説明

ケノデオキシコール酸の精製方法

本発明は、ケノデオキシコール酸(3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コール酸)を精製する方法に関する。特に、本発明は、ブタ胆汁固形化物に含まれる低級のケノデオキシコール酸混合物から高収率及び高純度でケノデオキシコール酸を精製する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケノデオキシコール酸(3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コール酸)を精製する方法に関する。特に、ブタ胆汁固形化物に含まれる低級のケノデオキシコール酸混合物からケノデオキシコール酸を、高収率及び高純度で精製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ケノデオキシコール酸は、牛、豚、熊、または鶏若しくはガチョウなどの家禽類の胆汁に含まれ、更にヒトの胆汁にも含まれている。ケノデオキシコール酸は、胆管系疾患、高脂血症、胆石症及び慢性肝疾患の改善に効果を有するウルソデオキシコール酸の出発物質として用いられており、当該技術分野で下記のような製造方法が知られている。
【0003】
ケノデオキシコール酸を製造するための一般的な方法は、コール酸(3α,7α,12α−トリヒドロキシコール酸)のメチルエステル化工程、無水酢酸を用いる3α−及び7α−位の水酸基のアセチル化による保護化工程、12α−位の水酸基をクロム酸で酸化してカルボニルにした後、ウォルフ・キッシュナー(Wolff-kichner)還元反応でカルボニル基を除去する工程、加水分解及び脱保護化してケノデオキシコール酸を得る工程で構成される。上記方法は、ウォルフ・キッシュナー還元反応時、200℃以上の高温を保持する必要があり、また、狂牛病などにより原料供給に支障が起こることがある。
【0004】
家禽類の胆汁には、ケノデオキシコール酸、リトコール酸(lithocholic acid)及び微量のコール酸が含まれている。従って、家禽類からケノデオキシコール酸を分離する方法も当該技術分野でよく知られているが、原料供給減少及び収率低下によって経済性が高くない(非特許文献1)。
【0005】
天然ブタ胆汁のケノデオキシコール酸混合物からケノデオキシコール酸を純粋に分離精製する方法は、米国特許第4186143号(特許文献1)に記載されている。上記方法は、主要工程として、胆汁をケン化して、3α−ヒドロキシ−6−オキソ−5β−コール酸を除去する前処理工程、胆汁酸のエステル化工程、胆汁酸エステルのアセチル化工程、非極性有機溶媒を用いた中間生成物の除去工程、アセチル化された式(I)のエステルの結晶化工程、脱保護化工程、有機溶媒での結晶化による式(I)の化合物の取得する工程を含んでいる。しかし、上記方法は、アセチル化された式(I)のエステルのHPLC含有量に対する記載がなく、比旋光度が[α]25 +13.8°(c=1,CHCl)であり、融点が119〜121℃であるため、目的化合物の純度が非常に低い[STD:[α]25 +15.2°(c=1,CHCl)、融点127〜129℃]。また、目的化合物精製のための結晶化に必要とされる時間が、16〜48時間と非常に長く、全体工程が8工程であり、工程が複雑である。従って、上記方法により式(I)の化合物を精製する場合、収率が低くなり、全体工程の反応時間が12日と非常に長く、経済性が大きく落ちる。
【0006】
特に、上記方法に従って、本発明に用いられるケノデオキシコール酸を35〜55重量%含有するブタ胆汁固形化物を用いる場合、結晶化過程で不純物が一緒に沈澱し、互いに凝固し合うことによって、撹拌及び濾過ができない問題を有している。
【特許文献1】米国特許第4186143号
【非特許文献1】Windhaus et al, I Physiol. Chem., 140, 177〜185 (1924)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明の目的は、全工程に必要とされる時間を短縮しながら、高収率及び高純度で式(I)及び(II)の化合物を精製する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ブタ胆汁の前処理、胆汁酸のエステル化、胆汁酸エステルのアセチル化、非極性有機溶媒を用いた中間生成物の除去、アセチル化された胆汁酸エステルの結晶化及び脱保護化の各工程を含む、式(I)の化合物を精製する方法を提供し、
1)前処理工程として、塩を含む有機溶媒にケノデオキシコール酸を35〜55重量%含有するブタ胆汁固形化物を溶解させること、
2)結晶化工程として、15〜25℃の温度範囲で、C1−4アルコールで結晶化させること、
3)脱保護化工程として、結晶化工程の生成物に、塩基を加え、脱保護化し、酸を加えて水の存在下に結晶化させることを特徴とする式(I)の化合物の精製方法。
【0009】
【化003】

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書で用いる用語「ブタ胆汁固形化物」は、ブタ胆汁由来の固形化物を意味し、式(I)〜(IV)のケノデオキシコール酸の混合物を含んでいる。
【0011】
【化004】

【0012】
式中、式(I)の化合物はケノデオキシコール酸(3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コール酸、CDCA)であり、式(II)の化合物はヒオデオキシコール酸(3α,6α−ジヒドロキシ−5β−コール酸、HDCA)であり、式(III)の化合物はヒオコール酸(3α,6α,7α−トリヒドロキシ−5β−コール酸、HCA)であり、式(IV)の化合物は3α−ヒドロキシ−6−オキソ−5β−コール酸(keto)を表す。
【0013】
以下では、ケノデオキシコール酸を精製するための本願発明の各工程を詳細に説明する。
【0014】
第1工程:ブタ胆汁固形化物の前処理
ケノデオキシコール酸を35〜55重量%含有するブタ胆汁固形化物を精製工程に使用するために、塩を含む有機溶媒で還流攪拌し、ブタ胆汁固形化物を全て溶解する。その後、混合物を室温に冷却し、1〜2時間攪拌し、そして、濾過紙、好ましくは濾過紙及び硅藻土を用いて濾過することによって、不溶物を除去する。有機溶媒は、減圧下で除去することによって、次の工程で使用するための残留物(例えば、CDCA、HDCA、HCA及びketo)を得る。本工程に用いられる塩は、化合物に影響を及ぼさない限り、任意に選択することができる。塩化ナトリウム、無水硫酸マグネシウム(MgSO)及び無水硫酸ナトリウムよりなる群から選択される少なくとも1つの塩が好ましく、塩化ナトリウムが最も好ましい。本工程に用いられる塩の量は、有機溶媒の量に対して、5〜10重量%使用することが好ましい。塩の量が5重量%未満のとき、ブタ胆汁固形化物中の不溶物(脂肪酸など)及び水分が十分に除去されず、濾過が難しく、エステル化反応の収率及び速度が低下する。塩の量が10重量%を超えるとき、過剰な塩が、精製を難しくする不純物として残存することになる。有機溶媒は、好ましくは、ブタ胆汁固形化物に入っているケノデオキシコール酸に悪影響を与えずに、これらを溶解することができる溶媒の中から任意に選択することができる。より好ましくは、酢酸エチル、アセトンである。
【0015】
第2工程:ケノデオキシコール酸のエステル化
前工程から得られたケノデオキシコール酸混合残留物にアルコールを加えて、完全に溶けるまで還流攪拌する。ケノデオキシコール酸混合物が完全に溶解された後、溶液を0〜5℃に冷却する。上記溶液に酸触媒を加え、ケノデオキシコール酸混合物のエステル化反応が終結するまで室温で溶液を攪拌する。反応が終結すると、塩基を加えて溶液を中和させ、反応液を濾過する。濾過物をアルコールで洗浄した後、減圧濃縮してケノデオキシコール酸エステル混合物(CDCA−Me、HDCA−Me、HCA−Me及びketo−Me)を残留物として得る。本工程に用いられるアルコールは、特に制限されないが、エステル化反応の容易性などを考慮すると、炭素数1〜4の低級アルコールが好ましく、メタノールがさらに好ましい。本工程に用いられる酸触媒は、好ましくは硫酸、パラトルエンスルホン酸(PTSA)であり、塩基は炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが使用される。
【0016】
第3工程:ケノデオキシコール酸エステルのアセチル化
前工程から得られた残留物に、無水酢酸及び弱塩基を加え、還流させ、ケノデオキシコール酸エステル混合物の水酸基を全てアセチルに変換する。反応が終結した後、反応液にトルエンを加え、還流撹拌する。反応後残存する無水酢酸、酢酸及び塩基を還流攪拌し、減圧下にて反応液を濃縮して除去し、アセチル化されたケノデオキシコール酸エステルの混合物(例えば、CDCA−diAc−Me、HDCA−diAc−Me、HCA−triAc−Me及びketo−Ac−Me)を残留物として得る。本工程に用いられる好ましい弱塩基は、無水酢酸ナトリウムまたはピリジンであり、より好ましくは無水酢酸ナトリウムである。
【0017】
第4工程:式(III)及び(IV)の中間生成物の除去
残留物に非極性溶媒を加え、残留物が全て溶解するまで還流撹拌した後、室温に冷却する。溶媒の温度を20〜25℃に保持しながら、式(III)及び(IV)の中間生成物と式(II)の中間生成物の一部(例えば、HCA−triAc−Me、keto−Ac−Me及び一部のHDCA−diAc−Me)を結晶化し、濾過して除去する。濾過物を、非極性溶媒でさらに洗浄し、濾液と洗浄液を集めて、減圧濃縮または真空乾燥させる。本工程の結晶化に用いられる非極性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタンまたはイソオクタンなどが好ましく、ヘキサンまたはヘプタンがさらに好ましい。
【0018】
第5工程:ケノデオキシコール酸−ジアセテート−メチル−エステルの製造
式(I)の中間生成物である式(V)のケノデオキシコール酸−ジアセテート−メチル−エステル(CDCA−diAc−Me)を製造するために、前工程の生成物に、アルコール溶媒を加え、そして15〜25℃、好ましくは20〜25℃にて2〜3時間静置し、式(V)の化合物を結晶化させる。温度が15℃未満の場合、式(V)の化合物が凝固し、撹拌及び濾過が難しく、25℃を超える場合、結晶化が十分に行われない。式(V)の化合物が結晶化すると、これを濾過し、式(II)の中間生成物を溶媒から除去する。濾過物をアルコール溶媒で洗浄し、真空乾燥し、式(V)のケノデオキシコール酸−ジアセテート−メチル−エステルを粗生成物として得る。式(V)の化合物を高純度で、好ましくは99%以上の含有量で精製するために、アルコール溶媒を加え、0℃〜15℃、好ましくは0℃〜5℃にて2〜3時間静置し、再結晶化することが好ましい。温度が0℃未満の場合、式(V)の化合物の収量が減少し、15℃を超える場合にも再結晶化が行われるものの、収量が減少する。結晶化に用いられるアルコール溶媒は、炭素数1〜4個の直鎖または分岐鎖のアルコールが好ましく、エタノール、メタノール、イソプロパノールがさらに好ましく、式(V)の化合物の含有量からメタノールが最も好ましい。結晶化に用いられるアルコールの量は、残留物の量に対して、0.5〜3倍、好ましくは1.5〜3倍である。0.5倍未満のときは結晶が凝固して濾過が難しくなり、3倍以上のときは式(V)の化合物の含有量に影響を与えない。
【0019】
【化005】

【0020】
第6工程:脱保護化及びケノデオキシコール酸の結晶化
前工程から得られた式(I)の化合物の中間生成物である式(V)の化合物を、塩基存在下で脱保護化し、酸性条件でpHを4以下、好ましくは2〜3に調節し、式(I)のケノデオキシコール酸を形成させる。同時に、反応溶液を35〜45℃、好ましくは35〜40℃で静置し、水の存在下に式(I)の化合物を結晶化させる。反応液を濾過し、濾過物を水で洗浄し、真空乾燥し、ケノデオキシコール酸を純粋に精製する。脱保護化に用いられる塩基は、特に制限されないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用することが、後処理過程のために好ましい。pHが4以上のとき、結晶が形成されず、pHが2未満のとき、過剰の酸により最終産物の純度が落ちる。水での結晶化温度が35℃未満のとき、式(I)の化合物の純度が落ち、45℃以上のとき、式(I)の化合物の結晶が凝固して濾過が難しい。また、反応液の中和に用いられる酸も、特に制限されないが、塩酸または硫酸を使用することが、後処理過程のために好ましい。前工程から得られた残留物に、式(V)の化合物が99%以上含まれているので、不純物含有量が少なく、有機溶媒を用いた追加の結晶化過程無しに、式(I)の化合物を純粋に精製することができる。本発明によって水中で結晶化された式(I)の化合物は、有機溶媒で結晶化された式(I)の化合物に比べて、融点が約20℃以上高く、嵩高が小さく、工業的生産工程に好適である。
【0021】
本発明を以下の実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。
【0022】
分析方法
各工程から分離される中間生成物を確認するために、HPLCを利用しており、試験条件は次の通りである。
カラム:Capcell pak UG120 C18(4.6×250mm、Shiseido)
移動相:アセトニトリル/水(85:15)
検出器:紫外吸光光度計(210nm)
流速:1.0mL/分
注入量:20μL
【0023】
(実施例)
第1工程:ブタ胆汁固形化物の前処理
ケノデオキシコール酸を35〜40重量%含有するブタ胆汁固形化物600gと塩化ナトリウム240gを、酢酸エチル2400mL中で1時間還流攪拌し、ブタ胆汁固形化物を全て溶解した。その後、混合物の温度を20〜25℃に冷却し、1時間撹拌し、そして、硅藻土で濾過し、濾過物を酢酸エチル240mLで洗浄した。濾液を集めて減圧下にて濃縮して、有機溶媒を除去し、ケノデオキシコール酸混合物(CDCA、HDCA、HCA及びketo)を残留物として得た。
【0024】
第2工程:ケノデオキシコール酸のエステル化
前工程から得られた残留物に、メタノール1500mLを加え、完全に溶けるまで30分間還流攪拌した。この溶液を、0〜10℃に冷却し、攪拌しながら硫酸19.5mLを加え、20〜25℃で2時間攪拌し、ケノデオキシコール酸混合物のエステル化反応を完結させた。エステル化反応が終結した後、炭酸水素ナトリウム53.9gを加えて溶液を中和し、濾過した。濾過物をメタノール600mLで洗浄し、減圧濃縮し、534gのケノデオキシコール酸エステル混合物(CDCA−Me、HDCA−Me、HCA−Me及びketo−Me)を残留物として得た。
【0025】
第3工程:ケノデオキシコール酸エステルのアセチル化
前工程から得られたケノデオキシコール酸エステル混合物534gに、無水酢酸ナトリウム80gと無水酢酸800mLを加え、120〜140℃で5時間還流させた後、反応液を直ちに減圧濃縮した。反応液にトルエン100mLを加え、15分間還流撹拌した後、減圧濃縮し、無水酢酸及び酢酸を完全に除去し、アセチル化されたケノデオキシコール酸エステル混合物(CDCA−diAc−Me、HDCA−diAc−Me、HCA−triAc−Me及びketo−Ac−Me)を残留物として得た。
残留物のHPLC結果(RT):HCA−triAc−Me(8.76分)、keto−Ac−Me(9.05分)、CDCA−diAc−Me(12.21分)及びHDCA−diAc−Me(12.81分)
【0026】
第4工程:式(III)及び(IV)の中間生成物の除去
前工程から得られた残留物に、非極性溶媒であるヘキサン2670mLを加え、30分間還流攪拌した。その後、ヘキサン溶媒を冷却し、25〜35℃で3時間攪拌し、濾過した。濾過物(HCA−triAc−Me、keto−Ac−Me及び一部のHDCA−diAc−Me)は、ヘキサン534mLを用いてさらに洗浄し、濾液及び洗浄液を集めて減圧濃縮し、式(I)及び(II)の中間生成物(CDCA−diAc−Me、HDCA−diAc−Me)を残留物として得た。
残留物のHPLC結果(RT):CDCA−diAc−Me(12.21分)及びHDCA−diAc−Me(12.81分)
【0027】
第5工程:ケノデオキシコール酸−ジアセテート−メチル−エステルの製造
前工程から得られた残留物に、メタノール801mLを加え、30分間還流攪拌し、そして20〜25℃に冷却し、2時間攪拌し、濾過した。濾過物(CDCA−diAc−Me)をメタノール267mLで洗浄し、60℃で真空乾燥し、含有量95〜98%の粗生成物を得た。その後、メタノール288mLを加え、温度を0〜5℃にして2時間、再結晶化を実施し、含有量99%のケノデオキシコール酸−ジアセテート−エステルを得た。収量は、143g(113.8g+母液:29.2g)であった。
m.p.:128〜129℃
生成物のHPLC結果(RT):CDCA−diAc−Me(12.21分)
【0028】
第6工程:脱保護化及びケノデオキシコール酸の結晶化
ケノデオキシコール酸−ジアセテート−エステル143gと水酸化ナトリウム171gを水1425mLに加え、4時間還流撹拌した。塩酸342mLを使用してpHを2〜3に調節し、35〜45℃で1時間撹拌した後、濾過した。濾過物を水142mLで洗浄し、70℃で真空乾燥して純粋なケノデオキシコール酸113.8gを得た。
m.p.:160〜161℃、[α]25 +13.0°[c=1,CHCl
【0029】
(比較例)
第1工程:胆汁の前処理
濃縮したブタ胆汁150gを熱水1000mLに溶かした。その後、水酸化ナトリウム100gを加え、20時間還流攪拌した。この溶液を25℃に冷却し、水1500mLを加え、1日間冷蔵放置した。反応溶液に硅藻土10gを加え、撹拌及び濾過し、沈澱した式(IV)の3α−ヒドロキシ−6−ケトコール酸ナトリウムを除去した。濾液を、濃硫酸を用いてpH8に調節し、ヒドロ亜硫酸ナトリウム5gを加え、15分間攪拌した。その後、酢酸エチル400mLを加え、希硫酸でpH5に調節した。溶液を30分間攪拌し、層分離して水溶液層を除去した。硅藻土7gと活性炭7gを有機層に加え、30分間撹拌及び濾過し、濾過物を酢酸エチル50mLで洗浄し、減圧濃縮した。
【0030】
第2工程:胆汁酸のエステル化
前工程から得られた残留物をメタノール300mLに溶かし、濃硫酸4.0mLを加え、室温で1日攪拌した。その後、炭酸水素ナトリウムで中和(pH7)し、濾過し、減圧濃縮した。
【0031】
第3工程:式(II)のメチルエステルの除去
前工程から得られた残留物を320mLの熱ベンゼンに溶かし、225mLに濃縮した後、1日間冷蔵放置した。その後、濾過し、濾過物(式(II)のメチルエステルベンゼン付加物)をベンゼンで洗浄し、ベンゼン濾液と洗浄液を減圧濃縮した。
【0032】
第4工程:胆汁酸エステルのアセチル化
前工程から得られた残留物に、無水酢酸75mLと無水酢酸ナトリウム7.5gを加え、5時間還流攪拌した。残った無水酢酸を蒸留して除去し、そしてメタノール35mLを加えた後、15分間還流攪拌し、減圧蒸留して残っている無水酢酸を除去した。
【0033】
第5工程:アセチル化された式(III)のエステルの除去
前工程から得られた残留物を、ヘキサン溶媒200mLで還流し、この溶液を20℃で、1日放置した。この懸濁液を濾過し、濾過物(粗結晶のHDCA−triAc−Me)をヘキサンで洗浄し、濾液と洗浄液を集めて減圧蒸留した。
【0034】
第6工程:式(V)の化合物の分離
前工程から得られた残留物を、熱エタノール46mLに溶かした後、1日間冷蔵放置した。懸濁液を濾過し、濾過物を冷エタノール27mLで洗浄し、60℃で真空乾燥した。式(V)の化合物21.5gを、3倍量のエタノールで再結晶化し、18.5gの生成物を得た。
m.p.119〜121℃;[α]25 +10.4°(c=1,ジオキサン);[α]25 +13.8°(c=1,CHCl)
【0035】
第7工程:ケン化及び中和
ケノデオキシコール酸−ジアセテート−メチル−エステル18.5gと水酸化ナトリウム18.5gを水185mLに加え、14時間還流攪拌した。その後、濃硫酸でpHを4.5に調節した。
【0036】
第8工程:式(I)の化合物の製造
前工程の反応液を酢酸エチルで抽出し、水溶液層を捨てた。酢酸エチル層を6%の塩水で洗浄し、約90mLに蒸留した。この溶液を冷却し、ヘキサン90mLを加え、1日間冷蔵放置した。この懸濁液を濾過し、濾過物をヘキサン20mLで洗浄し、60℃で真空乾燥し、12.7gのケノデオキシコール酸を得た。
m.p.142〜145℃;[α]25 +13.0°(c=1,CHCl
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ブタ胆汁固形化物から式(I)のケノデオキシコール酸を高収率及び高純度で精製することができる。また、本発明は精製時間を短縮することによって工業的精製に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタ胆汁の前処理、胆汁酸のエステル化、胆汁酸エステルのアセチル化、非極性有機溶媒を用いた中間生成物の除去、アセチル化された胆汁酸エステルの結晶化及び脱保護化の各工程を含む、式(I)の化合物の精製方法であって、
【化001】

1)前処理工程として、塩を含む有機溶媒にケノデオキシコール酸を35〜55重量%含有するブタ胆汁固形化物を溶解させること、
2)結晶化工程として、15〜25℃の温度範囲で、C1−4アルコールで結晶化させること、
3)脱保護化工程として、結晶化工程の生成物に、塩基を加え、脱保護化し、酸を加えて水の存在下に結晶化させること、
を特徴とする式(I)の化合物の精製方法。
【請求項2】
前処理工程に用いられる塩が、塩化ナトリウム、無水硫酸マグネシウム及び無水硫酸ナトリウムよりなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
塩の量が、有機溶媒の全体量に対して、5〜10重量%であることを特徴とする請求項2に記載の精製方法。
【請求項4】
結晶化工程後に、0〜15℃の温度範囲でC1−4アルコールにてさらに再結晶化させることを含んでなる、再結晶化された生成物が、式(V)の化合物を99%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【化002】

【請求項5】
結晶化工程が、20〜25℃の温度範囲で遂行されることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【請求項6】
結晶化工程に用いられるアルコールの量が、前工程から得られる残留物量に対して、0.5〜3倍であることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【請求項7】
脱保護化工程のpHが、4以下であることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【請求項8】
結晶化工程が、水の存在下、35〜45℃の温度範囲で遂行されることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。

【公表番号】特表2009−522253(P2009−522253A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548369(P2008−548369)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002998
【国際公開番号】WO2007/078039
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(500409840)ダエウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (13)
【出願人】(500409851)ダエウン ケミカル カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】