説明

ケイ酸塩発光材料及びその製造方法

【課題】本発明は、ケイ酸塩発光材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のケイ酸塩発光材料の化学構造式は、Zn2−y(Si1−x)O:Mnであり、Mは、金属元素であり、且つその酸化物は導電可能であり、xは、0.001〜0.15であり、yは、0.001〜0.05である。前記ケイ酸塩発光材料は、導電可能な金属酸化物成分を添加したので、その導電性能を利用して、陰極線の励起による発光性能が導電成分を添加する前に比べて著しく高めることにして、発光効率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料技術領域に関するものであり、特にケイ酸塩発光材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年来、電界放出器具などの発光装置は、動作電圧が低く、電力消耗が小さく、偏向コイルを必要としなく、X放射線の輻射がなく、輻射及び磁界妨害に耐えるなどの利点を有するので注目されており、電界放出陰極及び発光材料が結合すると、高輝度及び高演色の電界放出光源を得ることができ、表示、いろいろな表示、普通照明領域に応用することができる。このような電界放出器具の基本原理は、従来のブラウン管(CRT)と同じで、電子ビームで赤、緑、青の3色蛍光粉を衝突させることで発光することにより結像及び照明用途を実現し、このような電界放出器具は、輝度、視角、反応時間、動作温度範囲、エネルギー消耗などの面で全て潜在する優れた利点を有する。
【0003】
優良性能を有する電界放出器具を製造する場合、肝心な要素は高性能の蛍光粉を製造することである。現在、電界放出器具が採用する蛍光材料は、主に従来のブラウン管及びプロジェクションテレビの受像管に用いられる硫化物系、酸化物系、酸硫化物系の蛍光粉である。硫化物系及び酸硫化物系の蛍光粉は、発光輝度が高く且つ所定の導電性を有するが、大規模電子ビームにぶつけられる場合、分解され易く、単体硫黄を放出して陰極針先を「中毒」させ、且つ他の沈殿物を生成して蛍光粉の表面を覆って、蛍光粉の発光効率を下げ、電界放出器具の使用寿命を短縮する。酸化物系の蛍光粉は、優れた安定性を有するが、発光効率は高くなく、且つ材料は一般的に絶縁体である。このため、両者の性能は全て改善することを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前記課題を解決し、導電性を有し、且つ発光効率が高いケイ酸塩発光材料を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、前記課題を解決し、工程が簡単であり且つコストが低いケイ酸塩発光材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るケイ酸塩発光材料の化学構造式は、Zn2−y(Si1−x)O:Mnである。
【0007】
ただし、Mは、金属元素であり且つその酸化物は導電可能であり、xは、0.001〜0.15であり、yは、0.001〜0.05である。
【0008】
本発明に係るケイ酸塩発光材料の製造方法は、酸化亜鉛の源化合物、二酸化珪素の源化合物、導電可能な金属酸化物、二酸化マンガンの源化合物を原料として、各原料は構造式Zn2−y(Si1−x)O:Mnの中のモル比に基づいて取得するステップと、上述の各原料を研磨して均一に混合するステップと、混合した原料を焼成し、冷却してからケイ酸塩発光材料を獲得するステップと、を備える。
【0009】
ただし、Mは、金属元素であり且つその酸化物は導電可能であり、xは、0.001〜0.15であり、yは、0.001〜0.05である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のケイ酸塩発光材料は、導電可能な金属酸化物成分を添加したので、その導電性能を利用して、陰極線の励起による発光性能は導電成分を添加する前のものと比べて著しく高めることにして、発光効率を高める。前記ケイ酸塩発光材料は、安定性がよく、均一性がよく、透過率が高く、発光性能がよいなどの特徴を有し、各種の照明及び表示装置に適用される。
【0011】
本発明のケイ酸塩発光材料の製造方法は、焼成処理によってケイ酸塩発光材料を獲得することができ、従って製造工芸が簡単であり、コストが低く、広い生産応用への見込みを有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係わるケイ酸塩発光材料の製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施例3によって製造されたケイ酸塩発光材料とZn1.994SiO:Mn0.006発光材料が低圧陰極線の励起による発光スペクトル対比図である。
【図3】本発明の実施例6によって製造されたケイ酸塩発光材料とZn1.994SiO:Mn0.006発光材料が低圧陰極線の励起による発光スペクトル対比図である。
【図4】本発明の実施例8によって製造されたケイ酸塩発光材料とZn1.994SiO:Mn0.006発光材料が低圧陰極線の励起による発光スペクトル対比図である。
【0013】
図2、図3及び図4のスペクトルは、5KV加速電圧の陰極線に励起される場合、島津(Shimadzu)RF−5301PC蛍光分光光度計により測定して分析してから獲得する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
本発明の実施形態に係わるケイ酸塩発光材料の化学構造式は、Zn2−y(Si1−x)O:Mnである。Mは、金属元素であり、且つその酸化物は導電可能であり、xは、0.001〜0.15であり、yは、0.001〜0.05である。金属元素Mは、好ましくはインジウム、錫又は両者の組合であり、xは、好ましくは0.001〜0.1であり、yは、好ましくは0.001〜0.02である。
【0016】
前記ケイ酸塩発光材料において、ZnSiO:Mnを発光基質として、導電成分をドーピングし、例えば、酸化インジウム、及び酸化錫の中の少なくとも一種であり、従って前記ケイ酸塩発光材料が導電性能を有することにして、発光効率を高める。
【0017】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係わるケイ酸塩発光材料の製造方法は、以下のステップを備える。
【0018】
S01:酸化亜鉛の源化合物、二酸化珪素の源化合物、導電可能な金属酸化物、二酸化マンガンの源化合物を原料として、各原料は構造式Zn2−y(Si1−x)O:Mnの中のモル比に基づいて取得し、Mは、金属元素であり、且つその酸化物は導電可能であり、xは、0.001〜0.15であり、yは、0.001〜0.05である。
【0019】
S02:上述の各原料を研磨して均一に混合する。
【0020】
S03:混合した原料を焼成し、冷却してからケイ酸塩発光材料を獲得する。
【0021】
具体的に説明すると、前記酸化亜鉛の源化合物は、亜鉛の酸化物、シュウ酸塩、及びアセテートの中の少なくとも一種であり、前記二酸化珪素の源化合物は、二酸化珪素であり、前記二酸化マンガンの源化合物は、マンガンの酸化物、炭酸塩、及びシュウ酸塩の中の少なくとも一種である。xは、好ましくは0.001〜0.1であり、yは、好ましくは0.001〜0.02である。前記導電可能な金属酸化物は、好ましくは酸化インジウム、及び酸化錫の中の少なくとも一種であり、単独に酸化インジウム又は単独に酸化錫であることができ、両者の組合であることもでき、例えば、酸化インジウムスズであり、具体的の組合比例は、実際の需要によって決めるが、金属酸化物全体のモル比は、前記範囲内で選択する。
【0022】
ステップS02において、各原料はモルタル内で研磨して均一に混合してから、ステップS03を行う。具体的に、原料をるつぼに放置して焼成し、1000℃〜1400℃の温度で1時間〜8時間溶解する。好ましくは、前記焼成温度は1000℃〜1350℃であり、焼成時間は2時間〜6時間である。
【0023】
さらに焼成物を粉末に研磨して蛍光粉を形成する。
【0024】
以下、複数の実施例によって、ケイ酸塩発光材料の異なる組成及びその製造方法、その性能などの面に対して説明する。
【0025】
実施例1
ZnO、SiO、SnO及びMnOを主要原料として、0.6507gのZnO、0.2401gのSiO、0.0006gのSnO、0.0003gのMnOを秤とって、均一に混合してから1000℃で8時間焼成、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.999(Si0.999Sn0.001)O:Mn0.001発光材料を獲得する。
【0026】
実施例2
Zn(CHCOO)、SiO、In及びMnCOを主要原料として、1.4669gのZn(CHCOO)、0.2401gのSiO、0.0005gのIn、0.0004gのMnCOを秤とって、均一に混合してから1400℃で1時間焼成し、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.999(Si0.999In0.001)O:Mn0.001発光材料を獲得する。
【0027】
実施例3
ZnO、SiO、SnO及びMnCを主要原料として、0.6491gのZnO、0.2396gのSiO、0.0018gのSnO、0.0030gのMnCを秤とって、均一に混合してから1250℃で6時間焼成し、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.994(Si0.997Sn0.003)O:Mn0.006発光材料を獲得する。
【0028】
実施例4
ZnC、SiO、SnO及びMnOを主要原料として、1.2265gのZnC、0.2163gのSiO、0.0600gのSnO、0.0073gのMnOを秤とって、均一に混合してから1350℃で4時間焼成し、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.98(Si0.9Sn0.1)O:Mn0.02発光材料を獲得する。
【0029】
実施例5
ZnO、SiO、SnO及びMnOを主要原料として、0.6348gのZnO、0.2043gのSiO、0.0900gのSnO、0.0150gのMnOを秤とって、均一に混合してから1400℃で2時間焼成し、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.95(Si0.85Sn0.15)O:Mn0.05発光材料を獲得する。
【0030】
実施例6
ZnO、SiO、In及びMnCを主要原料として、0.6491gのZnO、0.2283gのSiO、0.0250gのIn、0.0030gのMnCを秤とって、均一に混合してから1250℃で6時間焼成し、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.994(Si0.95In0.05)O:Mn0.006発光材料を獲得する。
【0031】
実施例7
ZnO、SiO、In及びMnCを主要原料として、0.6478gのZnO、0.2043gのSiO、0.0750gのIn、0.0050gのMnCを秤とって、均一に混合してから1350℃で8時間焼成し、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.99(Si0.85In0.15)O:Mn0.01発光材料を獲得する。
【0032】
実施例8
ZnO、SiO、In及びMnCを主要原料として、0.6491gのZnO、0.2355gのSiO、0.0100gのIn、0.0030gのMnCを秤とって、均一に混合してから1250℃で6時間焼成し、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.994(Si0.98In0.02)O:Mn0.006発光材料を獲得する。
【0033】
実施例9
ZnO、SiO、In、SnO及びMnCを主要原料として、0.6478gのZnO、0.2043gのSiO、0.0500gのIn、0.0300gのSnO、0.0050gのMnCを秤とって、均一に混合してから1350℃で8時間焼成し、焼成物を室温に冷却して取得したサンプルを粉末に研磨すると、Zn1.99(Si0.85In0.1Sn0.05)O:Mn0.01発光材料を獲得する。
【0034】
図2は、前記実施例3によって獲得したZn1.994(Si0.997Sn0.003)O:Mn0.006発光材料の発光スペクトル曲線1とZn1.994SiO:Mn0.006蛍光粉の発光スペクトル曲線4を示し、全て低圧陰極線に励起されて発光するスペクトルであり、本実施例は、5kv加速電圧の陰極線を採用する。図2に示されたように、前記実施例3によって製造された発光材料は522nmの緑色光を発光し、その発光強度はZn1.994SiO:Mn0.006蛍光粉の発光強度より大きく、酸化錫を増加してから、発光材料の発光強度が増強されたことを説明する。
【0035】
図3は、前記実施例6によって獲得したZn1.994(Si0.95In0.05)O:Mn0.006発光材料の発光スペクトル曲線2とZn1.994SiO:Mn0.006蛍光粉の発光スペクトル曲線4を示し、全て低圧陰極線に励起されて発光するスペクトルであり、本実施例は、5kv加速電圧の陰極線を採用する。図3に示されたように、前記実施例6によって製造された発光材料は522nmの緑色光を発光し、その発光強度はZn1.994SiO:Mn0.006蛍光粉の発光強度より大きく、酸化インジウムを増加してから、発光材料の発光強度が増強されたことを説明する。
【0036】
図4は、前記実施例8によって獲得したZn1.994(Si0.98In0.02)O:Mn0.006発光材料の発光スペクトル曲線3とZn1.994SiO:Mn0.006蛍光粉の発光スペクトル曲線4を示し、全て低圧陰極線に励起されて発光するスペクトルであり、本実施例は、5kv加速電圧の陰極線を採用する。図4に示されたように、前記実施例8によって製造された発光材料は522nmの緑色光を発光し、その発光強度はZn1.994SiO:Mn0.006蛍光粉の発光強度より大きく、酸化インジウムを増加してから、発光材料の発光強度が増強されたことを説明する。
【0037】
前記実施例3,6,8によって獲得した発光材料の発光スペクトルとZn1.994SiO:Mn0.006蛍光粉の発光スペクトルを比較すると、導電可能な金属酸化物成分を添加したので、ケイ酸塩発光材料は、その導電性能を利用して、陰極線の励起による発光性能が導電成分を添加する前に比べて著しく高めることにして、発光効率を高める。前記ケイ酸塩発光材料は、安定性がよく、均一性がよく、透過率が高く、発光性能がよいなどの特徴を有し、各種の照明及び表示装置に適用される。前記ケイ酸塩発光材料の製造方法において、焼成処理によってケイ酸塩発光材料を獲得することができ、従って製造工芸が簡単であり、コストが低く、広い生産応用への見込みを有する。
【0038】
以上本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは勿論であって、本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造式がZn2−y(Si1−x)O:Mnであることを特徴とするケイ酸塩発光材料。
(ただし、Mは、金属元素であり、且つその酸化物は導電可能であり、xは、0.001〜0.15であり、yは、0.001〜0.05である。)
【請求項2】
前記金属元素Mは、インジウム、及び錫の中の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のケイ酸塩発光材料。
【請求項3】
前記xは0.001〜0.1であることを特徴とする請求項1に記載のケイ酸塩発光材料。
【請求項4】
前記yは0.001〜0.02であることを特徴とする請求項1に記載のケイ酸塩発光材料。
【請求項5】
酸化亜鉛の源化合物、二酸化珪素の源化合物、導電可能な金属酸化物、又は二酸化マンガンの源化合物を原料として、各原料は構造式Zn2−y(Si1−x)O:Mnの中のモル比に基づいて取得するステップと、
上述の各原料を研磨して均一に混合するステップと、
混合した原料を焼成し、冷却してからケイ酸塩発光材料を獲得するステップと、
を備えることを特徴とするケイ酸塩発光材料の製造方法。
(ただし、Mは、金属元素であり、且つその酸化物は導電可能であり、xは、0.001〜0.15であり、yは、0.001〜0.05である。)
【請求項6】
前記焼成温度は1000℃〜1400℃であり、前記焼成時間は1時間〜8時間であることを特徴とする請求項5に記載のケイ酸塩発光材料の製造方法。
【請求項7】
前記酸化亜鉛の源化合物は、亜鉛の酸化物、シュウ酸塩、及びアセテートの中の少なくとも一種であり、前記二酸化珪素の源化合物は、二酸化珪素であり、前記二酸化マンガンの源化合物は、マンガンの酸化物、炭酸塩、及びシュウ酸塩の中の少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載のケイ酸塩発光材料の製造方法。
【請求項8】
前記導電可能な金属酸化物は、酸化インジウム、酸化錫又は酸化インジウムスズであることを特徴とする請求項5に記載のケイ酸塩発光材料の製造方法。
【請求項9】
焼成物を粉末に研磨して蛍光粉を形成するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のケイ酸塩発光材料の製造方法。
【請求項10】
前記xは0.001〜0.1であり、前記yは0.001〜0.02であることを特徴とする請求項5に記載のケイ酸塩発光材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512286(P2013−512286A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540255(P2012−540255)
【出願日】平成21年11月28日(2009.11.28)
【国際出願番号】PCT/CN2009/075191
【国際公開番号】WO2011/063571
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(511215230)オーシャンズ キング ライティング サイエンスアンドテクノロジー カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】