説明

コイル装置及びコイル

【課題】ダイカスト成形時の離型性が良好な内壁面を傾斜させたケースを使用した場合に生じる、コイルからケース壁部への放熱性の低下を防止する。
【解決手段】ケース内に収容された1つ以上の角コイルを備えたコイル装置が提供される。ケースは、底部と、底部から起立して対向する一対の壁部と、を有し、一対の壁部の内壁面は、その間隔が底部から離れるほど広がるような角度を成す。角コイルは、ケースの内底面と平行に配置される下部と、この下部から折り曲げられて起立した一対の側部とを有する。1つ以上の角コイルの、ケースの壁部と対向する側部の少なくとも1つが、対向する壁部の内壁面と平行に配置された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に収容されるコイル装置、及び該コイル装置に適したコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のコイル装置(例えばリアクトル)は、高負荷時に鉄損や銅損による発熱が多く、発生した熱を外部へ放出せずに使用し続けると、コアやコイルが過熱して電磁的特性が低下する。そのため、このようなコイル装置は、アルミニウム合金等の熱伝導性の良好な金属から形成された放熱ケースに収容され、コイル装置が発生した熱は放熱ケースを介して外部へ放出される。
【0003】
特許文献1には、ハイブリッド自動車で使用される従来のリアクトルの例が開示されている。自動車用リアクトルでは、小型化のために、横断面が略矩形状に巻かれた角型コイルが使用されるのが一般的である。また、コイルと放熱ケースとの間の電気絶縁と熱伝導を確保するために、コイルと放熱ケースとの間には狭い隙間が設けられ、この隙間は電気絶縁性の封止剤で充填される。
【0004】
また、自動車用リアクトルは生産台数が多いため、放熱ケースは量産性に優れたダイカストにより成形される。ダイカスト製の放熱ケース50を使用した従来のリアクトル1’の横断面図を図6に示す。図6に示されるように、放熱ケース50の一対の側壁54の内壁面54aは、底部53とそれぞれ鈍角を成している。すなわち、2つの内壁面54aは、その間隔が放熱ケース50の開口部側(図6における上端側)ほど広くなるように、互いに傾いている。放熱ケース50の内壁面54aを成形する金型も同じ形状を有しているため、ダイカスト成形後に金型を放熱ケース50から外し易くなっている。
【0005】
一方、リアクトル1’のコイル10’は、1巻当たり4箇所で直角に折り曲げられており、略矩形状の横断面形状を有している。また、リングコア20の横断面も略矩形状に形成されており、対向するコイル10’の内周面とリングコア20の外周面とが、互いに平行になるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−99596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の構成のため、リアクトル1’では、放熱ケース50の側壁54の内壁面54aと、コイル10’の側部12a1’、12b1’とが互いに傾き、放熱ケース50の開口部側(図6における上端側)ほどコイル10’の側部12aと放熱ケース50の内壁面54aとの隙間が広くなる。そのため、コイル10’から放熱ケース50へ熱が移動し難く、コイル10’の上部に熱が蓄積して温度が高くなり、リアクトル1’の性能が低下してしまうというデメリットがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係るコイル装置は、横断面が略四角形状となるように巻回された1つ以上の角コイルがケース内に収容されたコイル装置であって、ケースは、底部と、底部から起立して対向する一対の壁部と、を有し、一対の壁部の内壁面は、その間隔が底部から離れるほど広がるような角度を成し、角コイルは、ケースの内底面と略平行に配置される下部と、下部から折り曲げられて起立した一対の側部とを有し、1つ以上の角コイルの、ケースの壁部と対向する側部の少なくとも1つが、対向する壁部の内壁面と略平行に配置されたコイル装置である。例えば、ケースの一対の壁部の内壁面の少なくとも一方が、底部の内底面と鈍角を成し、内底面と鈍角を成す内壁面と対向する側部が、内壁面と略平行に配置された構成としてもよい。コイル装置は、例えばリアクトルや変圧器である。
【0009】
上記構成によれば、ダイカスト成形時の離型性が良好な内壁面を傾斜させたケースを使用した場合に生じる、コイルからケース壁部への放熱性の低下が防止される。
【0010】
1つ以上の角コイルの、ケースの一対の壁部と対向する側部は、それぞれ壁部の内壁面と平行に配置されている構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、コイルからケース壁部への放熱性が更に向上する。
【0012】
ケースの一対の壁部の内壁面が、それぞれ底部の内底面と鈍角を成す構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、放熱性の低下を防止しつつ、より優れたケースの離型性を得ることができる。
【0014】
側部が対向するように一列に配列された複数の角コイルを備え、他の角コイルと対向する側部は、下部に対して略直角に折り曲げられている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、隣接する角コイルの対向する側部が互いに平行になるため、隣接する角コイル間の隙間全体を最小化することが可能になる。これにより、角コイル間の熱伝達の向上と共に、コイル装置のコンパクト化が可能になる。また、横断面が略矩形状に形成された一般的なコアを使用した場合に、側部が対向するコアの側面と平行になるため、コアとコイルとの隙間も狭く設定することができる。これにより、コアからコイルへの熱伝達の向上と共に、コイル装置の更なるコンパクト化が可能になる。
【0016】
角コイルが一対の側部を連結すると共に下部と平行な上部を更に有する構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、横断面が略矩形状に形成された一般的なコアを使用した場合に、角コイルの上部が対向するコアの上面と平行になるため、コアとコイルとの隙間を狭く設定することができる。これにより、コアからコイルへの熱伝達の向上と共に、コイル装置の低背化が可能となる。
【0018】
互いに平行に配列された複数の角コイルを備え、複数の角コイルは直列に連結されて連結コイルを形成した構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、角コイルが折り畳まれてケース内に収容されたような構造となり、長さ寸法が小さくコンパクトなコイル装置が実現する。
【0020】
角コイルが平角線の幅の狭い面の一方を内側に向けて巻いたエッジワイズコイルである構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、コイルの断面積密度が高く、低損失かつ放熱性の良好なコイル装置が実現する。
【0022】
本発明の実施形態に係るコイルは、横断面が略四角形状となるように巻回された、リアクトル又は変圧器に適した角コイルであって、角コイルは、下部と、下部から折り曲げられて起立した一対の側部とを有し、一対の側部は、その間隔が下部から離れるほど広がるような角度を成す。例えば、一対の側部の少なくとも一方が下部と鈍角を成す構成としてもよい。また、一対の側部の一方が下部と鈍角を成し、他方が下部と直角を成す構成としてもよい。また、一対の側部の両方が下部と鈍角を成す構成としてもよい。
【0023】
この構成によれば、ダイカスト成形時の離型性に優れたケース、すなわちケースの内壁面と内底面が鈍角を成すように形成されたケースに収容した場合に、角コイルの側部と対向するケースの内壁面とを平行に近づけて、両者の間隔をより狭く設定することが可能になるため、角コイルからケースへの放熱性の低下が防止されると共に、コイル装置の寸法を小さくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施形態の構成によれば、ダイカスト成形時の離型性が良好な内壁面を傾斜させたケースを使用した場合に生じる放熱性の低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るリアクトルの分解図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るリアクトルの横断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るリアクトルの横断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るリアクトルの横断面図である。
【図6】従来のリアクトルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施形態に係るリアクトル1について、図面を参照しながら説明する。図1はリアクトル1の斜視図であり、図2はその分解図である。以下の説明において、図1における左下側から右上側に向かう方向を奥行き方向(X軸正方向)、右下側から左上側に向かう方向を幅方向(Y軸正方向)、下側から上側に向かう方向を高さ方向(Z軸正方向)と定義する。なお、リアクトル1を使用する際には、リアクトル1をどのような方向に向けて配置してもよい。また、以下の説明においては、1巻当たり4箇所で折り曲げて形成した、略四角形状の横断面を有するコイルを角コイルと定義する。
【0027】
図1及び図2に示されるように、リアクトル1は、コイル10、コアモジュール20、一対のコア固定具30、放熱ケース50、及び端子台60を備えている。コイル10とコアモジュール20によりリアクトル本体1aが構成される。リアクトル本体1a(具体的にはコアモジュール20)のX軸方向両端には、それぞれコア固定具30を取り付けるための一対のブラケット21bが形成されている。ブラケット21bには、インサート成形によりナット(付図示)が埋め込まれている。2本のボルト72を、各コア固定具30に設けられた一対の貫通穴に通し、一対のブラケット21bに埋め込まれたナットの雌ねじにねじ込んで締め付けることで、各コア固定具30がコアモジュール20に取り付けられている。
【0028】
図2に示されるように、コアモジュール20は、2つの略U字状に形成されたU型コアユニット20a及び20bのU字の先端同士を、ギャップ部材20gを介して突き合わせて、接着剤で貼り合わせて形成された略O字形のリングコアである。コアモジュール20は、平行に並べられた一対の直線コア部22a、22bと、その両端を連絡する一対の連結コア部21を有している。U型コアユニット20a及び20bは、それぞれ磁性体から形成されたU型コアを射出成形(インサート成形)により樹脂で被覆したものである。この樹脂被覆は、コアとコイルとを電気的絶縁するために従来使用されていた絶縁ボビンがコアと一体に成形されたものであり、電気絶縁性及び耐熱性を有する樹脂(例えばポリフェニレンサルファイド(PPS))から形成される。また、本実施形態では、積層ケイ素鋼板のコアが使用されるが、圧粉磁心やフェライト磁心を使用してもよい。ギャップ部材20gは、所定の厚さを有する非磁性体(例えば、アルミナ等のセラミックスや樹脂)の板材である。
【0029】
コイル10は、平角エナメル線をエッジワイズ巻きした2つの同一構造の直線状の角コイルである直線コイル部12a、12bを平行に並べて、一端(図2における右上端)同士を連結部14により連結した構造を有している。各直線コイル部12a、12bの中空部内に、一端側からU型コアユニット20aの直線コア部22a、22bを、他端側からはU型コアユニット20bの直線コア部22a、22bをそれぞれ差し込み、ギャップ部材20gを介してU型コアユニット20aと20bの両端面(ギャップ面22f)同士を突き合わせて接着すると、リアクトル本体1aが形成される。図2に示されるように、各U型コアユニット20a、20bの直線コア部22a、22bと連結コア部21との境界部には、それぞれフランジ部20fが形成されている。コイル10は、各U型コアユニット20a、20bのフランジ部20fの間で挟まれて、X軸方向へ移動しないように位置決めされている。
【0030】
放熱ケース50は、熱伝導性が良好で軽量な金属(例えばアルミニウム合金)から形成された略箱形の部材であり、リアクトル本体1aを収容する。放熱ケース50のX軸方向両端部の内側には、コア固定具30を取り付けるための雌ねじ52f及び位置決めピン52pを有する取り付け座52が形成されている。コア固定具30を取り付けたリアクトル本体1aを放熱ケース50内に収容して、ボルト74によりコア固定具30を取り付け座52に固定することで、リアクトル本体1aは放熱ケース50内に固定される。このとき、位置決めピン52pがコア固定具30に設けられた位置決め穴32に嵌入することで、放熱ケース50に対するリアクトル本体1aの位置が正確に合わせられる。リアクトル本体1aが放熱ケース50内に取り付けられた後、放熱ケース50とリアクトル本体1aとの隙間に充填剤(不図示)が充填される。また、放熱ケース50は、強制冷却装置の冷却面上に設置される。すなわち、放熱ケース50の底面50bは強制冷却装置の冷却面と接触し、リアクトル1内で発生した熱の大半は、放熱ケース50の底面50bを介して強制冷却装置の冷却面に流出する。
【0031】
放熱ケース50の縁部の一端には、ボルト76により端子台60が取り付けられている。端子台60は、バスバー62a及び62bを備えており、各バスバー62a、62bは、それぞれコイル10のリード部13a、13bと溶接される。
【0032】
図2に示されるように、放熱ケース50は、X軸及びY軸と平行な縁部を有する矩形状の底部53と、底部53の各縁部から直立した側壁54〜56を備えている。図3は、X軸正方向に見たリアクトル1の横断面図である。図3に示されるように、底部53のY軸方向両端から直立した一対の側壁54の内壁面54aは、その間隔が上側(Z軸正方向側)ほど広がる方向に、それぞれZX面に対して僅かに(例えば0.5〜5°、好ましくは約2°)傾斜している。また、各側壁54の外壁面54bは、その間隔が上側ほど狭くなる方向に、それぞれZX面に対して僅かに(例えば0.5〜5°、好ましくは約1〜2°)傾斜している。すなわち、放熱ケース50は、各側壁54の厚みが上側ほど薄くなっている。底部53のX軸方向両端から直立した側壁55、56についても同様に、各内壁面は上側ほど外側へ開くよう傾斜し、各外壁面は上側ほど内側へ寄るように傾斜しており、その結果、各側壁55、56の厚みが上側ほど薄くなっている。この構成により、ダイカストにより成形した後で、放熱ケース50を金型から外し易くなっている。なお、内壁面54a及び外壁面54bの傾斜角度を大きく設定するほど離型性が向上するが、リアクトルの外形寸法が大きくなる。外形寸法と加工容易性(離型性)との兼ね合いで傾斜角度が決定される。また、側壁54の内壁面54a及び外壁面54bの傾斜角度は、場所によって異なる値に設定することもできる。
【0033】
また、直線コイル部12a、12bにおける放熱ケース50の側壁54の内壁面54aと対向する側部12a1、12b1は、内壁面54aと平行に配置されている。具体的には、直線コイル部12a、12bの側部12a1、12b1は、下部12a2、12b2に対して僅かに鈍角に(例えば90.5〜95°、好ましくは92°で)折り曲げられており、上部12a3、12b3に対して僅かに鋭角に(例えば85〜89.5°、好ましくは88°で)折り曲げられている。この構成により、直線コイル部12a、12bの側部12a1、12b1と放熱ケース50の側壁54との間隔g全体を極力小さな値(下限値)に設定することが可能となり、コイル10から放熱ケース50の側壁54への放熱特性が最適化される。
【0034】
また、コア20は横断面が矩形状に形成されており、コア20と直線コイル部12a、12bの側部12a1、12b1との間隔は、上部において広くなっている。コア20のギャップ部(ギャップ板20gが配置される位置)から洩れる磁束が銅損の要因の一つとなっているが、コア20(ギャップ部)と直線コイル部12a、12bとの距離が上部において広くなるため、銅損が低減するという効果が得られる。
【0035】
また、上部においてコア20と直線コイル部12a、12bの側部12a1、12b1との間に生じるスペースSに温度センサ等の各種センサを配置することもできる。スペースSにセンサを配置することで、リアクトル1内の限られた空間を有効利用することができる。
【0036】
(比較例)
ここで、第1の実施形態の構成により奏される効果を明示するために、1つの比較例(従来例)を挙げる。図6は、第1の実施形態と同じ放熱ケース50と、平角エナメル線を直角に折り曲げて形成した直線コイル部12a’、12b’を有するコイル10’とを組み合わせた比較例1’の横断面図である。なお、コイル10’を除く比較例1’の構成は、第1の実施形態と共通するため、詳しい説明は省略する。比較例1’では、放熱ケース50の側壁54の内壁面54aは直線コイル部12a’、12b’の側部12a1’、12b1’に対して傾いており、両者の間隔g’は上側ほど広くなっている。従って、比較例1’の間隔g’は下端部を除いて下限値よりも大きくなるため、コイル10’から放熱ケース50の側壁54への熱の移動速度が小さくなり、従って本発明の第1の実施形態に係るリアクトル1と比べて放熱性が低くなる。特に、背の高い(Z軸方向に長い)設計においては、間隔g’が上部において極めて広くなり、コイル10’から放熱ケース50の側壁54への熱の移動が著しく阻害される。
【0037】
(第2実施形態)
第1の実施形態は、2つの直線コイル部を備えたコイル装置に本発明を適用した例であるが、1つ又は3つ以上の直線コイル部を備えたコイル装置にも本発明を適用することができる。図4は、直線コイル部112を1つのみ有するコイル110を備えた、本発明の第2実施形態に係るリアクトル100の横断面図である。放熱ケース150の各側壁154の内壁面154aは、底部153と僅かに鈍角(例えば約90.5〜95°、好ましくは約92°)を成すように傾斜している。また、各側壁154の外壁面154bは、底部153と僅かに鋭角(例えば約85〜89.5°、好ましくは約88〜89°)を成すように傾斜している。この構成により、放熱ケース150は、各側壁154の厚さが上部ほど薄くなり、また各側壁154の内壁面154aの間隔が上部ほど広くなっている。
【0038】
また、直線コイル部112における放熱ケース150の各側壁154の内壁面154aと対向する各側部112a、112bは、内壁面154aと平行に配置されている。具体的には、直線コイル部112の各側部112a、112bは、それぞれ下部112cに対して僅かに鈍角に(例えば90.5〜95°、好ましくは92°で)折り曲げられており、また、それぞれ上部112dに対して僅かに鋭角に(例えば85〜89.5°、好ましくは88°で)折り曲げられている。この構成により、直線コイル部112の各側部112a、112bと放熱ケース50の側壁154との間隔g全体を下限値に設定することが可能となり、コイル110から放熱ケース150の側壁154への放熱特性が最適化される。
【0039】
(第3実施形態)
図5は、3つの直線コイル212a〜cを備えた、本発明の第3実施形態に係るリアクトル200の横断面図である。第3実施形態の放熱ケース250においても、各側壁254の内壁面254aは、底部253と僅かに鈍角(例えば約90.5〜95°、好ましくは約92°)を成すように傾斜している。また、各側壁254の外壁面254bは、底部253と僅かに鋭角(例えば約85〜89.5°、好ましくは約88〜89°)を成すように傾斜している。この構成により、放熱ケース250は、各側壁254の厚さが上部ほど薄くなり、また各側壁254の内壁面154aの間隔が上部ほど広くなっている。
【0040】
また、放熱ケース250の各側壁254の内壁面254aと対向する直線コイル部212aの側部212a1と直線コイル部212bの側部212b1は、放熱ケース250の各側壁254の内壁面254aと平行に配置されている。具体的には、直線コイル部212aの側部212a1及び直線コイル部212bの側部212b1は、それぞれ下部212a2及び212b2に対して僅かに鈍角に(例えば90.5〜95°、好ましくは92°で)折り曲げられており、また、それぞれ上部212a3及び212b3に対して僅かに鋭角に(例えば85〜89.5°、好ましくは88°で)折り曲げられている。この構成により、直線コイル部212aの側部212a1及び、直線コイル部212bの側部212b1と放熱ケース250の側壁254との間隔g全体を下限値に設定することが可能となり、直線コイル部212a及び212bから放熱ケース250の各側壁254への放熱特性が最適化される。
【0041】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0042】
上記の実施形態では、平角エナメル線のエッジ面(幅の狭い側面)を中心軸(コイル軸)に向けて巻くエッジワイズ巻きしたコイル(エッジワイズコイル)が使用されているが、フラット面(幅の広い側面)をコイル軸に向けて巻くフラット巻きしたコイル(フラットコイル)に適用することもできる。また、本発明は、丸線を横断面が略四角形状となるように巻回した角コイルにも適用することができる。
【0043】
上記の実施形態は、直線コイルを備えたコイル装置に本発明を適用したものであるが、本発明は角コイルを円環状(ドーナツ状)にループさせたトロイダルコイルを備えたコイル装置にも適用することができる。
【0044】
また、上記の実施形態では、放熱ケースの各側壁と対向する直線コイルの側部が、それぞれ放熱ケースの側壁の内壁面と平行になるよう斜めに形成されているが、一方の側壁と対向する直線コイルの側部のみが斜めに形成される構成としてもよい。
【0045】
上記の実施形態は、磁性体のコアとボビン(樹脂被覆部)が射出成形により一体に形成されたコアモジュールを使用するコイル装置に本発明を適用した例であるが、コアと別体に形成した樹脂製の絶縁ボビンを使用する構成にも本発明を適用することができる。
【0046】
また、上記の実施形態は本発明をリアクトルに適用した例であるが、他の種類のコイル装置(例えば変圧器)にも本発明を適用することができる。
【0047】
また、上記の実施形態では、コアは横断面形状が矩形に形成されているが、コアの各側面が対向するコイルの内周面と平行となるように、横断面形状が台形状に(すなわちコイルの内周面の横断面形状と略相似形状に)形成されてもよい。
【0048】
また、上記の実施形態では、放熱ケースの対向する側壁の内壁面が共に底部の上面(XY面)と鈍角を成すように傾斜しているが、対向する内壁面の間隔が底部から離れるほど広くなるように形成されていれば、一方の側壁の内壁面を底部の上面と直角又は鋭角を成すように形成されたものであってもよい。
【0049】
また、上記の実施形態では、放熱ケースの側壁と対向するコイルの外周面が、側壁の内壁面に対して略平行となるように、導線を非直角に折り曲げてコイルが形成されているが、コイルの外周面と放熱ケースの側壁の内周面とを完全に平行にしなくても、両者の成す角度が導線を直角に折り曲げた場合よりも小さくなるような角度で導線を非直角に折り曲げてコイルを形成した場合でも、上記の実施形態と同様の効果が奏される。
【符号の説明】
【0050】
1 リアクトル
1a リアクトル本体
10 コイル
20 コアモジュール
30 コア固定具
40 サーミスタ
50 放熱ケース
60 端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が略四角形状となるように巻回された1つ以上の角コイルがケース内に収容されたコイル装置であって、
前記ケースは、底部と、該底部から起立して対向する一対の壁部と、を有し、
前記一対の壁部の内壁面は、その間隔が前記底部から離れるほど広がるような角度を成し、
前記角コイルは、前記ケースの内底面と略平行に配置される下部と、該下部から折り曲げられて起立した一対の側部とを有し、
前記1つ以上の角コイルの、前記ケースの壁部と対向する側部の少なくとも1つが、対向する前記壁部の内壁面と略平行に配置されたコイル装置。
【請求項2】
前記ケースの一対の壁部の内壁面の少なくとも一方が、前記底部の内底面と鈍角を成し、
前記内底面と鈍角を成す内壁面と対向する前記側部が、該内壁面と略平行に配置された、ことを特徴とする請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記ケースの一対の壁部の内壁面が、それぞれ前記底部の内底面と鈍角を成す、ことを特徴とする請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記1つ以上の角コイルの、前記ケースの一対の壁部と対向する側部は、それぞれ前記壁部の内壁面と平行に配置されている、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記側部が対向するように一列に配列された複数の前記角コイルを備え
他の前記角コイルと対向する前記側部は、前記下部に対して略直角に折り曲げられている、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記角コイルが前記一対の側部を連結すると共に前記下部と平行な上部を更に有する、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項7】
互いに平行に配列された複数の前記角コイルを備え、該複数の角コイルは直列に連結されて連結コイルを形成したことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記角コイルが平角線の幅の狭い面の一方を内側に向けて巻いたエッジワイズコイルである、ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項9】
リアクトルであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項10】
横断面が略四角形状となるように巻回された、リアクトル又は変圧器に適した角コイルであって、
前記角コイルは、下部と、該下部から折り曲げられて起立した一対の側部とを有し、
前記一対の側部は、その間隔が前記下部から離れるほど広がるような角度を成すことを特徴とする角コイル。
【請求項11】
前記一対の側部の少なくとも一方が、前記下部と鈍角を成す、ことを特徴とする請求項10に記載の角コイル。
【請求項12】
前記一対の側部の両方が前記下部と鈍角を成す、ことを特徴とする請求項11に記載の角コイル。
【請求項13】
前記一対の側部の一方が前記下部と鈍角を成し、他方が前記下部と直角を成す、ことを特徴とする請求項11に記載の角コイル。
【請求項14】
前記一対の側部を連結すると共に前記下部と平行な上部を更に有する、ことを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか一項に記載の角コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−12664(P2013−12664A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145640(P2011−145640)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】