説明

ケーブル等の長尺体を水底に敷設する工法及び装置

【課題】
水底の起伏や潮流、波高等の外部要因に左右されず、長尺体を所定の位置に正確に敷設可能とし、既設の長尺体或いは複数の長尺体との相関関係を保持しながら敷設するようにせんとするものである。
【解決手段】
敷設作業船からほぼ垂直に吊り下げられ、高さ位置を任意に調整可能な長尺体分配装置により長尺体を水底近くまで案内し、水底近くにおいて長尺体を繰り出すことにより、長尺体を所定の敷設位置に正確に敷設可能とするようにしたことを特徴とする。長尺体分配装置には、長尺体を捕捉して自由な動きを拘束するガイドスライダが少なくとも一つ設けられており、作業船から繰り出された長尺体は、長尺体分配装置により水底近くまでほぼ垂直に降下させられ、ガイドスライダの下端から水底に繰り出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線や通信ケーブル等の各種長尺体を、比較的浅い水底に敷設する敷設工法と敷設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本土と離島間や離島同士の間或いは湖等のように比較的浅い水底に、電線や通信ケーブル等の各種長尺体をケーブル敷設台船のようなケーブル敷設作業船によって、水底に敷設する方法及び装置は公知である。このようなケーブル敷設方法は、例えば、特許文献1、2或いは、本出願人等によって先に開示された特許文献3等に開示されている。従来のケーブル敷設台船は、平坦な上面を有した喫水の浅い構造であり、平坦な上面にケーブルをコイル状に巻回して収容するケーブル収容装置と、各ケーブルを海中に繰り出すケーブル繰出装置とが配設されており、ケーブルは作業船の船尾から繰り出されて、自重により水底に降下し、水底に沈下して敷設される。
【0003】
自重で沈下するケーブルは、作業船の進行速度や、浮力、潮流等により沈下位置と繰り出し位置との間においてズレが生ずるため、所定の位置に正確に敷設することが極めて困難であった。このため、従来は沈下したケーブルを作業員が潜水して敷設位置の調整を行っている。しかしながら、かかる潜水作業員による調整は大きな人出と作業時間及びコストの増大をもたらしている。特に既に多くのケーブルが敷設されているため新設ケーブルの敷設スペースが限定されているような比較的水深の浅い本土と島礁間にケーブルを敷設する場合や三相交流電力を送電するための三相交流送電用ケーブルを海底に敷設する場合には、新設ケーブルと旧設ケーブルとの相関位置あるいは三相交流ケーブルの各ケーブルの相関位置を正確に取る必要があるが、従来の敷設作業ではこのようなケーブルの相関位置を正確に取る敷設作業は、多くの潜水作業員等を要する作業であった。
【0004】
特許文献1、2は、潮流等によるケーブルのズレを回避するために、ケーブルの張力を監視する方法を提案するものであるが、これでもケーブルの相関位置を正確に保持した敷設を可能とするものではない。特に前記した本土と島礁間にように、複数の既設のケーブルが敷設されており、新設ケーブルのスペースが限られた状況においては、既設のケーブル位置の所在を確認しつつ敷設する事が出来ないため、当初の設計通りにケーブルの離隔を保てない問題が生ずる。又、ケーブルの相間間隔の確認、調整は潜水作業員が行なうので、潮流等の影響で潜水出来ない場合があり、その分、工程が長くなり潜水作業員の負担も大きくなるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−344624号公報
【特許文献2】特開平6−91694号公報
【特許文献3】特開2004−166433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の長尺体の自重による自由降下を利用した敷設方法では、電力ケーブル等の長尺体を、所定の位置に正確に敷設することが極めて困難であるため、本発明は、長尺体を水底近くまで案内装置で拘束して降下させ、案内装置と水底との離隔を可能な限り少なくして、水底の起伏や潮流による敷設位置のズレを回避することを課題とする。
【0007】
また、本発明は、新設の長尺体と旧設の長尺体間の相関関係を保持しながら、敷設することを可能とする。更に、三相電力ケーブルのような複数の長尺体間を、水底の起伏や潮流、波高等の外部要因に左右されず、ほぼ一定の相間間隔を保ちながら同時に敷設することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、敷設作業船からほぼ垂直に吊り下げられ、高さ位置を任意に調整可能な長尺体分配装置により長尺体を水底近くまで案内し、水底近くにおいて長尺体を繰り出すことにより、長尺体を所定の敷設位置に正確に敷設可能とするようにしたことを特徴とする。長尺体分配装置には、長尺体を捕捉して自由な動きを拘束するガイドスライダが少なくとも一つ設けられており、作業船から繰り出された長尺体は、長尺体分配装置により水底近くまでほぼ垂直に降下させられ、ガイドスライダの下端から水底に繰り出される。分配装置に、複数のガイドスライダを互いに間隔を存して設けることにより、それぞれのガイドスライダによって複数の長尺体をガイドスライダの間隔に相応する相間間隔を保持しつつ水底近くまで案内して長尺体分配装置から繰り出し、複数の長尺体を所定の相関関係を保持して敷設することが可能となる。ガイドスライダは、好ましくは複数のリングを間隔をおいて筒状に配置した長尺体案内部からなるが、これに限られるものではなく、長尺体を作業船上から水底近くまで捕捉して、作業船の進行速度、潮流等により長尺体が何等の拘束もなく自由に動くのを抑止し得るようなものであればよい。
【0009】
長尺体分配装置は、作業船上に設置されたウインチ等の吊下げ装置に連結される水平フレームと該水平フレームに取り付けられた少なくとも一つのガイドスライダからなり、水圧、潮流の影響を回避するために好ましくは金属若しくはプラスチック製のパイプ材で構成される。ガイドスライダは、その内部に長尺体を収納するために、開閉自在に構成される。また、ガイドスライダの上部には、作業船からシューターを介して繰り出された長尺体をガイドスライダに案内するためのベルマウスと称せられる案内手段が配置される。水平フレームは、水中において分配装置が安定な水平位置を保持しうるために、所定の水平長さを有し、幅方向に翼状に張り出している。分配装置は、後述するように各種計測装置や視認手段あるいは、位置測定装置等の情報に基づいて吊下げ装置を制御し、吊下げ深さ、前後左右の傾き等を修正し、正確に所定の敷設位置に調整して長尺体の敷設を行い得るようにする。
【0010】
長尺体分配装置には、好ましくは少なくとも一つの水中カメラが装置され、繰り出された長尺体の状況、位置、水底の状況等を作業船上において確認可能とし、既設の長尺体との相関関係あるいは敷設する長尺体相互の相関関係を確認し、その調整を作業船の操船あるいはガイドスライダの位置調整により可能とする。更に、長尺体分配装置には、必要に応じてローリング・ピッチング検出器、ジャイロコンパス、水中測位装置、相間間隔監視ソナー、高度計、水深計等の各種計器を設置して、長尺体からの張力情報、長尺体の降下状況、分配装置の前後左右の傾斜や回転方位、水中における分配装置と作業船と相対位置関係、分配装置から繰り出された長尺体の間隔、分配装置の水深等の情報を収集し、その情報に基づいて、該作業船の操船を制御管理すると共に、長尺体分配装置を上下に昇降させて、長尺体分配装置を水底からの距離をほぼ一定に保ちながら長尺体をより正確に敷設する。
【0011】
敷設作業船は、船上に送電ケーブルや通信ケーブル等の長尺体をそれぞれ繰り出し可能に収容する複数の長尺体収容装置を備え、該収容装置から繰り出されたケーブルを前記分配装置を介して水底に案内し敷設することが出来る。敷設作業船は、好ましくは喫水の浅い敷設作業台船からなり、地球位置測位システム(GPS)を有した操船支援装置(DPS、ダイナミックポジショニングシステム)と、台船の前後左右の少なくとも4箇所に配置されたスラスターと称せられる船体操船手段とにより操船制御される。しかしながら、敷設作業船は、喫水の浅い作業台船に限られるものではなく、通常の喫水を有する作業船であっても良く、また、DPSのような操船支援装置を備えていることを必須とするものでもない。作業台船は、通常タグボートにより曳航され、スラスター若しくは複数の錨で繋留しつつ錨ワイヤを操作して台船を前進させるアンカリング方法で正確に位置を規定されるようになっているが、これに限られない。エンジン・プロペラ付の台船、プッシャーボート付の台船等であっても良い。これらの作業船を用いる場合には、アンカリング方法によりその位置を正確に規定することが好ましい。
【0012】
ガイドスライダは、滑り台状に略湾曲して突き出し台形状に形成され、回転軸を介して長尺体分配装置に枢着され、該回転軸を中心として略水平面内を略90°回動させて、開放可能に構成され、ガイドスライダを開放してケーブルを長尺体分配装置に装着している。ベルマウスは、上下に貫通した略バスケット状に形成され、その側面の一部が開閉可能に構成される。ベルマウスも、ガイドスライダや水平フレームと同様にパイプ材で形成されている。
【発明の効果】
【0013】
この本発明は、敷設作業船からほぼ垂直に吊り下げられ、高さ位置を任意に調整可能な長尺体分配装置のガイドスライダにより長尺体を水底近くまで案内し、水底近くにおいて長尺体を繰り出すようにしてあるので、長尺体の敷設において、長尺体の弛みを少なくし、弛みによる敷設位置のズレを抑制することが出来、長尺体を所定の敷設位置に正確に敷設することが可能となる。また、所定の相間間隔を存して配置された複数のガイドスライダを用いることにより、複数の長尺体の相関関係を保持しながら敷設することが可能となる。更に、分配装置に水中カメラ等を取り付けることにより、敷設位置を確認しながら敷設作業を行うことが出来、既設のケーブルとの相関関係や、三相電力ケーブルのような相関関係を保持しながら敷設することが必要なケーブルの敷設を、潜水作業員による相間間隔の調査回数を極端に減らして潜水作業員の作業負担を軽減しながら、複数の長尺体を同時に敷設でき、敷設作業時間を大幅に短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、以下に添付図面(図1乃至13)を参照しながら詳細に説明する。本実施態様の長尺体水底敷設装置(1)は、比較的水深の浅い水域において、送電ケーブル(PC)や通信ケーブル(CC)等の長尺体(L)を敷設ルートに沿って水底に敷設するための敷設作業船であり、敷設作業船は、好ましくは地球位置測位システムを有する操船支援装置(DPS、ダイナミックポジショニングシステム)によって制御され、ダイナミックポジショニングシステムからの信号により、台船の前後左右に少なくとも4台設置されたスラスターを駆動させて前進、位置の調整を行い得る自力走行可能な喫水の浅い敷設作業台船(2)からなる。
【0015】
敷設作業船は、かかるスラスターを備えた喫水の浅い作業台船に限られるものではない。先端に錨が連結された複数の錨ワイヤを操作して前進するアンカリング方法により移動する台船や、エンジン・プロペラ付台船、プッシャーボート付の台船であってもよく、更に通常の喫水を有する自航船であっても良い。要するに、長尺体を敷設する微速度で移動することが出来、前後左右に位置を微調整可能な機能を有する作業船であれば、如何なる構造、機構を有する船であっても良い。
【0016】
図1乃至3を参照して、敷設作業台船(2)は、喫水が浅く、前後方向に長く、上面が平坦で、該上面の船首(3)から前後方向における中央部にわたる領域に、複数の長尺体(L)をそれぞれ繰り出し可能に巻回収容する複数の長尺体収容装置(4a)(4b)(4c)(4d)が配置され、それら長尺体収容装置(4a)(4b)(4c)(4d)から繰り出される長尺体(L)が、それぞれ長く大きなほぼ直線状に傾斜した滑り台状に形成される長尺体通路(5a)(5b)(5c)を介して、該敷設作業台船(2)の後方に向かって案内される。
【0017】
長尺体収容装置(4a)(4b)から繰り出される長尺体は、何れも送電ケーブル(PC)であって、それらは弧状の通路において縒りを戻されつつ台船上を水平に延びる長尺体通路(5a)(5b)を通じて後方に案内される。長尺体収容装置(4c)(4d)から繰り出される長尺体は、通信ケーブル(CC)であって、長尺体通路(5c)を通じて後方に案内される。
【0018】
敷設作業台船(2)の後方付近まで案内された長尺体(L)は、長尺体繰出装置(6a)(6b)(6c)(6d)によって、さらに後方に送られ、敷設作業台船(2)の最後部に配設された長尺体繰出シューター(7)から水中に繰り出される。長尺体繰出シューター(7)の下部には、長尺体(L)の張力管理を行なうための長尺体張力管理装置(9)が配設される。
【0019】
敷設作業台船(2)の最後部の長尺体繰出シューター(7)の上方位置には、ワイヤ(10a)(10b)を巻回自在に構成された吊下げ装置(11a)(11b)が船幅方向の左右それぞれの適宜部位に一台ずつ取り付けられた架台(12)が配設され、該吊下げ装置(11a)(11b)に巻回自在に固着されたワイヤ(10a)(10b)の下端には、長尺体(L)を水底付近まで案内する昇降式長尺体分配装置(13)が取り付けられ、該昇降式長尺体分配装置(13)を自在に昇降可能とする昇降手段をなしている。
【0020】
また、昇降式長尺体分配装置(13)は、敷設作業台船(2)の船首(3)の中央に配設された巻回装置(14)から延出したワイヤ(15)の先端を、該昇降式長尺体分配装置(13)の左右に連結して、該敷設作業台船(2)の前進時等に該昇降式長尺体分配装置(13)が受ける後方への揺動と垂直面内の揺動を規制している。
【0021】
図4乃至8を参照して、昇降式長尺体分配装置(13)は、水圧や潮流の影響を少なくするために、金属製若しくはプラスチック製のパイプ材で形成される水平フレームと、ガイドスライダとから構成される。水平フレーム(16)は、昇降式長尺体分配装置(13)の水中における安定性を向上させるためのものであり、敷設作業台船(2)の船幅とほぼ同じ長さを有し、左右両端には、作業台船の船尾両側に配置された前記吊下げ装置(11a)(11b)からのワイヤ(10a)(10b)がそれぞれ連結され、昇降式長尺体分配装置(13)の昇降を可能とするように吊り下げられている。
【0022】
水平フレーム(16)の下部には、その内部に長尺体(L)を通して案内するための三つのガイドスライダ(17a)(17b)(17c)が配設される。各ガイドスライダ(17a)(17b)(17c)の上端の入口付近には、それぞれ配設されるベルマウス(18a)(18b)(18c)を有する。各ガイドスライダ(17a)(17b)(17c)は、敷設作業台船(2)の船尾から後方に向かって滑り台状に略湾曲して突き出した滑り台形状に形成され、それら滑り台形状の各ガイドスライダ(17a)(17b)(17c)の湾曲部(19a)(19b)(19c)には、それぞれ適宜間隔で複数のローラ(20)が水平に配設され、ガイドスライダ内を案内されるケーブルの損傷を防止している。中央部に位置するガイドスライダ(17c)は、比較的小径の通信ケーブルを案内するためのスライダであって、屈曲度を大きくとることができるために、より水底に近い位置でケーブルを放出させるように左右のガイドスライダよりも長く形成されている。通信ケーブルは電力ケーブルに比べ重量が軽いので同じ位置から放出すると水底での離定点の位置が電力ケーブルから離れた後方位置となり潮流等の影響を受けやすく、管理も難しくなるので、より水底に近い位置でケーブルを放出させるように、左右の電力ケーブル用ガイドスライダより長く形成されている。
【0023】
左右のガイドスライダ(17a)(17b)は、三相交流の電力ケーブルを案内するためのスライダであり、その間隔は電力ケーブルの相間間隔に相当しており、図示の実施例では、三相ケーブルの内の二本のケーブルを敷設するように構成されており、この二本のケーブルを敷設後再度、該敷設したケーブルに沿って本装置により、更に二本のケーブルを敷設して、合計4本のケーブルを図13に示すように敷設し、予備ケーブル(PC4)を備えた三相ケーブル(PC1,PC2,PC3)の敷設を達成するようにしてある。これら三つのガイドスライダ(17a)(17b)(17c)の内部に通したそれぞれの長尺体(L)を、それらの相間間隔を一定に保持しながら自在に繰り出すことが出来るように構成される。尚、ガイドスライダの数や間隔は敷設するケーブルの種類や本数に応じて適宜変更することが可能である。
【0024】
各ガイドスライダ(17a)(17b)(17c)は、略鉛直方向の回転軸を介して昇降式長尺体分配装置(13)に枢着され、該回転軸(21a)(21b)(21c)を中心として略水平面内を略90°回動させて、その後端部を船幅方向に向けて開放し得るように構成されると共に、それらの直上に配設され、上下に貫通した略バスケット状に形成される各ベルマウス(18a)(18b)(18c)が、その側面の一部が開閉可能に構成され、それらガイドスライダ(17a)(17b)(17c)とベルマウス(18a)(18b)(18c)を開放することによって、長尺体(L)を容易に昇降式長尺体分配装置(13)に装着し得、装着後にはそれらガイドスライダ(17a)(17b)(17c)とベルマウス(18a)(18b)(18c)とを閉じて元に戻すことによって、昇降式長尺体分配装置(13)内に複数の長尺体(L)を所定の間隔で通過させることができるように構成される。
【0025】
図示の実施例においては、2本の電力ケーブルと1本の通信ケーブルを敷設するための装置について説明したが、単一のガイドスライダ(17)を備える長尺体分配装置であっても良いことは勿論である。この発明の敷設方法及び装置によれば、ガイドスライダを備える長尺体分配装置を吊下げ装置により、作業船からほぼ垂直に水底近くまで案内するようにしてあるので、分配装置の位置を作業船の位置や吊下げ位置の制御により、ケーブルの敷設位置を正確に制御することが可能となる。この結果、たとえば、既に多くのケーブルが敷設されおり、新規ケーブルの敷設位置が限定されているような状況においても、水中カメラ等の視認装置を利用することにより、既設ケーブルとの相関位置を保持しながらより正確に新規ケーブルの敷設が可能となる。また、前述のように複数のガイドスライダを取り付ければ、複数のケーブルを相関位置を保持しながら敷設することが可能となる。
【0026】
図9乃至11を参照して、長尺体分配装置(13)には、その各部に、長尺体(L)の降下状況を監視する水中カメラ(22a)(22b)(22c)(22d)と、このカメラ視野を照らす水中ライト(23a)(23b)(23c)と、長尺体分配装置(13)の前後左右の傾斜や回転方位を計測するローリング・ピッチング検出器及びジャイロコンパス(24)と、水中における長尺体分配装置(13)と敷設作業台船(2)との相対位置関係を把握するための水中測位装置(25)と、長尺体分配装置(13)から繰り出された各長尺体(L)同士或いは既設ケーブルとの間隔を監視する相間間隔監視ソナー(26)と、長尺体分配装置(13)の水深を計測する高度計(27)及び水深計(28)等のセンサ機器類が配設され、これらのセンサ機器類からの情報と、長尺体繰出シューター(7)の下部に配設された長尺体張力管理装置(9)から得られる張力情報とに基づいて、敷設作業台船(2)上に配設された制御室(29)で該敷設作業台船(2)の操船及び昇降式長尺体分配装置(13)の操作を制御管理するように構成される。尚、水中カメラ(22d)は、ライトが付加された可動式のものである。
【0027】
こうして、昇降式長尺体分配装置(13)を水中に潜行させて長尺体(L)を敷設する際には、該昇降式長尺体分配装置(13)を操作制御しながら上下動させて、その水底からの距離をほぼ一定に保ちながら複数の長尺体(L)を同時に敷設する。
【0028】
長尺体敷設作業の開始時には、図12に示すように、先ず敷設作業台船(2)に載置された長尺体(L)に、多数のブイ(30)を取り付けて、その先端をタグボートで陸地まで曳航して、陸地の所定の固定部に連結する。この長尺体(L)の陸上げ作業は長尺体(L)毎に個別に行われる。そして、敷設作業台船(2)の船尾において、水中に自重で沈んだ各長尺体(L)を、予め開放しておいた昇降式長尺体分配装置(13)のガイドスライダ(17a)(17b)(17c)とベルマウス(18a)(18b)(18c)の内部に収納し、閉止することによって該昇降式長尺体分配装置(13)内に複数の長尺体(L)を、所定間隔で挿通した状態とする。
【0029】
その後は、地球位置測位システムを有した操船支援装置によって該敷設作業台船(2)を制御しながら、複数のスラスターを操作して該敷設作業台船(2)を前進させつつ、長尺体(L)を敷設作業台船(2)の後方水中に繰り出して、敷設ルートに沿って徐々に水底に敷設する。
【0030】
尚、本実施態様の長尺体(L)としては、図13に示すように、先ず、第一回目の敷設作業(S1)時に、左右のガイドスライダ(17a)(17b)にはそれぞれ三相交流用の送電ケーブル(PC1)(PC2)の内の二本を通し、中央のガイドスライダ(17c)には、通信ケーブル(CC)を通して敷設し、次いで第一回目と同等の敷設ルートに沿って、第二回目の敷設作業(S2)として、左右のガイドスライダ(17a)(17b)にはそれぞれ三相交流用の残りの1本のケーブル(PC3)と予備ケーブル(PC4)を一本ずつ通し、中央のガイドスライダ(17c)には、通信ケーブル(CC2)を通して敷設する。これによって、総計で、三相交流用の三本の送電ケーブル(PC1)(PC2)(PC3)と、二本の通信ケーブル(CC)並びに一本の予備の送電ケーブル(PC4)を敷設することが出来る。
【0031】
本実施態様の長尺体水底敷設装置やこれを利用した長尺体の水底敷設工法は、以上説明したように構成されるものであるが、勿論、必ずしもこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において様々な変形した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】長尺体水底敷設装置全体の側面図
【図2】同長尺体水底敷設装置全体の平面図
【図3】同長尺体水底敷設装置全体の背面図
【図4】同長尺体水底敷設装置における敷設作業台船の船尾周辺の斜視図
【図5】同長尺体水底敷設装置の昇降式長尺体分配装置の斜視図
【図6】同昇降式長尺体分配装置のガイドスライダを90°回転させつつ、ベルマウスの側面を開放している状態を示す斜視図
【図7】図6の状態の昇降式長尺体分配装置に長尺体を設置して通す過程を示す斜視図
【図8】図7の状態からガイドスライダとベルマウスを元の位置に戻して昇降式長尺体分配装置に長尺体を設置した状態を示す斜視図
【図9】昇降式長尺体分配装置に配設される各種センサ機器類の設置位置を示す平面図
【図10】同昇降式長尺体分配装置に配設される各種センサ機器類の設置位置を示す側面図
【図11】同昇降式長尺体分配装置に配設される各種センサ機器類の設置位置を示す正面図
【図12】長尺体を陸に固定するために、多数のブイが取り付けられた長尺体を陸地に送り出している状態を示す敷設作業台船の船尾側から見た斜視図
【図13】第一回目の敷設作業によって敷設される長尺体と、第二回目の敷設作業によって敷設される長尺体を示す敷設模式図
【符号の説明】
【0033】
1 長尺体水底敷設装置
2 敷設作業台船
3 船首
4a 長尺体収容装置
4b 長尺体収容装置
4c 長尺体収容装置
4d 長尺体収容装置
5a 長尺体通路
5b 長尺体通路
5c 長尺体通路
6a 長尺体繰出装置
6b 長尺体繰出装置
6c 長尺体繰出装置
6d 長尺体繰出装置
7 長尺体繰出シューター
8 船尾
9 長尺体張力管理装置
10a ワイヤ
10b ワイヤ
11a 吊下げ装置
11b 吊下げ装置
12 架台
13 昇降式長尺体分配装置
14 巻回装置
15 ワイヤ
16 水平フレーム
17a ガイドスライダ
17b ガイドスライダ
17c ガイドスライダ
18a ベルマウス
18b ベルマウス
18c ベルマウス
19a 湾曲部
19b 湾曲部
19c 湾曲部
20 ローラ
21a 回転軸
21b 回転軸
21c 回転軸
22a 水中カメラ
22b 水中カメラ
22c 水中カメラ
22d 水中カメラ
23a 水中ライト
23b 水中ライト
23c 水中ライト
24 ローリング・ピッチング検出器及びジャイロコンパス
25 水中測位装置
26 相間間隔監視ソナー
27 高度計
28 水深計
29 制御室
30 ブイ
PC 送電ケーブル
PC1 送電ケーブル
PC2 送電ケーブル
PC3 送電ケーブル
PC4 送電用予備ケーブル
CC 通信ケーブル
L 長尺体
S1 第一回目の敷設作業
S2 第一回目の敷設作業


【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷設作業船からほぼ垂直に吊下げられ、高さ位置を任意に調整可能な長尺体分配装置により長尺体を水底近くまで案内し、水底近くにおいて長尺体を長尺体分配装置から繰り出して、長尺体を所定の敷設位置に敷設するようにしたことを特徴とするケーブル等の長尺体の敷設工法。
【請求項2】
長尺体分配装置には、長尺体を捕捉して自由な動きを拘束しつつ案内する少なくとも一つのガイドスライダが設けられており、敷設作業船から繰り出された長尺体を水底近くまで案内し、水底への敷設のためにガイドスライダの下端から水底に繰り出すことを特徴とする請求項1記載の敷設工法。
【請求項3】
ガイドスライダが少なくとも水平方向に所定の相間間隔を存して複数設けられ、該複数のガイドスライダにより複数の長尺体を相関関係を保持しつつ同時に案内し、敷設するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の敷設工法。
【請求項4】
敷設作業船が、地球位置測位システム(GPS)を有した操船支援装置(DPS)によって制御される喫水の浅い台船からなり、複数のスラスター若しくはアンカリング方法で微速で位置を調整しつつ前進させて敷設作業を行うようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の敷設工法。
【請求項5】
長尺体からの張力情報、長尺体の降下状況の情報、分配装置の前後左右の傾斜や回転方位情報、水中における分配装置と作業船の相対位置情報、該分配装置から繰り出された長尺体と他の長尺体との間隔の情報、分配装置の水深の情報等を収集し、これらの情報に基づいて、敷設作業船の操船を制御管理すると共に、長尺体分配装置を上下動させて該長尺体分配装置の水底からほぼ一定の高さ位置に保つようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の敷設工法。
【請求項6】
複数の送電ケーブルや通信ケーブル等の長尺体をそれぞれ繰り出し可能に収容する長尺体収容装置を備え、前進させながら長尺体収容装置に収容した長尺体をその後方水中に繰り出して敷設ルートに沿って水底に敷設する敷設作業船からなり、該敷設作業船は、吊下げ手段によって昇降自在に吊り下げられた長尺体分配装置を備え、該分配装置は、長尺体を捕捉し自由な動きを拘束しつつ長尺体を水底近くまで案内する少なくとも一つのガイドスライダを備えていることを特徴とする長尺体の敷設装置。
【請求項7】
長尺体分配装置に、複数のガイドスライダが所定の相間間隔を存して配設され、複数の長尺体をそれぞれ個別にガイドスライダで案内して、長尺体の相関関係を保持しつつ同時に水底に繰り出して敷設するようにしたことを特徴とする請求項6記載の敷設装置。
【請求項8】
長尺体分配装置には、長尺体の降下状況を監視する水中カメラと、このカメラ視野を照らす水中ライトと、該分配装置の前後左右の傾斜や回転方位を計測するローリング・ピッチング検出器及びジャイロコンパスと、水中における該分配装置と前記台船と相対位置関係を把握するための水中測位装置と、該分配装置から繰り出された各長尺体同士の間隔を監視する相間間隔監視ソナーと、該分配装置の水深を計測する高度計及び水深計等のセンサ機器類が配設されることを特徴とする請求項6又は7記載の敷設装置。
【請求項9】
長尺体分配装置は、該分配装置の水中における安定性を向上させるために、前記作業船の船幅方向に延びた水平フレームと、該分配装置の内部に長尺体を通して案内するための複数のガイドスライダと、該ガイドスライダの入口にそれぞれ配設されるベルマウスとを有し、ガイドスライダは前記敷設作業船の船尾から後方に向かって滑り台状に略湾曲して突き出した滑り台形状に形成され、それら滑り台形状の各ガイドスライダの湾曲部には、それぞれ適宜間隔で水平に固設された複数のローラを有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の敷設装置。
【請求項10】
滑り台状に略湾曲して突き出した滑り台形状に形成される各ガイドスライダは、略鉛直方向の回転軸を介して昇降式長尺体分配装置に枢着され、該回転軸を中心として略水平面内を略90°回動させて、その後端部を船幅方向に向けて開放し得るように構成され、該ガイドスライダを開放することによって長尺体をガイドスライダ内に個別に挿入し得るようにしたことを特徴とする請求項9記載の敷設装置。
【請求項11】
ベルマウスは、上下に貫通した略バスケット状に形成され、その側面の一部が開閉可能に構成されることを特徴とする請求項9記載の敷設装置。
【請求項12】
吊下げ装置は、敷設作業船の船幅方向に間隔を存して配置される一対のウインチから構成され、ワイヤの先端を水平フレームの両側端に連結したことを特徴とする請求項9記載の敷設装置。
【請求項13】
長尺体分配装置は、敷設作業台船の船首の中央に配設された吊下げ装置から巻き取り及び繰り出し自在に延出したワイヤに連結され、該長尺体分配装置の揺動を抑制するようにしたことを特徴とする請求項9記載の敷設装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−55661(P2009−55661A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217657(P2007−217657)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(597093458)日本サルヴ▲ヱ▼ージ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】