説明

ケーブルトランジットのための加圧密閉手段

本発明は、ケーブルトランジット(10)のための加圧密閉手段(20)に関するものである。この手段加圧密閉は、二つの楔形加圧要素(21)であって、これらの鋭形側部が互いへ向かって面する状態で、互いに対向するように垂直に配置された二つの楔形加圧要素(21)と、二つの楔形テンション調整要素(22)であって、これらの鋭形側部が互いに面する状態で、加圧要素(21)間に、互いに対向するように水平に配置された二つの楔形テンション調整要素(22)とを有する。加圧密閉手段は、二つのテンション調整要素(22)間に配置された少なくとも一つのテンション調整部材(23)をさらに備える。テンション調整部材(23)は、加圧要素(21)における固定手段(25)によって軸線方向に固定された少なくとも一つのスクリュー(24)であり、かつ固定手段(25)の一方には右ねじを、かつ固定手段(25)の反対側には左ねじを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルトランジットのための加圧密閉手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
さまざまな異なる用途、例えば船舶、海洋産業および建設物において、火災、爆発または漏水などの事故が起こった場合に、重要な構成要素、領域、生命を保護しかつ火災や漏水の広がりを遅らせるために、ケーブルおよびパイプのための密閉システムが必要とされている。そのため、ケーブルおよびパイプのための密閉システムは、ケーブルおよびパイプトランジットを保護するために、さまざまな異なる用途においてしばしば使用されている。
【0003】
個々の密閉システムは、仕切り壁に固定されるフレームを備えている。フレーム材料は、仕切り壁を密閉するための特有の要求性能を備えるよう選択される。この材料は、強固でありかつ耐久性を有する材料、好ましくはスチールまたはアルミニウムであることが望ましく、フレームのサイズはケーブルの本数、ケーブルの寸法、および仕切り壁における使用可能なサイズによって決定される。
【0004】
ケーブルトランジット内の各ケーブルは、一般的に二つの同一の部材から形成される差込ブロックによって囲まれている。各部材は、ケーブルの直径に対応する直径を有する半円筒形溝を備えており、これによって、二つの部材は、一緒に設置されたときにケーブルの周囲に係合するようになる。ケーブルおよび差込ブロックは、フレーム内に格納される。フレーム内のそれぞれの層を固定するために、金属製平板が、フレーム内部の差込ブロックの個々の層の間に配置されており、この金属製平板は、差込ブロックをフレーム内の適切な横方向のポジションに保持する突出フランジを備えている。
【0005】
少なくとも一つの加圧密閉手段がフレーム内のどこかに配置されている。加圧密閉手段は、力が加えられたときに、フレーム内の差込ブロックに圧力を加え、これにより、差込ブロックとケーブルとの間のギャップが密閉される。差込ブロックのサイズは、隣り合うよう詰めたときに、完全にフレームの内部の幅を満たすよう選択される。
【0006】
公知の加圧密閉手段の一つは、その薄手の端部が互いの方に面する状態で互いに対向するように垂直に配置されている二つの加圧楔形要素と、同様に楔形であるがその薄手の端部が互いの方に面する状態で互いに対向するように水平に配置されている二つのテンション(押圧力)調整要素とを備えており、それによって、それらがともに配置されたときに、加圧要素とテンション調整要素との薄手の端部に対向する平坦な面が、矩形状加圧密閉手段を形成するようになる。
【0007】
フレーム内部の差込ブロックに必要な圧力をかけることを可能とするために、テンション調整要素を介して延在する少なくとも一つのねじスクリューによって、テンション調整要素が互いに接続されている。スクリューの一端においては、スクリューが時計方向に回転させられたときには二つのテンション調整要素が互いの方へ移動され、かつ反時計方向に回転させられたときには互いに離れるように、ナットが設けられている。互いへ向かう二つの要素の移動は鋭形状であるため、強制的に加圧要素を互いに離間させ、これによって、加圧密閉要素の全高が増大されるようになる。増大された高さは、結果的にフレーム内部の差込ブロックに圧力を加え、これによって、最終的にケーブルトランジットが密閉される。二つの加圧要素は、二つの小さならせん状ばねによって互いに接続されており、これによって、密閉手段内のさまざまな要素が互いに保持される。
【0008】
しかしながら、この密閉手段は、いくつかの欠点を有している。欠点の一つとして、最終的な密閉手段が、最終的な密閉手段の高さよりほんのわずかに大きいギャップを残した状態で挿入されたとき、楔形状であるために、加圧要素が、加圧要素を横方向に回転させるテンション調整要素に関連して横向きにスライドすることが挙げられる。不適切なことに、この横方向の移動が、最終的な密閉手段の高さを増大させ、それによって、ギャップにそれを挿入することがより困難となる。
【0009】
第二に、ケーブルの本数もしくはタイプを変更することが要求された場合、最終的な密閉手段によって、最終的な密閉手段に加えられた力が取り除かれ、それによって、差込ブロックは変更もしくは交換可能となる。最終的な密閉手段による圧力は、スクリューを外しかつテンション調整要素を互いに離れるよう移動させることによって取り除かれ、これによって、加圧要素は、トランジットが最終的に密閉される前にあった位置と同じ位置に戻される。しかしながら、二つのテンション調整要素は、スクリューが外されたときに同じ様には移動しない。互いに接触する要素間の摩擦が原因となり、テンション調整要素の一つ(一般的に、スクリューヘッドに最も近接する方)のみが移動し、それに対して、他方は、フレーム内部の力を加えられたポジションに留まるということが発生する。結果的に、この欠点により、ケーブルトランジットの取り外しが複雑となる。
【0010】
本発明の目的となる課題は、ケーブルトランジットへの取り付け、およびそれからの取り外しが容易な加圧密閉手段を提供することである。
【0011】
上記欠点を解決する一つの公知の解決法が、特許文献1に開示されている。しかしながら、この加圧密閉手段には他の欠点が存在する。その一つとして、すべての楔形要素と可撓性ストラップとを一体構造としたために複雑化されたことによって、製造にコストがかかるということが挙げられる。他の欠点として、楔形要素または可撓性ストラップのいずれかが損傷した場合に構成要素全体を交換しなければならず、これによって、使用者にとってコストが増大することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 786 061号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、依然として、改善された加圧密閉手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記タイプの加圧密閉手段を提供する。上述した欠点を解消するために、加圧密閉手段は、加圧要素における固定手段によって軸線方向に固定された少なくとも一つのスクリューを有するテンション調整部材を備えており、かつ固定手段の片側における右ねじと、固定手段の反対側における左ねじとを備えている。
【0015】
固定手段は、テンション調整部材に対する加圧要素の適切な位置を保ち、これは、加圧密閉手段をフレーム内に挿入することを容易にする。固定手段の両側における右ねじと左ねじとの組み合わせは、スクリューが締められるかもしくは外される際の、加圧部材に対するテンション調整部材の両方の一様な移動を確実なものとし、これによって、両方のテンション調整部材が、均一に一方のポジションから他方のポジションまで移動させられるようになる。
【0016】
加圧密閉手段のすべての異なる部品がともに設置される前に別々に製造されるため、本発明は、上記欠点を解消しかつ製造および修理が容易とするものである。
【0017】
本発明の一実施形態を図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】製品組立中の、異なる工程におけるケーブルトランジットを示す図である。
【図1b】製品組立中の、異なる工程におけるケーブルトランジットを示す図である。
【図1c】製品組立中の、異なる工程におけるケーブルトランジットを示す図である。
【図2】力が付加される前の、すべての4つの楔形要素が互いに対して適切なポジションにある状態の加圧密閉手段を示す図である。
【図3】加圧密閉手段に力を付加する前に上部加圧要素が取り外された状態の請求項された加圧密閉手段の斜視図である。
【図4】上部加圧要素が取り外され、加圧密閉手段が力を付加され、かつ二つのテンション調整要素がその最終的な密閉ポジションにある状態の請求項された加圧密閉手段の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1a〜図1cには、ケーブルトランジット10を示す。このケーブルトランジットは、一般的にスチールまたはアルミニウムなどの金属から形成されるフレーム11を備えている。数本のケーブル12がフレーム11を介して延在しており、かつフレーム11のサイズは、壁を通過するケーブルの本数およびかつフレーム11が取り付けられる壁における使用可能なサイズによって選択される。それぞれのケーブル12は、矩形状の差込ブロック13によって取り囲まれる。ケーブル12を取り囲む各差込ブロック13は、ケーブル用の部屋を形成するよう、半円筒形状の溝を備えた二つの同一部材14となるように分割される。個々のケーブルの直径は、ケーブル12の周囲になされた密閉状態を確実なものとするよう、差込ブロック13が備える溝と同様のサイズのものであることが望まれる。フレームが、完全にケーブル12および周囲の差込ブロック13で満たされない場合には、残存開孔部が、同質ブロック15によって満たされる。差込ブロック13もしくは同質ブロック15の各層は、フレーム11の一方の側面からフレーム11の反対側の側面へ延在するプレート16によって区分されている。プレート16は、突出縁部17間の適切なポジションに差込ブロック13と同質ブロック15とを保持するための突出縁部17を備えている。フレーム11内の一つの段が、加圧密閉手段20のために使用される。すべての差込ブロック13、もしくは同質ブロック15がフレーム11内の適切なポジションにあるとき、図1aに示すように差込ブロック13または同質ブロック15の最終層が挿入されることとなる前に、加圧密閉手段20はフレーム11内に挿入される。すべてのケーブル12、差込ブロック13、同質ブロック15および加圧密閉手段20がフレーム11内の適切なポジションにある場合、加圧密閉手段20は、加圧密閉手段全体を通って二つのスクリュー24をねじ込むことによって力が付加される。加圧密閉手段の対向する側において、ナット(図示せず)を備えるスクリューが設けられている。スクリュー24が締められたとき、図1cに示すように、ケーブル12、差込ブロック13、同質ブロック15およびフレーム11間のすべてのギャップを密閉するようフレーム11内の差込ブロック13もしくは同質ブロック15に圧力がかけられる。
【0020】
図2には、加圧密閉手段20を示す。加圧密閉手段20は、その楔形状側が互いに面する状態で互いに対向するよう垂直に配置された二つの楔形加圧要素21と、その楔形状側が互いに向かって面する状態で互いに対向するよう水平に配置された二つの楔形テンション調整要素22とを備えている。鋭形側の対向する加圧密閉手段20の面は、フレーム11およびプレート16に対して適切な配列が実現されるよう実質的に平坦でありかつ水平である。加圧密閉手段20の長さは、フレーム11の幅全体を満たすよう選択されるが、フレームが大きい場合には、複数の密閉手段20を使用することができる。加圧要素21の幅は、差込ブロック13および同質ブロック15の長さと同一である。テンション調整要素22の長さは、加圧要素21の長さと同一である。テンション調整要素22は、一つ以上の要素となるよう分割することもできるが、これらの要素の長さの総計は、加圧要素21の長さと実質的に同一である。加圧要素21とテンション調整要素22との厚さは、加圧密閉手段20の全高が、力が加えられていないときに、差込ブロック13と同質ブロック15との高さよりもわずかに小さくなるように選択される。
【0021】
さらに、加圧密閉手段20は、二つのテンション調整要素22の間に配置された、少なくとも一つの(図示した実施形態においては二つの)テンション調整部材23を備えている。テンション調整部材23は、二つのテンション調整要素22の間に延在するスクリュー24と、スクリュー24の端部におけるナットとからなる。スクリュー24が回転させられるとき、二つのテンション調整要素22は互いの方へ向かって移動させられ、結果的に、楔形状の加圧要素およびテンション調整要素が原因で、二つの加圧要素を互いから離れることを強いられるようになる。したがって、加圧密閉手段の全高は増大され、かつフレーム内の差込ブロック13および同質ブロック25には圧力が加えられる。
【0022】
図において、テンション調整部材23を明らかにするため、一つの加圧部材23が取り除かれている。スクリュー24が、固定手段25によって加圧要素22に対して軸線方向に固定されている。固定手段25は、二つの加圧要素21の間に延在する平板形状の金属製構成要素26である。平板形状の金属製構成要素26は、加圧要素21に対して軸線方向にロックされるよう、両方の加圧要素21における切欠き部の内部で延在するように選択されている。スクリュー24は、スクリュー24の周面を囲むように延在する溝を備えている。平板形状の金属製構成要素26は、スクリューのための凹部を備えている。凹部は、加圧要素21日対して軸線方向にスクリュー24を固定するための溝におけるスクリューの直径と対応する径を有している。スクリュー24は、固定手段25の片側に右ねじを、かつ反対側に左ねじを有している。スクリュー24の回転時に、右ねじおよび左ねじは、二つの楔形テンション調整要素22を、回転方向に応じて固定手段25の方へもしくはそれから離れるよう同時に移動させる。これによって、加圧密閉手段20と、フレーム11内の差込ブロック13および同質ブロック15との間の接触面全体に同じ圧力が加えられること、ならびにテンション調整要素22の両方が、加圧密閉手段20を取り外すときに、加圧要素21と関連して移動させられるようになることが確実なものとなる。
【0023】
図4には、加圧密閉手段(20)が力を付加されている際の、加圧要素21とテンション調整要素22とのポジションを示す(図では、一つの加圧要素が含まれていない)。
【0024】
テンション調整要素21は、テンション調整部材23によって、ともに保持されている。二つの加圧要素をテンション調整要素22とテンション調整部材23とに対して固定するために、二つの加圧要素21の間には、二つのらせん状ばねが延在している。このばねは、二つの加圧要素21において、ハブ27と同様に固定されている。
【符号の説明】
【0025】
10 ケーブルトランジット
11 フレーム
12 ケーブル
13 差込ブロック
14 部材
15 同質ブロック
16 プレート
17 突出縁部
20 加圧密閉手段
21 加圧要素
22 テンション調整要素
23 テンション調整部材
24 スクリュー
25 固定手段
26 平板形状の金属製構成要素
27 ハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルトランジット(10)のための加圧密閉手段(20)であって、
前記手段(20)は、
二つの楔形加圧要素(21)であって、これらの鋭形側部が互いへ向かって面する状態で、互いに対向するように垂直に配置された二つの楔形加圧要素(21)と、
二つの楔形テンション調整要素(22)であって、これらの鋭形側部が互いに面する状態で、前記加圧要素(21)間に、互いに対向するように水平に配置された二つの楔形テンション調整要素(22)と、
二つの前記テンション調整要素(22)間に配置された少なくとも一つのテンション調整部材(23)と、
を具備してなり、
前記テンション調整部材(23)は、前記加圧要素(21)における固定手段(25)によって軸線方向に固定された少なくとも一つのスクリュー(24)であり、かつ前記固定手段(25)の一方の側においては右ねじを、かつ前記固定手段(25)の反対の側においては左ねじを備えていることを特徴とする加圧要素(20)。
【請求項2】
前記スクリュー(24)は、前記テンション調整部材(22)を通って、かつその間に延在していることを特徴とする請求項1に記載の加圧密閉手段(20)。
【請求項3】
前記固定手段(25)は、二つの前記加圧要素(21)において軸線方向に固定された平板形状の金属製構成要素(26)を具備してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加圧密閉手段。
【請求項4】
前記平板形状の金属製構成要素は、前記加圧要素(21)における切欠き部に入ることで、前記加圧要素(21)に内に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の加圧密閉手段(20)。
【請求項5】
前記スクリュー(24)は、前記スクリュー(24)の周面を囲む溝を備えており、かつ前記平板形状の金属製構成要素(26)は、軸方向において前記スクリュー(24)を固定するための溝に配置されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の加圧密閉手段。
【請求項6】
前記固定手段(25)は、実質的に、前記スクリュー(24)と前記加圧要素(21)との中央に配置されていることを特徴とする請求項2、請求項4または請求項5のいずれか一項に記載の加圧密閉手段。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−545285(P2009−545285A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520703(P2009−520703)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050270
【国際公開番号】WO2008/010755
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(509020284)エムセーテー・ブラットベルク・アーベー (1)
【Fターム(参考)】