説明

ケーソンの隔壁の接合構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防波堤、岸壁、護岸等を構築するケーソン、特に、ケーソン躯体を箱型に成形して内部を複数の隔壁で仕切るように構成したケーソンの隔壁の接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ケーソンは、設置位置や施工目的など応じて大きさが異なるが、防波堤、岸壁、護岸等の港湾において使用されるケーソンは、その大きさが例えば長さ、高さが10m以上の大型なケーソンが使用される。
【0003】従来、このような大型ケーソンは、施工現場でコンクリートを打設して成形していた。したがって現場打ちコンクリートによってケーソンを成形する場合、ケーソンの鉄筋、コンクリート型枠の組み立て及びその脱型作業など工程が全て現場作業となる。しかし、近年は、若年層の就業の減少に伴う、熟練工の不足や作業者の高齢化が進み、労働力の確保が困難な状況にある。このため、港湾工事における主要な工種の一つであるケーソン製作の省力化が要望されている。その解決策として近年、ケーソンを予め別途工場で成形した複数のプレキャストコンクリート版(以下、単にPC版という)に分割し、これを現場で組み立ててケーソンを構築する工法が開発されている。しかし、ケーソンの全てを複数のPC版に分割し、このPC版を組み合わせてケーソンを構築する場合、PC版の連結に手間が掛かる。つまり、大型ケーソン、特に、港湾において使用され、ケーソン躯体の内部を隔壁によって碁盤目状に仕切るように構成したケーソンにおいて、ケーソンを構成するケーソン躯体及び隔壁を全てPC版に分割する場合、PC版の枚数が増え、個々のPC版の固定が面倒である。また、ケーソン躯体を構成する底版とこの底版の周縁部から立設する側壁を一枚のPC版で構成する場合、PC版の形状寸法が大型化する。このような大型のPC版は据付けの際などにおいて取扱が不便であって、運搬時や据付け作業時での利便性の面からすればむしろ小型なPC版のほうが作業しやすい。しかし、PC版を小型化した場合、ケーソン躯体と隔壁を全てPC版に分割したのでは、ケーソンを構築するPC版の枚数が膨大となり、ケーソン躯体及びケーソン躯体の内部を仕切る隔壁の組み立てに際して、上下、左右に連接した多数のPC版を正確かつ強固に固定しなければならず、PC版の接合構造が複雑化し、結果的にPC版の据付け作業が極めて煩雑となる。
【0004】本発明は、このような問題点を解決しようとするもので、施工現場でのコンクリートの打設作業を最小限に抑えることができることを第1の目的とし、また、ケーソンの隔壁の接合作業が簡単かつ容易でケーソン製作の省力化を可能とするケーソンの隔壁の接合構造を提供することを第2の目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明に係るケーソンの隔壁の接合構造は、底版及び側壁を有する箱型のケーソン躯体と、このケーソン躯体の内部を仕切る複数の隔壁とを有し、前記ケーソン躯体を現場打ちしたコンクリート製とするとともに、前記隔壁は予め成形したPC版を上下方向に連接して構築し、該隔壁を構築するPC版には、PC版の側縁から突出する継手手段を一体的に埋設し、前記隔壁の交点部と前記側壁の内側に前記継手手段を受け入れる接続手段を据付け、この接続手段の内部に充填した充填剤によって前記継手手段と接続手段とを一体的に接合し、かつ、前記接続手段は、前面側に挿入溝を有して前記継手手段を納めるほぼ箱型の型鋼で構成するとともに、前記隔壁の交点部に位置する複数の型鋼は、各型鋼の背面部を突き合わせ一体化することによって、各型鋼に間に鉄筋を納める空洞部を貫通形成した支柱部とし、この支柱部の空洞部にコンクリートを充填して支柱部を前記底版とを一体的に固定するとともに、前記側壁に据付ける型鋼にはスタッドジベルを一体的に固着し、このスタッドジベルを側壁に埋設したものである。
【0006】ケーソン躯体は現場打ちしたコンクリートで成形されるが、ケーソン躯体の内部を仕切る隔壁を予め製作したPC版で構成することにより、現場での隔壁の成形に伴う鉄筋及び型枠の組付、脱型作業が不要となる。また、PC版を上下方向に連接して隔壁を構築することから、個々のPC版が小型化され、組立時などにおいてPC版の据付けも容易である。また、PC版の据付けに際し、PC版に埋設した継手手段をケーソン躯体側に設置した接続手段に嵌め入れた後、接続手段に充填した充填剤によって接続手段と継手手段とを簡単に一体化することが可能である。さらに、支柱部の空洞部にコンクリートを充填して支柱部と鉄筋と一体化することで隔壁の交点部に支柱部を簡単に据付け固定できる。また、側壁に据付ける型鋼は、ケーソン躯体の成形と同時に型鋼に固着したスタッドジベルを側壁に埋設して一体化でき、隔壁を支持する支柱部と型鋼の据付け作業を効率的に行える。
【0007】請求項2の発明に係るケーソンの隔壁の接合構造は、前記請求項1記載のケーソンの隔壁の接合構造において、前記支柱部を構成する各型鋼に水平方向に平行する多数のリブプレートを固着して隣接する各型鋼を一体化するとともに、前記側壁に据付ける型鋼を側壁に沿わせるベースプレートに固着し、このベースプレートと型鋼とを水平方向に平行する多数のリブプレートで一体化し、かつ、これら支柱部と側壁に据付ける型鋼を工場で製作して予めユニット化した支柱部と型鋼を前記ケーソン躯体に据付けて成るものである。
【0008】隔壁を支持する支柱部と側壁に据付ける型鋼をプレキャスト化することで、予めユニット化した支柱部と側壁とをケーソン躯体に据付けることができる。また、支柱部を構成する型鋼及び側壁に据付ける型鋼にPC版の抜出し力が作用しても、型鋼は、平行する多数のリブプレートによって型鋼の変形が規制され、PC版を抜止めすることが可能となり、PC版と型鋼は、応力に対して十分な接合強度が得られる。
【0009】
【発明の実施形態】以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1乃至図6は、本発明の第1実施例を示し、同図において1はケーソンであり、底版2A及び底版2Aの周縁から立ち上がる側壁2Bを有する箱型のケーソン躯体2と、ケーソン躯体2の内部を仕切る複数の隔壁3とで構成されている。
【0010】前記ケーソン躯体2は現場打ちコンクリート4によって成形され、本実施例におけるケーソン躯体2の大きさは幅15.5m、長さ13.0m、高さ13.0mとする。また、ケーソン躯体2の内部を仕切る隔壁3はプレキャストコンクリート版5(以下、単にPC版と称す)によって構成し、上下にPC版5を構築して前記隔壁3を形成している。このPC版5は、幅4.90m、高さ2.95m,厚さ0.20mの形状寸法とし、四枚のPC版5を上下に連接させて一枚の隔壁3を構築する。そして、隔壁3を互いに交叉させてケーソン躯体2の内部を九等分に区画し、各隔壁3の交点部には隔壁3を支持するための支柱部6が設けてある。この支柱部6は、接続手段として前面側にPC版5の挿入溝8を開口した平断面略コ字型の型鋼9によって構成されている。また、支柱部6は隔壁3の交点部分に位置して四枚の隔壁3を支持するものであり、四本の型鋼9によって支柱部6が構成される。そして、図1に示すように、四枚の隔壁3は格子状に突き合わせてケーソン躯体2の内部を区画することから、支柱部6は、前面側に形成した挿入溝8を外側に向けた状態で四本の型鋼9が背中合わせに突き合わさせて溶接され、支柱部6の中央部に空洞部6Aを貫通形成している。さらに、支柱部6を構成する各型鋼9の側面板間に水平方向に平行する多数の鋼板製リブプレート10を架け渡し、このリブプレート10によって隣接する各型鋼9を相互に一体化している。一方、側壁2Bの内側には、最も外側に配置される隔壁3の外端縁を支持するため接続手段として前記支柱部6の型鋼9と実質同一機能を有する型鋼9Aが設けられている。この型鋼9Aは側壁2Bに埋設され、型鋼9Aの底板部に側壁2Bに沿わせる鋼板製のベースプレート11が溶接されている。そして、この側壁2Bに据付ける型鋼9Aも前記ベースプレート11と型鋼9Aとが多数のリブプレート10によって一体化され、さらにベースプレート11の裏面側には側壁2Bに埋設する多数のスタットジベル12が溶接されている。なお、この隔壁3を支持する支柱部6及び側壁2Bに据付け固定する型鋼9Aの製作に伴うリブプレート10、ベースプレート11、スタットジベル12などの溶接作業は工場などで行い、予めユニット化した支柱部6と型鋼9Aをケーソン躯体2を据付ける。
【0011】次に主に図3〜図6を参照しながら、前記隔壁3を構築するPC版5の接合構造について説明する。PC版5の内部には、横筋15、縦筋15Aと共に継手手段としてT型鋼16の基部が埋設され、T型鋼16の先端部がPC版5の側縁から突出している。なお、T型鋼16の基部はPC版5の内部に埋設された横筋15に溶接され、T型鋼16と横筋15とが一体化されている。そして、このT型鋼16を挿入溝8から支柱部6の型鋼9内に挿入し、型鋼9の内部に充填した無収縮モルタル17によって型鋼9とT型鋼16とを一体化する。また、最下部に位置するPC版5の下部にはスリーブ継手18が埋設され、このスリーブ継手18の空洞部18Aにケーソン躯体2の底版2Aから突出した挿入筋19とPC版5自体に埋設された縦筋15Aとを挿入し、スリーブ継手18の空洞部18Aと連通する注入孔24から無収縮モルタル17を充填し、PC版5の横筋15とケーソン躯体2の挿入筋19とを一体化する。なお、ケーソン躯体2に埋設した挿入筋19は異形鉄筋とする。
【0012】次にケーソン1の施工手順について説明する。ケーソン1は5工程に分けて製作し、まず、第1工程としてケーソン躯体2の底版Aを成形し、以後、PC版5の高さ分、つまり、4施工に分けて13.0mずつケーソン躯体2の側壁2Bを順次成形してPC版5を施工毎に据付ける。そして、底版2Aの成形に先立ち、まず鉄筋20(図6に示す)を組み立て、この後、型枠(図6R>6せず)を組み立てる。そして、型枠に現場打ちコンクリート4を打設し、コンクリート4の養生後、脱型する。なお、隔壁3の取付位置には底版2Aから隔壁3の内部に挿入する挿入筋19が突出し、隔壁3の交点部には支柱部6の内部に挿入する突出筋22(図3に示す)が突出している。
【0013】次に第2工程としてケーソン躯体2の側壁2Bの成形と支柱部6並びに型鋼9Aの据付けと支柱部6並びに型鋼9AへのPC版5の接合を行う。側壁2Bの成形は、底版2Aと同様、鉄筋20を組み立てた後、型枠を組み立て、型枠に現場打ちコンクリート4を打設する。そして、底版2Aから突出する突出筋22を支柱部6を構成する4本の型鋼9間の空洞部6Aに挿入し、空洞部6Aに充填した中詰コンクリート4Aによって底版2Aの突出筋22と支柱部6とを一体化する。また、側壁2Bに据付ける型鋼9Aはベースプレート11の裏面側に溶接したスタットジベル12をコンクリート4に埋設して側壁2Bと一体化する。そして、PC版5の接合面に予め敷きモルタル25を均してから、クレーンなどで吊り上げたPC版5のT型鋼16を支柱部6の型鋼9Aと側壁2Bに据付けた型鋼9A内に挿入し、同時にPC版5の下部側に埋設したスリーブ継手18の空洞部18Aに底版2Aから突出した挿入筋19を挿入し、この後、各型鋼9,9Aの空洞部6A無収縮モルタル17を充填し、PC版5のT型鋼16と各型鋼9,9Aとを一体化する。同様にスリーブ継手18の空洞部18Aに無収縮モルタル17を充填し、PC版5の縦筋15Aと底版2Aの挿入筋19を一体化する。以後、第2工程と同様な施工手順で二段目以降のケーソン躯体2の側壁2Bの成形して支柱部6並びに型鋼9Aの据付け、この支柱部6並びに型鋼9AにPC版5を接合する。なお、前述したスリーブ継手18によりPC版5を固定する作業は最下部のPC版5のみで二段目以降のPC版5は型鋼9とT型鋼16のみ接合する。このように、底版2A側からPC版5を逐次積み上げて上下に連接した四枚のPC版5で隔壁3を構築する。そして、構築した隔壁3によってケーソン躯体2を九等分に区画するものである。
【0014】以上のように本発明のケーソン1では、ケーソン躯体2を現場打ちしたコンクリート4製とし、それ以外のケーソン1の構成要素であるケーソン躯体2の内部を仕切る隔壁3を予め製作したPC版5で構成することにより、現場での隔壁3の成形に伴う鉄筋及び型枠の組付、脱型作業が不要となる。また、隔壁3を支持する支柱部6並びに型鋼9Aもプレキャスト化されているため、ケーソン1製作の省力化を図ることができる。また、隔壁3の据付けもケーソン躯体2の底版2Aに据付け固定した支柱部6の型鋼9及び側壁2Bに据付けた型鋼9AにPC版5の側縁から突出するT型鋼16を挿入し、このT型鋼16と型鋼9,9Aとを無収縮モルタル17で一体化する極めて簡便な方法であるから、高度な熟練者でなくとも施工が可能であり、かつ、高齢者などでも簡単・安全に施工することが可能となる。また、型鋼9,9A及びPC版5のT型鋼16は、隔壁3の支承部として応力を受ける箇所となり、剛性が要求される箇所であるが、PC版5の横筋15に継手手段としてのT型鋼16を一体的に溶接して埋設してあるので、PC版5に埋設したT型鋼16により型鋼9,9Aに対してPC版5がしっかりと抜け止めされる。しかも、PC版5に抜出し力(図3中矢印Fで示す)が作用した場合、各型鋼9,9Aの側面部が外側に向かう力、すなわち、挿入溝8が開こうとする力(図3中矢印F1で示す)が作用するが、隔壁3の交点部に位置する支柱部6の型鋼9は、平行する多数のリブプレート10によって一体化され、また、側壁2Bに据付け固定される型鋼9Aも同様にベースプレート11と型鋼9Aとにリブプレート10が一体的に溶接されていることから、リブプレート10によって型鋼9,9Aの変形が規制される。また、型鋼9Aと側壁2Bとの接合はベースプレート11の裏面側に植設した多数のスタットジベル12によって抜け止めされ、側壁2Bと型鋼9Aとが強固に一体化していることから、PC版5とこれを支持する支柱部6の型鋼9及び側壁2Bに据付け固定された型鋼9Aは応力に対して十分な接合強度が得られる。
【0015】図7〜図9は、本発明の第2実施例を示し、前記第1実施例と同一機能を有する部分には同一符号を付し、重複する部分の説明を省略して異なる部分についてのみ説明する。
【0016】本実施例では、側壁2Bと隔壁3及び隔壁3と支柱部30との接合に箱型継手構造を採用している。つまり、本実施例では、継手手段として前面側にPC版5を挿入する挿入溝31を開口し、かつ前記第1実施例より幅の狭い平断面略コ字型の箱型鋼32を用いる。そして、隔壁3の交点部分に位置する支柱部30は、前記第1実施例と同様、PC版5の挿入溝31を外側に向けた状態で四本の箱型鋼32を背中合わせで溶接され、支柱部30の中央部に、中詰コンクリート4Aを充填する空洞部30Aを貫通形成するとともに、隣接する箱型鋼32を多数のリブプレート10で一体化している。また、本実施例においてはPC版5には継手手段としてのT型鋼16を省略し、PC版5に埋設される横筋15をPC版5の側縁部から突出させて継手手段とし、この横筋15を箱型鋼32,32Aの内部に挿入して箱型鋼32,32Aに充填した無収縮モルタル17によってPC版5の横筋15と箱型鋼32,32Aとを一体化している。
【0017】一方、側壁2Bに据付ける箱型鋼32Aは、前記第1実施例で示したベースプレート11は存在せず、箱型鋼32Aの両側部と底部に直接スタットジベル12が溶接され、底部にはさらに補強用鉄筋35が溶接されている。この側壁2Bに据付ける箱型鋼32Aは、挿入溝31を側壁2Bの内壁面に臨ませた状態で箱型鋼32A自体を側壁2Bの内壁面に形成する台形型の突設部36に一体的に埋設する点において前記第1実施例と異なる。なお、PC版5を支持する支柱部30と側壁2Bに据付ける箱型鋼32Aの製作は伴うリブプレート10、ベースプレート11、スタットジベル12、補強用鉄筋35の溶接作業は工場などで行い、予めユニット化した支柱部30と型鋼32Aをケーソン躯体2を据付ける点では前記第1実施例と同様である。
【0018】以上のように構成される本実施例においては、ケーソン躯体2を現場打ちしたコンクリート4製とし、それ以外のケーソン1の構成要素であるケーソン躯体2の内部を仕切る隔壁3を予め製作したPC版5で構成することにより、現場での隔壁3の成形に伴う鉄筋及び型枠の組付、脱型作業が不要となる。また、隔壁3を支持する支柱部30並びに箱型鋼32Aもプレキャスト化されているため、ケーソン1製作の省力化を図ることができる。また、隔壁3の据付けもケーソン躯体2の底版2Aに立設した支柱部30の箱型鋼32及び側壁2Bに据付け固定した箱型鋼32AにPC版5の側縁から突出する横筋15を挿入して無収縮モルタル17の充填によりPC版5と箱型鋼32,32Aを一体化する極めて簡便な方法であるから、高度な熟練者でなくとも施工が可能であり、かつ、高齢者などでも簡単・安全に施工することが可能となるとともに、PC版5に埋設した横筋15と箱型鋼32,32Aとを無収縮モルタル17によって強固に一体化することができる。また、隔壁3の交点部に位置する支柱部30の箱型鋼32は、前記第1実施例と同様、平行する多数のリブプレート10によって一体的に溶接され、PC版5の抜出し力に対して箱型鋼32の変形をリブプレート10で規制することができる。一方、側壁2Bに据付け固定される箱型鋼32Aは、側壁2Bの内壁面に形成する台形型の突設部36に一体的に埋設されているため、支柱部6の箱型鋼32と同様、箱型鋼32Aの変形を規制することができる。また、箱型鋼32Aに直接溶接したスタットジベル12と補強用鉄筋35によって抜け止めされ、側壁2Bと箱型鋼32Aとが強固に一体化し、PC版5とこれを支持する支柱部6の箱型鋼32及び側壁2Bに据付け固定された箱型鋼32Aは応力に対して十分な接合強度が得られる。
【0019】以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は前記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、ケーソン躯体の外形形状、外形寸法などは前記実施例に限るものではない。また、接続手段としての型鋼の形状や継手手段の形状などは適宜選定すればよいものである。さらに、無収縮モルタルを充填してPC版を一体化した例を示したが、無収縮モルタルに限らず、各種タイプのものを使用することができる。
【0020】
【発明の効果】請求項1記載の発明に係るケーソンの隔壁の接合構造によれば、底版及び側壁を有する箱型のケーソン躯体と、このケーソン躯体の内部を仕切る複数の隔壁とを有し、前記ケーソン躯体を現場打ちしたコンクリート製とするとともに、前記隔壁は予め成形したPC版を上下方向に連接して構築し、該隔壁を構築するPC版には、PC版の側縁から突出する継手手段を一体的に埋設し、前記隔壁の交点部と前記側壁の内側に前記継手手段を受け入れる接続手段を据付け、この接続手段の内部に充填した充填剤によって前記継手手段と接続手段とを一体的に接合し、かつ、前記接続手段は、前面側に挿入溝を有して前記継手手段を納めるほぼ箱型の型鋼で構成するとともに、前記隔壁の交点部に位置する複数の型鋼は、各型鋼の背面部を突き合わせ一体化することによって、各型鋼に間に鉄筋を納める空洞部を貫通形成した支柱部とし、この支柱部の空洞部にコンクリートを充填して支柱部を前記底版とを一体的に固定するとともに、前記側壁に据付ける型鋼にはスタッドジベルを一体的に固着し、このスタッドジベルを側壁に埋設したものであるから、現場での隔壁の成形に伴う鉄筋及び型枠の組付、脱型作業が不要となるとともに、ケーソン躯体に据付けた接続手段とPC版に埋設した継手手段とを充填剤によって簡単に接合でき、PC版の固定作業を簡略化することができる。また、PC版を支持する支柱部及び型鋼の据付け作業も容易である。
【0021】請求項2の発明に係るケーソンの隔壁の接合構造によれば、前記請求項1記載のケーソンの隔壁の接合構造において、前記支柱部を構成する各型鋼に水平方向に平行する多数のリブプレートを固着して隣接する各型鋼を一体化するとともに、前記側壁に据付ける型鋼を側壁に沿わせるベースプレートに固着し、このベースプレートと型鋼とを水平方向に平行する多数のリブプレートで一体化し、かつ、これら支柱部と側壁に据付ける型鋼を工場で製作して予めユニット化した支柱部と型鋼を前記ケーソン躯体に据付けて成るものであるから、予めユニット化した支柱部と型鋼とをケーソン躯体に簡単に据付けることができるとともに、リブプレートによって型鋼の変形が規制され、PC版の抜け出しを防止してPC版を強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す一部を切り欠いたケーソンの斜視図である。
【図2】同上ケーソンの全体断面図である。
【図3】同上支柱部とPC版との固定状態を示す拡大断面図である。
【図4】同上図3のA−A線拡大断面図である。
【図5】同上側壁とPC版との固定状態を示す拡大断面図である。
【図6】同上底版とPC版との固定状態を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の第2実施例を示す一部を切り欠いたケーソン斜視図である。
【図8】同上支柱部とPC版との固定状態を示す拡大断面図である。
【図9】同上側壁とPC版との固定状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ケーソン
2 ケーソン躯体
2A 底版
2B 側壁
3 隔壁
4 現場打ちコンクリート
5 PC版
6,30 支柱部
6A,30A 空洞部
8,31 挿入溝
9,9A,32,32A 型鋼(接続手段)
10 リブプレート
11 ベースプレート
12 スタットジベル
15 横筋(継手手段)
16 T型鋼(継手手段)
17 無収縮モルタル(充填剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 底版及び側壁を有する箱型のケーソン躯体と、このケーソン躯体の内部を仕切る複数の隔壁とを有し、前記ケーソン躯体を現場打ちしたコンクリート製とするとともに、前記隔壁は予め成形したPC版を上下方向に連接して構築し、該隔壁を構築するPC版には、PC版の側縁から突出する継手手段を一体的に埋設し、前記隔壁の交点部と前記側壁の内側に前記継手手段を受け入れる接続手段を据付け、この接続手段の内部に充填した充填剤によって前記継手手段と接続手段とを一体的に接合し、かつ、前記接続手段は、前面側に挿入溝を有して前記継手手段を納めるほぼ箱型の型鋼で構成するとともに、前記隔壁の交点部に位置する複数の型鋼は、各型鋼の背面部を突き合わせ一体化することによって、各型鋼に間に鉄筋を納める空洞部を貫通形成した支柱部とし、この支柱部の空洞部にコンクリートを充填して支柱部を前記底版とを一体的に固定するとともに、前記側壁に据付ける型鋼にはスタッドジベルを一体的に固着し、このスタッドジベルを側壁に埋設したことを特徴とするケーソンの隔壁の接合構造。
【請求項2】 前記支柱部を構成する各型鋼に水平方向に平行する多数のリブプレートを固着して隣接する各型鋼を一体化するとともに、前記側壁に据付ける型鋼を側壁に沿わせるベースプレートに固着し、このベースプレートと型鋼とを水平方向に平行する多数のリブプレートで一体化し、かつ、これら支柱部と側壁に据付ける型鋼を工場で製作して予めユニット化した支柱部と型鋼を前記ケーソン躯体に据付けて成ることを特徴とする請求項1記載のケーソンの隔壁の接合構造。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【特許番号】特許第3069683号(P3069683)
【登録日】平成12年5月26日(2000.5.26)
【発行日】平成12年7月24日(2000.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−137188
【出願日】平成9年5月27日(1997.5.27)
【公開番号】特開平10−325125
【公開日】平成10年12月8日(1998.12.8)
【審査請求日】平成9年5月28日(1997.5.28)
【出願人】(597073678)運輸省第一港湾建設局長 (2)
【出願人】(597073689)運輸省港湾技術研究所長 (2)
【参考文献】
【文献】特開 平4−194228(JP,A)
【文献】実公 昭62−24642(JP,Y2)