説明

ケイ酸塩の製造中にケイ酸塩源から重金属を除去する方法

【課題】金属ケイ酸塩から、重金属の汚染レベルが、より高価でより純粋な原料の二酸化ケイ素で作製された完成品と比較して同等の低さをを示す完成品を提供する。
【解決手段】このような汚染物質除去のために、1つは、形成された金属ケイ酸塩の溶液をろ過する前に、この酸および水とのスラリーに、リン酸カルシウム材料(例えばリン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、および/または、ヒドロキシアパタイト)を導入する。もう一方は、同様にリン酸カルシウム材料を、二酸化ケイ素、カセイアルカリおよび水スラリーに導入する。そのために金属ケイ酸塩形成の反応工程全体にわたって前記リン酸二カルシウムが存在するが、ろ過によって除去される。それぞれの場合において、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムまたはリン酸二カルシウムは、鉛、カドミウムなどの重金属を固定し、金属ケイ酸塩から大量のこのような重金属が放出されるのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、金属ケイ酸塩から、このような材料の製造工程中に重金属を除去する方法に関する。金属ケイ酸塩(一例としてケイ酸ナトリウムなど)を製造するために、より低コストの二酸化ケイ素出発原料(そこに多量の重金属が含まれることががわかっている)が要望されているが、このような重金属の相当量を除去するには、より高価でより純粋な原料の二酸化ケイ素で作製された完成品と比較して重金属の汚染レベルが同等の低さをを示す完成品を提供するために、特定の規制条件に従うことが必要であると認識されている。このような汚染物質除去のために、一般的な2種の方法に従うことができる。1つは、形成された(ただしろ過する前の)金属ケイ酸塩の溶液に、リン酸カルシウム材料(例えばリン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、および/または、ヒドロキシアパタイト)を導入することを必要とする(後−ケイ酸塩法(post−silicate method))。もう一方は、二酸化ケイ素、カセイアルカリおよび水スラリーに、リン酸カルシウム材料(同様に、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、および/または、リン酸二カルシウム)を導入し、そのために金属ケイ酸塩形成の反応工程全体にわたって前記リン酸二カルシウムが存在し、それらをろ過によって除去することを必要とする(前−ケイ酸塩法(pre−silicate method))。それぞれの場合において、実際には、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムまたはリン酸二カルシウムは、鉛、カドミウムなどの重金属がそれらに固定されることを促進し、そうすることによって、標的の金属ケイ酸塩が出発原料とみなされる生成物から、このような重金属が大量に放出されるのを防ぐ。従って、重金属を含む金属ケイ酸塩を利用して、その後、例えば元の二酸化ケイ素源と比較してかなり低いレベルの重金属を示す沈降シリカを製造することが可能である。
【0002】
発明の背景
哺乳動物において、鉛、ヒ素、カドミウム、銅および亜鉛のような重金属は様々なレベルの毒性を示す。具体的には、それらが摂取され、体内で代謝および吸収することができる状態にある場合、すなわち、それらが生物的に利用可能な形態で摂取された場合、このような金属は、たとえ少量でも、体内で蓄積して毒作用に関する性質を示す。その結果、監督官庁は、国家レベルと連邦政府レベルの両方で、人間が摂取する可能性がある物質中に一般的に許容されるこのような重金属の最大量に関する規則を制定してきた。従って、人間(およびその他の哺乳動物)が利用および摂取する可能性がある物質中のこのような重金属の量を最小化する方法を開発することが重要である。
【0003】
このような物質としては、噴霧またはフラッシュ乾燥させた金属ケイ酸塩、沈降シリカ、シリカゲル、ケイ酸塩、および、二酸化ケイ素源から作製されるその他の生成物が挙げられる。最終用途の配合物としては、多種多様のクリーニング用調合品、例えば歯みがき剤、化粧用組成物、例えばボディパウダーなど、および、その他の類似の用途、例えば、凝結防止および/または流動化剤、人間の摂取または食品との接触が必然的に伴うもの、例えば紙、プラスチックおよびゴムの充填材、および、適切な利用のための製薬の賦形剤が挙げられる。このような、これらの最終用途の配合物のベースの大部分を形成する材料は、様々なレベルの重金属で汚染された二酸化ケイ素源から製造される。最も高コストな二酸化ケイ素源は、このような重金属の汚染レベルに関して最も純粋と考えられているため、一般的に、それらから発生する可能性がある毒作用を減少させるための改変をまったく必要としない。しかしながら、原材料に関してより低コストの必要性が高まっていること、および/または、純粋な二酸化ケイ素の原材料がますます希少になりつつあることから、このような出発原料中の、または、より具体的にはそれらから製造された中間原料中の重金属の存在量を減少させる何らかの方法を提供することが重要になってきている。
【0004】
沈降シリカは、本来、まず金属ケイ酸塩(例えば、これらに限定されないが、ケイ酸ナトリウム)を製造し、次にこのような材料を鉱酸(例えば硫酸)に晒し、その後、それによって製造されたシリカ生成物を沈殿させることによって製造される。金属ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウム、および、アルミノケイ酸ナトリウムは、まずケイ酸ナトリウムを製造し、例えばケイ酸カルシウムを製造するために反応混合物に金属種(例えば水酸化カルシウム)と酸種を添加することによって製造することができる。また、ケイ酸ナトリウムと酸とを異なる条件下で反応させることによってシリカゲルを形成してもよい。実質的に、このような最終産物中の重金属の量を減少させる能力は、必須の金属ケイ酸塩中間原料を製造するための処理工程のいずれかの1つの間に向けられる場合があると認識されている。
【0005】
主として鉛の漏出または廃棄から生じる汚染による様々な廃棄物や廃棄土から、重金属(最も顕著には鉛)を除去するための技術に関する多くの議論がなされている。このような処理は、概して、熱処理、生物学的処理、および、物理的処理および/または化学的処理などの様々な方法を含み、この処理は、廃棄物(汚泥)や汚染された土地(土)には比較的有効であると証明されている;しかしながら、従来技術では、特定のケイ酸塩産物中の重金属のレベルを減少させる能力については何も示されておらず、ましてや金属ケイ酸塩の製造法中にそれらを減少させる能力に関してもまったく示されていない。このような先行技術は通常、土の除去が必要であり、すなわち汚染された土を除去し、それらを処理し、さらに、それらを現場で置換するか、または、汚染領域から離れてそれらを廃棄するかのいずれかを必要とする。土および汚泥からこのような汚染物質を除去するための、さらに発展させた方法は、このような土および/または汚泥材料を鉛を溶解させるための流体を用いてフラッシングすること、続いて、場合によって、重金属の固定、重金属の不溶性型での沈殿、化学的または生物学的な技術による重金属を含む材料の分解(重金属が可溶化し、続いて可溶化した重金属が除去されるように)、または、重金属で汚染された土または廃棄物に不活性物質を添加することによる重金属の希釈などの複合プロセスを必要としている。これらの方法は、同様に、ケイ酸塩の製造処理中に二酸化ケイ素材料を処理する能力には言及しておらず、さらに上記で暗に示されるように、かなり機能が複雑である。
【0006】
水溶液から鉛のような所定の重金属を除去するための可能性のある添加剤として、リン酸塩材料が提案されているが、固体粒子からの除去、または、このような固体粒子の形成中の除去ではない。それゆえに、従来技術で鉛を固定するための無機リン酸塩の使用が提案されてはいるが、形成されたケイ酸塩から、または、このようなケイ酸塩材料を高いpH範囲内で固体リン酸カルシウムを含む材料を用いて形成するためのスラリー中で、鉛またはその他の重金属の固定を達成する方法の先の開示は未だない。
【0007】
発明の要約
従って、本発明の利点は、比較的簡単で、しかしながら顕著に改善された、金属ケイ酸塩材料から実質的な量の不要な重金属の汚染物質を除去する方法を提供することである。本発明のさらなる利点は、そこに含まれる不要な重金属の汚染物質の量を大々的に減少させるための、容易に入手可能で廉価な固体リン酸カルシウムを含む材料(具体的にはヒドロキシアパタイトおよびリン酸二カルシウム)を金属ケイ酸塩形成処理中に直接利用することを可能にすることである。
【0008】
従って、本発明は、金属ケイ酸塩材料を製造する方法を包含し、本方法は、以下を含む:
a)二酸化ケイ素源を供給する工程;
b)前記二酸化ケイ素源と、カセイアルカリとを反応させ、金属ケイ酸塩の溶液を形成する工程;
c)ヒドロキシアパタイト、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、およびそれらのあらゆる混合物からなる群より選択されるリン酸カルシウム材料を、形成された前記金属ケイ酸塩の溶液に導入する工程、;および、
d)前記金属ケイ酸塩の溶液から、生成した不溶性の重金属のあらゆる錯体および/または塩を除去する工程。
【0009】
本発明はまた、金属ケイ酸塩材料を製造する方法も包含し、本方法は、以下を含む:
a)二酸化ケイ素源を供給する工程;
b)前記二酸化ケイ素源と、ソーダ灰とを反応させ、固体金属ケイ酸塩を形成する工程;
c)固体金属ケイ酸塩を水に溶解させ、金属ケイ酸塩の溶液を形成する工程;
d)ヒドロキシアパタイト、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、およびそれらのあらゆる混合物からなる群より選択されるリン酸カルシウム材料を、形成された前記金属ケイ酸塩の溶液に導入する工程;および、
e)前記金属ケイ酸塩の溶液から、生成した不溶性の重金属のあらゆる錯体および/または塩を除去する工程。
【0010】
本発明はまた、金属ケイ酸塩材料を製造するその他の方法も包含し、本方法は、以下を含む:
a)二酸化ケイ素源を供給する工程;
b)前記二酸化ケイ素源と、カセイアルカリおよび水とを混合し、それらのスラリーを形成する工程;
c)ヒドロキシアパタイト、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、およびそれらのあらゆる混合物からなる群より選択されるリン酸カルシウム材料を、前記スラリーに導入する工程;および、
d)前記工程「c」で得られたスラリーで、金属ケイ酸塩の溶液を形成させる工程;および、
e)得られた前記金属ケイ酸塩の溶液から、生成した不溶性の重金属のあらゆる錯体および/または塩を除去する工程。
【0011】
このような方法は、有効な重金属の除去に必要な特定の反応物、加えてこのような材料の特定の導入工程に関して極めて選択的である。リン酸カルシウムの後−ケイ酸塩法にとって、このような添加剤は、ケイ酸塩溶液の形成が少なくとも開始された後に導入されなければならなず、好ましくは、必ずしも必須ではないが、実際の金属ケイ酸塩の製造の後に導入される。ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、および/または、リン酸二カルシウム(しかしながら、この前−ケイ酸塩法のためには、ヒドロキシアパタイトが好ましい)は、重金属化合物(例えば鉛など)と効果的に反応し、不溶性の錯体および/または塩を形成し、その後、例えばこのような不溶性化合物をろ過する工程(ただしこれに限定されない)中に、それらから比較的容易に除去することができる、ということがわかっている。同様に、前−ケイ酸塩法のためには、このような添加剤は、二酸化ケイ素と水の反応スラリーが形成される間に、または、その直後に導入されなければならない。この方式において、好ましいリン酸二カルシウム(この前−ケイ酸塩法のための)は、その中に存在する重金属とより容易に反応し、最終的に比較的簡単な手法で除去が可能な、同じタイプの不溶性の重金属の錯体および/または塩が効果的に形成される、と考えられる。重要なことに、予め形成された金属ケイ酸塩にリン酸二カルシウムを導入しても、このようにして形成された生成物からの重金属種の顕著な減少はほとんど起こらないだろうと予想される点で、このような特定の反応は特徴的であることがまったく意外に見出された。同様に、最終的な金属ケイ酸塩生成物中に存在する重金属に何らかの明らかな改変をもたらすためには、ケイ酸塩形成のスラリー段階中のヒドロキシアパタイトは、より多い適用量レベルで添加されることが必要である。従って、暗に示されているように、特定の処理工程中の添加剤を選択することによって望ましい結果が得られることから、この特定の方法は極めて予想外である。
【0012】
発明の詳細な説明
SiO:MOのモル比が約0.5〜約4のアルカリ金属ケイ酸塩の溶液は、商業的には以下の2種の方法:水の存在下での、石英とカセイアルカリ(例えばカセイソーダ)との熱水反応、および、石英と炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム)とを反応させることにより「水ガラス」を製造するためのファーネス法によって製造される。上記アルカリ金属は、ナトリウム、カリウムまたはリチウムが可能であり、ナトリウムが好ましい。用いられる石英は、細粒化したケイ砂(または、シリカフラワーとして知られている)である。
【0013】
熱水法において、SiO:NaOのモル比が2.0〜約2.70、好ましくは2.4〜2.7、より好ましくは2.5〜2.65のケイ酸ナトリウムは、(例えば飽和蒸気または電気加熱を用いて)、約148℃(0.34MPa)〜約216℃(2.07MPa)、好ましくは170℃(0.69MPa)〜208℃(1.72MPa)、より好ましくは185℃(1.03MPa)〜198℃(1.38MPa)に加熱することによって製造され、撹拌式の圧力反応器中の理論量のケイ砂、カセイアルカリおよび水が、2〜6時間、好ましくは3〜5時間加熱処理される。続いて、未反応のケイ砂は、ろ過によって(例えば加圧式の葉状ろ過器を用いて)形成されたケイ酸ナトリウム溶液から分離される。
【0014】
ファーネス法においては、0.5〜約4、好ましくは約2.0〜3.5、より好ましくは3.2〜3.4のSiO:NaOモル比を有する水ガラスは、石油またはガスを燃料とする蓄熱式の平炉、または、電気炉もしくはプラズマ炉で、理論量のケイ砂およびソーダ灰(NaCO)を1100℃〜約1400℃に加熱することによって製造される。形成されたガラスを冷却し、粉砕し、バッチ式の大気または加圧溶解槽または連続式の大気溶解槽、好ましくは加圧溶解槽中で、飽和蒸気(加熱媒体として)と水を用いて溶解させ、134℃(0.2MPa)〜215℃(2MPa)、好ましくは165℃(0.6MPa)〜204℃(1.6MPa)、より好ましくは184℃(1MPa)〜192℃(1.2MPa)のプロセスの範囲で水ガラスを溶解させる。次に、可溶化したケイ酸塩溶液を、予めコーティングされたフィルターでろ過する。
【0015】
金属ケイ酸塩の溶液中に存在する汚染金属の量は、金属ケイ酸塩の溶液を製造するのに用いられる二酸化ケイ素(ケイ砂)源に依存する。対象となる典型的な汚染金属は、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、ヒ素(As)、および、亜鉛(Zn)である。除去された汚染金属の量は、初期濃度の有無、用いられた具体的なリン酸カルシウムを処理するための添加剤および量、ならびに、処理時間および温度に依存する。
【0016】
金属ケイ酸塩の溶液中の金属の混入量を減少させる1つの方法は、形成されたケイ酸塩に、リン酸カルシウム(例えばヒドロキシアパタイト、リン酸二カルシウムおよびリン酸三カルシウム、好ましくはヒドロキシアパタイト)を、ケイ酸塩の重量に基づき0.1%〜50%、好ましくは0.5%〜10%、より好ましくは1%〜5%の量で添加し、混合し、さらにこのスラリーを約50℃〜約90℃、好ましくは約60℃〜約85℃に、約15分間〜約300分間、好ましくは30分間〜120分間、より好ましくは約30〜約60分間加熱することを含む。その後、この金属ケイ酸塩の溶液から、金属汚染物質が固定されたリン酸カルシウム添加剤を、ろ過、遠心分離または振動ふるいによって、好ましくはろ過によって(例えば加圧式の葉状ろ過器を用いて)除去する。この方法は、熱水反応によって製造された、または、水ガラスを溶解させることによって製造された、あらゆる濃度またはモル比を有するケイ酸ナトリウム溶液から重金属を除去するのに有用である。
【0017】
ケイ酸塩溶液中の金属の混入量を減少させるその他の方法は、リン酸カルシウムを、金属ケイ酸塩を製造するのに用いられるその他の反応物と共に添加することによる方法である。ケイ酸ナトリウムを製造するために、例えば、撹拌式の熱水反応器に、水と、理論量のケイ砂およびカセイソーダとを添加する。この反応器に、リン酸カルシウム(例えばヒドロキシアパタイト、リン酸二カルシウムおよびリン酸三カルシウム、好ましくはリン酸二カルシウム)を、用いられるケイ砂の重量に基づき約0.1%〜約20%、好ましくは約0.5%〜約10%、より好ましくは約1%〜約5%の量でに添加する。圧力反応器を、約0.34MPa〜約2.07MPa、好ましくは0.69MPa〜1.72MPa、より好ましくは1.03MPa〜1.38MPaに、約2〜約6時間、好ましくは約3〜約5時間加熱する。(温度/圧力が高いほど、より高いモル比のケイ酸ナトリウムが供給される)。その後、この混合物をろ過して、未反応のケイ砂、および、金属汚染物質が固定されたリン酸カルシウム添加剤を、ろ過、遠心分離または振動ふるいによって、好ましくはろ過によって(例えば加圧式の葉状ろ過器)除去する。
【0018】
汚染物質除去されたケイ酸塩は、例えば、完成した配合物中の成分として、または、沈降シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、および、アルミノケイ酸ナトリウム・マグネシウムを製造するための原材料等として用いることができ、これらは、食品、化粧品および薬品についての微量の金属混入物水準に関する必要条件を満たす。
【0019】
本発明の好ましい実施形態
金属の測定法− 後−ケイ酸塩法
金属の濃度を、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)のエランDRCプラスICP/MS(Elan DRC Plus ICP/MS)を用いて測定した。ケイ酸ナトリウムのサンプルを、50mlの白金皿中で、2gのケイ酸塩を、約10〜12mlのフッ化水素酸、および、約5mlの硝酸と共に完全に乾燥するまで加熱することによって可溶化し、シリカを除去した。次に、5〜7mlのHNOと、約25mlの水を添加し、加熱し、残留物を溶解させた。この溶液を、定量のために100mlのメスフラスコに移し、所定体積まで脱イオン水を入れた。次に、2.5mlのこのサンプル溶液、および、移送条件を補うために添加された内部標準を、水で50mlに希釈し、吸引してICP/MSに送った。サンプル中の金属の濃度を、既知の濃度の金属標準に対するサンプル応答を比較することによって測定した。
【0020】
実施例1
32.6%の濃度、2.68のモル比を有し、0.95ppmのPbを含むケイ酸ナトリウム液体を、同じ重量の27.1%のヒドロキシアパタイト(HO252ヒドロキシアパタイト・タイプI,シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich),セントルイス,ミズーリ州より入手可能)の水性懸濁液と、約160°F(71℃)の温度で1時間混合した。その後、このケイ酸塩混合物の一部をシリンジ(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)のモデル309585)で引き抜き、この混合物を0.45μmのシリンジフィルター(VWR28145−481)を通過させることによって、ケイ酸ナトリウムからヒドロキシアパタイトの固体粒子を分離した。回収されたろ過済みケイ酸ナトリウムを、上述の方法に従ってPbに関して解析したところ、0.020ppmのPb(20ppbのPb)を含むことが見出され、これは、鉛(Pb)濃度の約50倍の減少であった。
【0021】
実施例2
ケイ酸ナトリウムから除去される鉛の量を最大化するのに必要な処理時間を測定するために、処理済のケイ酸ナトリウムのアリコートを周期的に引き抜き、鉛の濃度について解析した。テフロン(Teflon:登録商標)ビーカーに、100gのケイ酸ナトリウム溶液(32.6%,2.68モル比,0.95ppmのPb)、および、1gのHO252ヒドロキシアパタイト懸濁液(シグマ・アルドリッチ,セントルイス,ミズーリ州より入手可能)を添加した。この混合物を磁気撹拌棒で撹拌し、ホットプレート上で60℃に加熱した。シリンジフィルター(0.45μmのフィルター)を利用して、ビーカーからサンプルを、5、15、30、60、120、240分に引き抜き、ケイ酸ナトリウム溶液から固体物質(ヒドロキシアパタイト)を分離した。その後、ケイ酸ナトリウム溶液を、上述の方法に従って、鉛、カルシウムおよびアルミニウム濃度に関して解析した。以下の表1に結果をまとめる。
【0022】
【表1】

【0023】
表1で示されるように、1%ヒドロキシアパタイトは、ケイ酸塩液体中の微量の鉛量を減少させることにおいて極めて有効であったが、一方で、カルシウムおよびアルミニウムレベルには影響を与えなかった。鉛の濃度は、最初の1時間で初期濃度の約50%まで持続的に下降し、その後は横ばいになった。カルシウムおよびアルミナレベルは、カルシウムは平均22ppm、および、アルミナは平均538ppmの周辺に散乱していた。
【0024】
実施例3
この実施例においては、実施例1〜2で用いられたヒドロキシアパタイト懸濁液の代わりに、数種の様々なリン酸塩(数種の固形ヒドロキシアパタイト、天然アパタイト、リン酸二カルシウム、および、リン酸三カルシウム)を用いた。実施例2で用いられたのと同じ処理法に従った(ただし、様々なリン酸塩の処理レベルが、ケイ酸ナトリウムに基づき1%および3%であったことを除く)。ケイ酸ナトリウム(32.6%,2.68モル比)とリン酸塩を一緒に60℃で1時間混合した。上述の方法に従ってこのサンプルを解析し、表2に初期および処理後の鉛の濃度[Pb]を示す。
【0025】
【表2】

【0026】
C93−15、および、C53−83MFは、ヒドロキシオルトリン酸五カルシウム、Ca(POOH(本明細書では、ヒドロキシアパタイトと称する)のグレードであり、ガラード・シュレジンジャー・インダストリーズ(Gallard−Schlesinger Industries,プレインビュー,ニューヨーク州)より入手可能である;GFSは、ヒドロキシオルトリン酸五カルシウム、Ca(POOH(本明細書では、ヒドロキシアパタイトと称する)であり、GFSケミカルズ(GFS Chemicals,パウエル,オハイオ州)より入手可能である;天然アパタイトは、魚類の骨から得られた天然ヒドロキシアパタイトであり、UFAベンチャーズ(UFA Ventures,カールスバッド,ニューメキシコ州)より入手可能である;DCPは、リン酸二カルシウム、CaHPOであり、ローディア社(Rhodia Corporation,クランバリー,ニュージャージー州)より入手可能である;および、TCPは、リン酸三カルシウム、Ca(POであり、ガラード・シュレジンジャー・インダストリーズ(プレインビュー,ニューヨーク州)より入手可能である。
【0027】
合成ヒドロキシアパタイトのサンプルは、ケイ酸ナトリウムのPb含量を、1%の処理レベルでは約40%、および、3%の処理レベルでは約70%に減少させ、リン酸三カルシウムもほぼ同様に有効であった。
【0028】
実施例4
実施例4においては、テフロン(登録商標)ビーカー中で、コントロールとして100gの32.6%ケイ酸ナトリウム(2.65のモル比を有する)を、ホットプレート上で71〜82℃に加熱し、次に、サンプルの試験のために1gのヒドロキシアパタイトを添加した。実施例4Aでは、コントロールとしてのケイ酸ナトリウム溶液にそれぞれ0.25mgのPb、CdおよびCuをピペッティングすることによって、さらに数種の金属を150gの32.6%ケイ酸ナトリウム(2.65のモル比を有する)に意図的にスパイク(混入)させ、次に、サンプルの試験のために1%のヒドロキシアパタイトを添加した。この混合物を磁気撹拌棒で撹拌し、1時間反応させた。シリンジフィルター(0.45μmのフィルター)を利用してビーカーからサンプルを引き抜き、ケイ酸ナトリウム溶液から固体物質(ヒドロキシアパタイト)を分離した。
【0029】
加えて、コントロールを作製し、実施例4で用いられたケイ酸ナトリウムの一部であってヒドロキシアパタイトが添加されていないコントロール4を用いて試験した。
その後、ケイ酸ナトリウム溶液を、上述の方法に従って鉛、カドミウム、銅および亜鉛に関して解析し、その結果を以下の表3にまとめる。
【0030】
【表3】

【0031】
示された結果から、ヒドロキシアパタイトは、数種の金属の汚染を減少させることにおいて極めて有効であることがわかる。実施例4Aのスパイクされたサンプルで示されるように、2.65のモル比のケイ酸ナトリウムを1%ヒドロキシアパタイトで処理しても、純度が低い(金属量が多い)ケイ酸ナトリウム溶液からより高い金属汚染レベルを減少させることにおいて極めて有効であった。
【0032】
実施例5〜6
実施例5では、テフロン(登録商標)ビーカー中で、コントロールとして100gの37.5%ケイ酸ナトリウム(3.2のモル比を有する)を、ホットプレート上で71〜82℃に加熱し、次に、サンプルの試験のために1gのヒドロキシアパタイトを添加した。実施例6では、コントロールとしてケイ酸ナトリウム溶液にそれぞれ0.25mgのPb、As、Cd、CuおよびZnをピペッティングすることによって、さらに数種の金属を150gの32.6%ケイ酸ナトリウム(2.65のモル比を有する)に意図的にスパイクさせ、次に、サンプルの試験のために1%のヒドロキシアパタイトを添加した。この混合物を磁気撹拌棒で撹拌し、1時間反応させた。シリンジフィルター(0.45μmのフィルター)を利用してビーカーからサンプルを引き抜き、ケイ酸ナトリウム溶液から固体物質(ヒドロキシアパタイト)を分離した。
【0033】
加えて、コントロールを作製し、実施例5で用いられたケイ酸ナトリウムの一部であってヒドロキシアパタイトが添加されていないコントロール5、実施例6で用いられたケイ酸ナトリウムの一部であってヒドロキシアパタイトが添加されていないコントロール6を用いて試験した。
【0034】
その後、ケイ酸ナトリウム溶液を、上述の方法に従って、鉛、ヒ素、カドミウム、銅および亜鉛に関して解析し、その結果を以下の表4にまとめる。
【0035】
【表4】

【0036】
3.2のモル比のケイ酸ナトリウムの1%ヒドロキシアパタイトでの処理は、金属汚染レベルを減少させることにおいて極めて有効であった。スパイクされたサンプルによれば、ヒドロキシアパタイトは、純度が低い(金属量が多い)ケイ酸ナトリウム溶液から金属の濃度を減少させることにおいてさらにより有効であったことが示される。
【0037】
金属の測定法− 前−ケイ酸塩法
金属の濃度を、パーキン・エルマーのエランDRCプラスICP/MSを用いて測定した。ケイ酸ナトリウムのサンプルを、50mlの白金皿中で、2gのケイ酸塩を、約10〜12mlのフッ化水素酸、および、約5mlの硝酸と共に完全に乾燥するまで加熱することによって可溶化し、シリカを除去した。次に、5〜7mlのHNOと、約25mlの水を添加し、加熱し、残留物を溶解させた。この溶液を、定量のために100mlのメスフラスコに移し、所定体積まで脱イオン水を入れた。次に、2.5mlのこのサンプル溶液、および、移送条件を補うために添加された内部標準を、水で50mlに希釈し、吸引してICP/MSに送った。サンプル中の金属の濃度を、既知の濃度の金属標準に対するサンプル応答を比較することによって測定した。
【0038】
実施例7〜10
ケイ酸ナトリウム中の鉛レベルを減少させる方法は、リン酸二カルシウム(DCP)を、ケイ酸ナトリウムを製造するために用いられる成分:シリカフラワー、および、カセイソーダ(NaOH)と共に熱水反応器に添加することとした。2リットルの撹拌式のパー(Parr)の反応器に、468gのシリカフラワー(細粒化したケイ砂)、442gの50%NaOH溶液、規定量のリン酸二カルシウム(コントロールには、リン酸二カルシウムが添加されていない)、および、577gの脱イオン水を添加した。(シリカフラワー出発原料には、4.19ppmのPbが含まれており、リン酸二カルシウムには、0.019ppmのPbが含まれていた)。撹拌速度を最大に設定してこの反応器を1.38MPa(約198℃)に加熱した。反応物本体が1.38MPaに達した後(約90分間)、反応物を4時間加熱処理させた。得られた2.65モル比のケイ酸ナトリウム(2.65モルSiO:1モルのNaO)を、ブーフナー漏斗でろ過し、リン酸二カルシウムの粒子と未反応のケイ砂を除去した。ろ過したケイ酸ナトリウムのサンプルを、上述の方法に従って解析し、鉛(Pb)含量を測定した。
【0039】
【表5】

【0040】
リン酸二カルシウム(DCP)は、ローディア社(クランバリー,ニュージャージー州)より入手可能である。
実施例11〜13
これらの実施例では、実施例1と同様にして、ケイ砂およびカセイソーダからケイ酸ナトリウムを製造した。実施例11および12については、この反応成分に加えてリン酸二カルシウム(DCP)を添加し、実施例13については、ヒドロキシアパタイト(HA)を添加し、それに対して、コントロールにはリン酸カルシウムを含ませなかった。コントロール11のサンプルは、追加の金属(スパイク)が添加されていないケイ酸ナトリウムのコントロールとした。実施例12およびコントロール12をそれぞれ、それぞれ2mgの鉛、カドミウムおよび銅でスパイクした。表6でスパイクが指示されている場合、2mlの1000ppmのPb、2mlの1000ppmのCd、および、2mlの1000ppmのCuを、その他の成分と共に反応器に添加した。表6に、用いられた成分の量を示す。
【0041】
【表6】

【0042】
上記で製造されたケイ酸ナトリウムを、脱イオン水で2:1に希釈した(すなわち200gのケイ酸塩を、100gの脱イオン水で希釈した)。次に、このケイ酸塩をGF/Bグラスファイバーフィルターを用いて真空ろ過し、次に、上述の金属の測定法に従って微量の金属含量について解析した。以下の表7に結果をまとめる。
【0043】
【表7】

【0044】
リン酸二カルシウムの5%の処理のレベル(実施例11)は、ケイ酸ナトリウム溶液中の鉛の濃度を37%、カドミウム濃度を57%、銅濃度を約4%減少させることができた。ヒドロキシアパタイトの5%の処理レベル(実施例13)は、ケイ酸ナトリウム中の鉛の濃度を34%、銅を52%減少させることができた。スパイクされたサンプルによれば、リン酸二カルシウムの5%の処理のレベル(実施例12)は、それぞれ81%および59%のより高い混合物レベルを含むケイ酸ナトリウム中で、カドミウムおよび銅濃度を減少させることにおいて有効であったことが示される。
【0045】
上記の実施例は、本発明の原理、および、本発明の操作の具体的な実施形態を説明するために記載される。これらの実施例は、方法の範囲を限定することを目的としない。特許請求された発明の範囲内のさらなる実施形態および利点は、当業者にはよく知られていると予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケイ酸塩材料を製造する方法であって:
a)二酸化ケイ素源を供給する工程;
b)前記二酸化ケイ素源を、酸および水と混合して、それらのスラリーを形成する工程;
c)前記工程「b」のスラリーに、ヒドロキシアパタイト、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、およびそれらのあらゆる混合物からなる群より選択されるリン酸カルシウム材料を導入する工程;
d)前記工程「c」で得られたスラリーで、金属ケイ酸塩を形成させる工程;および、
e)得られた前記金属ケイ酸塩の溶液から、生成した不溶性の重金属のあらゆる錯体および/または塩を除去する工程、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記リン酸カルシウム材料は、リン酸二カルシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リン酸カルシウム材料は、二酸化ケイ素の0.1〜20重量%の量で、形成された前記金属ケイ酸塩の溶液に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リン酸二カルシウムは、二酸化ケイ素の0.1〜20重量%の量で、形成された前記金属ケイ酸塩の溶液に導入される、請求項2に記載の方法、。
【請求項5】
前記リン酸二カルシウムは、二酸化ケイ素の3〜約10重量%の量で、形成された前記金属ケイ酸塩の溶液に導入される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記金属ケイ酸塩は、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、および、アルミノケイ酸ナトリウム・マグネシウムからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属ケイ酸塩は、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、および、アルミノケイ酸ナトリウム・マグネシウムからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記金属ケイ酸塩は、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、および、アルミノケイ酸ナトリウム・マグネシウムからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記金属ケイ酸塩は、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、および、アルミノケイ酸ナトリウム・マグネシウムからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記金属ケイ酸塩は、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、および、アルミノケイ酸ナトリウム・マグネシウムからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2007−145708(P2007−145708A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−310289(P2006−310289)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(596129189)ジェイ・エム・ヒューバー・コーポレーション (22)
【Fターム(参考)】