説明

ケーブル接続方法、電気装置製造方法、および電気装置

【課題】低コストで第1ケーブル31および第2ケーブル36を接続できるケーブル接続方法、電気装置製造方法、および電気装置を提供する。
【解決手段】ハーネス3の各剥き出し接続端32、コネクタ37を各接続対象である接続接点部22、コネクタ26にそれぞれ接続するケーブル接続方法として、第1ケーブル31と第2ケーブル36を束ねる結束処理と、前記各剥き出し接続端32およびコネクタ37のうちコネクタ37をコネクタ26に接続する第1接続工程とが完了した後に、前記剥き出し接続端32を前記接続接点部22に溶着する第3接続工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電気装置にケーブルを接続するようなケーブル接続方法、電気装置製造方法、および電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気信号は自動車など様々な装置で利用されており、この装置に電気信号を供給するために種々のケーブルが備えられている。このようなケーブルは、信号処理する種類の増加に伴い、必要な本数が増加してきている。
【0003】
ケーブル数が増加すると、接続部分でのケーブル同士の間隔が狭くなり、ブリッジ現象による不良品の発生に繋がるという問題点がある。このブリッジ現象を防止するため、複数のラインを1ケーブルにまとめて先端にコネクタを設け、このコネクタによって接続した昇降設置装置が提供されている(特許文献1参照)。
この昇降設置装置は、コネクタを用いることによって半田付けをなくし、製造の容易化および不良品の削減ができるとされている。
【0004】
一方、自動車などの電機装置では、自動車の走行駆動に必要な電気機器だけでなく、カーナビやカーテレビなどの種々の電気機器が搭載されている。また、これらの各種電気機器は、必ず搭載されるものだけでなく、オプションで搭載可能な電気機器も含まれている。
【0005】
しかし、このように多種多様な電気装置で用いるケーブルに必ずコネクタを付けるとすると、コネクタの数が増加してコスト増となる問題点があった。また、オプションで搭載可能な電気機器のために、ケーブルの接続対象である基板等にオプションを付けなければ不要なケーブル用のコネクタも付けておく必要が生じ、全体としてのコスト増に繋がるという問題点があった。
【0006】
【特許文献1】実開平5−89076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑み、低コストでケーブルを接続できるケーブル接続方法、電気装置製造方法、および電気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、複数のケーブルの各接続部を各接続対象にそれぞれ接続するケーブル接続方法であって、複数の前記ケーブルを束ねる結束処理と、前記各接続部のうち溶着により接続する溶着接続部以外の非溶着接続部を前記接続対象に接続する接続処理とが完了した後に、前記溶着接続部を前記接続対象に溶着する溶着処理を行うケーブル接続方法であることを特徴とする。
【0009】
前記溶着接続部は、半田付けによる溶着、あるいは超音波溶着など、適宜の溶着により接続する接続部とすることができる。
前記非溶着接続部は、各種のコネクタによる接続、あるいはネジ止めによる接続等、溶着しない接続部とすることができる。
【0010】
この発明により、コネクタなどによる非溶着接続だけでなく、半田付けなどによる溶着を併用でき、コストを削減することができる。また、溶着後の溶着接続部に応力がかかることを防止できる。
【0011】
この発明の態様として、前記溶着接続部が複数存在する場合に、全ての溶着接続部を各接続対象に同時に溶着することができる。
これにより、全ての溶着接続部について、溶着後に応力がかかることを防止できる。
【0012】
またこの発明は、束ねられた複数のケーブルの各接続部を各接続対象にそれぞれ接続した電気装置を製造する電気装置製造方法であって、複数の前記ケーブルを束ねる結束処理と、前記各接続部のうち溶着により接続する溶着接続部以外の非溶着接続部を前記接続対象に接続する接続処理とが完了した後に、前記溶着接続部を前記接続対象に溶着する溶着処理を行う電気装置製造方法とすることができる。
【0013】
これにより、故障の少ない電気装置を低コストで製造することができる。詳述すると、溶着接続部に対して溶着後に応力をかけないことで、溶着接続部が断線することや接続抜けとなることをより確実に防止でき、断線や接続抜けといった電気装置の故障を少なくできる。
【0014】
またこの発明は、束ねられた複数のケーブルの各接続部を各接続対象にそれぞれ接続した電気装置であって、複数の前記ケーブルを束ねる結束処理と、前記各接続部のうち溶着により接続する溶着接続部以外の非溶着接続部を前記接続対象に接続する接続処理とが完了した後に、前記溶着接続部を前記接続対象に溶着した電気装置とすることができる。
これにより、故障の少ない電気装置を低コストで提供できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明により、低コストでケーブルを接続できるケーブル接続方法、電気装置製造方法、および電気装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、電気装置1の一部の概略構成を示す斜視図である。この電気装置1は、第1基板2と図示省略する第2基板とがハーネス3により電気的に接続されている。なお、この実施形態では、電気装置1として自動車を用いており、第1基板2および第2基板は、自動車に設けられている制御基板などの種々の基板である。
【0017】
ハーネス3は、物理的に分離されている別個の第1ケーブル31と第2ケーブル36とが、事前の結束処理にて結束バンド30で結束されて構成されたケーブル群である。第1ケーブル31はGPSアンテナなどに用いられる同軸ケーブル(例えばピッグテール型の同軸ケーブルなど)であり、一端に剥き出し接続端32が設けられている。第2ケーブル36は、シリアルケーブルなどの第1ケーブル31と種類の異なるケーブルであり、一端にコネクタ37が設けられている。
【0018】
第1ケーブル31と第2ケーブル36は適度の柔軟性を有して湾曲など変形させることが可能である。従って、結束バンド30から各剥き出し接続端32、コネクタ37までの間を自由に変形させて、離間している第1基板2の接続接点部22とコネクタ26に各剥き出し接続端32とコネクタ37をそれぞれ個別に接続することができる。なお、第1基板2のコネクタ26と、これらに接続されるハーネス3のコネクタ37とは、一方が雄型であり他方が雌型である。
【0019】
第1基板2は、半田付けにより第1ケーブル31の剥き出し接続端32が接続される接続接点部22と、第2ケーブル36のコネクタ37が接続されるコネクタ26とが設けられている。
このように構成される電気装置1は、次に説明するケーブル接続方法が用いられる電気装置製造方法により製造される。
【0020】
図2は、電気装置1のケーブル接続の各工程を全体図により説明する説明図であり、図3は、電気装置1のケーブル接続の一部の工程を拡大図により説明する説明図である。
【0021】
まず、製造者は、図2(A)の斜視図に示すように、第1基板2およびハーネス3を準備する。ここで、ハーネス3はハーネスアセンブリの専門メーカーに製造させたものが好ましいが、第1ケーブル31と第2ケーブル36を結束バンド30で束ねる結束処理(ハーネスアセンブリ工程)を行い、作成してもよい。また、ハーネス3のうち図示省略する他端側は、図示省略する第2基板に適宜接続すると良い。
【0022】
次に、図2(B)の斜視図に示すように、ハーネス3のコネクタ37を第1基板2のコネクタ26に正しく接続する第1接続工程を行う。
【0023】
次に、図2(C)の斜視図に示すように、ハーネス3の第1ケーブル31の剥き出し接続端32を第1基板2の接続接点部22に接続する。この接続は、図3に示すように2段階に実行する。
【0024】
まず、図3(A)の拡大斜視図に示した接続前の状態から、図3(B)の拡大斜視図に示すように、剥き出し接続端32の外部導体32bを第1基板2の固定ツマミ22bに固定する第2接続工程を行う。
この第2接続工程と前記第1接続工程により、第1基板2と第2基板をハーネス3で接続する工程の半田付け以外の工程が全て完了した状態となる。
【0025】
その上で、図3(C)の拡大斜視図に示すように、第1ケーブル31の内部導体32aを第1基板2の接点22aに半田8により半田付け(半田溶着)して接続固定する第3接続工程を行う。
【0026】
以上の方法により、半田付けが必要な接続部(剥き出し接続端32)とコネクタによる接続部(コネクタ37)が混在しているハーネス3の第1基板2への接続が完了し、電気装置1が完成する。
【0027】
このように製造することで、半田付けを製造工程の最後の工程にすることができ、製造工程内で半田付け後に半田付け部分に応力がかかることを防止できる。つまり、例えば剥き出し接続端32の内部導体32aの半田付けを先に実行し、そのあとにコネクタ37を接続しようとした場合や、バラ状態の第1ケーブル31と第2ケーブル36について半田付けとコネクタ接続を完了させた後に結束バンド30で結束しようとした場合、コネクタ37を接続しようとする作業や結束作業によって第1ケーブル31が引っ張られあるいは押し付けられて、剥き出し接続端32の内部導体32aと接点22aとが半田8により溶着されている部分に応力がかかる。このため、半田8による溶着部分にひずみが発生する。そうすると、見た目上は内部導体32aと接点22aとが接続されていても、完成後の電気装置1が振動や衝撃を受けると、この影響によって内部で内部導体32aと接点22aの断線が生じる問題や、内部導体32aと接点22aの抜けが生じる問題が発生し得る。また、第1基板2と第2基板が可動部分を挟んで設けられた場合に、可動によるハーネス3の変形等によって半田8に生じていたひずみが拡大され、内部導体32aと接点22aの断線や抜けが生じるという問題が発生し得る。しかし、本実施形態により、半田付けを最後としたことで、このような問題が生じることがなく、内部導体32aと接点22aを強固に半田付けすることができる。
【0028】
また、第1ケーブル31と第2ケーブル36を第1基板2にバラバラに接続してから結束するのではなく、結束バンド30で結束した後に接続できる。つまり、半田付けとコネクタ接続をバラバラに行った後に結束してハーネス3をその都度個別に製造するという個別作業を省略できる。このため、ハーネス3をハーネスアセンブリ専門のメーカーなどで多量に製造させてまとまった部品として利用することができ、ハーネス3を安価に調達してコストを削減することができる。
【0029】
また、ハーネス3のアセンブリ工程とハーネス3を第1基板2に接続する接続工程とを分離することにより、工程設計の自由度が上がる。これにより、ハーネスアセンブリ工程のタクトが長短(例えば1分以内や5分以上等)存在して他の工程との組み合わせが困難であった従来の問題点を解消できる。
【0030】
なお、上記実施形態では、ハーネス3を第1ケーブル31と第2ケーブル36の2本で構成したが、これに限らず多数本のケーブルでハーネス3を構成してもよい。また、ハーネス3は、第1ケーブル31の両端を剥き出し接続端32とする、あるいは複数本のケーブルに剥き出し接続端32を設ける構成としてもよい。剥き出し接続端32を複数備えた場合は、全ての剥き出し接続端32を同数の半田ごてにより同時に半田付けするとよい。これにより、全ての半田付け部について製造工程内で半田付け後に応力がかかることを防止できる。
【0031】
また、半田付けする第1ケーブル31は、同軸ケーブルに限らず、末端加工がされている(シースが剥いてある)接続部を有する他のケーブルにより構成してもよい。この場合でも、上述した工程順で接続することにより、製造工程内で半田付け部に応力がかかることを防止できる。
【0032】
また、結束バンド30の代わりに、図4の斜視図に示すように、第1ケーブル31と第2ケーブル36を束ねた状態で胴体部に所定長のテープ39を巻きつけて、ハーネス3を形成してもよい。この場合、第1ケーブル31と第2ケーブル36は、先端から所定長が互いに枝分かれして自由に接続でき、テープ39が巻きつけられている胴体部は1本のケーブルとして取り扱うことができる。従って、第1基板と図示省略する第2基板の距離が離れている場合でも、第1ケーブル31と第2ケーブル36が絡まることなくハーネス3を容易に取り扱うことができる。またこのようにテープ39を用いた場合、テープ39が巻きつけられた胴体部はある程度の剛性を有することになるが、上述したように半田付けを最後にすることで半田付け部分に後から応力がかかることを防止できる。
【0033】
また、結束バンド30やテープ39を用いて予めハーネス3を製造することで、半田付けが必要となる剥き出し接続端32を所定の形状に加工しておくことができる。これにより、ハーネス3の第1基板2への接続を簡易化することができる。
【0034】
また、剥き出し接続端32の外部導体32bは、第1基板2に半田付け等により溶着してもよい。この場合、外部導体32bを溶着した後に内部導体32aを溶着することが好ましい。これにより、剥き出し接続端32の外部導体32bを第1基板2の固定ツマミ22bに固定する場合と同様の効果を得ることができる。
【0035】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の束ねられた複数のケーブルは、実施形態のハーネス3に対応し、
以下同様に、
接続対象は、接続接点部22およびコネクタ26に対応し、
ケーブルは、第1ケーブル31および第2ケーブル36に対応し、
接続部は、剥き出し接続端32およびコネクタ37に対応し、
溶着接続部は、剥き出し接続端32に対応し、
非溶着接続部は、コネクタ37に対応し、
接続処理は、第1接続工程に対応し、
溶着処理は、第3接続工程に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】電気装置の一部の概略構成を示す斜視図。
【図2】電気装置のケーブル接続の各工程を全体図により説明する説明図。
【図3】電気装置のケーブル接続の一部の工程を拡大図により説明する説明図。
【図4】他の実施形態の電気装置の一部の概略構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0037】
1…電気装置、3…ハーネス、22…接続接点部、26,37…コネクタ、31…第1ケーブル、32…剥き出し接続端、36…第2ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーブルの各接続部を各接続対象にそれぞれ接続するケーブル接続方法であって、
複数の前記ケーブルを束ねる結束処理と、前記各接続部のうち溶着により接続する溶着接続部以外の非溶着接続部を前記接続対象に接続する接続処理とが完了した後に、
前記溶着接続部を前記接続対象に溶着する溶着処理を行う
ケーブル接続方法。
【請求項2】
前記溶着接続部が複数存在する場合に、全ての溶着接続部を各接続対象に同時に溶着する
請求項1記載のケーブル接続方法。
【請求項3】
複数のケーブルの各接続部を各接続対象にそれぞれ接続した電気装置を製造する電気装置製造方法であって、
複数の前記ケーブルを束ねる結束処理と、前記各接続部のうち溶着により接続する溶着接続部以外の非溶着接続部を前記接続対象に接続する接続処理とが完了した後に、
前記溶着接続部を前記接続対象に溶着する溶着処理を行う
電気装置製造方法。
【請求項4】
複数のケーブルの各接続部を各接続対象にそれぞれ接続した電気装置であって、
複数の前記ケーブルを束ねる結束処理と、前記各接続部のうち溶着により接続する溶着接続部以外の非溶着接続部を前記接続対象に接続する接続処理とが完了した後に、
前記溶着接続部を前記接続対象に溶着した
電気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−41579(P2008−41579A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217644(P2006−217644)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】