説明

グルコシルセラミド含有麺類

【課題】硬さと粘弾性のバランスがとれ茹で伸びが遅い良好な食感の麺類を提供することを目的とする。
【解決手段】 穀粉又は穀粉と澱粉の合計100質量部に対しグルコシルセラミド0.002〜0.09質量部を含有することを特徴とする麺類である。 本発明に使用するグルコシルセラミドとは、スフィンゴ糖脂質の1種であり複合脂質のうち糖脂質に分類される。 化学構造は、長鎖網のアルコールであるスフィンゴイド塩基のアミノ基に脂肪酸が結合したセラミド骨格にグルコースが結合したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシルセラミドを含有する麺類に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類の食感改良を目的として様々な添加物を使用する試みがなされている。
例えば、アセチル化澱粉、グアガム、カラギーナン等の添加物を配合し麺のやわらかさ、硬さ、粘弾性に優れた冷凍麺が知られている(例えば特許文献1参照)。
一方、グルコシルセラミドは美容効果を得る素材として美容健康食品に使用されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−311359号公報
【特許文献2】特開2002−186457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬さと粘弾性のバランスがとれ茹で伸びが遅い良好な食感の麺類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、麺類にグルコシルセラミドを含有させることにより、硬さと粘弾性のバランスがとれ茹で伸びが遅い良好な食感の麺類を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は穀粉又は穀粉と澱粉の合計100質量部に対しグルコシルセラミド0.002〜0.09質量部を含有することを特徴とする麺類である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の麺類は、硬さと粘弾性のバランスがとれ茹で伸びが遅い良好な食感を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用するグルコシルセラミドとは、スフィンゴ糖脂質の1種であり複合脂質のうち糖脂質に分類される。
化学構造は、長鎖網のアルコールであるスフィンゴイド塩基のアミノ基に脂肪酸が結合したセラミド骨格にグルコースが結合したものである。
動物、植物、真菌類などに広く存在し、毒性は極めて低い。
グルコシルセラミドは動物、植物、真菌類から公知の抽出方法により得ることができる。
例えば、とうもろこし、米、小麦等の穀物を原料とし、抽出溶媒として、エタノール、含水エタノール、メタノール、含水メタノール、ヘキサン等を使用して、攪拌抽出、還流抽出、浸漬抽出等により得ることができる。
得られたグルコシルセラミドは常温で白色個体である。
【0008】
このように抽出して得られるグルコシルセラミドにはセラミド部位のスフィンゴイド塩基の構造の差異により、米、とうもろこしに多く含まれる4−トランス,8−シス−スフィンガジエニン、大豆に多く含まれる4−トランス,8−トランス−スフィンガジエニン、小麦、ライ麦に多く含まれる8−シス−スフィンゲニン等に分類できる。
【0009】
以下に、一例として2−ヒドロキシ脂肪酸残基が炭素数20からなる飽和脂肪酸で、スフィンゴイド塩基部位が4−トランス,8―シス−スフィンガジエニンの構造を示す。
【化1】

【0010】
得られた、グルコシルセラミドの組成は、含水エタノール等で分解処理し、スフィンゴイド塩基、脂肪酸及び糖の組成をガスクロマトグラフィーで分析することにより求めることができる。
【0011】
得られた、グルコシルセラミドの各組成の分析結果の一例を表1に示す。
【表1】

【0012】
上記表中、16h:0とは、2−ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が16で炭素-炭素二重結合が0であることを表し、N.D.とは検出しなかったことを示す。
【0013】
本発明で使用するグルコシルセラミドの、抽出原料、抽出方法は、特に限定されず、上記の原料や方法により抽出したものを使用できる。
なお、実施例には、とうもろこし種子から得られたグルコシルセラミドを使用した。
【0014】
また、保存性や取り扱いの利便性を向上させるため界面活性剤、賦形剤、潤沢剤、佐剤、皮膜形成剤、分散剤などを添加したものも使用することができ、市販品も使用することができる。
【0015】
グルコシルセラミドの使用量は穀粉又は穀粉と澱粉の合計100質量部に対して0.002〜0.09質量部である。
使用量が0.09質量部を超えるとやわらかくなりすぎ硬さと粘弾性のバランスが悪くなる。
また0.002質量部未満では本発明の効果が十分に発揮できない。
【0016】
本発明の麺類に使用する穀粉は、特に限定されず、小麦粉、デュラム小麦粉、そば粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末等を使用することができる。
【0017】
また、本発明の麺類に使用できる澱粉として小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さつまいも澱粉、さご澱粉、くず澱粉等を挙げることができる。
未加工の澱粉に限定されるものではなくα化した澱粉やエーテル化、酢酸エステル化、架橋、酸化などの処理をした化工澱粉も使用することができる。
【0018】
本発明の麺類は、グルコシルセラミドを特定割合で含有することに特徴があり、グルコシルセラミド以外は公知の麺類に使用する原料を使用できる。
使用できる原料としては、小麦蛋白、大豆蛋白、全卵、卵黄、卵白、糖アルコール、かん粉、食塩、りん酸塩、香辛料、着色料、調味料、フレーバー、天然ガム類、油脂類、乳化剤、アルコール、デキストリン、酵素、酸性剤、保湿剤、脱脂粉乳等が挙げられる。
また、本発明の麺類の製造方法は特に限定されず従来公知の方法が使用できる。
【0019】
例えば、 押出し製麺法によるスパゲティ、マカロニ等の押出し麺、うどん、生パスタ等のロール式圧延製麺法による麺、手延製麺法による手延そうめん、手延うどん、手延そば、手延中華麺等の手延麺、そば等の小麦粉以外の穀粉、澱粉を含有する麺、ギョウザ等の皮物、中華麺等のアルカリ麺を挙げることができる。
また製品形態として、生麺、茹で麺、半生麺、乾麺、冷凍麺、即席麺を挙げることができる。
【実施例】
【0020】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[うどん]
[実施例1〜4]
表2に示す原料を均一に混合し、あらかじめ水34質量部と塩2質量部を混合した食塩水を加え、麺用横型ミキサーで13分ミキシングしそぼろを作り、製麺ロールで整形1回、複合1回、圧延3回行い厚さ2.0mmの麺帯にし、麺用切り刃10番角で麺線にし、長さ25cmに切り、本発明のグルコシルセラミドを含有するうどんを得た。
[比較例1〜2]
実施例1において、配合を表2のとおり変更した以外は実施例1と同様にしてうどんを得た。
【0021】
【表2】

【0022】
前記うどんを、生麺重量の10倍量の沸騰水で20分間茹で、茹で後流水で1分間冷却し、10名のパネラーにより以下の基準で官能評価を行った。
【0023】
食感
5点・・・硬さ、粘弾性のバランスが非常に良い
4点・・・硬さ、粘弾性のバランスが良い
3点・・・普通
2点・・・硬さ、粘弾性のバランスが悪い
1点・・・硬さ、粘弾性のバランスが非常に悪い
【0024】
得られた評価結果を表3に示す。
【表3】

【0025】
比較例1はコントロールである。
実施例1〜4は、硬さ、粘弾性のバランスが良く良好な食感であった。
グルコシルセラミドを0.1質量部添加した場合は、やわらかくなりすぎ硬さ、粘弾性のバランスが悪かった。
【0026】
[冷麦]
[実施例5〜8]
表4に示す原料を均一に混合し、あらかじめ水34質量部と塩2質量部を混合した食塩水を加え、麺用横型ミキサーで13分ミキシングしそぼろを作り、製麺ロールで整形1回、複合1回、圧延5回行い厚さ1.0mm麺帯にし、麺用切り刃20番角で麺線にし、乾燥して長さ25cmに切り、本発明のグルコシルセラミドを含有する冷麦を得た。
【0027】
[比較例3〜4]
実施例5において、配合を表4のとおり変更した以外は実施例1と同様にして冷麦を得た。
【0028】
【表4】

【0029】
前記冷麦を乾麺重量の10倍量の沸騰水で2分30秒間茹で、茹で後流水で1分間冷却し、10名のパネラーにより、以下の基準により官能評価を行った。
【0030】
食感
5点・・・硬さ、弾力のバランスが非常に良く、つるみも非常にある
4点・・・硬さ、弾力のバランスが良く、つるみもある
3点・・・普通
2点・・・硬さ、弾力のバランスが悪く、つるみもない
1点・・・硬さ、弾力のバランスが非常に悪く、つるみも非常にない
【0031】
得られた評価結果を表5に示す。
【表5】

【0032】
比較例3はコントロールである。
実施例5〜8は、良好な食感であった。
グルコシルセラミドを0.1質量部添加した場合は、やわらかくなりすぎ硬さ、粘弾性のバランスが悪かった。
【0033】
[中華麺]
[実施例9〜11]
表6示す原料を均一に混ぜ、あらかじめ水32質量部、食塩1質量部及びかん粉1質量部を混ぜた捏ね水を加え、麺用横型ミキサーで13分間ミキシングしそぼろを作り、製麺ロールを使用し整形1回、複合1回、圧延4回行い厚さ1.5mmの麺帯にし、麺用切り刃20番角で麺線にし、長さ25cmに切り、本発明のグルコシルセラミドを含有する中華麺を得た。
かん粉は炭酸カリウム:炭酸ナトリウム=3:2の混合物である。
【0034】
[比較例5〜7]
実施例9において、配合を表6のとおり変更した以外は実施例と同様にして中華麺を得た。
【0035】
【表6】

【0036】
前記中華麺を生麺重量の10倍量の沸騰水で3分間茹で、どんぶりに温かいスープを用意しておき茹で上がった麺を入れ、10名のパネラーにより茹で上げ直後及び7分経過後に以下の基準により官能評価を行った。
【0037】
食感
5点・・・硬さ、弾力のバランスが非常に良い。
4点・・・硬さ、弾力のバランスが良い。
3点・・・普通
2点・・・硬さ、弾力のバランスが悪い。
1点・・・硬さ、弾力のバランスが非常に悪い。
【0038】
得られた評価結果を表7に示す。
【0039】
【表7】

【0040】
比較例5はコントロールである。
実施例9〜11は、硬さ、弾力のバランスが良く良好な食感であった。
比較例6は、グルコシルセラミドに分散剤とし使用されていたサイクロデキストリンの添加効果を確認したものである。
サイクロデキストリンのみを添加した場合には、グルコシルセラミドを添加した場合の食感改良効果は認められなかった。
グルコシルセラミドを0.1質量部添加した場合は、やわらかくなりすぎ硬さ、粘弾性のバランスが悪かった。
【0041】
[押し出し式スパゲッティ]
[実施例12〜15]
表8に示す原料を均一に混ぜ、水27質量部を加え、麺用横型ミキサーで10分間ミキシングしそぼろを作り、パスタ押し出し試験機で押し出し、乾燥機で乾燥させ、乾燥後製品径1.7mm、長さ25cmの本発明のグルコシルセラミドを含有するスパゲッティを得た。
【0042】
[比較例8〜9]
実施例12において、配合を表8のとおり変更した以外は実施例と同様にしてスパゲッティを得た。
【0043】
【表8】

【0044】
前記スパゲッティを乾麺重量の10倍量の沸騰水で8分間茹で、10名のパネラーにより、以下の基準により官能評価を行った。
【0045】
食感
5点・・・硬さ、弾力のバランスが非常に良い。
4点・・・硬さ、弾力のバランスが良い。
3点・・・普通
2点・・・硬さ、弾力のバランスが悪い。
1点・・・硬さ、弾力のバランスが非常に悪い。
【0046】
得られた評価結果を表9に示す。
【表9】

【0047】
比較例8はコントロールである。
実施例12〜15は、良好な食感であった。
グルコシルセラミドを添加することにより、食感に改良が認められた。
グルコシルセラミドを0.1質量部添加した場合は、やわらかくなりすぎ硬さ、粘弾性のバランスが悪かった。
【0048】
[そば]
[実施例16]
グルコシルセラミド0.002質量部を準強力小麦粉60質量部、そば粉40質量部に加え、水28質量部を加え、ロール式圧延製麺方法でそばを製造した。麺サイズは切刃#18番、厚み1.3mmとした。3分間で茹で、冷しざるそばで試食したところ、ややかたさのある良好な食感であった。
【0049】
[ギョウザの皮]
[実施例17]
グルコシルセラミド0.002質量部を準強力小麦粉100質量部に加え、塩1質量部、大豆サラダ油1質量部、水36質量部を加えロール式圧延製麺方法でギョウザの皮を製造した。皮サイズは直径8cm、厚み0.7mmとした。餃子の具をつつみ、茹で調理し水餃子として試食したところ、適度な歯ごたえが有り、良好な食感であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉又は穀粉と澱粉の合計100質量部に対しグルコシルセラミド0.002〜0.09質量部を含有することを特徴とする麺類。

【公開番号】特開2007−135436(P2007−135436A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331204(P2005−331204)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】