説明

ゲートウェイ装置

【課題】複数の異なる通信網に接続された他の装置との間でデータを共有することを可能にする。
【解決手段】ゲートウェイ装置10は、複数の異なる通信網と接続するためのインタフェース(無線機I/Fカード33、携帯電話I/Fカード34、衛星通信I/Fカード35、無線LANカード36)が設けられている。ゲートウェイ装置10の各部(通信クラス部24、CORBA部26)は、インタフェースにより接続される複数の異なる通信網を介した通信を制御して他の装置との間でデータの送受信を行う。ゲートウェイ装置10は、IO装置12などからデータを入力してメモリ22のデータオブジェクトに記憶する。データ・マネージャ部20は、データに対する更新による更新情報を更新情報記憶部20aに記憶すると共に、インタフェースにより接続された通信網を介して他の装置に送信し、また通信網を介して他の装置から更新情報を受信してデータを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる通信網を接続するゲートウェイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ネットワークを介して接続された複数の装置において情報を共有することが行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたネットワークシステム及び情報機器は、ネットワークに接続される情報機器が一定ではない環境等においても、ネットワークに接続された各情報機器が最も新しい共有情報を利用することができるようにしている。このネットワークシステムの情報機器は、ネットワークに接続されている情報機器名を取得して保存すると共に、他機による更新を管理する共有情報の更新状態を取得して保存する。情報機器は、自機による更新を管理する共有情報を更新されたときに他機に更新を通知し、また他機による更新を管理する共有情報を取得して保存する。
【特許文献1】特開2002−158673公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されたネットワークシステムでは、同一のネットワークにより接続された情報機器間において、相互に共有情報の更新を通知することで共有情報を管理している。すなわち、特許文献1の情報機器は、同一ネットワーク内でデータを送受信するだけであり、異なる通信網に接続された他の装置の間でデータを共有することについては想定されていない。
【0004】
本発明の課題は、複数の異なる通信網に接続された他の装置との間でデータを共有することが可能なゲートウェイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の異なる通信網を接続するゲートウェイ装置において、複数の異なる通信網と接続するためのインタフェース手段と、前記インタフェース手段により接続される複数の異なる通信網を介した通信を制御する通信制御手段と、データを入力する入力手段と、前記入力手段により入力されたデータを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたデータに対する更新による更新情報を記憶する更新情報記憶手段と、前記更新情報記憶手段により記憶された更新情報を、前記通信制御手段の制御により前記インタフェースにより接続された通信網を介して他の装置に送信する更新情報送信手段と、前記通信制御手段の制御により前記インタフェースにより接続された通信網を介して他の装置から更新情報を受信する更新情報受信手段と、前記更新情報受信手段により受信された更新情報をもとに前記記憶手段により記憶されたデータを更新する更新手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の異なる通信網に接続された他の装置との間でデータを共有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
図1は、本実施形態におけるネットワークシステムの概略を示す図である。
【0009】
本実施形態におけるネットワークシステムは、無線及び有線、移動体及び固定の既存の各種通信回線或いは網(以下、通信網という)を、各通信網間の接点(以下、ノードという)に配置したゲートウェイ装置10により連接し、複数の通信網に跨った仮想的な1つのネットワークを構成する。
【0010】
例えば無線機を使用したデータ通信、銅線を介して接続された2点間をADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)或いはSDSL(Symmetric Digital Subscriber Line)モデムを用いて接続した通信、携帯電話機或いは固定電機話を使用した2点間の回線交換或いはパケット通信、通信衛星を使用した2点間のパケット通信、無線及び有線LANによる通信、インターネットやイントラネット、イーサネット(登録商標)などを介した通信を行う通信網を対象とすることができる。
【0011】
図1に示すネットワークシステムでは、電話回線網1、無線LAN通信網2、無線機通信網3、及び携帯電話通信網4の通信網を図示している。無線機通信網3は、無線通信に異なる周波数f1,f2,f3を使用する複数の無線通信網が含まれており、無線通信網間にもゲートウェイ装置10が配置されている。各ゲートウェイ装置10には、予め装置に固有のIP(internet protocol)アドレスが割り当てられている。
【0012】
本実施形態におけるゲートウェイ装置10は、通信網間に配置される他、各通信網の中に配置される。各ゲートウェイ装置10は、異なる複数の通信網に接続された複数の他のゲートウェイ装置との間でデータを共有することができる。
【0013】
本実施形態におけるネットワークシステムでは、あるノードのゲートウェイ装置10から入力されたデータが他のノードのゲートウェイ装置に自動的に配布され、各ノードのゲートウェイ装置は配布された情報をメモリに保持する。また、通信網の制約などでゲートウェイ装置から配布されたデータが通信経路の途中で失われた場合には、ゲートウェイ装置間でデータの整合処理を自動的に行うことにより、使用者が何れのノードに配置されたゲートウェイ装置を使用していても、このゲートウェイ装置を介して同一のデータを参照することができる。さらに、複数のゲートウェイ装置10をグループに分け、グループ毎に共有する情報の種類を変えることにより、複数の情報共有グループを共存させることができる。また、一つのノードのゲートウェイ装置内において複数の種類のデータを区分して保持することにより、1つのゲートウェイ装置10が複数の情報共有グループに入れることが可能である。
【0014】
図1に示す例では、ゲートウェイ装置10−1,10−2,10−5,10−6,10−7は情報共有グループ1に含まれ、ゲートウェイ装置10−2,10−3,10−4が情報共有グループ2に含まれており、ゲートウェイ装置10−2が2つの情報共有グループに属している。
【0015】
ゲートウェイ装置10は、例えば野外においてもデータの共有を可能とするため、野外での使用を前提とした高い耐環境性能を有している。すなわち、使用者による携帯、車両等への搭載、野外施設内での使用など、野外での使用を想定して、防水・防滴、対砂塵、対振動、対衝撃などの対環境性が確保される。また、AC100Vの電源以外に電池で使用することができるものとする。
【0016】
図2は、本実施形態におけるゲートウェイ装置10の機能構成を示すブロック図である。図2では、OSI基本参照モデル(OSI Basic Reference Model)の各層に対応付けて、ゲートウェイ装置10に設けられる機能を示している。
【0017】
ゲートウェイ装置10には、データ・マネージャ部20、メモリ22、通信クラス部24、CORBA(Common Object Request Broker Architecture)部26(ネーミングサービス部27)、ネットワーク情報記憶部28、TCP/IP部30、及びI/Fカード用共通バス32が設けられている。
【0018】
データ・マネージャ部20は、プレゼンテーション層に該当する機能であり、他の装置との間で送受信されるデータを処理する。データ・マネージャ部20は、他の装置との間で共有されるデータを、データの種類を表すデータ(番号)を含む共通の形式、すなわちデータオブジェクトとしてメモリ22に記憶させる。データ・マネージャ部20は、更新情報記憶部20aにおいて、メモリ22に記憶されたデータが変更されることによる更新情報(差分情報)を記憶する。更新情報(差分情報)は、所定のデータ構造(例えば配列構造)によって更新情報記憶部20aに記憶される。
【0019】
通信クラス部24とCORBA部26は、セッション層に相当する機能であり、下位層のインタフェースによって接続される複数の異なる通信網を介した通信を制御する。すなわち、上位からのQoS(quality of service)要求と下位で使用する通信網の特性の組み合わせにより最適な通信網、プロトコルを判断し、バケツリレー方式でデータを送受信することで経路制御を実現する。これにより、複数の異なる通信網間を仮想的に1つの通信網として接続する。通信クラス部24は、情報の構造変換や通信時間の削減を目的としたデータ圧縮/伸張(復号)などを実行する。CORBA部26は、ネットワーク上の他の装置で動作しているオブジェクト間で情報を送受信するための制御をする。CORBA部26は、ネーミングサービス部27に対して、データの送信対象とする情報共通グループに応じた宛先IPアドレスを問い合わせ、この宛先IPアドレスに応じたイベントチャンネルを使用してデータを配布する。
【0020】
ネーミングサービス部27は、CORBA部26の問い合わせに応じて、ネットワーク情報記憶部28に記憶されたネットワーク情報と予め与えられたルールに基づいて、情報の送信先とする最適な宛先IPアドレスの組み合わせを選択する。
【0021】
ネットワーク情報記憶部28は、ネーミングサービス部27により、データの送信対象とする情報共通グループに応じた宛先IPアドレスを決定するために参照される各種ネットワークに関するデータが記憶される(詳細については後述する(図3参照))。
【0022】
TCP/IP部30は、トランスポート層及びネットワーク層に相当する機能であり、各装置に割り当てられた固有のIPアドレスをもとに、IPを使って構築されたネットワーク上で他の装置との通信を制御する。TCP/IP部30のトランスポート層(TCP)のプロトコルとして、UDP(User Datagram Protocol)を使用する。
【0023】
I/Fカード用共通バス32、及び同バス32に接続される無線機I/Fカード33、携帯電話I/Fカード34、衛星通信I/Fカード35、無線LANカード36はデータリンク層に相当する。無線機I/Fカード33には無線機14、携帯電話I/Fカード34には携帯電話機15、衛星通信I/Fカード35には衛星通信機16がそれぞれ接続されて、それぞれ異なる通信網と接続される。無線LANカード36は、無線LANによる通信機能を搭載している。ここでは、通信速度、誤り率及び通信断時間などの物理層が持つ特性に応じて、通信網が提供するデータリンク層のプロトコルを使用する。なお、図2に示すゲートウェイ装置10に接続される通信網は一例であって、接続対象とする通信網のそれぞれに応じたインタフェースが設けられる。
【0024】
図3は、ゲートウェイ装置10のネットワーク情報記憶部28において記憶されるネットワーク情報の一例を示す図である。
【0025】
ネットワーク情報では、情報共有グループ毎に、ゲートウェイ装置に割り当てられたIPアドレス(ユニキャストアドレス、作成済みのマルチキャストアドレス)、接続している通信網の種類、通信網に接続しているノード数、網構成などのデータが記憶されている。
【0026】
図4は、メモリ22にデータを記憶させるデータオブジェクト(記憶領域)について説明するための図である。
【0027】
ゲートウェイ装置10は、例えば図4に示すような、他の装置と共通する形式であるデータオブジェクトによってデータをメモリ22に記憶させる。図4に示す形式は、情報共通グループ毎にデータオブジェクトが設定されるものとしており、例えば情報共有グループAに対してデータオブジェクトAが設定される。
【0028】
データオブジェクトには、情報共通グループで共有されるデータの他、情報共有グループ名、データ種類名、QoS要求を示すデータが設定される。QoS要求には、例えば時間、通信品質、情報の重要度などを示すデータを含む。
【0029】
例えば、情報共有グループA,Bの両方に属するゲートウェイ装置10−2は、それぞれのグループに対応するデータオブジェクトA,Bを設定し、それぞれのグループで共有されるデータを区分して記憶する。これにより、1つのゲートウェイ装置10が複数の情報共有グループに属することができる。
【0030】
メモリ22に記憶されたデータオブジェクトのデータは、ゲートウェイ装置10に接続されるPC(Personal Computer)等の端末によって読み出し、表示させることにより参照することができる。
【0031】
次に、本実施形態におけるゲートウェイ装置10の動作について説明する。
本実施形態におけるゲートウェイ装置10は、例えば次のような場面(1)(2)(3)で使用することができる。
【0032】
(1)ゲートウェイ装置10にPC等の端末を接続し、情報の入出力を行う。
【0033】
ゲートウェイ装置10にPC等の端末(IO装置12)を接続し、端末からキーボード等の入力装置を用いて入力された情報を、この装置で扱うデータ形式(データオブジェクト)に変換して情報共有グループ内の各装置へ配布することにより、同一の情報共有グループに属する他装置と情報共有を行うことができる。共有されメモリ22上に保持された情報を端末から取得し画面表示することにより、複数のノードに配置された個々のゲートウェイ装置10において同一の情報を参照することができる。
【0034】
(2)ゲートウェイ装置10に各種のセンサを接続し、センサで取得した情報を共有する。
【0035】
各種センサをゲートウェイ装置10に接続し、センサで取得した情報を自動的にこの装置で扱うデータ形式に変換して情報共有グループ内の各装置に配布することにより、同一の情報共有グループに属する他装置と情報共有を行うことができる。共有されメモリ上に保持された情報を端末から取得し画面表示することにより、センサで取得した情報を複数のノードに配置された個々のゲートウェイ装置10において同一の情報を参照することができる。センサには、GPS(Global Positioning System)を利用した位置検出を行う装置などを含む。
【0036】
(3)他の装置あるいはシステムと連接し、情報を共有する。
【0037】
他装置或いはシステムと接続し、端末、センサから入力され共有された情報を他装置或いはシステムから参照することができる。逆に、他装置或いはシステムから情報を入力することにより、その情報を複数の端末で参照することができる。更には、この装置が提供する仮想的なネットワークを使用し、他装置或いはシステム間で情報の送受信を行うことができる。
【0038】
図5には、複数の通信網(無線LAN通信網2、無線機通信網3、携帯電話通信網4)からなるネットワーク内に配置された、異なる処理を実行するゲートウェイ装置10−1,10−2,10−3を示している。
【0039】
ゲートウェイ装置10−1は、自装置において入力されたデータを他のゲートウェイ装置に対して送信する送信処理を実行する。ゲートウェイ装置10−2は、他のゲートウェイ装置10−1から送信されたデータを受信する受信処理を実行する。ゲートウェイ装置10−3は、他のゲートウェイ装置10−1から送信された他のゲートウェイ装置10−2宛のデータを受信し、このデータを送信先のゲートウェイ装置10−2に転送する中継処理を実行する。
【0040】
以下、ゲートウェイ装置10−1,10−2,10−3がそれぞれ実行する処理動作について説明する。
【0041】
(1)送信処理
図6は、ゲートウェイ装置10の送信処理時の各部におけるデータの流れを示し、図7は、ゲートウェイ装置10により実行される送信処理の動作を説明するためのフローチャートを示している。
【0042】
まず、ゲートウェイ装置10に接続されたIO装置12から(例えばPCのキーボードが操作されることにより)データが入力されると、データ・マネージャ部20は、メモリ22の自装置が属する情報共有グループに該当するデータオブジェクト(データ保存領域)に、入力されたデータを記憶させる。
【0043】
データ・マネージャ部20は、データオブジェクトの状態を常に監視しており(ステップA2)、データが変更されることによる更新情報があればデータオブジェクトから取得する(ステップA3、Yes)。
【0044】
データ・マネージャ部20は、データオブジェクトから取得した更新情報を更新情報記憶部20aに記憶させると同時に(ステップA4)、データオブジェクト毎に定まっている情報共有グループ名、データ種類名、QoS要求をメモリ22から読み出し、更新情報に付加して通信クラス部24に出力する(ステップA5)。QoS要求には、例えば時間、通信品質、情報の重要度などを示すデータを含む。
【0045】
通信クラス部24は、配列等の構造を持つ更新情報を直列化して通信情報に変換した後、通信データ量を削減するためデータ圧縮を行い、CORBA部26に出力する(ステップA6)。
【0046】
CORBA部26は、更新情報に付加された情報共有グループ名をもとに、データの送信先を示す宛先IPアドレスを求めるため、ネーミングサービス部27に問い合わせを行う。
【0047】
ネーミングサービス部27は、ネットワーク情報記憶部28に記憶されたネットワーク情報(ノードのユニキャストアドレス、作成済みのマルチキャストアドレス、接続している通信網の種類、ノード数、網構成等)と、予め与えられたルールに基づいて、最適な宛先IPアドレス(ユニキャスト、マルチキャスト、エックスキャスト)の組み合わせを選択する(ステップA7)。
【0048】
例えば、無線機通信網3と比較して安定した高速データ通信が可能な電話回線網1や無線LAN通信網2に含まれる複数のゲートウェイ装置10に対してはマルチキャストにより送信し、不安定な無線機通信網3に含まれるゲートウェイ装置10に対してはユニキャストにより個別に送信する。基本的には、データ送信数が少なくなるように宛先IPアドレスの組み合わせを選択するルールが設定されているものとする。
【0049】
無線機通信網3に含まれるゲートウェイ装置10に対しては、送信したデータが通信経路中で消失するおそれがあるが、この場合にはデータ整合処理により回復されるので問題がない(詳細については後述する)。
【0050】
CORBA部26は、ネーミングサービス部27によって選択された宛先IPアドレスに基づき、この宛先IPアドレスを含む通信用のヘッダをデータに付加し、対応するイベントチャネルを使用してデータを配布する(ステップA8)。
【0051】
トランスポート層以下の各部、すなわちTCP/IP部30及びI/Fカード用共通バス32に接続された各インタフェースカード33,34,35(通信機14〜16),無線LANカード36では、この宛先IPアドレスに基づきIPパケットとして、このデータを送信先の各種通信網に送信する(ステップA9)。
【0052】
(2)受信処理
図8は、ゲートウェイ装置10の受信処理時の各部におけるデータの流れを示し、図9は、ゲートウェイ装置10により実行される受信処理の動作を説明するためのフローチャートを示している。
【0053】
ゲートウェイ装置10は、各種通信網と接続されたインタフェース、すなわちトランスポート層以下の各部(TCP/IP部30、I/Fカード用共通バス32に接続された各インタフェースカード33,34,35(通信機14〜16),無線LANカード36)を通じて、ヘッダの宛先IPアドレスが自装置を示すデータを受信する(ステップB1)。このデータは、イベントチャンネルからの受信データとしてCORBA部26が受信する。
【0054】
CORBA部26は、受信したデータから上位層の処理で不要な通信用のヘッダ部分を削除し、通信クラス部24に出力する(ステップB3)。
【0055】
通信クラス部24は、受信したデータを圧縮状態から復元し、直列化されたデータを構造化された元の更新情報に戻し、データ・マネージャ部20に出力する(ステップB4,B5)。
【0056】
データ・マネージャ部20は、更新情報に付加された情報共有グループ名とデータ種類名をもとにデータを記憶させるべきデータオブジェクト(記憶領域)を選択し、この選択したデータオブジェクトにデータを記憶させる(ステップB6)。これと同時にデータ・マネージャ部20は、更新情報記憶部20aに更新情報を記録しておく(ステップB7)。
【0057】
(3)中継処理
図10及び図11は、ゲートウェイ装置10の中継処理時の各部におけるデータの流れを示し、図12は、ゲートウェイ装置10により実行される中継処理(異なる通信網間の場合)の動作を説明するためのフローチャートを示している。
【0058】
ゲートウェイ装置10は、各通信網と接続されたインタフェースを通じてデータを受信すると(ステップC1)、このデータの宛先IPアドレスが自装置を示すものでない場合、データを他のゲートウェイ装置に転送するための中継処理を実行する。
【0059】
データの宛先IPアドレスが同一通信網内のゲートウェイ装置を示す場合(ステップC2、No)、ゲートウェイ装置10(データ中継機能30a)は、図10に示すように中継処理を実行する。すなわち、通信網の特性が同一であるので同じプロトコルを適用することができる。従って、送信元のゲートウェイ装置(ネーミングサービス部27)によって判別されるプロトコルと、それに基づく宛先IPアドレスに従ってルーティングを実施する。この場合、ゲートウェイ装置10は、単なるIPルータとして中継処理を実施する。
【0060】
一方、データの宛先IPアドレスが異なる通信網内のゲートウェイ装置を示す場合(ステップC2、Yes)、ゲートウェイ装置10は、図11に示すように中継処理を実行する。すなわち、異なる通信網間の中継の場合には、通信網の特性が異なるため最適な通信プロトコルが異なる。
【0061】
従って、ゲートウェイ装置10は、受信したデータを図10に示すようにトランスポート層(TCP/IP層)でルーティングせず、CORBA部26まで上げる。CORBA部26は、転送先(中継ノード)までデータを送信ためのプロトコルとそれに基づく宛先IPアドレスを求めるために、ネーミングサービス部27に問い合わせを行う。
【0062】
ネーミングサービス部27は、更新情報に付加された情報共有グループ名をもとに、ネットワーク情報記憶部28に記憶されたネットワーク情報と予め与えられたルールに基づいて、宛先IPアドレスを選択する(ステップC4)。
【0063】
また、送信可能な通信網が複数ある場合(ステップC5、Yes)、ネーミングサービス部27は、宛先IPアドレスを決定するだけでなく、送信する送信先の通信網の選択を合わせて実施する(ステップC6)。
【0064】
CORBA部26は、ネーミングサービス部27によって選択された宛先IPアドレスに基づき、この宛先IPアドレスを含む通信用のヘッダをデータに付加し、対応するイベントチャネルを使用してデータを配布する(ステップC7)。
【0065】
トランスポート層以下の各部、すなわちTCP/IP部30及びI/Fカード用共通バス32に接続された各インタフェースカード33,34,35(通信機14〜16),無線LANカード36では、この宛先IPアドレスに基づきIPパケットとして、このデータを送信先の各種通信網に送信する(ステップC8)。
【0066】
以後については、中継ノードとなるゲートウェイ装置10のネーミングサービス部27が、前述と同様にして、情報共有グループに最適なプロトコルと、それに基づく宛先IPアドレスを求めて、受信したデータを送信先の宛先に応じた通信網に送信する。これにより、異なる複数の通信網を介して、最終的に送信先のゲートウェイ装置10に対してデータが到達する。
【0067】
(4)データ整合処理
図13は、ゲートウェイ装置10(データ整合要求側、データ提供側)のデータ整合処理時の各部におけるデータの流れを示し、図14は、ゲートウェイ装置10(データ整合要求側)により実行されるデータ整合処理、図15は、ゲートウェイ装置10(データ提供側)により実行されるデータ整合処理を説明するためのフローチャートを示している。
【0068】
ゲートウェイ装置10を無線機通信網3に接続することにより、野外においても使用でき、自由に移動することも可能となる。一方、移動に伴う通信環境の変化など通信上の制約により無線機通信網3におけるデータの送受信に失敗し、情報共有グループ内に属する複数のゲートウェイ装置の間でデータの不整合が発生するおそれがある。
【0069】
例えば無線機通信網3では、通信環境が悪い場所に移動することにより通信が遮断される場合があり、また遮断された際に再度接続されるまでに長時間要する場合がある。また、データの送信速度は、無線LAN通信網2や携帯電話通信網4等に比較して遅いため、データの送受信に失敗した場合の再試行による再現が困難となっている。
【0070】
こうしたゲートウェイ装置10から送信されたデータが通信経路地上で消失することによる不整合が発生したとしても、各ゲートウェイ装置10において回復処理としてデータ整合処理を実行することにより、ノード間のデータを整合させることができる。
【0071】
データ整合処理では、各ゲートウェイ装置10がそれぞれの更新情報記憶部20aに記憶された更新情報の一覧(例えば、更新時刻一覧)を同一通信網内の近傍ノード(例えば、ホップ数が一定数以下)から構成される情報共有グループにアナウンスする(データ整合要求側)。更新情報の一覧を受信したゲートウェイ装置10(データ提供側)は、この一覧をもとに不整合を発見した場合に、不整合データを同じ情報共有グループ内の他のゲートウェイ装置10に送信し、それを各ゲートウェイ装置が受信して自装置内のメモリ22に記憶されたデータを更新することで整合を図る。
【0072】
図13において、左側がデータ整合要求側、右側がデータ提供側のゲートウェイ装置10をそれぞれ表している。
【0073】
データ整合要求側のデータ・マネージャ部20−1は、一定時間が経過する毎(例えば10分毎(任意に設定可能とする))に(ステップD1、Yes)、現在時刻から過去一定時間(例えば60分(任意に変更可能とする))の更新情報の更新時刻一覧を更新情報記憶部20aに記録された更新情報をもとに作成する。
【0074】
そして、データ・マネージャ部20−1は、同一通信網内の近傍の情報共有グループ名を示すヘッダを更新時刻一覧のデータに付与して通信クラス部24−1に出力する。通信クラス部24−1から下位層の各部は、データに付与されたヘッダに応じて情報共有グループに属する他のゲートウェイ装置10に対して更新時刻一覧のデータを配信する(ステップD2)。
【0075】
一方、データ提供側のゲートウェイ装置10により更新時刻一覧のデータが受信されると(ステップE1)、データ・マネージャ部20−2は、その更新時刻一覧と自身の更新情報記憶部20a−2に記憶された更新情報とを比較する(ステップE2)。
【0076】
この比較の結果、データ・マネージャ部20−2は、更新時刻一覧に該当しない更新情報を自身が記憶していた場合には(ステップE3、Yes)、同一の情報共有グループ名のヘッダを、更新情報記憶部20aに記憶されていた該当する更新情報に付与して通信クラス部24−2に出力する。
【0077】
通信クラス部24−2から下位層の各部は、更新情報に付与されたヘッダに応じて情報共有グループに属する他のゲートウェイ装置10に対して更新情報のデータを送信する(ステップE4)。
【0078】
データ整合要求側のゲートウェイ装置10では他のゲートウェイ装置から更新情報のデータを受信すると(ステップD3、Yes)、データ・マネージャ部20−1は、その更新情報と更新情報記憶部20a−1に記憶された更新情報とを比較し、受信した更新情報を記憶していなければ(ステップD4、Yes)、この更新情報と受信した更新情報とをマージしてメモリ22の該当するデータオブジェクトに記憶する(ステップD5)。
【0079】
以上の処理を同一通信網に含まれる近傍の情報共有グループ内に属するゲートウェイ装置10の間で相互に実行することにより、相互に不足する更新情報が他のゲートウェイ装置から補完されることにより、他のゲートウェイ装置10との間で通信が可能となった時点でデータの整合性を確保することが可能となる。
【0080】
なお、図13〜図15を用いた説明では、説明をわかり易くするために、データ整合要求側とデータ提供側のゲートウェイ装置10を個別に説明しているが、1つのゲートウェイ装置10が前述したデータ整合要求側とデータ提供側の処理を実行する。
【0081】
また、前述した説明では、同一通信網内の近傍に配置された情報共有グループ内のゲートウェイ装置10の間でデータ整合を実行しているが、他の通信網内の他のゲートウェイ装置との間でデータ整合を実行するようにしても良い。
【0082】
このようにして、本実施形態におけるコンピュータシステムにおけるゲートウェイ装置10は、複数の異なる通信網と接続するためのインタフェース(無線機I/Fカード33、携帯電話I/Fカード34、衛星通信I/Fカード35、無線LANカード36)を設け、各部(通信クラス部24、Y笛、CORBA部26)の制御により複数の異なる通信網を介した通信を制御して他の装置との間でデータの送受信を行うことができる。ゲートウェイ装置10は、IO装置12などからデータを入力してメモリ22のデータオブジェクトに記憶し、データに対する更新による更新情報を更新情報記憶部20aに記憶すると共に、インタフェースにより接続された通信網を介して他の装置に送信し、また通信網を介して他の装置から更新情報を受信してデータを更新することにより、複数の異なる通信網に接続された他の装置との間でデータを共有することが可能となる。
【0083】
なお、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0084】
また、前述した各実施形態において記載した処理をコンピュータに実行させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリなどの記録媒体に書き込んで各種装置に提供することができる。また、通信媒体により伝送して各種装置に提供することも可能である。ゲートウェイ装置に搭載されるコンピュータは、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、または通信媒体を介してプログラムを受信し、このプログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態におけるネットワークシステムの概略を示す図。
【図2】本実施形態におけるゲートウェイ装置10の機能構成を示すブロック図。
【図3】ゲートウェイ装置10のネットワーク情報記憶部28において記憶されるネットワーク情報の一例を示す図。
【図4】メモリ22にデータを記憶させるデータオブジェクト(記憶領域)について説明するための図。
【図5】複数の通信網からなるネットワーク内に配置された異なる処理を実行するゲートウェイ装置を示す図。
【図6】ゲートウェイ装置10の送信処理時の各部におけるデータの流れを示す図。
【図7】ゲートウェイ装置10により実行される送信処理の動作を説明するためのフローチャート。
【図8】ゲートウェイ装置10の受信処理時の各部におけるデータの流れを示す図。
【図9】ゲートウェイ装置10により実行される受信処理の動作を説明するためのフローチャート。
【図10】ゲートウェイ装置10の中継処理時の各部におけるデータの流れを示す図。
【図11】ゲートウェイ装置10の中継処理時の各部におけるデータの流れを示す図。
【図12】ゲートウェイ装置10により実行される中継処理(異なる通信網間の場合)の動作を説明するためのフローチャート。
【図13】ゲートウェイ装置10(データ整合要求側、データ提供側)のデータ整合処理時の各部におけるデータの流れを示す図。
【図14】ゲートウェイ装置10(データ整合要求側)により実行されるデータ整合処理を説明するためのフローチャート。
【図15】ゲートウェイ装置10(データ提供側)により実行されるデータ整合処理を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0086】
1…電話回線網、2…無線LAN通信網、3…無線機通信網、4…携帯電話通信網、10…ゲートウェイ装置、12…IO装置、14…無線機、15…携帯電話機、16…衛星通信機、20…データ・マネージャ部、20a…更新情報記憶部、22…メモリ、24…通信クラス部、26…CORBA部、27…ネーミングサービス部、28…ネットワーク情報記憶部、30…TCP/IP部、32…I/Fカード用共通バス、33…無線機I/Fカード、34…携帯電話I/Fカード、35…衛星通信I/Fカード、36…無線LANカード、A,B…データオブジェクト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる通信網を接続するゲートウェイ装置において、
複数の異なる通信網と接続するためのインタフェース手段と、
前記インタフェース手段により接続される複数の異なる通信網を介した通信を制御する通信制御手段と、
データを入力する入力手段と、
前記入力手段により入力されたデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたデータに対する更新による更新情報を記憶する更新情報記憶手段と、
前記更新情報記憶手段により記憶された更新情報を、前記通信制御手段の制御により前記インタフェースにより接続された通信網を介して他の装置に送信する更新情報送信手段と、
前記通信制御手段の制御により前記インタフェースにより接続された通信網を介して他の装置から更新情報を受信する更新情報受信手段と、
前記更新情報受信手段により受信された更新情報をもとに前記記憶手段により記憶されたデータを更新する更新手段と
を具備したことを特徴とするゲートウェイ装置。
【請求項2】
前記通信制御手段は、
前記インタフェース手段を介して他の装置宛のデータを受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段により受信されたデータを、同データの送信先となる他の装置に応じた通信網に対して送信するデータ送信手段と
を具備したことを特徴とする請求項1記載のゲートウェイ装置。
【請求項3】
前記通信制御手段は、前記更新情報の送信先とする他の装置に応じて、前記通信網に対する通信形態を選択し、この選択した通信形態により前記更新情報を送信することを特徴とする請求項1または請求項2記載のゲートウェイ装置。
【請求項4】
前記更新情報送信手段は、定期的に前記更新情報記憶手段に記憶された更新情報についての一定時間内における更新状況を示すデータを送信し、
前記更新情報受信手段は、前記更新情報送信手段によって送信された更新状況を示すデータに対して、前記他の装置から送信された更新情報を受信し、
前記更新手段は、前記更新情報受信手段により受信された更新情報をもとに、前記記憶手段により記憶されたデータを更新することを特徴とする請求項1記載のゲートウェイ装置。
【請求項5】
データを共有するグループ毎に、同グループに含まれる装置に関するネットワーク情報を記憶するネットワーク情報記憶手段をさらに具備し、
前記更新情報送信手段は、前記ネットワーク情報記憶手段に記憶されたネットワーク情報に応じて、自装置を含むグループに属する他の装置に対して更新情報を送信し、
前記更新情報受信手段は、前記ネットワーク情報記憶手段に記憶されたネットワーク情報に応じて、自装置を含むグループに属する他の装置から前記記憶手段により記憶されたデータを更新するための更新情報を受信することを特徴とする請求項1記載のゲートウェイ装置。
【請求項6】
前記ネットワーク情報記憶手段には、自装置に関するネットワーク情報を複数のグループに含めて記憶することを特徴とする請求項5記載のゲートウェイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−81538(P2007−81538A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263848(P2005−263848)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】