説明

ケーブル保護カバーにおける開き止め具

【課題】本発明は架設ケーブルに外挿する保護カバーにおいて、該保護カバーを形成するケーブル外挿筒体の母線上に形成されたケーブル導入口の自然拡開を有効に防止し、ケーブル外挿筒体の脱落を有効に防止するケーブル保護カバーにおける開き止め具を提供する。
【解決手段】ケーブル外挿筒体1の一端面から他端面に亘り割設したケーブル導入口3の一方の口縁部4に外方へ向けフック形係止片6を突設すると共に、他方の口縁部5に外方へ向け該フック形係止片6の先端部内面に掛け合わされる内掛け片7を突設し、該掛け合わせ状態において上記筒壁2内面で開放された溝9を画成するケーブル保護カバーにおいて、上記溝9の端部に挿入されて上記内掛け片7の内方変位を制限するキー部材11と、上記一方口縁部4と他方口縁部5内面に沿接してキー部材11の挿入をガイドする張り出し12を設けたケーブル保護カバーにおける開き止め具10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹木や建物に接近する部位に架設されたケーブルを保護するケーブル保護カバー、殊に該ケーブル保護カバー側面に割設されたケーブル導入口の閉鎖状態を保持する開き止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、現在汎用されているケーブル保護カバーは、一端面と他端面で開放せるケーブル外挿筒体1から成り、該ケーブル外挿筒体1の筒壁2に一端面から他端面に亘り一母線上において割設し延在せしめたケーブル導入口3を有し、該ケーブル導入口3によって二分される一方の口縁部4に外方へ向けフック形係止片6を突設すると共に、他方の口縁部5に外方へ向け該フック形係止片6の先端部内面に掛け合わされる内掛け片7を突設し、該掛け合わせの解除にて上記ケーブル導入口3を開放し上記ケーブル外挿筒体1内への架設ケーブル8、即ち電力ケーブル又は通信ケーブルとこれらケーブル8aを吊持する吊りケーブル8bの導入を図り、導入後、上記フック形係止片6に内掛け片7を掛け合わせすることにより上記ケーブル導入口3の閉鎖状態を保持する構成を有している。
【0003】
上記ケーブル外挿筒体1とフック形係止片6と内掛け片7は合成樹脂にて一体成形され、ケーブル外挿筒体1はフック形係止片6に対する内掛け片7の掛け合わせを解除することによって、ケーブル導入口3において拡縮弾性を有し、該ケーブル外挿筒体1の弾性に抗してこれを縮閉しつつ上記フック形係止片6の内面に内掛け片7を掛け合わせることによって、上記筒壁2内面で開放し且つ同筒壁2一端と他端において開放せる溝9を画成する構成となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに上記ケーブル保護カバーは外気温の変化、或いは雪の重みや暴風雨による変形により、上記フック形係止片6と内掛け片7の掛け合わせが外れ、即ちフック形係止片6と内掛け片7の掛け合わせが自然解除され、ケーブルから脱落する問題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記ケーブルからケーブル保護カバーが自然脱落する問題を適切に解決するケーブル保護カバーにおける開き止め具を提供するものである。
【0006】
前記の通り、上記ケーブル保護カバーは上記フック形係止片6と内掛け片7の掛け合わせにより筒壁2内面で開放し且つ同筒壁2一端と他端において開放された溝9を画成する構造を有している。
【0007】
本発明はこの溝9を利用し、該溝9の端部に挿入して上記内掛け片7の内方変位を制限するキー部材と、該キー部材から張り出されて上記ケーブル外挿筒体のケーブル導入口3の一方口縁部4と他方口縁部5内面に沿接しキー部材の挿入をガイドする張り出しを有するケーブル保護カバーにおける開き止め具を提供するものである。
【0008】
上記キー部材の一端部には上記溝9の端面においてフック形係止片6又は内掛け片7の端面に衝合しキー部材の挿入深さを設定するストッパーを設ける。
【0009】
又上記キー部材の頂面に上記筒壁2に設けたほぞ孔に圧入し開き止め具を仮止めして置くためのほぞを設け、該仮止めされた開き止め具を取り外して上記溝の一端に挿入する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーブル外挿筒体のフック形係止片6と内掛け片7によってケーブル外挿筒体1の筒壁2の長手に亘り形成された溝9を利用し、この溝9の端部に上記開き止め具を挿入するのみで、ケーブル外挿筒体1のケーブル導入口3の拡開を有効に防止し、これによるケーブル外挿筒体1の自然脱落の問題を適切に解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に基づいて説明したように、現在汎用されているケーブル保護カバーは、一端面と他端面で開放せるケーブル外挿筒体1から成り、該ケーブル外挿筒体1の筒壁2に一端面から他端面に亘り一母線上において割設し延在せしめたケーブル導入口3を有し、該ケーブル導入口3をケーブル外挿筒体1の拡縮弾性に抗し拡開してケーブル8の導入を図る構成を有している。
【0012】
又上記ケーブル導入口3の閉鎖状態を保持する手段として、上記ケーブル導入口3によって二分される一方の筒壁口縁部4に外方へ向けフック形係止片6を突設すると共に、他方の筒壁口縁部5に外方へ向け内掛け片7を突設し、ケーブル外挿筒体1を弾性に抗し縮閉しつつ、該内掛け片7を該フック形係止片6の先端部内面に掛け合わせケーブル外挿筒体1の復元弾性(拡開弾性)にて該掛け合わせ状態を保持し、ケーブル導入口3の閉鎖状態を保持している。
【0013】
又上記掛け合わせを解除し上記ケーブル導入口3をケーブル外挿筒体1の弾性に抗し拡開することにより、上記ケーブル外挿筒体1内への架設ケーブル8、即ち電力又は通信ケーブルとこれらケーブル8aを吊持する吊りケーブル8bの導入を図る構成を有している。
【0014】
上記フック形係止片6は上記一方の筒壁口縁部4から立ち上がる立ち上がり部6aと、該立ち上がり部6aの端部から略鉤形に曲成された頂部6bと、該頂部6bの端部から内向きに曲成された係止部6cとを有し、全体としてフック形を呈する。
【0015】
他方上記内掛け片7は上記他方の筒壁口縁部5から外方へ立ち上がる上記係止部6cと略同等の立ち上がり幅を有する平形片から成る。
【0016】
上記フック形係止片6と内掛け片7は何れも筒壁2の母線に沿って延在し、筒壁2の両端面において終端する。
【0017】
上記ケーブル外挿筒体1とフック形係止片6と内掛け片7は合成樹脂にて一体成形され、ケーブル外挿筒体1はフック形係止片6に対する内掛け片7の掛け合わせ解除状態において、ケーブル導入口3における拡縮弾性を有する。
【0018】
上記ケーブル外挿筒体1の弾性に従い上記フック形係止片6の内面に内掛け片7を掛け合わせることによって、ケーブル外挿筒体1の内面に同筒体1の母線に沿い溝9を画成する構成となっている。該溝9は上記筒壁2内面、即ちケーブル外挿筒体1の内面で開放し且つ同筒壁2一端と他端、即ちケーブル外挿筒体1の一端と他端において開放している。
【0019】
上記フック形係止片6と内掛け片7とによって画成される溝9は蟻形溝(台形溝)とする。具体的には上記フック形係止片6の立ち上がり部6aは外側へ向け後傾し、係止部6cは内側へ向け前傾するように設けると共に、内掛け片7は外側方へ後傾するように設けて、両者6,7が係合した時に上記溝9が蟻形溝を形成し、係止部6cと内掛け片7の掛け合わせを解除し難い構成にする。
【0020】
上記フック形係止片6と内掛け片7の掛け合わせを保持する開き止め手段として開き止め具10を構成する。図2は該開き止め具10の基本構成を示し、図3乃至図5は該基本構成を内在する開き止め具10の第一変形例を示し、図8,図9は同第二変形例を示す。
【0021】
図2に示すように上記開き止め具10は、上記ケーブル外挿筒体1の上記溝9の端部に挿入して上記内掛け片7の内方変位を制限するキー部材11と、該キー部材11の頂面から張り出されて上記ケーブル外挿筒体1のケーブル導入口3の一方口縁部4と他方口縁部5内面に沿接しキー部材11の挿入をガイドする張り出し12を有する。
【0022】
上記張り出し12は上記内掛け片7の基端面(口縁部内面)に沿接して内掛け片7を規制し、解除防止効果を発揮する。
【0023】
従って上記張り出し12を以って内掛け片7の掛け合わせ解除方向への摺動を阻止する規制片と規定することができる。
【0024】
上記開き止め具10のキー部材11は上記フック形係止片6と内掛け片7の係合によって形成される蟻形溝(台形溝)9と略同調する台形(楔形)にし、蟻形溝9内に台形キー部材11を挿入することによってフック形係止片6と内掛け片7の係合をより確実に維持する。
【0025】
又図5乃至図9に示すように、上記キー部材11の一端部には上記溝9の端面においてフック形係止片6又は内掛け片7の端面に衝合しキー部材11の挿入深さを設定するストッパー13を設ける。
【0026】
具体例として、上記キー部材11の一端部から上記ストッパー13を形成する舌片を垂設し、該舌片を上記フック形係止片6の頂部6b端面に衝合して上記キー部材11の挿入深さを設定する。
【0027】
又上記キー部材11の上面、即ち張り出し12の上面にほぞ14を設け、他方上記ケーブル外挿筒体1を形成する筒壁2の端部にほぞ孔15を設け、図6Aに示すように、該ほぞ孔15に上記ほぞ14を圧入し開き止め具10を仮止めして置き、図6Bに示すように、該仮止めされた開き止め具10を取り外して上記溝9の一端への挿入に供する。
【0028】
又図8,図9に示すように、上記キー部材11に隣接する一方のケーブル外挿筒体1の溝9に挿入されるキー11aと、同他方のケーブル外挿筒体1の溝9に挿入されるキー11bを設けることができる。
【0029】
図11に示すように、上記キー部材11は一端部に隣接する一方のケーブル外挿筒体1の溝9に挿入されるキー11aと、他方のケーブル外挿筒体1の溝9に挿入されるキー11bとを同一軸線上に延設した同一外形の長さを有する。
【0030】
上記キー部材11の中間部に前記ストッパー13を設け、即ちキー部材11の中間部下面から突出する舌片を設け、該舌片を隣接するケーブル外挿筒体1の端面間に介挿しつつ、同端面に衝合して両ケーブル外挿筒体1の溝9に対する挿入深さを設定する。
【0031】
上記図8,図9に示すキー部材11においても、その頂面から左右へ張り出し12を設け、該頂面に、好ましくは頂面の一端に上記ほぞ14を突設する。
【0032】
上記図3乃至図9に示すほぞ14は開き止め具10をケーブル外挿筒体1に仮止めして置く手段を構成すると共に、開き止め具10をケーブル外挿筒体1の溝9に挿入又は抜去する際の摘み機能を有しており、これを挿脱のための摘みと規定することができる。
【0033】
上記図3乃至図9に示すキー部材11の側面に形成した凹所16は何れも軽量化と材料節減のための凹所である。
【0034】
図11に示すように、上記吊りケーブル8bにスパイラルハンガーと称される既知の緩螺旋形状をしたケーブル支持具17を巻装して電力又は通信ケーブル8aの如き架設ケーブルを束縛する。
【0035】
上記ケーブル支持具17を巻装したケーブル8a,8bに、その保護を必要とする部位において上記ケーブル外挿筒体1を外挿し、該ケーブル外挿筒体1を架設ケーブル8に沿って移動しつつ、次のケーブル外挿筒体1を外挿し、複数のケーブル外挿筒体1を以って架設ケーブル8を保護する。
【0036】
図10に示すように、上記ケーブル外挿筒体1の溝9の端部内に上記各例に示すキー部材11を挿入することにより上記内掛け片7の内方変位を制限する、即ち内方変位を制止し、フック形係止片6に対する内掛け片7の解除を防止する。よって温度変化や雪の重量、暴風雨に伴う変形によりケーブル外挿筒体1、即ちケーブル保護カバーが脱落する問題を有効に解消する。
【0037】
上記開き止め具10は構造が簡素で挿入操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来のケーブル保護カバーの横断面図。
【図2】本発明に係る開き止め具の基本構造を示す斜視図。
【図3】上記基本構造に従い構成された開き止め具の第一変形例を示す斜視図。
【図4】同開き止め具の側面図。
【図5】同開き止め具の正面図。
【図6】Aは開き止め具をケーブル保護カバーを構成するケーブル外挿筒体に仮止めした状態を示す斜視図、Bは同開き止め具をケーブル外挿筒体の溝に挿入する前の状態を示す斜視図。
【図7】上記開き止め具をケーブル保護カバーを構成するケーブル外挿筒体の溝に挿入した状態を示す斜視図。
【図8】上記基本構造に従い構成された開き止め具の第二変形例を示す斜視図。
【図9】同開き止め具の側面図。
【図10】Aは上記図2乃至図9に示す開き止め具をケーブル外挿筒体の溝に挿入した状態を示す横断面図、Bは図3乃至図5に示す開き止め具をケーブル外挿筒体の溝に挿入した状態とケーブル支持状態を示す縦断面図。
【図11】上記第二変形例の開き止め具を隣接するケーブル外挿筒体の溝に挿入した状態とケーブル支持状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0039】
1…ケーブル外挿筒体、2…筒壁、3…ケーブル導入口、4…一方の筒壁口縁部、5…他方の筒壁口縁部、6…フック形係止片、6a…立ち上がり部、6b…頂部、6c…係止部、7…内掛け片、8…架設ケーブル、8a…電力又は通信ケーブル、8b…吊りケーブル、9…溝、10…開き止め具、11…キー部材、11a,11b…キー、12…張り出し、13…ストッパー、14…ほぞ、15…ほぞ孔、16…凹所、17…ケーブル支持具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面と他端面で開放せるケーブル外挿筒体の筒壁に一端面から他端面に亘り一母線上において割設し延在せしめたケーブル導入口を有し、該ケーブル導入口によって二分される一方の口縁部に外方へ向けフック形係止片を突設すると共に、他方の口縁部に外方へ向け該フック形係止片の先端部内面に掛け合わされる内掛け片を突設し、該掛け合わせの解除にて上記ケーブル導入口を開放し上記ケーブル外挿筒体内への架設ケーブルの導入を図り、該掛け合わせにて上記ケーブル導入口の閉鎖状態を保持し、該掛け合わせ状態において上記筒壁内面で開放し且つ同筒壁一端と他端において開放された溝を画成する構成としたケーブル保護カバーにおいて、上記溝の端部に挿入されて上記内掛け片の内方変位を制限するキー部材を有し、該キー部材に上記一方口縁部と他方口縁部内面に沿接してキー部材の挿入をガイドする張り出しを設けたことを特徴とするケーブル保護カバーにおける開き止め具。
【請求項2】
上記キー部材の一端部に上記溝の端面においてフック形係止片又は内掛け片の端面に衝合してキー部材の挿入深さを設定するストッパーを設けたことを特徴とする請求項1記載のケーブル保護カバーにおける開き止め具。
【請求項3】
上記キー部材に上記筒壁に設けたほぞ孔に圧入し仮止めして置くためのほぞを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のケーブル保護カバーにおける開き止め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−340554(P2006−340554A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164842(P2005−164842)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(390025335)マサル工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】