説明

ケーブル誤接続検出装置及び方法

【課題】ケーブル接続された二重化通信システムにおけるケーブル誤接続検出装置及び方法を提供する。
【解決手段】ケーブル誤接続検出装置は、ケーブル(62,63)で接続して通信を行う二重化通信システム内の装置(12,13,15,16)の各々は、対向装置との間にインターフェース部(61)を備え、そのンターフェース部の各々は、対向装置から送信されたデータの中から、そのデータが運用装置から出力されたことを示す運用情報又は予備装置から出力されたことを示す予備情報をコピーして出力する運用・予備情報選択部(64)と、自装置が運用か予備かを識別するための情報を格納する運用・予備情報格納部(65)と、運用・予備選択部から出力された情報と運用・予備情報格納部に格納されている情報とを比較して自装置が対向装置と正常に接続されているかを判定するチェック部(66)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続された二重化通信システムにおけるケーブル誤接続検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信網等にて使用されている電子交換機等の基幹装置は、故障等により停止した場合、多くの人々に甚大な被害を及ぼすため、高い信頼性が求められている。そのため基幹装置では冗長構成をとり運用系が故障した場合、予備系に切り替わり装置としては安定して動作が行えるような構成を取っている。
【0003】
図1は従来の二重化通信システムの構成の一例を示すブロック図である。同図において、11は装置Aであり、運用系装置12と予備系装置13とを備えている。14は装置Bであり、運用系装置15と予備系装置16とを備えている。装置A及び装置Bは例えば電話回線用電子交換機等の基幹装置であり、毎日の24時間の間で障害が発生しては困る装置である。障害発生に対処するために、装置A及び装置Bは運用系(0系)と予備系(1系)の二重化構成となっている。
【0004】
このように、装置間インターフェース機能部で0系伝送路と1系伝送路の冗長構成をとっている場合では、片側装置のインターフェース機能部の運用系に故障が生じると、予備系に切り替わり、これに伴って、同時に対向装置B側のインターフェース機能部も運用系と予備系が切り替わり、常に運用系と運用系同士がケーブル接続されるようになっている。
【0005】
図2は図1に示した二重化システムにおける切り替え制御動作を説明するブロック図である。図示のように、インターフェース機能部の運用系と予備系を切替える場合には、切り替えを実行したい装置、例えば装置Aの切り替え制御部21から対向装置Bの切り替え制御部23に向かって運用系・予備系の切り替え制御用の情報が制御線201及び202、セレクタ22及び24を介して流れ、対向装置B側の切り替え制御部23から切り替え制御に対する応答が、応答信号線203及び204とセレクタ24及び22を介して切り替えを行いたい装置Aに流れることで実行される。この切り替え制御用の切り替え信号と切り替え制御に対する応答信号は運用系・予備系の両側に流れ、中には切り替え要求している現用伝送路が0系なのか1系なのかを示す情報や、予備伝送路へ接続している現用伝送路の番号や切り替え要求種別などが含まれている。
【0006】
図3は図1に示したシステムにおけるデータの流れを説明するブロック図である。上記のように、冗長構成をとっている場合には、通常データは運用系と予備系に同じものがコピーされ流れており、受信側にセレクタ24が存在し、予備系からのデータはセレクタ24で破棄され、運用系からのデータをのみが選択される。こうして、たとえ予備系のデータが遮断されてしまったとしても、支障をきたさないようになっている。
【0007】
実際の通信網構成では1台の基幹装置に対して、複数種の装置や同一種類の複数装置と接続されるようになる。装置間を接続するケーブルはUTPケーブルのように送信・受信を1本のケーブルで行うものと光ケーブルのように送信・受信を2本のケーブルで行うものなどある。しかしどちらのケーブルを使用した場合でも、対向する装置が多くなれば使用するケーブルの本数が増え、接続作業が複雑となる。
ケーブル接続作業が複雑になると、ケーブル接続作業にて誤接続を行う可能性が高くなる。ケーブル切断やケーブル抜けを検出する機能は伝送を行う部品に基本的に備わっており検出も容易である。しかし、ケーブルの誤接続があったとしても、ケーブルとしては接続されているので、ケーブル切断を検出する機能ではケーブルの誤接続は確認することが出来ない。
【0008】
図4はケーブル誤接続により装置Aの運用系12と装置Bの予備系16とが接続された状態を示すブロック図である。このように誤接続された状態において、装置Aの予備系装置1におけるデータを遮断する行為(リセット、カード交換またはセルフテストなど)を行うと、装置Aにおける運用系装置12からのデータは装置B内の予備系装置16を経由してセレクタ24に到達するが、セレクタ24にてそのデータは破棄されるので、装置Aの運用系装置12からのデータは装置Bのセレクタ24の出力には到達できなくなってしまい、冗長構成をとっているのに意味をなさなくなってしまう。
【0009】
またこの事象が起きたときにケーブルが誤接続されているということを判明させるには、過去に発生した全ての切り替え制御用の切り替え信号と切り替え制御に対する応答信号を切り替え制御部(図示せず)に保存しておいて、その信号の中から切り替え要求している現用伝送路が0系なのか1系なのかを示す情報や、予備伝送路へ接続している現用伝送路の番号に矛盾が生じているか否かを確認する必要がある。実際にやるにしても全ての切り替え制御用信号を保存しておくだけのメモリ領域が必要になり、メモリ領域に保存されたデータ全てをみて矛盾が生じているか否かを確認しなければいけないので手間がかかる。またメモリ領域がない場合には全く判明できないといった問題が残る。
【0010】
過去に発生した全切り替え信号と応答信号を保存していない場合には、最悪の場合はケーブルをたどっていくしか誤接続を見極める方法がなくなってしまう。しかし、この方法は、基幹装置間の距離(ケーブル長)は長距離にわたることがあるので現実的ではない。
【0011】
図5は従来の誤接続検出方法として考えられるループバック方式を示すブロック図である。同図において、装置Aの運用系装置12と装置Bの予備系装置16とが誤接続されており、装置Aの予備系装置13と装置Bの運用系装置15とが誤接続されている。この状態で、一つの考え方として、伝送路番号情報を含まないループバック信号を装置Aの予備系装置13と装置Bの運用系装置15との間で送受信することが考えられる。しかし、この方法では誤接続されていてもループバック信号は正常に送信元に戻ってくるので、誤接続の検出は出来ない。
【0012】
ループバック方式においてループバック信号に伝送路番号情報を入れることも考えられる。即ち、伝送路番号各ケーブルが接続される伝送路に一意的な番号を設定し、ループバック信号の空いている領域に付与してループバック信号を送信することで装置間にて誤接続の検出を行う方法が考えられるが、ケーブル誤接続の場合でもループバック信号は送信側に正常に戻ってきてしまうために、対向装置側で接続されているべき伝送路の番号と、ループバック信号に付与された伝送路番号が一致しているかをチェックすることでしか誤接続を検出できない。
【0013】
またこの方法では、伝送路に付与する一意的な番号についての仕様を対向装置間とで決めなくてはいけなく、対向装置側にその番号の検出機能がないと実現できないので現実的な検出方法とは言えない。即ち、対向装置には様々のメーカのものがあり得、仕様が必ずしも統一されていないので、このように伝送路の一意的な番号を付与する方式は現実的ではない。さらに、実際の通信網構成では1台の基幹装置に複数種の装置が接続されるので、接続されるすべての装置がこの機能を具備しなければならないので現実的な方法ではない。
【0014】
【特許文献1】特開平10−270120号公報
【特許文献2】特開平6−96812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、ケーブル接続された二重化通信システムにおけるケーブル誤接続検出装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様により提供されるものは、ケーブルで接続して通信を行う二重化通信システム内の装置の各々は、対向装置との間にインターフェース部を備え、そのンターフェース部の各々は、対向装置から送信されたデータの中から、該データが運用装置から出力されたことを示す運用情報又は予備装置から出力されたことを示す予備情報をコピーして出力する運用・予備情報選択部と、自装置が運用か予備かを識別するための情報を格納する運用・予備情報格納部と、運用・予備選択部から出力された情報と運用・予備情報格納部に格納されている情報とを比較して自装置が対向装置と正常に接続されているかを判定するチェック部とを備えることを特徴とするケーブル誤接続検出装置である。
【0017】
本発明の他の態様においては、チェック部は、運用・予備選択部から出力された情報と運用・予備情報格納部に格納されている情報とを比較して、対向装置が運用装置で且つ自装置も運用装置である場合に正常接続と判定する。
本発明の更に他の態様においては、チェック部は、運用・予備選択部から出力された情報と運用・予備情報格納部に格納されている情報とを比較して、対向装置が運用装置で且つ自装置が予備装置である場合、及び対向装置が予備装置で且つ自装置が運用装置である場合の少なくとも一方の場合に誤接続と判定する。
【0018】
本発明の更に他の態様においては、二重化装置は、電話回線用電子交換機である。
本発明の更に他の態様においては、二重化装置は、他の基幹装置である。
【0019】
本発明により、上記ケーブル誤接続検出装置を用いたケーブル誤接続検出方法も提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、インターフェース部の各々は、対向装置から送信されたデータの中から、該データが運用装置から出力されたことを示す運用情報又は予備装置から出力されたことを示す予備情報をコピーして出力し、運用・予備選択部から出力された情報と自装置が運用か予備かを識別するための情報を格納する運用・予備情報格納部に格納されている情報とを比較して自装置が対向装置と正常に接続されているかを判定するようにしたので、切り替え制御用信号を格納する必要がなく、手間もかからずに、確実に誤接続の検出が可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面によって詳述する。
図6は本発明によるケーブル誤接続検出装置におけるインターフェース部の概略構成を示すブロック図である。同図において、インターフェース部61は、図1に示した同一機能を有する2つの第1の装置12及び13を含む第1の二重化装置11と、同一機能を有する2つの第2の装置15及び16を含む第2の二重化装置14とを備え、第1の二重化装置11内の第1の装置12,13の一つと第2の二重化装置14内の第2の装置15,16内の一つの装置との間をケーブル62,63で接続して通信を行う二重化通信システムにおける、第1の装置12、13及び第2の装置15,16の各々の内部で、対向装置との間に設けられているものである。
【0022】
インターフェース部61は、対向装置から送信されたデータの中から、そのデータが運用装置から出力されたことを示す運用情報又は予備装置から出力されたことを示す予備情報をコピーして出力する運用・予備情報選択部64と、自装置が運用か予備かを識別するための情報を格納する運用・予備情報格納部65と、運用・予備選択部64から出力された情報と運用・予備情報格納部65に格納されている情報とを比較して自装置が前記対向装置と正常に接続されているかを判定するチェック部66とを備えている。67はインターフェース部61内の既存機能部分である。二重化通信システムにおいてインターフェース部以外の部分は図2に示した構成と同じであり、同一の参照番号を付して説明する。
【0023】
図7は図6に示したインターフェース部61の動作を説明するフローチャートである。
図7において、ステップ70にて装置Aで運用系と予備系の切り替え信号を発生する。次いでステップ71にて装置Aの切り替え制御部21は運用・予備の両系に切り替え信号を送信する。次いでステップ73にて装置A内の運用系装置12及び予備系装置13の各々のインターフェース部61(図6)内の運用・予備情報選択部64は装置Bからくる応答信号から判定に必要な情報をコピーしてチェック部66送り、元の応答信号は切り替え制御部21(図2)へ返送され運用・予備切り替え自体は終了する。
【0024】
次いでステップ74にて、チェック部66では、運用・予備情報格納部65に格納されている運用・予備の情報と運用・予備情報選択部64から送られてくる運用・予備の情報と比較する。この結果、一致すればステップ76に進みケーブル接続は正常と判断されて処理を終了する。
【0025】
ステップ75の判定の結果、不一致であればステップ77にて切り替え制御部21(図2)に一致していないことを別信号で通達する。次いでステップ78にて切り替え制御部21は両系から一致していないと通知されるか、を判定する。両系から不一致であると通知されるとステップ79にてケーブル接続が異常であると判断して保守者に通知して処理を終了する。
【0026】
ステップ75の判定の結果、片方の系からのみ不一致が通知された場合はステップ80にて、ケーブル接続は正常と判断されて処理を終了する。ケーブル接続が異常の場合は必ず両系とも運用・予備の情報が不一致になるからである。
【0027】
以上の説明における二重化システムとしては、電子交換機やその他の基幹システムがあるが、任意の他の二重化システムにも本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、二重化された基幹システムにおいて、新たにケーブルを設けたり過去に発生した切り替え信号及び応答信号を保存する必要なしに誤接続を簡単に検出可能であり、特に遠方に設置されている装置との間の二重化接続の誤接続検出に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の二重化通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示した二重化システムにおける切り替え制御動作を説明するブロック図である。
【図3】図1に示したシステムにおけるデータの流れを説明するブロック図である。
【図4】ケーブル誤接続により装置Aの運用系12と装置Bの予備系16とが接続された状態を示すブロック図である。
【図5】従来の誤接続検出方法として考えられるループバック方式を示すブロック図である。
【図6】本発明によるケーブル誤接続検出装置におけるインターフェース部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示したインターフェース部61の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
11 装置A
12 運用系装置
13 予備系装置
14 装置B
15 運用系装置
16 予備系装置
61 インターフェース部
62,63 ケーブル
64 運用・予備情報選択部
65 運用・予備情報格納部
66 チェック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一機能を有する2つの第1の装置を含む第1の二重化装置と、同一機能を有する2つの第2の装置を含む第2の二重化装置とを備え、前記第1の二重化装置内の前記第1の装置の一つと前記第2の二重化装置内の前記第2の装置内の一つの装置との間をケーブルで接続して通信を行う二重化通信システムにおいて、
前記第1の装置及び前記第2の装置の各々は、対向装置との間にインターフェース部を備え、
前記インターフェース部は、
前記対向装置から送信されたデータの中から、該データが運用装置から出力されたことを示す運用情報又は予備装置から出力されたことを示す予備情報をコピーして出力する運用・予備情報選択部と、
自装置が運用か予備かを識別するための情報を格納する運用・予備情報格納部と、
前記運用・予備選択部から出力された情報と前記運用・予備情報格納部に格納されている情報とを比較して自装置が前記対向装置と正常に接続されているかを判定するチェック部とを備えることを特徴とするケーブル誤接続検出装置。
【請求項2】
前記チェック部は、前記運用・予備選択部から出力された情報と前記運用・予備情報格納部に格納されている情報とを比較して、前記対向装置が運用装置で且つ自装置も運用装置である場合に正常接続と判定することを特徴とする、請求項1に記載のケーブル誤接続検出装置。
【請求項3】
前記チェック部は、前記運用・予備選択部から出力された情報と前記運用・予備情報格納部に格納されている情報とを比較して、前記対向装置が運用装置で且つ自装置が予備装置である場合、及び前記対向装置が予備装置で且つ自装置が運用装置である場合の少なくとも一方の場合に誤接続と判定することを特徴とする請求項1に記載の誤接続検出装置。
【請求項4】
前記第1の二重化装置及び前記第2の二重化装置は、電話回線用電子交換機であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル誤接続検出装置。
【請求項5】
前記第1の二重化装置及び前記第2の二重化装置は、基幹装置であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル誤接続検出装置。
【請求項6】
同一機能を有する2つの第1の装置を含む第1の二重化装置の二重化装置内の前記第1の装置の一つと、同一機能を有する2つの第2の装置を含む二重化装置内の前記第2の装置内の一つの装置との間をケーブルで接続して通信を行う二重化通信方法において、
前記第1の装置及び前記第2の装置の各々の中の、対向装置との間に設けられたインターフェース部は、
自装置が運用か予備かを識別するための情報を格納するステップと、
前記対向装置から送信されたデータの中から、該データが運用装置から出力されたことを示す運用情報又は予備装置から出力されたことを示す予備情報をコピーして出力するステップと、
前記運用・予備選択部から出力された情報と前記格納されている情報とを比較して自装置が前記対向装置と正常に接続されているかを判定するステップと、
を備えることを特徴とするケーブル誤接続検出方法。
【請求項7】
前記判定するステップは、前記出力された情報と前記格納されている情報とを比較して、前記対向装置が運用装置で且つ自装置も運用装置である場合に正常接続と判定することを特徴とする、請求項6に記載のケーブル誤接続検出方法。
【請求項8】
前記判定するステップは、前記出力された情報と前記格納されている情報とを比較して、前記対向装置が運用装置で且つ自装置が予備装置である場合、及び前記対向装置が予備装置で且つ自装置が運用装置である場合の少なくとも一方の場合に誤接続と判定することを特徴とする請求項6に記載の誤接続検出方法。
【請求項9】
前記第1の二重化装置及び前記第2の二重化装置は、電話回線用電子交換機であることを特徴とする、請求項6に記載のケーブル誤接続検出方法。
【請求項10】
前記第1の二重化装置及び前記第2の二重化装置は、基幹装置であることを特徴とする、請求項6に記載のケーブル誤接続検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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