説明

ケーブルガイド

【課題】単線ケーブルの飛び出しを防止することができると共に、ケーブルの出し入れやメンテナンスが容易で、かつ騒音の発生や発塵を低減したケーブルガイドを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなり、一方向に延びる底部1と、底部1の幅方向両端縁に沿って設けられその上部に長さ方向に延びる凹部3aを有する側壁2とを、押出成形により、一体でかつ長さ方向に連続して形成されたガイド本体3、及び側壁2の凹部3aに嵌合する突起部4aを有し、ガイド本体3に取り付けられてガイド本体3の開口を覆う蓋体4とでケーブルガイド10を構成する。その際、少なくともガイド本体3の底部1を熱可塑性エラストマーで形成すると共に、各蓋体4を相互に分離して取り付け、個別に開閉及び脱着可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを収容するケーブルガイドに関する。より詳しくは、ケーブルが接続されている装置の動作に追従して移動し、収容しているケーブルを案内するケーブルガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアーム、工作機械、ゲーム機のクレーン及び監視カメラなどでは、装置の動作に追従してケーブル(配線)も移動するが、その際、ケーブルの絡まりや、他の部材との接触による損傷・断線を防止するためのケーブルガイドが利用されている。このようにケーブルの保護及び案内を行うケーブルガイドは、一般に、金属材料で形成されており、追従性能を確保するため、継ぎ手やピン材などを使用して、複数のユニットを連結した構成となっている。
【0003】
また、従来、合成樹脂により底板と側板とを一体成形した複数のガイド部材を、合成樹脂製のヒンジ部材で連結した構成のケーブルチェーンも提案されている(特許文献1参照)。更に、金型成形により複数のユニットを一体で形成し、それらを相互に連結して長尺化したハーネス保護具も提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
一方、押出し成形などによって、長さ方向に連続形成された一体型のケーブルガイドも提案されている(特許文献3〜5参照)。これら特許文献1〜5に記載された従来のケーブルガイドは、一体で又は別部材として成形された合成樹脂製の蓋部(上面)を備えている。また、特許文献4,5に記載のケーブルガイドでは、屈曲移動を可能とするために、蓋部や側壁に切り込みが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−324836号公報
【特許文献2】特開2006−166492号公報
【特許文献3】特開2006−166640号公報
【特許文献4】特開平9−154213号公報
【特許文献5】特表2006−507788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、金属材料により形成された複数のユニットを連結した構成の従来のケーブルガイドは、丈夫で、長さ調整が自在などの利点があるが、移動時に接触摩耗による摩擦粉塵や部品同士の接触による騒音が発生しやすいという問題点がある。このため、これらのケーブルガイドは、摩擦粉塵の発生の点からは、例えばクリーンルームなどの清浄な環境下での使用には適さず、騒音の点からは、例えば作業環境の悪化を招く。特にこのような構成のケーブルガイドは、部品数及び工程数が多いため、製造コストが高くなるという問題点もある。
【0007】
これに対して、特許文献1〜5に記載された合成樹脂製のケーブルガイドは、騒音防止の効果はあるが、例えば、特許文献1,2に記載されているようなユニット同士を連結する構造のものは、合成樹脂製であっても連結構造であるため、依然として部品数や工程数による製造コストの問題、発塵及び騒音の問題が少なからずある。
【0008】
一方、特許文献3に記載の従来のケーブルガイドは、嵌合部の断面が大きく、蓋部品が受け部品に連続的に嵌合する構成であるため、ケーブルガイド自体のサイズが大きくなると共に、屈曲させた際に嵌合部の負担が大きく、蓋が外れやすいといった問題点がある。また、特許文献4に記載の従来のケーブルガイドは、天井部が容易に開閉可能であるため、移動中に収納しているケーブルが飛び出す虞がある。更に、特許文献5に記載の従来のケーブルガイドは、開閉可能な蓋部がないため、ケーブルの出し入れやメンテナンス作業が煩雑であるという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、単線ケーブルの飛び出しを防止することができると共に、ケーブルの出し入れやメンテナンスが容易で、かつ騒音の発生や発塵を低減したケーブルガイドを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るケーブルガイドは、熱可塑性樹脂からなり、一方向に延びる底部と、該底部の幅方向両端縁に沿って設けられその上部に長さ方向に延びる凹部を有する側壁とが、押出成形により、一体でかつ長さ方向に連続して形成されたガイド本体と、前記側壁の凹部に嵌合する突起部を有し、前記ガイド本体に取り付けられて前記ガイド本体の開口を覆う2以上の蓋体と、を備え、少なくとも前記ガイド本体の底部は熱可塑性エラストマーで形成されており、かつ各蓋体は、相互に分離して取り付けられ、個別に開閉及び脱着可能となっているものである。
このケーブルガイドは、前記蓋体が熱可塑性樹脂により形成されていてもよい。
また、前記ガイド本体の側壁及び/又は前記蓋体も熱可塑性エラストマーで形成することができる。
一方、前記蓋体の硬度を、前記ガイド本体の硬度以下とすることもできる。
また、前記側壁に、その先端から前記底部に向かって延びる複数の切り込みを一定間隔で形成すると共に、前記蓋体の長さを前記切り込みの間隔以下とし、前記蓋体を一の切り込みと他の切り込みとの間に取り付けてもよい。
更に、前記ガイド本体における前記底部と前記側壁の内面との境界部分を曲面又はC面で構成し、その曲率半径R又はC面寸法を3〜10mmとすることもできる。
更にまた、前記底部の裏面に熱可塑性樹脂からなるリブ部を一体で形成し、該リブ部に複数の切り欠きを設けてもよい。その場合、前記リブ部も熱可塑性エラストマーで形成することもでき、また、前記底部の裏面と前記リブ部の内面との境界部分は曲面又はC面で構成し、その曲率半径R又はC面寸法を3〜10mmとすることもできる。
そして、このケーブルガイドは、単線ケーブルを収容することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガイド本体を熱可塑性樹脂で一体形成すると共に、少なくともガイド本体の底部を熱可塑性エラストマーで形成し、更に長さ方向の任意の位置に2以上の蓋体を取り付け可能としているため、ケーブルの出し入れやメンテナンスが容易で、騒音の発生や発塵を低減することができ、かつ単線ケーブルの飛び出しを防止することができるケーブルガイドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態のケーブルガイドの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すケーブルガイド10の使用時の状態を示す側面図である。
【図3】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態のケーブルガイドの構成を示す断面図である。
【図4】図3に示すケーブルガイド20の使用時の状態を示す側面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態の第1変形例のケーブルガイドの構成を示す断面図である。
【図6】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態の第2変形例のケーブルガイドの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係るケーブルガイドについて説明する。図1(a)及び(b)は本実施形態のケーブルガイドの構成を示す断面図である。また、図2はその使用時の状態を示す側面図である。本実施形態のケーブルガイド10は、主に単線ケーブルを収容するものであり、図1(a)及び(b)に示すように、ガイド本体3と、2以上の蓋体4とを備えている。
【0015】
[ガイド本体3]
ガイド本体3は、熱可塑性樹脂により形成されており、一方向に延びる底部1と、底部1の幅方向両端縁に沿って設けられた側壁2とで構成されている。また、ガイド本体3は、上面が開口しており、この開口からケーブルが出し入れされる。更に、各側壁2の上部外面には、長さ方向に延びる凹部3aが形成されている。この凹部3aは、後述する蓋体4の突起部4aが嵌合する形状となっている。
【0016】
一方、ガイド本体3を構成する底部1及び側壁2は、押出成形により、一体でかつ長さ方向に連続して形成されている。押出成形では、長尺のケーブルガイドを形成することができるため、使用者が任意の長さに切断して使用することが可能となる。ここで、ガイド本体3を形成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、熱可塑性エラストマーの他、公知の各種エンジアリングプラスチックなどが挙げられる。
【0017】
また、本実施形態のケーブルガイド10は、少なくとも底部1が熱可塑性エラストマーで形成されており、底部1に加えて側壁2も熱可塑性エラストマーで形成されていることが望ましい。これにより、屈曲移動時の追従性を向上させることができるため、装置の動作に追従して移動する際の撓みや横ぶれを防止することができる。なお、底部1を熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂で形成した場合、屈曲移動への追従性が不十分となる。
【0018】
ここで、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(Thermoplastic-Polyester-Elastomer:TPEE)、熱可塑性ポリアミド系エラストマー(Thermoplastic-Polyamid-Elastomer:TPAE)、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(Thermoplastic-Polyurethane-Elastomer:TPU)、熱可塑性ポリスチレン系エラストマー(Thermoplastic-Polystyrene-Elastomer:TPS)、熱可塑性ポリ塩化ビニル系エラストマー(Thermoplastic-Poly(vinyl chloride)-Elastomer:TPVC)、熱可塑性オレフィン系エラストマー(Thermoplastic-Polyolefine-Elastomer:TPO)などが挙げられる。
【0019】
この熱可塑性エラストマーは、MFR(melt flow rate)が、170〜250℃の範囲のいずれかで、0.5〜5g/10分の範囲にあること好ましい。MFRが0.5g/10分以下の熱可塑性エラストマーを使用すると、流動性が低いため生産しにくい場合がある。一方、MFRが5g/10分以上の熱可塑性エラストマーを使用すると、流動性が高すぎて成形しにくい場合がある。また、その使用環境にもよるが、軟化温度は80℃以上、ガラス転移温度は0℃以下が好ましい。
【0020】
更に、熱可塑性エラストマーの曲げ弾性率は、20〜300MPaの範囲であることが好ましい。熱可塑性エラストマーの曲げ弾性率が20MPa以下であると、撓みや横ぶれなどの変形が起こりやすくなるため、ケーブルの収容性が低下する。また、移動時の変形量が大きくなりすぎて、ケーブルガイド同士やケーブルガイドを使用した装置の各部位と接触するなどの問題が起きる場合がある。一方、熱可塑性エラストマーの曲げ弾性率が300MPa以上であると、変形しにくくなりすぎて、屈曲移動や装置の動作に追従しにくくなることがある。
【0021】
側壁2を熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂で形成する場合は、共押出成形によりガイド本体3を一体成形することが可能である。その際、樹脂境界部分の状態は特に限定されるものではないが、繰り返し屈曲性向上の観点から、底部1を構成する熱可塑性エラストマーが、側壁2内に突出していることが望ましい。また、側壁2を熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂で形成した場合、側壁2に切り込みを形成することにより、屈曲性を向上させることができる。なお、側壁2も熱可塑性エラストマーで形成されている場合は、側壁2に切り込みを設けなくても、屈曲移動が可能である。
【0022】
また、底部1を形成する熱可塑性エラストマー及び/又は側壁2を形成する熱可塑性樹脂には、動摩擦係数及び静摩擦係数を低減させるために、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどの炭化水素系潤滑剤、シリコーンオイル系潤滑剤、ステアリン酸などの脂肪酸系潤滑剤、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイドなどの脂肪酸アマイド類、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのアルキレン脂肪酸アマイド類、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸金属塩類、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレートなどのアルコールの脂肪酸エステル類、黒鉛(グラファイト)、二硫化モリブテン、二硫化タングステン、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、銅、ニッケル、鉛、錫、銀、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、高密度ポリエチレンの粉末などの固体潤滑剤を添加することもできる。
【0023】
なお、これらの添加成分は、単独で配合してもよいが、複数種を混合して配合することも可能である。特に、黒鉛粉末などの固体潤滑剤やシリコーンオイルなどの液体潤滑剤を使用することが好ましく、両者を組み合わせて使用することもできる。これにより長期間に亘って安定して摩擦係数を低く保つことができる。また、底部1を形成する熱可塑性エラストマー及び/又は側壁2を形成する熱可塑性樹脂に、予め、これらの添加成分が配合されているマスターバッチを使用することもできる。
【0024】
本実施形態のケーブルガイド10では、ガイド本体3における底部1と側壁2の内面との境界部分を、曲面又はC面で構成し、その曲率半径R又はC面寸法が3〜10mmとなっていることが望ましい。このように、底部1と側壁2の境界部分をR面又はC面とすることにより、底部1と側壁2の接触面積が大きくなり、側壁2がより大きな面積で支えられることになるため、側壁2が外側に開きくことによるケーブル保持性の低下を抑制することができる。
【0025】
また、押出成形により長尺のケーブルガイドを製造すると、側壁部分が外側に開いたり、垂直部分が傾いたりする可能性があるが、この部分を曲面又はC面で構成することにより、成形時の形状安定性が向上する。ただし、この境界部分をC面で構成した場合、R面よりも内部の収容量が小さくなる。このため、収容するケーブルの本数を多くしたい場合などは、C面よりもR面で形成することが望ましい。
【0026】
なお、これら境界部分の曲率半径R又はC面寸法が3mm未満の場合、前述した効果が十分得られないことがある。また、境界部分の曲率半径R又はC面寸法が10mmを超えると、ケーブルガイド本体3の容積が小さくなり、収容できるケーブルの本数が少なくなったり、ケーブルとの接触面積が大きくなって、騒音や発塵が発生しやすくなったりする。
【0027】
更に、本実施形態のケーブルガイド10は、底部1にバネ鋼又はバネ鋼と同等の特性(剛性や強度)などを有する繊維強化プラスチックからなる板材や線材を、その長手方向に内包させてもよい。これにより、板材及び線材がテンションメンバーとして作用するため、繰り返し曲げ性を更に向上させることができると共に、直線部の撓みも防止することができる。
【0028】
ここで使用するバネ鋼としては、例えば炭素鋼及びステンレス鋼などが挙げられる。また、繊維強化プラスチックとしては、例えば、炭素繊維強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチック、炭化珪素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維強化プラスチックなどが挙げられ、特に補強繊維により長手方向に強化したものが好ましい。更に、これらの補強繊維を織物としたもので強化したプラスチックを使用することもできる。
【0029】
なお、板材又は線材を内包させる位置及び本数は、特に限定されるものではなく、底部1の幅方向中心部分に1本の板材又は線材を配置してもよいが、例えば、2本の板材又は線材を底部の幅方向両端部に配置したり、3本以上の線材又は線材を配置したりすることもできる。
【0030】
このように底部1に板材又は線材を内包させる場合、板材又は線材と熱可塑性エラストマーとを同時に押出成形して、複合化することが可能である。その際、板材又は線材と底部1を構成する熱可塑性エラストマーとの間に接着性樹脂層を設け、底部1と板材又は線材との密着性を高めてもよいが、逆に、熱可塑性エラストマーと板材又は線材との間に、空間を設けることもできる。
【0031】
[蓋体4]
各蓋体4には、例えば蓋体4の幅方向両端部に、その端縁に沿って、ガイド本体3の側壁2に設けられた凹部3aに嵌合する突起部4aが設けられており、この突起部4aを側壁2の凹部3aに嵌合させることによりガイド本体3に取り付けられ、それぞれガイド本体3の開口の一部を覆う。これら蓋体4は、相互に分離して取り付けられており、個別に開閉及び脱着可能となっている。
【0032】
また、蓋体4の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、繊維強化樹脂、金属、セラミックス又はこれらの複合材料で形成することができる。これらの材料の中でも、質量やコストの面から、熱可塑性樹脂が好ましく、特に、屈曲移動時にガイド本体3への追従性の観点から、熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0033】
蓋体4は、例えば押出成形、射出成形及び型押成形などの各種成形方法により、前述したガイド本体3とは別に成形される。また、蓋体4の長さは特に限定されるものではないが、ケーブルの出し入れやメンテナンスなどの作業性の観点からは、5〜50mm程度とすることが好ましい。また、側壁2に切り込みが形成されている場合は、追従性の観点から、蓋体4の長さは切り込みの間隔以下とすることが好ましい。
【0034】
蓋体4を形成する熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーとしては、前述したガイド本体3と同様のものを使用することができるが、蓋体4が、ガイド本体3と同じ硬さか、若しくはガイド本体3よりも柔らかくなるように、材料を選択することが望ましい。これにより、蓋体4の突起部4aのガイド本体3の凹部3aへの嵌合を繰り返すことによる摩耗や変形などは、ガイド本体3よりも、交換しやすい蓋体4に生じるようになる。その結果、蓋体4を交換することで、これらの不具合を容易に解消することが可能となる。なお、ここでいう「硬さ」は、JIS K7215−1986に基づいて測定されるデュロ硬度Dである。
【0035】
更に、蓋体4の内側、特に側壁2の上端面と接触する部分の近傍には、ケーブルガイド10の長さ方向に延びる切り込み若しくは断面V字状又はU字状に切り欠かれた凹部4bが形成されていることが望ましい。これにより、図1(b)に示すように、一方の突起部4aの嵌合を解除するだけで、蓋体4を開閉可能となるため、ケーブルの出し入れが容易になる。即ち、本実施形態のケーブルガイド10では、蓋体1を取り付けた後でも、容易に、内部に収容されたケーブルを出したり、追加でケーブルを収容したりすることができる。
【0036】
なお、凹部4bは、幅方向に非対称の形状でもよい。また、凹部4bの形状は、蓋体4の開閉性の観点から断面V字状とすることが好ましく、コスト面からは切り込みが好ましい。更に、凹部4bの奥に更に断面円形状の切り欠きを設けることもできる。
【0037】
[動作]
本実施形態のケーブルガイド10は、ガイド本体3の開口からケーブルを入れ、その後、ガイド本体3の任意の位置に飛び出し防止用の蓋体4を取り付ける。その際、2以上の蓋体4は、図2に示すように間隔を開けて取り付けても、間隔を空けずに隣接して取り付けても、どちらでもよく、収容されるケーブルの径や種類、使用方法などに応じて適宜変更することができる。例えば、複数の蓋体4を、間隔を空けて取り付けた場合、軽量化ができると共に、ケーブルの出し入れを容易にすることができる。また、複数の蓋体4を、間隔を空けずに取り付けると、ケーブルガイド全体として剛性が高くなると共に、例えば使用時の加速度が高い場合などのように、特に過酷な使用環境におけるケーブルの飛び出し防止性能を向上させることができる。
【0038】
また、側壁2に切り込みが形成されている場合は、蓋体4は一の切り込みと他の切り込みとの間に取り付けることが望ましい。切り込みを跨いで蓋体4を取り付けると、切り込みによるガイド本体3の屈曲性向上効果を阻害したり、屈曲移動時に、蓋体4の突起部4aとガイド本体3の凹部3aとの嵌合状態が、不安定になったりすることがある。
【0039】
そして、蓋体4が取り付けられたケーブルガイド10は、ガイド本体3の底部1側が内側に、蓋体4が外側になるように配置される。そして、ケーブルが接続されている装置の動作に追従して、その長手方向に直線移動又は屈曲移動し、内部に収容されているケーブルを案内する。このとき、蓋体4により、ケーブルの飛び出しが防止される。
【0040】
以上、詳述したように、本実施形態のケーブルガイド10は、底部1及び側壁2が熱可塑性樹脂で一体形成されているため、部品間の接触摩耗が発生しない。これにより、移動時の発塵が抑制されるため、クリーンルームにおいても好適に使用することができる。また、移動時に擦れが発生しないため、騒音レベルの接触音などは事実上発生せず、騒音による作業環境の悪化などを防止することができる。更に、このケーブルガイド10は、押出成形により容易に製造することが可能であるため、低コストで製造することが可能である。
【0041】
また、本実施形態のケーブルガイド10は、少なくとも底部1が熱可塑性エラストマーで形成されているため、屈曲移動時の追従性に優れている。更に、本実施形態のケーブルガイド10は、長さ方向に連続した長尺の蓋体ではなく、相互に分離された複数の蓋体4を、それぞれ長さ方向の任意の位置に取り付けているため、屈曲移動時においてもガイド本体3と蓋体4との嵌合が外れにくい。その結果、単線ケーブルを収容した場合でも、移動中の飛び出しを防止することができる。加えて、各蓋体4は、開閉が容易で、かつ個別に開閉及び脱着可能であるため、筒状の従来品に比べて、ケーブルの出し入れやメンテナンスが容易であり、作業性にも優れている。そして、蓋体4は、ガイド本体3と別部材であるため、摩耗や変形などが生じた場合、一部の蓋体4だけ交換することが可能であり、経済的にも優れている。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るケーブルガイドについて説明する。図3(a)及び(b)は本実施形態のケーブルガイドの構成を示す断面図であり、図4はその使用時の状態を示す側面図である。なお、図3及び図4においては、前述した第1の実施形態のケーブルガイド10の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図4及び図5に示すように、本実施形態のケーブルガイド20は、ガイド本体23の底部1の裏面側に、熱可塑性樹脂からなるリブ部6が一体で形成されている。このリブ部6は、ケーブルガイド20の横ぶれや直線部のたるみを防止するものであり、ケーブルガイド20の長手方向に一定の間隔をあけて、V字状の切り欠き6aが形成されている。
【0044】
リブ部6を形成する熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、コストの観点からは汎用の熱可塑性樹脂を使用することが望ましく、また、屈曲移動時の追従性の観点からは、底部1と同様に熱可塑性エラストマーを使用することが望ましい。一方、切り欠き6aの幅dは、曲げ半径に応じて設定することが好ましい。例えば、ケーブルガイド20の底部1の幅方向中心部における半円周がL、リブ部6の先端部における半円周がL、切り欠き数xの場合は、下記数式(1)により求められる値とすることができる。
【0045】
【数1】

【0046】
このように、リブ部6に、曲げ半径に応じた切り欠き6aを設けることにより、所望の曲げ半径に屈曲することができる。
【0047】
本実施形態のケーブルガイド20では、ガイド本体23の側壁2の先端から底部1に向かって、その高さ方向に延びる切り込み5が、一定間隔で形成されている。この切り込み5を設けることにより、曲げ半径が小さい場合でも、ガイド本体23に過度のストレスを与えずに容易に曲げることができる。また、切り込み5の底部1側の端部に円形状の切り欠きを形成することで、切り込み5の底部1側の端部にかかるストレスを低減することができる。
【0048】
更に、側壁2の切り込み5と、リブ部6の切り欠き6aとは、底部1の長手方向、即ち、ケーブルガイド20の長手方向において、整合する位置に設けられていることが望ましい。これにより、屈曲部において側壁2にかかるストレスを小さくすることができる。
【0049】
そして、本実施形態のケーブルガイド20においては、各蓋体4の長さが、各切り込み5の間隔と同じか、それよりも短くなっており、各蓋体4は一の切り込み5と他の切り込み5との間に取り付けられる。切り込み5を跨いで蓋体4を取り付けると、ケーブルガイド20が屈曲した際に、その屈曲性を低下させることになると共に、切り込み5間に生じる隙間に蓋体4が追従できず、ガイド本体3から外れてしまうことがあるからである。
【0050】
なお、本実施形態のケーブルガイド20では、底部1の裏面とリブ部6の内面との境界部分を、曲面又はC面で構成し、その曲率半径R又はC面寸法を3〜10mmとすることもできる。これにより、底面の両端部の厚さが厚くなるため、側壁2に切り込み5を形成したり、リブ部6に切り欠き6aを形成したりした場合でも、長期間繰り返し屈曲させても破損が生じない優れた耐久性を得ることができる。
【0051】
本実施形態のケーブルガイド20では、底部1の裏面側に、切り欠き6aを備えたリブ部6を設け、更に、側壁2に切り込み5を形成し、各切り込み5間に、相互に分離された蓋体4を取り付けているため、曲げ半径が小さい場合でも、ガイド本体23に過度のストレスを与えずに容易に曲げることができる。なお、本実施形態のケーブルガイド20における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0052】
(変形例)
図5及び図6は本発明の第2の実施形態の変形例に係るケーブルガイドの構成を示す断面図である。なお、図5及び図6においては、前述した第2の実施形態のケーブルガイド20の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図1に示す第1の実施形態のケーブルガイド10及び図3に示す第2の実施形態のケーブルガイド20では、側壁2の外面に凹部3aが形成されている例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
具体的には、図5に示す第2の実施形態の第1変形例のケーブルガイド30のように、側壁2の上端面に凹部33aが形成されていてもよく、図3に示す第2の実施形態の第2変形例のケーブルガイド40のように、側壁2の上部内面に凹部43aが形成されていてもよい。これらの場合でも、前述した第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、これらの嵌合形態は、前述した第1の実施形態のケーブルガイドと同様にリブなどがないものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 底部
2 側壁
3、23 ガイド本体
3a、4b、33a、43a 凹部
4 蓋体
4a 突起部
5 切り込み
6 リブ部
6a 切り欠き
10、20、30、40 ケーブルガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなり、一方向に延びる底部と、該底部の幅方向両端縁に沿って設けられその上部に長さ方向に延びる凹部を有する側壁とが、押出成形により、一体でかつ長さ方向に連続して形成されたガイド本体と、
前記側壁の凹部に嵌合する突起部を有し、前記ガイド本体に取り付けられて前記ガイド本体の開口を覆う2以上の蓋体と、を備え、
少なくとも前記ガイド本体の底部は熱可塑性エラストマーで形成されており、
かつ各蓋体は、相互に分離して取り付けられ、個別に開閉及び脱着可能となっているケーブルガイド。
【請求項2】
前記蓋体は熱可塑性樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブルガイド。
【請求項3】
前記ガイド本体の側壁及び/又は前記蓋体が熱可塑性エラストマーにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブルガイド。
【請求項4】
前記蓋体の硬度は、前記ガイド本体の硬度以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のケーブルガイド。
【請求項5】
前記側壁には、その先端から前記底部に向かって延びる複数の切り込みが一定間隔で形成されており、前記蓋体の長さは前記切り込みの間隔以下であり、前記蓋体は一の切り込みと他の切り込みとの間に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のケーブルガイド。
【請求項6】
前記ガイド本体における前記底部と前記側壁の内面との境界部分は曲面又はC面で構成されており、その曲率半径R又はC面寸法が3〜10mmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のケーブルガイド。
【請求項7】
前記底部の裏面には熱可塑性樹脂からなるリブ部が一体で形成されており、該リブ部には複数の切り欠きが設けられている請求項1乃至6のいずれか1項に記載のケーブルガイド。
【請求項8】
前記リブ部が熱可塑性エラストマーで形成されていることを特徴とする請求項7に記載のケーブルガイド。
【請求項9】
前記底部の裏面と前記リブ部の内面との境界部分は曲面又はC面で構成されており、その曲率半径R又はC面寸法が3〜10mmであることを特徴とする請求項7又は8に記載のケーブルガイド。
【請求項10】
単線ケーブルが収容されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のケーブルガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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