説明

コイルの外部端子

【課題】 外部端子が小型化が可能であり、折り曲げ部分での抵抗をほぼ一定とする。
【解決手段】 コイルシート2の両端にそれぞれ接続されている外部端子4が、シート状導体板の一方の面5において一方の縁10から他方の縁12に向かって斜めに伸びる折り曲げ線8によって重なるように折り曲げて重なり部14を形成し、重なり部14の内面を接合部16によって電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば変圧器等に使用されるコイルを、他の回路素子等に接続するためにコイルの巻き始め部及び巻き終わり部にそれぞれ設けられる外部端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルの外部端子の構造としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の技術によれば、細長い導体箔を巻回してドーナツ状のコイルを形成し、このコイルの巻き始め部と巻き終わり部とを、巻回方向と直交する方向に折り曲げて、外部端子を構成している。
【0003】
【特許文献1】特開平4−114417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、端子を構成するために、導体箔を折り曲げているため、折り曲げられた部分の外側は引っ張られて薄くなり、内側は圧縮されて厚くなる。そのため、外部端子の比抵抗が、折曲げる前と異なった値になっており、設定通りのコイルの出力が得られないことがあった。また、折り曲げ部分の比抵抗の不均一により、比抵抗が大きくなった部分が、多く発熱し、コイルの温度が上昇する可能性もある。
【0005】
本発明は、折り曲げ部分を有しながら、折り曲げ部分での比抵抗をほぼ一定としたコイルの外部端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の外部端子は、コイルの両端にそれぞれ接続されている。この外部端子を構成する矩形のシート状導体板の一方の面において、一方の縁から他方の縁に向かって斜めに伸びる折り曲げ線によって、前記シート状導体板を、前記コイルに接続された第1の部分と、前記コイルに非接続の第2の部分とに、区画している。第2の部分を前記折り曲げ線に沿って第2の部分の少なくとも一部が第1の部分に重なるように第1の部分側に折り曲げて重なり部が形成されている。折り曲げ線の角度は90度以外の種々の角度とすることができる。この重なり部において第1及び第2の部分を電気的に接合する接合部が設けられている。接合部としては、半田を利用するものや、溶接を利用するものや、カシメを利用するものや、ロー付けを利用するものや、ネジ止めを利用するものなど、種々のものを使用することができる。コイルは、そのままリアクトルとして使用することもできるし、変圧器の一次巻線や二次巻線として使用することができる。
【0007】
このように構成したコイルの外部端子では、重なり部における第1及び第2の部分の重なり合った部分を接合部によって電気的に接合しているので、抵抗値がほぼ均一となり、設定通りの出力を得ることが可能になるし、外部端子の部分での温度上昇も生じにくくなる。また、折り曲げ線の形成部分を適切に選択することにより、コイルからの外部端子の突出量を調整することができ、この外部端子を備えたコイルを使用した機器の実装密度を向上させることができる。
【0008】
この外部端子シート状導体板を、コイルの巻線部分と一体に形成することもできるし、コイルの巻線部分とは別個に構成し、コイルの巻線部分に接続することもできる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明による外部端子を備えたコイルでは、外部端子が折り曲げ部分を有することによって小型化が可能であり、しかも折り曲げ部分での比抵抗を接合部によってほぼ一定としているので、コイルの出力を設定通りとすることができ、かつ発熱を押さえることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1の実施形態の外部端子は、コイル、例えば変圧器の一次巻線または二次巻線として使用されるものの外部端子である。具体的にはインバータ方式の電源に使用される変圧器の一次巻線または二次巻線の外部端子である。従って、このコイルには、高周波電流が流れる。
【0011】
コイルは、図2に示すように、複数の導電性、例えば金属製のコイルシート2を絶縁シート(図示せず)を間に挟んで積層したものである。これらコイルシート2は、矩形の枠状に形成され、この実施形態では互いに並列に接続するために、外部端子4、4がその両端に形成されている。なお、外部端子4、4の位置を調整して、各コイルシート2を直列に接続することもある。
【0012】
外部端子4を形成するために、コイルシート2は、図3に示すように、一部を欠除させた枠状体に金属を打ち抜いて形成されている。欠除部分は、この実施形態では、一方の長辺部の中央としたが、長辺部の一方側に偏った位置に形成することもできるし、短辺部の中央や、転変部の一方側に偏った位置に形成することもできる。この欠除部分の両側にあるコイル2の部分、即ち、先端部分6、6おいて、図1(a)に示すように、コイルシート2の一方の面5側において折り返し線8が仮想されている。この折り返し線8は、一方の面5における一方の縁10から他方の縁12に向かって斜め、例えば45度の角度をなすように想定されている。この実施形態では、折り返し線6は、欠除部分側を向くように形成したが、逆に欠除部分側と反対側を向くように形成することもできる。また、角度は90度以外の角度であれば、任意の角度に設定できる。この折り返し線8によって、先端部6は、コイルシート2側の部分と、コイルシートとは非接続の先端部6側の部分とに区画されている。
【0013】
この折り返し線8に沿ってコイルシート2の先端部6側の部分が、コイルシート2側の部分に折り返されている。これによって、折り返し線8の両側にある一方の面5同士が接触し、折り返し部14が形成され、折り返された部分が外部端子4とされている。折り返したことにより、折り返し部14では、一方の面5の反対側の面では引っ張られており、一方の面側では圧縮されている。そのために、抵抗値が変化している。この点を改善するために、図1(c)に示すように、折り返し部14の一方の面5側には、接合部16が形成されている。
【0014】
接合部16は、例えば半田付けすることによって構成されている。この他に溶接、カシメ、ロー付けまたはネジ止めによって接合部16を構成することもできる。
【0015】
このように接合部16を構成することによって、折り曲げ部14を電気的に一体化することができ、抵抗値が一定にすることができ、変圧器の出力を設定通りとすることもできるし、温度上昇が生じることもない。また、この実施形態のように、コイルシート3の一部を折曲げることによって構成することにより、別途に外部端子を構成する必要が無く、材料を節約することができる。
【0016】
本発明の第2の実施形態のコイルの外部端子4aは、図4に示すように、第1の実施形態のコイルの外部端子4の先端を更に金属製コイルシート2の長辺部に平行となるように折り曲げて、その折り曲げ部14aの一方の面5間に接合部(図示せず)を構成したものである。他の構成は、第1の実施形態のコイルと同一であるので、同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。このように、もう1つ折り返し部14aを構成することによって外部端子4の方向を変更することができる。特に、この実施形態のコイルのようにコイルシート2の長辺部と平行に折り曲げると、外部端子4が占めるスペースを小さくすることができ、このコイルを使用した変圧器の実装密度を上げることができる。
【0017】
本発明の第3の実施形態のコイルの外部端子4bは、図5に示すように、コイルシート2と別途に構成されたもので、形状は、第2の実施形態の外部端子4aをコイルシート2と別個に形成し、半田、溶接、カシメ、ロー付けまたはネジ止めによって、コイルシート2に接合したものである。この外部端子4bでは、外部端子4bを予め量産することができ、コイルシート2に接合するだけでよいので、製造能率が向上する。
【0018】
本発明の第4の実施形態のコイルの外部端子4cも、図6に示すようにコイルシート、例えば金属箔2aとは別個に形成されている。外部端子4cの形状は、第1の実施形態のコイルシート2の長辺部の中途で切断したようなもので、長方形状の導電体、例えば金属板を、第1の実施形態の外部端子4と同様に折り曲げて、コイルシート接続部4c1と非接続部4c2とを形成し、折り曲げたことによって形成された重なり部4c3を接合することによって製造されている。これら外部端子4cでは、コイルシート接続部4c1が、金属箔2aの両端に半田付けまたは溶接によって結合されている。図示しない絶縁シートと共に金属箔2aが一方の外部端子4cの周りに巻回されて、図7(a)、(b)に示すようなコイルが形成されている。なお、図7(a)、(b)では非接続部4c2が互いに反対方向を向くように示してあるが、2つの非接続部4c2が同一方向を向くようにすることもできる。これら外部端子4cでも、外部端子4cを予め量産することができ、コイルシート2aに接合するだけでよいので、製造能率が向上する。
【0019】
上記の各実施形態では、コイルは変圧器に使用したが、これに限ったものではなく、例えばリアクトルとして使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態のコイルの外部端子の折り返し前及び折り返し後の平面図並びに折り返し後の側面図である。
【図2】図1のコイルの部分省略斜視図である。
【図3】図1のコイルに使用するコイルシートの折り返し前の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の外部端子を使用したコイルの斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の外部端子を使用したコイルの斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施形態の外部端子を両端に設けたコイルシートの側面図である。
【図7】図6のコイルシートを巻回して構成したコイルの正面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0021】
2 コイルシート
4 4a 4b 外部端子
5 コイルシートの一方の面
8 折り返し線
10 一方の縁
12 他方の縁
14 折り返し部
16 接合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの両端にそれぞれ接続されている外部端子において、
前記外部端子を構成する矩形のシート状導体板の一方の面において一方の縁から他方の縁に向かって斜めに伸びる折り曲げ線によって、前記シート状導体板を、前記コイルに接続された第1の部分と、前記コイルに非接続の第2の部分とに、区画し、第2の部分を前記折り曲げ線に沿って第2の部分の少なくとも一部が第1の部分に重なるように第1の部分側に折り曲げて形成された重なり部と、
この重なり部において第1及び第2の部分を電気的に接続する接続部とを、
具備するコイルの外部端子。
【請求項2】
請求項1記載のコイルの外部端子において、前記シート状導体板が前記コイルと一体に構成されているコイルの外部端子。
【請求項3】
請求項1記載のコイルの外部端子において、前記シート状導体板が前記コイルと別個に形成され、結合手段によって前記コイルに結合されているコイルの外部端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−260125(P2009−260125A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108922(P2008−108922)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】