説明

ケーブル分岐部の保護具

【課題】 ケーブル分岐部においてケーブルが断線や損傷などするのを防止・抑制する。
【解決手段】 線材をコイル状に巻いて弾性変形自在とし、電線101、102が並列に配設された並列部100aをコイル内に収容する並列収容部11と、この並列収容部11から延びて、電線101、102の分岐部100bをコイル内に収容する分岐収容部12と、を備える保護具1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線・電力線や通信線などのケーブルの分岐部を保護するためのケーブル分岐部の保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多くの需要家に電力を供給するために、多くの箇所で配電線を分岐しており、このような分岐部においては、電線の動揺・揺れに伴って、振動や揺れが生じ、断線するおそれがある。このため、図4に示すように、2つの電線101、102を平行・並列に配設した部分をバインド線103で結束し、電線接続箇所104にかかる張力を軽減するようにしている。
【0003】
また、適度な弾性と剛性とを有する螺旋状成形線材をリード線に巻き付けることで、リード線の横振れを抑制して、リード線を保護する保護構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−287346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2つの電線101、102をバインド線103で結束した場合には、バインド線103で結束した部位に大きな応力・モーメントが発生し、電線101、102が断線するおそれがある。特に、2つの電線101、102の線径が異なる場合には、線径が細い電線102が断線するおそれが高くなる。また、特許文献1の保護構造は、1本の保護対象線(リード線)に沿って螺旋状成形線材を巻き付けることで、1本の保護対象線を保護するものであるが、保護対象線が分岐する場合に、その分岐部を保護できるものではない。
【0006】
そこでこの発明は、ケーブル分岐部においてケーブルが断線や損傷などするのを防止・抑制することが可能な、ケーブル分岐部の保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のケーブルが並列に配設された並列部から、少なくともひとつのケーブルが分岐した分岐部を保護するケーブル分岐部の保護具であって、線材をコイル状に巻いて弾性変形自在とし、前記並列部をコイル内に収容する並列収容部と、前記並列収容部から延びて、前記分岐部をコイル内に収容する分岐収容部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、複数のケーブルの並列部がコイル状の並列収容部内に収容され、ケーブルの分岐部がコイル状の分岐収容部内に収容される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の保護具において、前記分岐収容部から延びて、特定の前記ケーブルをコイル内に収容する特定収容部を備える、ことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、複数のケーブルの並列部が並列収容部内に収容され、ケーブルの分岐部が分岐収容部内に収容されるとともに、分岐部後の特定のケーブルが特定収容部内に収容される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ケーブルの並列部と分岐部とがそれぞれ、コイル状の並列収容部と分岐収容部とに収容され、並列収容部と分岐収容部とは連続的・一体的に形成され、全体として弾性変形自在となっている。このため、ケーブルに外力が加わったとしても、その力が並列収容部や分岐収容部の変形として吸収され、ケーブルの分岐部に作用する力・応力が軽減される。その結果、ケーブル分岐部において、ケーブルが断線や損傷などするのを防止・抑制することが可能となる。しかも、線材をコイル状に巻いて並列収容部と分岐収容部とが形成されているだけであるため、構成が簡易で、容易かつ安価に製作することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、分岐収容部から延びる特定収容部に特定のケーブルが収容されているため、その特定のケーブルに外力が加わったとしても、その力が特定収容部や分岐収容部などの変形として吸収され、そのケーブルに作用する力・応力が軽減される。その結果、ケーブルの断線や損傷などを防止・抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係るケーブル分岐部の保護具の使用状態を示す正面図である。
【図2】図1の保護具を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るケーブル分岐部の保護具を示す正面図である。
【図4】従来のケーブル分岐部の結束・固定状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係るケーブル分岐部の保護具(以下、適宜単に「保護具」という)1の使用状態を示す正面図である。この保護具1は、複数のケーブルの分岐部を保護するものであり、この実施の形態では、2つの電線(ケーブル)101、102の分岐部100bを保護する場合について説明する。ここで、第1の電線101が第2の電線102よりも大径で、第1の電線101と第2の電線102とは、接続具105で接続され、接続具105から所定の長さだけ並列に配設されている。そして、この並列部100aから、第2の電線102がほぼ垂直・直角に分岐して配設されており、この分岐部100bを保護具1で保護するものである。
【0016】
保護具1は、図2に示すように、線材をコイル状に巻いて弾性変形自在とし、並列収容部11と、分岐収容部12と、を備えている。すなわち、後述するようにして分岐部100bなどを保護することが可能な弾性と剛性とを有する線材、例えば、鋼線に樹脂を被覆した線材がコイル状・螺旋状に巻かれて、並列収容部11と分岐収容部12とが形成され、全体として所望の弾性、剛性が得られるようになっている。
【0017】
並列収容部11は、電線101、102の並列部100aをコイル内に収容する部分であり、並列部100aの断面形状よりもやや大きい断面に形成され、真っ直ぐに延びている。また、この並列収容部11の長さは、後述するように電線101、102に外力が加わった際に、保護具1が変形してその外力を吸収できる長さに設定されている。
【0018】
分岐収容部12は、並列収容部11から連続的・一体的に延び、電線101、102の分岐部100bをコイル内に収容する部分であり、分岐部100bの輪郭に沿って形成されている。すなわち、この実施の形態では、図中、並列収容部11の下側から第2の電線102に沿って右側だけが延び、左側は真っ直ぐ下方に延びている。また、この分岐収容部12の長さ(分岐部100bの収容領域)は、後述するように電線101、102に外力が加わった際に、保護具1が変形してその外力を吸収できる長さに設定されている。
【0019】
このような並列収容部11と分岐収容部12とは、一方のみに直接外力が加わった場合であっても、他方にもその力が伝達・作用され、保護具1が全体として弾性変形するようになっている。そして、後述するようにして電線101、102の並列部100aが並列収容部11内に収容され、分岐部100bが分岐収容部12内に収容された状態では、電線101、102の並列部100aと分岐部100bとが、保護具1を介して一体化される。
【0020】
次に、このような構成の保護具1の作用などについて説明する。
【0021】
まず、保護具1を電線101、102の分岐部100bなどに装着するには、例えば、保護具1の並列収容部11側の開口端部1aから、電線101、102を保護具1の螺旋に沿って保護具1内に挿入し、電線101、102を所定の位置・方向に配設する。これにより、電線101、102の並列部100aが並列収容部11内に収容され、電線101、102の分岐部100bが分岐収容部12内に収容される。
【0022】
このような状態で、例えば、第2の電線102に水平方向の外力F1(図1)が加わると、その力が分岐収容部12、さらには並列収容部11に伝わり、分岐収容部12と並列収容部11とが変形する。すなわち、外力F1が分岐収容部12と並列収容部11との変形として吸収され、電線101、102の分岐部100b、つまり電線101、102自体や接続具105(接続部)に作用する力・応力が軽減される。同様に、第1の電線101に水平方向の外力F2(図1)が加わった場合でも、その外力F2が分岐収容部12と並列収容部11との変形として吸収され、電線101、102自体や接続具105に作用する力・応力が軽減されるものである。
【0023】
以上のように、この保護具1によれば、電線101、102の並列部100aと分岐部100bとがそれぞれ、コイル状の並列収容部11と分岐収容部12とに収容され、並列収容部11と分岐収容部12とが連続的・一体的に形成されて、全体として所定の弾性、剛性を有して弾性変形自在となっている。すなわち、電線101、102の並列部100aと分岐部100bとが、全体的に弾性変形自在な保護具1によって一体化・包囲され、一体的に支持されている。このため、電線101、102に外力が加わったとしても、その力が分岐収容部12や並列収容部11の変形として吸収され、電線101、102の並列部100aや分岐部100bに作用する力・応力が軽減される。
【0024】
また、電線101、102の並列部100aと分岐部100bとを面で支持するため、従来のバインド線103のように、電線101、102を点・ポイントで固定・支持する場合に比べて、電線101、102に局所的な力(曲部応力)を与えることがない。しかも、面で支持するため、電線101、102が局所的・急に曲がったり、ねじれたりすることがない。これらの結果、電線101、102が分岐する場合であっても、電線101、102の断線や損傷などを防止・抑制することが可能となる。
【0025】
しかも、線材をコイル状に巻いて並列収容部11と分岐収容部12とが形成されているだけであるため、構成が簡易で、容易かつ安価に保護具1を製作することができる。
【0026】
(実施の形態2)
図3は、この実施の形態に係るケーブル分岐部の保護具10を示す正面図である。この実施の形態では、特定収容部13を備える点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することで、その説明を省略する。
【0027】
この特定収容部13は、コイル状で分岐収容部12から連続的・一体的に延び、第2の電線102の一部をコイル内に収容する部分であり、第2の電線102の外径よりもやや大きい断面に形成されている。また、この特定収容部13の長さは、電線101、102に外力が加わった際に、特定収容部13などが変形して第2の電線102への作用力が十分軽減できる長さに設定されている。
【0028】
ここで、第2の電線102を特定のケーブルとし、第2の電線102を特定収容部13内に収容しているのは、第2の電線102が第1の電線101よりも小径であるため、外力が加わった場合に、第2の電線102が断線したり損傷したりするおそれが高いからである。
【0029】
このような保護具10によれば、第2の電線102が特定収容部13内に収容され、弾性変形自在な特定収容部13によって第2の電線102が支持されており、しかも、特定収容部13が分岐収容部12や並列収容部11と連続的・一体的に形成されている。このため、第2の電線102や第1の電線101に外力が加わったとしても、その力が特定収容部13や分岐収容部12などの変形として吸収され、第2の電線102に作用する力・応力が軽減される。
【0030】
また、第2の電線102の周面が特定収容部13で支持されているため、第2の電線102に局所的な力(曲部応力)が作用せず、しかも、第2の電線102が局所的・急に曲がったり、ねじれたりすることがない。これらの結果、第2の電線102の断線や損傷などをより防止・抑制することが可能となる。
【0031】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、2つの電線101、102が分岐する場合について説明したが、3つ以上の電線が二股に分岐する場合についても適用することができ、また、二股に分岐する分岐部のみならず、三股に分岐する分岐部にも適用することができる。
【0032】
また、保護具1を製作するに際して、鋼線などをコイル状に巻いて並列収容部11や分岐収容部12などを形成し、その後焼き入れ処理・熱処理によって、所定の弾性、剛性(バネ特性)を得るようにしてもよい。さらに、保護具1、10が動く・ずれることを防止するために、保護具1、10の両端部を結束線などで電線101、102に固定・仮止めしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1、10 保護具
11 並列収容部
12 分岐収容部
13 特定収容部
101 第1の電線(ケーブル)
102 第2の電線(ケーブル)
100a 並列部
100b 分岐部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーブルが並列に配設された並列部から、少なくともひとつのケーブルが分岐した分岐部を保護するケーブル分岐部の保護具であって、
線材をコイル状に巻いて弾性変形自在とし、
前記並列部をコイル内に収容する並列収容部と、
前記並列収容部から延びて、前記分岐部をコイル内に収容する分岐収容部と、
を備えることを特徴とするケーブル分岐部の保護具。
【請求項2】
前記分岐収容部から延びて、特定の前記ケーブルをコイル内に収容する特定収容部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル分岐部の保護具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−257387(P2012−257387A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128802(P2011−128802)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】