説明

ケ−ブル接続確認試験方法及び試験装置

【目的】 電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブルの取替等におけるケ−ブル接続作業の誤接続を、機器の単体動作確認試験を実施することなく、簡易的に判別し、試験日数及び検査員,作業員の工数削減を図る。
【構成】 ケ−ブル単体工事で布設した動力用ケ−ブル5の各線心に直流電流を流し、機器負荷側の各相間の直流電圧を測定し、この測定電圧値により、接続を正誤を判別する。これにより、ケ−ブル接続作業の誤接続を機器の単体動作確認試験をすることなく簡易的に判別することができる、試験日数及び検査員、作業員の工数が削減される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブル接続工事に伴うケ−ブル接続作業後のケ−ブル接続確認試験方法及び試験装置に係り、特に、実際に三相交流を供給して電気回転機器に回転動作させなくてもケーブル接続の正誤を正確に確認するのに好適なケーブル接続確認試験方法及びの装置に関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電所の定期点検及び改造工事において、電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブルは、ケ−ブル自体の経年劣化、ケ−ブルル−トの変更、機器搬入時の干渉、設備増設等の改造工事による干渉、ケ−ブル調査等の理由で、取替又は脱着並びに一時撤去・復旧のみのケ−ブル単体工事の発生が年々増えている。
【0003】従来、電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブル取替又は脱着ならびに一時撤去・復旧のみのケ−ブル単体工事に伴うケ−ブル接続後の機器系統が機能維持されていることを確認するための確認試験として、機器の単体動作試験を実施している。
【0004】図5は、電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブル取替又は脱着並びに一時撤去・復旧のみのケ−ブル単体工事の対象回路の一例を示す回路図(a)と実機の側面図(b)である。図5において、三相誘導電動機端子箱1内の端子2と、電源盤3内の端子4とを接続する動力用ケ−ブル5は、取替又は脱着ならびに一時撤去・復旧時に、ケ−ブル単体工事を実施する。この工事では、動力用ケ−ブル5を布設して端子2,3に接続した後、三相誘導電動機6の機能が維持されていることを確認するために単体動作試験を実施する必要がある。しかしその前に、万一、動力用ケーブル5と端子2,3との誤接続により、三相誘導電動機6が逆回転してポンプ7及びその系統を損傷してしまう事故を防止するため、三相誘導電動機6とポンプ7とを連結しているカップリング8を取外す作業を行わなければならない。
【0005】カップリング8の取外し作業終了後、三相誘導電動機6の単体動作試験を実施して動力用ケーブル5と端子2,3との接続が正確であることを確認した後、三相誘導電動機6とポンプ7をカップリング8にて連結し復旧する。更にこの復旧後、ポンプ7の動作確認試験を実施する。
【0006】尚、従来技術に関連するものとして、例えば特開平3−221876号等がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の確認試験の作業ステップでは、この作業ステップを実施するために、試験日数及び検査員,作業員の工数が膨大にかかるという問題がある。特に、大型の縦型ポンプにおいては、三相誘導電動機とポンプとを連結しているカップリングの取外し/取付けの際、大掛かりな作業足場,ポンプロータの落下防止装置の取り付けなど大規模な工事が必要であり、この工事を実施するための作業日数と作業員の工数は膨大な量である。また、万一の誤接続によって起こる対象機器の誤動作による関連機器への損傷防止対策が考慮されておらず、その対策を実施するために、更に試験日数及び検査員、作業員の工数が膨大にかかるという問題もある。
【0008】本発明の目的は、電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブル取替又は脱着並びに一時撤去・復旧のみのケ−ブル単体工事によるケ−ブル接続作業の誤接続の有無を、機器の動作試験を実施すること無く、簡易的に正確に判別し、試験日数及び検査員,作業員の工数削減を図ることのできるケ−ブル接続確認試験方法及び試験装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、ケ−ブル単体工事で布設した動力用ケ−ブルの各線心に直流電流を流し、機器負荷側の各相間の直流電圧を測定し、測定した直流電圧値により、接続の正誤を判別することで、達成される。
【0010】更に好適には、動力用ケ−ブルの各線心に直流電流を流すために、直流電流を流すための蓄電池、直流電流を開閉するための開閉器及び電流の流れを確認する電流計から成る直流電源供給機と、機器負荷側の各相間の直流電圧を測定し、誤接続を判別するために、機器負荷側の各相間の電圧値を測定する電圧測定器と電圧測定器からの測定信号を変換する変換器、変換器から伝達された信号により誤接続を判別する計算機から成るケ−ブル接続判別機を用意する。
【0011】
【作用】三相交流電源を動力としている電気回転機器において、従来のケ−ブル接続確認試験方法の機器単体動作試験では、機器の回転方向にて誤接続を判別しているため、各相が全て誤接続した場合は、回転方向が正常接続と同じとなるため、判別できない場合がある。
【0012】しかし、本発明では、動力用ケ−ブルの各線心に直流電流を流し、機器負荷側の各相間の直流電圧値を測定して、その電圧値によってケ−ブル接続作業による誤接続を判別するため、各相が全て誤接続されている場合においても判別が可能となり信頼性も向上できる。
【0013】このため、機器の単体動作確認試験を実施すること無く、ケ−ブル誤接続の判別が可能となり、大幅な試験日数及び検査員、作業員の工数削減ができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例に係るケ−ブル接続確認試験装置の全体回路図である。動力用ケ−ブル5を取替または、脱着並びに一時撤去・復旧のケ−ブル単体工事を実施する前に、蓄電池9を直列に配置した回路に、抵抗器10と、開閉器11と、直流電流の流れを確認する電流計12を備えた直流電源供給機13をビニル絶縁電線15にて、電源盤3内の各相(U,V,W)の端子4に接続する。そして、直流電源供給機13の開閉器11を「閉」に操作して、動力用ケ−ブル5の各線心に直流電流を流す。
【0015】三相誘導電動機端子箱1内の端子2において、各相間(U−W間、V−W間、U−V間)の直流電圧を直流電圧計14を用いて夫々測定し記録した後、直流電源供給機13の開閉器11を「開」に操作して、電源盤3内の端子4から直流電源供給機13を外し、動力用ケ−ブル5の取替または、脱着並びに一時撤去・復旧のケ−ブル単体工事を実施する。
【0016】ケ−ブル単体工事による動力用ケ−ブル5接続後、動力用ケ−ブル5接続前と同様の手順で、三相誘導電動機の端子箱1内の端子2において各相間の直流電圧を直流電圧計14にて測定する。
【0017】ここで、本発明の原理について、図4を用いて説明する。図4に、ケーブルの接続ケースと、同一の起電力を直列配置し各線心へ同時に直流電流を流す回路における各相間(U−V間,V−W間,U−W間)の直流電圧値(Vuv間,Vvw間,Vuw間)を示す。三相交流路において、図4の回路図に示すように、ケ−ブル接続作業の誤接続のケ−スは、U−Wとの誤接続、V−Wとの誤接続、U−Vとの誤接続、UVW全て誤接続の4ケ−スである。
【0018】図4に示す正常接続回路での各相間の電圧値(Vuv間,Vvw間,Vuw間)の理論的根拠を以下に示す。起電力によって、電気回路中の任意の接続点Pに流入する直流電流Iu,Iv,Iwの総和は、その接続点Pから流入する直流電流Iu,Iv,Iwの総和に等しい事からIu=Iw+Ivとなる。
【0019】また、回路網中の任意の閉回路をたどって一周(A,B,C)したとき、その閉回路中の起電力電圧値の代数和は、電圧降下の代数和に等しいことから、A閉回路は、E=Iu(Z+R)+Iv(Z+R)
B閉回路は、E=−Iv(Z+R)+Iw(Z+R)
C閉回路は、2E=Iv(Z+R)+Iw(Z+R)
となる。
【0020】このことから、各相間の直流電流値Iu,Iv,Iwは、Iu=E/Z+R,Iv=0,Iw=E/Z+Rとなる。
【0021】従って、各相間の直流電圧値(Vuv間,Vvw間,Vvw間,)は、Vuv=ZIu=Z/(Z+R)・EVvw=ZIv=Z/(Z+R)・EVuw=ZIu+ZIw=2Z/(Z+R)・Eとなる。これをケーブル接続確認試験の判定基準とする。
【0022】上記と同様に、ケーブル誤接続の各ケースによる各相間の直流電圧値を求めると、図4右下欄に示す直流電圧値となる。判定基準とケーブル誤接続による各ケースの各相間の直流電圧値を比較すると、ケーブル誤接続の場合、各相間の直流電圧値のいずれかに負の値が生じる。また、その負の値が各相間での発生箇所の関係から、どのケースの誤接続かがわかる。さらに、ケーブル単体工事実施前と実施後との測定直流電圧値を比較することで、より信頼性の高いケーブル誤接続の判別が可能となる。
【0023】次に、本実施例に係るケ−ブル接続確認試験装置を用いたケ−ブル接続確認試験の一例を、図2,図3を参照して説明する。図2は、本実施例に係るケ−ブル接続確認試験装置によるケ−ブル接続確認試験の回路図である。また、図3は、本実施例で使用するケ−ブル接続判別機のシステム構成図である。
【0024】前述したケ−ブル接続確認試験方法の手順と同様、以下の手順で行う。
【0025】(1)ケ−ブル単体工事を実施する前に、蓄電池9を直列に配置した回路に、抵抗器10と開閉器11と直流電流の流れを確認する電流計12を備えた直流電源供給機13を、ビニル絶縁電線15にて電源盤3内の各相(U,V,W)端子4に接続する。
【0026】(2)各相間の直流電圧を測定する電圧測定器16と、電圧測定器16からの測定信号を変換する変換器17と、変換器17から伝達された信号により誤接続を判別する計算機18を備えたケ−ブル接続判別機19を、計測ケ−ブル20にて、三相誘導電動機端子箱1内の端子2に接続する。
【0027】(3)直流電源供給機13の開閉器11を「閉」に操作して、動力用ケ−ブル5の各線心に直流電流を流す。
【0028】(4)各相間(U−W間,V−W間,U−V間)の直流電圧値を電圧測定器16で測定し、測定結果を、変換器17を介して計算機18に送り、測定電圧値のデ−タ21をメモリに記憶させる。
【0029】(5)直流電源供給機13の開閉器11を「開」に操作し、電源盤3内の端子4から直流電源供給機13を取外すと共に、三相誘導電動機端子箱1内の端子2からケ−ブル接続判別機19を取外す。
【0030】(6)動力用ケ−ブル5の取替または、脱着並びに一時撤去・復旧のケ−ブル単体工事を実施する。
【0031】(7)ケ−ブル単体工事による動力用ケ−ブル5接続後、前記動力用ケ−ブル接続前と同様の手順でケ−ブル接続判別機19による各相間の直流電圧値21の測定及び計算機18に信号を送りこむ。
【0032】(8)ケ−ブル接続判別機19の計算機18には、予め図4に示す理論的に求めた正常接続及び各誤接続の各相間の電圧値22を記憶させてあり、そのデ−タとケ−ブル単体工事実施前に得た各相間の電圧値20のデ−タと、ケ−ブル単体工事実施後に得た電圧値21を比較処理し、誤接続であるかを判別した結果を画面に表示する。
【0033】本実施例によれば、ケ−ブル接続作業の誤接続を、機器の動作試験をすることなく、簡易的に判別することができ、試験日数及び検査員、作業員の工数を削減することが可能となる。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、ケ−ブル接続作業の誤接続を、機器の単体動作確認試験をすることなく、簡易的に判別することが可能となり、試験日数及び検査員、作業員の工数削減に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るケ−ブル接続確認試験の全体回路図である。
【図2】ケ−ブル接続確認試験装置の全体回路図である。
【図3】ケ−ブル接続判別機システム構成図である。
【図4】ケ−ブル誤接続回路説明図である。
【図5】ケ−ブル単体工事対象の回路図(a)及び側面図(b)である。
【符号の説明】
1…三相誘導電動機端子箱、2…三相誘導電動機端子箱内端子、3…電源盤、4…電源盤内端子、5…動力用ケ−ブル、6…三相誘導電動機、7…ポンプ、8…カップリング、9…蓄電池、10…抵抗器、11…開閉器、12、電流計、13…直流電源供給機、14…電圧計、15…ビニル絶縁電線、16…電圧測定器、17…変換器、18…計算機、19…ケ−ブル接続判別機、20…ケ−ブル単体工事実施前に得た各相間の電圧値、21…ケ−ブル単体工事実施後に得た各相関の電圧値、22…理論的各相間の電圧値、U,V,W…端子符号、Vuv…U−V間電圧値、P…回路中の任意の接続点、Vvw…V−W間電圧値、Iu…U相に流れる直流電流、Vuw…U−W間電圧値、Iv…V相に流れる直流電流、Z…インピ−ダンス、Iw…W相に流れる直流電流、R…抵抗値、E…蓄電池電圧値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブル接続工事に伴うケ−ブル接続作業後の電気回転機器系統が機能維持されていることを確認するための確認試験方法において、前記ケ−ブルの各線心に直流電流を流し、電気回転機器負荷側の各相間の直流電圧を測定し、前記ケ−ブルの誤接続を判別することを特徴とするケ−ブル接続確認試験方法。
【請求項2】 請求項1において、前記ケ−ブルの各線心に直流電流を流す直流回路は同一の起電力を直列に配置し、前記ケ−ブルの各線心へ同時に直流電流を流す回路とし、電気回転機器負荷側の各相間の直流電圧を測定して前記ケ−ブルの誤接続を判別することを特徴とするケ−ブル接続確認試験方法。
【請求項3】 請求項1において、前記ケ−ブルの各線心に直流電流を流す直流回路は、任意の起電力又は同一の起電力を直列に配置し前記ケ−ブルの各線心ごとに直流電流を流す回路とし、電気回転機器負荷側の各相間の直流電圧測定ごとに、直流電流を流して各相間の直流電圧を測定して前記ケ−ブルの誤接続を判別することを特徴とするケ−ブル接続確認試験方法。
【請求項4】 電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブル接続工事に伴うケ−ブル接続作業後の電気回転機器系統が機能維持されていることを確認するための確認試験装置において、前記ケ−ブルの各線心に直流電流を流す手段と、電気回転機器負荷側の各相間の直流電圧を測定する手段とを備えることを特徴とするケ−ブル接続確認試験装置。
【請求項5】 電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブル接続工事に伴うケ−ブル接続作業後の電気回転機器系統が機能維持されていることを確認するための確認試験装置において、前記ケ−ブルの各線心に直流電流を流す手段と、電気回転機器負荷側の各相間の直流電圧を測定する手段と、該手段にて測定した直流電圧に基づいて前記ケ−ブルの接続の正誤を判別する手段とを備えることを特徴とするケ−ブル接続確認試験装置。
【請求項6】 電気回転機器を負荷とする三相交流回路の動力用ケ−ブル接続工事に伴うケ−ブル接続作業後の電気回転機器系統が機能維持されていることを確認するための確認試験装置において、前記ケ−ブルの各線心に直流電流を流す手段と、電気回転機器負荷側の各相間の直流電圧を測定する手段と、該手段にて測定した直流電圧に基づいて前記ケ−ブルの接続の正誤を判別して表示する手段とを備えることを特徴とするケ−ブル接続確認試験装置。
【請求項7】 請求項4乃至請求項6のいずれかにおいて、前記ケ−ブルの各線心に直流電流を流す手段は、直流電流を流すための蓄電池と、直流電流の流れを開閉するための開閉器と、直流電流の流れを確認するするための直流電流計とから成ることを特徴としたケ−ブル接続確認試験装置。
【請求項8】 請求項5乃至請求項7のいずれかにおいて、電気回転機器負荷側の各相間の直流電圧測定により誤接続を判別する手段は、各相間の電圧値を測定するための電圧測定器と、該電圧測定器からの測定信号を変換する信号変換器と、該信号変換器から伝達された信号により誤接続を判別する電子計算機とから成ることを特徴とするケ−ブル接続確認試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−66866
【公開日】平成6年(1994)3月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−220207
【出願日】平成4年(1992)8月19日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリングサービス (276)