説明

ケーブルの測定モード切替装置

【課題】作業員の安全性を確保しつつ、ケーブル相確認とケーブルの健全性確認、ケーブルの接地作業の容易化が図れるケーブルの測定モード(相確認・絶縁抵抗測定・接地)切替装置を提供する。
【解決手段】ケーブルの測定モード切替装置は、第1相乃至第3相のケーブルの一端がそれぞれ接続される第1乃至第3の接続端子11〜13と、抵抗値が異なる第1及び第2の抵抗器17,18と、切替手段19とを備える。切替手段19は、第1のモードで第1の接続端子11を接地するとともに、第2及び第3の接続端子12,13をそれぞれ第1及び第2の抵抗器を介して接地し、第2のモードで第1乃至第3の接続端子をオープン状態に設定し、第3のモードで第1乃至第3の接続端子を接地する。切替手段で第1乃至第3のモードに合わせた三つの回路接続状態に切り替えることで、作業員の安全性を確保しつつケーブル相確認とケーブルの健全性確認、ケーブルの接地作業の容易化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、地中電線路工事において、3相ケーブルを布設する際のケーブル相確認、ケーブルの健全性確認、及び工事中の安全対策としてケーブルを接地するための切り替えを行う、ケーブルの測定モード切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中電線路は、地下に布設することから、直接埋設または管路・洞道布設としており、布設する相順やケーブルの健全性等を目視で確認することができない。このため、作業前、途中、施工終了後の各段階で、電気的に確認を行っている。
【0003】
従来において、3相ケーブルを布設する地中電線路工事では、工事毎にケーブル終端末に対し、図12に示すような相確認用の回路を組み立て、施工中に中間接続箇所や相手端末で、第1相から第3相までの各相や健全性を確認しつつ工事を進めている。
【0004】
即ち、ケーブル(地中電線路)1の終端末にセンスメータ(例えば、特許文献1参照)2を接続し、例えば、第1相(黒)3を接地、第2相(赤)4を1MΩまたは5MΩの抵抗器5を介して接地、第3相(白)6を10MΩの抵抗器7を介して接地する。この接続には、例えば、耐圧が600VのIV(Indoor PVC)線が用いられる。
【0005】
そして、他端側のケーブル終端末の各相と接地との間に絶縁抵抗計(メガーとも呼ばれる)8を順次接続し、100V程度の測定電圧で抵抗値を計測することで、第1相乃至第3相を確認する。このとき、正しく接続されていれば、第1相の接地抵抗は“0”、第2相の接地抵抗は1MΩまたは5MΩ、第3相の接地抵抗は10MΩとなる。
【0006】
また、ケーブル1に接続不良や断線、地絡事故や相間短絡事故が発生していないか等のケーブルの健全性を確認する際には、上記絶縁抵抗計8を1000V程度の測定電圧に設定し、センスメータ2を外してケーブル1の終端末をオープン状態にして、ケーブル線路単独での絶縁抵抗を測定している。
【0007】
上記のケーブル相確認や健全性確認は、ケーブル1の終端末だけでなく、地中の中間接続箇所1a,1bや受電機器等と発送変電所の相確認を行う必要があるため、施工前、施工中、施工後において、各端末へ上記回路を個別に組み立てている。また、施工中には、ケーブル1へ他線路からの誘導電流による感電事故等を防止するため、工事中の安全対策として、各相を全て接地状態にしてケーブル工事を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平3−125276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、地中電線路工事では、ケーブル相確認、ケーブルの健全性確認、及び工事中にケーブルを接地して安全対策を行う必要があるが、ケーブル端末(発送変電所や顧客受電所)へ取り付けた抵抗器や配線の着脱が必要であり、手間と時間を要している。
【0010】
しかも、送・受電機器の操作となるため、その都度管理者の立会いを伴っている。
【0011】
また、ケーブルの健全性を確認する場合、各測定や工事中の終端末の操作切り替えの頻度が高く、その都度付け外しを実施しなければならない。
【0012】
しかも、センスメータ2の取り付け箇所では、電線類を多く使用するため、取り付け違いや足元の安全対策にも苦慮している。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、作業員の安全性を確保しつつ、ケーブル相確認、ケーブルの健全性確認、及びケーブルの接地作業の容易化を図ることのできる、ケーブルの測定モード切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るケーブルの測定モード切替装置においては、第1相乃至第3相のケーブルの一端がそれぞれ接続される第1乃至第3の接続端子と、抵抗値が異なる第1及び第2の抵抗器と、第1のモードで前記第1の接続端子を接地するとともに、前記第2及び第3の接続端子をそれぞれ前記第1及び第2の抵抗器を介して接地し、第2のモードで前記第1乃至第3の接続端子をオープン状態に設定し、第3のモードで前記第1乃至第3の接続端子を接地する切替手段と、を具備することで、上述した課題を解決した。
【0015】
また、前記切替手段が第1のモードの時に前記ケーブルの他端側の各相に絶縁抵抗計を接続してケーブル相確認を行い、前記切替手段が第2のモードの時に前記ケーブルの他端側の各相に絶縁抵抗計を接続してケーブルの健全性確認を行い、前記切替手段が第3のモードの時に作業を行うことで、同じく上述した課題を解決した。
【0016】
加えて、前記切替手段は、第1の可動接点に第1相のケーブルが接続され、第1及び第2の固定接点が接地された第1の切替スイッチと、第2の可動接点に第2相のケーブルが接続され、第3の固定接点が前記第1の抵抗を介して接地され、第4の固定接点が接地された第2の切替スイッチと、第3の可動接点に第3相のケーブルが接続され、第5の固定接点が前記第2の抵抗を介して接地され、第6の固定接点が接地された第3の切替スイッチとを備え、前記第1の動作モードの時に前記第1乃至第3の切替スイッチの第1乃至第3の可動接点がそれぞれ第1、第3、第5の接続端子に接続され、前記第2の動作モードの時に前記第1乃至第3の切替スイッチの可動接点がそれぞれオープン状態にされ、前記第3の動作モードの時に前記第1乃至第3の切替スイッチの可動接点がそれぞれ第2、第4、第6の接続端子に接続されることで、同じく上述した課題を解決した。
【0017】
また、前記第1乃至第3の切替スイッチは連動して動作し、前記第1乃至第3の可動接点が前記第1、第3、第5の固定接点に接続された状態、オープン状態、及び前記第2、第4、第6の固定接点に接続された状態でそれぞれロックするロック機構を更に備えることで、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
この他、前記第1及び第2の抵抗器の抵抗値をそれぞれ異なる値に切り替える第1及び第2の可変抵抗手段を更に具備することで、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
また、前記第1及び第2の可変抵抗手段は、それぞれ選択スイッチと、前記選択スイッチによって選択される、抵抗値の異なる複数の抵抗器を備えることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るケーブルの測定モード切替装置によれば、切替手段で第1乃至第3のモードに合わせた三つの回路接続状態に切り替えることで、作業員の安全性を確保しつつ、ケーブル相確認とケーブルの健全性確認、及びケーブルの接地作業の容易化が図れる。
【0021】
しかも、ケーブル相確認、ケーブルの健全性確認及びケーブルの接地作業を、ケーブルの終端末に切替装置を取り付けた状態で実施できるので、作業の簡単化や作業要員の安全性確保、ヒューマンエラー防止等の効果が得られる。
【0022】
また、ケーブルの終端末に切替装置を取り付けた状態で、第1のモードではケーブル相確認、第2のモードではケーブルの健全性確認、第3のモードではケーブルの接地作業を安全且つ容易に行うことができる。
【0023】
加えて、切替手段を、連動して動作する第1乃至第3の切替スイッチで構成すれば、低コストで確実な動作を実現できる。
【0024】
また、切替スイッチにロック機構を設けることで、不要動作や操作誤認の防止も図れる。
【0025】
この他、第1及び第2の可変抵抗手段を設ければ、使用範囲の拡大も見込める。
【0026】
また、第1及び第2の可変抵抗手段は、選択スイッチと抵抗値の異なる複数の抵抗器とで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るケーブルの測定モード切替装置を示す回路図である。
【図2】図1に示したケーブルの測定モード切替装置の構成例を示す外観斜視図である。
【図3】図2に示したケーブルの測定モード切替装置を、下方から見た斜視図である。
【図4】図2に示したケーブルの測定モード切替装置の上蓋を開けて、内部構成を示す斜視図である。
【図5】切替スイッチのロック機構について説明するためのもので、(a)図はロック機構として働く板状部材を下方から見た斜視図、(b)図は板状部材を上方から見た斜視図、(c)図は板状部材をケースに装着した状態の斜視図である。
【図6】切替スイッチのロック機構について説明するためのもので、切替スイッチをセンス側でロックした状態の斜視図である。
【図7】切替スイッチのロック機構について説明するためのもので、切替スイッチをオープン状態でロックした状態の斜視図である。
【図8】切替スイッチのロック機構について説明するためのもので、切替スイッチを接地側でロックした状態の斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るケーブルの測定モード切替装置の変形例を示す側面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るケーブルの測定モード切替装置を示す回路図である。
【図11】ケーブルの測定モード切替装置の使用例を示すもので、二つの変電所間に地中電線路を新設する場合の概略図である。
【図12】従来のケーブル相確認とケーブルの健全性確認について説明するためのもので、地中電線路工事の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るケーブルの測定モード切替装置を示す回路図である。この装置は、ケーブル終端末の第1相(黒)に接続される第1の接続端子11、第2相(赤)に接続される第2の接続端子12、第3相(白)に接続される第3の接続端子13を備えている。これら第1乃至第3の接続端子11〜13は、それぞれ切替スイッチ14〜16の可動接点14a〜16aに接続される。
【0030】
上記各切替スイッチ14〜16の可動接点14a〜16aは、連動して三つの状態に切り替え可能に構成されており、第1のモードで固定接点14b〜16bにそれぞれ接続され、第2のモードでオープン状態(図示)、第3のモードで固定接点14c〜16cにそれぞれ接続される。上記各切替スイッチ14〜16には、不要動作や誤操作防止のためのロック機構が設けられている。
【0031】
上記切替スイッチ14の固定接点14bは接地され、上記切替スイッチ15の固定接点15bは抵抗器17を介して接地され、上記切替スイッチ16の固定接点16bは抵抗器18を介して接地される。
【0032】
上記抵抗器17の抵抗値は、例えば、1MΩまたは5MΩ、上記抵抗器18の抵抗値は10MΩである。また、上記各切替スイッチ14〜16の固定接点14c〜16cは、それぞれ接地されている。
【0033】
上記のような構成において、測定や作業を行う際には、切替スイッチ14〜16を次のような三つの状態に選択的に切り替える。
【0034】
即ち、ケーブル相確認時には、各切替スイッチ14〜16の可動接点14a〜16aを固定接点14b〜16bにそれぞれ接続(第1のモード)する。また、ケーブルの健全性確認時には、可動接点14a〜16aをオープン状態(第2のモード)にする。そして、工事中は、可動接点14a〜16aを固定接点14c〜16cにそれぞれ接続(第3のモード)する。
【0035】
これによって、第1のモードでは接続端子11が接地されると共に、接続端子12,13がそれぞれ抵抗器17,18を介して接地される。また、第2のモードでは、接続端子11〜13がオープン状態に設定される。更に、第3のモードでは、接続端子11〜13が接地される。このように、切替スイッチ14〜16は、第1乃至第3のモードを切り替える切替回路(切替手段)19として働く。
【0036】
従って、ケーブル相確認時には、第1相が接地、第2相と第3相が抵抗値の異なる抵抗(1MΩと10MΩ)を介して接地される。ケーブルの健全性を確認するための絶縁抵抗の測定時には、第1相乃至第3相が全てオープン状態になる。また、工事中には、第1相乃至第3相が接地される。
【0037】
このように、各切替スイッチ14〜16を選択的に三状態に切り替えることで、測定モード切替装置を取り付けた状態で、選択的にケーブル相確認、ケーブルの健全性確認、及びケーブルの接地作業を実施でき、作業の簡単化や作業要員の安全性確保、ヒューマンエラー防止等の効果が得られる。
【0038】
図2乃至図4は、それぞれ図1に示したケーブルの測定モード切替装置の構成例を示しており、図2は外観斜視図、図3は下方から見た斜視図、図4は上蓋を開けて内部構成を示す斜視図である。図2に示すように、ケース(筐体)21には、内部のスイッチや配線、抵抗器等の電子部品を保護するための上蓋22が装着されており、このケース21の側面から第1相(黒)用、第2相(赤)用、及び第3相(白)用のIV線23〜25が導出されている。
【0039】
これらのIV線23〜25の端部には、それぞれ上記接続端子11〜13が設けられており、種々の配線や端子に容易に接続可能になっている。また、ケース21の対向する測面から接地(緑)用のIV線26が導出されている。本例では、上記IV線23〜26に、耐圧が600Vのものを使用している。
【0040】
図3に示すように、ケース21の底部には、ゴム足32a〜32dが装着されており、底部近傍の対向する側面には、スリット状の開孔31a〜31dが設けられている。これらの開孔31a〜31dは、金属やゴム、樹脂等のベルトを通して、切替装置を部材に取り付け、固定するためのものである。
【0041】
図4に示すように、上記ケース21内には、上記切替スイッチ14〜16と、上記抵抗器17,18、これらを接続する配線等が収容されている。本例では、上記切替スイッチ14〜16に、三相用のカバー付きナイフスイッチ20を用いている。
【0042】
このナイフスイッチ20は、図1における切替回路19と同様な切り替え操作が可能になっている。また、上記IV線23〜26が、電極27〜30にそれぞれ接続されている。そして、これらナイフスイッチ20、抵抗器17,18及びIV線23〜26で、図1に示したような回路接続が実現されている。
【0043】
上記ナイフスイッチ20には、ロック機構が装着される。このロック機構は、図5(a)(b)に示すように、ナイフスイッチ20のつまみ部20aを突出させるための開口35aを有する板状部材35と、ネジ36,37とで構成されている。ここでは、板状部材35として透明なアクリル板を用いている。
【0044】
ロック機構を構成する板状部材35には、図5(a)に示すように、ネジ36,37が、所定の間隔を開けて傾斜状に配置されている。この板状部材35のネジ36,37は、図4・図5(c)に示すように、ナイフスイッチ20側においてカバーを固定するために、所定の間隔を開けて傾斜状に配置されているネジ穴20b,20cに挿入される。
【0045】
具体的には、図5(b)(c)に示すように、板状部材35のネジ36,37を下側に配置している状態において、板状部材35のネジ36をナイフスイッチ20側のネジ穴20bに挿入し、また、板状部材35のネジ37をナイフスイッチ20側のネジ穴20cに挿入するのである。
【0046】
この状態でケース21に上蓋22を装着することにより、板状部材35の上方への移動が規制されて、ナイフスイッチ20のつまみ部20aをロックするのである。
【0047】
尚、板状部材35のネジ36,37を、ナイフスイッチ20側のネジ穴20b,20cにねじ込んで固定する構成にすると、ナイフスイッチ20部分への板状部材35の取り付けがより強固なもとなり、つまみ部20aをロックするのに好ましいものとなる。
【0048】
図6では、ナイフスイッチ20をセンス側(センスメータとしてケーブルの相確認に使用する状態)に切り替えてロックした状態を示しており、ナイフスイッチ20のつまみ部20aを板状部材35で覆うことで、切り替え操作が禁止さている。
【0049】
図7は、ナイフスイッチ20をオープン状態(ケーブルの健全性確認に使用する状態)にしてロックした状態を示しており、ナイフスイッチ20のつまみ部20aが、開口35a内で固定されて切り替え操作が禁止されている。
【0050】
また、図8は、ナイフスイッチ20を接地側(全ての相を接地した状態)に切り替えてロックした状態を示しており、ナイフスイッチ20のつまみ部20aを板状部材35で覆うことで、切り替え操作が禁止されている。
【0051】
上記のような構成によれば、図1に示した回路を簡単な構造で且つ低コストに実現できる。また、ロック機構を構成する板状部材35として、透明のアクリル板を用いることで、ナイフスイッチ20の状態を目視で確認できる。例えば、ナイフスイッチ20におけるつまみ部20aの側面に、「センス側」、「接地側」等と表記しておくことにより、これを目視してより確実に誤操作を防止できる。
【0052】
図9は、上述した第1の実施の形態の変形例を示しており、ケース21の側面に扇状のスリット46を設け、ナイフスイッチ20のつまみ部20aの位置が外部から確認できるようにしたものである。このナイフスイッチ20のつまみ部20aには、上記スリット46内に突出する突起や棒状の位置確認部材47を設けている。
【0053】
このような構成によれば、図9の矢印で示すように、ナイフスイッチ20の操作に応じて、位置確認部材47が移動する。よって、上蓋22を閉じた図2に示すような状態で使用しても、ナイフスイッチ20のつまみ部20aの位置を外部から目視で確認でき、使い勝手を向上できる。
【0054】
また、上記ナイフスイッチ20に機械的に連動して、第1乃至第3のモードを表示するようにしても良い。勿論、ケース21の上蓋22を透明な材料で形成して、内部を目視で確認できるようにすれば、上蓋22を閉じた状態で使用する場合にも表示機能は不要であり、防水性も高めることができる。
【0055】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係るケーブルの測定モード切替装置を示す回路図である。前述した第1の実施の形態では、抵抗器17,18が固定の抵抗値を持つ場合を例に取って説明したが、この第2の実施の形態は、抵抗器17,18の抵抗値を可変にするものである。図10において、図1と同一構成部には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
即ち、抵抗値の異なる複数の抵抗器38〜40を選択スイッチ44で選択し、抵抗値の異なる複数の抵抗器41〜43を選択スイッチ45で選択するようにしている。これによって、抵抗値が変化する可変抵抗手段として用いることができる。この例では、上記抵抗器38〜40の抵抗値は、それぞれ1MΩ、5MΩ、10MΩであり、上記抵抗器41〜43の抵抗値もそれぞれ1MΩ、5MΩ、10MΩである。
【0057】
このように、選択スイッチ44,45で抵抗値の異なる複数の抵抗器38〜43を選択することにより、使用範囲を拡大して汎用性を高めることができる。
【0058】
尚、上述した第1、第2の実施の形態では、切替スイッチを機械的なナイフスイッチ20を用いて切替回路19を構成する例を示したが、サイリスタやパワートランジスタ等の半導体スイッチ、或いは、リレーを使っても同様な回路を構成できる。
【0059】
この場合、上記半導体スイッチの動作を制御する制御回路を設けることで、測定や切り替えの自動化ができ、LED等の点灯による各モードの報知も可能になる。
【0060】
次に、上記のようなケーブルの測定モード切替装置を用いた地中電線路工事について、図11により説明する。ここでは、変電所51と変電所52間に、ケーブル53−1〜53−3を新設する例(変電所51側で相合わせする場合)について説明する。両変電所51,52とも、気中終端で、ケーブル53−1〜53−3は66KVのCVT(トリプレックス形架橋ポリエチレンビニルシースケーブル)を用いるものとする。
【0061】
まず、布設箇所に、ケーブル53−1〜53−3を引き入れる。本例では、ケーブル53−3の一端側の終端末を変電所52の地上に、他端側の終端末を管路内や洞道内に布設している。また、ケーブル53−2は管路内や洞道内に布設し、ケーブル53−1の一端側の終端末を変電所51の地上に、他端側の終端末を管路内や洞道内に布設している。
【0062】
ケーブル53−1〜53−3の布設終了後、変電所52側のケーブル53−3終端末を接続する。接続終了後、ケーブル53−3終端部へ、前述した本発明のケーブルの測定モード切替装置100を取り付ける。
【0063】
次に、例えば、マンホール内において、変電所52側の中間接続箇所53aでケーブル53−3と53−2を接続する。この際、ケーブルの接続前に、切替装置100を第1のモードにしてケーブル53−3の相確認を行い、第1相(黒)、第2相(赤)及び第3相(白)を表示してから作業を行う。この接続作業に際しては、切替装置100を第3のモードにして、全ての相を接地した状態で作業を行う。
【0064】
接続終了後、切替装置100を第1のモードにして、変電所51側の中間接続箇所53b側の接続前に相確認を行う。相確認は、中間接続箇所53bにおけるケーブル53−2の終端末の各相と接地間に絶縁抵抗計200を順次接続し、100V程度の測定電圧で抵抗値を計測することで、第1相乃至第3相を確認する。正しく接続されていれば、第1相の接地抵抗は“0”、第2相の接地抵抗は1MΩまたは5MΩ、第3相の接地抵抗は10MΩとなる。相確認終了後、切替装置100を第3のモードにして、全ての相を接地する。
【0065】
次に、変電所51側の中間接続箇所53bで、ケーブル53−2と53−1を接続する。この場合にも、中間接続箇所53bの接続前に、切替装置100を第1のモードにしてケーブル53−2の相確認を行い、第1相乃至第3相を表示してから接続する。接続に際しては、切替装置100を第3のモードにして、全ての相を接地した状態で作業を行う。
【0066】
次に、変電所51側の地上にて、ケーブル53−1の終端末接続を行う。この場合にも、接続前に切替装置100を第1のモードにしてケーブル53−1終端末の相確認を行い、第1相乃至第3相を表示してから接続する。接続に際しては、切替装置100を第3のモードにして、全ての相を接地した状態で作業を行う。
【0067】
終端末接続終了後、新設したケーブルの全区間を通して相確認を行う。相確認は、変電所51側地上にて、ケーブル53−1の終端部の各相と接地間に絶縁抵抗計200を順次接続し、100V程度の測定電圧で抵抗値を計測することで、第1相乃至第3相を確認する。
【0068】
正しく接続されていれば、第1相の接地抵抗は“0”、第2相の接地抵抗は1MΩまたは5MΩ、第3相の接地抵抗は10MΩとなる。相確認終了後、切替装置100を第3のモードにして、全ての相を接地する。
【0069】
そして、切替装置100を第2のモードにして、全相をオープン状態にする。この状態で、変電所51側のケーブル53−1の終端部の各相に絶縁抵抗計200を1000V程度の測定電圧に設定し、ケーブルの絶縁抵抗を測定してケーブルの健全性を確認する。確認終了後、切替装置100を第3のモードにして、全ての相を接地する。
【0070】
その後、測定モード切替装置100を取り外す。そして、ケーブル全体の課電試験を行い(試充電)、全ての検査終了後に系統課電を行うことで使用開始となる。
【0071】
このように、ケーブル相確認時に、線路を直接触る必要はなくなり、且つケーブル相の確認は、接地または抵抗接地であり、オープン状態で測定しないので、誘導電流による感電事故等を防止し、作業員の安全性を向上できる。また、切替スイッチの切り替え操作で実施できるため、装置の着脱は、工事開始の設置時と、工事終了後の取り外し時のみの作業工程にできる。
【0072】
しかも、工事中間時における作業や立会いを省略し、切替スイッチの切り替え操作で実施できるため、作業時間の短縮、作業要員の削減、センスメータ着脱時のヒューマンエラー(取り付け間違い)防止が図れる。更に、切替装置を接続したまま、ケーブルの健全性確認も可能である。
【0073】
尚、上述した二つの変電所間に地中電線路を新設する場合だけでなく、既設受電設備を新受電設備に切り替える際や、例えば、事故等によってケーブルの一部を引き替えるために、既設設備の一部を新設する場合等にも同様に適用でき、同様な作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係るケーブルの測定モード切替装置は、地中電線路工事において、ケーブル相確認、ケーブルの健全性確認、及び工事中にケーブルを接地して安全対策を行う場合に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1…ケーブル(地中電線路)
1a…中間接続箇所
1b…中間接続箇所
2…センスメータ
3…第1相(黒)
4…第2相(赤)
5…抵抗器
6…第3相(白)
7…抵抗器
8…絶縁抵抗計
11…接続端子
12…接続端子
13…接続端子
14…切替スイッチ
15…切替スイッチ
16…切替スイッチ
14a…可動接点
15a…可動接点
16a…可動接点
14b…固定接点
15b…固定接点
16b…固定接点
14c…固定接点
15c…固定接点
16c…固定接点
17…抵抗器
18…抵抗器
19…切替回路(切替手段)
20…ナイフスイッチ
20a…つまみ部
20b…ネジ穴
20c…ネジ穴
21…ケース
22…上蓋
23…IV線
24…IV線
25…IV線
26…IV線
27…電極
28…電極
29…電極
30…電極
31a…開孔
31b…開孔
31c…開孔
31d…開孔
32a…ゴム足
32b…ゴム足
32c…ゴム足
32d…ゴム足
35…板状部材
35a…開口
36…ネジ
37…ネジ
38…抵抗器
39…抵抗器
40…抵抗器
41…抵抗器
42…抵抗器
43…抵抗器
44…選択スイッチ
45…選択スイッチ
46…スリット
47…位置確認部材
51…変電所
52…変電所
53−1…ケーブル(地中電線路)
53−2…ケーブル(地中電線路)
53−3…ケーブル(地中電線路)
53a…中間接続箇所
53b…中間接続箇所
100…ケーブルの測定モード切替装置
200…絶縁抵抗計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1相乃至第3相のケーブルの一端がそれぞれ接続される第1乃至第3の接続端子と、抵抗値が異なる第1及び第2の抵抗器と、第1のモードで前記第1の接続端子を接地するとともに、前記第2及び第3の接続端子をそれぞれ前記第1及び第2の抵抗器を介して接地し、第2のモードで前記第1乃至第3の接続端子をオープン状態に設定し、第3のモードで前記第1乃至第3の接続端子を接地する切替手段と、を具備することを特徴とする、ケーブルの測定モード切替装置。
【請求項2】
前記切替手段が第1のモードの時に前記ケーブルの他端側の各相に絶縁抵抗計を接続してケーブル相確認を行い、前記切替手段が第2のモードの時に前記ケーブルの他端側の各相に絶縁抵抗計を接続してケーブルの健全性確認を行い、前記切替手段が第3のモードの時に作業を行うことを特徴とする、請求項1に記載のケーブルの測定モード切替装置。
【請求項3】
前記切替手段は、第1の可動接点に第1相のケーブルが接続され、第1及び第2の固定接点が接地された第1の切替スイッチと、第2の可動接点に第2相のケーブルが接続され、第3の固定接点が前記第1の抵抗を介して接地され、第4の固定接点が接地された第2の切替スイッチと、第3の可動接点に第3相のケーブルが接続され、第5の固定接点が前記第2の抵抗を介して接地され、第6の固定接点が接地された第3の切替スイッチとを備え、前記第1の動作モードの時に前記第1乃至第3の切替スイッチの第1乃至第3の可動接点がそれぞれ第1、第3、第5の接続端子に接続され、前記第2の動作モードの時に前記第1乃至第3の切替スイッチの可動接点がそれぞれオープン状態にされ、前記第3の動作モードの時に前記第1乃至第3の切替スイッチの可動接点がそれぞれ第2、第4、第6の接続端子に接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載のケーブルの測定モード切替装置。
【請求項4】
前記第1乃至第3の切替スイッチは連動して動作し、前記第1乃至第3の可動接点が前記第1、第3、第5の固定接点に接続された状態、オープン状態、及び前記第2、第4、第6の固定接点に接続された状態でそれぞれロックするロック機構を更に備えることを特徴とする、請求項3に記載のケーブルの測定モード切替装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の抵抗器の抵抗値を、それぞれ異なる値に切り替える第1及び第2の可変抵抗手段を更に具備することを特徴とする、請求項1に記載のケーブルの測定モード切替装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の可変抵抗手段は、それぞれ選択スイッチと、前記選択スイッチによって選択される、抵抗値の異なる複数の抵抗器を備えることを特徴とする、請求項5に記載のケーブルの測定モード切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−225662(P2012−225662A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90661(P2011−90661)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】