説明

ケーブル支持線の電柱用吊架金物

【課題】 ケーブルの支持線の電柱に対する安定した引留め状態を得られ、使用勝手も良好なケーブル支持線吊架金物を提供する。
【解決手段】 長手方向の両側に設けた一対の挿通孔10,10.12,12に挿通させる締付けボルト3と、これに螺合するナット4によって互いに相対向させて締付ける内外一対の挟持板1,2を備える。各挟持板1,2には、前記挿通孔10,10.12,12間に位置し、しかも、電柱Dの周側面に突設した支持ボルト31を挿通させる挿通孔9,11と、下端に互いに相対向してケーブルの支持線Csを部分的に係合する係合凹部7,14を設ける。また、前記電柱D側の前記内側挟持板1には、前記支持ボルト31に螺合したナット32を締付けるとき、電柱Dの前記周側面に接する一対の、電柱長手方向に沿う突条5,5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用ケーブルとして用いられている自己支持型ケーブルの支持線等の支持線を電柱間に吊架する際に用いる電柱用吊架金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
支持筒部を備えた内側挟持板と外側挟持板の相対向面に溝部を設け、該溝部に自己支持型ケーブルの支持線を部分的に係合して、前記両挟持板を締付けボルトで互いに締付ける一方、内側挟持板の前記支持筒部に固定ボルトを挿通させ、該固定ボルトの先端を電柱面に設けたねじ穴に螺合して、内側挟持板を電柱に固定するようにした構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−54428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例は、内側挟持板に支持筒部を設け、この支持筒部に固定ボルトを挿通させて電柱面のねじ穴に螺合して電柱に固定する構造を採用するため、電柱の任意の個所に取付けるには、ねじ穴形成という煩雑な作業をする必要があり、実用性に欠ける。また、単一な固定ボルトで金具全体を電柱に固定する構造なので、風圧等が原因で、金具全体が固定ボルトを軸として揺(回)動してしまい、ケーブルに支障を来たす場合がある。
【0005】
本発明は、このような従来例の欠点に着目し、使用勝手の良好な、ケーブル支持線の電柱用吊架金物を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
長手方向の両側に設けた一対の挿通孔に挿通させる締付けボルトと、これに螺合するナットによって互いに相対向させて締付ける内外一対の挟持板を備え、各挟持板には、前記挿通孔間に位置し、しかも、電柱の周側面に突設した支持ボルトを挿通させる挿通孔と、下端に互いに相対向してケーブルの支持線を部分的に係合する係合凹部を設けると共に、前記電柱側の前記内側挟持板には、前記支持ボルトに螺合したナットを締付けるとき、電柱の前記周側面に接する一対の、電柱長手方向に沿う突条を設けた構成とするのである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電柱側に備えたボルトを利用して電柱に取付けるものであるから、該ボルトを電柱面に装置していないときは、公知の電柱用バンド(のボルト)を利用して取付けることができ、取付けた状態にあって、突縁の存在によって内側挟持板が防傾材として働き、風圧などによる揺動を防いで、当初の状態を維持し、揺動による支障がケーブルに生じることのない、支持線の安定した吊架状態を期待できる吊架金物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第一の使用例を示す平面図。
【図2】図1の一部拡大図。
【図3】図2の正面図。
【図4】図2の側面図。
【図5】図2のx−x線断面図。
【図6】第二の使用例を示す平面図。
【図7】図6の一部拡大図。
【図8】内側挟持板の背面図。
【図9】内側挟持板の平面図。
【図10】内側挟持板の底面図。
【図11】内側挟持板の側面図。
【図12】外側挟持板の正面図。
【図13】外側挟持板の平面図。
【図14】外側挟持板の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る吊架金物Aは、電柱間にケーブルを吊架するに際し、該ケーブルを支持する支持線(メッセンジャーワイヤー)を、前記電柱に引留めるために用いるもので、図示の場合は、支持線Csとケーブル本体Caを一体にした自己支持型ケーブルC(だるま型ケーブル)を、支持線Cs部において引留める吊架金物を示すが、所謂ケーブルと別体の支持線に対しても、本吊架金物Aは適用できる。
【0010】
また、本発明に係る吊架金物Aは、電柱D側に配する内側挟持板1と、該内側挟持板1の外側に重ね合わせる外側挟持板2および該挟持板1,2同士を互いに締付けて前記支持線Csを挟持させる一対の締付けボルト3,3とこれらに螺合する締付けナット4とで構成する。
【0011】
内側挟持板1は、中央の設置板部1aの左右両側に締付け板部1b,1bを配した、全体として横長方形状の板体で成り、左右方向の中央部を外側面(電柱Dを背にする面)から内側面(電柱D側の片面)方向に浅溝状に膨出させて設けた前記設置板部1aの両側端に、前記電柱Dの長手(縦)方向に沿う、一対の突条5を断面三角状にして前記内側面1´´方向に膨出させて設けてある。そして、この突条5を介して設置板部1aの両側に連設した締付け板部1bの上端に受圧部6を、下端に係合凹部7をそれぞれ設けてある。受圧部6は、前記締付け板部1bの上端に突設した舌状片の基部から先端にかけて前記外側面1´側から内側面1´´方向に弯曲状に凹入させて構成し、また、係合凹部7は締付け板部1bの外側面溝状に凹入させて設けたものである。そして、前記設置板部1aの中央部には支持ボルトを構成する接続ボルト31又は通しボルト41の挿通孔9を、締付け板部1bの中央部には前記締付けボルト3(の角根部係合)の挿通孔10を設けてある。
【0012】
外側挟持板2は、中央の緊締受板部2aの左右両側に締付け板部2b,2bを配した、全体として横長方形状の板体で成り、左右方向の中央部を外側面から内側面方向に浅く膨出させて設けた前記緊締受板部2aの中央に、内側挟持板1の設置板部1aに設けた挿通孔9と一致する挿通孔11を設け、緊締受板部2aの左右両側の前記締付け板部2b,2bの中央部にも、内側挟持板部1bに設けたと同様の挿通孔12を設けてある。そして、締付け板部2bの上端に突設した舌状片を、前記外側面2´から内側面2´´方向にL字形に屈曲して係止片13を設けてある。この係止片13は、前記ボルト3,3で締付けたとき、その先端が内側挟持板1の前記受圧部6に接して支点となって係合凹部7,14に係合した支持線Csの挟持が尚一層確実に行われるようにしてある。
【0013】
外側挟持板2を構成する緊締受板部2aと締付け板部2bの下端部には、内側挟持板1に設けた係合凹部7に相対して配する係合凹部14を設け、係合凹部7,14のそれぞれに部分的に係合した支持線Csは、係合凹部7,14に部分的に接して両挟持板1,2に挟持され、その状態が維持される。
【0014】
第一の使用例
図1乃至図5は、既設の電柱用バンドBに備えた接続ボルト31を利用して吊架金物Aを電柱Dに取付け、自己支持型ケーブルCの支持線Csを電柱に引留めた一例を示す。
【0015】
すなわち、一対のブレード30,30を先端部において接続ボルト31(「請求項」の支持ボルトに対応)と、これに螺合するナット32とで接続した一対二組を電柱Dに巻回し、接続ボルト31で接続した一対二組のブレード30,30.30,30の隣接する緊締部同士を、緊締ボルト33と、該ボルト33に螺合するナット34によって連結して構成した、所謂ブレード4片式の、電柱用(自在)バンド(図示のものは、一方の緊締ボルト33に回動自在に支持させてシンブル35に電柱Dの支線Sの上端を係止させるために適用した支線用のバンドを示す)の一方の前記接続ボルト31を利用して電柱Dに吊架金物Aを取付け、該吊架金物Aに支持線Csを組付けたものである。
【0016】
吊架金物Aを前記電柱用バンドBを介して電柱Dに組付けるには、まず、ナット4と締付けボルト3とで内、外の挟持板1,2を互いに組付けて構成した吊架金物Aを、締付けナット4を緩めた状態にする一方、電柱Dに締付けた電柱用バンドBの、一方の接続ボルト31に螺合した接続ナット32を該接続ボルト31より外した状態にする。そして、ナット32を外した接続ボルト31に、締付けナット4を緩めて該ナット4と締付けボルト3とで内、外の挟持板1,2を互いに組付けて構成した吊架金物Aの前記内、外の挟持板1,2を、該挟持板1,2に互いに一致するように設けた挿通孔9,11を係合するようにして(接続ボルト31を挿通孔9,11に相対的に挿通させるようにして)組合わせ、挟持板1,2に設けた相対向する係合凹部7,14間にケーブルCの支持線Csを係合するようにして締付けボルト3に螺合した締付けナット4を締付けると(このとき、内側挟持板1の受圧部6に外側挟持板2の係止片13の先端が圧接し、締付けにより該圧接部が支点となって各挟持板1,2は回動しようとし、該挟持板1,2の係合凹部7,14側は互いに近接して支持線Csを挟持する。)、吊架金物Aは支持線Csを挟持するようにして該支持線Csに組付けられる。
【0017】
この状態で、接続ボルト31に沿わせて吊架金物A全体を、電柱D面に押し付け、突条5,5が電柱Dの長手方向に沿うように位置調整してバンド表面に当てがった状態を保持して、接続ナット4を接続ボルト31に再度螺合して締付けることにより、支持線Csは電柱用バンドBに取付けられた吊架金物Aを介して電柱Dに引留められる。
【0018】
第二の使用例
図6および図7は、第一の使用例の接続ボルト31に代えて電柱Dに設けた通しボルト41(「請求項」の支持ボルトに対応)を用い、該通しボルト41と、これに螺合するナット42によって吊架金物Aを電柱Dに取付け、支持線Csの引留めを図るようにしたもので、前記の通り、バンド体に用いた接続ボルト31に代えて、バンド体を省略して適用する通しボルト41を用いた点だけが第一の使用例と異なるだけで、残余の点は第一の使用例と同様なのでその説明は省略する。
【符号の説明】
【0019】
1 内側挟持板
2 外側挟持板
3 締付けボルト
4 締付けナット
5 突条
7 係合凹部
9,10,11,12 挿通孔
14 係合凹部
31 ボルト
32 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両側に設けた一対の挿通孔に挿通させる締付けボルトと、これに螺合するナットによって互いに相対向させて締付ける内外一対の挟持板を備え、各挟持板には、前記挿通孔間に位置し、しかも、電柱の周側面に突設した支持ボルトを挿通させる挿通孔と、下端に互いに相対向してケーブルの支持線を部分的に係合する係合凹部を設けると共に、前記電柱側の前記内側挟持板には、前記支持ボルトに螺合したナットを締付けるとき、電柱の前記周側面に接する一対の、電柱長手方向に沿う突条を設けた、ケーブル支持線吊架金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−80691(P2012−80691A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224666(P2010−224666)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(592157076)イワブチ株式会社 (80)
【Fターム(参考)】