説明

コイル封止型リアクトル

【課題】コイルを鉄粉混入樹脂成形物で封止したタイプのコイル封止型リアクトルにおいて、注型性及び曲げ強度等の機械的強度を同時に改良すること。
【解決手段】コイル封止型リアクトルにおいて、鉄粉を混入した樹脂成形物中に特定構造のアクリル系化合物をさらに配合するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル封止型リアクトルに関し、さらに詳しく述べると、コイルを鉄粉混入樹脂成形物で封止したコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、電気回路又は電子回路でインダクタンス部品として使用されるリアクトル(チョークコイルとも呼ばれる)として、フェライト粉末が金属磁性粉末として混入された樹脂コア(樹脂成形物)にコイルを埋設したフェライト粉混入樹脂成形リアクトルが知られている。例えば、特許文献1には、フェライト粉体と溶融シリカ(無機充填剤)とが混入されたエポキシ樹脂等からなる封止樹脂によりコイル素子を封止したコイル部品が記載されている。また、特許文献2には、軟磁性粉末(フェライト粉)とポリアミド等の樹脂からなるバインダを混練してなるフェライト樹脂によりコイルがモールドされてなる、スイッチング電源装置において用いられるチョークコイルが記載されている。しかしながら、これらのフェライト粉混入樹脂成形リアクトルは、コア重量あたりのフェライト粉の充填率が約40重量%以下に過ぎず、また、フェライト自身の飽和磁束密度や透磁率がその他の常用磁性材料である珪素鉄合金、さらには純鉄などにくらべて格段に低いために、必要なインダクタンスを得るために必要なリアクトルの体格、重量が非常に大きくなり(約2.5倍程度)、それに伴ってコイルも大型となるため、車載用途(例えば、車両用インバーター)のように重量軽減が要求される場合、小型軽量化が大きな課題となっていた。さらに、高価なフェライト粉末の使用量が増大するため、材料費用の低減が重要な課題となっていた。
【0003】
これらの課題を解決するため、フェライト粉に代えて珪素鉄の粉末や純鉄粉などの鉄粉を混入した樹脂を成形して得たコア(鉄粉混入樹脂成形コア)にコイルを埋設してなるコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルが実用化されている。但し、鉄粉混入樹脂成形リアクトルでは、大電流通電時のインダクタンス低下による出力リップル率の増加や鉄粉の使用に原因する重量の増加が新たな課題として存在している。これらの課題を解決するものとして、例えば特許文献3では、コイルと、コイルを封止する鉄粉混入樹脂成形コアとを有しており、鉄粉混入樹脂成形コアの重量に対する鉄粉重量を45重量%以上60重量%未満としたことを特徴とするコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルが提案されている。特許文献3に記載の発明では、鉄粉を上述のような量で充填することで、大電流時のインダクタンス減少を抑止するとともに、鉄粉の磁気特性(透磁率、飽和磁束密度)がフェライト混合樹脂成形コアに比べて格段に優れているため、リアクトルの小型化、軽量化を実現できるという利点が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−96202号公報
【特許文献2】特開平6−176946号公報
【特許文献3】特開2006−352021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルでは、鉄粉混入樹脂成形物の作製時に注型性が満足すべきレベルに達していないという問題や、車両用インバーター等の車載用途で使用したとき、小型軽量化を達成することができるにもかかわらず、樹脂成形物の機械的強度(例えば、曲げ強度)が満足すべきレベルに達していないという問題が存在している。
【0006】
本発明の目的は、したがって、例えば車両用インバーター等の車載用途において使用されるコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルにおいて、注型性及び曲げ強度等の機械的強度を同時に改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このたび、コイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルにおいて、磁性材料として鉄粉を使用し、かつその鉄粉を樹脂材料に配合してなるダストコア樹脂中に特定構造のアクリル系化合物をさらに配合することで、鉄粉量が増大しているにもかかわらず、樹脂材料の低粘度化を達成し、注型性を改良するとともに、樹脂の高含有化が可能となり、体格の小型化が可能となり、硬化後の樹脂材料(得られたダストコア樹脂)においても強度の改良を達成できるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、コイルを鉄粉混入樹脂成形物で封止したタイプのコイル封止型リアクトルであって、鉄粉を混入した樹脂成形物中に特定構造のアクリル系化合物をさらに配合したことを特徴とするコイル封止型リアクトルにある。
【0009】
本発明によれば、コイルを封止した鉄粉混入樹脂成形物を上記のように構成した結果、樹脂材料の低粘度化を達成し、注型性を改良することができる。加えて、本発明によれば、樹脂成形物において樹脂そのものの含有量を高めることが可能となり、体格の小型化が可能となり、硬化後の樹脂材料においても曲げ強度等の機械的強度の改良を達成できる。
【0010】
本発明のコイル封止型リアクトルでは、好ましくは、アクリル系化合物は、約0.1〜3重量%の量で配合される。本発明によれば、アクリル系化合物をこのような特定の量で配合することにより、特に、樹脂材料の低粘度化を達成し、注型性を改良することができる、鉄粉の含有量を高めることで体格の小型化が可能となる、といった効果を達成することができる。
【0011】
また、本発明のコイル封止型リアクトルでは、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂、とりわけエポキシ樹脂がバインダ樹脂として用いられる。本発明によれば、エポキシ樹脂をバインダ樹脂として使用することにより、特に、注型性が良好で、機械特性に優れた硬化樹脂材料を得ることができる、といった効果を達成することができる。
【0012】
また、本発明のコイル封止型リアクトルでは、磁性材料としての鉄粉が使用されることに加えて、好ましくは、鉄粉が約85重量%以上の多量に混入される。本発明によれば、鉄粉を約85重量%以上の多量に混入することにより、特に、優れた磁気特性に起因する体格及び重量の減少、小型軽量化、低価格化、といった効果を達成することができる。
【0013】
また、本発明のコイル封止型リアクトルにおいて、好ましくは、コイルは、ダストコア樹脂で封止されている。すなわち、本発明のリアクトルは、ダストコア樹脂にコイルが埋設されている形態を採用することが好ましい。本発明によれば、ダストコア樹脂にコイルが埋設されている形態を採用したことによって、特に、体格の小型化、曲げ強度等の機械的強度の改良、といった効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルの好ましい一形態を構成要素と全体図とで示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるコイル封止型樹脂成形リアクトルは、いろいろな形態で有利に実施することができる。以下、特に図1のコイル封止型樹脂成形リアクトルを参照しながら本発明を説明する。しかしながら、本発明のコイル封止型樹脂成形リアクトルは、図1に示した形態に限定されるわけではなく、従来慣用の任意の形態を有することもできる。
【0016】
図1を参照すると、(a)は、リアクトルを構成する平角線コイルを示し、(b)は、リアクトルを構成する、コイルを封止した鉄粉混入樹脂成形物、すなわち、樹脂モールドコイルを示し、そして(c)は、樹脂モールドコイルを用いて完成されたコイル封入型樹脂成形リアクトルを示す。
【0017】
図1(a)には、コイルとして使用した平角線コイル1が示されている。このコイルは、例えば、長尺銅板を巻装して形成することができる。平角線コイル1において、例えば、平角線の厚さを1mm、幅を3mm、ターン数を100とすることができる。平角線コイル1の各ターン間には1〜2mmのギャップを確保することが好ましい。平角線コイル1は、その両端にターミナル3を備えている。
【0018】
図1(b)には、樹脂モールドコイル2が示されている。樹脂モールドコイル2は、例えば平角線コイル1を金型(図示せず)に入れた後、所定の組成をもった樹脂液を金型に注入し、硬化させることにより製造することができる。平角線コイル1に対するモールド樹脂の最小被覆厚さは、例えば、約1〜3mmとすることができる。以下で説明するように、モールド樹脂としては、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂が好適であり、特にエポキシ樹脂が最適である。
【0019】
図1(c)には、図1(b)の樹脂モールドコイル2を用いて完成されたコイル封入型樹脂成形リアクトルが示されている。このリアクトルは、金型から樹脂モールドコイル2を取り出した後、それを上端に開口を備えたケース4内にセットすることによって製造することができる。ここで、ターミナル部分3をケース4から上方へ突出させる。ケース4は、アルミプレス加工品やアルミ絞り加工品から構成することが好適であるが、耐熱性の樹脂、例えばポリイミドなどから構成してもよい。ただし、ケース4は、次の成形工程における加熱処理に耐える耐熱性をもつ必要がある。
【0020】
上記のようにして樹脂モールドコイル2をケース4内にセットした後、ケース4を真空加熱炉にセットする。次いで、本発明のリアクトルで使用される鉄粉混入樹脂成形物を調製するのに必要な組成をもった鉄粉混入樹脂液をケース4内に注入し、所定の加熱温度にて所定の時間にわたって保持する。鉄粉混入樹脂液が固化してコイル封入型樹脂成形リアクトルが完成する。図1(c)において、参照番号5は、固化した鉄粉混入樹脂からなるコアである。なお、鉄粉混入樹脂液は、例えば、鉄粉を樹脂液に投入して所定時間混練することによって調製することができる。また、別法によれば、鉄粉と樹脂粉末とを混練することによって調製することもできる。得られたコイル封入型樹脂成形リアクトルにおいて、樹脂モールドコイル2は、円筒形状を有していて、鉄粉混入樹脂成形物すなわちコア5が樹脂モールドコイル5と鎖交する閉磁気回路を構成している。
【0021】
次いで、本発明のコイル封入型鉄粉混入樹脂成形リアクトルを構成する構成要素のそれぞれを説明する。
【0022】
本発明のコイル封入型リアクトルでは、コイルが鉄粉混入樹脂成形物に埋設される。鉄粉混入樹脂成形物は、樹脂成形物と、それに混入された鉄粉とから構成される。樹脂成形物は、それを形成するのに必要な組成を備えた樹脂材料から任意の成形法によって成形されたものである。樹脂材料は、バインダ樹脂として使用されるもので、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂が好適に使用され、とりわけ架橋密度が高いエポキシ樹脂が有利に使用される。エポキシ樹脂は、通常、少なくとも1個のエポキシ基がその分子中に含まれている。使用可能なエポキシ樹脂の例には、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などを挙げることができる。バインダ樹脂は、単独で使用されるのが一般的であるが、必要に応じて、2種以上のバインダ樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
樹脂材料において、エポキシ樹脂は通常主剤として使用され、この主剤に追加して、任意の添加剤を含有することができる。適当な添加剤として、例えば、アミン、酸無水物等の硬化剤、ベンジルジメチルアミン、イミダゾール等の反応促進剤、アルミナ等の熱伝導率向上剤、シランカップリング剤、などを挙げることができる。これらの添加剤は、それぞれ、この技術分野で一般的な添加量で使用することができる。
【0024】
樹脂成形物には導電性金属材料として特に鉄粉が混入されている。ここで、「鉄粉」とは、珪素鉄合金粉末、純鉄粉、軟鉄粉、アモルファス鉄粉や、鉄を主成分とする軟磁性合金鉄粉を指している。これらの鉄粉は、粉末の形態を有する任意の粒径で使用することができる。鉄粉の一般的な粒径は、平均粒径で表して、通常、約1〜約1000μmの範囲であり、約100〜300μmの平均粒径がより一般的である。鉄粉は、その表面に樹脂絶縁皮膜をコーティングした状態で使用してもよく、コーティングをもたない状態で使用してもよい。
【0025】
樹脂成形物に混入された鉄粉の量は、通常、樹脂成形物の全量を基準にして85重量%以上であることが好ましい。これにより、従来の鉄粉混入樹脂成形コアに比べて大電流時のインダクタンス減少を抑止した軽量なコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルを実現できる。鉄粉の混入量は、さらに好ましくは、約88〜92重量%である。
【0026】
本発明のコイル封止型リアクトルでは、鉄粉混入樹脂成形物中にアクリル系化合物をさらに配合する。ここで、アクリル系化合物は、さらに好ましくは、アクリル系重合物、すなわち、アクリル樹脂である。本発明の実施に使用されるアクリル系重合物は、特に限定されるわけではないけれど、通常、約40,000〜100,000の重量平均分子量を有しているアクリル樹脂である。かかるアクリル系重合物は、例えば、アクリル系重合物溶液の形態で商品名「BYK−354」としてビックケミー社から商業的に入手可能である。
【0027】
アクリル系化合物は、通常、樹脂成形物中で、その樹脂量に対して、約0.1〜6重量%の量で使用されるのが好ましい。本発明では樹脂成形物中にアクリル系化合物を配合することで、樹脂成形物を形成するための樹脂液等の樹脂材料において低粘度化を達成することができるので、樹脂成形物の製造を有利に実施することができる。アクリル系化合物の含有量が0.1重量%を下回ると、低粘度化の効果が小さく、注型性が悪くなるといった悪影響が表れ、反対に6重量%を上回ると、硬化後の樹脂材料の強度が低下するといった悪影響が表れる。アクリル系化合物の含有量は、さらに好ましくは、約0.3〜2重量%である。
【0028】
本発明のコイル封止型リアクトルは、図1を参照した上述の手法から理解できるように、鉄粉混入樹脂液などを出発物質として使用して、慣用の手法に従って製造することができる。すなわち、銅線等を巻いたコイルをケースにセットし、そこに鉄粉と樹脂材料を混合した鉄粉混入樹脂液を注型し、さらに加熱硬化して成形する方法などにより、リアクトルを有利に製造することができる。
【0029】
本発明のコイル封止型リアクトルは、いろいろな分野において有利に使用することができる。本発明のリアクトルは、例えば車両用インバーターにおいて有利に使用することができる。車両用インバーターにおいて、リアクトルは、電池電圧を昇圧させ、モータへ高電圧を送ることができる。
【実施例】
【0030】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって限定されるものでない。
【0031】
〔原料〕
本実施例では、鉄粉混入のための樹脂成形物を調製するため、次のような原料を使用した。
【0032】
エポキシ樹脂A:
ビスフェノール型エポキシ樹脂;商品名「jER−828」(三菱化学(株)製)
【0033】
エポキシ樹脂B:
脂環式エポキシ樹脂、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート;商品名「ERL−4299」(ユニオンカーバイド社製)
【0034】
エポキシ樹脂C:
脂環式エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’ −エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;商品名「CEL−2021P」(ダイセル化学工業(株)製)
【0035】
酸無水物:
3又は4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸;商品名「HN−2000」(日立化成工業(株)製)
【0036】
反応促進剤:
ベンジルジメチルアミン;カオーライザーNo.20(花王(株)製)
【0037】
熱伝導率向上剤:
アルミナ;商品名「DAM−03」(電気化学工業(株)製)
【0038】
アクリル系重合物:
アクリル樹脂;商品名「BYK−354」(ビックケミージャパン(株)製)
【0039】
実施例1
本例では、図1(c)に斜視図で示す形態をもったコイル封止型リアクトルを製造した。製造するに当たり、下記の第1表に記載の量で原料を用意した。なお、アクリル系重合物の量は、樹脂材料の総量(エポキシ樹脂、酸無水物、イミダゾール+アクリル系重合物)に基いている。
【0040】
厚さ1mm、幅3mm、ターン数100の平角線コイルを長尺銅板から製造した。得られた平角線コイルにエポキシ樹脂を膜厚3mmで被覆した。次いで、得られた樹脂モールドコイルを、アルミプレス加工により製作されたリアクトル用ケースにセットした。樹脂モールドコイルのセットが完了した後、ケースを真空加熱炉にセットし、下記の第1表に記載の配合量で調製した鉄粉混入樹脂成形物用樹脂液をケースに注入し、約150℃で約180分間にわたって加熱した。樹脂液が固化し、目的とする鉄粉混入樹脂成形物が得られた。コイルは、この樹脂成形物の内部に安定に埋設されていた。得られたコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルは、車両インバーター用リアクトルとして有利に使用することができた。
【0041】
(粘度の測定)
調製した鉄粉混入樹脂成形物用樹脂液の一部を取り出して測定サンプルとした。このサンプルを100℃に加熱した後、B型粘度計を使用して、M1ローターで回転速度12rpmでB型粘度を測定した。得られた測定結果を下記の第1表に示す。
【0042】
(曲げ強度の測定)
調製した鉄粉混入樹脂成形物用樹脂液を約150℃で約180分間にわたって加熱して、長さ90mm、高さ4mmm、幅10mmの硬化物サンプルを作製した。次いで、このサンプルの曲げ強度をJIS K6911に規定される手法に準じて測定した。支点間距離は、64mmであった。得られた測定結果を下記の第1表に示す。
【0043】
実施例2〜4
前記実施例1に記載の手法を繰返したが、本例では、鉄粉混入樹脂成形物用樹脂液の組成を下記の第1表に記載のように変更した。実施例1に記載のものと遜色のないコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルが得られた。粘度及び曲げ強度についての測定結果を下記の第1表に示す。
【0044】
比較例1及び2
前記実施例1に記載の手法を繰返したが、本例では、比較のため、鉄粉混入樹脂成形物用樹脂液の組成を下記の第1表に記載のように本発明の範囲外に変更した。得られたコイル封止型鉄粉混入樹脂成形リアクトルは、実施例1に記載のものに比較して劣っていると評価された。粘度及び曲げ強度についての測定結果を下記の第1表に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
上記第1表に記載の粘度及び曲げ強度についての測定結果から、実施例1〜4では、粘度が1000Pas以下と低く、調製した樹脂液は注型性に優れていることがわかる。また、硬化により形成された樹脂成形物の曲げ強度は、100MPaを超え、強度にも優れていることがわかる。これに対して、比較例1では、粘度が高いために注型性が低く、注型後の気泡抜け性が悪いため、曲げ強度も低い。また、比較例2では、粘度は良好であるけれども、架橋に関与しないアクリル系重合物が多量に配合されているため、曲げ強度が低下している。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のリアクトルは、例えば、電気回路、電子回路などでインダクタンス部品として有利に使用することができる。具体的には、本発明のリアクトルは、例えば、車両用DCDCコンバーターにおいて使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 コイル
2 樹脂モールドコイル
3 ターミナル部分
4 ケース
5 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを鉄粉混入樹脂成形物で封止したタイプのコイル封止型リアクトルであって、鉄粉を混入した樹脂成形物中に特定構造のアクリル系化合物をさらに配合したことを特徴とするコイル封止型リアクトル。
【請求項2】
前記アクリル系化合物は、前記樹脂成形物中にその樹脂量に対して0.1〜6重量%の量で含まれることを特徴とする請求項1に記載のコイル封止型リアクトル。
【請求項3】
前記樹脂成形物の樹脂はエポキシ樹脂であり、該エポキシ樹脂には少なくとも1つのエポキシ基が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル封止型リアクトル。
【請求項4】
前記樹脂成形物に混入された鉄粉の量が、前記樹脂成形物の全量を基準にして85重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコイル封止型リアクトル。
【請求項5】
前記樹脂成形物中に前記コイルが埋設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコイル封止型リアクトル。

【図1】
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【公開番号】特開2013−4793(P2013−4793A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135270(P2011−135270)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】