説明

ゲル化食品用のプラスチック容器

【課題】 容器内に収容したゲル状食品を形崩れや破損を生ずることなく、容器から簡単に且つ綺麗に取り出すことのできる、構造が簡単なゲル状食品用の容器の提供。
【解決手段】 楕円形の開口部を有するゲル状食品用のプラスチック容器であって、楕円形の開口部の全周にわたってフランジを有し、楕円形の開口部における長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブを有し且つ当該補強用のリブを介して外方に突出する耳部を有することを特徴とするゲル状食品用のプラスチック容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状食品用のプラスチック容器に関する。より詳細には、本発明は、ゲル状食品を、ゲル状食品の形崩れや破損を生ずることなく、良好な形状を維持したまま容器から簡単に取り出すことのできるゲル状食品用のプラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー類、プリン類、ババロア、水羊羹、杏仁豆腐、ババロア、豆腐、茶碗蒸しなどの種々のゲル状食品が、プラスチック容器に充填され密封された状態で流通、販売されている。
プラスチック容器に充填され密封されたゲル状食品は、流通、販売、保存時などでの取り扱い性および外観に優れ、しかも密封されていることから衛生面においても優れている。しかし、プラスチック容器に充填・密封されたゲル状食品を、プラスチック容器の表面にシールされているフィルム蓋を剥がして容器から取り出そうとすると、プラスチック容器の内面とゲル状食品とが密着しているため容器から簡単に取り出すことができず、無理に取り出すと形崩れや破損が生ずるというトラブルが生じ易い。
【0003】
プラスチック容器に充填されたプリン類を容器から簡単に取り出せるようにするために、プラスチック容器の底面に短尺の棒状体を突出させておいて、プリン類を食する際に底面の棒状体を手で倒すことによってプラスチック容器の底面に通気穴を開けて容器内の減圧状態を解除するようにした容器収蔵プリン類が知られている(例えば特許文献1を参照)。
また、上記以外にも、ゲル状食品を収納するプラスチック容器の底面に突き刺し片を形成しておき、ゲル状食品を食する際に、当該突き刺し片を操作して底面に通気穴を開けて容器内の減圧状態を解除して、プラスチック容器内のゲル状食品を簡単に取り出せるようにしたゲル状食品収納容器が知られている(特許文献2を参照)。
【0004】
しかしながら、上記した従来の容器収蔵プリン類およびゲル状食品収納容器は、プラスチック容器の底面に通気穴を開けるための棒状体または突き刺し片をプラスチック容器の底面に形成する必要があるため、容器の構造、特に容器の底面の構造が複雑になり、容器の製造コスト、特に容器の製造に用いる金型の製作コストの高くなり易い。しかも、これら従来のものは、プラスチック容器の底面に通気穴を形成するための棒状体または突き刺し片を有するため、容器の底面に当該棒状体または突き刺し片と同じ高さかまたはそれよりも高い脚部や包囲部を形成する必要があり、かかる点からも容器の構造が複雑にならざるを得ない。棒状体または突き刺し片を包囲する脚部や包囲部を底面に設けない場合には、当該容器を積み重ねた際に底面の棒状体または突き刺し片が、下に積み重なっている容器表面のフィルム蓋に突き刺さって下に積み重なっている容器に収容されているプリン類やゲル状食品が漏れ出るというトラブルを生ずる恐れがある。
さらに、これら従来のものでは、プラスチック容器の材質や底面に設けた棒状体または突き刺し片の材質などによっては、プリン類やゲル状食品を喫食しようとする際に、高齢者、子供、病人などの力のない人では棒状体または突き刺し片を倒して容器の底面に通気穴を開けることが困難な場合があり、プラスチック容器からプリン類やゲル状食品を簡単に取り出せないという問題が生ずることがある。
【0005】
また、プラスチック容器からゲル状食品を簡単に取り出せるようにするために、容器底面と側面のなす角度を4〜15°にし、容器内面の表面粗さの中心線平均粗さ(Ra)を0.15〜4.00μmにして容器内面を粗面化した樹脂容器が知られている(特許文献3を参照)。
しかしながら、この樹脂容器の場合は、容器内面の表面粗さを前記した特定の範囲にする必要があるため、樹脂容器の製造にあたって、特定の粗面加工を施した型を使用する必要がある。また、ゲル状食品の種類によって樹脂容器内面への粘着特性が異なることから、容器内面の表面粗さ(Ra)を前記した0.15〜4.00μmの範囲にしても、ゲル状食品を樹脂容器から簡単に取り出せないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53−31476号公報
【特許文献2】特開2001−139087号公報
【特許文献3】特開2000−344222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ゲル状食品を、形崩れや破損を生ずることなく、容器に充填されていたときの形状を維持したままで、容器から簡単に且つ綺麗に取り出すことのできるゲル状食品用のプラスチック容器を提供することである。
本発明の目的は、力の足りない高齢者、子供、病人などであっても、ゲル状食品を、形崩れや破損を生ずることなく容器から簡単に奇麗に取り出すことのできるゲル状食品用のプラスチック容器を提供することである。
さらに、本発明の目的は、通気穴を開けるための棒状体や突き刺し片などを容器の底部に設ける必要がなく、構造が簡単で、金型の作製などにコストがかからず、しかもゲル状食品を収容する前にはコンパクトに積み重ねて包装したり取り扱うことのできるゲル状食品用のプラスチック容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の目的を達成すべく種々検討を重ねてきた。その結果、ゲル状食品を収容するプラスチック容器を、全周にわたってフランジを有する楕円形の開口部を有する形状とし、当該楕円形の開口部における長径の一方または両方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブを有すると共に当該補強用のリブを介して外方に突出する耳部を有する形状にすると、楕円形の開口部における長径の両端に相当する部分およびその近傍部分での押圧強度(耐押圧性)が楕円形の開口部における短径の両端に相当する部分およびその近傍部分での押圧強度(耐押圧性)よりも高くなること、それによって、プラスチック容器に充填されているゲル状食品を容器から取り出して皿などに載せる際に、楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で内側に押圧すると、小さな押圧力で楕円形の開口部における短径の両端側およびその近傍の容器壁が容易に外方に拡張して、プラスチック容器に充填されているゲル状食品が短径の両端側およびその近傍で容器の内壁から離れ、その部分からプラスチック容器の内壁とゲル状食品の外面との間に空気が流れ込んで、プラスチック容器内のゲル状食品を、形崩れや破損を生ずることなく、充填されていたときのままの形状を保ちながら、プラスチック容器から簡単に且つ円滑に取り出せることを見出した。
また、本発明者らは、楕円形の開口部を有する前記したプラスチック容器による場合は、小さな力で容器の楕円形の開口部を変更させることができるため、力の足りない高齢者、子供、病人などであっても、ゲル状食品を形崩れや破損を生ずることなくプラスチック容器から簡単に奇麗に取り出せることを見出した。
【0009】
さらに、本発明者らは、楕円形の開口部を有する前記したプラスチック容器は、通気穴を開けるための棒状体や突き刺し片などを容器の底部に設ける必要がないため、プラスチック容器全体の構造が複雑にならず、金型の作製などにコストがかからず、しかもゲル状食品を収容する前にはコンパクトに積み重ねて包装したり取り扱うことができることを見出した。
【0010】
また、本発明者らは、上記したプラスチック容器において、楕円形の開口部の短径と長径の比を特定の範囲にすることによって、またプラスチック容器の深さと楕円形の開口部の短径の比率を特定の範囲にすることによって、また容器壁の厚さを特定の範囲にすることによって、またフランジの厚さおよび幅を特定の範囲にすることによって、さらにプラスチック容器をポリプロピレン製とすることによって、プラスチック容器からのゲル状食品の取り出しがより円滑に行なえることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)楕円形の開口部を有するゲル状食品用のプラスチック容器であって、楕円形の開口部の全周にわたってフランジを有し、楕円形の開口部における長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブを有し且つ当該補強用のリブを介して外方に突出する耳部を有することを特徴とするゲル状食品用のプラスチック容器である。
【0012】
そして、本発明は、
(2)楕円形の開口部における長径のもう一方の端部側に位置するフランジ部分にも補強用のリブを有するかまたは補強用のリブを有していない前記(1)のゲル状食品用のプラスチック容器;
(3)楕円形の開口部の短径:長径の比が1:1.3〜1:2.3である前記(1)または(2)のゲル状食品用のプラスチック容器;
(4)深さ:楕円形の開口部の短径の比が1:0.7〜1:2.5である前記(1)〜(3)のいずれかのゲル状食品用のプラスチック容器;
(5)容器壁の厚さが100〜800μmである前記(1)〜(4)のいずれかのゲル状食品用のプラスチック容器;
(6)フランジの厚さが100〜800μmであり、フランジの幅が2〜10mmである前記(1)〜(5)のいずれかのゲル状食品用のプラスチック容器;
(7)ポリプロピレンからなる前記(1)〜(6)のいずれかのゲル状食品用のプラスチック容器;および、
(8)プラスチック容器内にゲル状食品を収納した後に楕円形の開口部の全周にわたって有するフランジ部分にプラスチックフィルムを蓋体としてシールして用いるものである前記(1)〜(7)のいずれかのゲル状食品用のプラスチック容器;
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゲル状食品用のプラスチック容器は、楕円形の開口部を有し、楕円形の開口部の全周にわたってフランジを有し、しかも楕円形の開口部における長径の一方または両方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブを有しているため、楕円形の開口部における長径の両端に相当する部分およびその近傍部分での押圧強度(耐押圧性)が楕円形の開口部における短径の両端に相当する部分およびその近傍部分での押圧強度(耐押圧性)よりも高く、それによってプラスチック容器に充填されているゲル状食品を容器から取り出して皿などに載せる際に、楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で内側に押圧することによって、小さな押圧力で楕円形の開口部における短径の両端側およびその近傍の容器壁が容易に外方に拡張して、プラスチック容器に充填されているゲル状食品が短径の両端側およびその近傍で容器の内壁から離れ、その部分からプラスチック容器の内壁とゲル状食品の外面との間に空気が流れ込み、プラスチック容器内のゲル状食品を、形崩れや破損などを生ずることなく、充填されていたときのままの形状を保ちながら、プラスチック容器から簡単に且つ円滑に取り出すことができる。
本発明のプラスチック容器を用いた場合は、上記したように、小さな押圧力で楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で内側に押圧するだけで、ゲル状食品に形崩れや破損を起こすような大きな変形を与えることなく、楕円形の開口部の短径の両端側およびその近傍の容器壁が外方に拡張した状態に変形することができるため、力の足りない高齢者、子供、病人などであっても、ゲル状食品をプラスチック容器から形崩れや破損などを生ずることなく簡単に奇麗に取り出すことができる。
本発明のゲル状食品用のプラスチック容器は、ゲル状食品をプラスチック容器から取り出し易くするための通気穴を開けるための棒状体や突き刺し片などを容器の底部に設ける必要がなく、プラスチック容器全体の構造が簡単であるため、プラスチック容器の製造、特に金型の作製などにコストがかからず、しかもゲル状食品を収容する前にはコンパクトに積み重ねて包装したりして取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のゲル状食品用のプラスチック容器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のゲル状食品用のプラスチック容器は、楕円形の開口部を有し、当該楕円形の開口部の全周にわたってフランジを有する。さらに、本発明のゲル状食品用のプラスチック容器は、楕円形の開口部における長径の一方または両方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブを有し、且つ当該補強用のリブを介して外方に突出する耳部を有する。
【0016】
本発明のゲル状食品用のプラスチック容器(以下単に「プラスチック容器」ということがある)は、楕円形の開口部を有すると共に、前記した特定の形状を有することにより、楕円形の開口部における長径の両端に相当する部分およびその近傍部分での押圧強度(耐押圧性)が、楕円形の開口部における短径に相当する部分およびその近傍部分での押圧強度(耐押圧性)よりも高い。そのため、本発明のプラスチック容器に充填されているゲル状食品を容器から取り出して皿などに載せる際に、楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で内側に押圧すると、小さな押圧力で、楕円形の開口部における短径の両端側およびその近傍の容器壁が容易に外方に拡張して、プラスチック容器に充填されているゲル状食品が短径の両端側およびその近傍で容器の内壁から離れ、その部分からプラスチック容器の内壁とゲル状食品の外面との間に空気が流れ込んで、プラスチック容器内のゲル状食品を、破損や形崩れなどを生ずることなく、充填されていたときのままの形状を保ちながら、プラスチック容器から簡単に且つ円滑に取り出すことができる。
【0017】
限定されるものではないが、本発明のゲル状食品用のプラスチック容器について図1を参照して説明する。
図1において、(a)は、本発明のプラスチック容器の一例の外観を模式的に示した図である。
また、図1の(b)は、図1の(a)のプラスチック容器を上方から見た平面図であり、図1の(c)は図1の(a)のプラスチック容器を楕円形の開口部1の長径に相当する部分で縦方向に切断した縦断面図であり、図1の(d)は図1の(a)のプラスチック容器を楕円形の開口部1の短径に相当する部分で縦方向に切断した縦断面図である。
【0018】
本発明のプラスチック容器は、図1の(a)および(b)にみるように、楕円形の開口部1を有し、当該楕円形の開口部の全周にわたってフランジ2を有する。フランジ2の幅は、プラスチック容器の開口部の大きさ、深さ、内容量などに応じて決めることができ、一般的には2〜10mm、特に3〜8mmであることが、フランジ2への蓋体をなすプラスチックフィルムのシール性、プラスチックフィルムでシールした容器の密封性、プラスチック容器の強度、フィルムの開け易さなどの点から好ましい。
さらに、本発明のプラスチック容器は、楕円形の開口部1の長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブ3を有するか、または両方の端部側に位置するフランジ部分のそれぞれに補強用のリブ3を有し(なお、楕円形の開口部の長径の両方の端部側に位置するフランジ部分のそれぞれに補強用のリブを設けたものは図示せず)、当該補強用のリブ3を介して外方に突出する耳部4を有する。長径の両方の端部側に位置するフランジ部分の各々に補強用リブを設ける場合は、一方の補強用のリブ3にのみ外方に突出する耳部4を形成してもよいし、両方の補強用のリブ3のそれぞれに外方に突出する耳部4を形成してもよく、経済性などの点からは一方の補強用のリブ3にのみ外方に突出する耳部4を形成することが好ましい。
【0019】
本発明のプラスチック容器は、楕円形の開口部1の周囲にフランジ2を有していることによって、楕円形の開口部1の補強がなされると共に、プラスチック容器に蓋体としてプラスチックフィルム(図示せず)を被せて開口部1をプラスチックフィルムで覆って、プラスチックフィルムをフランジ2部分にシールすることにより、ゲル状食品を充填したプラスチック容器を内容物の漏れなどを生ずることなく、プラスチックフィルムで密封することができる。その際に、長径の一方の端部側または両方の端部側に位置するフランジ部分以外のフランジ部分では、折り返しを設けずに、図1の(a)、(c)、(d)にみるように平坦なフランジとしておくと、楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で内側に押圧したときに、小さな押圧力で、楕円形の開口部における短径の両端側およびその近傍の容器壁が容易に外方に拡張変形し易くすることができる。
【0020】
また、楕円形の開口部1の長径の一方の端部側または両方の端部側に位置するフランジ部分に設ける補強用のリブ3は、図1の(c)に示すようにフランジの端部を波形に形成したり、フランジ面に対して直角またはほぼ直角になるよう折り曲げて形成してもよいし、または図示していないがフランジの端部を肉厚にしてリブとしてもよい。
本発明のプラスチック容器の楕円形の開口部1の長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に、補強用のリブ3を介して外方に突出させて設けた耳部4では、楕円形の開口部1の全周に設けたフランジ2部分よりも、プラスチックフィルム(蓋体)のシール強度が小さくなるようにしておくことによって、楕円形の開口部1にシールして取り付けられているプラスチックフィルムからなる蓋体を当該耳部4でプラスチック容器から剥がしてプラスチック容器内のゲル状食品を取り出す際に、プラスチックフィルムからなる蓋体の楕円形の開口部1からの引きはがしを容易にすることもできる。
耳部4でのプラスチックフィルムのシール強度を小さくする方法としては、例えば図1に例示するように、耳部4の構造を、プラスチックフィルムのシールが部分的にだけ行なわれる溝や凹凸などを有する構造としておくことなどが挙げられる。
耳部4の幅および突出長さは、プラスチック容器の楕円形の開口部にシールにより取り付けられているプラスチックフィルムからなる蓋体を耳部4でつまんで引きはがし易いサイズであればよい。
【0021】
本発明のプラスチック容器の大きさは、内容物の種類、量、流通形態などによって変えることができるが、一般的には楕円形の開口部1の長径(内径)が70〜150mmおよび短径(内径)が20〜100mmの範囲内であることが好ましく、楕円形の開口部1の長径(内径)が80〜110mmおよび短径(内径)が50〜70mmの範囲内であることがより好ましい。
また、本発明のプラスチック容器の深さも内容物の種類、量、流通形態などによって変えることができるが、一般的にはプラスチック容器の深さは20〜140mmの範囲内であることが好ましく、30〜70mmの範囲内であることがより好ましい。
【0022】
本発明のプラスチック容器では、楕円形の開口部1における短径の長さ(L1)(内径)と長径の長さ(L2)(内径)の比、L1:L2が1:1.3〜1:2.3であることが好ましく、1:1.4〜1:1.7であることがより好ましい。L1:L2を前記範囲にすることによって、プラスチック容器の楕円形の開口部1における長径の両端部分を指で内側に押圧することによって、小さな押圧力で、ゲル状食品をプラスチック容器から破損や形崩れなどを生ずることなく、簡単に且つきれいに取り出すことができる。
【0023】
本発明のプラスチック容器では、プラスチック容器の深さL3と楕円形の開口部1における短径の長さL1の比、L3:L1が1:0.7〜1:2.5であることが好ましく、1:1.4〜1:2.2であることがより好ましい。
3:L1を前記範囲にすることによって、プラスチック容器が深くなり過ぎず、プラスチック容器の楕円形の開口部1における長径の両端部分を指で内側に押圧することによって、小さな押圧力で、ゲル状食品をプラスチック容器から破損などを生ずることなく、簡単に且つきれいに取り出すことができる。
【0024】
本発明のプラスチック容器では、容器壁の厚さは100〜800μm、更には120〜550μmであることが、プラスチック容器の製造の容易性、ゲル状食品を充填し密封した容器入りゲル状食品の取り扱い性、容器入りゲル状食品を高温で加熱殺菌する際や保存時、流通時などにおける変形防止、食する際のプラスチック容器からのゲル状食品の取り出しの容易性、耐衝撃性などの点から好ましい。
本発明のプラスチック容器では、楕円形の開口部1の全周にわたるフランジ2の厚さは100〜800μm、特に300〜550μm、フランジ2の幅(外方への突出幅)は2〜10mm、特に3〜8mmであることが、プラスチック容器の強度、フランジ部分への蓋体をなすプラスチックフィルムによるシール性、容器の密封性などの点から好ましい。
本発明のプラスチック容器では、補強用リブによる補強効果、開封時の安定性などの点から、フランジ部分に設けてなる補強用リブの幅(上下幅または厚さ)は1〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。また補強用リブの長さ(フランジの周囲に沿った長さ)は、フランジの全周の3〜35%であることが好ましく、7〜25%であることがより好ましい。
本発明のプラスチック容器では、補強用リブを介して外方に突出する耳部の長さ(補強用リブから外方に突出した部分の長さ)は、プラスチック容器の楕円形の開口部にシールしたトップフィルム(蓋体をなすプラスチックフィルム)を開口部から引き剥がす際の引き剥がし容易性、梱包時や陳列時の整列のし易さなどの点から、5〜30mmであることが好ましく、7〜20mmであることがより好ましい。
【0025】
本発明のプラスチック容器の底部の形状は、平坦であってもよいし、湾曲した形状(例えば円弧状、楕円弧状、波形状など)であってもいずれでもよい。ゲル状食品を充填した後のプラスチック容器の座りをよくするためには、容器の底部の少なくとも一部を平坦状にするのがよい。
【0026】
本発明のプラスチック容器を形成するプラスチックとしては、容器の変形や劣化を生ずることなくゲル状食品を安定した状態で充填し保存することができ、一方容器の楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で内側に押圧したときに容器の破損を生ずることなく楕円形の開口部における短径の両端側およびその近傍の容器壁が容易に外方に拡張し得る可撓性を有し、かつ食品への使用が許可されているプラスチック材料のいずれをも用いることができる。
そのうちでも、本発明のプラスチック容器は、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレートから形成されていることが好ましく、ポリプロピレンから形成されていることがより好ましい。また、保存性の点からは、プラスチック容器はエチレン−ビニルアルコール系共重合体などの酸素バリア性のあるプラスチックから形成されていてもよい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体などの酸素パリア性のプラスチックを用いる場合は、本発明のプラスチック容器は、当該酸素パリア性のプラスチック単独で形成されていてもよいが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などの酸素バリア性のプラスチック層と他のプラスチック層(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなど)とが積層した積層フィルムや積層シートから形成することが、プラスチック容器の成形性、コストなどの点から望ましい。
【0027】
本発明のプラスチック容器は、透明、半透明または不透明のいずれであってもよい。本発明のプラスチック容器は無色であってもよいし、または任意の色(例えば、白、黒、灰色、赤、青、黄色、緑、肌色、ピンク、その他の色)に着色されていてもよい。また場合によっては、容器壁に模様や文字などが描かれていてもよい。
【0028】
本発明のプラスチック容器は、上記した構造を有する本発明のプラスチック容器に相当する型キャビティを有する金型などを使用して、プラスチックシートまたはプラスチックフィルムをプレス成形、真空成形、プレス・真空成形を行なって製造することができ、また射出成形などを行なって製造することができる。
【0029】
本発明のプラスチック容器に収容するゲル状食品の種類は特に限定されない。限定されるものではないが、本発明のプラスチック容器に収容し得るゲル状食品としての例としては、各種ゼリー類、プリン類、ババロア、水羊羹、杏仁豆腐、茶わん蒸し、水羊羹、豆腐などを挙げることができる。
上記したゼリー類の具体例としては、ミックスフルーツゼリー、ピーチゼリー、マンゴーゼリー、イチゴゼリー、ブルーベリーゼリー、抹茶ゼリー、トマトゼリー、メロンゼリー、コーヒーゼリー、紅茶ゼリー、ワインゼリー、ゼリー惣菜(蕗煮ゼリー、筍煮ゼリー、蕗筍煮ゼリー、高野豆腐煮ゼリー、ひじき煮ゼリー、おでんゼリー、野菜ゼリー、煮こごり、タラコゼリー、鰊ゼリー、椎茸煮ゼリー、蕗ちりめんゼリー、炊き合わせゼリーなど)、コンニャクゼリーなどを挙げることができる。
また、上記したプリン類の具体例としては、カスタードプリン、豆乳プリン、カボチャプリン、抹茶プリン、黒糖プリン、チョコレートプリン、紅茶プリン、コーヒープリン、バナナプリン、マロンプリン、牛乳プリン、マンゴープリン、ヨーグルトプリン、黒ゴマプリン、イチゴプリン、キャラメルプリンなどを挙げることができる。
【0030】
本発明のプラスチック容器を用いてプラスチック容器入りのゲル状食品を製造するに当っては、例えば、ゲル状食品を製造するためのゲル化前の食品材料を本発明のプラスチック容器に充填し、プラスチック容器の開口部を、蓋体をなすプラスチックフィルムで覆ってプラスチック容器の開口部の周囲のフランジ部分に当該プラスチックフィルムをシールしてから内容物をゲル化するか、容器内の内容物をゲル化してからプラスチック容器の開口部を蓋体をなすプラスチックフィルムで覆ってプラスチック容器の開口部の周囲のフランジ部分に当該プラスチックフィルムをシールすることによって製造することができる。
ゲル状食品を充填したプラスチック容器の開口部を覆う蓋体は、プラスチックフィルムに限定されず、プラスチックと金属フィルムや金属箔との積層フィルムであってもよいし、また場合によってはプラスチック容器の開口部にプラスチックフィルムをシールするのではなく、プラスチック容器のフランジ部分に嵌合する構造の蓋体であってもよい。
【0031】
プラスチック容器入りのゲル状食品の製造に当っては、プラスチック容器の開口部を蓋体で密封する前または蓋体で密封した後に、必要に応じて、加熱滅菌処理を行なってもよい。加熱滅菌処理は、プラスチック容器を形成しているプラスチック容器の軟化点以下の温度で行なうのがよく、例えば、ポリプロピレン製のプラスチック容器の場合には、加熱滅菌温度は80〜100℃が好ましく、85〜100℃がより好ましく、90〜100℃がさらに好ましい。その際の加熱時間は、20〜120分が好ましく、30〜90分がより好ましい。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0033】
《実施例1》
(1) 味醂9g、上白糖9g、醤油17g、だし260gを鍋に入れて加熱し、沸騰したところに筍(1個の大きさ約7〜11g)250gを入れて10分間にて筍煮を得た。
(2) 味醂9g、上白糖9g、醤油17g、だし260gを鍋に入れて加熱し、沸騰したところに蕗(1個の大きさ約2〜8g)250gを入れて10分間にて蕗煮を得た。
(3) 鍋に、味醂35g、上白糖35g、醤油56g、だし(鰹節と昆布から取っただし)1040gおよびゲル化製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「ゲルアップWA」)[ゲル化剤(カラギーナンおよびローカストビーンガム)の含有量45質量%、カラギーナン:ローカストビーンガムの質量比=約5.4:1]12gを入れ、加熱して沸騰したところで加熱を止めて、調味液を調製した。
【0034】
(4) 図1に示すポリプロピレン製のプラスチック容器[内容量=約120ml、開口部の短径(内径)L1=61mm、長径(内径)L2=91mm、壁厚=550μm、フランジの幅=5mm、容器の深さ=35mm、補強用リブの幅(上下幅)=2mm、補強用リブの長さ(フランジに沿った長さ)=45mm(フランジの全周の約17%)、耳部の長さ(補強用リブから外方に突出した耳部の突出長さ)=10mm]に、上記(1)で調理した筍煮3個と上記(2)で調理した蕗煮3個をきれいに入れ、そこに上記(3)で調製した調味液約80gを充填し、満注状態で、プラスチック容器のフランジ部分にトップフィルム(ポリプロピレンとナイロンの積層フィルム)をヒートシールして密封した。
(5) 上記(4)で得られた筍蕗煮とゼリー液を充填し密封した容器を、100℃の熱水槽に60分間浸漬して加熱した後、取り出して冷水槽(温度10℃)に60分間浸漬して調味液をゲル化させて、プラスチック容器入りの筍蕗煮ゼリーを製造した。
【0035】
(6) 上記(5)で得られたプラスチック容器入りの筍蕗煮ゼリーについて、プラスチック容器の開口部にシールしたトップフィルムをプラスチック容器の開口部の耳部に位置するフィルムを手でつまんで剥がした後、皿の上に伏せて(プラスチック容器の開口部を皿に接触させて)、プラスチック容器の楕円形の開口部における長径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で軽く内側に押圧し、その状態でプラスチック容器を上に持ち上げたところ、プラスチック容器内に充填されていた筍蕗煮ゼリーを、形崩れや破損を何ら生ずることなく充填されていたときと同じ形状を保ちながら、皿の上に取り出すことができた。
【0036】
《比較例1》
(1) 図1に示すプラスチック容器の代りに、円形の開口部を有し、開口部の全周にフランジを有し、フランジの1カ所に補強用リブと当該補強用リブに連接した耳部を有する円形の開口部を有するポリプロピレン製のプラスチック容器[内容量=約120ml、開口部の直径(内径)=76mm、壁厚=550μm、フランジの幅=5mm、容器の深さ=35mm、補強用リブの幅(上下幅)=2mm、補強用リブの長さ(フランジに沿った長さ)=45mm、耳部の長さ(補強用リブから外方に突出した耳部の突出長さ)=10mm]を用い、このプラスチック容器に、実施例1の(1)で調理した筍煮3個と実施例1の(2)で調理した蕗煮3個をきれいに入れ、そこに実施例1の(3)で調製した調味液約80gを充填し、満注状態で、プラスチック容器のフランジ部分にトップフィルム(ポリプロピレンとナイロンの積層フィルム)をヒートシールして密封した。
(2) 上記(4)で得られた筍蕗煮とゼリー液を充填し密封した容器を、100℃の熱水槽に60分間浸漬して加熱した後、取り出して冷水槽(温度10℃)に60分間浸漬して調味液をゲル化してプラスチック容器入りの筍蕗煮ゼリーを製造した。
【0037】
(3) 上記(2)で得られたプラスチック容器入りの筍蕗煮ゼリーについて、プラスチック容器の開口部にシールしたトップフィルムをプラスチック容器の開口部の耳部に位置するフィルムを手でつまんで剥がした後、プラスチック容器の円形の開口部における直径の両端側に位置するフランジ部分の下の部分(容器壁)を手で軽く内側に押圧し、その状態で皿の上に伏せて(プラスチック容器の開口部を皿に接触させて)プラスチック容器を上に持ち上げてプラスチック容器を取り除こうとしたが、プラスチック容器に充填されていた筍蕗煮ゼリーがプラスチック容器から分離しなかった。
そこで、筍蕗煮ゼリーをプラスチック容器から取り出すために、筍蕗煮ゼリー入りのプラスチック容器をプラスチック容器の開口部を下に向けた状態で上下に強く振ったところ、筍蕗煮ゼリーがプラスチック容器から離れて皿の上に落下したが、取り出す際の上下の振りと皿の上への落下によって、筍蕗煮ゼリーの一部に形崩れが生じ、きれいに取り出すことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のゲル状食品用のプラスチック容器を用いてプラスチック容器に充填されたゲル状食品を製造することによって、形崩れや破損を生ずることなくゲル状食品をプラスチック容器から簡単にきれいに取り出すことのできるプラスチック容器入りのゲル状食品を製造することができるので、本発明のプラスチック容器は、ゲル状食品用のプラスチック容器として有効に使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 開口部
2 フランジ
3 リブ
4 耳部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楕円形の開口部を有するゲル状食品用のプラスチック容器であって、楕円形の開口部の全周にわたってフランジを有し、楕円形の開口部における長径の一方の端部側に位置するフランジ部分に補強用のリブを有し且つ当該補強用のリブを介して外方に突出する耳部を有することを特徴とするゲル状食品用のプラスチック容器。
【請求項2】
楕円形の開口部における長径のもう一方の端部側に位置するフランジ部分にも補強用のリブを有するかまたは補強用のリブを有していない請求項1に記載のゲル状食品用のプラスチック容器。
【請求項3】
楕円形の開口部の短径:長径の比が1:1.3〜1:2.3である請求項1たは2に記載のゲル状食品用のプラスチック容器。
【請求項4】
深さ:楕円形の開口部の短径の比が1:0.7〜1:2.5である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル状食品用のプラスチック容器。
【請求項5】
容器壁の厚さが100〜800μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル状食品用のプラスチック容器。
【請求項6】
フランジの厚さが100〜800μmであり、フランジの幅が2〜10mmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル状食品用のプラスチック容器。
【請求項7】
ポリプロピレンからなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のゲル状食品用のプラスチック容器。
【請求項8】
プラスチック容器内にゲル状食品を収納した後に楕円形の開口部の全周にわたって有するフランジ部分にプラスチックフィルムを蓋体としてシールして用いるものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のゲル状食品用のプラスチック容器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−178460(P2011−178460A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47294(P2010−47294)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】