説明

ケースユニット

【課題】物品用の取出口を開閉する際の操作性と気密シール性との双方を良好なものとすることができ、かつ小型・軽量化をも好適に図ることが可能なケースユニットを提供する。
【解決手段】内部に収容された物品の取出口19が設けられた前面部11を有するケース1と、取出口19を閉塞するためのシール部21を有するカバー体2とを備えている、ケースユニットC1であって、シール部21が前面部11に沿って往復動可能にカバー体2のスライド移動ガイドを行なうガイド手段30,31を備えており、このガイド手段は、シール部21が取出口19の正面に配置されたときに、このシール部21を前面部11寄りに変位させて取出口19の周囲に圧接させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば血液や尿などの検体の分析処理を行なうのに利用される分析用具や、これ以外の所望の物品を、衛生的に保管収納し、携帯などを行なうのに好適なケースユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、分析用具を保管収納するケースユニットの具体例として、図8および図9に示すものを先に提案している(たとえば、特許文献1の図2A〜図2C、図3A〜図3C、および図14A,図14Bを参照)。
【0003】
図8(a)に示すケースユニット9Aは、分析用具を内部に収容するケース90の前面部に、取出口91が設けられている。ケース90には、ネジ軸92に螺合してこのネジ軸92の周りを回転しつつ前後動可能なカバー体93が設けられている。カバー体93は、弾性部材からなるシール部(不図示)を備えており、矢印N10の方向に回転されて、図8(b)に示すように設定されると、前記シール部が取出口91の正面に配置されてこの取出口91が閉塞される。
【0004】
一方、図9(a)に示すケースユニット9Bは、複数の分析用具99を収容する上部開口状のケース94に、キャップ状の頭部95aを有するカバー体95が装着されている。このカバー体95は、ケース94に対して相対回転しつつ上下にスライドする円筒部95bを有しており、この円筒部95bに取出口96が形成されている。円筒部95bを下降させると、取出口96はケース94内に没入して閉塞され、図9(b)に示すように、キャップ状の頭部95aによってケース94の上部開口部を覆うことができる。
【0005】
前記したケースユニット9A,9Bによれば、カバー体93,95を回転させることによって取出口91,96を開閉することができ、その操作は容易である。また、取出口91,96を閉塞した際には、ケース90,94の内部を密封空間とし、内部に湿気やダスト類が不当に進入することを防止することもできる。
【0006】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0007】
すなわち、ケースユニット9Aにおいて、取出口91を閉塞したときの気密シール性を高くし、かつカバー体93を回転させる際の操作性を良好とするには、カバー体93のシール部が取出口91の正面に丁度位置するときにのみ、前記シール部がケース90の前面部に強い力で当接するように設定する必要がある。この設定が適切になされていない場合には、たとえば取出口91を塞ぐ力が不足気味となって十分な気密シール性能が得られなくなったり、あるいはカバー体93のシール部が取出口91の正面に到達する以前にケース90に強く圧接し、カバー体93をそれ以上回転させるのに大きな力を要するといった不具合を生じる。これに対し、カバー体93は、ネジ軸92に螺合されており、このカバー体93を回転させると、その回転角度に対応する距離だけ前進または後退する。このため、ケースユニット9Aにおいては、カバー体93のシール部が取出口91の正面に位置するときにのみ、ケース90の前面部に強く圧接するように設定し、これを維持させておくことは余り容易でない。たとえば、前記シール部が摩耗したり、あるいは何らかの事情により位置ずれしたような場合には、このことに起因して、気密シール性能が比較的容易に低下する虞がある。
【0008】
一方、ケースユニット9Bにおいては、カバー体95の円筒部95bの内径を分析用具99の全長寸法よりも大きくする必要があり、ケース94には、この円筒部95bをスライド回転させるように進入させるための構造を設ける必要がある。このため、ケース94の全体のサイズは、分析用具99と比較して大きくなり易く、小型・軽量化を促進する上で、改善の余地がある。
【0009】
【特許文献1】国際公開パンフレットWO2006/046701
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、物品用の取出口を開閉する際の操作性と気密シール性との双方を良好なものとしつつ、小型・軽量化をも好適に図ることが可能なケースユニットを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0012】
本発明により提供されるケースユニットは、内部に収容された物品の取出口が設けられた前面部を有するケースと、前記取出口を閉塞するためのシール部を有するカバー体と、を備えている、ケースユニットであって、前記シール部が前記前面部に沿って往復動可能に前記カバー体のスライド移動ガイドを行なうガイド手段を備えており、このガイド手段は、前記シール部が前記取出口の正面に配置されたときに、このシール部を前記前面部寄りに変位させて前記取出口の周囲に圧接させるように構成されていることを特徴としている。
ここで、ケースユニットのケースの向きや姿勢は、種々に変更することが可能であるが、本明細書においては、取出口を基準に方向を定めている。ケースが複数の面を有する場合に、それらの面がどのような向きにあるか否かには関係なく、取出口が設けられている面が、本発明でいう前面部である。
【0013】
本発明の構成によれば、カバー体のシール部が取出口の正面に位置するときに、このシール部を取出口の周囲に圧接させるために、気密性の高いシールを図ることが可能である。その一方、シール部が取出口から離れた位置を移動するときには、このシール部をケースの前面部に強く圧接させる必要はないため、カバー体を移動させる際の抵抗力を小さくし、操作性を良好にすることもできる。とくに、本発明においては、先の図8に示した従来技術とは異なり、ネジ軸を用いた回転方式を採用しておらず、シール部を取出口の正面に正確に対面させてから、このシール部を取出口に接近させることができるために、たとえばシール部が多少摩耗するような事態を生じても、このことによってシール性能が大きく低下する虞は少ない。加えて、本発明においては、先の図9に示した従来技術とは異なり、カバー体をケース内に進入させるといった必要もなく、ケースの大型化を回避することができるために、全体の小型・軽量化を好適に図ることも可能である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記前面部には、前記シール部が前記取出口を閉塞する際の進行方向に進むほど、この前面部の正面への突出寸法が大きくなるように傾斜し、かつ前記取出口の全周を囲んだループ状のテーパ面が形成されており、前記シール部は、前記テーパ面に面接触可能とされている。
【0015】
このような構成によれば、シール部をテーパ面に対して的確に面接触させ易く、気密シール性をより高めることが可能なる。とくに、後述するように、シール部を移動させる際にその表面をケースの前面部に対して傾斜させる場合には、このシール部の表面をテーパ面により的確に圧接させ易くなる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ガイド手段は、前記シール部が前記取出口から離れた位置に存在するときには、前記シール部の表面を前記前面部に対して非平行に傾斜させたまま前記シール部を移動させるとともに、前記シール部が前記取出口の正面に移動したときには、前記シール部の表面が前記前面部に対して平行な向きとなるように、前記カバー体に回転を生じさせる構成とされている。
【0017】
このような構成によれば、カバー体をスライドさせるときに、シール部の表面の全体がケースの前面部に摺接しないようにすることが可能であり、カバー体のスライド動作の円滑化を図ることができる。また、取出口を閉塞するときには、シール部の回転作用によってその表面を取出口の周囲に圧接させることができるために、シール部が取出口の周囲に対して摺接する動作も抑制される。したがって、取出口を開閉する際の操作性を一層良好とすることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ガイド手段は、前記ケースおよび前記カバー体のうち、一方に設けられたガイド溝と、他方に設けられ、かつ前記ガイド溝に係入されてこのガイド溝によって移動経路が規定されるガイド凸部と、を含んで構成されている。
【0019】
このような構成によれば、ガイド溝とガイド凸部とを組み合わせた簡易な構成によりガイド手段が実現され、全体の小型・軽量化などを促進するのにより好ましい。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ケースの両側面部のそれぞれには、前記ガイド溝が形成され、前記カバー体は、前記ケースの両側面部に対面する両側壁部を有し、かつこの両側壁部のそれぞれに前記ガイド凸部が形成されており、前記ガイド溝の前側内壁部には、前記ケースの後方に向けて突出した突出壁部が設けられ、前記シール部が前記取出口の正面に移動したときには、前記ガイド凸部が前記突出壁部によって前記ケースの後方寄りにガイドされ、かつこの後方寄りにガイドされた状態を維持可能な構成とされている。
【0021】
このような構成によれば、簡易な構成により、カバー体に所定の動作を適切に生じさせることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ガイド凸部は、前記ガイド溝の長手方向に延びた形状であり、前記シール部が前記取出口から離れた位置を移動するときには、前記ガイド溝の前側内壁部および後側内壁部のうち、一方に対して、前記ガイド凸部の少なくとも長手方向の両端部が当接し、かつ他方に対して、前記ガイド凸部の長手方向中間部が当接し、前記カバー体の姿勢が略一定に維持されるように構成されている。
【0023】
このような構成によれば、カバー体を往復動させる際に、このカバー体の姿勢が安定するために、たとえばシール部とケースの前面部との接触度合いが大きく変動するといったことが無くなり、カバー体の動作を円滑にすることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記突出壁部は、前記カバー体のスライド方向において、前記取出口から離間した位置に設けられており、前記ガイド凸部が前記突出壁部にガイドされて前記ケースの後方に向けて変位するときには、前記シール部の表面を前記取出口の周囲に接近させる回転動作が、前記カバー体に生じるように構成されている。
【0025】
このような構成によれば、シール部の回転動作を利用してこのシール部を取出口の周囲に圧接させることが簡易な構成により実現できる。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ケース内に収容される物品は、検体の分析処理に利用される分析用具であり、前記ケース内には、複数の分析用具をそれらの厚み方向に積層させて支持するとともに、これら積層された複数の分析用具のうち、端部に位置するものを前記取出口の対面位置に配置させるように、前記複数の分析用具の位置決めを図る位置決め手段が設けられており、全体が分析用具収納カートリッジとして構成されている。
【0027】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0029】
図1〜図6は、本発明が適用されたケースユニットの一例を示している。本実施形態のケースユニットC1は、図1および図2によく表われているように、取出口19が形成された前面部11を有するケース1と、カバー体2とを備えている。このカバー体2は、後述するように、ケース1に沿って上下方向にスライド可能であるが、取出口19を閉塞する際にはその気密シール性を高めるように、このカバー体2の下部は、ケース1の後方(前面部11の正面方向とは反対方向)に変位し、カバー体2が回転するようになっている。
【0030】
このケースユニットC1は、図1の仮想線に示すような分析装置Aと組み合わせて使用するのに適したものとされている。分析装置Aは、後述する分析用具8が所定箇所に差し込まれて、この分析用具8に血液などの検体が点着されると、この検体のグルコース濃度測定などの所定の分析処理を実行可能なものである。ケースユニットC1は、そのような分析処理に利用される複数の分析用具6を内部に収容する(図3,図6を参照)。この点は、先に挙げた特許文献1に記載されたケースユニットと同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0031】
ケース1は、比較的硬質の合成樹脂製であり、図2によく表われているように、前面部11を有して上下方向に延びた略角柱状の主要部10と、この主要部10の下部から前方に突出した補助部14とを備えている。図3に示すように、このケース1は、別体に形成された後部開口状の前ケース部材15Aと、前部開口状の後ケース部材15Bとが組み合わされて構成されており、その内部には、物品収納用の空間部16が形成されている。空間部16に分析用具8を収納するには、前ケース部材15Aと後ケース部材15Bとを分離させることとなる。
【0032】
ケース1内には、支持片17が設けられ、かつこの支持片17上に複数の分析用具8が上下に積層して載設されている。ケース1内には、複数の分析用具8の最上部をバネ40の弾発力を利用して下向きに付勢する押圧体41も設けられている。支持片17は、複数の分析用具8のうち、最下層に位置するものを取出口19に対面させる配置にあり、複数の分析用具8は、最下層に位置するものから1つずつ順番に取出口19を介して外部に取り出し可能となっている。分析用具8の取り出しは、たとえば図1の仮想線に示すように、分析装置Aが有する一対のアーム70を用いて行なわれる。各アーム70の先端は、フック状であり、取出口19は、各アーム70の先端をケース1内に進入させることを許容する形態とされている。分析用具8には、各アーム70が取出口19からケース1内に進入したときに、このアーム70に係合させるための切欠き部が形成されており、分析用具8は、各アーム70に係止保持されて取出口19からケース1の外部に取り出し可能である。ケース1内の下部は、乾燥剤89の収納室とされている。分析用具8は、たとえば検体に所定の反応を生じさせるための試薬を備えており、乾燥剤89は、湿気に起因する試薬の品質劣化を抑制するのに有効である。
【0033】
ケース1の前面部11のうち、取出口19の周囲は、カバー体2の後述するシール部21が圧接される部分であり、下方に進むほど前面部11の正面に向けて突出したテーパ面18として形成されている。このテーパ面18は、取出口19の全周を囲むたとえば矩形のループ状である。
【0034】
カバー体2は、合成樹脂製の枠状のフレーム20と、取出口19を閉塞するためのシール部21とを有している。フレーム20は、ケース1の主要部10にスライド可能に外嵌する筒状部22を有している。シール部21は、たとえば合成ゴムやその他の弾性を有する材質のブロック片21Aをフレーム20に保持させることにより構成されており、ケース1の前面部11に対面する配置に設けられている。図3に示すように、ブロック片21Aにスリット210を形成し、シール部21の弾性変形量を多くする構成とすることもできる。
【0035】
カバー体2のフレーム20には、ケース1の正面に突出した突出部23が設けられている。この突出部23は、図1に示すように、分析装置Aをケース1の前面部11に接近させたときに、この分析装置Aの上面部のガイド溝72に嵌合させるための凸部23aを有している。これらの嵌合作用によって、分析装置AとケースユニットC1との位置決めが図られ、一対のアーム70を取出口19の所定箇所へ正確に挿入することができる。ケース1の補助部14には、前後方向に延びるガイド溝14aが形成されているが、このガイド溝14aは、分析装置Aの下部に形成されている位置決め用のガイド部(不図示)に嵌合させるためのものであり、分析装置AとケースユニットC1との位置決めをより正確にするのに役立つ。
【0036】
図2および図4によく表われているように、ケース1の両側面部12のそれぞれには、ガイド溝30が設けられている。これに対し、カバー体2の両側壁部22aのそれぞれには、ガイド溝30に係入するガイド凸部31が設けられている。これらガイド溝30とガイド凸部31との組み合わせ構造は、本発明でいうガイド手段の一例に相当する。
【0037】
ガイド溝30は、図5(a),(b)によく表われているように、ケース1の側面部12に2条の凸状リブ32a,32bが設けられていることにより形成されている。ガイド溝30を規定する前側内壁部30aおよび後側内壁部30bは、基本的には、互いに平行であって、上下方向に直線状に延びているが、前側内壁部30aの下部には、ケース1の後方側に突出した突出壁部30a’が形成されている。一方、後側内壁部30bの上下方向中間部には、凹状部30b’が形成されているが、これは後述する膨出部31bとの干渉を回避するための部分である。
【0038】
ガイド凸部31は、ガイド溝30と同方向に延びた細長形状であり、上端部31aの幅Waは、ガイド溝30の幅と略同等である。これに対し、下端部31cの幅Wcは、ガイド溝30の幅よりも小さくされている。このことにより、図5(b)に示すように、ガイド溝30の下部のうち、突出壁部30a’の後方の幅狭な領域に、下端部31cを進入させることが可能である。ガイド凸部31の上下方向中間部には、ケース1の後方側に膨出した膨出部31bが設けられている。図5(a)に示すように、シール部21が取出口19から離れているときには、膨出部31bが後側内壁部30bに当接し、かつガイド凸部31の前面部の略全長域が、前側内壁部30aに面接触するようになっている。このような状態では、ガイド凸部31は、その姿勢が一定に保たれたまま上下方向にスライド可能であり、その際にはシール部21の表面21aの角度も一定に保たれる。なお、ガイド凸部31の姿勢を一定に保つための他の手段としては、本実施例の構成に代えて、たとえばガイド凸部31Aの形状を変え、ガイド凸部31の上端部31aおよび下端部31cを前側内壁部30aに2点接触させるとともに、膨出部31bを後側内壁部30bに当接させる3点接触構造とすることもできる。
【0039】
シール部21の表面21aは、取出口19の非閉塞時には、前面部11のテーパ面18以外の平面領域に対して、適当な角度で傾斜するように設定されている。表面21aの傾斜方向は、テーパ面18の傾斜方向と同一である。また、表面21aの傾斜角度α1は、テーパ面18の傾斜角度α2よりも大きくされ、後述するように、表面21aをテーパ面18に強く摺接させることなく、テーパ面18の正面に配置可能とされている。
【0040】
シール部21が取出口19の正面に移動したときには、図5(b)に示すように、ガイド凸部31の下端部31cが突出壁部30a’に当接してケース1の後方に向けて変位するようになっている。このことにより、シール部21は、前面部11寄りに変位し、テーパ面18に圧接する。ただし、突出壁部30a’と下端部31cとの当接は、取出口19よりも下方においてなされており、下端部31cがケース1の後方に向けて変位したときには、カバー体2が矢印N1に示す方向に回転するようになっている。この回転動作により、シール部21の表面21aは、テーパ面18に平行な向きとなる。
【0041】
次に、ケースユニットC1の作用について説明する。
【0042】
まず、ケース1内に収容されている分析用具8を取り出す場合には、カバー体2を上昇させてシール部21を取出口19よりも上方に配置させる。このことにより、取出口19の前方を開放し、分析用具8を取り出すことができる。分析用具8の取り出し手法は、先に述べたとおりである。
【0043】
次いで、分析用具8を取り出した後に、取出口19を閉塞するには、カバー体2を下降させて、シール部21を取出口19の正面に配置させる。カバー体2を下降させる際には、図5(a)を参照して説明したように、ガイド凸部31がガイド溝30内を一定姿勢でスライドし、シール部21の表面21aは、前面部11に対して適当な角度で傾斜した状態で移動する。このため、表面21aの全体が前面部11に摺接することはなく、その一部分が前面部11に摺接するに過ぎない状態となるため、その際の抵抗は小さい。なお、表面21aを前面部11に全く摺接させないようにして移動させることも可能である。したがって、カバー体2を弱い力でスムーズにスライドさせることができ、操作性がよい。
【0044】
カバー体2が下降されることによって、シール部21が取出口19の正面に移動すると、図5(b)を参照して説明したように、ガイド凸部31の下端部31cがガイド溝30の突出壁部30a’に当接してその後方へガイドされる。すると、シール部21が前面部11寄りに変位してテーパ面18に圧接し、取出口19を適切に閉塞することができる(図6も参照)。このような手段によれば、シール部21は、取出口19の正面に移動したときに、この取出口19に向けて変位するために、シール部21がたとえば多少の摩耗を生じても、このことによってシール部21を取出口19の周囲に圧接させることが困難になるといった不具合はない。また、シール部21の圧接対象部分は、テーパ面18とされているために、このようなテーパ面18が設けられていない場合と比較すると、シール部21の変位量が少ない場合でも、シール部21を取出口19の周辺部に対して大きな力で圧接させることが可能となり、シール部21による気密シール性を高めるのに好ましいものとなる。
【0045】
本実施形態においては、既述したように、取出口19を閉塞する際には、カバー体2が矢印N1で示す方向に回転し、シール部21の表面21aがテーパ面18に平行な向きとなるように回転する。このような回転動作を利用してシール部21をテーパ面18に圧接させるようにすれば、シール部21をテーパ面18の正面に配置させる際に、このシール部21をテーパ面18に強く摺接させる必要がなくなり、操作性がより一層良好となる。
【0046】
ガイド凸部31の下端部31cについては、突出壁部30a’の後方に配置させて係止させておくことが可能である。したがって、取出口19の閉塞状態が、不用意に解除される虞は少ない。とくに、図5(b)に示すように、ガイド凸部31の下端部31cを、ガイド溝30の下端の幅狭部分に差し込むようにすれば、取出口19の閉塞状態の維持がより確実化される。
【0047】
分析用具8は、衛生的に管理する必要があり、とくに防湿性や防塵性を高めた状態で保管する必要がある。これに対し、ケースユニットC1は、そのような機能に優れたものであることは先に述べたとおりであり、分析用具8の保管収納用途に好ましい。また、分析用具8は、分析装置Aと一緒に旅行先などに携行しなければならない場合があるが、ケースユニットC1は、ケース1にカバー体2をスライド可能に嵌合させた構造であり、ケース1自体を大型化する必要はない。カバー体2は、ケース1に沿ってスライド可能に形成すればよく、各部の薄肉化などを好適に図ることができる。したがって、ケースユニットC1の小型かつ軽量化を図り,携行などに際しても便利なものとすることが可能である。
【0048】
図7は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0049】
図7に示すケースユニットC2においては、上下方向に延びるガイド溝30Aが、ケース1の後面部13に設けられ、かつこのガイド溝30Aの下部近傍には、ケース1の後方に向けて突出した突出壁部39が設けられている。これに対し、カバー体2の後壁部22aには、ガイド溝30Aに係入する1または複数のガイド凸部31Aが設けられ、ガイド溝30Aに沿って移動可能とされている。ただし、図7(c)に示すように、シール部21が取出口19の正面に移動したときには、ガイド凸部31Aは、突出壁部39によってケース1の後方に向けてガイドされ、その結果シール部21がテーパ面18に圧接するようになっている。
【0050】
本実施形態においても、ガイド溝30Aとガイド凸部31Aとの組み合わせ構造により、取出口19を塞ぐときにシール部21を取出口19の周囲に圧接させ、かつそれ以外の場合には、シール部21が前面部11に強く当接しないようにすることができる。したがって、気密シール性を良好にしつつ、取出口19の開閉操作性も良好なものとなる。
【0051】
本実施形態から理解されるように、本発明でいうガイド手段を、ガイド溝およびガイド凸部を利用して構成する場合、これらをケースの両側面部やカバー体の両側壁部以外の箇所に設けることができる。もちろん、ガイド溝およびガイド凸部は、ケースおよびカバー体にそれぞれ設けられていればよく、上述した実施形態とは反対に、ガイド溝をカバー体に設け、かつガイド凸部をケースに設けた構成とすることもできる。ガイド凸部は、ガイド溝の長手方向に延びた形状でなくてもよく、たとえば円柱状の凸部とすることもできる。
【0052】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るケースユニットの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0053】
本発明でいうガイド手段は、ガイド溝とガイド凸部とを組み合わせたものに限らない。たとえば、溝と凸部の組み合わせとは相違するタイプのカム機構を採用することができる。ケースは、取出口を有する壁面部(前面部)を有するものであればよく、その具体的な形状やサイズは問わない。ケースの内部に、分析用具以外の物品を収容することも無論可能である。本発明において、ケースに収容される物品の概念には、定形性を有しない液体などの物質も含まれる。本発明では、優れたシール性が得られるため、液体などを漏出させないように収容するのにも適することとなる。カバー体の具体的な形状なども限定されるものではなく、またカバー体に設けられるシール部の具体的な材質なども限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明が適用されたケースユニットの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すケースユニットの分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図3のIV−IV線におけるケース内の構造を一部省略した断面図である。
【図5】(a),(b)は、図1に示すケースユニットのカバー体をスライドさせる動作状態を示す要部断面図である。
【図6】図1に示すケースユニットの取出口を閉塞した状態の断面図である。
【図7】本発明が適用されたケースユニットの他の例を示し、(a)は平面断面図であり、(b)は側面断面図であり、(c)は取出口を閉塞した状態の側面断面図である。
【図8】(a),(b)は、従来技術の一例を示す斜視図である。
【図9】(a),(b)は、従来技術の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
C1,C2 ケースユニット
1 ケース
2 カバー体
8 分析用具(収納物品)
11 前面部
12 両側面部(ケースの)
18 テーパ面
19 取出口
21 シール部(カバー体の)
21a 表面(シール部の)
30,30A ガイド溝(ガイド手段)
30a 前側内壁部
30b 後側内壁部
30a’ 突出壁部
31,31A ガイド凸部(ガイド手段)
39 突出壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容された物品の取出口が設けられた前面部を有するケースと、
前記取出口を閉塞するためのシール部を有するカバー体と、
を備えている、ケースユニットであって、
前記シール部が前記前面部に沿って往復動可能に前記カバー体のスライド移動ガイドを行なうガイド手段を備えており、
このガイド手段は、前記シール部が前記取出口の正面に配置されたときに、このシール部を前記前面部寄りに変位させて前記取出口の周囲に圧接させるように構成されていることを特徴とする、ケースユニット。
【請求項2】
前記前面部には、前記シール部が前記取出口を閉塞する際の進行方向に進むほど、この前面部の正面への突出寸法が大きくなるように傾斜し、かつ前記取出口の全周を囲んだループ状のテーパ面が形成されており、
前記シール部は、前記テーパ面に面接触可能とされている、請求項1に記載のケースユニット。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記シール部が前記取出口から離れた位置に存在するときには、前記シール部の表面を前記前面部に対して非平行に傾斜させたまま前記シール部を移動させるとともに、前記シール部が前記取出口の正面に移動したときには、前記シール部の表面が前記前面部に対して平行な向きとなるように、前記カバー体に回転を生じさせる構成とされている、請求項1または2に記載のケースユニット。
【請求項4】
前記ガイド手段は、前記ケースおよび前記カバー体のうち、一方に設けられたガイド溝と、他方に設けられ、かつ前記ガイド溝に係入されてこのガイド溝によって移動経路が規定されるガイド凸部と、を含んで構成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載のケースユニット。
【請求項5】
前記ケースの両側面部のそれぞれには、前記ガイド溝が形成され、
前記カバー体は、前記ケースの両側面部に対面する両側壁部を有し、かつこの両側壁部のそれぞれに前記ガイド凸部が形成されており、
前記ガイド溝の前側内壁部には、前記ケースの後方に向けて突出した突出壁部が設けられ、前記シール部が前記取出口の正面に移動したときには、前記ガイド凸部が前記突出壁部によって前記ケースの後方寄りにガイドされ、かつこの後方寄りにガイドされた状態を維持可能な構成とされている、請求項4に記載のケースユニット。
【請求項6】
前記ガイド凸部は、前記ガイド溝の長手方向に延びた形状であり、
前記シール部が前記取出口から離れた位置を移動するときには、前記ガイド溝の前側内壁部および後側内壁部のうち、一方に対して、前記ガイド凸部の少なくとも長手方向の両端部が当接し、かつ他方に対して、前記ガイド凸部の長手方向中間部が当接し、前記カバー体の姿勢が略一定に維持されるように構成されている、請求項5に記載のケースユニット。
【請求項7】
前記突出壁部は、前記カバー体のスライド方向において、前記取出口から離間した位置に設けられており、
前記ガイド凸部が前記突出壁部にガイドされて前記ケースの後方に向けて変位するときには、前記シール部の表面を前記取出口の周囲に接近させる回転動作が、前記カバー体に生じるように構成されている、請求項5または6に記載のケースユニット。
【請求項8】
前記ケース内に収容される物品は、検体の分析処理に利用される分析用具であり、
前記ケース内には、複数の分析用具をそれらの厚み方向に積層させて支持するとともに、これら積層された複数の分析用具のうち、端部に位置するものを前記取出口の対面位置に配置させるように、前記複数の分析用具の位置決めを図る位置決め手段が設けられており、
全体が分析用具収納カートリッジとして構成されている、請求項1ないし7のいずれかに記載のケースユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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