説明

コアヤーン製造装置

【課題】芯繊維を弾性糸とするコアヤーンを製造するコアヤーン製造装置において、糸入れの成功率を向上させる。
【解決手段】四線式のドラフト装置100と、弾性糸供給装置200と、ドラフト装置100への弾性糸3の突入位置Pを定めるガイドパイプ10と、ガイドパイプ10内より突入位置Pに向けて弾性糸3を飛ばすエアーサッカー6と、を備える、コアヤーン製造装置1であって、ガイドパイプ10の出口10aの形状を、鞘繊維2の送出方向Dsで長手となる楕円形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアヤーンの鞘繊維をドラフトする複線式のドラフト装置と、コアヤーンの芯繊維となる弾性糸を供給する弾性糸供給装置と、前記弾性糸供給装置より前記ドラフト装置に向けて前記弾性糸を案内するガイドパイプと、前記ガイドパイプ内より前記ドラフト装置に向けて前記弾性糸を飛ばすエアーサッカーと、を備える、コアヤーン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性糸の周囲に鞘繊維を紡績装置により被覆してコアヤーンを製造する装置が知られている(特許文献1)。
このようなコアヤーン製造装置には、コアヤーンの鞘繊維をドラフトする複線式のドラフト装置と、コアヤーンの芯繊維となる弾性糸を供給する弾性糸供給装置と、前記弾性糸供給装置より前記ドラフト装置に向けて前記弾性糸を案内するガイドパイプと、前記ガイドパイプ内より前記ドラフト装置に向けて前記弾性糸を飛ばすエアーサッカーと、が備えられている。
【0003】
ここで、ドラフト装置における鞘繊維の送出方向は、機台正面に対して、後上方から前下方へと向かう傾斜方向であり、この送出方向に沿ってドラフト用の各ローラが配置される。ドラフト装置において、もっとも前側に位置する一対のローラが、フロントトップローラとフロントボトムローラと、である。
また、ドラフト装置の上方には、弾性糸供給装置が配置され、この弾性糸供給装置より供給される弾性糸は、ドラフト装置の上方に配置されるガイドパイプを経由して、ドラフト装置内でドラフトされつつ送り出される鞘繊維の内部へと挿入される。
【0004】
前述したようなコアヤーン製造装置においては、ガイドパイプによって案内される弾性糸のドラフト装置への挿入位置は、例えば、フロントトップローラとセカンドトップローラとの間であり、これらの両ローラの周面の間を通過して、ドラフト装置でドラフトされている鞘繊維内へと、弾性糸が挿入されている。
また、ガイドパイプは、円筒形状のパイプが使用されていた。
【特許文献1】特開2002−363831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前述したようなコアヤーン製造装置では、糸入れの成功率、つまりドラフト装置でドラフトされている鞘繊維内への弾性糸の挿入の成功率に、限界があった。挿入用のガイドパイプは円筒形状であるため、糸入れ時にガイドパイプより噴出すエアの挙動が安定せず、このガイドパイプ内を送り出される芯繊維が挿入位置がずれてしまうことがあったためである。
つまり、解決しようとする問題点は、芯繊維を弾性糸とするコアヤーンを製造するコアヤーン製造装置において、糸入れの成功率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、
コアヤーンの鞘繊維をドラフトする複線式のドラフト装置と、
コアヤーンの芯繊維となる弾性糸を供給する弾性糸供給装置と、
前記ドラフト装置への前記弾性糸の突入位置を定めるガイドパイプと、
前記ガイドパイプ内より前記突入位置に向けて前記弾性糸を飛ばすエアーサッカーと、
を備える、コアヤーン製造装置であって、
前記ガイドパイプの出口形状を、前記ドラフト装置における前記鞘繊維の送出方向で長手となる形状とした、ものである。
【0008】
請求項2においては、
前記突入位置は、前記ドラフト装置に備えるフロントトップローラの外周面上に設けられると共に、
前記ガイドパイプの出口から前記突入位置に至る前記弾性糸の突入経路の延長線上に、前記フロントトップローラの略軸心位置が位置するように、前記ドラフト装置に対する前記ガイドパイプのレイアウトが設定される、ものである。
【0009】
請求項3においては、
前記ガイドパイプの出口形状を楕円形状とした、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、
鞘繊維内に挿入される糸の挙動が安定して、弾性糸の鞘繊維内への糸入れ成功率が向上する。
【0012】
請求項2においては、請求項1の効果に加えて、
ガイドパイプから吐出されるエアによって、ドラフト装置内の鞘繊維が受ける影響が最小化されると共に、弾性糸の鞘繊維内への糸入れの成功率が向上する。
【0013】
請求項3においては、請求項1または請求項2の効果に加えて、
鞘繊維内に挿入される糸の挙動が安定して、弾性糸の鞘繊維内への糸入れ成功率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態であるコアヤーン製造装置1を、図面を用いて説明する。コアヤーン製造装置1は、弾性糸を芯繊維とし、この芯繊維の周囲を鞘繊維で被覆して構成されるコアヤーンを製造する装置である。
【0015】
図1に示すように、コアヤーン製造装置1は、コアヤーンの鞘繊維2をドラフトするドラフト装置100と、芯繊維となる弾性糸3を供給する弾性糸供給装置200と、弾性糸3の挿入された鞘繊維を精紡してコアヤーン4を形成する空気式精紡装置300と、を備えている。また、コアヤーン製造装置1には、製造されたコアヤーン4を巻取る巻取装置(図示せず)も備えられている。
【0016】
なお、説明の便宜上、一錘のコアヤーンの製造に関わる装置全体をコアヤーン製造装置1としているが、一錘のコアヤーンの製造に関わる装置をコアヤーン製造ユニットとし、多数のコアヤーン製造ユニットを合わせてなる装置をコアヤーン製造装置と称するものとしてもよい。
【0017】
図1において、コアヤーン製造装置1の機台正面側は左側であり、右側は機台背面側である。また、図1における上下方向は、コアヤーン製造装置1の上下方向に一致し、図1における紙面方向はコアヤーン製造装置1の左右方向に一致する。
本明細書においては、コアヤーン製造装置1の前後(正面・背面)、上下、左右を、以上のように定義する。
【0018】
図1を用いて、ドラフト装置100を説明する。
ドラフト装置100は、鞘繊維2の送出方向において、空気式精紡装置300の手前に配置される装置であり、この空気式精紡装置300に供給する鞘繊維2をドラフトする。ドラフト装置100と空気式精紡装置300とで空気式紡績装置が構成される。
このドラフト装置100は、複線式のドラフト装置であり、鞘繊維2を挟み込むドラフトローラ対を複数組(本実施形態は四組)備え、鞘繊維2の送出方向の前後のドラフトローラに周速度差を設けることで、鞘繊維2の延伸(ドラフト)を行なうものである。
【0019】
前記四組のドラフトローラ対は、鞘繊維2の送出方向において空気式精紡装置300に近い順に、フロントローラ対110、セカンドローラ対120、サードローラ対130、バックローラ対140、である。
これらのドラフトローラ対は、機台正面に対して、空気式精紡装置300より後上方へ向けて配置されている。鞘繊維2は、バックローラ対140、サードローラ対130、サードローラ対130、フロントローラ対110を順に通過するように送られて延伸される。つまり、鞘繊維2の送出方向は、後上方より前下方へと向かう方向である。
【0020】
各ドラフトローラ対は、鞘繊維2を挟んで対向するトップローラとボトムローラと、からなっている。
フロントローラ対110は、フロントトップローラ111と、フロントボトムローラ112と、からなる。セカンドローラ対120は、セカンドトップローラ121と、セカンドボトムローラ122と、からなる。サードローラ対130は、サードトップローラ131と、サードボトムローラ132と、からなる。バックローラ対140は、バックトップローラ141と、バックボトムローラ142と、からなる。
なお、セカンドトップローラ121の外周にはエプロンベルト125が巻回されると共に、セカンドボトムローラ122の外周にはエプロンベルト126が巻回されており、鞘繊維2がエプロンベルト125・126間で面接触により挟み込まれる。
【0021】
図1を用いて、弾性糸供給装置200を説明する。
弾性糸供給装置200は、弾性糸パッケージ203を支持し、この弾性糸パッケージ203から弾性糸3を巻き出す装置である。弾性糸供給装置200を構成する各装置(後述のクレードル221等)は、ベースフレーム210に支持されている。
。弾性糸パッケージ203は、弾性糸3がボビン上に巻き取られて形成されるパッケージである。
弾性糸供給装置200には、弾性糸パッケージ203を支持するクレードル221、弾性糸パッケージ203に接触して連動回転させるパッケージ駆動ドラム222、パッケージ駆動ドラム222の駆動源となるパッケージ駆動モータ223、が備えられている。
【0022】
クレードル221は、ベースフレーム10の後上端部の回転支軸224で揺動自在に設けられるアームであると共に、弾性糸パッケージ203のボビンの保持・保持解除を可能とするボビンホルダ221aを備えている。
回転支軸224の前下方には、パッケージ駆動ドラム222が配置されており、クレードル221を前方へ傾けると、クレードル221に支持される弾性糸パッケージ203が、パッケージ駆動ドラム222と接触するように構成されている。
また、パッケージ駆動ドラム222の後方にパッケージ駆動モータ223が配置されており、ベルト225によりパッケージ駆動モータ223からパッケージ駆動ドラム222に動力が伝達される。
【0023】
弾性糸供給装置200とドラフト装置100との間には、弾性糸の送出経路に沿って、ヤーンフィーラー5、エアーサッカー6、クランプカッター7、ノズルパイプ8、漏斗状ガイド9、ガイドパイプ10、が配置されている。
【0024】
ヤーンフィーラー5は、弾性糸供給装置200からドラフト装置100へと至る弾性糸の有無を検出する装置である。
【0025】
クランプカッター7は、弾性糸の切断手段であるカッターと、切断された弾性糸の把持手段であるクランプと、を同時に備える装置である。このクランプカッター7は、コアヤーン4の糸継ぎ時などに、弾性糸3を切断してその糸端を保持(クランプ)したり、保持を解除して弾性糸3を送出し可能な状態とすることが可能である。
【0026】
エアーサッカー6は、外部のエア供給手段(コンプレッサ等)の駆動により、エアの吸引を行なう吸引部6aと、エアの吐出を行なう吐出部6bと、を備える構成である。そして、エアーサッカー6は、エアーサッカー6内への弾性糸3の吸引捕捉と、エアーサッカー6からの吐出圧によるガイドパイプ10からの弾性糸3の糸飛ばしと、が可能である。
【0027】
クランプカッター7による弾性糸3の保持(クランプ)を解除した状態で、エアーサッカー6が駆動されると、クランプカッター7内にある弾性糸3は、前記吐出部6bからの吐出圧により、ノズルパイプ8、漏斗状ガイド9、ガイドパイプ10を経由して、ドラフト装置100のフロントトップローラ111の外周面111a上に突入する。
【0028】
ここで、クランプカッター7内の弾性糸3の送出経路は気密性が保たれると共に、クランプカッター7とノズルパイプ8とも気密性を保つように連通接続されている。また、ノズルパイプ8と、その糸送り方向下流のガイドパイプ10とは、漏斗状ガイド9により接続されている。この漏斗状ガイド9は、入口はその内径がノズルパイプ8の外径よりも幅広に形成されて外部に開放されているが、出口はその内径がガイドパイプ10の外径と一致するように形成されて気密性が保たれている。
以上構成により、エアーサッカー6が作動すると、吐出部6bからの噴射エアにより、クランプカッター7とノズルパイプ8との間で、弾性糸3に送り力が付与され、弾性糸3はガイドパイプ10よりドラフト装置100(フロントトップローラ111の外周面111a上)に突入する。同時に、漏斗状ガイド9でエアが一部逃がされて、ガイドパイプ10からのエア吐出圧が低減する。そして、ドラフト装置100内を送られる鞘繊維2に、ガイドパイプ10からのエアによる悪影響が及ぶことを防止している。
【0029】
図2、図3を用いて、弾性糸3の鞘繊維2内への糸入れについて説明する。
糸継ぎ時等など、コアヤーンの製造が中断・再開される際には、クランプカッター7に保持されている弾性糸3が、ドラフト装置100内でドラフトされている鞘繊維2内へと新たに挿入される。これが、弾性糸3の鞘繊維2内への糸入れである。
このとき、エアーサッカー6を駆動して、クランプカッター7に保持されている弾性糸3をガイドパイプ10内より飛ばして、フロントトップローラ111の外周面111a上に突入させる。この外周面111a上で、弾性糸3の糸端が接触する位置を突入位置Pとする。
そして、外周面111a上に突入した弾性糸3は、フロントトップローラ111に回転に伴って、フロントトップローラ111とフロントボトムローラ112との間に送り込まれ、鞘繊維2内へ弾性糸3が挿入される。
【0030】
以上構成のように、弾性糸3の突入位置Pを、フロントトップローラ111の外周面111aに設けることで、エアーサッカー6の駆動によりガイドパイプ10から吐出されるエアが、ドラフト装置100内の鞘繊維2に直接当たることがない。つまり、ガイドパイプ10からの吐出エアによって、鞘繊維2に悪影響が及びにくい。
【0031】
前記糸入れの成功率は、突入した弾性糸3のフロントトップローラ111への追従性に依存する。
つまり、外周面111aに接触後(突入後)の弾性糸3の糸端が、前記外周面111aから離れることなく付着した状態となると、この弾性糸3は、回転するフロントトップローラ111に追従し、そのままフロントトップローラ111とフロントボトムローラ112との間に送り込まれる。つまり、前記糸入れが成功する。これに対して、外周面111aに接触後(突入後)の弾性糸3の糸端が、前記外周面111aから離れてしまうと、この弾性糸3は不適切な位置で鞘繊維2内に挿入されたり、鞘繊維2内に入ることなく外れてしまったりする。つまり、前記糸入れが失敗しやすくなる。
【0032】
そこで、前記糸入れの成功率を向上すべく、弾性糸3のフロントトップローラ111への突入経路Cや、弾性糸3がフロントトップローラ111の外周面111aにはじめて接触する突入位置Pが、次のように設定されている。
【0033】
本実施の形態におけるガイドパイプ10は、一直線状の筒状部材であるので、ガイドパイプ10内に形成される弾性糸3の案内経路が一直線状になる。ガイドパイプ10内の案内経路が一直線状であれば、この案内経路の延長線上にある突入経路Cも一直線状となる。
ここで、弾性糸3のフロントトップローラ111への突入経路Cは、ガイドパイプ10の出口側部分の形状によって定められるものである。このため、ガイドパイプ10の中途部に屈曲部があったとしても、少なくともガイドパイプ10の出口側部分が一直線状に形成されていれば、突入経路Cも一直線状となる。
【0034】
前記突入経路Cは、フロントトップローラ111の外周面111aの法線上に形成されており、前記突入経路Cの終端位置である前記突入位置Pは、この法線と前記外周面111aとの交点位置となっている。つまり、突入経路Cの延長線上には、フロントトップローラ111の軸心Mrが位置している。
このような突入経路Cが形成されるように、ドラフト装置100に対するガイドパイプ10のレイアウト、つまりガイドパイプ10の配置位置やガイドパイプ10の向き(配置姿勢)が、設定されている。
【0035】
弾性糸3は、エアーサッカー6の駆動により、ガイドパイプ10から軸心Mrに向けて(法線方向で)飛ばされ、フロントトップローラ111の外周面111a上の突入位置Pに到達する。
このように、弾性糸3を前記外周面111aに法線方向から突入させると、他の方向(軸心Mrを通過しない方向)より突入させる場合と比べて、弾性糸3の糸端が前記外周面111aに対して滑りにくく、回転するフロントトップローラ111に追従しやすい。つまり、弾性糸3の鞘繊維2内への糸入れの成功率が向上する。
【0036】
これは、前記外周面111aへの弾性糸3の突入方向によって、接触時(突入時)に弾性糸3の糸端が受ける衝撃の大きさが変化し、弾性糸3の糸端を構成する繊維がほぐれる程度が変化することによる。弾性糸3の糸端の繊維がほぐれると、接触時(突入時)に前記外周面111aに弾性糸3の糸端が離れることなく付着した状態になりやすい。
ここで、弾性糸3を前記外周面111aに法線方向から突入させると、他の方向(軸心Mrを通過しない方向)より突入させる場合と比べて、弾性糸3の糸端が前記外周面111aに、滑ることなく全面的に接触し、接触時(突入時)に受ける衝撃が大きく、弾性糸3の糸端がほぐれやすい。このため、弾性糸3を前記外周面111aに法線方向から突入させると、前記糸入れの成功率が向上する。
【0037】
また、図2、図3に示すように、ガイドパイプ10の出口10aと突入位置Pとの離間距離(突入経路Cの経路長さ)は、2〜8mm程度に設定することが望ましい。
【0038】
また、一直線状の筒状部材であるガイドパイプ10の向き(配置姿勢)は、鉛直方向を向くものとなっており、ガイドパイプ10内の弾性糸3の案内経路や前記突入経路Cも鉛直方向に沿うものとなっている。そして、ガイドパイプ10からエアーサッカー6の駆動により飛ばされる弾性糸3は、フロントトップローラ111の外周面111a上の突入位置Pに、真上から突入する。
【0039】
次に、図2、図3、図4を用いて、ガイドパイプ10の出口10aの形状を説明する。
弾性糸3はエアーサッカー6の吐出圧により送り出される構成であるため、ガイドパイプ10の出口10aの形状は、フロントトップローラ111の外周面111a上への弾性糸3の突入方向に影響を及ぼすものとなっている。
そこで、ガイドパイプ10の出口10aの形状は、前記突入方向が、前記突入位置Pに対して、フロントトップローラ111の軸方向でズレることのないように、形成されている。
【0040】
図4に示すように、ガイドパイプ10の出口10aは楕円形状であって、この楕円の長軸方向が、ドラフト装置100における鞘繊維2の送出方向Dsに沿う方向となっている。
【0041】
このため、ガイドパイプ10の出口10aより吐出されるエアは、ガイドパイプ10の中心軸Mpに対して、前記送出方向Dsでは拡散されるが、フロントトップローラ111の軸方向(軸心Mr方向)では、拡散されない。したがって、ガイドパイプ10の出口10aより吐出されるエアの拡散の影響により、弾性糸3の突入方向が、フロントトップローラ111の軸方向(軸心Mr方向)にズレてしまうことがない。
【0042】
弾性糸3の突入方向が軸心Mr方向にズレてしまうと、鞘繊維2への弾性糸3の挿入位置が、鞘繊維2の幅方向の中央ではなく、幅方向で中央から左右にズレた位置となったり、弾性糸3の鞘繊維2内への挿入自体が失敗してしまうこともある。つまり、弾性糸3の鞘繊維2内への糸入れが低下してしまう。
以上構成のガイドパイプ10の場合は、弾性糸3の突入方向が軸心Mr方向にズレる恐れが無いので、このような失敗がない。
【0043】
本発明のコアヤーン製造装置をまとめる。
第一の発明たるコアヤーン製造装置は、コアヤーンの鞘繊維をドラフトする複線式のドラフト装置と、コアヤーンの芯繊維となる弾性糸を供給する弾性糸供給装置と、前記ドラフト装置への前記弾性糸の突入位置を定めるガイドパイプと、前記ガイドパイプ内より前記突入位置に向けて前記弾性糸を飛ばすエアーサッカーと、を備えている。
前記ガイドパイプの出口形状は、前記ドラフト装置における前記鞘繊維の送出方向で長手となる形状である。
【0044】
本実施の形態のコアヤーン製造装置1は、四線式のドラフト装置100と、弾性糸供給装置200と、空気式精紡装置300と、を備えている。精紡装置は空気式に限定するものではない。
ドラフト装置100と弾性糸供給装置200との間には、弾性糸3の送出経路に沿って、ヤーンフィーラー5、エアーサッカー6、クランプカッター7、ノズルパイプ8、漏斗状ガイド9、ガイドパイプ10、が配置されている。
【0045】
本実施の形態では、ガイドパイプ10の出口10aの形状は、楕円形状であって、この楕円の長軸方向が、ドラフト装置100における鞘繊維2の送出方向Dsに沿う方向となっている。
ガイドパイプの出口形状としては、本実施の形態の楕円形状に限定されるものではなく、ひし型、長穴(矩形において角部が丸く形成された形状)、二等辺三角形など、一方向で長手でこの一方向に対して垂直な方向で短手となるような、一直線状の開口であればよい。そして、このような一方向で長手となる開口が形成されたガイドパイプを、その開口の長手方向が鞘繊維2の送出方向Dsに沿う方向となるように、ドラフト装置に対して配置すればよい。
【0046】
以上構成により、ガイドパイプの出口より吐出されるエアは、ガイドパイプの出口側部分の中心軸に対して、鞘繊維の送出方向では拡散されるが、フロントトップローラの軸方向では、拡散されない。
このため、鞘繊維内に挿入される糸の挙動が安定して、弾性糸の鞘繊維内への糸入れ成功率が向上する。
【0047】
第二の発明たるコアヤーン製造装置は、第一の発明において、次の構成としたものである。
コアヤーンの鞘繊維をドラフトする複線式のドラフト装置と、コアヤーンの芯繊維となる弾性糸を供給する弾性糸供給装置と、前記ドラフト装置への前記弾性糸の突入位置を定めるガイドパイプと、前記ガイドパイプ内より前記突入位置に向けて前記弾性糸を飛ばすエアーサッカーと、を備えている。
前記突入位置は、前記ドラフト装置に備えるフロントトップローラの外周面上に設けられている。
前記ガイドパイプの出口から前記突入位置に至る前記弾性糸の突入経路の延長線上に、前記フロントトップローラの略軸心位置が位置するように、前記ドラフト装置に対する前記ガイドパイプのレイアウトが設定されている。
【0048】
本実施の形態のコアヤーン製造装置1は、四線式のドラフト装置100と、弾性糸供給装置200と、空気式精紡装置300と、を備えている。精紡装置は空気式に限定するものではない。
ドラフト装置100と弾性糸供給装置200との間には、弾性糸3の送出経路に沿って、ヤーンフィーラー5、エアーサッカー6、クランプカッター7、ノズルパイプ8、漏斗状ガイド9、ガイドパイプ10、が配置されている。
【0049】
弾性糸3のドラフト装置100への突入位置Pは、ドラフト装置100に備える四線式のドラフトローラのうち、もっとも空気式精紡装置300に近い位置にあるフロントトップローラ111の外周面上に、設けられている。
また、ガイドパイプ10の出口10aから突入位置Pに至る弾性糸3の突入経路Cの延長線上には、前記フロントトップローラの略軸心位置が位置する。このような位置関係となるように、ドラフト装置100に対するガイドパイプ10のレイアウト(配置位置や向き)が設定されている。
【0050】
以上構成により、ガイドパイプから吐出されるエアがドラフト装置内の鞘繊維に直接当たらない。また、突入する弾性糸の糸端がフロントトップローラの外周面に対して滑りにくく、回転するフロントトップローラに追従しやすい。
このため、ガイドパイプから吐出されるエアによって、ドラフト装置内の鞘繊維が受ける影響が最小化されると共に、弾性糸の鞘繊維内への糸入れの成功率が向上する。
【0051】
第三の発明たるコアヤーン製造装置は、前記第一または第二の発明において、次の構成としたものである。
前記ガイドパイプの出口形状を楕円形状としている。
【0052】
このため、鞘繊維内に挿入される糸の挙動が安定して、弾性糸の鞘繊維内への糸入れ成功率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コアヤーン製造装置の主要部を示す側面図である。
【図2】弾性糸のフロントトップローラへの突入経路を示すフロントトップローラ周辺部の側面図である。
【図3】弾性糸のフロントトップローラへの突入経路を示すフロントトップローラ周辺部の正面図である。
【図4】ガイドパイプの出口形状を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 コアヤーン製造装置
2 鞘繊維
3 弾性糸
4 コアヤーン
6 エアーサッカー
10 ガイドパイプ
10a 出口
100 ドラフト装置
111 フロントトップローラ
111a 外周面
200 弾性糸供給装置
C 突入経路
Ds 送出方向
Mr 軸心
P 突入位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアヤーンの鞘繊維をドラフトする複線式のドラフト装置と、
コアヤーンの芯繊維となる弾性糸を供給する弾性糸供給装置と、
前記ドラフト装置への前記弾性糸の突入位置を定めるガイドパイプと、
前記ガイドパイプ内より前記突入位置に向けて前記弾性糸を飛ばすエアーサッカーと、
を備える、コアヤーン製造装置であって、
前記ガイドパイプの出口形状を、前記ドラフト装置における前記鞘繊維の送出方向で長手となる形状とした、
ことを特徴とするコアヤーン製造装置。
【請求項2】
前記突入位置は、前記ドラフト装置に備えるフロントトップローラの外周面上に設けられると共に、
前記ガイドパイプの出口から前記突入位置に至る前記弾性糸の突入経路の延長線上に、前記フロントトップローラの略軸心位置が位置するように、前記ドラフト装置に対する前記ガイドパイプのレイアウトが設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のコアヤーン製造装置。
【請求項3】
前記ガイドパイプの出口形状を楕円形状とした、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコアヤーン製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−336153(P2006−336153A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162610(P2005−162610)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】