説明

ゲルポリマペンリソグラフィー

本発明は、圧縮可能なエラストマゲルポリマで構成された先端部アレイを用いて標識を基材上に印刷する方法に関する。先端部アレイは、従来方式のフォトリソグラフィー法を用いて調製可能であり、そして任意所望の数及び/或いは配列の先端部を有するよう仕立てることが可能である。パターンの数多くのコピー(例えば15,000以上又は11,000,000以上)を40分という短い時間で並行して作製できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔関連出願の説明〕
2009年2月18日に出願された米国特許仮出願第61/153,389号の35USC§119(e)の規定に基づく権益を主張し、この米国特許仮出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0002】
〔政府の利益に関する声明〕
【0003】
本発明は、米国国立科学財団(NSF‐NSEC)契約番号EEC‐0647560、米国空軍(USAF/AFOSR)契約番号FA9550‐08‐1‐0124及び米国国立癌研究所(NCI‐CCNE)契約番号5U54CA119341のもとで米国政府の支援のもとになされたものである。米国政府は、本発明に関して特定の権利を有する。
【0004】
〔背景〕
リソグラフィーは、最新の科学及び技術の多くの分野において利用されており、このような分野としては、集積回路、情報記憶装置、ビデオスクリーン、微小電気機械システム(MEMS)、小型化センサ、マイクロフルイディック素子、バイオチップ、光学的バンドギャップ構造体及び回折光学素子が挙げられる(非特許文献1〜6)。一般に、リソグラフィーは、パターニング方式に基づいて2つのカテゴリ、即ち、パラレルレプリカ作成及びシリアル書込みに分けられる。パラレルレプリカ作成法、例えばフォトリソグラフィー(非特許文献7)、密着焼き(非特許文献8〜11)及びナノインプリントリソグラフィー(非特許文献12)は、高スループット大面積パターニングに有用である。しかしながら、これら方法の大部分は、パターンを複製することができるにすぎず、これらパターンは、シリアル書込み方式によりあらかじめ規定されており、この結果、種々のパターンを恣意的に生じさせるために使用することはできない(即ち、1つのマスクは1組の構造体をもたらす)。これとは対照的に、電子ビームリソグラフィー(EBL)、イオンビームリソグラフィー及び多くの走査プロブ顕微鏡(SPM)利用方法(非特許文献13〜16)を含むシリアル書込み法は、高分解能及びレジストレーションの状態でパターンを作ることができるが、スループットが制限されている(非特許文献17,18)。事実として、研究者は、最近、1平方センチメートルの領域にわたり分子を主成分とする材料で作られたパターン付け構造体を生じさせるためにディップ‐ペンナノリソグラフィー(Dip-Pen Nanolithography :DPN)用の2次元カンチレバーアレイを用いる方法を確立したに過ぎない(非特許文献19,20)。
【0005】
DPNは、軟質又は硬質の材料を高いレジストレーション及び50nm未満の分解能で「強め合う」仕方で表面に送り出す「インク」コーテッド原子間力顕微鏡(AFM)カンチレバーを用いている(非特許文献3,16,21〜23)。高密度カンチレバーアレイと組み合わされると、DPNは、比較的広い領域にわたり分子を利用したパターンを程々のスループットで作る汎用的で強力なツールである(非特許文献1)。DPNの欠点は、1)ミクロ及びナノメートル長さスケールにあたり1回の実験で容易且つ迅速に功を奏することができないこと(典型的には、尖った先端部がナノスケール特徴部を生じさせるよう最適化されるか先の尖っていない先端部がミクロスケール特徴部を生じさせるために用いられるかのいずれかであること)(非特許文献24)及び2)脆弱であり且つコスト高の2次元カンチレバー或いは大面積パターニングを達成する必要があることが挙げられる。確かに、分子に基づく特徴部をナノメートルスケールからミリメートルスケールまでの範囲のサイズで並列且つ高スループットの状態でしかも直接書込み方式で迅速にパターニングすることができる単純な方式は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】シー・エー・マーキン(C. A. Mirkin),「エーシーエス・ナノ(ACS Nano)」1,79(2007年)
【非特許文献2】ケー・サライタ等(K. Salaita, et al.),「ナチュラル・ナノテクノロジー(Nat. Nanotech.)」2,145(2007年)
【非特許文献3】ディー・エス・ジンジャー等(D. S. Ginger, et al.),アンゲバンド・ケミカル・インターナショナル・エディション(Angew. Chem. Int. Ed.)」43,30(2004年)
【非特許文献4】ワイ・シャー(Y. Xia),ジー・エム・ホワイトサイズ(G. M. Whitesides),アンゲバンド・ケミカル・インターナショナル・エディション(Angew. Chem. Int. Ed.)」37,551(1998年)
【非特許文献5】ワイ・シャー(Y. Xia),ジー・エム・ホワイトサイズ(G. M. Whitesides),「アニュアル・レビュー・マター・ScL(Ann. Rev. Mater. ScL)」28, 153(1998年)
【非特許文献6】エム・チー等(M. Qi, et al.),「ネイチャー(Nature)」429,538(2004年)
【非特許文献7】ティー・イトウ(T. Ito),エス・オカザキ(S. Okazaki),「ネイチャー(Nature)」406,1027(2000年)
【非特許文献8】ワイ・エル・ルー等(Y. L. Loo, et al.),「ジャーナル・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J. Am. Chem. Soc. )」124,7654(2002年)
【非特許文献9】ゼット・チャン等(Z. Zheng, et al.),「アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(Am. Chem. Soc.)」128,7730(2006年)
【非特許文献10】エー・クーマー(A. Kumar),ジー・エム・ホワイトサイズ(G. M. Whitesides),「アプライド・フィジカル・レタリング(Appl. Phys. Lett.)」63,2002(1993年)
【非特許文献11】エム・エヌ・ユーサフ等(M. N. Yousaf, et al.),「プロシーディング・ナショナル・アカデミー・サイエンス(Proc. Natl. Acad. ScL)」98,5992(2001年)
【非特許文献12】エス・ワイ・チョウ等(S. Y. Chou, et al.),「サイエンス(Science)」272,85(1996年)
【非特許文献13】エス・シュー等(S. Xu, et al.),「ラングミュア(Langmuir)」15,7244(1999年)
【非特許文献14】エム・ガイスラー(M. Geissler),ワイ・シャー(Y. Xia),「アドバンス・マテリアルズ(Adv. Mater.)」16,1249(2004年)
【非特許文献15】ビー・ディー・ゲイツ等(B. D. Gates, et al.),「ケミカル・レビュー(Chem. Rev.)」105,1171(2005年)
【非特許文献16】アール・ディー・ピナー等(R. D. Piner, et al.),「サイエンス(Science)」283,661(1999年)
【非特許文献17】エス・クーマー等(S. Kramer, et al.),「ケミカル・レビュー(Chem. Rev.)」103,4367(2003年)
【非特許文献18】アール・マオズ等(R. Maoz, et al.),「アドバンス・マテリアルズ(Adv. Mater.)」11,55(1999年)
【非特許文献19】エス・レンハート等(S. Lenhert, et al.),「スモール(Small)」3,71(2007年)
【非特許文献20】ケー・サライタ等(K. Salaita, et al.),「アンゲバンド・ケミカル・インターナショナル・エディション(Angew. Chem. Int. Ed.)」45,7220(2006年)
【非特許文献21】エス・ホン(S. Hong),シー・エー・マーキン(C. A. Mirkin),「サイエンス(Science)」288,1808(2000年)
【非特許文献22】エル・エム・ディマース等(L. M. Demers, et al.),「サイエンス(Science)」296,1836(2002年)
【非特許文献23】ケー・ビー・リー等(K.-B. Lee, et al.),「サイエンス(Science)」295,1702(2002年)
【非特許文献24】例えば、従来型Si3N4カンチレバー(曲率半径=20〜60nm)を備えた金基材上への10μm×10μmMHA特徴部のDPN作製は、約30分要する。
【非特許文献25】イー・デラマーチェ等(E. Delamarche, et al.),「ラングミュア(Langmuir)」19,8749(2003年)
【非特許文献26】ティー・ダブリュー・オドム等(T. W. Odom, et al.),「ラングミュア(Langmuir)」18,5314(2002年)
【非特許文献27】エイチ・チャン等(H. Zhang, et al.),「ナノ・レット(Nano Lett.)」4,1649(2004年)
【非特許文献28】エックス・ワン等(X. Wang, et al.),「ラングミュア(Langmuir)」19,8951(2003年)
【非特許文献29】エフ・ホー等(F. Huo, et al.),「サイエンス(Science)」321,1658(2008年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、高分解能、高レジストレーション及び高スループットであり、軟質物質適合性があり且つ安価なパターニング機能を所持させることができるリソグラフィー法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリマ先端部アレイを用いて標識を基材表面上に印刷する方法に関する。特に、各々の曲率半径が約1μm以下の複数個の非片持ち型先端部を有する圧縮可能なポリマから成る先端部アレイを用いて標識を基材表面上に印刷する方法が本明細書において開示される。
【0009】
一態様によれば、本明細書において、標識を基材表面上に印刷する方法であって、(1)先端部アレイをパターニング組成物でコーティングするステップを有し、先端部アレイは、各々の曲率が約1μm以下の複数個の先端部を備えた圧縮可能なエラストマゲルポリマから成り、(2)第1の接触期間にわたり且つ第1の接触圧力で基材表面をアレイのコーテッド先端部の全て又は実質的に全てに接触させ、それによりパターニング組成物を基材表面上に被着させて1μm未満の実質的に一様な特徴部サイズを有すると共に好ましくは更に実質的に一様な特徴部形状を有する標識を形成するステップを有する方法が提供される。コーティングステップは、パターニング組成物を先端部アレイ上に吸着させ又は吸収させるステップを含むのが良い。この方法は、先端部及び基材表面の一方だけ又は先端部と基材表面の両方を動かすステップと、第2の接触期間にわたると共に第2の接触圧力で接触ステップを繰り返すステップとを更に有するのが良い。第1の接触期間と第2の接触期間及び第1の接触圧力と第2の接触圧力は、同一であっても良く、異なっていても良い。基材又は先端部アレイが取り付けられた圧電スキャナのz‐ピエゾを制御することによって接触圧力を制御するのが良い。先端部アレイと基材表面の側方運動は、ドット、ライン(例えば、個々のドットから形成され又は連続して形成される直線又は湾曲したライン)、あらかじめ選択されたパターン又はこれらの任意の組み合わせを有する標識を形成するよう制御可能である(例えば、運動を変化させることにより且つ/或いは運動を制限することにより)。接触圧力及び/又は接触期間を制御することにより、制御可能で再現可能なサイズを持つ標識、例えばドットを作ることができる。開示する方法により形成される標識は、1ミクロン未満、例えば900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下、又は80nm以下の最小特徴部サイズ(例えば、ドットサイズ又はライン幅)を有するのが良い。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、本明細書において開示する先端部アレイを基材表面に対して均す方法を提供する。
【0011】
一方法は、先端部アレイを入射光で背面照明して先端部の内面からの入射光の全反射を生じさせるステップと、先端部アレイの先端部と基材表面をz軸線に沿って一緒に先端部のサブセットと基材表面の接触箇所まで至らせるステップとを含み、この接触は、基材表面と接触状態にある先端部のサブセットからの反射光の強度の増大によって示され、これに対し、他の先端部からの反射光の強度に変化がないことは、先端部が接触していないことを示しており、この方法は、先端部の内面からの反射光の強度の差に応答して先端部アレイと基材表面の一方又は両方を他方に対して傾動させて基材表面と互いに接触関係をなしていない先端部の接触を達成するステップを更に含む。傾動は、先端部のアレイを基材表面に対して均すよう1回又は2回以上にわたり且つx軸線、y軸線及びz軸線の任意の1つに沿って実施可能である。反射光は、先端部アレイ材料が少なくとも半透明であれば、反射光の少なくとも一部分を入射光の方向に先端部アレイ材料を通って送り戻すことによって観察できる。好ましくは、先端部アレイが取り付けられている基材も又、少なくとも半透明又は透明である。
【0012】
もう1つの方法は、先端部アレイを入射光で背面照明して先端部の内面からの入射光の全反射を生じさせるステップと、先端部アレイの先端部と基材表面をz軸線に沿って結合して先端部アレイの先端部と基材表面の接触を生じさせるステップと、先端部アレイと基材の一方又は両方をz軸線に沿って他方に向かって更に動かして先端部のサブセットを圧縮し、先端部からの反射光の強度が基材表面への先端部の圧縮度の関数として増大するようにするステップと、先端部の内面からの反射光の強度の差に応答して先端部アレイと基材表面の一方又は両方を他方に対して傾動させて基材表面と先端部の実質的に一様な接触を達成するステップとを含む。傾動は、例えば先端部からの反射光の一様な強度により確かめられるように先端部のアレイを基材表面に対して均すよう1回又は2回以上にわたり且つx軸線、y軸線及びz軸線の任意の1つに沿って実施できる。反射光は、先端部アレイ材料が少なくとも半透明であれば、反射光の少なくとも一部分を入射光の方向に先端部アレイ材料を通って送り戻すことによって観察できる。好ましくは、先端部アレイが取り付けられている基材も又、少なくとも半透明又は透明である。
【0013】
本発明の別の態様では、先端部アレイが提供される。ゲルポリマ先端部アレイは、一定の周期的パターンで配置された複数個の先端部から成るのが良い。先端部の曲率半径は、約0.5μm以下、約0.2μm以下又は約100nm以下であるのが良い。先端部は、同一の形をしているのが良く且つピラミッド形であるのが良い。先端部アレイのポリマは、約10MPa〜約300MPaの圧縮弾性率を有するのが良い。ポリマは、約10MPa〜約300MPaの圧力下ではフックの性質を示すのが良い。ゲルポリマは、任意適当なゲルから成っていて良く、このようなゲルとしては、ポリサッカリドゲル、オプションとして枝なしポリサッカリドゲル、例えばアガロースゲルが挙げられる。先端部アレイは、共通の基材に固定されるのが良い。共通の基材は、剛性支持体、例えばガラスから成るのが良い。変形例として、共通基材は、剛性支持体にくっつけられても良い。共通の基材は、先端部アレイと同一のゲルポリマから成るのが良いエラストマ層を有しても良く、或いは、先端部アレイとは別のエラストマポリマであっても良い。先端部アレイ、共通基材及び/又は剛性支持体は、少なくとも半透明であるのが良く、又透明であるのが良い。特定の実施形態では、先端部アレイ、共通基材及び剛性支持体は、もし設けられている場合、各々、少なくとも半透明又は透明である。先端部アレイ及び共通基材(例えば、エラストマ層)の厚さは、約5mm以下、約1mm以下、約200μm以下、好ましくは約150μm以下又はより好ましくは約100μm以下であるのが良い。
【0014】
本発明の更に別の態様では、本明細書において説明する先端部アレイを作製する方法が提供される。この方法は、基材に設けられていて、ランドによって隔てられた凹部のアレイを有するマスターを形成するステップと、溶剤中に分散され又は溶解したポリマゲル材料及びオプションとして緩衝溶液を含むポリマゲル混合物を凹部に充填すると共にランドを該ポリマゲル混合物でコーティングするステップと、ポリマゲル溶液を硬化させてポリマゲル構造体を形成するステップと、ポリマゲル構造体をマスターから分離するステップとを有する。この方法は、ウェルを基材に形成して基材を異方性ウェットエッチングすることにより凹部をピラミッド形凹部として形成するステップを更に有する。この方法は、充填されると共にコーティングされた基材を硬化に先立って平板状ガラス層で覆うステップを更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は、ポリマペンリソグラフィーセットアップの略図、(B)は、11,000,000ペンアレイの写真図、(C)は、ポリマペンアレイのSEM画像を示す図であり、先端部の平均曲率半径は、70±10nm(挿入図)である。
【図2】(A)は、シリコン基材上の1,000,000金ドットアレイ(ブロック内に6×6個)の480μm×360μm部分の光学画像を示す図(28,000ピラミッド形先端部を備えたペンアレイを用いて)、(B)は、相対的z圧電伸びの関数としてのMHAドットサイズを示す図であり、結果は、40%の相対湿度で25℃における15,000ピラミッド形先端部を備えたポリマペンアレイを用いて得られ、(C)は、別のz圧電伸びで生じた金の正方形のアレイの光学画像を示す図(28,000ピラミッド形先端部を備えたペンアレイを用いて)、(D)は、ポリマペンリソグラフィーにより作製された多次元金回路の光学顕微鏡画像を示す図であり、挿入図は、回路中心の拡大画像を示す図である。
【図3】(A)は、2008年北京オリンピックのロゴの約15,000個の小型化複製の代表的な領域のSEM画像を示す図、(B)は、代表的な複製のズームイン光学画像を示す図であり、挿入図は、“e”という文字の拡大SEM画像を示す図である。
【図4】ガラス支持体ありのポリマペンアレイ(A)及びガラス支持体なしのポリマペンアレイ(B)のSEM画像を示す図であり、ガラス支持体を備えたポリマペンアレイ領域全体にわたり一様であり、ガラス支持体なしのポリマペンアレイは、波形になっている。
【図5】(A)は、図1Bに示された11,000ペンアレイを用いたポリマペンリソグラフィーにより作製された4インチSiウェーハ上のエッチング金パターンの写真を示す図であり、ペンアレイによってパターニングされた領域は、白の破線で強調表示され、ペンアレイの中心では、ペンの99%を超えるペンがMHAインキをポリマペンリソグラフィー法の実施中、基材に一様に送り出し、明確に規定された構造体を形成し、活性度の減少は、アレイの周辺領域のペンとSi基材との間の接触が不良であることによりアレイの周囲で生じ、これは、現行の機器のサンプルホルダー欠点に起因して生じ、(B)は、ポリマペンリソグラフィーにより作られた金パターン(A)の光学顕微鏡画像を示す図であり、挿入図は、ズームイン画像であり、この画像は、意図した構造の全てがこの実験において生じていることを示している。
【図6】先端部‐基材接触時間の関数としてのMHAドットサイズを示す図であり、ドットサイズ一定接触(圧力)(初期接触)における先端部‐基材接触時間の増大につれて増大する。結果、23℃の温度で且つ50%(円)及び90%(正方形)の相対湿度で15,000ピラミッド形先端部を備えたポリマペンアレイを用いて得られている。
【図7】ポリマペンリソグラフィーにより作製されたアンチマウスIgGアレイの蛍光顕微鏡画像を示す図である。
【図8】先端部アレイを基材表面に対して均すために用いられる光源に対する先端部アレイ、圧電スキャナ及び基材表面のセットアップの略図である。
【図9】ポリマゲルペンアレイ作製の略図である。
【図10】ゲルポリマペンアレイの光学画像を示す図である。
【図11】インキキャリアを追加しないでゲルポリマペンリソグラフィーにより直接生じたアルブミンアレイの光学画像を示す図である。
【図12】(A)は、PSAの検出のためのサンドイッチ構造体の略図、(B)は、ゲルポリマペンリソグラフィーにより作製されたPSAサンドイッチパターンの蛍光顕微鏡画像を示す図である。
【図13】ゲルポリマペンリソグラフィーによって直接エッチング金薄膜を介して作製された穴アレイの光学画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリマペンリソグラフィーは、分子の集まりをポジ印刷濃度で送り出す直接書込み方法である。代表的には硬質シリコン利用カンチレバーを用いたDPN及び他のSPM利用リソグラフィーとは対照的に、ポリマペンリソグラフィーは、インク送り出しツールとしてカンチレバーなしのエラストマ先端部を利用している(非特許文献25,26)。先端部は、好ましくは、ポリジメチルシロキサン、PDMS又はアガロースゲルで作られている。本明細書で用いる「ゲルポリマペンリソグラフィー」という用語及び「ゲルペンリソグラフィー」という用語は、エラストマゲルポリマ先端部を利用したポリマペンリソグラフィーを意味している。本明細書において、ポリマ、ポリマペン及びポリマペンアレイといった場合、これらは、文脈上別段の指定がなければ、ゲルポリマタイプを含む。好ましいポリマペンアレイ(図1)は、従来方式のリソグラフィー及び次のウェット化学エッチング(図1A及び図9)により調製されたマスターで作製可能な好ましくはピラミッド形の数千個の先端部を有する。先端部は、好ましくは、共通基材により互いに連結され、この基材は、薄いポリマ支持層(厚さ50〜100μm)を有し、このような薄いポリマ支持層は好ましくは、例えばポリマの硬化に先立って又は硬化中に、剛性支持体(例えば、ガラス、シリコン、石英、セラミック、ポリマ又はこれら任意の組み合わせ)にくっつけられる。剛性支持体は、好ましくは、非常に剛性が高く、このような剛性支持体は、アレイが取り付けられるべき非常に平らな表面として(例えば、シリカガラス、石英等)を有する。剛性支持体及び薄い支持層は、広い領域、例えば3インチウェーハ表面(図1B及び図4)にわたりポリマペンアレイの一様性を大幅に向上させると共に均しを可能にし、しかもアレイの一様な制御された使用を可能にする。ポリマペンの尖った先端部を基材に接触させると、インキが接触箇所のところで送り出される(図1A及び図9)。ゲルペンリソグラフィーは、分子の集まりをポジ印刷モードで送り出す直接書込み方法である。ディップペンナノリソグラフィーとは対照的に、インク溶液がゲルペンアレイのゲルマトリックス中に吸収されるよう選択されるのが良い(例えば、ポリサッカリドゲル、例えば、アガロースゲル)。
【0017】
先端部の内面で反射した光の量は、先端部が機材に接触すると、著しく増大する。従って、半透明の又は透明のエラストマポリマペンアレイにより、先端部の全てが下に位置する機材にいつ接触したかを目で見て確かめることができ、それにより、アレイを経験的に容易な仕方で均す厄介な仕事に取り組むことができる。好ましくは、アレイ先端部、支持層及び剛性支持体の1つ又は2つ以上は、少なくとも半透明であり、好ましくは透明である。
【0018】
ポリマペンリソグラフィーに関する実験は、90μm閉ループスキャナ及び市販のリソグラフィーソフトウェア(イリノイ州所在のナノインク・インコーポレイテッド製のDPNWrite(登録商標)、DPN System-2)を搭載したNscriptor(登録商標)システム(イリノイ州所在のナノインク・インコーポレイテッド(Nanolnk Inc.))を用いて実施された。意図した使用に応じて、ペンアレイのピッチは、ペン密度250,000/cm2及び100/cm2にそれぞれ対応して20μm〜1mmに慎重に設定される。大きなピッチアレイは、大きな特徴部(ミクロン又はミリメートルスケール)を作製するのに必要であるが、ナノメートルスケールの特徴部を作製するのにも使用可能である。ペンは全て、サイズ及び形状が著しく一様であり、平均先端部半径は、70±10nm(図1C)であった。原理的に、この値をマスターの品質を高くすると共にエラストマをより剛性にすると実質的に減少させることができる。以下の実施例に関し、用いた先端部アレイは、15,000又は28,000個のピラミッド形ペンを有していたが、約11,000,000個という多くの数のペンを備えたアレイもまた、構造体をパターニングするのに使用された(図5)。
【0019】
代表的な実験では、ペンアレイ(サイズ1cm2)を16‐メルカプトヘキサデカン酸(MHA)のエタノール飽和溶液中に5分間浸漬し、次にエタノールですすぎ洗いすることによりこのペンアレイにインク付けした。インク付けされたペンアレイを用い、これを0.1秒間、熱により蒸発させた多結晶金基材(5nmTi接着層をSi上にコーティングさせた25nmAu)の表面に接触させることにより1μm直径MHAドットパターンをこの金基材上に生じさせた。この金基材への接触方法を35回繰り返して6×6アレイのMHAドット(特徴部直径の10%偏差未満)を生じさせた。次に、このMHAパターニングされた基材上の露出状態の金をエッチングして(水に溶かした20mMチオウレア、30mM硝酸鉄、20mM塩酸及び2mMオクタノール)高さが約25nmであり光学顕微鏡(図2A)により容易に画像化される隆起構造体を生じさせた。
【0020】
ポリマペンリソグラフィーの特質は、典型的には圧力又は力に依存しないDPN及び大抵の密着焼き方式とは対照的に、このようなポリマペンリソグラフィーが時間と圧力の両方に依存したインク転移性を示すことにある。DPNの場合と同様、ポリマペンリソグラフィーにより作られる特徴部は、先端部‐基材接触時間の平方根に線形的に依存するサイズを示す(図6)(非特許文献27及び28)。インクの拡散性及び送り出し先端部の小さなサイズの結果として得られるポリマペンリソグラフィーのこの性質により、サブミクロン特徴部を高精度且つ高再現性でパターニングすることができる(特徴部サイズのばらつきは、同一実験条件下のもとで10%未満である)。ポリマペンリソグラフィーの圧力依存性は、エラストマピラミッド形アレイの圧縮性に起因して生じる。確かに、顕微鏡的な、好ましくはピラミッド形の先端部は、加えられた圧力の大きさが連続して増大するにつれて変形するよう作製されるのが良く、このような圧力は、ピエゾを垂直方向に単に伸張させる(z‐ピエゾ)ことによって制御可能である。このような変形は、密着焼きの大きな欠点と考えられているが(“ルーフ”が潰れて特徴部サイズの分解能が制限される場合がある)、ポリマペンリソグラフィーでは、制御可能な変形は、調節可能な変数として使用でき、それにより、先端部‐基材接触面積及び結果として生じる特徴部サイズを制御することができる。約5〜約25μmのz‐ピエゾ伸張により許容される圧力範囲内において、1秒という一定の接触時間でピエゾ伸張と特徴部サイズとの間にほぼ直線的な関係を観察することができる(図2B)。興味を引くこととして、初期接触時点において且つ0.5μmの相対伸びまで、MHAドットのサイズは、それほど違いはなく、これらサイズは両方共、約500nmであり、このことは、ピラミッドの全てを連結する支持エラストマ層がピラミッド形先端部の変形前に変形するということを示している。この種のバッファリングは、ならしにとって偶然であり且つ必要不可欠である。というのは、バッファリングにより、先端部変形なしに且つ意図した特徴部サイズをそれほど変更しないで先端部の全てを表面に接触させる際の余分の公差が得られるからである。z‐ピエゾが1μm以上にわたって延びる場合、先端部は、相当に大きく且つ制御可能な変形を示す(図2B)。
【0021】
ポリマペンリソグラフィーの圧力依存性により、大きな特徴部を生じさせるのに時間のかかるこのようなメニスカス媒介インク拡散法を利用する必要はない。確かに、先端部変形度を単に調節するだけで1回の印刷サイクルでナノメートルサイズの特徴部かマイクロメートルサイズの特徴部かのいずれかを生じさせることができる。考え方の証明として、1行中の各正方形を互いに異なる先端部‐基材圧力でしかしながら1秒の先端部‐基材接触時間の1回の印刷サイクルで書き込んだ6×6金正方形アレイをポリマペンリソグラフィー及びその後のウェット化学エッチング(図2C)により作製した。最も大きな金正方形及び最も小さな金正方形は、それぞれ1辺が4μm及び600nmである。注目されるべきこととして、この実験は、ポリマペンリソグラフィー実験において達成可能な特徴部サイズ範囲を定めているわけではなく、これとは異なり、一定の先端部‐基材接触時間(この場合1秒)でポリマペンリソグラフィーにより到達可能な多数のスケールを実証するものである。
【0022】
ポリマペンリソグラフィーは、従来方式の密着焼きとは異なり、特徴部サイズ、間隔及び形状に対する動的制御が可能な分子利用特徴部とソリッドステート特徴部の組み合わせパターニングを可能にする。これは、ポリマ先端部を用いて作製するのを望む構造体のドットパターンを形成することにより達成される。考え方の証明として、1mm間隔の100個のピラミッド形先端部を備えたポリマペンアレイを用いて金集積回路の100個の複製を生じさせた。回路の中心の各電極の幅は、500nmであり、これらナノメートルスケール電極に接続された各電極導線の幅は、10μmであり、外部結合パッドのサイズは、100×100μm2(図2D)である。Nscriptor(登録商標)は、90×90μm2スキャナをもたらすにすぎないので、回路を35個の80×80μm2サブパターンに分割し、これらサブパターンを、各サブパターンを生じさせた後にステージモータを手動で動かすことによって互いに縫い付けた。この問題点は、ステージモータの運動を多数のサブパターンの位置に対してプログラムすることによって取り組み可能である。分解能とスループットの両方の問題に対応するため、回路の互いに異なる位置での互いに異なる相対的z‐ピエゾ伸びを用い、この場合、中央電極、電極導線及び結合パッドについてそれぞれ0μm(初期接触時)、2μm及び6μmを用いた。その結果、100×100μm2面積の書き込みには、400回の印刷サイクル(各サイクルについて0.5秒未満)が必要であるに過ぎず、回路の100個の複製を生じさせるのに必要な全時間は、約2時間であった。ペンアレイの再インク付けは、不要である。というのは、PDMSポリマは、実験全体を通じてインクのリザーバとして挙動するからである(非特許文献27及び28)。マルチスケールパターンのこの比較的高スループット作製は、EBL又はDPNによって行うには不可能ではないとしても困難である。
【0023】
ポリマペンリソグラフィーのマスクレス性状により、スループット阻害シリアルプロセスにより新たなマスターを設計するという困難な課題なしに多くの形式の構造体を恣意的に作製することができる。さらに、ポリマペンリソグラフィーを閉ループスキャナの見当合せ能力を備えた状態で100nm未満の分解能で利用することができる。例えば、ポリマペンリソグラフィーは、インク及び次のウェット化学エッチング(図3A)として2008年北京オリンピックのロゴの15,000個の複製をMHAにより金上に作製するために使用した。ポリマペンリソグラフィーのマルチスケール機能を用いて各ロゴを70×60μm2ビットマップから作製した。文字及び数字「北京2008」を約20,000個の90nmドット(初期接触)から作製し、絵及びオリンピックリングを高いアレイ‐基材接触圧力で約4,000個の600nmドットから作製した(相対ピエゾ伸び=1μm)。これら構造体を作製するのに、ペンアレイを各スポットに0.05秒間保持し、60μm/秒の速度でスポット相互間で動かした。1cm2基材全体にわたって生じた約15,000個の複製(歩留まり>99%)の代表的な部分は、これらの一様性を示している(図3B)。これら構造体の全てを作製するのに必要な全時間は、40分未満であった。
【0024】
ナノスケール特徴部とマイクロスケール特徴部を強め合う仕方で作製するために書き込み装置、例えばNscriptor(登録商標)機器に取り付けられたエラストマペンアレイを用いてポリマペンリソグラフィーと呼ばれている新たなリソグラフィー法が開発された。この技術は、高いスループット及びコスト安で多数の長さスケールにまたがるパターニング機能を生じさせるようDPNの属性の多くと密着焼きを融合させたものである。ポリマペンピラミッド形アレイの新規な時間及び圧力依存性インク転移特性は、今日まで開発された多くのナノファブリケーション方式とマイクロファブリケーション方式からポリマペンリソグラフィーを区別する重要且つ調節可能な変数を提供している。ポリマペンリソグラフィーは、直接書き込み技術であるので、ポリマペンリソグラフィーは、柔らかい物質、例えばタンパク(図7)で作られた構造体のアレイを作製するのにも有用であり、それにより、ポリマペンリソグラフィーは、生命科学にも有用である。
【0025】
先端部アレイ
本明細書において開示するリソグラフィー法は、エラストマポリマ材料で作られた先端部アレイを用いている。先端部アレイは、非片持ち式であり、これら先端部アレイは、先端部から成り、これら先端部は、必要に応じてこれらの間に任意の形状又は間隔を有するよう設計されるのが良い。各先端部の形状は、アレイの他の先端部と同一であっても良く、異なっていても良い。想定される先端部形状としては、回転長円体(楕円体)、半回転長円体、環状体、多面体、円錐、円筒体及びピラミッド(三角又は四角)が挙げられる。先端部は、尖っており、その結果、これら先端部は、サブミクロンのパターン、例えば約500nm未満のパターンを形成するのに適している。例えば、先端部の直径は、約50nmから約1μmの範囲にあるのが良い。例えば、最小直径は、約50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm又は1000nmであるのが良い。例えば、最小直径は、約50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm又は1000nmであるのが良い。先端部の尖り度は、その曲率半径により測定され、本明細書において開示する先端部の曲率半径は、1μm未満であり、このような曲率半径は、約0.9μm以下、約0.8μm以下、約0.7μm以下、約0.6μm以下、約0.5μm以下、約0.4μm以下、約0.3μm以下、約0.2μm以下、約0.1μm以下、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下、約60nm以下又は約50nm以下であるのが良い。
【0026】
先端部アレイは、フォトリソグラフィー法を用いて作られたモールドから形成されるのが良く、このモールドは、次に、本明細書において開示するポリマを用いて先端部アレイを作るために用いられる。モールドは、任意所望の仕方でアレイ上に配列された同数の先端部を収容するよう設計されているのが良い。先端部アレイの先端部は、任意所望の数であって良く、先端部の想定される個数としては、約1,000個の先端部から約15,000,000個の先端部までが挙げられる。先端部アレイの先端部の個数は、約1,000,000個以上、約2,000,000個以上、約3,000,000個以上、約4,000,000個以上、5,000,000個以上、6,000,000個以上、7,000,000個以上、8,000,000個以上、9,000,000個以上、10,000,000個以上、11,000,000個以上、12,000,000個以上、13,000,000個以上、14,000,000個以上又は15,000,000個以上であるのが良い。
【0027】
先端部アレイの先端部は、任意所望の厚さを有するよう設計されているのが良いが、代表的には、先端部アレイの厚さは、約50nm〜約50μm、約10μm〜約50μm、約50nm〜約1μm 、約50nm〜約500nm、約50nm〜400nm、約50nm〜約300nm、約50nm〜約200nm又は約50nm〜約100nmである。例えば、最小厚さは、約50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm又は50μmであるのが良い。例えば、最大厚さは、約50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm又は50μmであるのが良い。先端部アレイの厚さは、先端部基材層を形成するために用いられたポリマの剛性が増大するにつれて減少するのが良い。例えば、ゲルポリマ(例えば、アガロース)の場合、先端部アレイの厚さは、約10μm〜約50μmであるのが良い。他のポリマ(例えば、PDMS)の場合、例えば、先端部アレイの厚さは、約50nm〜約1μmであるのが良い。本明細書で用いる先端部アレイの厚さという用語は、先端部の頂端から先端部の底端までの距離を意味している。先端部は、ランダムに配置されても良く一定の周期的パターンで(例えば、列及び行の状態で、円又は半径方向パターン等の状態で)配置されても良い。先端部は、先端部基材層に固定された底部を有する。底部は、好ましくは、先端部の頂部よりも大径である。底部は、約1μm〜約50μm又は約5μm〜約50μmの辺長さを有するのが良い。例えば、最小辺長さは、約1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、22μm、24μm、26μm、28μm、30μm、32μm、34μm、36μm、38μm、40μm、42μm、44μm、46μm、48μm又は50μmであるのが良い。例えば、最大辺長は、約1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、22μm、24μm、26μm、28μm、30μm、32μm、34μm、36μm、38μm、40μm、42μm、44μm、46μm、48μm又は50μmであるのが良い。
【0028】
ポリマは、リソグラフィー法と適合性のある圧縮性を備えたポリマであればどのようなポリマであっても良い。先端部アレイに用いるのに適したポリマ材料は、直鎖状又は分岐状主鎖を有するのが良く、このようなポリマ材料は、特定のポリマ及び先端部に望ましい圧縮性の度合いに応じて架橋状態又は非架橋状態であるのが良い。架橋剤は、ポリマ分子相互間に2つ又は3つ以上の共役結合を形成することができる多官能価モノマーを意味している。架橋剤の非限定的な例としては、例えば、トリメチルオルプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、ジビニルベンゼン、ジエポキシ、トリエポキシ、テトラエポキシ、ジビニルエーテル、トリビニルエーテル、テトラビニルエーテル及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
熱可塑性又は熱硬化性ポリマを架橋エラストマと同様用いることができる。一般に、ポリマは、多孔質且つ/或いは非晶質であるのが良い。種々のエラストマポリマ材料が想定され、このようなポリマ材料としては、シリコーンポリマ及びエポキシポリマの一般等級のポリマが挙げられる。例えば25℃未満より好ましくは−50℃未満の低いガラス転移温度を有するポリマを使用するのが良い。芳香族アニン、トリアジン及び脂環式主鎖を主成分とする化合物に加えて、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを使用するのが良い。別の例としては、ノボラックポリマが挙げられる。他の想定されるエラストマポリマとしては、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、フェニルクロロシラン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。他の材料としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリアクリル酸ゴム、フルオロシリコーンゴム及びフルオロエラストマが挙げられる。
【0030】
先端部を形成するために使用できる適当なポリマの別の例は、米国特許第5,776,748号明細書、同第6,596,346号明細書及び同第6,500,549号明細書に見受けられ、これら米国特許の各々を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。他の適当なポリマとしては、He et al., Langmuir 2003, 19, 6982-6986、Donzel et al., Adv. Mater. 2001, 13, 1164-1167及びMartin et al., Langmuir,1998, 14-15, 3791-3795に開示されたポリマが挙げられる。疎水性ポリマ、例えばポリジメチルシロキサンを例えば強酸化剤の溶液又は酸素プラズマへの曝露によって科学的に又は物理的に改質するのが良い。
【0031】
変形例として、先端部アレイのポリマは、ポリマゲルであっても良い。ゲルポリマは、任意適当なゲルを含むことができ、このようなゲルとしては、ヒドロゲル及びオルガノゲルが挙げられる。例えば、ポリマゲルは、シリコーンヒドロゲル、分岐状ポリサッカリドゲル、非分岐状ポリサッカリドゲル、ポリアクリルアミドゲル、酸化ポリエチレンゲル、架橋酸化ポリエチレンゲル、ポリ(2‐アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸)(ポリAMPS)ゲル、ポリビニルピロリドンゲル、架橋ポリビニルピロリドンゲル、メチルセルロースゲル、ヒアルロナンゲル及びこれらの組み合わせであるのが良い。例えば、ポリマゲルは、アガロースゲルであるのが良い。重量を基準として、ゲルは、大部分が液体であり、例えば、ゲルは、液体分が95%を超えるのが良いが、液体中に架橋ネットワークが存在するので固体として挙動する。ゲルポリマは、例えば、親水性且つ/或いは多孔質であるのが良く、パターン組成物の吸収を可能にする。例えば、パターン組成物は、界面化学を実施すると共に塩をパターニングするのに適した水溶液であるのが良い。一実施形態では、インクの塩濃度pH及びバッファ濃度は、ゲルポリマ先端部アレイのパターニング中、それほど変化せず、それにより、生体材料、例えば大きなタンパク及び活動中のウイルスをパターニングしながら生体材料の活性度を保つことができる。例えば、図12に示されているように、アンチ前立腺特異抗原(アンチPSA)をアガロースゲルポリマペンアレイの使用によりパターニングすることができ、この場合、アンチPSAの活性度は、結果的に得られるパターンに保持される。パターンアンチPSAの活性度を確かめるのに、タンパクと抗原を交雑し、次に蛍光表示された二次抗体(図12Aに概略的に示されている)と交雑した。蛍光表示された二次抗体パターンが図12Bの光学画像に示されており、図12Bは、パターンアンチPSAの活性度が保存されていることを実証している。
【0032】
図9を参照すると、従来方式のフォトリソグラフィーにより調製されたマスターを用いてゲルポリマペンアレイを形成することができる。次に、マスターに溶剤に溶かした又は分散させたゲル材料を含むポリマゲル混合物を充填するのが良い。例えば、ポリマゲル材料は、水に溶かしたアガロースを含むのが良い。ポリマゲル材料は、オプションとして、バッファ溶液を含むのが良い。次に、ポリマゲル構造体を例えば室温で硬化させ、マスターから除去する。図10は、ゲルポリマペンアレイの光学画像を示している。
【0033】
先端部アレイのポリマは、インク付け及び印刷中、ポリマの崩壊を阻止するのに適した圧縮弾性率及び表面硬さを有するが、弾性率が高すぎると共に表面硬さが大きすぎると、それにより、印刷中、基材表面に適合することができずしかもこれと同形になることができない脆弱な材料が生じる場合がある。Schmid, et al., Macromolecules, 33:3042(2000)に開示されているように、ビニル及びヒドロシランプレポリマが互いに異なる弾性率及び表面硬さのポリマを提供するよう調製できる。幾つかの場合において、ポリマは、ビニルプレポリマとヒドロシランプレポリマの混合物であり、この場合、ビニルプレポリマとヒドロシラン架橋剤の重量比は、約5:1〜約20:1、約7:1〜約15:1又は約8:1〜約12:1である。
【0034】
先端部アレイのポリマは、好ましくは、ガラス表面の抵抗と比較して(Schmid, et al., Macromolecules, 33:3042 (2000)の3044ページに記載されているように)直径1mmの硬質球による侵入に対する表面の抵抗により測定してガラスの約0.2%〜約3.5%の表面硬さを有する。表面硬さは、約0.3%〜約3.3%、約0.4%〜約3.2%、約0.5%〜約3.0%又は約0.7%〜約2.7%であっても良い。先端部アレイのポリマは、約10MPa〜約300MPaの圧縮弾性率を有するのが良い。先端部アレイは、好ましくは、約10MPa〜約300MPaの圧力下においてフックの性質を示す圧縮性ポリマから成る。先端部アレイに及ぼされた圧力と特徴部サイズとの間の線形関係により、開示した方法及び先端部アレイ(図2B参照)を用いて印刷された標識の制御が可能である。
【0035】
先端部アレイは、パターニング組成物のための吸着及び/又は吸収特性を備えたポリマから成るのが良く、その結果、先端部アレイは、それ自体のパターニング組成物リザーバとして働くようになる。例えば、PDMSは、パターニングインクを吸収することが知られており、これについては、例えば、米国特許出願公開第2004/228962号明細書、Zhang, et al., Nano Lett. 4, 1649 (2004)及びWang et al, Langmuir 19, 8951(2003)を参照されたい。
【0036】
先端部アレイは、共通の基材に固定されると共に本明細書において開示したポリマで作られた複数個の先端部から成るのが良い。先端部は、ランダムに配置されても良く一定の周期的パターン(例えば、行及び列の状態、円形パターン等の状態で)配置されても良い。先端部は全て、同一形状のものであっても良く又は互いに異なる形状のものであるよう構成されても良い。共通基材は、エラストマ層を有するのが良く、エラストマ層は、先端部アレイの先端部を形成するのと同種のポリマから成っていても良く、或いは、先端部アレイのエラストマポリマとは異なるエラストマポリマから成っていても良い。例えば、共通基材は、ゲル支持層であるのが良い。適当なゲルとしては、先端部材料として用いられるポリマゲルと関連して本明細書において説明したゲルが挙げられる。エラストマ層の厚さは、約50μm〜約100μmであるのが良い。共通基材層の任意適当な厚さは、例えば、約50μm〜約5mm、約50μm〜約100μm又は約1mm〜約5mmである。例えば、共通基材層の最小厚さは、約50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、2000μm、3000μm、4000μm又は5000μmであるのが良い。例えば、共通基材層の最大厚さは、約50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、2000μm、3000μm、4000μm又は5000μmであるのが良い。共通基材層の厚さは、共通基材層を形成するために用いられるポリマの剛性が増大するにつれて減少するのが良い。例えば、ゲルポリマ(例えばアガロース)の場合、共通基材層の厚さは、約1mm〜約5mmであるのが良い。他のより剛性のポリマ(例えばPDMS)の場合、共通基材層の厚さは、例えば、約50μm〜約100μmであるのが良い。先端部アレイは、剛性支持体(例えば、ガラス、例えばガラススライド)に取り付けられ又はくっつけられるのが良い。種々の場合、共通基材、先端部アレイ及び/又は剛性支持体(設けられている場合)は、半透明又は透明である。特定の場合、これらは各々、半透明又は透明である。先端部基材層12と先端部14の厚さの合計は、約50μm〜約5mmであるのが良い。先端部アレイと共通基材の組み合わせの厚さは、約200μm以下、好ましくは約150μm以下又はより好ましくは約100μm以下であるのが良い。
【0037】
隣り合う先端部14相互間の先端部間の間隔(先端部ピッチ)は、約1μm〜約10mm以上又は約20μm〜約1mmであるのが良い。例えば、最小の先端部間の間隔は、約1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm又は10mmであるのが良い。例えば、最大の先端部間の間隔は、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm又は10mmであるのが良い。
【0038】
パターニング組成物
開示した方法に用いるのに適したパターニング組成物は、均質組成物と不均質組成物の両方を含み、不均質組成物は、2つ以上の成分を有する組成物を意味している。パターニング組成物は、先端部アレイ上にコーティングされる。本明細書で用いられる「コーティング」という用語は、先端部アレイによるパターニング組成物の吸着及び吸収の両方を意味している。パターニング組成物による先端部アレイのコーティング時、先端部アレイを用いてパターニング組成物を基材表面上にパターニングするのが良い。
【0039】
パターニング組成物は、液体、固体、半固体等であるのが良い。用いるのに適したパターニング組成物としては、分子溶液、ポリマ溶液、ペースト、ゲル、クリーム、グルー、樹脂、エポキシ、接着剤、金属フィルム、粒子、ソルダ、エッチング剤及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。ゲルポリマペンアレイを用いる場合、ウェットインクを基材表面上に直接パターニングするのが良い。ウェットインクとしては、液体状態のインクが挙げられ、このような液体状態のインクとしては、例えば、塩溶液、バッファに溶かしたタンパク及びエッチング剤が挙げられる。ゲルポリマペンアレイはまた、パターニング組成物中にパターニング組成物キャリヤを含む必要なく、パターニング組成物をパターニングするのにも使用できる。例えば、パターニング組成物は、外生キャリヤなしの生体材料(例えば、アルブミン)であるのが良い。このようなインクキャリヤは、当該技術分野において知られており、このようなインクキャリヤとしては、例えば、ホスホリピド、PEG、ヒドロゲルPEG‐DMA及びアガロースが挙げられる。
パターニング組成物は、例えば単層形成種、薄膜形成種、油、コロイド、金属、金属錯体、金属酸化物、セラミックス、有機種(例えば、炭素‐炭素結合を含む成分、例えば小分子、ポリマ、ポリマ前駆物質、タンパク、抗体等)、ポリマ(例えば、非生物学的ポリマと生物学的ポリマの両方、例えば一本鎖及び二本鎖DNA、RNA等)、ポリマ前駆物質、デンドリマー(dendrimer)、ナノ粒子及びこれらの組み合わせのような物質が挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、パターニング組成物の1つ又は2つ以上の成分は、例えば化学結合を形成することにより、イオン相互作用により、ファンデルワールス相互作用により、静電相互作用により、マグニティズムにより、接着により、これらの組み合わせによって基材と会合するのに適した官能基を含む。
【0040】
幾つかの実施形態では、組成物は、その粘度を制御するよう処方されるのが良い。インク粘度を制御することができるパラメータとしては、溶剤組成、溶剤濃度、増粘剤組成、増粘剤濃度、成分の粒径、ポリマ成分の分子量、ポリマ成分の架橋度、成分の自由体積(即ち、多孔度)、成分の膨潤性、インク成分相互間のイオン相互作用(例えば、溶剤‐増粘剤相互作用)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0041】
幾つかの実施形態では、パターニング組成物は、添加剤、例えば、溶剤、増粘剤、イオン種(例えば、陽イオン、陰イオン、ツイッターイオン等)を含み、添加剤の濃度は、粘度、誘電率、導電性、張度、密度等の1つ又は2つ以上を調節するよう選択可能である。
【0042】
適当な増粘剤としては、カルボキシアルキルセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、アルキルセルロース誘導体(例えば、メチルセルロース及びエチルセルロース)、部分酸化アルキルセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)、でんぷん、ポリアクリルアミドゲル、ポリ‐N‐ビニルピロリドンのホモポリマ、ポリ(アルキルエーテル)(例えば、酸化ポリエチレン、ポリエチレングリコール及び酸化ポリプロピレン)、寒天、アガロース、キサンタンガム、ゼラチン、デンドリマー、コロイド状二酸化珪素、脂質(例えば、脂肪、油、ステロイド、蝋、脂肪酸のグリセリド、例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸及び例えばホスホクロリンからの脂質二重層)及びこれらの混合物の金属塩が挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、増粘剤は、パターニング組成物の重量を基準として約0.5%〜約25%、約1%〜約20%又は約5%〜約15%の濃度で存在する。
【0043】
パターニング組成物に適した溶剤としては、水、C1‐C8アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール)、C6‐C12直鎖状、分岐状及び環状炭化水素(例えば、ヘキサン及びシクロヘキサン)、C6‐C14アリル及びアラルキル炭化水素(例えば、ベンゼン及びトルエン)、C3‐C10アルキルケトン(例えば、アセトン)、C3‐C10エステル(例えば、エチルアセテート)、C4‐C10アルキルエーテル及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、溶剤は、パターニング組成物の重量を基準として約1%〜約99%、約5%〜約95%、約10%〜約90%、約15%〜約95%、約25%〜約95%、約50%〜約95%又は約75%〜約95%の濃度で存在する。
【0044】
パターニング組成物は、エッチング剤を含むのが良い。本明細書で用いる「エッチング剤」という用語は、表面の一部分を除去するよう表面と反応することができる成分を意味している。エッチング剤は、表面と反応し、基剤から除去できる揮発性及び/又は可溶性物質又は例えばすすぎ洗い若しくはクリーニング法により基材から除去可能な残留物、粒状物又は破片の少なくとも1つを形成することにより減法的特徴部を形成するために用いられる。幾つかの実施形態では、エッチング剤は、パターニング組成物の重量を基準として約0.5%〜約95%、約1%〜約90%、約2%〜約85%、約0.5%〜約10%又は約1%〜約10%の濃度で存在する。
【0045】
本明細書において開示する方法に用いるのに適当なエッチング剤としては、酸性エッチング剤、塩基性エッチング剤、フッ化物を主成分とするエッチング剤及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。本発明に用いるのに適した酸性エッチング剤としては、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フッ化水素酸、塩化水素酸、カルボラン酸及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。本発明に用いるのに適した塩基性エッチング剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、アンモニア、エタノールアミン、エチレンジアミン及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。本発明に用いるのに適したフッ化物を主成分とするエッチング剤としては、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化フランシウム、フッ化アンチモン、フッ化カルシウム、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸カリウム及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。図13は、ゲルポリマペンアレイを用いて金薄膜を市販の金エッチング剤で直接エッチングすることにより作成された穴アレイを示している。穴の直径は、接触時間の増大及び/又はペンアレイと基材との間に加えられた力につれて増大する。
【0046】
幾つかの実施形態ではパターニング組成物は、反応性成分を含む。本明細書で用いる「反応性成分」という用語は、基材と化学反応する化合物又は種を意味している。幾つかの実施形態では、インク中の反応性成分は、基材中に侵入し又は拡散する。幾つかの実施形態では、反応性成分は、変化し、結合し又は基材の表面上の物質状態の官能基への結合を促進する。反応性成分としては、イオン、フリーラジカル、金属、酸、塩基、金属塩、有機試薬及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。反応性成分としては、更に、単層形成種、例えばチオール、水酸化物、アミン、シラノール、シロキサン等及び当業者に知られている他の単層形成種が挙げられるが、これらには限定されない。反応性成分は、パターニング組成物の重量を基準として、約0.001%〜約100%、約0.001%〜約50%、約0.001%〜約25%、約0.001%〜約10%、約0.001%〜約5%、約0.001%〜約2%、約0.001%〜約1%、約0.001%〜約0.5%、約0.001%〜約0.05%、約0.01%〜約10%、約0.01%〜約5%、約0.01%〜約2%、約0.01%〜約1%、約10%〜約100%、約50%〜約99%、約70%〜約95%、約80%〜約99%、約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%又は約5%の濃度で存在するのが良い。
【0047】
パターニング組成物は、導電性及び/又は半導電性成分を更に含むのが良い。本明細書で用いる「導電性成分」という用語は、電荷を移送させ又は動かすことができる化合物又は種を意味している。導電性及び半導電性成分としては、金属、ナノ粒子、ポリマ、クリームソルダ、樹脂及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、導電性成分は、パターニング組成物の重量を基準として約1%〜約100%、約1%〜約10%、約5%〜約100%、約25%〜約100%、約50%〜約100%、約75%〜約99%、約2%、約5%、約90%、約95%の濃度で存在する。
【0048】
パターニング組成物に用いるのに適した金属としては、遷移金属、アルミニウム、シリコン、亜リン酸、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、錫、アンチモン、鉛、ビスマス、これらの合金及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
幾つかの実施形態では、パターニング組成物は、半導電性ポリマを含む。本発明に用いるのに適した半導電性ポリマとしては、ポリアニリン、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオヘン)‐ポリ(スチレンスルホネート)、ポリピロール、アリレンビニレンポリマ、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリイミダゾール及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0049】
パターニング組成物は、絶縁成分を含むのが良い。本明細書で用いる「絶縁成分」という用語は、電荷の運動又は移送に抵抗する化合物又は種を意味している。幾つかの実施形態では、絶縁成分は、約1.5〜約8、約1.7〜約5、約1.8〜約4、約1.9〜約3、約2〜約2.7、約2.1〜約2.5、約8〜約90、約15〜約85、約20〜約80、約25〜約75又は約30〜約70の誘電率を有する。本明細書で開示する方法に用いるのに適した絶縁成分としては、ポリマ、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、これらのモノマー前駆物質、これらの粒子及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。適当なポリマとしては、ポリジメチルシロキサン、シルセスキオキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、例えば、絶縁成分は、パターニング組成物の重量を基準として約1%〜約95%、約1%〜約80%、約1%〜約50%、約1%〜約20%、約1%〜約10%、約20%〜約95%、約20%〜約90%、約40%〜約80%、約1%、約5%、約10%、約90%又は約95%の濃度で存在する。
【0050】
パターニング組成物は、マスキング成分を含むのが良い。本明細書で用いる「マスキング成分」という用語は、周囲の表面と反応することができる種に対して耐性のある表面特徴部を反応時に形成する化合物又は種を意味している。本明細書に用いるのに適したマスキング成分としては、一般に「レジスト」(例えば、フォトレジスト、ケミカルレジスト、自己構成単分子膜等)として伝統的なフォトリソグラフィー法で用いられている物質を含む。開示する方法で用いるのに適したマスキング成分としては、ポリマ、例えばポリビニルピロリドン、ポリ(エピクロロヒドリン‐コ‐エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリ(スチレン‐コ‐ブタジエン)、ポリ(4‐ビニルピリジン‐コ‐スチレン)、アミンを末端基とするポリ(スチレン‐コ‐ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル‐コ‐ブタジエン)、スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロックコポリマ、スチレン‐エチレン‐ブチレンブロック線状コポリマ、ポリスレン‐ブロック‐ポリ(エチレン‐ラン‐ブチレン)‐ブロック‐ポリスチレン、ポリ(スチレン‐コ‐マレイン無水物)、ポリスチレン‐ブロック‐ポリ(エチレン‐ラン‐ブチレン)‐ブロック‐ポリスチレン‐グラフト‐マル‐エイク無水物、ポリスチレン‐ブロック‐ポリイソプレン‐ブロック‐ポリスチレン、ポリスチレン‐ブロック‐ポリ(エチレン‐ラン‐ブチレン)‐ブロック‐ポリスチレン)、ポリノルボルネン、ジカルボキシを末端基とするポリ(アクリロニトリル‐コ‐ブタジエン‐コ‐アクリル酸)、ジカルボキシを末端基とするポリ(アクリロニトリル‐コ‐ブタジエン)、ポリエチレンイミン、ポリ(カーボネートウレタン)、ポリ(アクリロニトリル‐コ‐ブタジエン‐コ‐スチレン)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート‐コ‐メタクリル酸)、ポリイソプレン、ポリ(1,4‐ブチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(1,4‐フェニレンスルフィド)、ポリリモネン、ポリ(ビニルアルコール‐コ‐エチレン)、ポリ[N,N′‐(1,3‐フェニレン)イソフタルアミド]、ポリ(1,4‐フェニレンエーテル‐エーテル‐スルホン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ[ブチレンテレフタレート‐コ‐ポリ(アルキレングリコール)テレフタレート]、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(4‐ビニルピリジン)、ポリ(DL‐ラクチド)、ポリ(3,3′,4,4′‐ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物‐コ‐4,4′‐オキシジアニリン/1,3‐フェニレンジアミン)、アガロース、ポリビニリデンフルオリドホモポリマ、スチレンブタジエンコポリマ、フェノール樹脂、ケトン樹脂、4,5‐ジフルオロ‐2,2‐ビス(トリフルオロメチル)‐1,3‐ジオキサン、これらの塩及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、マスキング成分は、パターニング組成物の重量を基準として約1%〜約10%、約1%〜約5%又は約2%の濃度で存在する。
【0051】
パターニング組成物は、導電性成分及び反応性成分を含むのが良い。例えば、反応性成分は、表面中への導電性成分の侵入、導電性成分と表面の反応、導電性特徴部と表面との接着、導電性特徴部と表面との間の電気的接触の促進及びこれらの組み合わせの少なくとも1つを促進することができる。このパターニング組成物を反応させることにより生じる表面特徴部としては、加法的非侵入、加法的侵入、減法的侵入、コンフォーマル侵入表面特徴部から成る群から選択された導電性特徴部が挙げられる。
【0052】
パターニング組成物は、例えば導電性特徴部が挿入された減法的表面特徴部を生じさせるのに適したエッチング剤及び導電性成分を含むのが良い。
【0053】
パターニング組成物は、絶縁成分及び反応性成分を含むのが良い。例えば、反応性成分は、表面中への絶縁成分の侵入、絶縁成分と表面の反応、絶縁特徴部と表面との接着、絶縁特徴部と表面との電気的接触の促進及びこれらの組み合わせの少なくとも1つを促進することができる。このパターニング組成物を反応させることにより生じる表面特徴部としては、加法的非侵入、加法的侵入、減法的侵入、コンフォーマル侵入表面特徴部から成る群から選択された導電性特徴部が挙げられる。
【0054】
パターニング組成物は、例えば絶縁特徴部が挿入された減法的表面特徴部を生じさせるのに適したエッチング剤及び絶縁成分を含むのが良い。
【0055】
パターニング組成物は、例えば表面上に導電性マスキング特徴部を生じさせるのに適した導電性成分及びマスキング成分を含むのが良い。
【0056】
開示する方法に用いるのに適したパターニング組成物の他の想定される成分としては、チオール、1,9‐ノナンジチオール溶液、シラン、シラザン、アルキン、シスタミン、N‐Fモック保護アミノチオール、生体分子、DNA、タンパク、抗体、コラーゲン、ペプチド、ビオチン及びカーボンナノチューブが挙げられる。
【0057】
パターニング化合物及びパターニング組成物並びにこれらの調整及び使用の説明に関し、Xia and Whitesides, Angew. Chem. Int. Ed., 37, 550-575 (1998)及び本明細書において引用した文献、Bishop et al., Curr. Opinion Colloid & Interface ScL,1, 127-136 (1996); Calvert,J. Vac. Sci. Technol. B,11, 2155-2163 (1993); Ulman, Chem. Rev., 96:1533 (1996)(金に被着されたアルカンチオール)、Dubois et al., Annu. Rev. Phys. Chem., 43:437 (1992)(金に被着されたアルカンチオール)、 Ulman, An Introduction to Ultrathin Organic Films: From Langmuir- Blodgett to Self-Assembly (Academic, Boston, 1991)(金に被着されたアルカンチオール)、Whitesides, Proceedings of the Robert A. Welch Foundation 39th Conference On Chemical Research Nanophase Chemistry, Houston, Tex., pages 109-121 (1995)(金に結合されたアルカンチオール)、 Mucic et al. Chem. Commun. 555-557 (1996)(3′チオールDNAを金表面に結合する方法を説明している)、米国特許第5,472,881号明細書(金表面へのオリゴヌクレオチド‐フォスフォロチオレートの結合)、Burwell, Chemical Technology, 4, 370-377 (1974) and Matteucci and Caruthers, J. Am. Chem. Soc, 103, 3185-3191 (1981)(シリカ及びガラス表面へのオリゴヌクレオチド‐アルキルシロキサンの結合)、Grabar et al., Anal. 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Chem., 98, 11751-5 (1994)(銀へのチオールの結合)、Li et al., Report, 24 pp (1994)(銀へのチオールの結合)、Tarlov et al.,の米国特許第5,942,397号明細書(銀及び銅へのチオールの結合)、Waldeck, et al.,の国際出願WO/99/48682号パンフレット(銀及び銅へのチオールの結合)、Gui et al., Langmuir, 7, 955-63 (1991)(銀へのチオールの結合)、Walczak et al., J. Am. Chem. Soc, 113, 2370- 8 (1991)(銀へのチオールの結合)、Sangiorgi et al., Gazz. Chim. Ital., Ill, 99-102 (1981)(銅へのアミンの結合)、Magallon et al., Book of Abstracts, 215th ACS National Meeting, Dallas, Mar. 29-Apr. 2, 1998, COLL-048(銅へのアミンの結合)、Patil et al., Langmuir, 14, 2707-2711 (1998)(銀へのアミンの結合)、Sastry et al., J. Phys. Chem. B, 101, 4954-4958 (1997)(銀へのアミンの結合)、Bansal et al., J. Phys. Chem. B. 102, 4058-4060 (1998)(シリコンへのアルキルリチウムの結合)、Bansal et al., J. Phys. Chem. B, 102, 1067-1070 (1998)(シリコンへのアルキルリチウムの結合)、Chidsey, Book of Abstracts, 214th ACS National Meeting, Las Vegas, Nev., Sep. 7-11, 1997, I&EC-027(シリコンへのアルキルリチウムの結合)、Song, J. H., Thesis, University of California at San Diego (1998)(二酸化シリコンへのアルキルリチウムの結合)、Meyer et al., J. Am. Chem. 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【0058】
パターニングされるべき基材
本明細書で開示する方法に用いるのに適した基材としては、金属、合金、複合材、結晶質、非晶質、導体、半導体、光学部品、ファイバ、無機材料、ガラス、セラミックス(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属珪化物及びこれらの組み合わせ)、ゼオライト、ポリマ、プラスチック、有機材料、鉱物、生体材料、生体組織、骨、これらの膜、これらの薄膜、これらのラミネート、これらの箔、これらの複合材及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。基材は、半導体を含むのが良く、このような半導体の例は、結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、pドープシリコン、nドープシリコン、シリコン酸化物、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ガリウム・ヒ素、ガリウム・ヒ素・リン、インジウム錫酸化物及びこれらの組み合わせであるが、これらには限定されない。基材は、ガラスを含むのが良く、ガラスの例は、ドープなしのシリカガラス(SiO2)、フッ素化シリカガラス、ホウケイ酸ガラス、ボロフォスフォロシリケートガラス、オルガノシリケートガラス、多孔質オルガノシリケートガラス及びこれらの組み合わせであるが、これらには限定されない。基材は、非平板状基材、例えば熱分解炭素、補強炭素−炭素複合材、炭素フェノール樹脂等及びこれらの組み合わせであるのが良い。基材は、セラミックから成るのが良く、このようなセラミックの例は、炭化珪素、水素化炭化珪素、窒化珪素、シリコンカルボニトリド、シリコンオキシニトリド、シリコンオキシカーバイド、耐熱性の再使用可能な表面断熱材、繊維状耐火複合絶縁タイル、強化ユニピス繊維状断熱材、耐寒性の再使用可能な表面断熱材、改良型の再使用可能な表面断熱材及びこれらの組み合わせであるが、これらには限定されない。基材は、可撓性材料から成るのが良く、可撓性材料の例は、プラスチック、金属、これらの複合材、これらのラミネート、これらの薄膜、これらの箔及びこれらの組み合わせであるが、これらには限定されない。
【0059】
先端部アレイの均し及び基材表面上へのパターニング組成物の被着
開示する方法は、走査プロブ顕微鏡利用リソグラフィー法(例えば、ディップペンリソグラフィー)に類似した現場画像化機能を実行する能力及び特徴部を迅速にパターニングするマイクロ密着焼きに類似した能力を提供する。パターニング可能な特徴部は、サイズは100nm未満から1mm以上の範囲にあり、このような特徴部は先端部アレイの接触時間及び/又は接触圧力を変更することにより制御可能である。DPNと同様、基材表面上に被着されるパターニング組成物の量(特徴部サイズで測定される)は、接触時間に比例し、具体的には接触時間と平方根相関関係にあり、これについては図6を参照されたい。DPNとは異なり、先端部アレイの接触圧力は、基材表面上に被着可能なパターニング組成物の量を変えるために使用できる。接触圧力は、圧電スキャナのz‐ピエゾにより制御でき、これについては図2Bを参照されたい。先端部アレイに及ぼされる圧力(又は力)が高ければ高いほど、特徴部サイズがそれだけ一層大きくなる。接触時間と接触力/圧力の任意の組み合わせは、約30nmから約1mm以上の特徴部サイズの形成手段となる。このような広範なサイズの特徴部を「直接書込み」又は現場でミリ秒で調製できるということにより、開示したリソグラフィー法をエレクトロニクス(例えば、パターニング回路)及びバイオテクノロジー(例えば、生物化学的アッセイ用の配列ターゲット)を含む多くのリソグラフィー用途に適合可能になる。先端部アレイの接触圧力は、約10MPa〜約300MPaであるのが良い。
【0060】
本明細書において説明する好ましい材料について非常に低い接触圧力、例えば約0.01〜約0.1g/cm2の圧力では、結果として得られる標識の特徴部サイズは、接触圧力とは無関係であり、それにより、標識の特徴部サイズを変更することなく、基材表面上の先端部アレイを均すことができる。このような低圧は、先端部アレイが取り付けられた圧電スキャナのz‐ピエゾの0.5μm以下の伸びによって達成でき、約0.01g/cm2〜約0.1g/cm2の圧力を0.5μm未満のz‐ピエゾ伸びにより加えることができる。この「バッファリング」圧力範囲により、先端部アレイ、基材又はこれら両方を操作して先端部を圧縮することなく先端部と基材表面を最初に接触させることができ、次に、先端部の圧縮度(先端部の内面からの光の反射の変化により観察される)を用いて先端部と基材表面の一様な接触度を達成することができる。この均し能力は、先端部アレイの先端部の非一様な接触により非一様な標識が生じる場合があるので、重要である。先端部アレイの先端部の数が多く(例えば、本明細書において提供される実施例では11,000,000個)及びこれらのサイズが小さい場合、実際問題として、先端部の全てが表面と接触状態にあるかどうかを明確に知ることが困難であり又は不可能である場合がある。例えば、先端部又は基材表面の欠陥又は基材表面の凸凹の結果として、先端部が1つだけ接触を行わず、他の全ての先端部が一様な接触状態にある場合がある。開示する方法は、先端部の少なくとも実質的に全てが基材表面と接触状態にあるようにすることができる(例えば、検出可能な程度まで)。例えば、先端部の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%が基材表面と接触関係をなす。
【0061】
先端部アレイと基材表面の互いに対する均しは、透明又は少なくとも半透明の先端部アレイ及び共通基材構成では、先端部アレイの頂部(即ち、先端部及び共通基材のベースの後ろ)からこれを通って基材表面に差し向けられる光の反射の変化を観察することができるということにより助長可能である。先端部アレイの先端部から反射された光の強度は、基材表面との接触時に大きくなる(例えば、先端部アレイの内面は、接触時に光を別々に反射する)。各先端部のところの光の反射の変化を観察することにより、先端部アレイ及び/又は基材表面を調節して基材表面に対する先端部アレイの先端部の実質的に全て又は全ての接触を行わせることができる。先端部アレイ及び共通基材は、好ましくは、基材表面との接触時に先端部の光反射の変化を観察することができるよう半透明又は透明である。同様に、先端部アレイが取り付けられている任意の剛性支持材料も又、好ましくは、少なくとも透明又は半透明である。
【0062】
先端部の接触時間は、基材表面上における任意特定の箇所で望ましいパターニング組成物の量に基づいて約0.001秒〜約60秒であるのが良い。接触力は、圧電スキャナのz‐ピエゾを変更することにより又は先端部アレイに対する力の加わり具合を制御することができる他の手段によって制御可能である。
【0063】
基材表面を先端部アレイに複数回接触させることができ、この場合、先端部アレイ、基材表面又はこれら両方は、基材表面の互いに異なる部分を接触させることができるよう動く。各接触ステップの時間及び圧力は、所望のパターンに応じて同一であっても良く異なっていても良い。標識又はパターンの形状には事実上制限がなく、このような形状としては、ドット、ライン(例えば、個々のドットで形成され又は連続した直線又は曲線)、あらかじめ選択されたパターン又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0064】
開示する方法により得られる標識は、高い同一度を有し、サイズが一様又は実質的に一様であり、好ましくは形状についてもそうである。個々の標識特徴部サイズ(例えば、ドット又はライン幅)は、一様性が高く、例えば、許容誤差が約5%又は約1%又は約0.5%である。許容誤差は、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.4%、約0.3%、約0.2%又は約0.1%であるのが良い。特徴部サイズ及び/又は形状の非一様性により、サブミクロン型パターニングにとっては望ましくない場合もある標識の粗さが生じる。
【0065】
特徴部サイズは、約10nm〜約1mm、約10nm〜約500μm、約10nm〜約100μm、約50nm〜約100μm、約50nm〜約50μm、約50nm〜約10μm、約50nm〜約5μm又は約500nm〜約1μmであるのが良い。特徴部サイズは、1μm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満又は約90nm未満であっても良い。
【0066】
実施例
【0067】
ポリマペンアレイのマスターの作製
Shipley1805 (MicroChem, Inc.)フォトレジストを金薄膜基材上にスピンコーティングした(100nmのAuがあらかじめクリーニングされた酸化Si<100>ウェーハ上に熱蒸着された10nmCr接着層)。クロムマスクを用いたフォトリソグラフィーにより正方形ウェルアレイを作製した。フォトレジストパターンをMF319現像溶液(MicroChem, Inc.)中で現像し、次に、O2プラズマに30秒間(200mトル)暴露して残留有機層を除去した。次に、基材をそれぞれ金エッチング溶液(タイプTFA、Transene)及びクロムエッチング溶液(タイプ1020、Transene)中に置いた。各エッチングステップ後に表面をクリーニングするためにMiliQ水による多量すすぎ洗いが必要であった。次に、フォトレジストをアセトンで洗い落として金パターンを露出させた。金パターン付き基材を75℃のKOHエッチング溶液(H2Oに溶かした30%KOH:IPA(4:1v/v))中に約25分間置き、激しくかき混ぜた。Siウェーハの露出領域を異方的にエッチングし、その結果、凹み付きピラミッドが形成された。残りのAu及びCr層をウェット化学エッチングにより除去した。最後に、ピラミッド形マスターを気相シラン処理により1H,1H,2H,2H‐ペルフルオロデシルトリクロロシラン(Gelest, Inc.)で修整した。
【0068】
ポリマペンアレイの作製
ポリマペンアレイを作製するのに硬質PDMS(h‐PDMS)(非特許文献1及び2)を用いた。h‐PDMSは、3.4gのビニル‐化合物濃厚プレポリマ(VDT‐731 Gelest)及び1.0gのヒドロシラン濃厚架橋剤(HMS‐301)で構成させていた。ポリマの調製には、典型的には、20ppmのw/w白金触媒(キシレンに溶かした白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、SIP683.1 Gelest)をビニルフラクション及び0.1%のw/wモジュレータ(2,4,6,8‐テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、Fluka)に添加して混合物とした。この混合物を撹拌し、ガス抜きし、そしてポリマペンアレイマスターの頂部上に注ぎかけた。次に、あらかじめクリーニングされているガラススライド(VWR, Inc.)をエラストマレイの頂部上に置き、組み立てた全体を一晩70℃で硬化させた。ポリマペンアレイを注意深くピラミッド形マスターから分離し、次にこれを用いてリソグラフィー実験を行った。ペンアレイを調製する手順は、図1Aに示されている。
【0069】
ゲルポリマペンアレイの作製
以下に説明するゲルペンアレイを作成するためにアガロースを用いた。アガロース(5g)を95mL脱イオン水中に混入し、約95℃まで加熱してアガロースを溶解させた。タンパクパターニングのため、対応のバッファ溶液をアガロースと混合した。次に、高温アガロース溶液をポリマペンアレイマスター上に注ぎかけ、室温まで冷やした。アガロースを凝固を可能にするために約30分間室温で硬化させた。ゲルペンアレイを注意深くピラミッド形マスターから分離し、次にリソグラフィー実験のために用いた。ペンアレイを調製する手順は、図9に示されている。図10は、ゲルポリマペンアレイの光学画像を示す図である。
【0070】
ポリマペンリソグラフィーによるタンパクアレイのパターニング
ポリマペンリソグラフィーによりCodelink(登録商標)ガラススライド(GE Healthcare)上にテトラメチルローダミン5‐(及び‐6)‐イソチオシアネート(TRITC)共役アンチマウスIgGアレイを生じさせた。典型的な実験では、ポリマペンアレイをポリエチレングリコールシラン(PEG‐シラン)で修整してタンパクとPDMS表面との非特異性相互作用を最小限に抑えた。表面修整を行うため、ポリマペンアレイを酸素プラズマ(30秒)に短時間暴露させて表面を親水性にした。次に、これを2時間PEG‐シランの1mM水溶液(独国のラップ・ポリメールのpH2、MW2,000)中に浸漬させ、脱イオン水で洗浄し、これにN2を吹き付けてこれを乾燥させた。次に、50mg/mlグリセロール及び5mg/mlTRITC共役IgGから成る水溶液をPEG‐シラン修整ポリマペンアレイ上にスピンコーティングし(2分間1,000rpm)、ペンアレイを用いてCodelink(登録商標)スライド上にタンパクアレイを生じさせた。ガラススライド支持体を介して先端部アレイをモニタすることによりペンアレイを均した。先端部を基材表面に接触させると、先端部から反射された光の量は、著しく増大し、先端部の全て又は相当な数が基材表面と接触した時期(例えば、先端部アレイを「均した」時期)を容易にモニタすることができる。パターニング環境を20℃、70%相対湿度に維持した。ポリマペンリソグラフィー法の実施後、Codelink(登録商標)スライドを一晩湿度室内で培養し、0.02%ドデシル硫酸ナトリウムですすぎ洗いして物理吸着物質を除去した。図7は、生じた3×3IgGアレイの蛍光画像を示している。先端部アレイを基材に3秒間接触させることにより各IgGドットを作製した。各IgGドットのサイズは、4±0.7μmであった。
【0071】
ゲルポリマペンリソグラフィーによるタンパクアレイのパターニング
90μm閉ループスキャナ及び市販のリソグラフィーソフトウェア(米国イリノイ州所在のナノインク・インコーポレイテッド製のDNPWrite(登録商標)、DPNシステム‐2)を備えたNscriptor(登録商標)システム(米国イリノイ州所在のナノインク・インコーポレイテッド)を用いてリソグラフィー実験を行った。ゲルポリマペンアレイ(サイズ1cm2)を蛍光ラベル表示されたアルブミン(Sigma ‐Aldrich)の2mMバッファ溶液中に5分間浸漬させてペンアレイをインク付けした。次に、インク付けされたペンアレイを約1秒間Codelink(登録商標)スライドの表面に接触させてCodelink(登録商標)スライド上にドットパターンを生じさせた。ゲルポリマペンは、任意他のインクキャリヤを追加しないでアルブミンのパターニングを可能にする。図11は、結果として得られたパターンの光学画像を示す図である。
【0072】
ゲルポリマペンリソグラフィーによる前立腺特異抗原(PSA)のパターニング
パターニング後にタンパクの生物活性度を確認するために、PSAサンドイッチ構造パターンを作製した。図12Aは、サンドイッチ構造体の略図である。10μLアンチPSA溶液(Abeam Inc.)をペンアレイの表面上に滴下することによりゲルポリマペンアレイ(サイズ1cm2)にインク付けした。次に、ペンアレイを基材に接触させてアンチPSA溶液のドットパターンを生じさせた。タンパクを抗原とハイブリッド化し、次に蛍光ラベル表示2次抗体とハイブリッド化することによりタンパクの活性度を試験した。図12Aを参照すると、結果として得られたパターンの光学画像は、アンチPSAの活性度がパターニング中に保たれているという強力な示唆であるラベル表示2次抗体パターンを示している。
【0073】
ゲルポリマペンリソグラフィーによる金フィルムの表面エッチング
ゲルポリマペンのゲルマトリックスは、親水性であり、これは多孔質であるのが良く、それにより、ゲルマトリックスは、界面化学を実施すると共に塩をパターニングするのに適した水溶液を吸収することができる。金薄膜の表面エッチングをゲルポリマペンアレイの使用により実施した。5回希釈した市販の金エッチング剤の液滴をゲルポリマペンアレイ上にのせた。乾燥後、インク付きペンアレイを金基材に接触させた。接触時、エッチング剤は、金表面に拡散し、金の薄い層を溶かして接触箇所に穴を生じさせた。図13に示されているように、先端部と基材の接触時間及び/又は力を変化させることにより穴の直径を変化させた。接触時間及び/又は接触力を増大させると、結果的に、穴の直径は増大した。
【0074】
上記内容は、本発明を説明すると共に例示するものであるが、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。開示すると共に特許請求の範囲に記載された本発明の全ては、本発明の開示内容に照らして過度に多くの実験を行わないで構成可能であると共に実施可能である。本発明の材料及び方法を、特定の実施形態について説明したが、本発明の思想、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において説明した材料及び/又は方法並びに方法のステップ又はステップのシーケンスに変形を加えることができることは当業者には明らかである。特に、同一又は類似の結果を達成しながら本明細書において説明した作用剤に代えて、科学的に関連すると共に生理学的に関連した或る特定の作用剤を使用できることは明らかである。
【0075】
本明細書において引用した特許文献、刊行物及び非特許文献の全てを参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。本発明の内容と引用した特許文献、刊行物及び非特許文献との間に矛盾がある場合、本発明の内容が優先すべきである。
【0076】
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23.ケー・ビー・リー等(K.-B. Lee, et al.),「サイエンス(Science)」295,1702(2002年)
24.例えば、従来型Si34カンチレバー(曲率半径=20〜60nm)を備えた金基材上への10μm×10μmMHA特徴部のDPN作製は、約30分要する。
25.イー・デラマーチェ等(E. Delamarche, et al.),「ラングミュア(Langmuir)」19,8749(2003年)
26.ティー・ダブリュー・オドム等(T. W. Odom, et al.),「ラングミュア(Langmuir)」18,5314(2002年)
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29.エフ・ホー等(F. Huo, et al.),「サイエンス(Science)」321,1658(2008年)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の基材層に固定された複数個の先端部を有する先端部アレイであって、前記先端部及び前記共通基材層は、エラストマゲルポリマで作られ、各先端部は、約1μm以下の曲率半径を有する、
ことを特徴とする先端部アレイ。
【請求項2】
前記先端部の前記エラストマゲルポリマは、約10MPa〜約300MPaの圧縮弾性率を有する、
請求項1記載の先端部アレイ。
【請求項3】
少なくとも半透明の積み重ね構造体を有する先端部アレイであって、共通のエラストマゲルポリマ基材に固定された複数個のゲルポリマ先端部を有し、前記基材は、ガラススライドに固定されている、
ことを特徴とする先端部アレイ。
【請求項4】
各先端部は、約0.5μm以下の曲率半径を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項5】
各先端部は、約100nm以下の曲率半径を有する、請求項4記載の先端部アレイ。
【請求項6】
前記先端部は、一定の周期的パターンをなして配置されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項7】
前記先端部は、同じ形状のものである、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項8】
前記先端部は、ピラミッド形である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項9】
前記共通基材層の厚さは、約1mm〜約5mmである、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項10】
前記共通基材がくっつけられた剛性支持体を更に有する、
請求項1、2、4〜9のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項11】
前記先端部アレイ、前記共通基材層、及び前記剛性支持体は、少なくとも半透明である、
請求項1、2、4〜10のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項12】
前記共通基材層及び前記先端部の厚さの合計は、約5mm以下である、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項13】
前記厚さの合計は、約1mm以下である、
請求項12記載の先端部アレイ。
【請求項14】
前記厚さの合計は、約200μmである、
請求項13記載の先端部アレイ。
【請求項15】
前記エラストマゲルポリマは、ポリサッカリドゲルと、酸化ポリエチレンゲルと、ポリAMPSゲルと、ポリビニルピロリドンゲルと、メチルセルロースゲルと、ヒアルロナンゲルと、これらの組み合わせとから成る群から選択されている、
請求項1〜14のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項16】
前記ポリサッカリドは、枝なしである、
請求項15記載の先端部アレイ。
【請求項17】
前記ポリサッカリドは、アガロースである、
請求項16記載の先端部アレイ。
【請求項18】
各先端部は、約0.2μm以下の曲率半径を有する、
請求項1〜17のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項19】
前記エラストマゲルポリマは、10MPa〜300MPaの圧力下でフックの性質を示す、
請求項1〜18のいずれか1項に記載の先端部アレイ。
【請求項20】
基材表面上への標識のサブミクロンスケール印刷方法であって、
請求項1〜19のいずれか1項に記載の先端部アレイをコーティングするステップと、
第1の接触期間にわたって第1の接触圧力で前記基材表面を前記アレイの前記コーティングされた先端部の全て又は実質的に全てに接触させてパターニング組成物を前記基材表面上に被着させると共に前記コーティングされた先端部の全て又は実質的に全てと一緒になって実質的に一様な標識を形成するステップとを有し、
前記標識は、1μm未満のドットサイズ(又はライン幅)を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記パターニング組成物は、活性度を持つ生体材料であり、前記活性度は、前記パターニング組成物を前記基材表面に被着させたときに保存される、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記パターニング組成物には、外生的パターニング組成物キャリヤがない、
請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
前記パターニング組成物を前記先端部アレイ上に吸着させ又は吸収させることによりコーティングを行うステップを含む、
請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記先端部アレイ若しくは前記基材表面又はこれら両方を動かすステップと、第2の接触期間にわたると共に第2の接触圧力で前記接触ステップを繰り返すステップとを更に有する、
請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の接触期間と前記第2の接触期間は、同じである、
請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記第1の接触期間と前記第2の接触期間は、異なっている、
請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記第1の接触圧力と前記第2の接触圧力は、同じである、
請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の接触圧力と前記第2の接触圧力は、異なっている、
請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記基材又は前記先端部アレイが取り付けられた圧電スキャナのz‐ピエゾを制御して前記接触圧力を制御するステップを更に有する、
請求項20〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記先端部アレイを動かすと共に前記基材表面を静止状態に保持するステップを更に有する、
請求項20〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記先端部アレイを静止状態に保持すると共に前記基材表面を動かすステップを有する、
請求項20〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記先端部アレイと前記基材表面の両方を動かすステップを有する、
請求項20〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記先端部アレイと前記基材との側方運動を制限してドットから成る標識を形成するステップを有する、
請求項20〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記接触期間、前記接触圧力又はこれら両方を制御して直径が約10nm〜約500μmのドットを形成するステップを有する、
請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記接触中且つ/或いは1つ又は2つ以上の組をなす接触及び被着ステップ相互間で前記先端部アレイと前記基材表面の側方運動を制御して1本又は2本以上のライン及びあらかじめ選択されたパターンを有する標識を形成するステップを有する、
請求項20〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記先端部アレイの各先端部を前記基材表面に接触させるステップを有する、
請求項20〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記標識は、900nm未満のドットサイズ(又はライン幅)を有する、
請求項20〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記標識は100nm未満のドットサイズ(又はライン幅)を有する、
請求項20〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記先端部アレイの前記先端部を前記基材表面に対して均すステップを更に有し、前記均しステップは、
前記先端部アレイを入射光で背面照明して前記先端部の内面からの前記入射光の全反射を生じさせ、
前記先端部アレイの前記先端部と前記基材表面をz軸線に沿って一緒に前記先端部のサブセットと前記基材表面の接触箇所まで至らせ、該接触は、前記基材表面と接触状態にある前記先端部の前記サブセットからの反射光の強度の増大によって示され、これに対し、他の先端部からの反射光の強度に変化がないことは、先端部が接触していないことを示しており、
前記先端部の前記内面からの前記反射光の強度の差に応答して前記先端部アレイと前記基材表面の一方又は両方を他方に対して傾動させて前記基材表面と互いに接触関係をなしていない先端部の接触を達成することによって実施され、前記傾動は、x軸線、y軸線及び/又はz軸線に沿って1回又は2回実施される、
請求項20〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記先端部アレイの前記先端部を前記基材表面に対して均すステップを更に有し、前記均しステップは、
前記先端部アレイを入射光で背面照明して前記先端部の内面からの入射光の全反射を生じさせ、
前記先端部アレイの前記先端部と前記基材表面をz軸線に沿って結合して前記先端部アレイの前記先端部と前記基材表面の接触を生じさせ、
前記先端部アレイと前記基材の一方又は両方を前記z軸線に沿って他方に向かって更に動かして前記先端部のサブセットを圧縮し、前記先端部からの反射光の強度が前記基材表面への前記先端部の圧縮度の関数として増大するようにし、
前記先端部の前記内面からの前記反射光の強度の差に応答して前記先端部アレイと前記基材表面の一方又は両方を他方に対して傾動させて前記基材表面と前記先端部の実質的に一様な接触を達成することによって実施され、前記傾動は、x軸線、y軸線及び/又はz軸線に沿って1回又は2回以上実施される、
請求項20〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
先端部アレイを作製する方法であって、
基材に設けられていて、ランドによって隔てられた凹部のアレイを有するマスターを形成するステップと、
溶剤中に分散され又は溶解したポリマゲル材料及びオプションとして緩衝溶液を含むポリマゲル混合物を前記凹部に充填すると共に前記ランドを該ポリマゲル混合物でコーティングするステップと、
前記ポリマゲル溶液を硬化させてポリマゲル構造体を形成するステップと、
前記ポリマゲル構造体を前記マスターから分離するステップとを有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項42】
ウェルを前記基材に形成して前記基材を異方性ウェットエッチングすることにより前記凹部をピラミッド形凹部として形成するステップを更に有する、
請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記充填されると共にコーティングされた基材を硬化に先立って平板状ガラス層で覆うステップを更に有する、
請求項41又は42記載の方法。
【請求項44】
前記エラストマゲル材料は、ポリサッカリドゲルと、酸化ポリエチレンゲルと、ポリAMPSゲルと、ポリビニルピロリドンゲルと、メチルセルロースゲルと、ヒアルロナンゲルと、これらの組み合わせとから成る群から選択されている、
請求項41〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリサッカリドは、枝なしである、
請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記ポリサッカリドは、アガロースである、
請求項45記載の方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−518294(P2012−518294A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551226(P2011−551226)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/024631
【国際公開番号】WO2010/096591
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【Fターム(参考)】