説明

ゲル組成物

【課題】
本発明の課題は、開放系に放置した際に成分の揮散に伴って、液状化するゲル組成物を提供すること、および、芳香剤または消臭剤の使用後に残留する残渣の量が少なく、成分の揮散に伴う芳香・消臭効果の低下が抑制される、芳香剤または消臭剤を提供することである。
【解決手段】
(a)C7−9アルカン酸アルミニウムおよびC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物、ならびにC7−9アルカン酸アルミニウムから選択されるゲル化剤;
(b)グリコール類およびグリコールエーテル類から選択される液状化剤;
(c)炭化水素系溶剤から選択される分散用溶剤;
を含むゲル組成物であって、開放系に放置することにより液状化することを特徴とする前記ゲル組成物、および当該ゲル組成物を含む芳香剤または消臭剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放系に放置することにより液状化することを特徴とするゲル組成物、および当該ゲル組成物を含んでなる芳香・消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
油性のゲル組成物は、芳香剤および消臭剤成分として用いられており、芳香剤または消臭剤として美観に優れ、かつ優れた芳香消臭効果を有するゲル組成物が求められている。より付加価値の高い芳香剤および消臭剤を得るためのゲル組成物として、例えば、オクチル酸アルミニウム、C12−20ヒドロキシ不飽和高級脂肪酸およびベンジリデンソルビトール誘導体を含むゲル組成物(特許文献1)、オクチル酸アルミニウムとC12−24高級脂肪酸アルミニウムとの混合物および官能基を有するポリオレフィンを含むゲル組成物(特許文献2)、ならびにオクチル酸アルミニウムとC12−24高級脂肪酸アルミニウムとの混合物およびスチレン系熱可塑性エラストマーを含むゲル組成物(特許文献3)などが報告されている。
【0003】
また、油性液状組成物も芳香剤および消臭剤の成分として使用されているが、ゲル組成物を成分とするものと比べて、容積が大きくなり、また商品の運搬時や使用時に設置する際に液体成分がこぼれる恐れがあり、ゲルを成分とする芳香剤および消臭剤と比べて取り扱い方法が制限されることとなる。
【特許文献1】特開2003−205025号公報
【特許文献2】特開2003−290331号公報
【特許文献3】特開2006−55239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ゲル組成物を成分とする芳香剤および消臭剤に関しては、芳香消臭成分の揮散後に、ゲルが固化して干からびた固形の残渣が残り、美観的に好ましいとは言えないという欠点があり、また、使用後に固形の残渣が残るために取り替え時期(終点)がわかりにくい点も問題となっていた。さらに、使用中、成分が揮散することによるゲルの表面積の減少、およびゲルの固化に伴って、芳香消臭効果自体が低下するという点も問題となっていた。
【0005】
したがって、本発明の目的は、芳香剤または消臭剤の使用後に残留する残渣の量が少なく、成分の揮散に伴う芳香・消臭効果の低下が抑制される、芳香剤または消臭剤用のゲル組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、上記課題の解決手段として、使用前および使用の初期段階でゲル形状を有し、使用に伴って経時的に液状に変化するゲル組成物を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の1つの側面によれば、
(a)C7−9アルカン酸アルミニウムおよびC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物、ならびにC7−9アルカン酸アルミニウムから選択されるゲル化剤;
(b)グリコール類およびグリコールエーテル類から選択される液状化剤;および
(c)炭化水素系溶剤から選択される分散用溶剤;
を含むゲル組成物であって、開放系に放置することにより液状化することを特徴とする前記ゲル組成物が提供される。
【0008】
本発明の別の側面によれば、
(a)C7−9アルカン酸アルミニウムおよびC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物、ならびにC7−9アルカン酸アルミニウムから選択されるゲル化剤;
(b)グリコール類およびグリコールエーテル類から選択される液状化剤;
(c)炭化水素系溶剤から選択される分散用溶剤;および
(d)芳香・消臭成分
を含むゲル組成物であって、開放系に放置することにより液状化することを特徴とする前記ゲル組成物が提供される。
【0009】
本発明の別の側面によれば、
(a)C7−9アルカン酸アルミニウムおよびC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物、ならびにC7−9アルカン酸アルミニウムから選択されるゲル化剤;
(b)グリコール類およびグリコールエーテル類から選択される液状化剤;
(c)炭化水素系溶剤から選択される分散用溶剤;
(d)芳香・消臭成分;および
(e)C12−24脂肪酸から選択されるゲル化促進剤
を含むゲル組成物であって、開放系に放置することにより液状化することを特徴とする前記ゲル組成物が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の側面によれば、前記組成物の全重量に対して、前記液状化剤を0.1〜70重量%で含む、本明細書で定義したゲル組成物が提供される。本明細書において、本発明の組成物の配合割合の記載は、組成物の作製時点での割合を意味するが、開放系での使用中に、本件明細書に記載の配合割合の範囲に含まれるゲル組成物は、本発明の範囲に含まれる。
【0011】
本発明の別の側面によれば、
(a)4〜15重量%の、C7−9アルカン酸アルミニウムおよびC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物、ならびにC7−9アルカン酸アルミニウムから選択されるゲル化剤;
(b)0.1〜70重量%の、グリコール類およびグリコールエーテル類から選択される液状化剤;
(c)20〜50重量%の炭化水素系溶剤から選択される分散用溶剤;および
(d)1〜70重量%の芳香・消臭成分
を含むゲル組成物が提供される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、
(a)4〜15重量%の、C7−9アルカン酸アルミニウムおよびC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物、ならびにC7−9アルカン酸アルミニウムから選択されるゲル化剤;
(b)0.1〜70重量%の、グリコール類およびグリコールエーテル類から選択される液状化剤;
(c)20〜50重量%の炭化水素系溶剤から選択される分散用溶剤;および
(d)1〜70重量%の芳香・消臭成分
(e)0.5〜3重量%のC12−24脂肪酸から選択されるゲル化促進剤
を含むゲル組成物が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、前記液状化剤が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール n−プロピルエーテルから選択される、本明細書で定義したゲル組成物が提供される。
【0014】
本発明の別の側面によれば、既に定義した本発明のゲル組成物を含む、芳香剤または消臭剤が提供される。
本発明のこの側面の1つの態様によれば、容器に収納されてなる前記芳香剤または消臭剤であって、当該容器が、芳香剤または消臭剤を収納する収納部と、ゲル組成物の液状化により生じた液体を収納する液体収納部を有し、当該液体収納部が、芳香・消臭成分の揮散を可能にする通気手段を有してなる、前記芳香剤または消臭剤が提供される。例えば、前記液体収納部は前記収納部の側方または下方にあってもよい。さらに、この側面の1つの態様において、本発明の芳香剤または消臭剤は、液状化した前記ゲル組成物を吸収するための吸収揮散体を備えた容器に収納されていてもよい。
【0015】
本発明で使用される液状化剤は、グリコール類またはグリコールエーテル類であれば特に限定されない。グリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等が挙げられる。グリコールエーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールn−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル等が挙げられる。本発明で液状化剤として使用されるグリコール類またはグリコールエーテル類は、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール n−プロピルエーテルから、好ましくはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール n−プロピルエーテル選択される。さらに好ましい液状化剤は、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテルまたはプロピレングリコール n−プロピルエーテルである。本発明で使用される液状化剤は、ゲル組成物において他の用途に使用されうる成分であってもよく、例えば溶剤などとして使用されうるものであってもよい。
【0016】
特に限定はされないが、前記液状化剤は、例えば0.1〜70重量%、好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは10〜70重量%、さらにより好ましくは20〜70重量%の割合で、前記ゲル組成物に含まれる。
【0017】
本発明における上記ゲル化剤に使用されるC7−9アルカン酸アルミニウムとしては、オクチル酸アルミニウム(Al(−OH)[−OOC(C15)])が挙げられ、オクチル酸アルミニウムとしては、例えば、ジ−2−エチルヘキサン酸アルミニウムが挙げられる。また、上記ゲル化剤に使用されるC12−24脂肪酸アルミニウムとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸のアルミニウム塩など、およびそれらの混合物が挙げられ、好ましくは、ステアリン酸アルミニウムが使用される。
【0018】
また、オクチル酸アルミニウムとC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物を使用する場合、その場合、オクチル酸アルミニウムとC12−24脂肪酸アルミニウムとの混合割合は厳密に制限されるものではないが、一般には、オクチル酸アルミニウムとC12−24脂肪酸アルミニウムの合計量を基準にしてC12−24脂肪酸アルミニウムが6〜80モル%、より好ましくは16〜50モル%の範囲内にあるのが好適である。また、ジ−2−エチルヘキサン酸アルミニウム中の2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)の一部がC12−24脂肪酸で置換されている複合酸アルミニウム塩を使用することもでき、その場合の該複合酸アルミニウム塩中のC12−24高級脂肪酸の含有量は3〜40モル%の範囲内にあることができる。本発明で使用するオクチル酸アルミニウムとC12−24高級脂肪酸アルミニウムとの混合物の添加割合は、2〜20重量%でよく、好ましくは、4〜15重量%である。
【0019】
ゲル化促進剤としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など、またはこれら高級脂肪酸の混合物が挙げられ、好ましくは、オレイン酸が用いられる。
【0020】
特に限定はされないが、前記ゲル化剤は、例えば0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%の割合で、前記ゲル組成物に含まれる。また、特に限定はされないが、前記ゲル化促進剤は、例えば0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%の割合で、前記ゲル組成物に含まれる。
【0021】
本発明の1つの態様において、前記ゲル組成物は、オクチル酸アルミニウムおよびその6〜80モル%のC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物から選択されるゲル化剤を含んでもよい。
【0022】
本発明に使用される芳香・消臭成分としては、ゲル形成に影響をせず、通常のゲル状芳香・消臭剤に使用されている芳香・消臭成分であれば特に限定されないが、本発明で定義される芳香・消臭成分は、グリコール類またはグリコールエーテル類を含まない。
【0023】
芳香・消臭成分としては、例えば、一般に香料と称されるものが挙げられ、例えば、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、イランイラン油、パチュリ油、シトロネラ油、レモングラス油、ボアドローズ油、チョウジ油、ユーカリ油、セダー油、ラベンダー油、ビャクダン油、ベチバー油、ゼラニウム油、ラブダナム油、ペパーミント油、ローズ油、ジャスミン油、リッツアキュベバ油などの天然香料、および、例えば、炭化水素系香料(例えば、リモネン、α−ピネン、カンフェン、p−サイメン、フェンチェンなど)、エーテル系香料(例えば、1,8−シネオール、ローズオキサイド、セドロールメチルエーテル(セドランバー)、p−クレジルメチルエーテル、イソアミルフエェニルエチルエーテル、4−フェニル−2,4,6−トリメチル−1,3−ジオキサン、アネトールなど)、エステル系香料(例えば、エチルアセテート、エチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、ブチルアセテート、エチル2−メチルブチレート、イソアミルアセテート、エチル2−メチルペンタノエート(マンザネート)、ヘキシルアセテート、アリルヘキサノエート、トリシクロデセニルプロピオネート(VERTOPRO;フロロシクレン)、アリルヘプタノエート、イソボルニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、2−ter−ブチルシクロヘキシルアセテート(ナルシドール)など)、アルコール系香料(例えば、リナノール、3−オクタノール、2,6−ジメチル−ヘプタノール、10−ウンデセノール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、テトラヒドロリナロール、ターピネオール、セドロール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキサン−1−メタノール、4−イソプロピルシクロヘキサノール、ネロリドール、9−デセノール、シス−3−ヘキセノール、トランス−2−ヘキセノール、オイゲノールなど)、アルデヒド系香料(例えば、シトロネラール、パラアルデハイド、ベンズアルデヒド、アルデヒドC−6、アルデヒドC−7、 アルデヒドC−8、アルデヒドC−9、アルデヒドC−10、トリプラール、p−エチルジメチルヒドロシンナミックアルデヒド(フローラゾン)、2−トリデセナール、アルデヒドC11など)などの合成香料、又はこれらをブレンドした調合香料等を使用することができる。
【0024】
なお、香料の配合量は、例えば0.1〜90重量%であり、嗜好性の向上と共に均一系を確保する上で、香料の配合量は0.5〜80重量%や1〜70重量%とするのが好ましい。
【0025】
本発明に使用される分散用溶剤は、炭化水素系溶剤であれば特に限定されず、例えば、イソパラフィンやノルマルパラフィンを用いることができる。
特に限定はされないが、前記分散用溶媒は、例えば0.1〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜50重量%の割合で、前記ゲル組成物に含まれる。
【0026】
また、本発明において、必要に応じ、本発明の効果を妨げない範囲で、色素、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、除菌剤、殺菌剤、殺虫剤、忌避剤、生理活性物質、その他の成分を配合できる。
【0027】
本発明のゲル組成物は、ゲル化直後および密封状態での保存中には、例えば、容器を傾けてもすぐには変形しない程度のゲル状形態安定性を有し、開放系に放置することにより液状化が進行することを特徴とする。従って、当該ゲル組成物は、美観の観点から問題となる使用後の固形残渣の残存量が少ないか、または固形残渣が生じないという優れた特性を有する。
【0028】
本発明の芳香剤または消臭剤は、広い分野において使用することができ、例えば、居室内、トイレ内、浴室内、車内、船舶内などにおいて使用される。
本発明の芳香剤または消臭剤を使用するための容器は、芳香剤または消臭剤を収納する収納部と、ゲル組成物の液状化により生じた液体を収納する液体収納部を有していてもよく、当該液体収納部は、前記収納部においてゲル組成物が液状化して生じる液体が、例えば、流れ集まることにより収納されるような構成を有していれば特に制限されない。また、液体収納部が有する芳香・消臭成分の揮散を可能にする通気手段は、特に限定されず、外部への揮散を可能にする穴、液状化した前記ゲル組成物を吸収するための吸収揮散体であってもよく、または電力などにより作動する加熱装置または送風装置を備えた通気手段であってもよい。
【0029】
前記吸収揮散体は、本発明が属する技術分野で通常用いられているものを使用することができ、例えば、スポンジ、濾紙、パルプ、フェルト、オレフィンスライバー、不織布、多孔質の石膏などを使用することができる。
【0030】
以下に実施例を示すことにより本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明は当該実施例に限定されるものではない。また、特に示されていない場合、パーセントの表示は重量%を意味する。
【実施例】
【0031】
実施例1〜22のゲル組成物の調製手順
分散用溶剤(イソパラフィン;NAS−3、日本油脂(株)社製)に液状化剤の一部又は全部を加えて得た混合液(組成物全体の40〜50%となるように液状化剤の量を調節した)に、ゲル化剤(オクチル酸アルミニウム;ゲル化剤−T、生研化学(株)社製)を分散させ、得られた混合物は使用するまで10℃で保管した。香料、ゲル化促進剤(オレイン酸;日本油脂(株)社製)および未使用分がある場合は液状化剤の残りを混合し、45〜50℃に加熱した。当該溶液と先に調製したゲル化剤を含む混合物を、横3cm、縦3cm、高さ4cm(開口面積9cm)のプラスチック容器の中に10g分入れて、室温25℃で均一になるように攪拌した。その後室温25℃で1時間放置してゲル化した芳香組成物を得た。
【0032】
各サンプルの組成は、以下の表1および表3に示す。なお、実施例14〜22においては、炭化水素系香料:リモネン、エーテル系香料:1,8−シネオール、エステル系香料:エチルアセテート、アルコール系香料:リナロール、アルデヒド系香料:シトロネラールを単品香料としてそれぞれ使用して実験を行った。これらの単品香料は、多くの調合香料に含まれている代表成分である。
【0033】
比較例1のゲル組成物の調製手順
液状化剤を使用しなかったこと以外は、上記実施例のゲル組成物と同様の手順により調製した。サンプルの組成は、以下の表2に示す。
【0034】
比較例2のゲル組成物の調製手順
上記実施例のゲル組成物と同様の手順により調製した。サンプルの組成は、以下の表2に示す。
【0035】
比較例3〜8のゲル組成物の調製手順
液状化剤の代わりにメタノールまたはイソプロパノールを使用したこと以外は、上記実施例のゲル組成物と同様の手順により調製した。各サンプルの組成は、以下の表2および表3に示す。
【0036】
組成物の液状化試験
実施例1〜22および比較例1〜8で得られたサンプルについて、作製直後のゲル化の状態を確認した。また、各サンプルを室温で容器を開口したまま放置し、成分の揮発により残存率が50%となった時点および20%となった時点において、ゲルの状態を確認した。なお、残存率は目視により判断した。さらに、組成物の作製後に容器を密封し、室温または40℃で2週間放置し、ゲルの状態を確認した。各サンプルについての結果を、以下の表1、表2および表3に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
組成物の香り強度の評価
上記で実施例4、実施例5および比較例1として調製した組成物を容器を開口したまま放置した際の、香りの強度の変化について評価した。各サンプルの容器を開口して、香料が揮散できる状態にして、サンプル作製直後、室温で放置して成分が揮散した結果、残存量が50%となった時点、および20%となった時点で、正常な嗅覚を持ち、芳香消臭剤の開発業務を行って約2年以上の経験を有する者10名(男性5名、女性5名)により、以下の官能検査の絶対判断法により香りの強度を評価した。
<官能検査の絶対判断法>
容積が1000Lのステンレス製官能ボックス内の空気を無臭と感じるまで(通常10〜20分間)換気した後、官能ボックス内にサンプルを整置する。そして、室温(約22℃)にて20分間放置後、ボックス正面の小窓から鼻を近づけ、以下の評価基準に従い、香りの強さを判定し、10名のそれぞれの結果について平均を出した。
【0041】
<香りの強さ>
香りの強さの評価(5段階)
5:強い
4:やや強い
3.普通
2.やや弱い
1.弱い
評価結果を以下の表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
吸収揮散体容器に収納した組成物の香り強度の評価
シャーレにろ紙(5cm×5cm、厚さ3mm)を置き、作製直後のゲル組成物の容器の底に直径2mmの穴を30個開けて、ろ紙の上にセットし室温で放置した。それ以外は、上記の香り強度試験と同様の手法により香り強度を評価した。ゲルの液状化により生じた液体は、濾紙に吸収され拡散した。評価結果を以下の表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
本発明のゲル組成物は、作製直後には容器を逆さまにしてもすぐには変形しない程度の形状安定性を有していた。また、開放状態で室温で放置し、成分の揮散により残存量が20%となった時点では、ほとんどのサンプルでほぼ全量が液状化状態となった。液状化したサンプルにおいては、粉末状の付着物が容器の残る程度の残渣しか確認されなかった。
【0046】
さらに、本発明の組成物は、ゲル状態のままの組成物と比べて、使用中の香り強度の低下が抑制されることが確認された(表3)。さらに、ろ紙などの吸収揮散体を使用することにより、使用開始直後と同等の香り強度が残存量が20%となるまで維持されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)C7−9アルカン酸アルミニウムおよびC12−24脂肪酸アルミニウムの混合物、ならびにC7−9アルカン酸アルミニウムから選択されるゲル化剤;
(b)グリコール類およびグリコールエーテル類から選択される液状化剤;および
(c)炭化水素系溶剤から選択される分散用溶剤;
を含むゲル組成物であって、開放系に放置することにより液状化することを特徴とする前記ゲル組成物。
【請求項2】
芳香・消臭成分をさらに含む、請求項1に記載のゲル組成物。
【請求項3】
12−24脂肪酸から選択されるゲル化促進剤をさらに含む、請求項1または2に記載のゲル組成物。
【請求項4】
前記組成物の全重量に対して、前記液状化剤を0.1〜70重量%で含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル組成物。
【請求項5】
前記液状化剤が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコール n−プロピルエーテルから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル組成物。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のゲル組成物を含む、芳香剤または消臭剤。
【請求項7】
容器に収納されてなる請求項6に記載の芳香剤または消臭剤であって、当該容器が、芳香剤または消臭剤を収納する収納部と、ゲル組成物の液状化により生じた液体を収納する液体収納部を有し、当該液体収納部が、芳香・消臭成分の揮散を可能にする通気手段を有してなる、前記芳香剤または消臭剤。
【請求項8】
液状化した前記ゲル組成物を吸収するための吸収揮散体を備えた容器に収納される、請求項6または7に記載の芳香剤または消臭剤。

【公開番号】特開2008−246161(P2008−246161A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95170(P2007−95170)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】