184と呼ばれる2184bpの核酸分子を含有する。nglmS−542184の核酸配列は、本明細書において配列番号20として表される。本明細書においてnglmS−541830と呼ばれる、配列番号20のヌクレオチド124から1953の核酸分子は、配列番号20のヌクレオチド124〜126に開始コドンを有し、ヌクレオチド1951〜1953に終止コドンを有する、本発明の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードするオープン・リーディング・フレームを表す。nglmS−541830の核酸配列は、本明細書において配列番号21として表される。配列番号21は、本明細書においてGlcN6P−S−54と呼ばれる609アミノ酸の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼ・タンパク質をコードし、その推定アミノ酸配列は本明細書において配列番号22として表される。配列番号20は、表5にプラスミドpKLN23−
54について示されているような変異を除き、配列番号13の1130位から3313位(即ち、配列番号14)と同一の核酸配列を有する。配列番号21は、表5にプラスミドpKLN23−54について示されているような変異を除き、配列番号13の1253位から3082位(即ち、配列番号15)と同一の核酸配列を有する。
【0160】
プラスミドpKLN23−124は、変異型glmS遺伝子を含む、本明細書においてnglmS−1242184と呼ばれる2184bpの核酸分子を含有する。nglmS−1242184の核酸配列は、本明細書において配列番号23として表される。本明細書においてnglmS−1241830と呼ばれる、配列番号23のヌクレオチド124から1953の核酸分子は、配列番号23のヌクレオチド124〜126に開始コドンを有し、ヌクレオチド1951〜1953に終止コドンを有する、本発明の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードするオープン・リーディング・フレームを表す。nglmS−1241830の核酸配列は、本明細書において配列番号24として表される。配列番号24は、本明細書においてGlcN6P−S−124と呼ばれる609アミノ酸の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼ・タンパク質をコードし、その推定アミノ酸配列は本明細書において配列番号25として表される。配列番号23は、表5にプラスミドpKLN23−124について示されているような変異を除き、配列番号13の1130位から3313位(即ち、配列番号14)と同一の核酸配列を有する。配列番号24は、表5にプラスミドpKLN23−124について示されているような変異を除き、配列番号13の1253位から3082位(即ち、配列番号15)と同一の核酸配列を有する。
【0161】
変異型glmS遺伝子が染色体に組み込まれている株に同一の変異が存在することを確認するため、2123−49株、2123−54株、及び2123−124株から単離されたゲノミックDNAからPCR産物を生成させた。PCR増幅のため、遺伝子の突然変異導入のための実施例3に列挙されたプライマー(配列番号3及び配列番号4)を使用した。PCR反応は、20mMトリスHCl(pH8.8)、10mM KCl、10mM (NH4)2SO4、20mM MgSO4、0.1%TritonX−100、0.1Mg/mL ヌクレアーゼ除去ウシ血清アルブミン、0.05mMの各デオキシヌクレオチド三リン酸、2μM の各プライマー、1.25UのクローニングされたPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)、及び160ngのゲノミックDNAからなる50μL の反応物で実施した。完
全な反応液を、ロボサイクラー・グラジエント96テンパラチャー・サイクラー(RoboCycler Gradient 96 Temparature Cycler )(Stratagene)内に設置した。94℃で3分間の後、(1)94℃で30秒間、(2)47℃で30秒間、(3)72℃で2分間という3段階を30サイクル繰り返した。この後に、72℃で7分間のインキュベーションを行った。
【0162】
得られたDNAは、無関係の産物に加え、予想された増幅産物を含有していた。glmS遺伝子を含有する産物をQIAquick PCR増幅キットを使用して精製した後、
精製された産物のアガロースゲル電気泳動、QIAquickゲル抽出キットを使用した正確なバンドの単離、及びこの単離されたDNAを鋳型として使用した再増幅を行った。単離されたDNAを含む反応物を、40ngのDNAを鋳型として使用し、増幅を20サイクルのみ実施したことを除いて、前記の最初の増幅と同様にして増幅した。この第二の増幅反応からの産物を、前記と同様にして回収した。
【0163】
ゲノミックDNA内の変異の存在を、プラスミド内に同定された変異を含有するDNA領域に特異的なプライマーを使用して確認した。2123−49に関しては、これらは、プライマーPK−1(配列番号5)、PK−3(配列番号7)、PK−4(配列番号8)、及びPK−5A(配列番号9)を含んでいた。2123−124に関しては、プライマーPK−1(配列番号5)、PK−4(配列番号8)、及びPK−5(配列番号9)を使用した。2123−54に関しては、前述の8個のプライマー全て(配列番号5〜12)
を使用して完全なPCR産物を配列決定した。PCR産物の配列決定により、プラスミドから同定され、表5に列挙された変異の存在が確認された。
(実施例9)
この実施例は、2123−54株からの、472位におけるグリシンからセリンへの改変のみを含有する産物(配列番号22)をコードする変異型glmS遺伝子を含有する株の構築の記載である。
【0164】
表5に示されたように、2123−124株のGlcN6Pシンターゼ酵素(GlcN6P−S−124)のアミノ酸変化は、469位におけるロイシンからプロリンへの改変(配列番号25)のみであり、そのことは、この変異が2123−124株によるグルコサミンの過剰産生を担っていることを明白に定義している。これは、2123−54株のGlcN6P−S−54の472位におけるグリシンからセリンへの改変(gly→ser472;配列番号22)が、同様に、この株のグルコサミン過剰産生表現型を担っている可能性を示唆するであろう。これを証明するため、プラスミドpKLN23−54をEcoRI及びHinDIII で消化することにより、2123−54株のGlcN6P−S−54アミノ酸配列(配列番号22)内の他の2つのアミノ酸改変(即ち、Ala→Thr39及びArg→Cys250)から、その改変を単離した。これらの各酵素は、プラスミド上に非反復分解部位を有しており、それぞれ2241位及び3305位(pKLN23−28に関する配列番号13内の等価な位置に関して示された位置)で切断され、1064塩基対及び6344塩基対の断片を生じる。小さい方の断片は、gly→ser472改変がGlcN6P−S−54のこの部分における唯一のアミノ酸変化である変異を含有する。この小さい方の断片を、野生型glmS遺伝子を含有するpKLN23−28由来の対応する大きい方の断片とライゲートさせた。
【0165】
このライゲーションから得られた2つのプラスミドを、pKLN23−149及びpKLN23−151と名付けた。プライマーPK−1(配列番号5)、PK−3(配列番号7)、及びPK−4(配列番号8)を使用して、これらのプラスミド由来のDNAを配列決定することにより、これらのプラスミドが、プラスミドpKLN23−54内に存在する2666位の変異を含有するが、1367位及び2000位の変異は含有しないことが確認された(表5、配列番号13を参照)。
【0166】
プラスミドpKLN23−149の1130位と3313位(これらの位置は配列番号13の等価な位置に対して決定される)の間の2184塩基対の核酸配列は、本明細書において核酸分子nglmS−1492184と呼ばれ、その核酸配列は配列番号26により表される。配列番号26は、配列番号26のヌクレオチド124〜126に開始コドンを有し、ヌクレオチド1951〜1953に終止コドンを有する、本発明の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードするオープン・リーディング・フレームを表す、本明細書においてnglmS−1491830と呼ばれる、ヌクレオチド124から1953の核酸配列を含有する。nglmS−1491830の核酸配列は、本明細書において配列番号27として表される。配列番号27は、本明細書においてGlcN6P−S−149と呼ばれる609アミノ酸の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼ・タンパク質をコードし、その推定アミノ酸配列は本明細書において配列番号28として表される。
【0167】
プラスミドpKLN23−151の1130位と3313位(これらの位置は配列番号13の等価な位置に対して決定される)の間の2184塩基対の核酸配列は、本明細書において核酸分子nglmS−1512184と呼ばれ、その核酸配列は配列番号29により表される。配列番号29は、配列番号29のヌクレオチド124〜126に開始コドンを有し、ヌクレオチド1951〜1953に終止コドンを有する、本発明の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードするオープン・リーディング・フレームを表す、本明細書においてnglmS−1511830と呼ばれる、ヌクレオチド124から1953の核
酸配列を含有する。nglmS−1511830の核酸配列は、本明細書において配列番号30として表される。配列番号30は、本明細書においてGlcN6P−S−151と呼ばれる609アミノ酸の変異型グルコサミン−6−リン酸シンターゼ・タンパク質をコードし、その推定アミノ酸配列は本明細書において配列番号31として表される。
【0168】
図7に示されたスキームを使用して、gly→ser472改変を与える変異を除き、2123−12株と同遺伝子の株を構築した。2123−149株及び2123−151株が、それぞれpKLN23−149及びpKLN23−151から生成した。2666位(配列番号13)の変異の存在及び1367位及び2000位の変異の欠如を、実施例8に記載の方法を使用してこれらの株のゲノミックDNAからのPCR産物の配列決定により確認した。
(実施例10)
この実施例は、2123−12株、2123−49株、2123−54株、2123−124株、2123−149株、及び2123−151株由来のGlcN6Pシンターゼ酵素の特性を比較する。
【0169】
前記の実施例に記載の2123−12株、2123−49株、2123−54株、2123−124株、2123−149株、及び2123−151株を、37℃でLBブロス中で一夜増殖させ、次いで新鮮なLBブロスに移した。培養物を、600nmにおける吸光度が0.8から0.9になるまで増殖させ、次いで1mM IPTGの添加によりGlcN6Pシンターゼ産生を誘導した。培養物をさらに3時間37℃で増殖させ、収集した。実施例2の記載と同様にしてこれらの培養物から収集された細胞から抽出物を調製し、20mMというフルクトース−6−リン酸濃度を使用したことを除けば実施例2の記載と同様な分光測光アッセイを使用してグルコサミン−6−リン酸シンターゼに関してアッセイした。添加されたグルコサミン−6−リン酸の存在下及び非存在下で酵素をアッセイした。グルコサミン−6−リン酸の非存在下では、これらの酵素に関して測定された比活性は、2123−124株由来の酵素を除き類似していた。表6のデータは、2123−124株が、比較的低い活性を有する酵素の異型をコードすることを示唆している。
【0170】
【表6】

【0171】
図10は、2123−49株、2123−54株、及び2123−124株由来のGlcN6Pシンターゼ酵素のGlcN6Pによる阻害が、2123−12株由来の酵素よりも有意に少ないことを示している。2123−149株及び2123−151株由来の酵素のGlcN6Pによる阻害は、2123−12株由来の酵素よりもわずかに少なかった。
【0172】
酵素の熱安定性も、これらの抽出物を使用して調査した。抽出物を45℃(図11A)又は50℃(図11B)で様々な時間インキュベートし、次いで分光測光アッセイを使用してアッセイした。図11A及び11Bは、2123−49及び2123−54由来の酵素が、2123−12株由来の野生型酵素よりもはるかに不安定であることを示している。2123−124株由来の酵素の安定性は、野生型酵素とほぼ同等であり、2123−149株及び2123−151株由来の酵素の安定性は、本明細書に記載のインキュベーション条件下ではわずかに低かった。
(実施例11)
以下の実施例は、グルコサミン産生に対するイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)濃度及び温度の効果を例示する。
【0173】
2123−54株及び2123−124株の培養物を、20g/l グルコース、1mM MgSO4、0.1mM CaCl2、及び様々な量のIPTGが補充されたM9A培地(14g/l K2 HPO4 、16g/l KH2 PO4 、1g/l クエン酸Na3 ・2H2 O、5g/l (NH4 2 SO4 (pH7.0))上で37℃で20時間増殖させた。増殖時間の最後に、試料を採取し、実施例2に記載のエルソン−モルガン・アッセイを使用して、培養上清中のグルコサミン濃度をアッセイした。図12に示された結果は、産生にとって最適なIPTG濃度が約0.2mMであることを示している。
【0174】
続いて、2123−54株を、0.2mM又は1mMのIPTGを含む振盪フラスコ内で、30℃又は37℃で、前記と同一の培地で増殖させた。これらのフラスコ培養物にも、実施例4に記載のようなグルコース及び硫酸アンモニウムを供給した。様々な間隔で、試料を採取し、培養上清中のグルコサミン濃度を、実施例2に記載のエルソン−モルガン・アッセイを使用してアッセイした。図13は、この実験条件下においては、IPTG濃度の差異と相関したグルコサミン産生の差異がほとんど存在しなかったことを示している。しかし、30℃における増殖は、37℃における増殖よりも高いグルコサミン産生を生じた。図14A及び14Bに示された結果は、30℃(図14A)においてはグルコサミン産生が増殖停止後にも継続するが、37℃(図14B)においては、増殖及びグルコサミン産生が協調して起こること示した。
【0175】
2123−49株及び2123−124株を30℃で0.2mM IPTGと共に増殖させた場合、図15A(2123−49)及び15B(2123−124)に示されるように、グルコサミン産生は増殖停止後にも起こった。37℃で観察されたように、最も高いグルコサミン濃度は、2123−54株で得られ、次いで2123−124及び2123−49で高い濃度が得られた。2123−12よりも無視しうる程度に高い濃度を産生した2123−149株及び2123−151株も試験された(表7)。
【0176】
【表7】

【0177】
(実施例12)
以下の実施例は、2123−54株の発酵器培養物において、振盪フラスコと比較して高い濃度でグルコサミンが産生されうることを例示する。この実施例は、発酵器において、株2123−54が30℃において37℃よりも多いグルコサミンを産生することも例示する。
【0178】
2123−54株の発酵器培養物を、表8に示された培地中で培養した。pHをpH6.7に調節するためNaOHを使用して発酵を実施し、33%グルコース、8%硫酸アンモニウムの混合物を供給した。空気飽和の20%よりも大きい溶解酸素濃度を維持するため、曝気及び攪拌を調整した。
【0179】
【表8】

【0180】
以下の実験において、600mLという初期容量を含有する1リットル容器において3種の発酵を実施した。試験された変数は以下の通りである。
発酵器1:グルコースが発酵器に蓄積しないような速度で33%グルコースと8%硫酸アンモニウムの混合物を供給した。増殖は37℃で行った。
【0181】
発酵器2:30℃で増殖を行ったことを除き、発酵器1と同様。
発酵器3:発酵器中のグルコース濃度を5から10g/l に一定に維持するため供給速度を増加させたことを除き、発酵器2と同様。
【0182】
これらの発酵の結果を、図16A、16B、及び16Cに示す。発酵器1(図16A)及び2(図16B)の結果の比較は、振盪フラスコで観察されたように、グルコサミン価が30℃において37℃よりも著しく高いことを示している。観察された最大グルコサミン濃度は、30℃で増殖させたグルコース過剰発酵器3(図16C)における10.9g/l であった。30℃において、増殖及びグルコサミン濃度は同調しているようであり、グルコース過剰では増殖にとってわずかな利点が存在するようである。発酵器3と類似した条件下で実施した、その後の発酵実験において、12g/l を超えるグルコサミン濃度が得られた(データは示していない)。
【0183】
要約すると、本発明者らは、E. coli の最初のグルコサミン過剰産生株を作出するための代謝操作の使用を本明細書において記載した。本明細書において立証された概念は、アミノ糖の産生のための経路を有する任意の微生物、又はアミノ糖の産生のための経路が導入された任意の組換え微生物に一般的に適用可能であろう。グルコサミン産生株を作出するための本手法に加え(即ち、グルコサミン分解及び取り込みの排除並びにglmS遺伝子の発現の増加)、本発明者らは、グルコサミン−6−リン酸によるグルコサミン−6−リン酸シンターゼの生産物阻害を減少させることにより、グルコサミン産生が改善されることも確立した。
【0184】
本発明の様々な実施態様を詳細に記載したが、それらの実施態様の修飾及び適合が当業
者に想到されるであろうことは明らかである。しかし、そのような修飾及び適合が、以下の請求の範囲に記載される本発明の精神及び範囲に含まれることを明確に理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵によってグルコサミンを製造する方法であって、
(a)グルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性を増大する少なくとも一つの遺伝的修飾を有する微生物を炭素、窒素及びリン酸塩の同化できる供給源を含む発酵培地で培養する工程であって、前記遺伝的修飾が、
(i)グルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性を有する、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている組換え核酸分子による前記微生物の形質転換と、
(ii)前記グルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性を増大する、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている遺伝子の遺伝的修飾であって、前記遺伝的修飾が、グルコサミン−6−リン酸シンターゼをコードしている前記遺伝子の少なくとも一つのヌクレオチドの欠失、挿入及び置換からなる群から選択される少なくとも一つの核酸修飾を結果として生じ、前記少なくとも一つの核酸修飾がグルコサミン−6−リン酸シンターゼの活性の増大を結果として生じることとからなる群から選択され、
前記培養する工程により、グルコサミン−6−リン酸及びグルコサミンからなる群から選択される生成物が前記微生物から生成されて蓄積される工程、及び
(b)前記生成物を回収して精製する工程
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【公開番号】特開2010−166934(P2010−166934A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110574(P2010−110574)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【分割の表示】特願2000−560279(P2000−560279)の分割
【原出願日】平成11年7月15日(1999.7.15)
【出願人】(500297513)ディーシーブイ・インコーポレイテッド・ドゥーイング・ビジネス・アズ・バイオ−テクニカル・リソーシィズ (1)
【Fターム(参考)】