説明

コイル装置

【課題】コイル装置内部の状態の正確な検出が可能な小型のコイル装置を提供する。
【解決手段】 本発明の実施形態に係る2つの直線コイルを備えたコイル装置は、2つの直線コイルが、軸が略平行となるように、かつ2つの直線コイル間に隙間が形成されるように配置され、軸と垂直な平面上で、隙間が延びる方向における中央部では隙間は狭く、隙間が延びる方向における中央部の外側では隙間が広くなっており、コイル装置内の所定の物理量を検出するセンサを更に備え、センサのセンサヘッドは、少なくとも一部が隙間に配置され、かつ、中央部を避けた位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを備えたコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のコイル装置(例えばリアクトル)は、高負荷時に鉄損や銅損による発熱量が多く、高負荷の状態で使用し続けると、コアやコイルが過熱して特性が低下する。そのため、一部の大容量のコイル装置には、温度センサ(例えばサーミスタ)によりコイル装置内の温度を監視し、コイル装置が一定温度以上に昇温しないように制御する構成が採用されている。
【0003】
特許文献1に開示されるリアクトルは、平行に配置された一対の直線コイルを有しており、温度センサは直線コイル間の間隔が最も狭い箇所に配置されている。この構成により、温度センサによって各コイルの状態の変化(温度変化)を正確に検出することができ、リアクトルの駆動の適切な制御が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−203998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のセンサ配置は、温度センサを配置するスペースを確保するために、直線コイル間の間隔を狭くすることができず、リアクトルの小型化を妨げる一因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るコイル装置は、2つの直線コイルを備えたコイル装置であって、2つの直線コイルは、軸が略平行となるように、かつ2つの直線コイル間に隙間が形成されるように配置され、軸と垂直な平面上で、隙間が延びる方向における中央部では隙間は狭く、隙間が延びる方向における中央部の外側では隙間が広くなっており、コイル装置内の所定の物理量を検出するセンサを更に備え、センサのセンサヘッドは、少なくとも一部が隙間に配置され、かつ、中央部を避けた位置に配置される。センサヘッドの上記の軸と垂直な平面上での幅が、隙間の中央部における幅より大きくてもよい。
従来のように隙間の中央部にセンサヘッドを配置する構成では中央部における直線コイルの間隔をセンサヘッドの厚さよりも広く設定する必要があったが、上記構成によれば中央部の間隔をセンサヘッドの厚さ以下に設定することが可能になり、コイル装置の幅方向(コイルが並ぶ方向)の寸法を小さくすることが可能になる。
【0007】
2つの直線コイルは、ベースの上面に沿って配置され、センサヘッドの少なくとも一部が中央部より上側の隙間に配置されてもよい。センサヘッドは、温度を検出する温度センサ素子を備えていてもよい。
この構成により、コイル装置の組み立て後でも、センサヘッドをコイル装置に取り付けることが容易になる。また、温度センサ素子により温度を検出する場合には、センサヘッドはコイル装置において最高温度となる箇所(ホットスポット)の付近に配置されるため、コイル装置のホットスポットの温度との相関の良い検出値を得ることができる。
【0008】
2つの直線コイルの中空部にそれぞれ差し込まれた2つの直線部と、2つの直線部を両端で連結する2つの連結部とを有し、ベースに固定されたリングコアと、少なくとも一部が、リングコアの直線部を覆い、直線部と共に直線コイルの中空部に差し込まれて、リングコアとコイルとを電気的に絶縁する絶縁被覆部材と、センサヘッドを保持するセンサ保持部材と、を備え、絶縁被覆部材は、2つの直線部をそれぞれ覆う2つのボビン部と、2つのボビン部を連結するボビン連結部と、を有し、センサ保持部材がボビン連結部に支持されていてもよい。
この構成によれば、センサ保持部材を支持するための専用の部材等を設ける必要が無くなり、コンパクトなセンサ保持構造が実現する。
【0009】
センサ保持部材は、前記隙間に配置され、一端がボビン連結部に固定された支持部と、支持部に支持され、センサヘッドを保持するホールド部と、を有してもよい。
この構成によれば、支持部が直線コイル間に配置されるため、低背化が可能となる。
【0010】
センサヘッドは略円柱形状であり、ホールド部は、略円筒体の軸方向全長に亘ってスリットが形成されて、略C字状の横断面形状を有しており、センサヘッドは、ホールド部の一端から差し込まれ、ホールド部の弾性力により保持されてもよい。
この構成によれば、センサヘッドは、多少の外径の違いに依らず、ホールド部により適度な弾性力で保持される。また、センサヘッドは、略円筒体のホールド部の筒内に差し込むだけで保持されるため、少ない工数でセンサヘッドをコイル装置に取り付けることができる。
【0011】
支持部は板状部材であり、スリットは、略円筒体が支持部の片面を定める平面で切断されることで形成されてもよい。
この構成によれば、センサ保持部材のスリットが形成された側では、ホールド部が直線コイル部側に突出しない。そのため、直線コイルにボビンを差し込む際に、センサ保持部材がスリットの形成された側の直線コイルと干渉することが防止される。
【0012】
ホールド部の内側面は、軸方向の一端側から他端側へ向かって内径が狭くなるテーパー状に形成されていてもよい。
この構成によれば、外径の太いセンサヘッドもホールド部に差し込み易く、また外径の細いセンサヘッドもホールド部によって確実に保持される。
【0013】
センサ保持部材は、ホールド部の一端から軸方向へ延び、センサヘッドの先端をホールド部の一端へガイドするガイド部を更に有してもよい。
この構成によれば、センサヘッドをホールド部により差し込み易くなる。
【0014】
ホールド部は支持部の上面に配設され、センサ保持部材は、支持部の上面に配設されてホールド部の軸上に位置する突き当て部を更に有してもよい。
この構成によれば、想定した寸法規格より細いセンサヘッドを使用する場合でも、センサヘッドの先端の位置をコイル軸方向の所定の範囲に制限することができる。
【0015】
センサ保持部材は、センサヘッドの基端から延びるリードを引っ掛けるフック部を更に備え、フック部の一端は、センサヘッドの基端よりも先端側に配置されていてもよい。
この構成によれば、センサヘッドをホールド部に奥まで差し込んだ後に、リードをフック部に引っ掛けて弛まないように保持するだけで、センサヘッドのホールド部からの抜け落ちが防止される。
【0016】
センサ保持部材は絶縁被覆部材と一体に成形されていてもよい。
この構成によれば、センサ保持部材の加工及び取り付けのための作業が不要になり、コイル装置を低コストで製造することができる。
【0017】
絶縁被覆部材はインサート成形によりリングコアと一体に成形されていてもよい。
この構成によれば、部品点数を減らすことができ、また絶縁被覆部材のリングコアへの取り付け作業が不要になる。また、絶縁被覆部材がリングコアに密着するため、絶縁被覆部材を介したリングコアとコイルとの間での熱の移動が向上する。また、リングコア(延いてはコイル)に対するセンサ保持部材の位置精度が向上するため、高い確度のセンサ検出値が得られる。
【0018】
2つの直線コイルにおける、隙間の外側と対向する面は、それぞれ中央部から離れるに従って互いに離れる方向へ曲がる曲面であってもよい。
線材を巻いて製造するために、コイルの外周面には必然的に曲面が形成される。この曲面間に挟まれた隙間はしばしばデッドスペースとなるが、この隙間にセンサヘッドを配置する構成により、隙間が有効に利用されて、コンパクトなコイル装置が実現する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態の構成によれば、内部状態の正確な検出が可能な小型のコイル装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリアクトルの分解図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリアクトルの平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るU型コアモジュールの斜視図である。
【図6】コイルの(a)正面図、及び(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るリアクトル1について、図面を参照しながら説明する。図1はリアクトル1の斜視図であり、図2はその分解図である。また、図3はリアクトル1の平面図であり、図4は図3におけるA−A断面図である。なお、以下の説明において、図1における右下側から左上側に向かう方向を奥行き方向(X軸方向)、左下側から右上側に向かう方向を幅方向(Y軸方向)、下側から上側に向かう方向を高さ方向(Z軸方向)と定義する。なお、リアクトル1を使用する際には、リアクトル1をどのような方向に向けて配置してもよい。
【0022】
図1及び図2に示すように、リアクトル1は、コイル10、コアモジュール20、1対の固定具30A、30B、サーミスタ40、放熱ケース50、及び端子台60を備えている。コイル10とコアモジュール20によりリアクトル本体が構成される。
【0023】
サーミスタ40は、サーミスタ素子が略円柱形状のステンレス被覆管に格納されて封止されたセンサヘッド42と、センサヘッド42の基端から延びたリード44を備えている。サーミスタ素子は、センサヘッド42内の先端部又は長手方向中央部に配置されている。
【0024】
放熱ケース50は、熱伝導性が良好で軽量な金属(例えばアルミニウム合金)から形成された略箱形の部材であり、リアクトル本体(コイル10及びコアモジュール20)を収容する。リアクトル本体を放熱ケース50内に収容した後、固定具30A、30Bを放熱ケース50にボルトで固定することで、リアクトル本体(直接的にはコアモジュール20)は、固定具30A、30Bの弾性力により放熱ケース50へ押さえ付けられ、放熱ケース50内に固定される。
【0025】
放熱ケース50の縁部の一端には、ボルトにより端子台60が取り付けられている。端子台60は、バスバー62a、62bを備えており、各バスバー62a、62bは、それぞれコイル10のリード部121、141と溶接される。
【0026】
コアモジュール20は、2つの略U字状に形成されたU型コアユニット20A、20Bと、一対の平板状のギャップ部材20gを備えており、U型コアユニット20Aと20BのU字の先端同士を、ギャップ部材20gを介して突き合わせて接着剤で貼り合わせることで形成された略O字形のリングコアである。一方のU型コアユニット20Aには、本発明の実施形態に係るセンサ固定部26Aが形成されている。図5に、U型コアユニット20Aの斜視図を示す。U型コアユニット20A及び20Bは、それぞれ磁性体から形成されたコアブロック21A及び21Bを射出成形(インサート成形)により絶縁性を有する樹脂で被覆したものである。U型コアユニット20A、20Bの被覆樹脂にはポリフェニレンサルファイド(PPS)等の耐熱樹脂が使用される。また、本実施形態では、各コアブロック21A、21Bに圧粉磁心が使用されるが、別の実施形態ではケイ素鋼板やフェライトを使用してもよい。なお、この樹脂被覆は、コアとコイルとの電気的絶縁を確保するために従来使用されていた絶縁ボビンがコアと一体に成形されたものである。各U型コアユニット20A、20Bの端面には、コアブロック21が樹脂で被覆されずに露出した接続面21fが形成されている。また、ギャップ部材20gは、所定の厚さを有する非磁性体(例えば、アルミナ等の各種セラミックスや樹脂)の板材である。U型コアユニット20Aと20Bを、接続面21f同士が対向するように配置して、ギャップ部材20gを介して接続面21f同士を貼り合わせることで、リング状のコアモジュール20が形成される。
【0027】
また、図5に示すように、U型コアユニット20Aは、2つの互いに平行に配置されたX軸方向へ延びる略直方体状の直線部22Aと、この2つの直線部22Aの隣り合う端部を連結する連結部24Aを有している。また、U型コアユニット20Aの側面からは、被覆樹脂から形成されたフランジ部25Aとセンサ固定部26Aが、垂直に突出している。フランジ部25Aは、X軸と垂直な板状部分であり、連結部24Aと直線部22Aとの境界をなす平面上に配置されている。フランジ部25Aの先端は放熱ケース50の内側の各面と当接し、これによりU型コアユニット20Aは放熱ケース50に対して位置決めされる。また、センサ固定部26Aは、Y軸と垂直な略板状部分であり、2つの直線部22Aの間に配置されている。フランジ部25A及びセンサ固定部26Aの詳細は後述する。
【0028】
U型コアユニット20B(図2)も、U型コアユニット20Aと同様に、2つの直線部22B、連結部24B、及びフランジ部25Bを有している。また、U型コアユニット20Bには、センサ固定部26Aの代わりに板状のスペーサ26B(図4)が形成されている。なお、スペーサ26Bとセンサ固定部26Aの支持板261の厚さは、2つの直線コイル部12、14の最小間隔よりも若干薄く形成されている。スペーサ26Bを設けることにより、充填剤の硬化収縮による不均一な歪みの発生が抑えられ、また充填剤の使用量が抑えられる。また、フランジ部25Bの上部には、リード44を挟持して固定するリード固定部252が形成されている。リード固定部252にはリード44よりも細いスリット(不図示)が形成されており、このスリットにリード44を差し込むことで、リード44はリード固定部252に固定される。また、本実施形態では、固定具30Bの取り付けを阻害しないように、リード固定部252はフランジ部25Bの上端からU型コアユニット20A側に突出して形成されている。また、リード固定部252は、コイル10の連結線16と干渉しないように、連結線16の上端よりも高い位置に配置されている。また、本実施形態においては、U型コアユニット20Bの直線部22Bの長さ(X軸方向寸法)は、U型コアユニット20Aの直線部22Aよりも長くなっている。本実施形態のU型コアユニット20AとU型コアユニット20Bには上述のように細部に相違があるが、U型コアユニット20AとU型コアユニット20Bを全く同一の構成としてもよい。
【0029】
図6(a)及び(b)に、それぞれコイル10の正面図及び側面図を示す。なお、図6(b)の側面図は、図6(a)において左側からコイル10を見た図である。コイル10は、平角エナメル線から形成された2つの同一構造の直線コイル部12、14を平行に並べて、一端(図6(b)にける左端)同士を連結線16により連結したものである。また、各直線コイル部12、14は、平角エナメル線を一巻き当たり4箇所で直角に折り曲げて、略正方形状に巻いたものである。図6(a)に示すように、各直線コイル部12及び14が対向する外周面においては、Z座標Z1からZ2の間では平面12f及び14fが形成され、その外側では曲面12r及び14rが形成されている。2つの直線コイル部12、14の間には隙間が形成されている。平面12fと平面14fは互いに平行であり、直線コイル部12、14間の隙間は、平面12fと平面14fで挟まれた中央部で最も狭くなる。中央部の外側、すなわち曲面12rと曲面14rとで挟まれた隙間は、中央部よりも間隔が広く、中央部から離れるに従って間隔が広くなっている。
【0030】
図2に示すように、接続面21fにギャップ部材20gを載せたU型コアユニット20Bの2つの直線部22Bを、コイル10の2つの直線コイル部12、14の中空部に連結線16側からそれぞれ差し込んだ後、コイル10の反対側(図2における右下端)からU型コアユニット20Aの2つの直線部22A(図5)を差し込み、ギャップ部材20gを介してU型コアユニット20Aと20Bの接続面21f同士を突き合わせて接着すると、リアクトル本体が形成される。このとき、コイル10は、U型コアユニット20Aのフランジ部25Aと、U型コアユニット20Bのフランジ部25Bとの間で挟み込まれ、X方向においてコアモジュール20に対して位置決めされる。
【0031】
上記のように組み立てられたリアクトル本体は、放熱ケース50内に収容され、固定具30A及び30Bにより放熱ケース50に固定される。固定具30A及び30Bはステンレス板のプレス加工により成形された部材であり、固定具30A及び30Bをボルトで放熱ケース50に固定すると、固定具30A及び30Bの弾性力によりコアモジュール20が放熱ケース50の下面及び内側面(図2における右下側の内側面)に強く押さえ付けられて、コアモジュール20が放熱ケース50に固定される。
【0032】
次に、U型コアユニット20Aに形成されたセンサ固定部26Aの詳細を説明する。センサ固定部26Aは、サーミスタ40の素子が収容されたセンサヘッド42を固定するための構造部であり、U型コアユニット20Aのインサート成形により被覆樹脂から形成される。図4及び図5に示すように、本実施形態のセンサ固定部26Aは、U型コアユニット20Aの連結部24AのY軸方向中央部からX軸方向内側へ突出した支持板261と、支持板261の上面261tに形成されたホールド部262、突き当て部264、ガイド部266、及びフック部268を有している。
【0033】
図4に示すように、センサヘッド42は、支持板261の上面261t上に固定される。支持板261の上面261tは、コア本体を組み立てたときに、コイル10の平面12f、14fと曲面12r、14rとの境界となるZ座標Z1よりも高くなるように形成されている。本実施形態においては、センサヘッド42がコイル10の曲面12rと曲面14fとで挟まれた隙間内に配置されるように支持板261の上面261tの高さが設定されている。この構成により、センサヘッド42を収容する空間の幅方向(Y軸方向)寸法を比較的に広く確保することが可能になる。また、本実施形態においては、コイル10の下面及び側面と放熱ケース50の内底面及び内側面との間隔が狭く設定されており、リアクトル1で発生した熱はコイル10の下面及び側面から放熱ケース50へ流出する。そのため、作動中のリアクトル1の温度は、コイル10の上部内側における曲面12r、12fの付近で最大となる。従って、曲面12rと曲面14rの間にセンサヘッド42を配置する構成により、サーミスタ40によってリアクトルの最大温度に近い温度を検出することが可能になる。なお、別の実施形態においては、センサヘッド42が直線コイル部12、14よりも高い位置に配置されてもよい。
【0034】
ホールド部262(図5)は、センサヘッド42を把持する部分であり、X軸方向に筒軸を向けた略円筒体の一部が、支持板261の一側面(直線コイル部12と対向する面)261sを含む平面で切り落とされて、横断面が略C字状に形成されている。また、ホールド部262の内周面は、入口側(図4における左側)で広く、出口側(図4における右側)になるほど狭くなるテーパー状に形成されている。具体的には、最も広い入口においては、ホールド部262の内径はセンサヘッド42の外径の規格上限値よりも若干大きく形成されている。また、最も狭い出口においては、ホールド部262の内径はセンサヘッド42の外径の規格下限値よりも若干小さく形成されている。この構成により、外径が規格下限値付近の細いセンサヘッド42をホールド部262により確実に把持できるだけでなく、外径が規格上限付近の太いセンサヘッド42をホールド部262に深く差し込んで確実に把持することも可能となる。従って、センサヘッド42を入口側からホールド部262に挿入して、奥まで強く差し込むことで、センサヘッド42はホールド部262の弾性によりしっかり把持される。
【0035】
また、ホールド部262は、完全な筒状体ではなく、一側面が切り落とされて横断面形状が略C字状となっているため、外径の太いセンサヘッド42を差し込んだ場合でも、ホールド部262の内径がセンサヘッド42の外形に合せて拡張可能であるため、適度な弾性力によりセンサヘッド42を保持することができる。
【0036】
また、コイル10にU型コアユニット20Aを差し込むときに、コイル10のリード部121がセンサ固定部26Aに接近する。上記のように、ホールド部262のリード部121側の側面を切り落としてホールド部262の横断面を略C字状に形成することにより、コイル10にU型コアユニット20Aを差し込むときにリード部121がホールド部262と干渉することが防止される。なお、ホールド部262のみならず、センサ固定部26Aの各部及びセンサヘッド42は、支持板261の直線コイル部12と対向する側面261sから直線コイル部12側に突出していない。
【0037】
ガイド部266は、ホールド部262の入口から支持板261の先端(図4における左端)にかけて形成されている。ガイド部266は、ホールド部262の入口における略下半分をX軸方向へ延長した形状を有している。センサヘッド42をリアクトル1に取り付ける際には、センサヘッド42の先端がホールド部262の先端側から基端側へ差し込まれる。ガイド部266は、この時に、センサヘッド42の先端をホールド部262の入口へガイドする。また、ホールド部262は、センサヘッド42を把持するために、センサヘッド42の周面を軸回りに180度以上覆うように形成されている。そのため、センサヘッド42をホールド部262に側面側から差し込むことができず、ガイド部266が無い場合には、センサヘッド42の外周面の軸をホールド部262の内周面の中心軸に正確に合せなければ、センサ固定部26Aにセンサヘッド42を装着することができない。一方、ガイド部266がセンサヘッド42を覆う軸回りの角度は180度未満(典型的には120度程度)であるため、センサヘッド42は側面側からガイド部266へアクセスすることが可能であり、センサ固定部26Aへのセンサヘッド42の装着が容易になる。
【0038】
また、ガイド部266の先端部(図5における右下端)の上部には、先が下方に曲がったフック部268が形成されている。図4に示すように、リード44は、センサヘッド42の基端から引き出されて直ぐにU字状に180度折り返されて、フック部268とセンサヘッド42の間に通され、更に180度折り返されてフック部268に引っ掛けられ、弛まない程度の張力が加えられた状態で、U型コアユニット20Bのフランジ部25Bに形成されたリード固定部252に固定される。このように、センサヘッド42をホールド部262に奥まで差し込んだ状態で、センサヘッド42から引き出されて直ぐに折り返されたリード44を弛ませずにフック部268に引っ掛けることで、センサヘッド42はX軸正方向(図4における左方向)へ移動できなくなり、従ってセンサヘッド42はホールド部262から抜けなくなる。
【0039】
ホールド部262の出口(図4における右端)の更に先には、支持板261の上面261tから突き当て部264が突出している。突き当て部264は、想定した規格(例えばメトリック規格)よりも外径が細い(例えばインチ規格の)センサヘッド42を使用した場合(すなわち、ホールド部262によりセンサヘッド42を十分に把持できない場合)に、センサヘッド42のX軸方向の位置を測温に適した範囲内に制限するための構造部である。想定した規格よりも外径の細いセンサヘッド42をセンサ固定部26Aに取り付ける場合は、センサヘッド42をホールド部262に奥まで差し込んでも、センサヘッド42はホールド部262によって把持されず、センサヘッド42の先端が突き当て部264と当接して、センサヘッド42の更に奥への移動が阻止される。センサヘッド42の先端が突き当て部264に当接した状態で、上述のようにリード44を折り返して、フック部268に引っ掛け、弛まないようリード固定部252で固定することで、センサヘッド42はX軸正方向(図4における左方向)へ移動できなくなり、ホールド部262から抜けなくなる。
【0040】
なお、ホールド部262の入口から突き当て部264までの距離は、センサヘッド42の長さよりも短く設定されている。これにより、センサヘッド42の先端が突き当て部264と当接するまで奥に差し込まれても、ホールド部262から抜けずにセンサ固定部26Aに確実に保持される。また、センサヘッド42の先端が突き当て部264と当接するまで奥に差し込まれても、センサヘッド42の基端がホールド部262内まで入り込まないため、センサヘッド42の基端を押して奥まで確実に差し込むことができる。また、フック部268から突き当て部264までの距離は、センサヘッド42の長さ以下となるよう設定されている。これにより、センサヘッド42の先端が突き当て部264と当接するまで奥に差し込まれても、センサヘッド42の基端から延びるリード44を折り返してフック部268に引っ掛けることができ、センサヘッド42はホールド部262から抜けられなくなり、センサ固定部26Aに確実に保持される。
【0041】
図4に示すように、スペーサ26Bの上端面は、センサ固定部26Aの上端面よりも低く形成されている。これにより、コアモジュール20を組み立てた後でも、センサヘッド42をセンサ固定部26Aに差し込み易くなっている。
【0042】
上記の実施形態では、センサヘッド42は、2つの直線コイル部12と14の間隔が最も狭くなる平面12fと平面14fの間には配置されず、そこよりも間隔の広い曲面12rと曲面14rの間に配置されている。この構成により、2つの直線コイル部12と14の間隔を狭く設定することが可能になるため、リアクトル1の幅方向寸法を小さくすることができる。
【0043】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0044】
上記の実施形態では、インサート成形によりボビン(コアの絶縁被覆)とコアを一体に成形したコアモジュール20が使用されているが、従来のようにコアとボビンを別体として成形し、ボビンにセンサ固定部26Aを設けた構成としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、ボビン(コアの絶縁被覆)とセンサ固定部26Aが一体に成形されているが、ボビンとセンサ固定部が別体に成形されたものであってもよい。この場合、例えば、ボビンにセンサ固定部の支持板を差し込む溝を形成し、溝に支持板を差し込むだけでセンサ固定部がボビンに取り付けられるようにしてもよい。また、この場合には、上記の実施形態におけるセンサ固定部26Aの支持板261とスペーサ26Bとを一体化して、一枚の板状部材としてもよい。
【0046】
上記の実施形態では、ホールド部262が1つのみ形成されているが、軸方向に複数のホールド部を多段に設けて、複数のホールド部によりセンサヘッドを保持してもよい。複数のホールド部でセンサヘッドを保持することにより、センサヘッドがしっかり保持される。そのため、例えばセンサヘッドの取り付け作業中にリードが引っ張られて、センサヘッドの軸を傾ける力が加えられても、センサヘッドがホールド部から外れ難い。また、複数のホールド部を設けることにより、ホールド部の形状の歪みによってセンサヘッドの先端(素子の付近)が支持板261の上面261tから浮き上がり、測定誤差が大きくなることも防止される。また、複数のホールド部でセンサヘッドを保持する場合、センサヘッドがホールド部にしっかり保持されるため、フック部を設けなくてもよい。なお、上記の実施形態のようにホールド部262を1つのみ有する場合でも、ホールド部でセンサヘッドをしっかり保持できる場合には、センサヘッドの脱落防止の目的にフック部を設ける必要はない。
【0047】
上記の実施形態では、リード固定部252がU型コアユニット20Bのフランジ部25Bに設けられているが、U型コアユニット20A(例えばセンサ固定部26A内)にリード固定部252を設けてもよい。
【0048】
上記の実施形態では、リアクトル1は、ベース(底板)と4面を覆う側壁を有する略箱形のケース50に固定されているが、例えば側壁を有しないベースにリアクトル1を固定してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 リアクトル
10 コイル
12、14 直線コイル部
12f、14f 平面
12r、14r 曲面
121、141 リード部
16 連結線
20 コアモジュール
20g ギャップ部材
20A、20B U型コアユニット
21A、21B コアブロック
22A、22B 直線部
25A、25B フランジ部
252 リード固定部
261 支持板
261t 上面
262 ホールド部
264 突き当て部
266 ガイド部
268 フック部
30A、30B 固定具
21f 接続面
40 サーミスタ
42 センサヘッド
44 リード
50 放熱ケース
60 端子台
62a、62b バスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの直線コイルを備えたコイル装置であって、
前記2つの直線コイルは、軸が略平行となるように、かつ前記2つの直線コイル間に隙間が形成されるように配置され、
前記軸と垂直な平面上で、前記隙間が延びる方向における中央部では前記隙間は狭く、前記隙間が延びる方向における前記中央部の外側では前記隙間が広くなっており、
前記コイル装置内の所定の物理量を検出するセンサを更に備え、
前記センサのセンサヘッドは、少なくとも一部が前記隙間に配置され、かつ、前記中央部を避けた位置に配置されること、を特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記センサヘッドの前記軸と垂直な平面上での幅が、前記隙間の前記中央部における幅より大きいこと、を特徴とする請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記2つの直線コイルは、ベースの上面に沿って配置され、
前記センサヘッドの少なくとも一部が前記中央部より上側の隙間に配置された、ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記2つの直線コイルの中空部にそれぞれ差し込まれた2つの直線部と、前記2つの直線部を両端で連結する2つの連結部とを有したリングコアと、
少なくとも一部が、前記リングコアの直線部を覆い、前記直線部と共に前記直線コイルの中空部に差し込まれて、前記リングコアと前記コイルとを電気的に絶縁する絶縁被覆部材と、
前記センサヘッドを保持するセンサ保持部材と、
を備え、
前記絶縁被覆部材は、前記2つの直線部をそれぞれ覆う2つのボビン部と、前記2つのボビン部を連結するボビン連結部と、を有し、
前記センサ保持部材が前記ボビン連結部に支持されている、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記センサ保持部材は、
前記隙間に配置され、一端が前記ボビン連結部に固定された支持部と、
前記支持部に支持され、前記センサヘッドを保持するホールド部と、
を有する、ことを特徴とする請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記センサヘッドは略円柱形状であり、
前記ホールド部は、略円筒体の軸方向全長に亘ってスリットが形成されて、略C字状の横断面形状を有しており、
前記センサヘッドは、前記ホールド部の一端から差し込まれ、前記ホールド部の弾性力により保持されている、ことを特徴とする請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記支持部は板状部材であり、
前記スリットは、前記略円筒体が前記支持部の片面を定める平面で切断されることで形成されている、ことを特徴とする請求項6に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記ホールド部の内周面は、軸方向の前記一端側から他端側へ向かって内径が狭くなるテーパー状に形成されている、ことを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記センサ保持部材は、前記ホールド部の前記一端から軸方向へ延び、前記センサヘッドの先端を前記ホールド部の前記一端へガイドするガイド部を更に有する、ことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記ホールド部は前記支持部の上面に配設され、
前記センサ保持部材は、前記支持部の上面に配設されて前記ホールド部の軸上に位置する突き当て部を更に有する、ことを特徴とする請求項5から請求項9のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記センサ保持部材は、前記センサヘッドの基端から延びるリードを引っ掛けるフック部を更に有し、
前記フック部の一端は、前記センサヘッドの基端よりも先端側に配置されている、ことを特徴とする請求項5から請求項10のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項12】
前記センサ保持部材は前記絶縁被覆部材と一体に成形されている、ことを特徴とする請求項4から請求項11のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項13】
前記絶縁被覆部材はインサート成形により前記リングコアと一体に成形されている、ことを特徴とする請求項4から請求項12のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項14】
前記2つの直線コイルにおける、前記隙間の前記外側と対向する面は、それぞれ前記中央部から離れるに従って互いに離れる方向へ曲がる曲面である、ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項15】
前記センサヘッドは温度を検出する温度センサ素子を備える、ことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のコイル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−212708(P2012−212708A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76313(P2011−76313)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)