説明

ケーソン用掘削装置

【課題】 ケーソンの沈下を簡易に制御できると共に、ケーソンの刃口の全域を掘削できる、ケーソンの掘削技術を提供すること。
【解決手段】 ケーソン10の複数箇所に配置した掘削支圧機301〜304と、ケーソン10の刃口の下面に配置した水平掘削機201〜205と、地上側のケーソン10の周囲に配置した水平制御装置501〜504とよりなる。掘削支圧機301〜304は縦軸31と羽根32とモータ33を具備する。水平制御装置501〜504は、一対のシリンダ51,51と、各シリンダのロッドの変位に追従する追尾手段とを具備する。ケーソン10の外周面に設けた複数の突起体13に一対のシリンダ51,52の各ロッドを交互に当接させながら、追尾手段を介してケーソン10の沈下量を計測可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ケーソンの刃口の直下地盤を掘削するケーソン用掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ケーソン工法は、ケーソンの自重を利用したり強制的な載荷重をかけて先鋭な刃口を強制的に地盤に圧入しながら、ケーソン内側を掘削して沈設している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のケーソンの沈設技術にはつぎのような問題点かある。
(1)ケーソンの刃口近くは、作業者が手掘りするかバックホー等による機械掘りを行っていたが、ケーソンの刃口近くは盤膨れを起こし易く、作業者が危険に晒される。
(2)高い鉛直性を保ってケーソンを沈下させる必要性から、一日当たりの沈下量が数センチ程度と非常に小さい。
そのため、施工に長期間を要し、施工費が嵩む大きな要因になっている。
(3)ケーソンの沈下量にバラツキを生じて傾きが生じたときは、その修正の多大の時間と多額の費用がかかる問題がある。ケーソンの正確な鉛直度を保って圧入することは至難である。
(4)出願人はケーソンの刃口直下に複数の自走式の掘削機を配備し、これらの掘削機を往復移動しながら刃口直下の地盤を掘削してケーソンを沈下させる発明を特開平11−172688号、特開平11−269890号として先に提案した。
この発明はケーソンが平面矩形を呈する場合に直線的に往復する掘削機で以ってケーソンの角部の隅々まで掘削することが技術的に難しいことと、軟弱地盤の場合にケーソンの自重で沈下量にバラツキが生じ易いという新たな課題がある。
【0004】
本発明は上記したような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、つぎの何れかのケーソンの掘削技術を提供することにある。
(1)ケーソンの沈下を簡易に制御できる、ケーソンの掘削技術を提供すること。
(2)ケーソンの刃口の全域を掘削できる、ケーソンの掘削技術を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1の発明に係るケーソン用掘削装置は、ケーソンの刃口の直下地盤を掘削するケーソン用掘削装置であって、ケーソンの複数箇所に鉛直に向けて複数の掘削支圧機を配置し、前記掘削支圧機はケーソンの刃口から下方へ延びる縦軸と、前記縦軸の下部に一体に設けた羽根と、前記縦軸に回転を与えるモータとよりなり、前記羽根は回転時に掘削刃として機能すると共に、回転停止時に地盤に接面してケーソンの沈下を阻止する抵抗部材として機能することを特徴とするものである。
また第2の発明に係るケーソン用掘削装置は、ケーソンの刃口の直下地盤を掘削するケーソン用掘削装置であって、ケーソンの複数箇所に鉛直に向けて配置した掘削支圧機と、ケーソンの刃口の下面に、該刃口に沿って往復移動可能に配置した水平掘削機とよりなり、前記掘削支圧機はケーソンの刃口から下方へ延びる縦軸と、前記縦軸の下部に一体に設けた羽根と、前記縦軸に回転を与えるモータとよりなり、前記羽根は回転時に掘削刃として機能すると共に、回転停止時に地盤に接面してケーソンの沈下を阻止する抵抗部材として機能することを特徴とするものである。
また第3の発明に係るケーソン用掘削装置は、ケーソンの刃口の直下地盤を掘削するケーソン用掘削装置であって、ケーソンの複数箇所に鉛直に向けて配置した掘削支圧機と、ケーソンの刃口の下面に、該刃口に沿って往復移動可能に配置した水平掘削機と、地上側のケーソンの周囲に配置した水平制御装置とよりなり、前記掘削支圧機はケーソンの刃口から下方へ延びる縦軸と、前記縦軸の下部に一体に設けた羽根と、前記縦軸に回転を与えるモータとよりなり、前記羽根は回転時に掘削刃として機能すると共に、回転停止時に地盤に接面してケーソンの沈下を阻止する抵抗部材として機能することを特徴とするものである。
また第4の発明に係るケーソン用掘削装置は、前記した第2又は第3の発明において、掘削支圧機の羽根を水平掘削機に対して相対的に下位に位置させて、両掘削機に高低差を設けたことを特徴とするものである。
また第5の発明に係るケーソン用掘削装置は、前記した第3又は4の発明において、水平制御装置が、一対の縦向きの流体圧で伸縮する一対のシリンダと、前記各シリンダの各ロッドの変位に追従する追尾手段を具備し、ケーソンの外周面に一定間隔を隔てて設けた複数の突起体に前記一対のシリンダの各ロッドを交互に当接させながら、追尾手段を介してケーソンの沈下量を計測可能に構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は次のような効果を得ることができる。
(1)掘削機能だけでなく、ケーソンの沈下を防止する掘削支圧機を装備したことにより、ケーソンの沈下量を簡易に制御することができる。
(2)殊に、水平制御装置と掘削支圧機を組み合わせて制御することで、ケーソンの沈下量を簡易に、しかも正確に制御することができる。
(3)掘削支圧機の羽根を水平掘削機の両掘削機に高低差を設けたことで、ケーソンの刃口直下の地盤を安全で効率よく掘削できる。
殊にケーソンの刃口形状が角形を呈する場合は、角部の掘削残しがなくなり刃口の全面掘削が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照しながら本発明のケーソン用掘削装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0008】
<1>装置の概要
図1にケーソン10の一部を破断した平面図を示し、図2のその縦断面図を示す。
ケーソン10は、ケーソン10の刃口直下に往復移動可能に配置した複数の水平掘削機201〜205と、ケーソン10の複数箇所に鉛直に向けて配置した複数の掘削支圧機301〜304とを備えている。
【0009】
<2>ケーソン
ケーソン10は、オープン式または有底式等の公知のコンクリート製の函体で、ブレキャスト製、或いは現場打設により、沈下に合わせてその上部に順次増築する。
本例ではケーソン10の水平断面形状が四角形である場合について示すが、ケーソン10の形状はこれ以外に多角形、円形、楕円形等を含むものである。
また従来のケーソンは刃口が地盤に圧入し易いように尖鋭に形成されているが、本発明ではケーソン10の刃口の下端面が先鋭である必要はなく、厚みのある平面として形成する。
また必要に応じてケーソン10の一部の側面下部に排出口11を形成する。排出口11は、掘削土をケーソン10の側方に設けた立坑40を通じて排出するためである。
【0010】
<3>水平掘削機
ケーソン10の刃口の下面には、複数の自走式の水平掘削機201〜205を配備する。水平掘削機201〜205はケーソン10の四角形を呈する各辺に原則として一台を配備し、例外的に排出口11を設けた辺にニ台の水平掘削機204,205を配備する。
【0011】
水平掘削機201〜205は、自走手段を具備した走行体と、走行体に水平に向けて並列に設けた一対の水平スクリューと、水平スクリューの回転駆動手段とを装備した共通の構造を有していて、例えば出願人が先に提案した特開平11−172688号公報、特開平11−269890号公報、特開平2001−20293号公報に開示された掘削機を適用することができる。
【0012】
水平掘削機201〜205は、ケーソン10の刃口幅で掘削すると共に、掘削土をケーソン10の内側へ排出できる掘削手段と、ケーソン10の刃口に係合して、刃口下面を往復移動する走行手段を具備する掘削機であれば上記した以外の各種の掘削機を適用することができる。
また各水平掘削機201〜205の往復移動とその移動距離については個別に制御可能に構成されている。
【0013】
<4>掘削支圧機
ケーソン10の角部内側には各棚部12を張り出して設け、各棚部12に掘削支圧機301〜304を設ける。掘削支圧機301〜304はケーソン10の刃口の角部を回転掘削する機能の他に、刃口直下の地盤に反力を得てケーソン10の沈下を積極的に阻止する沈下防止機能を併有する。
地盤の支持機能を有する掘削機はこれまで存在せず、掘削支圧機301〜304は後述するように沈下中のケーソン10の姿勢制御に大きく役立つものである。
【0014】
図1,2に例示した掘削支圧機301〜304について説明すると、掘削支圧機301〜304は、ケーソン10の刃口から下方へ延びる縦軸31と、縦軸31の下部に一体に設けた羽根32と、縦軸31に回転を与えるモータ33とを具備する。
【0015】
ケーソン10の棚部12に縦軸31を回転可能に貫通して配置する。
羽根32を有する支軸31が棚部12の下方へ延びていて、この羽根32は水平掘削機20より下方に配置する。
羽根32は図3,4に示すように円板を放射状に切欠き、残った放射羽根33の端部下面に帯状の掘削ビット34を設け、掘削ビット34で以って掘削した土砂を放射状の切欠き空間を通じて上方へ排出できるものを採用する。尚、羽根32は軸長の短い公知のスクリュー羽根であってもよい。
【0016】
また、各掘削支圧機301〜304の羽根33の回転は個別に制御可能であって、羽根32の回転中は掘削機能を発揮し、回転が停止した時点で地盤と面接触して支持部材(圧入抵抗部材)として機能する。
【0017】
つぎに水平掘削機201〜205と掘削支圧機301〜304との掘削範囲の関係について説明する。
前記したように掘削支圧機301〜304は水平掘削機201〜205に対して相対的に下位に位置している。
このように両掘削に高低差を設けたのは、各水平掘削機201〜205が往復移動の際に各掘削支圧機301〜304と干渉(衝突)するのを避けて、水平掘削機20の掘削範囲をケーソン10の角部近くまで近づけるためである。
図5はケーソン10の一部の角部を刃口側から見た図で、二点差線で示す掘削支圧機301による平面的な掘削範囲が、刃口の各辺に配備した水平掘削機201と202の往復移動による平面的な掘削範囲と重合するように、羽根32の径が設定されている。これによりケーソン10の刃口全長に亘る掘削が可能となる。
【0018】
[作用]
つぎにケーソンの沈下方法について説明する。
【0019】
<1>掘削
図1に示すようにケーソン10の刃口の各辺に水平掘削機201〜205をセットすると共に、ケーソン10の内側角部に掘削支圧機301〜304をセットする。
そして、各水平掘削機201〜205は掘削支圧機301〜304と協働して、ケーソン10の刃口地盤を掘削する。
【0020】
各水平掘削機201〜205はケーソン10の刃口の直線部に沿って往復移動しながらケーソン10の刃口幅で直下地盤を掘削し、掘削土砂を内側へ排出する。また各掘削支圧機301〜304はケーソン10の角部の刃口直下を回転掘削する。
前記した水平掘削機201〜205だけではケーソン10の角部に掘削残しを生じ易いが、ケーソン10の角部に高低差を設けて掘削支圧機301〜304を配備することでケーソン10の角部も含めて刃口全体の直下地盤を掘削すること
が可能となる。
【0021】
予め、ケーソン10の内部にバックホーやブルドーザ等の掘削機械が配備してあって、水平掘削機201〜205と掘削支圧機301〜304から排出された掘削土はケーソン10の内側の掘削土を含めて立坑40を通じて地上へ排出する。
以上の作業を繰り返すことで、刃口2の直下地盤を均等に掘削しながらケーソン1を沈下させる。
【0022】
<2>ケーソンの水平制御
掘削量を均等にするため、対向する水平掘削機201〜205を等速度で往復走行させ、また対角関係にある各掘削支圧機301〜304も等速で掘削するとよい。
また刃口の接する地盤に高度差がある場合や岩や礫が存在する場合は、均等に掘削できない。
【0023】
このような場合は、ケーソン10の各辺の掘削状況を目視により、或いは各種センサや変位計を用いてケーソン10の全体の水平変位を検知する。ケーソン10の全体の沈下にバラツキが生じたときは、この検知データにケーソン10の掘削が進んでいる箇所のそれ以上の沈下を阻止するため、所定位置の掘削支圧機301〜304の稼動を一時的に停止する。掘削支圧機301〜304の何れかを停止することで羽根32が沈下のブレーキとなってケーソン10の沈下を防止する。
【0024】
その間に掘削の遅れている箇所の掘削を進めてケーソン10の水平性を微調整する。掘削の遅れている箇所は、水平掘削機201〜205を個別に自走させて、或いは掘削支圧機301〜304を個別に稼動させて掘削する。
ケーソン10の水平および鉛直の微調整が完了したら停止していた所定位置の掘削支圧機301〜304の運転を再開する。
【実施例2】
【0025】
図6〜図9を基に他の実施例について説明するが、先の実施例1と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
またケーソン10の角部に、水平掘削機201〜205と高低差を介して掘削支圧機301〜304を配備することや、各水平掘削機201〜205の往復移動による掘削と、各掘削支圧機301〜304による回転掘削により、ケーソン10の角部も含めた刃口全体の直下地盤を掘削することは前記した実施例1と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0026】
本例は水平制御装置501〜504を追加配置することで、ケーソン10の水平性を制御する実施例である。
【0027】
<1>ケーソン側の突起体
図6,7に示すように、ケーソン10の外周面には一定間隔を隔てて複数の突起体13を設ける。突起体13は縦方向に沿って二列平行に配置し、各列の突起体13は半ピッチ分を縦方向にずらして千鳥状に設置する。これらの突起体13はケーソン10を構築する際に予め取り付けておく。
突起体13は水平制御装置501〜504のロッドと当接可能な棒状、板状の突起であり、使用目的を完了したときに除去できるように例えば着脱可能な埋込式ボルトや、切除可能な鋼材で形成することができる。
【0028】
<2>水平制御装置
図6,7に示すように、地上側のケーソン10の外方の複数箇所に水平制御装置501〜504を配備する。本例では平面四角形のケーソン10に対し相対向させて合計四台を配備した場合について示すが、設置台数や配置位置については適宜選択する。
また図中の符号60は制御部で、各水平制御装置501〜504の作動制御と、各掘削支圧機301〜304の作動制御を主に行う。
【0029】
各水平制御装置501〜504は共通構造であるため、図8に基づきその一台について説明する。
水平制御装置50は、一対の縦向きの流体圧で伸縮する第一、第二シリンダ51,52と、各シリンダ51,52の各ロッド51a,52aの変位に追従する追尾手段を具備している。
【0030】
[一対のシリンダ]
第一、第二シリンダ51,52の上部間および下部間には、夫々吐出路53と還流路54が接続していて、一対のシリンダ内の流体を相互に循環移送できるように構成されている。第一、第二シリンダ51,52はロッド51a,52aの何れか一方が収縮すると、この収縮力を利用してロッド51a,52aの何れか他方が伸張するので、従来の油圧シリンダのような外部ポンプは不要であるため、簡易な構成となる。
また第一、第二シリンダ51,52は、ケーソン10の総重量を支えるための部材ではなく、あくまでも突起体13を介してケーソン10の沈下に追従させるための部材である。
【0031】
前記の吐出路53には開閉弁55が介装されている。
開閉弁55を開弁することで第一、第二シリンダ51,52の間に循環流路を形成して各ロッド51a,52aの自由な伸縮を許容し、閉弁することで循環流路を遮断して両ロッド51a,52aの伸縮を強制的に停止する。
したがって、開閉弁55は少なくとも第一、第二シリンダ51,52の何れか一方のロッド51a,52aの降下中は開弁し、これ以外のときは閉弁して流路を閉じるように制御される。
開閉弁55は制御部60で遠隔から制御可能な電磁弁や、これに類した各種の制御弁を適用する。
【0032】
[追尾手段]
追尾手段は第一シリンダ51と第二シリンダ52に夫々装備し、各ロッド51a,52aの昇降に合わせて個別に追従させるための装置である。
追尾手段は各シリンダ51,52と平行に立設した一対の送りボルト70,70と、各送りボルト70に螺合して昇降する昇降体71と、各昇降体71に設けたセンサ72と、送りボルト70に回転を与えるサーボモータ73と、モータ73の回転を両送りボルト70,70へ伝達する回転伝達機構74とにより構成する。
【0033】
[昇降体と送りボルト]
各昇降体71には送りボルト70と平行に立設したガイド棒75が貫通していて、昇降体71の傾倒や横ぶれを規制している。
一対の昇降体71,71は、各送りボルト70,70上で相互に異方向へねじ送りできるようになっている。すなわち、一対の昇降体71,71のうちの一方の昇降体71が降下すると、他方の昇降体71がその降下量と等距離だけ上昇し、反対の場合はその逆の動きをする、シーソーのようにねじ送りされるようになっていて、最小の送り量は送りボルト70のねじピッチにより求められる。
一対の昇降体71,71を相互に異なる方向へねじ送りをするには、各送りボルト70のおねじの形成方向や各送りボルト70の回転方向の組み合わせを適宜選択して行う。
【0034】
[センサ]
センサ72は、シリンダ51,52の一方のロッド51a,52aの昇降を検知するためのセンサで、例えば図示するようにリミットスイッチや、一定以上の圧力が作用しないと作動しない感圧センサ等を採用でき、各第一、第二シリンダ51,52のロッド51a,52aの一部に当接可能な位置に配置する。
本例ではリミットスイッチ製のセンサ72を、各ロッド51a,52aの上端下面と当接可能に配置した場合を示す。
【0035】
[回転伝達機構]
回転伝達機構74は、サーボモータ73の回転を各送りボルト70,70へ伝えるための歯車伝達機構やベルト伝達機構である。
【0036】
[サーボモータ]
本例では、各送りボルト70,70へ回転を与える手段としてサーボモータ73使用する。これは昇降体71の昇降をミリ単位(好適には1mm乃至2mm)で正確に制御するためである。
サーボモータ73は制御部60の制御指令に基づいて回転と停止が制御される。
またサーボモータ73の回転方向は、収縮する感知対象が第一又は第二シリンダ51,52の何れかにより切り替わる。
【0037】
[制御部]
制御部60の制御対象は、少なくとも図6に示す掘削支圧機301〜304の各モータ33と、水平制御装置501〜504の各サーボモータ73及び開閉弁55であり、必要に応じて制御部60で水平掘削機201〜205の作動を制御してもよい。
【0038】
制御部60は個別に各水平制御装置501〜504の開閉弁55の作動と、個別にサーボモータ73の作動を制御してケーソン10全体の沈降量を、予め設定した沈下量の設定範囲内で以って繰り返し計測を行って過剰沈下を監視し、沈下量にバラツキを生じたときは、各部を修正制御する。
【0039】
制御部60は各水平制御装置501〜504の開閉弁55と、サーボモータ73に対してつぎように制御する
【0040】
(i)開閉弁55に対して
左右一対のセンサ72,72のスイッチがオンとオフの組み合わせのときは、開弁操作する。
左右一対のセンサ72,72のスイッチが共にオンの組み合わせのときは、閉弁操作する。
【0041】
(ii)サーボモータ73に対して
左右一対のセンサ72,72のスイッチがオンとオフの組み合わせのときは、運転制御する。
左右一対のセンサ72,72のスイッチが共にオンの組み合わせのときは、運転停止するように制御する。
【0042】
また制御部60は、上記したように各水平制御装置501〜504を個別に制御するだけでなく、ケーソン10全体の水平度および鉛直度を制御するため、複数の掘削支圧機301〜304のモータ33に対して、つぎのように制御する。
(i)各水平制御装置501〜504を通じてケーソン10の沈下量に所定の値以上のバラツキが生じたときは、何れかの掘削支圧機301〜304のモータ33の運転を停止するように制御する。
(ii)各水平制御装置501〜504の沈下量が揃った時点で、すべての掘削支圧機301〜304のモータ33の運転を再開するように制御する。
【0043】
<3>一台の水平制御装置の作動
図8を基に一台の水平制御装置50の作動について説明する。
ケーソン10の沈下に伴い、例えば図示するように左列最下位の突起体13が左方の第一シリンダ51のロッド51aの上端に当接することで、流体圧力で右方の第二シリンダ52のロッド52aが押し下げられ、同時に左右の各昇降体71は各ロッド51a,51bの昇降変位に追尾する。
【0044】
これを詳細に説明すると、左方のロッド51aと当接して左方のセンサ72のスイッチがオンになると、制御部60を通じて、吐出路53の開閉弁55が開弁されて第一、第二シリンダ51,52間に循環流路が形成され、これと同時にサーボモータ73が所定の方向に回転して左右一対の送りボルト70,70を回転させる。
【0045】
開閉弁55が開弁して第一シリンダ51と第二シリンダ52内の流体移動が可能となるため、左方のロッド51aは左列の突起体13と当接しながら降下を続け、右方の第二シリンダ52のロッド52aは右列最下位の突起体13へ向けて上昇を続ける。
またサーボモータ73の回転に伴い、左方の昇降体71は左方の送りボルト70にねじ送りされて降下する。同様に右方の昇降体71は右方の送りボルト70にねじ送りされて上昇する。このようにして左右の各昇降体71,71は左右の各ロッド51aと52aの昇降に追従して昇降する。
【0046】
前述したように制御部60は予め設定した範囲内でケーソンの沈下量を計測するようになっている。そのため第一シリンダ51の収縮に伴うケーソン10の沈下も同様に計測される。沈下量は既知の送りボルト70のねじピッチを基にサーボモータ73の回転数から容易に求めることができる。
予め設定したある範囲内でケーソンの沈下量を監視するのは、他の水平制御装置50との相対的な沈下量を短時間の間に連続的に対比するためである。
【0047】
図9に示すように、右方の第二シリンダ52のロッド52aが右列の最下位の突起体13に当接して右方のセンサ72のスイッチがオン(左右のセンサ72,72がオン)に切り替わると、開閉弁55が閉じられ、同時にサーボモータ73の運転が停止することで、追尾手段の作動が終了する。
【0048】
左方の第一シリンダ51のロッド51aが1ストローク収縮し終えた時点で、図9の破線で示す左列最下位の突起体13を撤去する。これにより左方の第一シリンダ51側のセンサ72はオフとなる。
その結果、左方のセンサ72のスイッチがオフで右方のセンサ72のスイッチがオンの組み合わせとなるために、開閉弁55は開弁し、同時にサーボモータ73は前記した方向と逆方向に回転する。
したがって、ケーソン10の沈下に合わせて図9の矢印で示すように第二シリンダ52が収縮作動しつつ、第一シリンダ51が伸張作動する。左右の各昇降体71,71は各シリンダ51,52の伸縮に追従して昇降することになる。
【0049】
上記したように、左右の各シリンダ51,52による収縮と伸張の作動を交互に行う工程と、左右各列の最下位の突起体13を交互に撤去する工程を繰り返し行ってケーソン10の沈下を測定する。
【0050】
<4>複数の水平制御装置の制御
上記したケーソン10の沈下計測は、図6に示す水平制御装置501〜504を設置した複数の地点において実施される。
各水平制御装置501〜504で計測される沈下量にバラツキを生じたとき、制御部60は複数の掘削支圧機301〜304のモータ33に対してつぎのように制御する。
【0051】
水平制御装置501〜504のうち最も早く所定の沈下量に達したときは、その範囲が他の箇所と比べて先行沈下していること判断し、この範囲に最も近くに位置する何れかの掘削支圧機301〜304のモータ33の運転を停止する。これにより回転を停止した羽根32は地盤に接面してケーソン10の沈下に対して抵抗する。
【0052】
この間に水平掘削機20や残った他の水平制御装置501〜504で以って掘削の遅れている範囲の掘削を継続して行う。この間、掘削が追いつくまで上記した何れかの掘削支圧機301〜304は停止したまま待つ。
【0053】
各水平制御装置501〜504の沈下量がすべて揃った時点で、それまで停止していた前記何れかの掘削支圧機301〜304の運転を再開する。
このようにケーソン10の沈下量のバラツキのチェックと、バラツキの修正を、予め設定した沈下範囲内で繰り返し行うので、高い水平性と鉛直性を保ちながらケーソン10を沈下させることが可能となる。
【実施例3】
【0054】
水平掘削機20を省略し、掘削支圧機30のみでケーソン10の刃口直下を掘削する場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】発明に係る実施例1の説明図であって、一部を破断したケーソンの平面図
【図2】図1におけるII−IIの断面図
【図3】掘削支圧機の羽根の平面図
【図4】図3におけるIV−IVの断面図
【図5】ケーソンの角部を地盤側から見た部分拡大図
【図6】発明に係る実施例2の説明図であって、一部を破断したケーソンの平面図
【図7】図6におけるVII−VIIの断面図
【図8】第一シリンダの収縮時における水平制御装置のモデル図
【図9】第二シリンダの収縮時における水平制御装置のモデル図
【符号の説明】
【0056】
10・・・・ケーソン
11・・・・ケーソンの排出口
12・・・・ケーソンの棚部
13・・・・突起体
201〜205・・・水平掘削機
301〜304・・・掘削支圧機
31・・・・縦軸
32・・・・羽根
33・・・・放射羽根
34・・・・掘削ビット
40・・・・立坑
50,501〜504・・・水平制御装置
51・・・・第一シリンダ
51a・・・ロッド
52・・・・第二シリンダ
52a・・・ロッド
53・・・・吐出路
54・・・・還流路
55・・・・開閉弁
60・・・・制御部
70,71・・・送りボルト
71,71・・・昇降体
72,72・・・センサ
73・・・・サーボモータ
74・・・・回転伝達機構
75・・・・ガイド棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソンの刃口の直下地盤を掘削するケーソン用掘削装置であって、
ケーソンの複数箇所に鉛直に向けて複数の掘削支圧機を配置し、
前記掘削支圧機はケーソンの刃口から下方へ延びる縦軸と、
前記縦軸の下部に一体に設けた羽根と、
前記縦軸に回転を与えるモータとよりなり、
前記羽根は回転時に掘削刃として機能すると共に、回転停止時に地盤に接面してケーソンの沈下を阻止する抵抗部材として機能することを特徴とする、
ケーソン用掘削装置。
【請求項2】
ケーソンの刃口の直下地盤を掘削するケーソン用掘削装置であって、
ケーソンの複数箇所に鉛直に向けて配置した掘削支圧機と、
ケーソンの刃口の下面に、該刃口に沿って往復移動可能に配置した水平掘削機とよりなり、
前記掘削支圧機はケーソンの刃口から下方へ延びる縦軸と、
前記縦軸の下部に一体に設けた羽根と、
前記縦軸に回転を与えるモータとよりなり、
前記羽根は回転時に掘削刃として機能すると共に、回転停止時に地盤に接面してケーソンの沈下を阻止する抵抗部材として機能することを特徴とする、
ケーソン用掘削装置。
【請求項3】
ケーソンの刃口の直下地盤を掘削するケーソン用掘削装置であって、
ケーソンの複数箇所に鉛直に向けて配置した掘削支圧機と、
ケーソンの刃口の下面に、該刃口に沿って往復移動可能に配置した水平掘削機と、
地上側のケーソンの周囲に配置した水平制御装置とよりなり、
前記掘削支圧機はケーソンの刃口から下方へ延びる縦軸と、
前記縦軸の下部に一体に設けた羽根と、
前記縦軸に回転を与えるモータとよりなり、
前記羽根は回転時に掘削刃として機能すると共に、回転停止時に地盤に接面してケーソンの沈下を阻止する抵抗部材として機能することを特徴とする、
ケーソン用掘削装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、掘削支圧機の羽根を水平掘削機に対して相対的に下位に位置させて、両掘削機に高低差を設けたことを特徴とする、ケーソン用掘削装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4において、水平制御装置が、一対の縦向きの流体圧で伸縮する一対のシリンダと、前記各シリンダの各ロッドの変位に追従する追尾手段を具備し、ケーソンの外周面に一定間隔を隔てて設けた複数の突起体に前記一対のシリンダの各ロッドを交互に当接させながら、追尾手段を介してケーソンの沈下量を計測可能に構成したことを特徴とする、ケーソン用掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−28830(P2006−28830A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207477(P2004−207477)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(391005949)光洋自動機株式会社 (39)